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JP6682178B2 - 樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents

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JP6682178B2 JP2014201733A JP2014201733A JP6682178B2 JP 6682178 B2 JP6682178 B2 JP 6682178B2 JP 2014201733 A JP2014201733 A JP 2014201733A JP 2014201733 A JP2014201733 A JP 2014201733A JP 6682178 B2 JP6682178 B2 JP 6682178B2
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Description

本発明は、光学材料等に好適に用いることができる樹脂組成物及びその製造方法に関するものである。
(メタ)アクリル系樹脂、特にメタクリル酸エステル単位を有する樹脂は、優れた無色透明性を有する熱可塑性樹脂であり、光学材料など多くの用途において利用されている。かかる(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、所定の単量体成分を非重合性有機溶媒中で重合した後、有機溶媒を加熱減圧下で留出除去することにより得られるが、そのままでは重合反応中に生じるゲル化物や製造過程で混入する汚染物質などの異物を含むため、光学材料など、異物量について許容範囲が狭い用途では使用できない。そのため、そのような用途に使用する(メタ)アクリル系樹脂には、有機溶媒を留出除去した後、ポリマーフィルタを用いた濾過による精製が施される(特許文献1)。しかしながら、このようにして得られた(メタ)アクリル系樹脂は、異物は低減されるものの、着色を生じることがあった。
(メタ)アクリル系樹脂の着色を低減する方法としては、重合をアルコールを含む溶媒中で行うか、あるいは重合後にアルコールを添加し、加熱減圧下でアルコールを含む揮発成分を留出除去する方法が提案されている(特許文献2)。この方法では、重合中や重合後の加熱時(脱溶媒工程や成型時)に多くのアルコールを存在させることにより着色を抑えるとともに、アルコールを樹脂中に残存させないように加熱減圧下でアルコールを含む揮発成分を留出除去している(段落0009、0011)。しかし、この方法においても、有機溶媒を留出除去した後、ポリマーフィルタを用いた濾過により異物を除去しようとした場合には、やはり得られる樹脂には着色が生じることがあった。
他方、熱可塑性樹脂を重合した後に、有機溶媒を添加した上で減圧することにより、重合で得られた熱可塑性樹脂に含まれる揮発性成分を有機溶媒とともに除去する技術が報告されている(特許文献3)。この技術は、常温で固化する揮発性成分の装置配管内への固着防止を目的とするものであるが(段落0012)、ここでは、添加した有機溶媒は樹脂から分離して除去される。この技術においても、有機溶媒を除去した後、ポリマーフィルタを用いた濾過により異物を除去しようとした場合には、やはり得られる樹脂には着色が生じることがあった。
特開2007−262399号公報 特開平10−45851号公報 特開2000−143719号公報
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、(メタ)アクリル系樹脂を含む低着色で且つ異物の少ない樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、これまで溶液重合に用いた有機溶媒は目的物である樹脂組成物中から完全に除去することが望ましいと考えられてきた事に反し、樹脂組成物(目的物)中に有機溶媒が敢えて一定量残存するよう制御した上で、減圧下加熱による有機溶媒の除去工程およびポリマーフィルタによる濾過工程を経て得られた樹脂組成物は、意外にも着色が抑えられたものとなるという知見を見出した。この着色抑制効果は、残存する有機溶媒が重合された樹脂に対して可塑剤の様に作用し、有機溶媒除去工程やポリマーフィルタ濾過工程における樹脂の剪断劣化の抑制に寄与するためであると考えられる。本発明は、上記知見により完成したものである。
すなわち、本発明に係る樹脂組成物の製造方法は、沸点が70〜150℃である非重合性有機溶媒を含む溶液中で(メタ)アクリル系樹脂を重合し、この(メタ)アクリル系樹脂含有溶液を減圧下加熱して前記非重合性有機溶媒を除去して(メタ)アクリル系樹脂含有樹脂組成物を調製し、得られた樹脂組成物を濾過精度が10μm以下のポリマーフィルタで濾過して、ガラス転移温度110〜170℃、有機溶媒含有量が100〜1000ppm(質量基準)の樹脂組成物を製造する方法である。
本発明の製造方法においては、前記減圧下加熱による非重合性有機溶媒の除去工程の前、途中又は該工程の後であって前記ポリマーフィルタ濾過工程の前の少なくともいずれかの段階で、非重合性有機溶媒または水を加えることが好ましい。非重合性有機溶媒を加えることで、除去され過ぎた非重合性有機溶媒を増やし、有機溶媒量を調整でき、水を加えることで、非重合性有機溶媒の除去を促進することができる。
本発明の製造方法においては、1個以上のベントを設けた二軸押出機中で減圧下加熱することによって前記非重合性有機溶媒を除去することが好ましい。このとき、前記ベントの少なくとも一個を200hPa以下の減圧度に制御することが好ましい。これにより、最終的に得られる樹脂組成物中の非重合性有機溶媒含有量を調整しやすくなる。
本発明の製造方法において、前記ポリマーフィルタによる濾過工程では、温度260〜330℃で(メタ)アクリル系樹脂含有樹脂組成物を濾過することが好ましい。これにより、熱による樹脂の劣化を防ぎつつ、良好な濾過効率を維持できる。
本発明の製造方法においては、前記非重合性有機溶媒が芳香族炭化水素系溶媒であることが好ましい。非重合性有機溶媒が芳香族炭化水素系溶媒であると、有機溶媒除去工程やポリマーフィルタ濾過工程での樹脂の剪断劣化をより効果的に抑制できる。
本発明の製造方法においては、前記(メタ)アクリル系樹脂が、アクリル系モノマーの重合体であって主鎖に環構造を有する樹脂であることが好ましい。ここで、前記主鎖に環構造を有する樹脂は、マレイミド系重合体及び/又はラクトン環系重合体であることが好ましい。主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂とすれば、得られる樹脂組成物の耐熱性を高めることができる。
本発明の製造方法においては、他の樹脂としてスチレン系樹脂を含むことが好ましい。
本発明に係る樹脂組成物は、(メタ)アクリル系樹脂と沸点70〜150℃の非重合性有機溶媒100〜1000ppmとを含有し、ガラス転移温度が110〜170℃である樹脂組成物である。
本発明の樹脂組成物においては、前記(メタ)アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーの重合体であって主鎖に環構造を有する樹脂であることが好ましい。ここで、前記主鎖に環構造を有する樹脂は、マレイミド系重合体及び/又はラクトン環系重合体であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物の好ましい態様において、前記(メタ)アクリル系樹脂がマレイミド系重合体及び/又はラクトン環系重合体であり、紫外線吸収剤を含有しない場合には、着色度YIが4.0以下である。また、本発明の樹脂組成物の好ましい態様において、前記(メタ)アクリル系樹脂がマレイミド系重合体及び/又はラクトン環系重合体であり、紫外線吸収剤を含有する場合には、着色度YIが10.0以下である。
本発明によれば、樹脂組成物中に非重合性有機溶媒を敢えて一定量残存させるので、(メタ)アクリル系樹脂を含む低着色で且つ異物の少ない樹脂組成物を提供できる。
なお、本明細書における「異物」とは、原料から重合工程を経てペレットなどの成形品を得るまでの間の全ての工程において混入する汚染物質、重合反応中に発生するゲルなどの副生物、有機溶媒除去工程やポリマーフィルタ濾過工程で樹脂の劣化に起因して発生する炭化物などの副生物などを含み、熱可塑性樹脂に相溶しない性質を有する物質全般を意味する。
1.樹脂組成物の製造方法
本発明の製造方法では、沸点が70〜150℃である非重合性有機溶媒(以下、単に「有機溶媒」と称することもある)を含む溶液中で(メタ)アクリル系樹脂を重合し、この(メタ)アクリル系樹脂含有溶液を減圧下加熱して前記非重合性有機溶媒を除去すると共に、任意の段階で他の樹脂と混合するか又は他の樹脂と混合することなく(メタ)アクリル系樹脂含有樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」と称することもある)を調製し、得られた樹脂組成物を濾過精度が10μm以下のポリマーフィルタで濾過して、ガラス転移温度110〜170℃、有機溶媒含有量が100〜1000ppm(質量基準)の低着色な樹脂組成物を得る。つまり、本発明の製造方法は、重合工程と、減圧下加熱による有機溶媒の除去工程と、必要に応じて他の樹脂を混合する混合工程とを経て調製された樹脂組成物を、ポリマーフィルタで濾過する濾過工程とを含む。そして、本発明の製造方法では、これらの工程のいずれかにおいて有機溶媒量を調整し、得られる樹脂組成物中の有機溶媒含有量が100〜1000ppm(質量基準)となるようにする点を特徴とする。このように最終的に得られる樹脂組成物(目的物)中に敢えて有機溶媒を特定量残存させることにより、有機溶媒の除去工程やポリマーフィルタによる濾過工程において、押出機内で樹脂にかかる剪断力によって分子量低下や着色が生じることを抑制できる。
以下では、まず各工程について説明し、その後、有機溶媒量の調整について述べることとする。
1.1.重合工程((メタ)アクリル系樹脂調製工程)
重合工程では、(メタ)アクリル系樹脂を構成する単量体成分を非重合性有機溶媒(有機溶媒)を含む溶液中で重合して、熱可塑性樹脂である(メタ)アクリル系樹脂を得る。
1.1.1.単量体成分
(メタ)アクリル系樹脂を構成する単量体成分は、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、およびこれらの誘導体からなる群より選ばれる(メタ)アクリル系モノマーを必須成分として含有し、必要に応じて、他のモノマーを含有する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および/または「メタクリル」を意味するものとする。
(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリル酸エステル誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルなどの(メタ)アクリル酸とヒドロキシ炭化水素とのエステル類((メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸アリール、(メタ)アクリル酸アラルキルなど);(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチルなどのエーテル結合導入誘導体;(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチルなどのハロゲン導入誘導体;のほか、ヒドロキシ基導入誘導体等が挙げられる。前記ヒドロキシ基導入誘導体には、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル類;2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキル(例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸n−ブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸t−ブチルなど)、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸アルキル(例えば、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなど)等の2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキル;等が含まれる。
(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸類;クロトン酸などのアルキル化(メタ)アクリル酸類;2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸などのヒドロキシアルキル化(メタ)アクリル酸類;等が挙げられる。
(メタ)アクリル系モノマーとしては、上記の中でも、透明性および耐熱性の観点から、メタクリル酸またはメタクリル酸エステルが好ましく、特にメタクリル酸メチルが好ましい。なお(メタ)アクリル系モノマーは、1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
(メタ)アクリル系樹脂を構成する単量体成分に含有させることができる他のモノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン等のスチレン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;メタリルアルコール、アリルアルコール等のアルコール類;エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、2−ヒドロキシメチル−1−ブテン、メチルビニルケトン等のアルケン類;N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−トリブロモフェニルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ベンジルマレイミド等のN−置換マレイミド類;酢酸ビニル;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール等の複素環類;などの重合性二重結合を有する単量体が挙げられる。これらの中でもスチレン類が好ましく、また主鎖に環構造を導入するうえでは、N−置換マレイミド類が好ましい。これら他のモノマーは1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
(メタ)アクリル系樹脂を構成する単量体成分中、(メタ)アクリル系モノマーの占める割合は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。上限は特になく、100質量%であってもよい。
(メタ)アクリル系樹脂は、上記(メタ)アクリル系モノマーの(共)重合体であって、主鎖に環構造を有する樹脂であることが、耐熱性を高めるなどの観点から好ましい。主鎖の環構造としては、例えば、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、無水マレイン酸構造、N−置換マレイミド構造などが挙げられるが、中でも、ラクトン環構造またはN−置換マレイミド構造が好ましい。本発明においては、主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を「ラクトン環系重合体」と称し、主鎖にN−置換マレイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を「マレイミド系重合体」と称する。
ラクトン環系重合体は、例えば、上記(メタ)アクリル系モノマーの中から、重合して分子鎖にヒドロキシ基とエステル基またはカルボキシル基とが導入されるような1種または2種以上のモノマーを選択し、これを含む単量体成分を重合した後、これらヒドロキシ基とエステル基またはカルボキシル基との間で脱アルコールまたは脱水環化縮合を生じさせることにより得られる。分子鎖にヒドロキシ基を導入するには、例えば、上述した(メタ)アクリル酸エステルのヒドロキシ基導入誘導体、ヒドロキシアルキル化(メタ)アクリル酸類などを選択すればよく、ヒドロキシアリル部位を有するモノマーも好ましく用いることができる。分子鎖にエステル基またはカルボキシル基を導入するには、上述した(メタ)アクリル系モノマーのうち、ビニル基とエステル基またはカルボキシル基とを有するモノマーを選択すればよい。
ラクトン環構造の構成員数は特に制限されず、例えば4員環から8員環のいずれであってもよいが、環構造の安定性に優れることから5員環または6員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。6員環であるラクトン環構造としては、例えば、特開2004−168882号公報に開示されている構造が挙げられる。
さらに詳しくは、主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、特開2006−96960号公報、特開2006−171464号公報、特開2007−63541号公報に記載の方法により製造できる。
マレイミド系重合体は、上記した他のモノマーとしてN−置換マレイミド類を選択し、これを含む単量体成分を重合することにより得られる。N−置換マレイミド類としては、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドが好ましい。
さらに詳しくは、主鎖にN−置換マレイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、特開昭57−153008号公報、特開2007−31537号公報に記載の方法により製造できる。
1.1.2.非重合性有機溶媒
重合工程は、非重合性有機溶媒を含む溶液中で行う。
前記非重合性有機溶媒は、沸点が70〜150℃である。非重合性有機溶媒の沸点は、好ましくは80〜140℃、さらに好ましくは90〜130℃である。非重合性有機溶媒の沸点がこの範囲であれば、その残存量を調整しやすい。
前記非重合性有機溶媒としては、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;酢酸エチル、イソブチルアセテート、アミルアセテートなどのエステル系溶媒; ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒;エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;等が挙げられる。これらの中でも、芳香族炭化水素系溶媒が好ましい。非重合性有機溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
なお、重合工程は、少なくとも前記非重合性有機溶媒を含有する溶液中で行えばよく、この溶液には前記非重合性有機溶媒以外の溶媒を含有させることもできる。ただし、その場合、重合工程に用いる全溶媒中、前記非重合性有機溶媒の占める割合を80質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上とするのがよい。最も好ましくは、全溶媒中、前記非重合性有機溶媒の占める割合は100質量%である。
1.1.3.重合方法
重合工程における重合温度、重合時間は、使用する単量体(単量体成分)の種類、使用比率等によって異なるが、好ましくは、重合温度が0〜150℃の範囲内、重合時間が0.5〜20時間の範囲内であり、より好ましくは、重合温度が80〜140℃の範囲内、重合時間が1〜10時間の範囲内である。
重合反応には、必要に応じて、重合開始剤を添加することができる。重合開始剤としては特に限定されないが、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;等が挙げられ、これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量は、用いる単量体成分や反応条件などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。
重合を行う際には、反応液のゲル化を抑制するために、重合液中に生成した重合体の濃度が60質量%以下となるよう、溶媒(非重合性有機溶媒)量を制御することが好ましい。具体的には、重合液中の生成した重合体の濃度が60質量%を超える場合には、溶媒(非重合性有機溶媒)を重合液に適宜添加して60質量%以下となるように制御することが好ましい。重合液中に生成した重合体の濃度は、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。なお、重合液中の重合体の濃度があまりに低すぎると生産性が低下するため、重合液中の重合体の濃度は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。
1.1.4.環化縮合反応
(メタ)アクリル系樹脂としてラクトン環系重合体を得る場合、上記重合反応に引き続き、環化縮合反応を行うことができる。重合体へラクトン環構造を導入するための環化縮合反応は、加熱により、重合体の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基またはカルボキシル基とが環化縮合してラクトン環構造を生じる反応であり、その環化縮合によってアルコールが副生する。
環化縮合反応は、通常、上記重合反応を終了した時点で得られる重合液をそのまま加熱することで行われるが、必要な場合には、重合液から一旦重合体を固体状態で取り出した後に、再度、溶媒(好ましくは前記非重合性有機溶媒)を添加して行ってもよい。
環化縮合反応を行う際には、公知の閉環触媒(エステル化触媒、エステル交換触媒のほか、有機カルボン酸類、塩基性化合物、炭酸塩など)を用いて環化縮合を促進させることができる。閉環触媒としては、特に有機リン化合物が好ましい。触媒として有機リン化合物を用いることにより、環化縮合反応率を向上させることができるとともに、得られる(メタ)アクリル系樹脂の着色および分子量低下を抑制することができる。
有機リン化合物としては、例えば、メチル亜ホスホン酸、エチル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸等のアルキル(アリール)亜ホスホン酸(但し、これらは、互変異性体であるアルキル(アリール)ホスフィン酸になっていてもよい)およびこれらのジエステルあるいはモノエステル;ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、フェニルエチルホスフィン酸等のジアルキル(アリール)ホスフィン酸およびこれらのエステル;メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、トリフルオルメチルホスホン酸、フェニルホスホン酸等のアルキル(アリール)ホスホン酸およびこれらのジエステルあるいはモノエステル;メチル亜ホスフィン酸、エチル亜ホスフィン酸、フェニル亜ホスフィン酸等のアルキル(アリール)亜ホスフィン酸およびこれらのエステル;亜リン酸メチル、亜リン酸エチル、亜リン酸フェニル、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル等の亜リン酸ジエステルあるいはモノエステルあるいはトリエステル;リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸イソデシル、リン酸ラウリル、リン酸ステアリル、リン酸イソステアリル、リン酸フェニル、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジ−2−エチルヘキシル、リン酸ジイソデシル、リン酸ジラウリル、リン酸ジステアリル、リン酸ジイソステアリル、リン酸ジフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリイソデシル、リン酸トリラウリル、リン酸トリステアリル、リン酸トリイソステアリル、リン酸トリフェニル等のリン酸ジエステルあるいはモノエステルあるいはトリエステル;メチルホスフィン、エチルホスフィン、フェニルホスフィン、ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のモノ、ジ若しくはトリアルキル(アリール)ホスフィン;メチルジクロロホスフィン、エチルジクロロホスフィン、フェニルジクロロホスフィン、ジメチルクロロホスフィン、ジエチルクロロホスフィン、ジフェニルクロロホスフィン等のアルキル(アリール)ハロゲンホスフィン;酸化メチルホスフィン、酸化エチルホスフィン、酸化フェニルホスフィン、酸化ジメチルホスフィン、酸化ジエチルホスフィン、酸化ジフェニルホスフィン、酸化トリメチルホスフィン、酸化トリエチルホスフィン、酸化トリフェニルホスフィン等の酸化モノ、ジ若しくはトリアルキル(アリール)ホスフィン;塩化テトラメチルホスホニウム、塩化テトラエチルホスホニウム、塩化テトラフェニルホスホニウム等のハロゲン化テトラアルキル(アリール)ホスホニウム;等が挙げられる。これらの中でも、触媒活性が高くて低着色性のため、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、亜リン酸ジエステルあるいはモノエステル、リン酸ジエステルあるいはモノエステル、アルキル(アリール)ホスホン酸が好ましく、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、亜リン酸ジエステルあるいはモノエステル、リン酸ジエステルあるいはモノエステルがより好ましく、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、リン酸ジエステルあるいはモノエステルが特に好ましい。これら有機リン化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
環化縮合反応の際に用いる触媒の使用量は、特に限定されないが、重合体液に含まれる重合体に対して、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.01〜2.5質量%、さらに好ましくは0.01〜1質量%である。
環化縮合反応は、副生するアルコールを強制的に脱揮、除去するため、揮発成分を除去するための真空装置あるいは脱揮装置を持つ加熱炉や反応装置、脱揮装置のある押出機等を用いて行うことが好ましい。その場合、環化縮合反応は、後述する有機溶媒除去工程と同時に(有機溶媒除去と兼ねて)行うことができる。
1.2.有機溶媒除去工程
有機溶媒除去工程では、重合工程(必要に応じて環化縮合反応を含む)で得られた(メタ)アクリル系樹脂含有溶液を減圧下加熱して前記非重合性有機溶媒を除去する。
減圧度および加熱温度は、最終的に得られる樹脂組成物中の非重合性有機溶媒含有量が所定の範囲になるよう用いる装置に応じて適宜設定する。
有機溶媒除去工程で用いる装置としては、減圧下加熱できるものであればよく特に制限されないが、ベント付押出機が好ましく用いられる。
本発明に用いることのできる押出機は、シリンダとシリンダの内部で回転するスクリューとを備え、シリンダの一端側から供給された原料をスクリューで混練しながらシリンダの他端側へと送り、シリンダの先端に備えた口金あるいは押出型とも呼ばれるダイから原料を押し出すものである。スクリューは単軸あるいは二軸のものがあるが二軸が好ましい。シリンダには供給原料を加熱するヒータなどの加熱手段を備える。シリンダには、内部に発生するガス等を逃がすための排気口すなわちベントが設けられている。ベントはシリンダの後端などに1個所だけ設けることもできるが、シリンダの長さ方向に沿って複数個所に設けられることが好ましい。押出機が有するベントの数は、最終的に得られる樹脂組成物中の非重合性有機溶媒含有量の調整が容易になるため多いほど望ましく、好ましくは3個以上、より好ましくは4個以上、さらに好ましくは5個以上である。
複数個のベントを有する押出機にて有機溶媒除去を行う場合、例えば、n個(nは3以上)のベントを有する押出機であれば、上流側から第1ベント、第2ベント、第3ベント、…第nベントとすると(例えばリアベントと4個のフォアベントを有する場合であれば、リアベントを第1ベントとし、最も上流側のフォアベントから順に第2ベント、第3ベント、第4ベント、第5ベントとすると)、第1ベントの好ましい減圧度は500hPa〜1000hPa(より好ましくは600hPa〜900hPa、さらに好ましくは700hPa〜850hPa)であり、第2ベントの好ましい減圧度は100hPa〜500hPa(より好ましくは200hPa〜400hPa、さらに好ましくは250hPa〜350hPa)であり、第3ベント乃至第nベントの好ましい減圧度は10hPa〜200hPa(より好ましくは15hPa〜180hPa、さらに好ましくは20hPa〜150hPa)である。
押出機のシリンダ内には、溶媒、環化縮合触媒、他の樹脂などを供給するための供給口を備えておくことが好ましい。供給口は、少なくともシリンダの最下流側のベントよりも上流側に設けておく。供給口やベントの大きさは、製造される(メタ)アクリル系樹脂の種類その他の条件に合わせて適宜変更することができる。ベントには、真空吸引配管や排出物の回収装置などが接続し、ベントを減圧してシリンダ内の有機溶媒および揮発性成分を吸引除去することができる。
このような押出機では、シリンダの上流側の原料供給口から(メタ)アクリル系樹脂含有溶液を供給し、シリンダ内で樹脂を加熱しスクリューの回転とともに溶融混練してシリンダ先端に設けられたポリマーフィルタを介してダイから(メタ)アクリル系樹脂が押し出される。なおダイから押し出された樹脂組成物は、ダイに対応する形状に押出成形されることになる。押出成形された樹脂組成物を細かく切断すればペレットを製造することができる。ダイ形状によって、ペレット以外にも、フィルム状や棒状その他の形状を有する樹脂製品を直接に押出成形することが可能である。
1.3.他の樹脂、添加剤の混合工程
本発明の樹脂組成物には、(メタ)アクリル系樹脂以外の他の樹脂を含有しなくてもよく、含有してもよい。他の樹脂を含有する場合、本発明の製造方法では任意の段階で他の樹脂の混合工程を行うことができる。他の樹脂の混合工程は、例えば、重合工程(必要に応じて環化縮合反応を含む)で得られた(メタ)アクリル系樹脂含有溶液に対して、有機溶媒除去工程の前に行ってもよいし、有機溶媒除去工程の途中で行ってもよいし、有機溶媒除去工程の後、ポリマーフィルタ濾過工程の前に行ってもよい。また、重合工程において他の樹脂を添加しておくこともできる。
他の樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、MBS樹脂、ポリスチレン樹脂、PPE樹脂等が挙げられる。これらの中でも、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂などのスチレン系樹脂が好ましく用いられる。
他の樹脂を混合量としては、(メタ)アクリル系樹脂の含有割合が、樹脂組成物100質量%中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上となるように設定するのがよい。
本発明の樹脂組成物には、各種の添加剤を含有させることもできる。添加剤を混合するタイミングは、他の樹脂と同様、任意の段階で行えばよいが、好ましくは重合工程で混合しておくか、有機溶媒除去工程等において押出機に設けた注入口から注入して混合するのがよい。
添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系などの酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤などの安定剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強材;フェニルサリチレート、(2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5,−トリアジンなどの紫外線吸収剤;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモンなどの難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤などの帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;有機フィラーや無機フィラー;樹脂改質剤;有機充填剤や無機充填剤;可塑剤;滑剤;帯電防止剤;等が挙げられる。これら添加剤は1種のみを用いてよいし2種以上であってもよい。
添加剤の熱可塑性樹脂組成物中における上記添加剤の含有割合は、好ましくは5質量%%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
1.4.ポリマーフィルタ濾過工程
本発明では、押出機の先端等に設けられたポリマーフィルタによって、溶融状態の樹脂組成物を濾過する。ここで、ポリマーフィルタの濾過精度は10μm以下である。濾過精度が10μmを超えると、異物が混入し易くなり、光学用途等に使用しうる高品位の樹脂組成物が得られない。ポリマーフィルタの濾過精度は、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下である。またポリマーフィルタの濾過精度の下限は、濾過滞留時間や生産効率の観点から、1μm以上が好ましい。
ポリマーフィルタとしては、従来公知のポリマーフィルタを使用することができ、特に制限されないが、例えば、リーフディスクタイプのポリマーフィルタ、パックディスクフィルタ、円筒型フィルタ、キャンドル状フィルタなどが挙げられる。これらの中では、濾過面積が広く、高粘度の樹脂を濾過した場合でも圧力損失が少ないため、リーフディスクタイプのポリマーフィルタが好ましい。ポリマーフィルタがリーフディスクタイプである場合、フィルタとしては、金属繊維不織布を焼結した材料からなるもの、金属粉末を焼結した材料からなるもの、金網を数枚積層したものなどが挙げられる。これらの中では、金属繊維不織布を焼結した材料からなるものがより好ましい。
本発明の製造方法において、前記ポリマーフィルタによる濾過工程では、温度260〜330℃で(メタ)アクリル系樹脂含有樹脂組成物を濾過することが好ましい。つまり、ポリマーフィルタ内部の温度((メタ)アクリル系樹脂含有樹脂組成物の温度)を前記範囲に制御することが好ましい。ポリマーフィルタ内部の温度は、より好ましくは270〜300℃である。また、フィルタにおける圧力損失は、1〜15MPaの範囲内であることが好ましい。
1.5.有機溶媒量の調整
本発明の製造方法では、得られる樹脂組成物中の有機溶媒含有量が100〜1000ppm(質量基準)になるようにすることが重要である。得られる樹脂組成物中の有機溶媒含有量は、好ましくは150〜950ppm、より好ましくは170〜900ppmである。最終的に得られる樹脂組成物中に前記範囲の有機溶媒が含有されていると、有機溶媒除去工程やポリマーフィルタによる濾過工程においても必然的に相当量の有機溶媒が存在することになるので、この有機溶媒が可塑剤の様に作用し、有機溶媒除去工程やポリマーフィルタによる濾過工程において押出機等の内部で樹脂組成物に剪断力がかかっても(メタ)アクリル系樹脂の劣化を抑制することが可能になり、その結果、平均分子量の低下や着色の発生を抑えることができる。一方、上記範囲を超える量の有機溶媒を樹脂組成物中に含む場合、例えば、射出成型時の金型汚染や、溶融フィルム製膜時のキャストロール汚染など、樹脂組成物の二次加工時に生産性を低下させる可能性を招く問題を生じる。
本発明において、有機溶媒の残存量をコントロールするための手段は、特に制限されないが、例えば、下記i)乃至iii)に示す好ましい態様のうちの一つ又は二以上を組合せて行えばよい。
i)減圧下加熱による非重合性有機溶媒の除去工程の前、途中又は該工程の後であって前記ポリマーフィルタ濾過工程の前の少なくともいずれかの段階で、非重合性有機溶媒または水を加える。減圧下加熱により有機溶媒を除去する際に水を加えると、有機溶媒が留出しやすくなり、有機溶媒量の低減を促進できる。また非重合性有機溶媒を加えることで有機溶媒量を増やしてもよく、減圧下加熱により有機溶媒を除去しすぎた場合には、非重合性有機溶媒を加えて含有量を調整すればよい。特に、水を加えて有機溶媒の除去を促進する場合、添加する水の量は、有機溶媒除去工程に供する樹脂組成物100質量部に対して、3質量部以下にすることが好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。添加する水の量を3質量部を超えて増量しても、有機溶媒の除去効率の向上効果は見込まれない。また水を加えて有機溶媒の除去を促進する場合、例えば押出機の複数注入口から水を投入することが、除去効率向上の観点から、好ましい。
ii)複数個のベントを有する二軸押出機にて有機溶媒除去を行うにあたり、ベントの少なくとも一個を200hPa以下の減圧度に制御する。より好ましくはベントの少なくとも一個を150Pa以下とするのがよい。また200hPa以下とするベントの数は、2個以上が好ましく、3個以上がより好ましい。ただし、全てのベントが200hPa以下であると、急激な溶媒除去に伴うベントアップが発生し、生産に不具合が生じることが考えられるため、200hPa以下とするベントの数は「ベントの総数−1」個とするのがよい。
iii)複数個のベントを有する二軸押出機にて有機溶媒除去を行うにあたり、各ベントの減圧度を、下流側になるほど減圧度が低くなるか、少なくとも同じとなるように設定する。これにより、有機溶媒の除去を促進できる。
1.6.ガラス転移温度の調整
本発明の製造方法では、ガラス転移温度(Tg)が110〜170℃である樹脂組成物を得る。最終的に得られる樹脂組成物のガラス転移温度は、好ましくは115〜160℃、より好ましくは120〜150℃である。ガラス転移温度が前記範囲である樹脂組成物は、高い耐熱性を示し、例えば、アクリル樹脂の透明性を活かした画像表示装置等の用途において、光源などの発熱部に近接した配置が可能になるなど、実用上の様々な利点を有する。最終的に得られる樹脂組成物のガラス転移温度は、(メタ)アクリル系樹脂を構成する単量体成分や必要に応じて混合される他の樹脂の種類や量によって、調整することができる。
2.樹脂組成物
本発明に係る樹脂組成物は、(メタ)アクリル系樹脂と沸点70〜150℃の非重合性有機溶媒100〜1000ppmとを含有し、ガラス転移温度が110〜170℃である熱可塑性の樹脂組成物である。詳しくは、本発明の樹脂組成物は、必須成分である(メタ)アクリル系樹脂と、任意成分としての他の樹脂及び/又は添加剤とを含有するとともに、沸点70〜150℃の非重合性有機溶媒を100〜1000ppm含有する。このような樹脂組成物は、上述した本発明の製造方法により容易に得ることができるものであり、各成分の詳細は上述の通りである。
本発明の樹脂組成物において、前記(メタ)アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーの重合体であって主鎖に環構造を有する樹脂であることが好ましく、この主鎖に環構造を有する樹脂としてはマレイミド系重合体及び/又はラクトン環系重合体であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、異物数が少ないものである。例えば、本発明の樹脂組成物の好ましい態様においては、長径20μm以上の異物数は、樹脂組成物1g中、100個以下であり、より好ましくは50個以下、さらに好ましくは20個以下である。長径20μm以上の異物数が100個を超えると、光学材料や表示材料等の用途における利用に適さない。なお、長径20μm以上の異物数は、例えば実施例で後述する方法で測定することができる。
本発明の樹脂組成物は、着色の程度が低く抑制されているという利点も有する。本発明の樹脂組成物の着色度(YI)は、(メタ)アクリル樹脂の種類、添加物(特に紫外線吸収剤)の有無などによって異なるが、例えば、(メタ)アクリル系樹脂がマレイミド系重合体及び/又はラクトン環系重合体であり、紫外線吸収剤を含有しない場合であれば、着色度YIは、好ましくは4.0以下であり、より好ましくは3.5以下である。他方、(メタ)アクリル系樹脂がマレイミド系重合体及び/又はラクトン環系重合体であり、紫外線吸収剤を含有する場合であれば、着色度YIは、好ましくは10.0以下であり、より好ましくは9.5以下である。また、なお、樹脂組成物の着色度(YI)は、例えば実施例で後述する方法で測定することができる。
本発明の樹脂組成物は、ガラス転移温度(Tg)が110℃以上、170℃以下であり、好ましくは115℃以上、160℃以下、より好ましくは120℃以上、150℃以下である。ガラス転移温度が低すぎると、例えば光学部材等の実使用温度領域で変形などの不具合が生じ、一方、高すぎると、樹脂組成物の成型加工条件が高温となり、着色が生じ易くなる虞れがある。なおガラス転移温度は、例えば実施例で後述する方法で測定することができる。
本発明の樹脂組成物の平均分子量は、重量平均分子量で、10万以上、30万以下であることが好ましく、より好ましくは 12万以上、20万以下である。本発明の製造方法によれば、押出機内での剪断による分子量低下を効果的に抑制できるので、容易に前記範囲を実現できる。なお重量平均分子量は、例えば実施例で後述する方法で測定することができる。
本発明の樹脂組成物は、メルトフローレート(MFR)が、240℃、荷重98Nにおいて5g/10分以上、20g/10分以下であることが好ましく、より好ましくは、6g/10分以上、18g/10分以下である。なおメルトフローレートは、例えば実施例で後述する方法で測定することができる。
本発明にかかる樹脂組成物は、透明性に優れ、着色が少ないことから、例えば、光ディスク等の光学材科の基材や光学用素子、自動車部品、照明カバー、電気機器部品等のように透明性だけでなく、美観を要求される素材として特に好適である。特に、屈折率等を調整して、透明な樹脂組成物を得ようとする場合の樹脂組成物等にも好ましく利用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
以下の実施例では、特に断りのない限り「質量部」を単に「部」と、「質量%」を単に「%」と記す。
実施例、比較例で得られた樹脂組成物は下記の方法で分析、評価した。
[有機溶媒量]
樹脂組成物中の有機溶媒量(残存量)は、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製「GC2012」)及びカラム(信和化工社製「ULBON−HR1」;0.25mmφ×50m、0.25μm)を用いて、炭酸ジフェニルを内部標準として作成した検量線に基づき定量し求めた。
[ガラス転移温度(Tg)]
樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は、JIS−K7121の規定に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク社製「DSC−8230」)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温速度20℃/分で昇温し、得られたDSC曲線から補外ガラス転移開始温度を算出した。リファレンスには、α−アルミナを用いた。
[メルトフローレート(MFR)]
樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は、JIS−K7210:1999の規定に準拠して、試験温度240℃、荷重98N(10kgf)で測定した。
[平均分子量(Mw)]
樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下の測定条件に従って、ポリスチレン換算により求めた。
測定システム:東ソー社製「GPCシステムHLC−8220」
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業製;特級)
溶媒流量:0.6mL/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー製「PS−オリゴマーキット」)
測定側カラム構成:東ソー社製「TSK−GEL super HZM−M 6.0x150」2本直列接続、東ソー社製「TSK−GEL super HZ−L 4.6x35」1本
リファレンス側カラム構成:東ソー社製「TSK−GEL SuperH−RC 6.0x150」2本直列接続
カラム温度:40℃
[着色度(YI)]
樹脂組成物の着色度(YI)は、サンプルをクロロホルムに溶かして15%溶液とし、これを石英セルに入れ、JIS−K7103に従い、色差計(日本電色工業社製「ZE6000」)を用いて、透過光で測定した。
[20μm以上の異物数]
得られた樹脂組成物5gを100mLのクロロホルムに溶解し、パーティクルカウンタ(パマス社製、型式:SVSS−C、センサー仕様:HCB−LD−50/50)を用いて測定した。なお、長径が20μm以上のものを異物としてカウントし、1gあたりの個数に換算して異物数とした。
[フィルム化時のロール汚染度合]
各実施例、比較例で得られたペレット(樹脂組成物)を、単軸押出機(シリンダー径20mm)を用いて以下の条件で溶融押出成形し、厚さ100μmの未延伸フィルム(原フィルム)を作製した。
シリンダー温度:250℃
ダイ:コートハンガータイプ、幅150mm、温度265℃
キャスティング:つや付き2本ロール、第1ロールおよび第2ロールともに110℃に保持
未延伸フィルムは、Tダイから押し出された樹脂組成物がキャスティングロール上で固化して形成される。よって、未延伸フィルムを作製し始めてから一定時間ごとに、キャスティングロール(第1ロール)の表面の状態を目視にて確認し、その汚染度合を下記の基準で評価した。
◎:未延伸フィルムを作製し始めてから2時間経過した時点で、汚染が確認されない
○:未延伸フィルムを作製し始めてから0.5時間超、2時間以下の間に、ロール表面に汚染が確認される
×:未延伸フィルムを作製し始めてから0.5時間経過した時点で、ロール表面に汚染が確認される
[実施例1]
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応容器に、メタクリル酸メチル(MMA)229.6部、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)33部、酸化防止剤(ADEKA社製「アデカスタブ(登録商標)2112」)0.138部、非重合性有機溶媒としてトルエン248.6部、およびn−ドデシルメルカプタン0.1925部を仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製「ルペロックス(登録商標)570」)0.2838部を添加するとともに、上記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.5646部とスチレン12.375部とを2時間かけて滴下しながら約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させ、滴下終了後、同温度でさらに4時間の熟成を行った。
次に、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)として、リン酸ステアリル(堺化学工業社製「Phoslex A−18」)0.206部を加え、約90〜110℃の還流下において2時間、ラクトン環構造を形成するための環化縮合反応を進行させた。
次に、得られた重合溶液を、240℃に加熱した多管式熱交換器に通して環化縮合反応を完結させた後、バレル温度が250℃であり、1個のリアベント、4個のフォアベント(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)および第3ベントと第4ベントとの間にサイドフィーダーを備え、先端部にリーフディスク型のポリマーフィルタ(濾過精度5μm)が配置されたベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に、31.2部/時(樹脂量換算)の処理速度で導入し、各ベントの減圧度をリアベント798hPa、第1ベント266hPa、第2ベント乃至第4ベントはいずれも133hPaとして、脱揮を実施した。その際、イオン交換水を0.47部/時の投入速度で第2ベントの後ろから投入し、紫外線吸収剤(ADEKA社製「アデカスタブ(登録商標)LA−F70」)0.66部をトルエン1.23部に溶解させた溶液を0.59部/時の投入速度で第3ベントの後ろから投入し、さらにイオン交換水を0.47部/時の投入速度で第4ベントの後ろから投入した。
脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある樹脂組成物を当該押出機の先端からポリマーフィルタで濾過しながら排出し、備えたダイスを通過させた後、孔径1μmのフィルタ(オルガノ社製「製品名:ミクロポアフィルタ1EU」)で濾過し、30±10℃の範囲内の温度に保持した冷却水を満たした水槽中でストランドを冷却し、次いで切断機(ペレタイザ)に導入することで、ラクトン環構造を主鎖に有するラクトン環系重合体と紫外線吸収剤(UV吸収剤)とを含む樹脂組成物(A)からなるペレット(A−1)を得た。なお、上記ペレット化工程は、ダイスから切断機までの環境清浄度が5000以下(米国連邦規格 FED−STD−209E)となるようにクリーンスペースを設けて行った。
得られたペレット(A−1)中の有機溶媒(トルエン)残存量、Tg、MFR、Mw、YI、異物数、および該ペレットをフィルム化した時のロールの汚染度合は、表1に示す通りであった。
[実施例2]
実施例1において、各ベントの減圧度を、リアベント798hPa、第1ベント266hPa、第2ベント乃至第4ベントはいずれも27hPaと設定したこと以外、実施例1と同様にして重合、脱揮およびペレット化を実施し、実施例1と同じ樹脂組成物(A)からなるペレット(A−2)を得た。
得られたペレット(A−2)中の有機溶媒(トルエン)残存量、Tg、MFR、Mw、YI、異物数、および該ペレットをフィルム化した時のロールの汚染度合は、表1に示す通りであった。
[比較例1]
実施例1において、各ベントの減圧度を、リアベント798hPa、第1ベント133hPa、第2ベント乃至第4ベントはいずれも27hPaと設定したこと以外、実施例1と同様にして重合、脱揮およびペレット化を実施し、実施例1と同じ樹脂組成物(A)からなるペレット(A−3)を得た。
得られたペレット(A−3)中の有機溶媒(トルエン)残存量、Tg、MFR、Mw、YI、異物数、および該ペレットをフィルム化した時のロールの汚染度合は、表1に示す通りであり、実施例1、2と比較して平均分子量Mwが低下し、着色度YIが上昇することがわかった。
[比較例2]
実施例1において、各ベントの減圧度を、リアベント798hPa、第1ベント532hPa、第2ベント乃至第4ベントはいずれも266hPaと設定したこと以外、実施例1と同様にして重合、脱揮およびペレット化を実施し、実施例1と同じ樹脂組成物(A)からなるペレット(A−4)を得た。
得られたペレット(A−4)中の有機溶媒(トルエン)残存量、Tg、MFR、Mw、YI、異物数、および該ペレットをフィルム化した時のロールの汚染度合は、表1に示す通りであり、有機溶媒が過剰に残存しているためにフィルム化の際にロール汚染が生じやすいことがわかった。
[実施例3]
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応容器に、メタクリル酸メチル(MMA)40部、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)10部、酸化防止剤(ADEKA社製「アデカスタブ(登録商標)2112」)0.025部、および非重合性有機溶媒としてトルエン50部を仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製「ルペロックス(登録商標)570」)0.05部を添加するとともに、上記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.10部を2時間かけて滴下しながら約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させ、滴下終了後、同温度でさらに4時間の熟成を行った。
次に、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)として、リン酸ステアリル(堺化学工業社製「Phoslex A−18」)0.05部を加え、約90〜105℃の還流下において2時間、ラクトン環構造を形成するための環化縮合反応を進行させた。
次に、得られた重合溶液を、240℃に加熱した多管式熱交換器に通して環化縮合反応を完結させた後、バレル温度が250℃であり、1個のリアベント、4個のフォアベント(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)および第3ベントと第4ベントとの間にサイドフィーダーを備え、先端部にリーフディスク型のポリマーフィルタ(濾過精度5μm)が配置されたベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に、28.1部/時(樹脂量換算)の処理速度で導入し、各ベントの減圧度をリアベント798hPa、第1ベント266hPa、第2ベント乃至第4ベントはいずれも133hPaとして、脱揮を実施した。その際、別途調製しておいた酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液を0.42部/時の投入速度で第1ベントの後ろから投入し、イオン交換水を0.42部/時の投入速度で第2及び第3ベントの後ろからそれぞれ投入し、さらにサイドフィーダーからは、スチレン−アクリロニトリル共重合体(スチレン/アクリロニトリルの質量比率=73/27、重量平均分子量22万)のペレット(AS樹脂)を投入速度3.1部/時で投入した。なお、酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液は、酸化防止剤(チバジャパン社製「イルガノックス(登録商標)1010」)5部と、失活剤としてのオクチル酸亜鉛(日本化学産業社製「ニッカオクチクス亜鉛3.6%」)55部とを、トルエン45部に溶解させることにより調製した。
脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある樹脂組成物を当該押出機の先端からポリマーフィルタで濾過しながら排出し、実施例1と同様にしてペレット化を行うことで、ラクトン環構造を主鎖に有するラクトン環系重合体とAS樹脂とを含む樹脂組成物(B)からなるペレット(B−1)を得た。
得られたペレット(B−1)中の有機溶媒(トルエン)残存量、Tg、MFR、Mw、YI、異物数、および該ペレットをフィルム化した時のロールの汚染度合は、表1に示す通りであった。
[比較例3]
実施例3において、各ベントの減圧度を、リアベント798hPa、第1ベント266hPa、第2ベント乃至第4ベントはいずれも27hPaと設定したこと以外、実施例3と同様にして重合、脱揮およびペレット化を実施し、実施例3と同じ樹脂組成物(B)からなるペレット(B−2)を得た。
得られたペレット(B−2)中の有機溶媒(トルエン)残存量、Tg、MFR、Mw、YI、異物数、および該ペレットをフィルム化した時のロールの汚染度合は、表1に示す通りであり、実施例3と比較して平均分子量Mwが低下し、着色度YIが上昇することがわかった。
[実施例4]
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応容器に、メタクリル酸メチル(MMA)32.5部、N−フェニルマレイミド(PMI)8.0部、N−シクロヘキシルマレイミド(CHMI)1.8部、n−ドデシルメルカプタン0.01部、および非重合性有機溶媒としてトルエン54.1部を仕込み、これに窒素を通じつつ、100℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(化薬アクゾ社製「カヤカルボン(登録商標)bic−75」)0.03部を添加するとともに、上記t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.03部とスチレン2.23部とを4時間かけて滴下しながら約100〜115℃の還流下で溶液重合を進行させ、滴下終了後、同温度でさらに2時間の熟成を行った。
次に、得られた重合溶液を、バレル温度が260℃であり、1個のリアベント、4個のフォアベント(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)および第3ベントと第4ベントとの間にサイドフィーダーを備え、先端部にリーフディスク型のポリマーフィルタ(濾過精度5μm)が配置されたベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に、31.2部/時(樹脂量換算)の処理速度で導入し、各ベントの減圧度をリアベント798hPa、第1ベント266hPa、第2ベント乃至第4ベントはいずれも133hPaとして、脱揮を実施した。その際、イオン交換水を0.47部/時の投入速度で第2ベント、第3ベントおよび第4ベントの後ろからそれぞれ投入した。
脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある樹脂組成物を当該押出機の先端からポリマーフィルタで濾過しながら排出し、実施例1と同様にしてペレット化を行うことで、イミド環構造を主鎖に有するマレイミド系重合体を含む樹脂組成物(C)からなるペレット(C−1)を得た。
得られたペレット(C−1)中の有機溶媒(トルエン)残存量、Tg、MFR、Mw、YI、異物数、および該ペレットをフィルム化した時のロールの汚染度合は、表1に示す通りであった。
[比較例4]
実施例4において、各ベントの減圧度を、リアベント798hPa、第1ベント133hPa、第2ベント乃至第4ベントはいずれも27hPaと設定したこと以外、実施例4と同様にして重合、脱揮およびペレット化を実施し、実施例4と同じ樹脂組成物(C)からなるペレット(C−2)を得た。
得られたペレット(C−2)中の有機溶媒(トルエン)残存量、Tg、MFR、Mw、YI、異物数、および該ペレットをフィルム化した時のロールの汚染度合は、表1に示す通りであり、実施例4と比較して平均分子量Mwが低下し、着色度YIが上昇することがわかった。

Claims (11)

  1. 沸点が70〜150℃である非重合性有機溶媒を含む溶液中で(メタ)アクリル系樹脂を重合し、
    3個以上のベントが設けられ、最上流にあるベントが600hPa〜1000hPaの減圧度に制御され、2番目に上流にあるベントが200hPa〜500hPaの減圧度に制御され、上記以外のベントが10hPa〜180hPaの減圧度に制御された二軸押出機中で、前記(メタ)アクリル系樹脂含有溶液を減圧下加熱して前記非重合性有機溶媒を除去して(メタ)アクリル系樹脂含有樹脂組成物を調製し、
    得られた樹脂組成物を濾過精度が10μm以下のポリマーフィルタで濾過して、
    ガラス転移温度110〜170℃、前記有機溶媒含有量が100〜1000ppm(質量基準)の樹脂組成物を製造する方法。
  2. 前記減圧下加熱による非重合性有機溶媒の除去工程の前、途中又は該工程の後であって前記ポリマーフィルタ濾過工程の前の少なくともいずれかの段階で、非重合性有機溶媒または水を加える請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
  3. 前記ポリマーフィルタによる濾過工程では、温度260〜330℃で(メタ)アクリル系樹脂含有樹脂組成物を濾過する、請求項1又は2に記載の樹脂組成物の製造方法。
  4. 前記非重合性有機溶媒が芳香族炭化水素系溶媒である、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
  5. 前記(メタ)アクリル系樹脂が、アクリル系モノマーの重合体であって主鎖に環構造を有する樹脂である、請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
  6. 前記主鎖に環構造を有する樹脂が、マレイミド系重合体及び/又はラクトン環系重合体である、請求項5に記載の樹脂組成物の製造方法。
  7. 他の樹脂としてスチレン系樹脂を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
  8. (メタ)アクリル系樹脂と沸点70〜150℃の非重合性有機溶媒100〜1000ppmと紫外線吸収剤とを含有し、着色度YIが10.0以下であり、かつ、ガラス転移温度が110〜170℃であり、前記樹脂組成物1g中、長径20μm以上の異物数が100個以下である樹脂組成物。
  9. (メタ)アクリル系樹脂と沸点70〜150℃の非重合性有機溶媒100〜1000ppmとを含有し、紫外線吸収剤を含有しておらず、着色度YIが4.0以下であり、かつ、ガラス転移温度が110〜170℃であり、前記樹脂組成物1g中、長径20μm以上の異物数が100個以下である樹脂組成物。
  10. 前記(メタ)アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーの重合体であって主鎖に環構造を有する樹脂である、請求項8又は9に記載の樹脂組成物。
  11. 前記主鎖に環構造を有する樹脂が、マレイミド系重合体及び/又はラクトン環系重合体である、請求項10に記載の樹脂組成物。
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