以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得るものである。
尚、本明細書では、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸又はメタクリル酸を意味し、「主成分」とは50質量%以上含むことを意味し、「ppm」は特に断らない限り質量換算で求められる値を意味し、例えば、10,000ppmは1質量%を意味する。また、「重量」は「質量」と同義語として扱い、「重量%」は「質量%」と同義語として扱い、範囲を示す「A〜B」は、A以上B以下であることを示す。
本実施の形態に係る光学用フィルムは、ガラス転移温度が110℃以上200℃以下であるとともに、剪断速度が100(1/s)である場合における樹脂温度270℃での粘度が250Pa・s以上1000Pa・s以下である紫外線吸収性樹脂を含む光学用フィルムであって、きょう雑物の含有量が10個/m2以下である。
〔紫外線吸収性樹脂〕
本実施の形態において用いられる「紫外線吸収性樹脂」とは、紫外線吸収基を有する単量体を含む単量体成分を重合して得られる樹脂及びその誘導体である。
紫外線吸収基を有する単量体としてはベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾフェノン誘導体、トリアジン誘導体に重合性基を導入したものが好ましい。
上記紫外線吸収性単量体の具体例としては、2−〔2‘−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシ〕エチルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2‘−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシ〕フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2‘−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5‘−メタクリロイルオキシ〕フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収単量体;2,4−ジフェニル−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジン、2,4−ビス(2−メチルフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジン、2,4−ビス(2−メトキシフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジン、2,4−ビス(2−エチルフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジン、2,4−ビス(2−エトキシフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジン、2,4−ビス(2−メチルフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジン、2,4−ビス(2−メトキシフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジン、2,4−ビス(2−エチルフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジン、2,4−ビス(2−エトキシフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメトキシフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)−s−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジエトキシフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジエチルフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(11−アクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル〕−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(11−メタクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル〕4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(11−アクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル〕4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(11−メタクロイルオキシウンデシルオキシ)フェニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクロイルオキシエトキシ)フェニル〕−1,3,5−トリアジン等を挙げることができる。これらの紫外線吸収性単量体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記紫外線吸収性樹脂はベンゾトリアゾール構造を有する重合体であることが好ましい。尚、上記「ベンゾトリアゾール構造」とは、ベンゾトリアゾールにおける炭素及び窒素からなる分子骨格、つまりベンゾトリアゾールにおける水素以外の分子骨格を意味する。
上記紫外線吸収性樹脂は、紫外線遮断能を損なわない範囲で共重合可能なその他の単量体成分と共重合した構造単位を有していてもよい。共重合可能なその他の単量体成分としては、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル等のニトリル系単量体;酢酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸、メタクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシへキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、一般式(1)
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を示し、有機残基とは、具体的には、炭素数1〜20の直鎖状、枝分かれ鎖状、若しくは環状のアルキル基を示す)
で表される構造を有する化合物(単量体)等の水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、下記一般式(2)
(式中、R3は水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、−OAc基、−CN基、−CO−R4基、または−C−O−R5基を表し、Ac基はアセチル基を表し、R4およびR5は水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表し、有機残基とは、具体的には、炭素数1〜20の直鎖状、枝分かれ鎖状、若しくは環状のアルキル基を示す)
で表される構造を有する単量体等が挙げられる。これらのうち1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。これらの中でも、熱安定性に優れる点で(メタ)アクリル酸メチルが最も好ましい。
また、耐熱性の観点より、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド及びメチルマレイミド等のN−置換マレイミドが共重合されていてもよいし、分子鎖中(重合体中の主骨格中又は主鎖中ともいう)グルタル酸無水物構造及びグルタルイミド構造等が導入されていてもよい。
本実施の形態に係る紫外線吸収性樹脂に含まれる紫外線吸収性単量体構造単位の含有率は、下限は3質量%、上限は90質量%であることが好ましい。3質量%未満であると、紫外線遮断能をより充分に発揮することができない恐れがあり、90質量%を超えると、紫外線吸収性樹脂に黄変をきたす恐れがある。より好ましい下限は5質量%、上限は80質量%である。
上記紫外線吸収性樹脂としては、透明性、耐熱性、光学等方性が何れも高く、各種光学用途に応じた特性を十分に発揮できるため、(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体に、分子内環化反応によりラクトン環構造を導入した、ラクトン環構造を有する紫外線吸収性樹脂(以下、ラクトン環含有紫外線吸収性樹脂)であることが特に好ましい。
ラクトン環含有紫外線吸収性樹脂としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、下記一般式(3)で表されるラクトン環構造を有する樹脂であることが好ましい。
(式中、R6、R7、R8は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表し、有機残基とは、具体的には、炭素数1〜20の直鎖状、枝分かれ鎖状、若しくは環状のアルキル基を示し、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい)
ラクトン環含有紫外線吸収性樹脂構造中の、一般式(3)で表されるラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5質量%以上90質量%以下、より好ましくは10質量%以上70質量%以下、更に好ましくは10質量%以上60質量%以下、特に好ましくは10質量%以上50質量%以下である。
上記含有割合が5質量%よりも少ないと、耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が不十分になることがある。また、上記含有割合が90質量%よりも多いと、成形加工性に乏しくなることがある。
上述した本実施の形態に係る紫外線吸収性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1,000以上2,000,000以下の範囲内、より好ましくは5,000以上1,000,000以下の範囲内、更に好ましくは10,000以上500,000以下の範囲内、特に好ましくは50,000以上500,000以下の範囲内である。
〔紫外線吸収性樹脂の製造方法〕
上記紫外線吸収性樹脂を製造する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いて上記単量体組成物を重合すればよい。
重合温度、重合時間は、使用する単量体(単量体組成物)の種類、使用比率等によって異なるが、好ましくは、重合温度が0℃以上150℃以下の範囲内、重合時間が0.5時間以上20時間以下の範囲内であり、より好ましくは、重合温度が80℃以上140℃以下の範囲内、重合時間が1時間以上10時間以下の範囲内である。
溶剤を用いた重合形態の場合、重合溶剤は特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;等が挙げられ、これらの1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合反応時には、必要に応じて、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては特に限定されないが、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;等が挙げられ、これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量は、用いる単量体の組み合わせや反応条件等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。
重合を行う際には、反応液のゲル化を抑止するために、重合反応混合物中の生成した重合体の濃度が50質量%以下となるように制御することが好ましい。具体的には、重合反応混合物中の生成した重合体の濃度が50質量%を超える場合には、重合溶剤を重合反応混合物に適宜添加して50質量%以下となるように制御することが好ましい。重合反応混合物中の生成した重合体の濃度は、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。尚、重合反応混合物中の重合体の濃度があまりに低すぎると生産性が低下するため、重合反応混合物中の重合体の濃度は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。
重合反応によって得られた紫外線吸収性樹脂の色相は特に問わないが、透明であり黄変度が小さい方が紫外線吸収性樹脂の本来の特徴を損なわない為、好適である。上記紫外線吸収性樹脂は例えば3mm厚の成形体とした場合のヘイズ値が3以下、更に好ましくは2以下、最も好ましくは1以下である。また該成形体のYI(イエローインデックス)値が、10以下、好ましくは5以下である。
また、ラクトン環含有紫外線吸収性樹脂の製造方法は特に限定されるものではないが、好ましくは、上述した重合工程によって分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得た後に、当該重合体を加熱処理することによりラクトン環構造を重合体に導入するラクトン環縮合反応を行うことによって得ることができる。
分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する上記重合体は、例えば、紫外線吸収基を有する単量体を、上述した(メタ)アクリル酸エステル及び水酸基含有単量体と共重合させることにより得ることができる。
ラクトン環構造が重合体の分子鎖中(重合体の主骨格中)に形成されることにより、重合体に高い耐熱性が付与される。ラクトン環構造を導く環化縮合反応の反応率が不十分であると、耐熱性が十分に向上しなかったり、成形時の加熱処理によって成形途中に縮合反応が起こり、生じたアルコールが成形品中に泡やシルバーストリークとなって存在する恐れがあるため好ましくない。
上記重合体をラクトン環縮合反応を行うために加熱処理する方法については、特に限定されず、公知の方法が利用できる。例えば、重合工程によって得られた、溶剤を含む重合反応混合物を、そのまま加熱処理してもよい。また、溶剤の存在下で、必要に応じて閉環触媒を用いて加熱処理してもよい。また、揮発成分を除去するための真空装置あるいは脱揮装置を持つ加熱炉や反応装置、脱揮装置のある押出機等を用いて加熱処理を行うこともできる。
環化縮合反応を行う際に、上記重合体に加えて、他のアクリル系樹脂を共存させてもよい。また、環化縮合反応を行う際には、必要に応じて、環化縮合反応の触媒として一般に用いられるp−トルエンスルホン酸等のエステル化触媒又はエステル交換触媒を用いてもよいし、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸等の有機カルボン酸類を触媒として用いてもよい。特開昭61−254608号公報や特開昭61−261303号公報に示されている様に、塩基性化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩等を用いてもよい。
環化縮合反応を行う際には、有機リン化合物を触媒として用いることが好ましい。触媒として有機リン化合物を用いることにより、環化縮合反応率を向上させることができるとともに、得られるラクトン環含有重合体の着色を大幅に低減することができる。更に、有機リン化合物を触媒として用いることにより、後述の脱揮工程を併用する場合において起こり得る分子量低下を抑制することができ、優れた機械的強度を付与することができる。
環化縮合反応の際に触媒として用いることができる有機リン化合物としては、例えば、メチル亜ホスホン酸、エチル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸等のアルキル(アリール)亜ホスホン酸(但し、これらは、互変異性体であるアルキル(アリール)ホスフィン酸になっていてもよい)及びこれらのジエステルあるいはモノエステル;ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、フェニルエチルホスフィン酸等のジアルキル(アリール)ホスフィン酸及びこれらのエステル;メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、トリフルオルメチルホスホン酸、フェニルホスホン酸等のアルキル(アリール)ホスホン酸及びこれらのジエステルあるいはモノエステル;メチル亜ホスフィン酸、エチル亜ホスフィン酸、フェニル亜ホスフィン酸等のアルキル(アリール)亜ホスフィン酸及びこれらのエステル;亜リン酸メチル、亜リン酸エチル、亜リン酸フェニル、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル等の亜リン酸ジエステルあるいはモノエステルあるいはトリエステル;リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸イソデシル、リン酸ラウリル、リン酸ステアリル、リン酸イソステアリル、リン酸フェニル、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジ−2−エチルヘキシル、リン酸ジイソデシル、リン酸ジラウリル、リン酸ジステアリル、リン酸ジイソステアリル、リン酸ジフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリイソデシル、リン酸トリラウリル、リン酸トリステアリル、リン酸トリイソステアリル、リン酸トリフェニル等のリン酸ジエステルあるいはモノエステルあるいはトリエステル;メチルホスフィン、エチルホスフィン、フェニルホスフィン、ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のモノ、ジ若しくはトリアルキル(アリール)ホスフィン;メチルジクロロホスフィン、エチルジクロロホスフィン、フェニルジクロロホスフィン、ジメチルクロロホスフィン、ジエチルクロロホスフィン、ジフェニルクロロホスフィン等のアルキル(アリール)ハロゲンホスフィン;酸化メチルホスフィン、酸化エチルホスフィン、酸化フェニルホスフィン、酸化ジメチルホスフィン、酸化ジエチルホスフィン、酸化ジフェニルホスフィン、酸化トリメチルホスフィン、酸化トリエチルホスフィン、酸化トリフェニルホスフィン等の酸化モノ、ジ若しくはトリアルキル(アリール)ホスフィン;塩化テトラメチルホスホニウム、塩化テトラエチルホスホニウム、塩化テトラフェニルホスホニウム等のハロゲン化テトラアルキル(アリール)ホスホニウム;等が挙げられる。これらの中でも、触媒活性が高くて低着色性のため、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、亜リン酸ジエステルあるいはモノエステル、リン酸ジエステルあるいはモノエステル、アルキル(アリール)ホスホン酸が好ましく、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、亜リン酸ジエステルあるいはモノエステル、リン酸ジエステルあるいはモノエステルがより好ましく、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、リン酸ジエステルあるいはモノエステルが特に好ましい。これら有機リン化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
環化縮合反応の際に用いる触媒の使用量は、特に限定されないが、上記重合体に対して、好ましくは0.001〜5質量%の範囲内、より好ましくは0.01〜2.5質量%の範囲内、更に好ましくは0.01〜1質量%の範囲内、特に好ましくは0.05〜0.5質量%の範囲内である。触媒の使用量が0.001質量%未満であると、環化縮合反応の反応率の向上が十分に図れない恐れがあり、一方、5質量%を超えると、着色の原因となったり、重合体の架橋により溶融賦形しにくくなることがあるため、好ましくない。
触媒の添加時期は特に限定されず、反応初期に添加しても、反応途中に添加しても、それらの両方で添加してもよい。
環化縮合反応を溶剤の存在下で行い、且つ、環化縮合反応の際に、脱揮工程を併用することが好ましい。この場合、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態、及び、脱揮工程を環化縮合反応の過程全体にわたっては併用せずに過程の一部においてのみ併用する形態が挙げられる。脱揮工程を併用する方法では、縮合環化反応で副生するアルコールを強制的に脱揮させて除去するので、反応の平衡が生成側に有利となる。
脱揮工程とは、溶剤、残存単量体等の揮発分と、ラクトン環構造を導く環化縮合反応により副生したアルコールを、必要により減圧加熱条件下で、除去処理する工程をいう。この除去処理が不十分であると、生成した樹脂中の残存揮発分が多くなり、成形時の変質等によって着色したり、泡やシルバーストリーク等の成形不良が起こったりする問題等が生じる。
環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態の場合、使用する装置については特に限定されないが、本発明をより効果的に行うために、熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置やベント付き押出機、また、前記脱揮装置と前記押出機を直列に配置したものを用いることが好ましく、熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置又はベント付き押出機を用いることがより好ましい。
前記熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置を用いる場合の反応処理温度は、150〜350℃の範囲内が好ましく、200〜300℃の範囲内がより好ましい。反応処理温度が150℃より低いと、環化縮合反応が不十分となって残存揮発分が多くなる恐れがあり、350℃より高いと、着色や分解が起こる恐れがある。
前記熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置を用いる場合の、反応処理時の圧力は、931〜1.33hPa(700〜1mmHg)の範囲内が好ましく、798〜66.5hPa(600〜50mmHg)の範囲内がより好ましい。上記圧力が931hPaより高いと、アルコールを含めた揮発分が残存し易いという問題があり、1.33hPaより低いと、工業的な実施が困難になっていくという問題がある。
前記ベント付き押出機を用いる場合、ベントは1個でも複数個でもいずれでもよいが、複数個のベントを有する方が好ましい。
前記ベント付き押出機を用いる場合の反応処理温度は、150〜350℃の範囲内が好ましく、200〜300℃の範囲内がより好ましい。上記温度が150℃より低いと、環化縮合反応が不十分となって残存揮発分が多くなる恐れがあり、350℃より高いと、着色や分解が起こる恐れがある。
前記ベント付き押出機を用いる場合の、反応処理時の圧力は、931〜1.33hPa(700〜1mmHg)の範囲内が好ましく、798〜13.3hPa(600〜10mmHg)の範囲内がより好ましい。上記圧力が931hPaより高いと、アルコールを含めた揮発分が残存し易いという問題があり、1.33hPaより低いと、工業的な実施が困難になっていくという問題がある。
尚、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態の場合、後述するように、厳しい熱処理条件では得られるラクトン環含有重合体の物性が悪化する恐れがあるので、好ましくは、上述した脱アルコール反応の触媒を使用し、できるだけ温和な条件で、ベント付き押出機等を用いて行うことが好ましい。
また、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態の場合、好ましくは、重合工程で得られた重合体を溶剤とともに環化縮合反応装置系に導入するが、この場合、必要に応じて、もう一度ベント付き押出機等の上記反応装置系に通してもよい。
脱揮工程を環化縮合反応の過程全体にわたっては併用せずに、過程の一部においてのみ併用する形態を行ってもよい。例えば、重合体を製造した装置を、更に加熱し、必要に応じて脱揮工程を一部併用して、環化縮合反応を予めある程度進行させておき、その後に引き続いて脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行い、反応を完結させる形態である。
先に述べた環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態では、例えば、重合体を、2軸押出機を用いて、250℃近い、あるいはそれ以上の高温で熱処理する時に、熱履歴の違いにより環化縮合反応が起こる前に一部分解等が生じ、得られるラクトン環含有紫外線吸収性樹脂の物性が悪くなる恐れがある。そこで、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う前に、予め環化縮合反応をある程度進行させておくと、後半の反応条件を緩和でき、得られるラクトン環含有紫外線吸収性樹脂の物性の悪化を抑制できるので好ましい。
特に好ましい形態としては、脱揮工程を環化縮合反応の開始から時間をおいて開始する形態、すなわち、重合工程で得られた重合体の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基とをあらかじめ環化縮合反応させて環化縮合反応率をある程度上げておき、引き続き、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う形態が挙げられる。具体的には、例えば、予め釜型の反応器を用いて溶剤の存在下で環化縮合反応をある程度の反応率まで進行させておき、その後、脱揮装置の付いた反応器、例えば、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置や、ベント付き押出機等で、環化縮合反応を完結させる形態が好ましく挙げられる。特にこの形態の場合、環化縮合反応用の触媒が存在していることがより好ましい。
上述のように、重合工程で得られた重合体の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基とを予め環化縮合反応させて環化縮合反応率をある程度上げておき、引き続き、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う方法は、ラクトン環含有紫外線吸収性樹脂を得る上で好ましい形態である。この形態により、環化縮合反応率もより高まり、ガラス転移温度がより高く、耐熱性に優れたラクトン環含有紫外線吸収性樹脂が得られる。この場合、環化縮合反応率の目安としては、実施例に示すダイナミックTG測定における、150〜300℃間での質量減少率が2%以下であることが好ましく、より好ましくは1.5%以下であり、更に好ましくは1%以下である。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際に採用できる反応器は特に限定されないが、好ましくは、オートクレーブ、釜型反応器、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置等が挙げられ、更に、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応に好適なベント付き押出機も使用できる。より好ましくは、オートクレーブ、釜型反応器である。しかしながら、ベント付き押出機等の反応器を使用するときでも、ベント条件を温和にしたり、ベントをさせなかったり、温度条件やバレル条件、スクリュウ形状、スクリュウ運転条件等を調整することで、オートクレーブや釜型反応器での反応状態と同じ様な状態で環化縮合反応を行うことが可能である。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際には、好ましくは、重合工程で得られた重合体と溶剤とを含む混合物を、(i)触媒を添加して、加熱反応させる方法、(ii)無触媒で加熱反応させる方法、及び、前記(i)又は(ii)を加圧下で行う方法が挙げられる。
尚、ラクトン環化縮合工程において環化縮合反応に導入する「重合体と溶剤とを含む混合物」とは、重合工程で得られた重合反応混合物をそのまま使用してもよいし、一旦溶剤を除去したのちに環化縮合反応に適した溶剤を再添加してもよいことを意味する。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際に再添加できる溶剤としては、特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;クロロホルム、DMSO、テトラヒドロフラン等でもよいが、好ましくは、重合工程で用いることができる溶剤と同じ種類の溶剤である。
上記方法(i)で添加する触媒としては、一般に用いられるp−トルエンスルホン酸等のエステル化触媒又はエステル交換触媒、塩基性化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩等が挙げられるが、本実施の形態においては、前述の有機リン化合物を用いることが好ましい。
触媒の添加時期は特に限定されず、反応初期に添加しても、反応途中に添加しても、それらの両方で添加してもよい。添加する触媒の量は特に限定されないが、重合体の質量に対し、好ましくは0.001〜5質量%の範囲内、より好ましくは0.01〜2.5質量%の範囲内、更に好ましくは0.01〜0.1質量%の範囲内、特に好ましくは0.05〜0.5質量%の範囲内である。方法(i)の加熱温度と加熱時間とは特に限定されないが、加熱温度としては、好ましくは室温以上、より好ましくは50℃以上であり、加熱時間としては、好ましくは1〜20時間の範囲内、より好ましくは2〜10時間の範囲内である。加熱温度が低いと、あるいは、加熱時間が短いと、環化縮合反応率が低下するので好ましくない。また、加熱時間が長すぎると、樹脂の着色や分解が起こる場合があるので好ましくない。
上記方法(ii)としては、例えば、耐圧性の釜等を用いて、重合工程で得られた重合反応混合物をそのまま加熱する方法等が挙げられる。加熱温度としては、好ましくは100℃以上、更に好ましくは150℃以上である。加熱時間としては、好ましくは1〜20時間の範囲内、より好ましくは2〜10時間の範囲内である。加熱温度が低いと、あるいは、加熱時間が短いと、環化縮合反応率が低下するので好ましくない。また、加熱時間が長すぎると、樹脂の着色や分解が起こる場合があるので好ましくない。
上記方法(i)、(ii)ともに、条件によっては加圧下となっても何ら問題はない。また、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際には、溶剤の一部が反応中に自然に揮発しても何ら問題ではない。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の終了時、すなわち、脱揮工程開始直前における、ダイナミックTG測定における150〜300℃の間での質量減少率は、2%以下が好ましく、より好ましくは1.5%以下であり、更に好ましくは1%以下である。質量減少率が2%より高いと、続けて脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行っても、環化縮合反応率が十分高いレベルまで上がらず、得られるラクトン環含有紫外線吸収性樹脂の物性が低下する恐れがある。
〔光学用フィルム〕
本実施の形態に係る光学用フィルムは、ガラス転移温度が110℃以上200℃以下であるとともに、剪断速度が100(1/s)である場合における樹脂温度270℃での粘度が250Pa・s以上1,000Pa・s以下である紫外線吸収性樹脂を含む光学用フィルムであって、上記光学用フィルムは、きょう雑物の含有量が10個/m2以下である。
ガラスに成り得る物質は一般に、低温のガラス状態にあるときと高温の過冷却液体状態にあるときとで、物質に固有な狭い温度域を境にして、熱膨張係数や電気伝導度、粘度等の温度係数その他の物理量が急激に変化する。ガラス転移温度とは、この境の温度域をいい、ポリマー分子がミクロブラウン運動を始める温度のことである。
ガラス転移温度には各種の測定方法があるが、本明細書においては示差走査熱量計(DSC)によってASTM−D−3418に従って中点法で求めた温度と定義する。本実施の形態に係る光学用フィルムは、ガラス転移温度が110℃以上200℃以下の紫外線吸収性樹脂よりなる。
ガラス転移温度が200℃より高いと、溶融樹脂の流動性が悪くなるため、フィルムの成形が困難である。ガラス転移温度は、好ましくは115℃以上180℃以下であり、より好ましくは120℃以上160℃以下である。
上記紫外線吸収性樹脂は、剪断速度が100(1/s)である場合における樹脂温度270℃での粘度が250Pa・s以上1,000Pa・s以下であることを要する。尚、剪断速度とは、流体の流れが壁に沿っている場合に、壁面に垂直な方向の位置の違いに基づく流速変化をいう。剪断速度は、通常、壁面で最大値をとり、壁面から離れるほど小さくなる。尚、100(1/s)の剪断速度は、押出機で通常作用する速度の中心値である。
また、上記紫外線吸収性樹脂は、剪断速度が100(1/s)である場合において、樹脂温度が250℃である場合、粘度が300Pa・s以上2,000Pa・s以下であることが好ましい。
また、上記粘度を測定する方法としては特に限定されるものではなく、従来公知のレオメーター等を用いて測定することができる。
本実施の形態に係る光学用フィルムは、上記紫外線吸収性樹脂を含むが、本発明の効果を損なわない範囲で、上記紫外線吸収性樹脂以外の成分を含んでも構わない。紫外線吸収性樹脂以外の成分としては、紫外線吸収性樹脂以外の重合体(その他の重合体)や、その他の添加剤等を挙げることができる。
その他の重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル、塩化ビニル樹脂等の含ハロゲン系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系ポリマー;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムを配合したABS樹脂やASA樹脂等のゴム質重合体;等が挙げられる。スチレン―アクリロニトリル共重合体は紫外線吸収性樹脂との相溶性が良く、成形性が改善される等の効果のため、紫外線吸収性樹脂にスチレン―アクリロニトリル共重合体を含むのは好ましい形態である。
光学用フィルムにおける上記その他の重合体の含有割合は、好ましくは0質量%以上50質量%以下、より好ましくは0質量%以上40質量%以下、更に好ましくは0質量%以上30質量%以下、特に好ましくは0質量%以上20質量%以下である。
上記その他の添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、りん系、イオウ系等の酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;フェニルサリチレート、(2,2´−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒロドキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤等の帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機フィラーや無機フィラー;樹脂改質剤;有機充填剤や無機充填剤;可塑剤;滑剤;帯電防止剤;難燃剤;等が挙げられる。特に酸化防止剤として、同一分子内にアクリレート基とフェノール性水酸基とを有する構造のもの、例えばスミライザーGS(住友化学工業社製)を0.01から2質量%用いることは好ましい形態である。
光学用フィルムにおける上記その他の添加剤の含有割合は、好ましくは0質量%以上5質量%以下、より好ましくは0質量%以上2質量%以下、更に好ましくは0質量%以上0.5質量%以下である。
上記その他の重合体や添加剤は、フィルム形成前に予め紫外線吸収性樹脂と溶融混練しておくことが好ましい。
上記光学用フィルムは、きょう雑物の含有量が10個/m2以下である。尚、本明細書における「きょう雑物」とは、原料からフィルムの成形品を得るまでの間の全ての工程において混入する汚染物質、重合反応中に発生するゲルなどの副生物、フィルム成形中に生じるフィッシュアイ、及びフィルム成形時などにおける樹脂の劣化に起因する副生物などを含み、光学用フィルムになじまない性質を有する物質全般を意味する。きょう雑物としては、例えば、光学用フィルムの製造工程において、原料の溶融混練中に紫外線吸収性樹脂が部分的に過熱され、劣化することによって発生する炭化物(いわゆる「焼け異物」)等が挙げられる。
光学用フィルム中のきょう雑物の含有量は、例えば、JIS K6718に記載の外観の観察方法に準じた方法で測定することができる。具体的には、まず光学用フィルムを散乱光下において目視で外観検査し、次に、20μm以上のきょう雑物を倍率20〜100倍の顕微鏡下でカウントすることによって測定することができる。本実施の形態に係る光学用フィルムは、きょう雑物の含有量が10個/m2以下と非常に少ないので、ガラス転移温度や粘度等の物性に優れるとともに、外観にも優れた光学用フィルムとなる。
一実施形態において、本実施の形態に係る光学用フィルムは、揮発性有機物の含有量が1,000ppm以下であることが好ましく、600ppm以下であることが更に好ましい。揮発性有機物は、主に樹脂を押出機から大気中に押し出す際にダイスにいわゆる目ヤニとなって蓄積され、それがフィルム表面に不連続に転写されて外観を損なうため、できるだけ少ない方が好ましい。また、揮発性有機物は、光学用フィルムの保存時又は使用時においてブリードアウトし、光学用フィルムの外観を損なう恐れもあるため、できるだけ少ない方が好ましい。本実施形態の光学用フィルムは、揮発性有機物の含有量が上記のように少ないため、優れた外観を有する。
上記揮発性有機物は、原料である紫外線吸収性樹脂が一部分解劣化することにより発生し、紫外線吸収性樹脂のガラス転移温度プラス145℃以上の高い温度で成形する場合に発生しやすい。揮発性有機物としては例えば、メチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。揮発性有機物の含有量を測定する方法は特に限定されるものではない。例えば、ガスクロマトグラフィー等の従来公知の方法を用いて測定することができる。
本実施の形態に係る光学用フィルムは、溶融押出法、溶融キャスト法、カレンダー法、圧縮成形法等、の成形方法によって成形することが可能であるが、好ましくは本実施の形態に係る光学用フィルムの製造方法によって製造される。そこで、次に本実施の形態に係る光学用フィルムの製造方法について説明する。
〔光学用フィルムの製造方法〕
本実施の形態に係る光学用フィルムの製造方法は、バリアフライト型スクリュー又はミキシングセクション付きスクリューを備えた押出機を用い、当該押出機のシリンダ及びダイスの温度を、紫外線吸収性樹脂のガラス転移温度プラス145℃未満の温度に設定して、溶融押出法により紫外線吸収性樹脂を成形する方法である。
上記「バリアフライト型スクリュー」とは、シリンダ内に回転可能に配置され、シリンダ内に供給された固体状態の樹脂ペレットを、半溶融状態を経て溶融状態にして吐出するための主フライトが形成された熱可塑性樹脂混練スクリューであって、該主フライト間に形成される溝部分の少なくとも一部に、その溝部分を2分割する副フライトが形成されている。「バリアフライト型スクリュー」は別称として「ダブルフライト型スクリュー」、「ダムフライト型スクリュー」等の名称も使われるが、本明細書における「バリアフライト型スクリュー」は上記別称のスクリューも含むものとする。
図1は、バリアフライト型スクリューの一実施形態を示す側面図である。図1において、バリアフライト型スクリュー1は、主フライト2、副フライト3を有し、供給部4、溶融促進部5、計量部6より構成されている。主フライト2は、通常、ホッパーの真下になるところよりややスクリュー基端側寄りから、スクリューの溶融状態の樹脂が送り出される側の末端であるスクリュー先端に亘り螺旋状に連続して1本形成されており、副フライト3は、該主フライト2間に形成される溝部分の少なくとも一部に、その溝部分を2分割するように螺旋状に1本連続して形成されている。
バリアフライト型スクリュー1のL/D(Lは押出し機のシリンダ長さ、Dはシリンダ内径を表す)は、特に限定されるものではないが、充分な可塑化や混練状態を得るためには、10以上100以下であることが好ましく、20以上50以下が更に好ましく、25以上40以下が最も好ましい。L/Dが10以下であれば、十分な可塑化や混練状態が得られ難く、100以上であれば、樹脂に過度な剪断発熱が加わり、樹脂が分解する可能性がある。
供給部4は、原料の安定送りと予熱とを行うゾーンであり、原料形態により適切な溝深さが選択される。溶融促進部5は、主フライト2の間に主フライト2の外径より約1〜3mm径の小さい副フライト3を設けたゾーンである。溝の深さは、溶融樹脂に過度の剪断が加わらないように深溝となっており、樹脂温度を低く保つことができ、目的の温度にすることも容易である。また、ソリッド溝深さは漸減させており、その終了部においては、樹脂が閉塞しない程度まで浅くなっている。溶融促進部5の、L/Dは、特に限定されるものではないが、ノンベントスクリューでは約10〜15、ベントスクリューでは約5〜10程度であることが好ましい。
図3は、ミキシングセクション付きスクリューの一実施形態を示す側面図である。図3において、ミキシングセクション付きスクリューaは、主フライトb、ミキシングセクション部cを有し、供給部d、溶融促進部e、計量部fより構成されている。主フライトbは、通常、ホッパーの真下になる部分よりもややスクリュー基端側寄りから、ミキシングセクション開始部まで連続して1本形成されている。また、ミキシングセクション終了部(計量部fの先端部側)からスクリューの溶融状態の樹脂が送り出される側の末端であるスクリュー先端に亘り、螺旋状に連続して1本形成されている。尚、ミキシングセクションの構造によっては、ミキシングセクション部も含め、全体に連続して螺旋状のフライトが形成されていてもよい。
ミキシングセクション付きスクリューとは、完全可塑化溶融させるためのエレメントであるミキシングセクション部cをスクリューの一部として挿入したスクリューであり、樹脂はミキシングセクション部cで効率よくせん断されることによって分散混合される。図3において、ミキシングセクション部cは2点鎖線で描かれているが、上記の用途を有していれば特に限定されるものではない。ミキシングセクション部cのミキシングセクション機構の例として、ダルメージタイプ、フルーテッドタイプ、ピンタイプ、マドックタイプ、グレゴリータイプ、ユニメルトタイプ等が挙げられる。
ミキシングセクション付きスクリューのL/D、供給部、溶融促進部、溝深さ等は上記バリアフライト型スクリューと同様の構成であればよい。ミキシングセクション部cのL/Dは、特に限定されないが、1〜10程度であることが好ましい。また、バリアフライト型スクリューとミキシングセクション付きスクリューとの併用も可能である。
計量部6は、昇圧及び均質熟成ゾーンである。L/Dは4〜5程度であることが好ましい。尚、図1に例示したバリアフライト型スクリューを用いる場合において、押出機100に後述するベント部(揮発分除去手段)12を設置する場合は、ベント部(揮発分除去手段)12を、溶融促進部5の後部であって計量部6の前部に位置するように設置することが好ましい。
次に、本実施の形態に係る光学用フィルムの製造方法について、図2を参照しながら説明する。図2は、一実施形態における、バリアフライト型スクリューを備えた押出機の構成の概略を示す側面図である。図2において、押出機100は、バリアフライト型スクリュー1、シリンダ10、温調ユニット11、ベント部(揮発分除去手段)12、ホッパー13、ダイス14、ギアポンプ15、フィルター16を備えている。上記バリアフライト型スクリュー1に代えて、図3で示した、ミキシングセクション付きスクリューaを用いることも可能である。
押出機100を構成する上記部材の材質は特に限定されるものではなく、SCM系の鋼鉄、SUS等のステンレス材等を用いることができる。また、バリアフライト型スクリュー1、シリンダ10、ダイス14の表面には、クロム、ニッケル、チタン等のめっきが施されたもの、PVD(Physical Vapor Deposition)法等により、TiN,TiAlN,TiCN,CrN,DLC(ダイアモンド状カーボン)等の被膜が形成されたもの、タングステンカーバイト又はその他のセラミックが溶射されたもの、表面が窒化処理されたもの等を用いることが好ましい。このような表面処理は、樹脂との摩擦係数が小さいため、均一な樹脂の溶融状態が得られる点で好ましい。
バリアフライト型スクリュー1は、シリンダ10内で回転可能に構成されている。押出機100に供給される紫外線吸収性樹脂のペレットは、ホッパー13に投入する前、又はホッパー13中でTg以下の適切な温度で予備加熱されることが好ましい。樹脂を予備加熱することによって、成形温度を下げることができ、より安定した成形ができるとともに、きょう雑物の発生を防止することもできる。予備加熱温度が40℃より低いと、予備加熱する効果が見られない。また、予備加熱温度が樹脂Tgより高いと、樹脂ペレットがホッパー内で融着固化してしまう恐れがある。
また、樹脂中に含まれている水分や酸素、残モノマー、残溶剤等を除去することを目的として樹脂の乾燥を行うことが好ましく、先の予備加熱と合わせて、除湿式乾燥機、真空乾燥機、窒素等の不活性ガス循環式乾燥機を用いて乾燥することが好ましい。ホッパー13中で乾燥することも好ましい。
本実施の形態に係る方法においては、バリアフライト型スクリュー1が挿入されたシリンダ10内及びホッパー13内は、酸素のない状態として樹脂を加熱溶融することが好ましく、窒素ガス等の不活性ガスで置換することが好ましい。例えば、ホッパー13の下部へ窒素ガスを導入することにより行なわれる。酸素のない状態を保つことにより、フィルムにおけるきょう雑物の発生をより一層防止することができる。
ホッパー13からシリンダ10内に供給された紫外線吸収性樹脂のペレットは、バリアフライト型スクリュー1の回転によってシリンダ10の前方(図中左方向)に押し出されつつ固体状態から半溶融状態に変化し、更に半溶融状態から溶融状態へと変化する。尚、ホッパー13は、紫外線吸収性樹脂のブリッジを防止するため、水冷ジャケット等の冷却手段を備えていてもよい。また、これらは、ミキシングセクション付きスクリューにも適用できる。
この過程において、バリアフライト型スクリュー1が形成された領域では、完全に溶融した樹脂が、剪断を受けずに容易に、副フライト3の頂部とシリンダ10内壁との間隙を通って、副フライト3で2分割される溝のスクリュー先端側の溝に移送されていく。そして、この完全に溶融した樹脂と、剪断を受けて該スクリュー先端側の溝に押し出された未溶融樹脂とが混練されて該未溶融樹脂が溶融するため、焼け異物、フィッシュアイ等のきょう雑物、シルバーストリーク等のないフィルムを得ることができる。紫外線吸収性樹脂は、このような過程を経ることによって溶融混練されることになる。
また、ミキシングセクション付きスクリューを備えた場合では、ミキシングセクション部にて高いせん断を与えられることによって、完全に溶融した樹脂が分散混合され、溶融押出がなされるので、紫外線吸収性樹脂を(温度を高温に上げることなく)低い樹脂温度で均一な分散がなされ、十分な溶融混錬が行われ得る。この結果、バリアフライト型スクリューと同様の結果が得られる。
また、本実施の形態に係る光学用フィルムに、既に説明したその他の重合体やその他の添加剤を含有させる場合は、これらの重合体や添加剤を紫外線吸収性樹脂とともに溶融混練することが好ましい。
押出機100に必要とされる単位時間あたりの動力は、バリアフライト型スクリュー1を回転させるのに要する動力(kw)を単位時間あたりの押出し量(kg/hr)で除した値(kw・hr/kg)である。この数値が大きい程、効率良く可塑化できていることになる。この数値は、用いる紫外線吸収性樹脂の粘度や分子量、スクリュー1の回転数やシリンダ10の温度によって変化するが、好ましい範囲としては、0.1kw・hr/kg以上0.4kw・hr/kg以下である。上記数値が0.1kw・hr/kgより小さいと充分な可塑化が行われない場合があり、上記数値が0.4kw・hr/kgより大きいと、スクリューの回転による剪断発熱で、樹脂の分解が促進される場合があるため好ましくない。
押出機の軸数としては、特に限定されるものではなく、単軸押出機でも二軸押出機であってもよいが、二軸押出機を用いた場合は、可塑化や混練は行い易いものの、過度な剪断発熱が樹脂に加えられるため、単軸押出機の方が好ましい。
シリンダ10及びダイス14の温度は、紫外線吸収性樹脂のガラス転移温度プラス145℃未満とする必要があり、好ましくは220℃以上300℃以下であり、更に好ましくは240℃以上280℃以下であり、最も好ましくは250℃以上275℃以下である。また、ギアポンプ15及びフィルター16の温度も、シリンダ10及びダイス14の温度と同様に設定することが好ましい。
紫外線吸収性樹脂のガラス転移温度プラス145℃以上の温度では、原料の紫外線吸収性樹脂が一部分解劣化し、揮発性有機物を発生し易くなるため好ましくない。一方、220℃未満では樹脂の溶融粘度が高くなるため、必要以上の高い動力や可塑化に必要なL/Dが必要となり生産性に支障をきたす可能性がある。また、300℃を超えると樹脂が分解する可能性がある。
温調ユニット11は、シリンダ10、ダイス14、ギアポンプ15及びフィルター16の温度を調整するためのものである。温調ユニット11としては、空気冷却器、水冷却器、油冷却器等の冷却器と、電気加熱ヒーター等のヒーターとを組み合わせた従来公知の温調システムを用いることができ、温度は従来公知の温度制御モジュール等を用いて調整すればよい。尚、図2では温調ユニット11はシリンダ10、ダイス14、ギアポンプ15及びフィルター16の温度調整をするようになっているが、これに限られるものではなく、例えば、シリンダ10、ダイス14、ギアポンプ15及びフィルター16のそれぞれに対して別個の温調ユニットを設けてもよい。
ダイス14は、押出し成形を行う際、押出機から排出される紫外線吸収性樹脂を連続的に一定形状に賦形するために、押出機の出口に取り付けるものである。溶融混練された紫外線吸収性樹脂をダイス14に供給する前には、きょう雑物を高精度に除去するために、フィルター16を使用することが好ましい。フィルター16としては、ポリマーフィルターであることが好ましい。
上記ポリマーフィルターは、金属繊維を積層焼結したもので、3次元網目構造を有するものであることが好ましい。例えば、リーフディスクフィルター等を用いることができる。フィルター16は、目開きが25μm以下であることが好ましく、15μm以下であることが更に好ましい。
上記ポリマーフィルターとしては、濾過精度が1μm以上25μm以下の範囲内であることが好ましく、1μm以上15μm以下の範囲内であることがより好ましく、1μm以上10μm以下の範囲内であることが更に好ましい。濾過精度が1μm未満であると、濾過滞留時間が長くなり、生産効率が低下するため好ましくない。また、濾過滞留時間が長くなると、熱可塑性樹脂等が熱劣化し易くなるため、きょう雑物の増加を招く恐れがある。また、濾過精度が25μmを超えると、きょう雑物が混入し易くなるため好ましくない。
上記ポリマーフィルターは、上記範囲内の濾過精度を有するポリマーフィルターであれば特には限定されず、従来公知のポリマーフィルターを使用することができる。上記ポリマーフィルターとしては、例えば、リーフディスクタイプのポリマーフィルター、パックディスクフィルター、円筒型フィルター、キャンドル状フィルター等が挙げられる。これらの中では、濾過面積が広く、高粘度の樹脂を濾過した場合でも圧力損失が少ないため、リーフディスクタイプのポリマーフィルターがより好ましい。
上記ポリマーフィルターがリーフディスクタイプのポリマーフィルターである場合、フィルターとしては、金属繊維不織布を焼結した材料からなるもの、金属粉末を焼結した材料からなるもの、金網を数枚積層したもの等が挙げられる。これらの中では、金属繊維不織布を焼結した材料からなるものがより好ましい。
上記ポリマーフィルターにおける時間当たりの樹脂処理量に対する濾過面積は、押出し量に応じて適宜選択されるため、特には限定されず、例えば、0.001〜0.15m2/(kg/h)とすることができる。
上記ポリマーフィルターでの濾過において、ポリマーフィルター内部の温度はシリンダ及びダイスの温度と同じであることが好ましい。
押出機で溶融された紫外線吸収性樹脂をダイス14から吐出する方法としては特に限定されるものではなく、ギアポンプ15等の従来公知の装置を用いて行うことができる。ギアポンプ15は、押出量の変動を防ぎ、押出機出口からダイス14への圧力変動を減少させることに効果があり、フィルムの長手方向の厚みムラを防止することができる。ギアポンプ15を設置する位置は特に限定されるものではないが、図2に示すように、フィルター16よりもバリアフライト型スクリュー1(ミキシングセクション付きスクリューa)側にあることが好ましい。これによって、紫外線吸収性樹脂の吐出を円滑に行うことができる。
ダイス14から吐出された紫外線吸収性樹脂は、キャスティングドラム(図示せず)上で冷却固化させてフィルムとすることができる。ダイス14としては特に限定されるものではなく、従来公知のものを用いることができる。例えば、マニホールドダイ、フィッシュテールダイ、コートハンガーダイ等を用いることができる。
ダイス14から押出された溶融樹脂をキャスティングドラム上で冷却固化させる際に、キャスティングドラムとフィルムとを密着させる方法としては、静電ピニング法、タッチロール法、エアーナイフ法、エアノズル法、エアーチャンバー法、バキュームチャンバー法、スリーブ法等が挙げられ、目的とするフィルムの厚さより、最適な方法が選択される。
ダイス14から押し出されたフィルムを固化するための冷却ロール表面についても、シリンダ10、ダイス14の表面等と同様に、各種の表面処理が行われることが好ましい。これらの表面処理は、押出フィルムのロール表面への密着を防いでフィルムの厚み斑発生を防ぐとともに、冷却ロール表面精度を高くし、表面硬度が高いために傷等が付き難く、連続してフィルムの製造を行っても安定してフィルム表面精度を保ち、かつ厚み斑がないフィルムを製造できる点で好ましい。
上記フィルムは、延伸することによって延伸フィルムとしてもよい。延伸する方法には特に制限はなく、従来公知の延伸方法、例えば、ロール間の周速差を利用してフィルムの長手方向に延伸する縦延伸、フィルムの両端をテンタークリップ等で把持してフィルムの幅方向に延伸する横延伸、これらを組み合わせる逐次二軸延伸等の方法を用いることができる。その場合、縦延伸及び横延伸は一段のみであってもよいし、二段以上の多段延伸を行ってもよい。また、縦、横を同時に延伸する同時二軸延伸を用いることもできる。
延伸温度としては、紫外線吸収性樹脂のガラス転移温度として−5℃以上50℃以下であることが好ましく、0℃以上40℃以下であることがより好ましく、5℃以上30℃以下であることが更に好ましい。また、延伸倍率としては、1.1倍以上5倍以下であることが好ましく、1.2倍以上3.5倍以下であることがより好ましく、1.5倍以上2.5倍以下であることが更に好ましい。
ベント部(揮発分除去手段)12は、減圧下で、紫外線吸収性樹脂の溶融混練に伴って発生したシリンダ10内に発生した揮発性有機物や水分等の分解ガスを効果的に吸引除去することができる。ベント部(揮発分除去手段)12の減圧度としては、0.13hPa以上931hPa以下(0.1mmHg以上700mmHg以下)の範囲が好ましく、1.3hPa以上798hPa以下(1mmHg以上600mmHg以下)の範囲がより好ましい。上記圧力が931hPaより高いと、溶融樹脂中の残存揮発分や樹脂分解により発生する単量体成分等が残存し易い。また0.13hPaより低いと、工業的な実施が困難になっていくという問題がある。
ベント部(揮発分除去手段)12を設置する位置は特に限定されるものではないが、溶融混練中に発生した分解ガスを効果的に除去するため、樹脂の溶融が完結する位置以降の位置であることが好ましい。図2においては、ベント部(揮発分除去手段)12は、図1において説明した、溶融促進部5の後部であって計量部6の前部に位置するように設置されている。また、ベント部(揮発分除去手段)12の数も特に限定されるものではなく、1個でも複数個であってもよい。尚、環化縮合反応の項で説明した「ベント付き押出機」におけるベントも、上記ベント部(揮発分除去手段)12と同様の作用を行うものである。
揮発性有機物は、ダイス14より大気中に押し出される際に、急激に圧力から解放されるために、ダイス14に付着し、いわゆる目ヤニを生成する。この目ヤニは、フィルム表面に不連続に転写され、フィルムの外観を損なう。押出機100がベント部(揮発分除去手段)12を備えることにより、揮発性有機物等の分解ガスを効果的に除去することができるので、より外観の優れた光学用フィルムを製造することができる。
本明細書における「光学用フィルム」には、フィルム状のものもシート状のものも含まれるものとする。上記光学用フィルムの膜厚は、特に限定されるものではないが、1μm以上10mm以下であることが好ましく、5μm以上500μm未満であることがより好ましく、10μm以上200μm未満であることが更に好ましい。膜厚が1μmよりも薄い光学用フィルムは強度に乏しいため好ましくないし、延伸を行う場合に破断等が起こり易い。一方、膜厚が10mmよりも厚い場合は、成形が困難であるため好ましくない。
尚、本発明は以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、以下、便宜上、「質量部」を単に「部」と、「リットル」を単に「L」と記すことがある。
<重合反応率、重合体組成分析>
重合反応時の反応率及び重合体中の特定単量体単位の含有率は、得られた重合反応混合物中の未反応単量体の量をガスクロマトグラフィー(島津製作所社製、装置名:GC17A)を用いて測定して求めた。
<ダイナミックTG>
重合体(若しくは重合体溶液あるいはペレット)を一旦テトラヒドロフランに溶解若しくは希釈し、過剰のヘキサン若しくはメタノールへ投入して再沈殿を行い、取り出した沈殿物を真空乾燥(1mmHg(1.33hPa)、80℃、3時間以上)することによって揮発成分等を除去し、得られた白色固形状の樹脂を以下の方法(ダイナミックTG法)で分析した。
測定装置:Thermo Plus2 TG−8120 Dynamic TG((株)リガク社製)
測定条件:試料量 5〜10mg
昇温速度:10℃/min
雰囲気:窒素フロー 200ml/min
方法:階段状等温制御法(60℃〜500℃の間で質量減少速度値0.005%/sec以下で制御)
<脱アルコール反応率とラクトン環構造の占める割合>
まず重合で得られた重合体組成から、全ての水酸基がメタノールとして脱アルコールした際に起こる質量減少量を基準にし、ダイナミックTG測定において質量減少が始まる前の150℃から重合体の分解が始める前の300℃までの脱アルコール反応による質量減少から、脱アルコール反応率を求めた。
すなわち、ラクトン環構造を有した重合体のダイナミックTG測定において、150℃から300℃までの間の質量減少率の測定を行い、得られた実測質量減少率を(X)とする。他方、当該重合体の組成から、その重合体組成に含まれる全ての水酸基がラクトン環の形成に関与するためアルコールになり、脱アルコールすると仮定した時の理論質量減少率(すなわち、その組成上において100%脱アルコール反応が起きたと仮定して算出した質量減少率)を(Y)とする。尚、理論質量減少率(Y)は、より具体的には、重合体中の脱アルコール反応に関与する構造(水酸基)を有する原料単量体のモル比、すなわち、当該重合体組成における前記原料単量体の含有率から算出することができる。これらの値(X,Y)を脱アルコール計算式:
1−(実測質量減少率(X)/理論質量減少率(Y))
に代入してその値を求め、%で表記すると脱アルコール反応率が得られる。
例として、後述の製造例1で得られるペレットにおいて、ラクトン環構造の占める割合を計算する。この重合体の理論質量減少率(Y)を求めてみると、メタノールの分子量は32であり、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの分子量は116であり、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの重合体中の含有率(質量比)は組成上15.0質量%であるから、(32/116)×15.0≒4.14%となる。
他方、ダイナミックTG測定による実測質量減少率(X)は0.11質量%であった。これらの値を上記の脱アルコール計算式に当てはめると、1−(0.11/4.14)≒0.973となるので、脱アルコール反応率は97.3%である。
そして、この脱アルコール反応率の分だけ所定のラクトン環化が行われたものとして、ラクトン環化に関する構造(ヒドロキシ基)を有する原料単量体の当該共重合組成における含有率(質量比)に、脱アルコール反応率を乗じ、ラクトン環単位の構造の含有割合を算出することができる。
後述の製造例1の場合、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの当該共重合体における含有率が15.0質量%、算出した脱アルコール反応率が97.3質量%、分子量が116の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルがメタクリル酸メチルと縮合した場合に生成するラクトン環化構造単位の式量が170であることから、当該共重合体中におけるラクトン環の含有割合は21.4(=15.0×0.973×170/116)質量%となる。
<重量平均分子量>
重合体の重量平均分子量は、GPC(東ソー社製GPCシステム)のポリスチレン換算により求めた。展開液はクロロホルムを用いた。
<樹脂の熱分析>
紫外線吸収性樹脂の熱分析は、試料約10mg、昇温速度10℃/min、窒素フロー50cc/minの条件で、DSC((株)リガク社製、装置名:DSC−8230)を用いて行った。尚、ガラス転移温度(Tg)は、ASTM−D−3418に従い、中点法で求めた。
<メルトフローレート>
メルトフローレートは、JIS−K7210に基づき、試験温度240℃、荷重10kgで測定した。
<溶融粘度>
十分に乾燥した紫外線吸収性樹脂のペレットの溶融粘度を、ボーリンインストルメンツ社製キャピラリーレオメーターRH10を用いて測定した。
<光学用フィルム中のMMA残揮成分の定量>
フィルムをジメチルアセトアミドに溶解して10質量%溶液を作製し、炭酸ジフェニルを内部標準物質としてガスクロマトグラフィーにて定量した。
<b値>
光学用フィルムのb値を、(日本電色社製色差計ND−1001DP)を用いて測定した。
b値とは、JIS Z8729に基づく色相の表示でb*の値を示すものであり、光学用フィルムを標準白色板に重ねることによって測定した10箇所の平均値として求めた。
<光線透過率>
分光光度計(島津製作所社製、装置名:UV−3100)を用いて380nmの透過率を測定した。
〔製造例1〕
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した容積1m3の反応釜に、132.6kgのメタクリル酸メチル(MMA)、25.5kgの2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、11.9kgのRUVA−93(ベンゾトリアゾール基を有するモノマー;大塚化学社製)、166kgのトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温した。還流開始後、重合開始剤として187gのターシャリーアミルパーオキシイソノナノエート(アトフィナ吉富製、商品名:ルパゾール570)を添加すると同時に、374gの重合開始剤と3.6kgのトルエンとからなる溶液を2時間かけて滴下しながら、還流下(約105〜110℃)で溶液重合を行い、更に4時間かけて熟成を行った。
得られた重合体溶液に、170gのリン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物(堺化学製、商品名:Phoslex A−18)を加え、還流下(約90〜110℃)で5時間、環化縮合反応を行った。次いで、上記環化縮合反応で得られた重合体溶液を、バレル温度250℃、回転数150rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個、フォアベント数4個のベントタイプスクリュー二軸押出し機(φ=42mm、L/D=42)に、樹脂量換算で13kg/時間の処理速度で導入し、該押出し機内で環化縮合反応と脱揮を行い、押出すことにより、透明なペレットを得た。
上記処理の際に、第3フォアベントと第2フォアベントとの中間から、高圧ポンプを用いてオクチル酸亜鉛(ニッカオクチクス亜鉛:日本化学産業社製)と、スミライザーGS(住友化学工業社製)とのトルエン溶液を、得られる樹脂に対してオクチル酸亜鉛が850ppm、スミライザーGSが5,000ppmとなるように高圧ポンプを用いて注入した。
得られたペレットをダイナミックTGで測定したところ0.11質量%の質量減少を検知した。また、このラクトン環含有紫外線吸収性樹脂は質量平均分子量が147,000、メルトフローレートが11.0g/10min、ガラス転移温度が124℃、また270℃、せん断速度100(1/s)における粘度は440Pa・sであった。
次いでφ50mm、多条フライト構造のミキシング部を有するフルフライト型スクリューからなるL/D=36の単軸押出し機を用い、上記のラクトン環含有紫外線吸収性樹脂ペレット90部、AS樹脂(旭化成ケミカルズ社製スタイラックAS783)10部をシリンダ設定温度260℃にて50kg/hの処理速度で溶融押出しを行い、ペレット(1A)を作製した。
〔製造例2〕
液下槽及び攪拌装置を備えた100Lのステンレス製重合槽に、メタクリル酸メチル39.0部、N−フェニルマレイミド5部、スチレン0.5部、RUVA-93(大塚化学社製)3.5部、トルエン50部、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン0.06部を仕込み、100rpmで攪拌しながら、窒素ガスを10分間バブリングした後、窒素雰囲気下で昇温を開始した。
重合槽内の温度が100℃に達した時点で、重合槽内にt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.075部を加え、同時に、液下槽にて窒素ガスをバブリングした、スチレン2部とt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.075部との混合液を、5時間かけて等速添加し始めた。そして、重合温度105〜110℃、還流下で15時間、重合反応を行った。
その後、得られた重合液に対して、リン系酸化防止剤として、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファネナントレン−10−オキシド(三光株式会社製、商品名「HCA」)を0.1質量%、酸化防止剤としてスミライザーGS(住友化学工業社製)を0.75質量%、添加混合した。
次いで、得られた重合液をシリンダ温度240℃にコントロールした、ベント付き、φ30mmの2軸押し出し機に供給し、ベント口より真空脱気し、押し出されたストランドをペレット化して、紫外線吸収性樹脂ペレット(B)を得た。
得られた紫外線吸収性樹脂ペレット(B)は、質量平均分子量が100,000、メルトフローレートが15g/10min、ガラス転移温度が130℃、また、270℃、せん断速度100(1/s)における粘度が385Pa・sであった。
〔実施例1〕
上記製造例1で得られたペレット(1A)を、φ65mm、L/D=32、バリアフライト型スクリューを有するベント付き単軸押出機に仕込んだ。ペレット(1A)の温度は、ホッパーに加温した除湿空気を送風することにより、60℃前後にした。また、ホッパー下部に窒素導入管を設けて、押出機内に窒素ガスを導入した。ベント口から13hPa(10mmHg)にて吸引を行いながら、バリアフライト型スクリューにて溶融混練した。溶融混練後、ペレット(1A)は、ギアポンプを用いて、ろ過面積0.75m2、ろ過精度5μmのリーフディスクフィルターに通し、幅700mmのTダイより、90℃の冷却ロール上にフィルムを成形した。シリンダ、ギアポンプ、フィルター、Tダイの温度は、260℃に設定した。得られた光学用フィルムの膜厚は90μmであった。単位時間当たりの押出量は33kg/hrとし、3時間連続して成形したが、Tダイのリップにいわゆる目ヤニは見られなかった。
得られた光学用フィルムに含まれるMMAは530ppmであった。原料であるラクトン環含有紫外線吸収性樹脂中に含まれるMMAは500ppmであり、フィルム成形においてほとんど増加は見られなかった。従って、光学用フィルムの製造中に分解劣化は起こっていないことがわかる。また、フィルムの外観も良好であった。具体的には、b値が0.8であり、きょう雑物の含有量が4個/m2であった。380nmの光線透過率は0.3%であった。
〔実施例2〕
製造例2で得られたペレット(B)を、φ65mm、L/D=32、ユニメルトスクリューを有するベント付き単軸押出機に仕込んだ。ペレット(B)の温度は、ホッパーに加温した除湿空気を送風することにより、60℃に加温した。また、ポッパー下部に窒素導入管を設けて、押出機内に窒素ガスを導入した。
ベント口から13hPa(10mmHg)にて吸引を行いながら、ペレット(B)をユニメルトスクリューにて溶融混錬した。溶融混錬後、ペレット(B)に対しギアポンプを用いて、ろ過面積0.75m2、ろ過精度5μmのリーフディスクフィルターに通し、幅600mmのTダイより、90℃の冷却ロール上にフィルムを形成した。シリンダ、ギアポンプ、フィルター及びTダイの温度を260℃に設定した。得られた光学用フィルムの膜厚は100μmであった。単位時間当たりの押出量は283kg/hrとし、3時間連続して形成を行ったが、Tダイのリップにいわゆる目ヤニは見られなかった。
得られた光学用フィルムに含まれるMMAは480ppmであった。原料である紫外線吸収性樹脂に含まれるMMAは450ppmであり、フィルム形成においてほとんど増加は見られなかった。従って、光学用フィルムの製造中に分解劣化は起こっていないことがわかる。また、フィルムの外観も良好であった。具体的には、b値が1.5であり、きょう雑物の含有量が8個/m2であった。
〔比較例1〕
上記製造例1で得られたペレット(1A)を、φ90mm、L/D=33、バリアフライト型スクリューを有するベント付き単軸押出機に仕込んだ。また、ホッパー下部に窒素導入管を設けて、押出機内に窒素ガスを導入した。ベント口から13hPa(10mmHg)にて吸引を行いながら、バリアフライト型スクリューにて溶融混練した。溶融混練後、ペレット(1A)は、ギアポンプを用いて、ろ過面積1.2m2、ろ過精度5μmのリーフディスクフィルターに通し、幅1200mmのTダイより、95℃の冷却ロール上にフィルムを成形した。
シリンダ、ギアポンプの温度は275℃に設定し、フィルター及びTダイの温度は、280℃に設定して、単位時間当たりの押出量は76kg/hrとした。
得られた光学用フィルムに含まれるMMAは740ppmであり、b値は1.63であった。また、光学用フィルムのきょう雑物の含有量は88個/m2であった。