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JP6664138B2 - 制御方法、及びロボット装置 - Google Patents

制御方法、及びロボット装置 Download PDF

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Description

本発明は、モータに接続された減速機を介して移動部材を制御する制御方法、及びロボット装置に関する。
近年、種々の作業を人間の代わりに行うロボットの開発が進められている。ロボットによって人間の手のように精密で高速な作業を実現させるためには、ロボット動作の高精度化と高速化を両立させることが求められる。このようなロボットにあっては、関節駆動を行うための動力源としてモータが用いられているが、モータの推力を増大したり、回転運動を直動運動に変換したりするため、減速機やボールねじ等の伝達機構を用いるものが多い。
しかし、伝達機構には高精度化を妨げる要因がある。例えば、ねじれ、減速機の歯のかみ合いによる角度誤差、バックラッシ、摩擦、小部品の微小振動、ボールねじの変形による角度誤差、ネジ共振、ロストモーション等である。そのためモータを精密に駆動しても、上記の要因によりロボット動作の精度低下を招いている。
また、伝達機構はロボットのフレームに代表される構造体と比較すると柔らかいため、ねじれが生じ、弾性体のようにふるまう。このため、伝達機構に接続された移動制御対象(移動部材)は、モータに対して単振動することとなり、これによっても精度低下を招く。さらに、モータに単振動の反力が作用し、モータの位置をずらし、さらに精度が失われることとなる。
一般に、例えばロボットの関節などのモータを制御する方式としては、セミクローズド制御(例えば特許文献1参照)とフルクローズド制御(例えば特許文献2,3参照)とがある。セミクローズド制御とは、モータの出力軸(出力部材)の位置を検出し、その検出結果をモータの位置指令にフィードバックする方式である。また、フルクローズド制御とは、モータから減速機等の伝達機構を介して移動駆動される移動部材の位置を検出し、その検出結果をモータの位置指令にフィードバックする方式である。一般的には、セミクローズド制御は、動作速度が早いが位置精度に欠け、反対にフルクローズド制御は、位置精度が高精度であるが動作速度が遅くなり、精密さと俊敏さがトレードオフの関係にあると言える。
セミクローズド制御にあっては、反作用力に対抗する推力を出力し、モータの位置ずれを防ぐことが可能であるように思われる。しかし、モータが反作用力に対抗する推力を出力しつづけ、位置ずれしないとフィードバックすることができないので、結果的に単振動が収まらず持続してしまう。一度生じた単振動が持続してしまうと、動作中にあって伝達機構にねじれが発生するたびに生じる単振動が増幅され、メカ共振ともなり得る。
このため、セミクローズド制御であっても動作速度(ゲイン)を上げると、伝達機構の弾性力の反作用によるモータの位置ずれを防ぐことはできない。伝達機構の弾性力の反作用による動力源の位置ずれを防ぐためには、セミクローズド制御であっても動作速度(ゲイン)を下げて、単振動が生じないようにモータを駆動制御する必要がある。
そこで、特許文献1のセミクローズド制御にあっては、伝達機構の機械的剛性を考慮した運動方程式を予め準備し、その演算結果をセミクローズド制御の指令値に加算するものが提案されている。これにより、精密さと俊敏さとの両立を図ろうとしている。
一方、特許文献2のフルクローズド制御にあっては、移動部材の位置をセンサで検出し、目標値から減算し、位置の差に従ってモータの位置を補正し、移動部材の位置を目標値に倣わせるものが提案されている。また、特許文献3のフルクローズド制御にあっては、振動を示す移動部材の位置とモータの位置との差を求め、それにねじり剛性を加味してトルク値を算出し、これがトルク目標値に合致するように制御するものが提案されている。
特開昭61−201304号公報 特開平7−225615号公報 特開2011−176913号公報
上記特許文献1のセミクローズド制御では、セミクローズド制御の特徴を生かした高速動作は可能であるが、温度変動や経時変化する伝達誤差を予め予測することは困難であり、要求される精度を満たすことは困難であるという問題がある。
一方、特許文献2のフルクローズド制御では、振動現象を計測できないため、動作速度(モータの補正のゲイン)を上げると発振してしまうという問題がある。このため、特許文献2のフルクローズド制御では、動作速度(位置修正)も遅鈍となるという問題がある。
フルクローズド制御で速度を向上する目的で考えられたのが特許文献3のフルクローズド制御である。特許文献3のフルクローズド制御では、位置修正が遅鈍となる主要因を廃した構成となっているため、ロボットの動作として、精密さと俊敏さを両立できると考えられていた。しかし、フルクローズド制御は、セミクローズド制御と比較して、センサとモータとの間に伝達機構が存在する点が異なり、伝達機構には、バックラッシ、摩擦、上述した単振動よりも周波数の高い固有振動等を有するという特徴がある。特許文献3のフルクローズド制御でも、伝達機構におけるバックラッシ、摩擦、上述した単振動よりも周波数の高い固有振動等のため、動作速度(モータの補正のゲイン)を上げると発振してしまうという問題があることが判明した。そのため、特許文献3のフルクローズド制御でも、高次の振動を加振してしまうためゲインを充分に上げられず、高速に駆動できないという課題がある。
そこで本発明は、俊敏にかつ精密に移動部材を制御することが可能な制御方法、及びロボット装置を提供することを目的とするものである。
本発明は、モータに接続された減速機を介して移動部材を制御するロボット装置の制御方法において、前記ロボット装置は、前記減速機を介して移動する前記移動部材にかかるトルクを計測するトルク計測手段と、前記モータの出力軸の位置を検出する第1の位置検出手段と、前記移動部材の位置を検出する第2の位置検出手段と、前記モータを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、第1のフィードバックとして、前記第1の位置検出手段の検出結果を前記モータの制御にフィードバックし、第2のフィードバックとして、前記トルク計測手段の検出結果を前記モータの制御にフィードバックし、
第3のフィードバックとして、前記第2の位置検出手段の検出結果を前記モータの制御にフィードバックし、
入力された前記移動部材の位置指令値に前記第2のフィードバックと前記第3のフィードバックを行い、前記第2のフィードバックと前記第3のフィードバックが行われた前記位置指令値に前記第1のフィードバックを行うことを特徴とする。
本発明によると、入力された移動部材の位置指令値に第2のフィードバックと第3のフィードバックを行い、第2のフィードバックと第3のフィードバックが行われた位置指令値に第1のフィードバックを行う。これにより、減速機を介して移動部材に伝達されるトルクを、入力されたトルク指令値に倣うようにすることができ、移動部材の動作を精密にできる。さらに、移動部材に発生したトルクには、温度変動や経時変化する伝達誤差の成分も含まれているので、伝達誤差も効果的に抑制できるフィードバック制御を実行することができる。
また、減速機の弾性力の反作用には、減速機におけるバックラッシ、摩擦、固有振動数等の影響による振動現象の成分が含まれているので、この振動現象を俊敏に抑制することができる。
このように減速機による振動現象及び伝達誤差を抑制しつつ動作速度を早くすることができるので、俊敏にかつ精密に移動部材を移動制御することを可能とすることができる。さらには、振動現象及び伝達誤差を効果的に抑制できるので、モータの補正のゲインを上げることもできて、さらに動作速度を上げることも可能となる。これにより、フルクローズド制御のように精密で、かつセミクローズド制御と同等な動作速度を可能とすることができる。
一軸ロボットシステムを示す全体概略図。 一軸ロボットシステムを模式的に示す模式図。 第1の実施の形態に係るコントローラの制御系を示すブロック図。 第1の実施の形態に係る制御を示すフローチャート。 一軸ロボットのトルク制御時の実験結果を示す図で、(a)は第1の実施の形態に係る制御による実験結果の図、(b)は比較例の制御による実験結果の図。 第2の実施の形態に係るコントローラの制御系を示すブロック図。 第3の実施の形態に係るコントローラの制御系を示すブロック図。 第3の実施の形態に係る制御を示すフローチャート。 第4の実施の形態に係るコントローラの制御系を示すブロック図。 第4の実施の形態に係る制御を示すフローチャート。 第5の実施の形態に係るコントローラの制御系を示すブロック図。 第5の実施の形態に係る制御を示すフローチャート。 一軸ロボットの位置制御時の実験結果を示す図で、(a)は第5の実施の形態に係る制御による実験結果の図、(b)は比較例の制御による実験結果の図。 二軸ロボットシステムを示す全体概略図。 二軸ロボットシステムにおける第6の実施の形態に係るコントローラの制御系を示すブロック図。 第7の実施の形態における関節の分解図。 第7の実施の形態における関節の概略図。 図17に示す関節の第1の変形例を示す概略図。 図17に示す関節の第2の変形例を示す概略図。 第8の実施の形態における関節の分解図。 第8の実施の形態における関節の概略図。
<第1の実施の形態>
以下、本発明に係る第1の実施の形態について図1乃至図5に沿って説明する。図1は、一軸ロボットシステムを示す全体図である。また、図2は、一軸ロボットシステムを模式的に示す模式図である。また、図3は、第1の実施の形態に係るコントローラの制御系を示すブロック図である。また、図4は、第1の実施の形態に係る制御を示すフローチャートである。そして、図5は、一軸ロボットのトルク制御時の実験結果を示す図で、(a)は第1の実施の形態に係る制御による実験結果の図、(b)は比較例の制御による実験結果の図である。なお、図1及び図2に示す一軸ロボットシステム1は、後述する第2〜第5の実施の形態においても略々構造が同じであるため、共通の図として用いているが、第1の実施の形態では、詳しくは後述する装置エンコーダ108を有していなくても良いものである。
図1に示すように、一軸ロボットシステム1は、1つの関節を有する一軸のロボットアーム(モータ駆動装置)100と、コントローラ(モータ駆動装置の制御装置)101と、教示用端末装置(ティーチングペンダント)102とを備えて構成されている。教示用端末装置102は、操作者がロボットアーム100を動作させるための指令をコントローラ101に与える装置であり、操作者が操作する各種スイッチ、レバー、表示パネルなどを有している。教示用端末装置102からは、ロボットアーム100の位置指令値として教示点情報が出力可能であり、また、ロボットアーム100の推力指令値として駆動トルク情報も出力可能である。
一方、一軸のロボットアーム100は、モータ103と、モータエンコーダ(モータ位置検出手段)104と、減速機(伝達機構)105と、アーム(移動部材)106とを有して構成されている。また、一軸のロボットアーム100は、さらに、推力計(推力検出手段)107と、装置エンコーダ(移動部材位置検出手段)108とを有して構成されている。一般的には、モータ103と減速機105とを組合せたものを、アーム106を移動駆動する関節と定義される。
モータ103は、コントローラ101に電気的に接続されており、コントローラ101から出力される電流値によって図示を省略した出力軸(出力部材)の回転状態が制御される。モータエンコーダ104は、モータ103の出力軸の回転位置を検出する。減速機105は、モータ103の出力軸に機械的に接続されており、モータ103の出力回転を減速してアーム106に伝達する。推力計107は、例えば歪みゲージなどから構成され、アーム106に伝達された該アーム106の推力を弾性部材で構成されるフレーム(減速機105の出力軸)の歪み(ねじれ)から検出する。装置エンコーダ108は、アーム106の回転位置を検出する。
コントローラ101は、いわゆるサーボ制御装置(コンピュータ)であり、CPU(演算部)201、ROM202、RAM203、HDD(ハードディスク)204、外部インタフェース205などを有している。外部インタフェース205からは、図2に示すように、教示用端末装置102からの指令値(位置指令値PLrefや推力指令値FLref)が入力可能となっている。さらに、外部インタフェース205からは、モータエンコーダ104からモータ103の角度であるモータ位置Pが入力可能(フィードバック入力可能)となっている。さらに、外部インタフェース205からは、推力計107からアーム106の推力Fが入力可能(フィードバック入力可能)となっている。さらに、外部インタフェース205からは、装置エンコーダ108からアーム106の角度である装置位置Pが入力可能(フィードバック入力可能)となっている。さらに、外部インタフェース205からは、モータ103に電流値Iが出力可能となっている。即ち、コントローラ101は、教示用端末装置102からの指令値の入力を元に、各種フィードバック制御を行い、モータ103に電流値による指令を出力する。
これらモータ103のモータ位置P、アーム106の推力F、アーム106の装置位置Pは、詳しくは図3に沿って後述するコントローラ101のCPU201により演算処理を行う各部によってフィードバック制御に用いられる。なお、図3に示す各部は、ROM202やHDD204等の記録媒体に記録されて格納された読み取り可能なプログラムが実行されることで機能する処理を、機能ブロックとして表わしたものである。勿論、これら機能ブロックで示す各部は、ソフトウェアの機能で達成するものだけでなく、ハードウェア構成(電子演算回路)によって達成してもよい。これらの入力から出力までの演算処理を図3に沿って以下に説明する。
図3に示す第1の実施の形態に係るコントローラ101は、モータ制御器310を有しており、このモータ制御器310には、推力制御部302、モータ制御部303、微分器(モータFF制御部)308が備えられている。推力制御部302は、教示用端末装置102から入力された推力指令値FLrefに基づきモータ103の位置指令値(以下、モータ位置指令値という)PMrefを生成する。この際、推力制御部302は、アーム106に発生した推力を検出する推力計107の検出結果である推力Fに応じたフィードバック制御(第2のフィードバック制御)を実行する。
微分器308は、推力制御部302により生成されたモータ位置指令値PMrefに応じて、モータ制御部303をフィードフォワード制御するフィードフォワード値を生成する。
そして、モータ制御部303は、モータ位置制御部304、モータ速度制御部305、電流制御部306を有しており、モータ位置指令値PMrefに基づきモータ103を制御する電流値Iを生成する。この際、モータ制御部303は、モータ103の回転位置を検出するモータエンコーダ104の検出結果であるモータ位置Pとモータ速度Vとに応じたフィードバック制御(第1のフィードバック制御)を実行する。
以下に、コントローラ101による制御について図3を参照しつつ図4のフローチャートに沿って説明する。まず、操作者が教示用端末装置102を操作することで教示用端末装置102から推力指令値FLrefが出力され、推力制御部302に入力される(S1)。次に、推力制御部302は、推力指令値FLrefに推力計107により検出される推力Fをフィードバックすることでモータ位置指令値PMrefを生成する(推力制御工程)(S2)。微分器308は、モータ位置指令値PMrefを1階微分してモータ速度FF指令値VMFFrefと、モータ位置指令値PMrefを2階微分して係数を乗じることでモータ推力FF指令値FMFFrefとを生成する(S3)。
モータ制御部303において、モータ位置制御部304は、モータ位置指令値PMrefにモータエンコーダ104により検出されるモータ位置Pをフィードバックし(フィードバック工程)、モータ速度指令値VMrefを生成する(S4)。次に、モータ速度制御部305は、モータ速度指令値VMrefにモータエンコーダ104からのモータ位置Pを微分したモータ速度Vをフィードバックしつつ(フィードバック工程)、モータ速度FF指令値VMFFrefをフィードフォワードする。これによりモータ速度制御部305は、モータ推力指令値FMrefを生成する(S5)。そして、電流制御部306は、モータ推力指令値FMrefにモータ推力FF指令値FMFFrefをフィードフォワードし、モータ103に出力する電流値Iを生成する(モータ制御工程)(S6)。
上記制御を制御周期毎に実行する。制御周期が短いほど計算精度が向上し振動を抑制できるが計算リソースを必要とする。
以上のように制御される一軸ロボットシステム1の実験結果を図5(a)に示す。横軸が時間[s]を、縦軸がトルク[Nm]を示している。駆動条件は、トルクを−30[Nm]〜30[Nm]、トルク増減時間を0.5[s]としたものである。推力指令値としてのトルク指令に対して、実験結果としてのアーム106のトルクも−30[Nm]〜30[Nm]まで駆動されていることが分かる。トルク指令に対して実験結果のアーム106のトルクが精度良くかつ俊敏に追従していることが分かる。
比較例として一般的なセミクローズド制御で駆動した場合の実験結果を図5(b)に示す。比較例としては、フルクローズド制御も考えられるが、制御帯域不足が原因でセミクローズド制御と比較して性能が落ちるため、今回は比較対象としてセミクローズド制御を挙げている。駆動条件は上記のものと同様であるが、本実施の形態の実験結果と比較すると、本実施の形態の実験結果の方が振動も少なく、誤差も5[Nm]程度少なく、本実施の形態の制御が優れていることが確認できる。
以上のように本実施の形態に係るコントローラ101の制御では、推力制御部302により、入力された推力指令値FLrefに対し、アーム106に発生した推力Fをフィードバック制御する。これにより、減速機105を介してアーム106に伝達される推力Fを、入力された推力指令値FLrefに倣うようにすることができ、アーム106の動作を精密にできる。さらに、アーム106に発生した推力Fには、温度変動や経時変化する伝達誤差の成分も含まれているので、伝達誤差も効果的に抑制できるフィードバック制御を実行することができる。
また、モータ制御部303は、推力制御部302が生成したモータ位置指令値PMrefに対し、モータ位置制御部304とモータ速度制御部305とにおいてモータ位置Pとモータ速度Vとをフィードバックする。これにより、一般的なセミクローズド制御のようにモータ位置Pをモータ位置指令値PMrefに対してフィードバックするよりも、モータ位置Pのフィードバック制御が外乱の影響を受けにくくなる。そして、モータ103に生じる減速機105の弾性力の反作用には、減速機105におけるバックラッシ、摩擦、固有振動数等の影響による振動現象の成分が含まれているが、この振動現象を俊敏に抑制することができる。
このように減速機105による振動現象及び伝達誤差を抑制しつつ動作速度を早くすることができるので、俊敏にかつ精密にアーム106を移動制御することを可能とすることができる。さらには、振動現象及び伝達誤差を効果的に抑制できるので、モータの補正のゲインを上げることもできて、さらに動作速度を上げることも可能となる。これにより、フルクローズド制御のように精密で、かつセミクローズド制御と同等な動作速度を可能とすることができる。
また、微分器308によりフィードフォワード制御を行うことで、振動現象が発散し難くなり、さらに応答性を向上することができる。なお、このフィードフォワード制御は、性能は低下するものの省略することも可能である。この場合、モータ速度FF指令値VMFFrefやモータ推力指令値FMrefをゼロとする。
なお、本実施の形態では、一軸のロボットアーム100を制御した場合を一例として説明したが、この構造に限られるものではない。本実施の形態では回転関節について説明したが、伝達機構を例えばラックアンドピニオン機構などで構成した伸縮関節であってもよい。さらには、伝達機構は、減速機でなく、増速する機構でもよい。
また、本実施の形態では、モータエンコーダ104の検出結果をモータ位置制御部304とモータ速度制御部305との両方にフィードバックしたものを説明したが、どちらか一方であっても構わず、その場合でもある程度の振動現象の抑制効果を得られる。また、モータエンコーダ104の検出結果を微分してモータ加速度Aを求め、電流制御部306にフィードバックするようにしてもよい。この場合でもある程度の振動現象の抑制効果を得られる。
<第2の実施の形態>
次に、上記第1の実施の形態を一部変更した第2の実施の形態について図6に沿って説明する。図6は、第2の実施の形態に係るコントローラの制御系を示すブロック図である。
上記第1の実施の形態においては、推力計107を用いてアーム106に伝達された推力Fを検出するものを説明したが、本第2の実施の形態では、その検出手法を変更したものである。即ち、本実施の形態のコントローラ101におけるモータ制御器310は、推力推定部(推力検出手段)318を有している。減速機105の剛性を含む関節剛性係数をKとすると、『F=(P−P)×K』の関係式が成り立つ。推力推定部318は、この数式にモータエンコーダ104で検出されるモータ位置Pと、装置エンコーダ108で検出される装置位置Pとを与えることで推定される推力Fを算出する。
本第2の実施の形態のように、モータ制御器310に推力推定部318を設けることで、推力計107を設置することを不要とすることができる。なお、推力Fは、装置エンコーダ108で検出される装置位置Pを2階微分した加速度にアーム106の重量を掛け合わせることで算出することも可能である。しかし、例えばアーム106の先端側にさらに関節を設けて多関節ロボットを構成した場合は、当該関節の駆動による加速度であるか他の関節の駆動による加速度であるか判別が難しいので、この手法は採用できないことになる。
<第3の実施の形態>
次に、上記第1の実施の形態を一部変更した第3の実施の形態について図7及び図8に沿って説明する。図7は、第3の実施の形態に係るコントローラの制御系を示すブロック図である。また、図8は、第3の実施の形態に係る制御を示すフローチャートである。
本第3の実施の形態においては、第1の実施の形態における微分器308の代わりに、モータ制御器310にモータ制御器理想モデル演算部(モータFF制御部)309を備えたものである。モータ制御器理想モデル演算部309は、モータ制御器をモデル化した理想モデルを有している。そのモータ制御器の理想モデルは、モータ103のイナーシャをモデル化したモータイナーシャ仮想モデルと、モータ103の通電制御を行う通電回路をモデル化した回路仮想モデルとからなる。モータ制御器理想モデル演算部309は、回路仮想モデルに所定の制御ゲインが設定されていると仮定し、モータ位置指令値PMrefが入力された場合に、モータ103に掛かるモデル演算を実行する。これにより、モータ制御器理想モデル演算部309は、モータ位置FF指令値PMFFref、モータ速度FF指令値VMFFref、モータ推力FF指令値FMFFrefを算出する機能を有する。
モータ位置FF指令値PMFFref、モータ速度FF指令値VMFFref、モータ推力FF指令値FMFFrefの演算式は、以下の通りである。
Figure 0006664138
このように構成されたコントローラ101の制御では、図8に示すように、第1の実施の形態における図4の制御に比して、ステップS3−2及びステップS4−2が変更される。具体的には、まず、ステップS1及びS2は、第1の実施の形態と同様に実行される。ステップS3−2において、モータ制御器理想モデル演算部309は、モータ制御器理想モデルから、モータ位置FF指令値PMFFref、モータ速度FF指令値VMFFref、モータ推力FF指令値FMFFrefを生成する。ステップS4−2において、モータ位置制御部304は、モータ位置FF指令値PMFFrefにモータエンコーダ104により検出されるモータ位置Pをフィードバックし、モータ速度指令値VMrefを生成する。その後は、第1の実施の形態と同様にステップS5及びS6が実行され、モータ103に出力する電流値Iを生成する。
上記制御を制御周期毎に実行する。制御周期が短いほど計算精度が向上し振動を抑制できるが計算リソースを必要とする。
なお、図7では図示を省略したが、装置オブザーバ部による外乱補正機能を追加するとなお良い。装置オブザーバ部は、モータ103の出力軸に働く外乱力Distを推定し、係数を掛けて外乱推力Fdを生成してモータ推力指令値FMrefに加算するものである。これにより、アーム106に作用する外乱をモータ103の推力に反映でき、モータ103の出力軸とアーム106との間の干渉トルクやその計算誤差、摩擦変動による位置精度劣化を防止でき、装置位置Pの精度が向上する。外乱力Distの演算式は、以下の通りである。
Figure 0006664138
このようにモータ制御器理想モデル演算部309により、モータ位置FF指令値PMFFref、モータ速度FF指令値VMFFref、モータ推力FF指令値FMFFrefをモータ制御器理想モデルから演算することで、振動現象を抑制することができる。
<第4の実施の形態>
次に、上記第3の実施の形態を一部変更した第4の実施の形態について図9及び図10に沿って説明する。図9は、第4の実施の形態に係るコントローラの制御系を示すブロック図である。また、図10は、第4の実施の形態に係る制御を示すフローチャートである。
本第4の実施の形態においては、第3の実施の形態に比して、コントローラ101に、動力学モデル演算部(動力学モデル制御部)320、推力伝達部物理特性部316を備えたものである。さらに、コントローラ101に、装置位置制御部(移動部材位置制御部)313及び装置速度制御部(移動部材速度制御部)314を有する装置制御器(駆動装置制御部)301を備えたものである。動力学モデル演算部320は、ロボットアーム100を動力学的にモデル化した動力学モデルを有している。動力学モデルは、アーム長さ、アーム重量、及び慣性乗積(ロボットアーム100のリンクパラメータ)からなるモデルである。動力学モデル演算部320は、教示用端末装置102から入力される位置指令値PLrefと、それを微分することで求まる速度指令値や加速度指令値を算出する。そして、それらの値に基づき動力学モデルによりアーム106の移動制御に必要な想定推力(動力学推力予測値)FLErefを算出する機能を有する。想定推力FLErefは、重力や粘性・摩擦なども考慮されて算出される。また、モータ制御器310に備えられた推力伝達部物理特性部(ねじれ量制御部)316は、想定推力FLErefを実現するねじれ量の予測値(以下、ねじれ量という)PTrefを事前に算出する。ねじれ量PTrefの算出は、次の一例として挙げる演算式により算出できる。
Figure 0006664138
装置制御器301は、装置位置制御部313と装置速度制御部314を有しており、教示用端末装置102から入力される位置指令値PLrefに基づき推力制御部302に入力する推力指令値FLrefを算出する。この際、装置制御器301は、アーム106の回転位置を検出する装置エンコーダ108の検出結果である装置位置(アーム位置)Pと装置速度(アーム速度)Vとに応じたフィードバック制御(第3のフィードバック制御)を実行する。
このように構成されたコントローラ101の制御では、図10に示すように、第3の実施の形態における図8の制御に比して、ステップS11からステップS16が追加され、ステップS3−3が変更される。まず、操作者が教示用端末装置102を操作することで教示用端末装置102から位置指令値PLrefが出力され、動力学モデル演算部320と装置位置制御部313に入力される(S11)。動力学モデル演算部320は、位置指令値PLrefに基づき動力学モデルから想定推力FLErefを生成する(S12)。推力伝達部物理特性部316は、想定推力FLErefを実現するねじれ量PTrefを生成する(S13)。
一方、装置位置制御部313は、位置指令値PLrefに装置エンコーダ108により検出される装置位置Pをフィードバックし、装置速度指令値VLrefを生成する(S14)。装置速度制御部314は、装置速度指令値VLrefに装置エンコーダ108により検出される装置位置Pを微分した装置速度Vをフィードバックし、推力指令値FLrefを生成する(S15)。推力制御部302は、推力指令値FLrefに想定推力FLErefをフィードフォワードしつつ推力計107により検出される推力Fをフィードバックし、モータ位置指令値PMrefを生成する(S16)。
そして、モータ制御器理想モデル演算部309は、まず、モータ位置指令値PMrefとねじれ量PTrefとを加算する。続いて、その加算した値に基づき、モータ制御器理想モデルから、モータ位置FF指令値PMFFref、モータ速度FF指令値VMFFref、モータ推力FF指令値FMFFrefを生成する(S3−3)。その後は、第3の実施の形態と同様にステップS4−2、S5、及びS6が実行され、モータ103に出力する電流値Iを生成する。
上記制御を制御周期毎に実行する。制御周期が短いほど計算精度が向上し振動を抑制できるが計算リソースを必要とする。
以上の第4の実施の形態においては、動力学モデル演算部320が追加されているため、位置指令値PLrefが入力されると想定推力FLErefが算出可能である。この想定推力FLErefに基づいて推力指令値FLrefを生成し、それに基づき電流値Iを生成するので、ロボットアーム100の動力学モデルに合うようにアーム106の位置が制御され、つまり緻密にかつ俊敏に制御される。
また、推力伝達部物理特性部316が追加されているため、想定推力FLErefを実現するねじれ量PTrefを事前に計算可能である。このねじれ量PTrefをモータ制御部303に入力して電流値Iに反映しているため、想定推力FLErefに対するアーム106の推力Fの応答性が向上する。これにより、位置指令値PLrefに対する装置位置Pの応答性も向上する。
そして、装置制御器301が追加されているため、装置位置Pと装置速度Vがフィードバック制御可能となる。これにより、想定推力FLErefにモデル化誤差・計算誤差等があり、装置位置Pが位置指令値PLrefからずれる場合であっても、装置位置Pが位置指令値PLrefに倣うようフィードバック制御することが可能となり、ずれ量を低減できる。
なお、本実施の形態では、動力学モデル演算部320、推力伝達部物理特性部316、及び装置制御器301の3つを全て備えているものを説明した。しかし、これら動力学モデル演算部320、推力伝達部物理特性部316、及び装置制御器301は、それぞれ独立した機能であるので、これらのうちの1つ又は2つを選択的に備えるだけでもよく、その場合も、それぞれの効果が得られる。
<第5の実施の形態>
次に、上記第4の実施の形態を一部変更した第5の実施の形態について図11乃至図13に沿って説明する。図11は、第5の実施の形態に係るコントローラの制御系を示すブロック図である。また、図12は、第5の実施の形態に係る制御を示すフローチャートである。図13は、一軸ロボットの位置制御時の実験結果を示す図で、(a)は第5の実施の形態に係る制御による実験結果の図、(b)は比較例の制御による実験結果の図である。
本第5の実施の形態においては、第4の実施の形態に比して、コントローラ101に、装置制御器理想モデル演算部(駆動装置FF制御部)307、及び装置オブザーバ部(監視制御部)317を備えたものである。装置制御器理想モデル演算部307は、アーム106の理想的な振る舞いを可能にするための装置制御器理想モデルを有している。装置制御器理想モデルは、ロボットアーム100全体の仮想モデルと、アーム106の位置及び速度制御を行う制御回路の仮想モデルからなる。装置制御器理想モデル演算部307は、装置制御器理想モデルにおける制御回路の仮想モデルに所定の制御ゲインが設定されていると仮定し、教示用端末装置102から位置指令値PLrefが入力された場合に、アーム106に掛かるモデル演算を実行する。これにより、装置制御器理想モデル演算部307は、装置位置FF指令値PLFFref、装置速度FF指令値VLFFref、装置推力FF指令値FLFFrefを算出する機能を有する。
装置位置FF指令値PLFFref、装置速度FF指令値VLFFref、装置推力FF指令値FLFFrefの演算式は、以下の通りである。
Figure 0006664138
また、装置オブザーバ部317は、モータ103の出力軸に働く外乱力Distを推定し、係数を掛けて外乱推力Fdを生成してモータ推力指令値FMrefにフィードバック(第4のフィードバック制御)するものである。外乱力Distは、装置速度Vの微分により求められる装置加速度Aと、推力Fに質量もしくは慣性二次モーメントを乗じて求められる想定装置加速度との差分を、質量もしくは慣性二次モーメントで除すことで求められる。
このように構成されたコントローラ101の制御では、図12に示すように、第4の実施の形態における図10の制御に比して、ステップS21,S22が追加され、ステップS14−2,S15−2,S16−2,S3−4が変更される。まず、操作者が教示用端末装置102を操作することで教示用端末装置102から位置指令値PLrefが出力され、動力学モデル演算部320と装置位置制御部313に入力される(S11)。動力学モデル演算部320は、位置指令値PLrefに基づき動力学モデルから想定推力FLErefを生成する(S12)。推力伝達部物理特性部316は、想定推力FLErefを実現するねじれ量PTrefを生成する(S13)。
一方、装置制御器理想モデル演算部307は、位置指令値PLrefに基づき、装置制御器理想モデルから、装置位置FF指令値PLFFref、装置速度FF指令値VLFFref、装置推力FF指令値FLFFrefを生成する(S21)。装置位置制御部313は、装置位置FF指令値PLFFrefに装置エンコーダ108により検出される装置位置Pをフィードバックし、装置速度指令値VLrefを生成する(S14−2)。装置速度制御部314は、装置速度指令値VLrefに装置速度FF指令値VLFFrefをフィードフォワードしつつ、装置エンコーダ108からの装置位置Pを微分した装置速度Vをフィードバックし、推力指令値FLrefを生成する(S15−2)。装置オブザーバ部317は、装置エンコーダ108により検出される装置位置Pから求まる装置速度Vと推力計107により検出される推力Fとから外乱推力Fdを生成する(S22)。推力制御部302は、推力指令値FLrefに装置推力FF指令値FLFFrefをフィードフォワードしつつ、推力Fをフィードバックし、さらに外乱推力Fdをフィードバックし、モータ位置指令値PMrefを生成する(S16−2)。
そして、モータ制御器理想モデル演算部309は、まず、モータ位置指令値PMrefとねじれ量PTrefと装置位置FF指令値PLFFrefとを加算する。続いて、その加算した値に基づき、モータ制御器理想モデルから、モータ位置FF指令値PMFFref、モータ速度FF指令値VMFFref、モータ推力FF指令値FMFFrefを生成する(S3−4)。その後は、第4の実施の形態と同様にステップS4−2、S5、及びS6が実行され、モータ103に出力する電流値Iを生成する。
上記制御を制御周期毎に実行する。制御周期が短いほど計算精度が向上し振動を抑制できるが計算リソースを必要とする。
以上の第5の実施の形態においては、装置制御器理想モデル演算部307が追加されている。そのため、装置位置FF指令値PLFFrefを実現する装置速度FF指令値VLFFref及び装置推力FF指令値FLFFrefがフィードフォワードされ、装置位置FF指令値PLFFrefの応答性が向上する。つまり装置制御器理想モデル演算部307の追加により応答性が向上する。しかし、例えば位置指令値PLrefをモータ位置指令値PMrefに加算するフィードフォワード制御を行うと、装置制御器301の目標値とモータ位置指令値PMrefにフィードフォワードされる値が一致しなくなり精度が劣化する課題がある。この課題に対し、モータ位置指令値PMrefに装置位置FF指令値PLFFrefを加算することで、装置制御器301の目標値とモータ位置指令値PMrefにフィードフォワードされる値が一致するため、精度低下が防止できる。
また、装置オブザーバ部317が追加されているため、モータ103の出力軸とアーム106との間の干渉トルクやその計算誤差、摩擦変動による位置精度劣化を防止でき、装置位置Pの精度を向上することができる。
以上のように制御される一軸ロボットシステム1の実験結果を図13(a)に示す。本実験は回転関節型のロボットアーム100を用いて実施されているため、位置の単位が[deg]で表現されている。図13(a)において、縦軸は、装置角度を示しており、横軸が時間[s]を示している。駆動条件は、移動量−50[deg]、移動時間0.5[s]である。上の図に示すように位置指令値PLrefにより0〜−50[deg]まで駆動された際、下の図に示すように位置偏差も最大で0.05[deg]と微小で、加減速時も偏差がほとんど生じていないことが分かる。
比較例として一般的なセミクローズド制御で駆動した場合の実験結果を図13(b)に示す。駆動条件は上記のものと同様であるが、本実施の形態の実験結果と比較すると、駆動条件が緩いにも拘らず加減速時の位置偏差が最大で0.3[deg]と大きいことが確認できる。つまり、本実施の形態では、加減速時の位置偏差が約1/6に改善されている。
このように本実施の形態に係る一軸ロボットシステム1において、予め与えられた複数の教示点列によって定まる経路に沿ってアーム106を動作させる制御を実行する。すると、一動作の開始点から終了点までの移動の間、モータ103の出力軸とアーム106との間(減速機105)の推力干渉によるロボットの振動を生じることなく、俊敏かつ精密に経路に追従させることができる。
<第6の実施の形態>
次に、上記第5の実施の形態を一部変更した第6の実施の形態について図14乃至図15に沿って説明する。図14は、二軸ロボットシステムを示す全体概略図である。また、図15は、二軸ロボットシステムにおける第6の実施の形態に係るコントローラの制御系を示すブロック図である。
図14に示すように、二軸ロボットシステム1は、図1に示す一軸ロボットシステム1におけるアーム106に、2つ目の関節と、その関節により駆動されるアーム116とを直列的に接続したものである。即ち、第6の実施の形態に係る二軸のロボットアーム(複軸モータ駆動装置)100は、モータ103と、モータエンコーダ104と、減速機105と、アーム106と、推力計107と、装置エンコーダ108とを有している。さらにロボットアーム100は、アーム106に支持されるモータ113と、モータエンコーダ114と、減速機115と、アーム116と、推力計117と、装置エンコーダ118とを有している。また、コントローラ101は、2つのモータ103,113に接続されている。
図15に示すように、コントローラ101は、大まかに、2つのモータ103,113に対応して、それぞれ装置制御器301A及びモータ制御器310Aと、装置制御器301B及びモータ制御器310Bとを有している。また、動力学モデル演算部(複軸動力学モデル制御部)320は、二軸のロボットアーム100全体を動力学的にモデル化した動力学モデルを有しており、1つに共通化されている。即ち、動力学モデル演算部320は、1つの動力学モデルで2つのアーム106,116の移動制御に必要な想定推力FLEref1,FLEref2を算出する機能を有する。
このように二軸のロボットアーム100を有するロボットシステム1でも、予め与えられた複数の教示点列によって定まる経路に沿って動くように制御する。この際、制御する軸数に拘らず、一動作の開始点から終了点までの移動の間、各軸間の推力干渉によってロボットに振動を生じることなく、精密に経路に追従させることができる。
なお、本第6の実施の形態では、二軸のロボットアーム100について説明しているが、三軸以上のN軸の多関節ロボットアームであってもよい。動力学モデル演算部320は、一般的に軸が複数ある場合の各モータの出力軸と減速機との間の干渉推力も算出可能である。従って、下記の三点を変更することで複数軸の制御も可能となる。第一点に、動力学モデル演算部320に入力される位置指令値PLrefを複数軸(N軸)に対してそれぞれの位置指令値PLref1〜PLrefNとする。第二点に、動力学モデル演算部320から出力される想定推力FLErefを複数軸(N軸)に対してそれぞれの想定推力FLEref1〜FLErefNとする。第三点に、装置制御器301及びモータ制御器310をそれぞれの関節に対してN個備え、それぞれが制御を担当するn番目の関節の位置指令値PLrefNと想定推力FLErefNを入力とする。それぞれの装置制御器301及びモータ制御器310は、第4及び第5の実施の形態と同様のものを用いる。またこの場合、多関節ロボットアームを制御するコントローラは、ロボット装置の制御装置に含まれる。要するに、ロボット装置の制御装置は、各関節を制御する複数のコントローラと、それらコントローラに位置指令値を出力する上位コンピュータと、によって構成されることが考えられる。
このような多関節ロボットアームを有するロボットシステムでも、予め与えられた複数の教示点列によって定まる経路に沿って動くように制御する。この際、制御する軸数に拘らず、一動作の開始点から終了点までの移動の間、各軸間の推力干渉によってロボットに振動を生じることなく、精密に経路に追従させることができる。
なお、多関節ロボットアームを有するロボットシステムでも、動力学モデル演算部320が軸間の推力干渉を考慮した複数軸を制御する場合、外乱の計算値から干渉推力の計算値を減じるとより精度が向上する。算出した干渉推力を推力指令値FLrefに合算(フィードフォワード)することで、さらに装置位置FF指令値PLFFrefの応答性が向上する。
<第7の実施の形態>
つづいて、第1の実施の形態における一軸のロボットアーム100や第6の実施の形態における二軸のロボットアーム100などを含む、ロボットアームに用いる関節の構成を、第7の実施の形態として説明する。図16は第7の実施の形態における関節の分解図、図17は第7の実施の形態における関節の概略図である。また、図18は図17に示す関節の第1の変形例を示す概略図、図19は図17に示す関節の第2の変形例を示す概略図である。
図16に示すように、モータエンコーダ104が接続されたモータ103は、出力軸103aを有している。一方、減速機105は、高速回転軸105aが本体105bを貫通している。そして、減速機105の本体105bは、カップリング109によりモータ103の出力軸103aと減速機105の高速回転軸105aとが締結されることで、モータ103と締結されて、モータ103の出力軸103aの回転によって回転する。
また、減速機105の駆動フランジ105cは、モータ103によって回転する減速機105の本体105bの回転が減速された回転数で回転する構成となっており、中空構造の推力計107を挟んでアーム106と締結される。一方、装置エンコーダ108のシャフト108aは、カップリング119を介して減速機105の高速回転軸105aと締結されている。そして、装置エンコーダ108の本体108bは、アーム106(又は減速機105の駆動フランジ105cでもよい)に締結されている。この構成により、装置エンコーダ108は、減速機105の高速回転軸105aの回転(つまりモータ103の回転)に対する、アーム106(又は減速機105の駆動フランジ105c)の位置を検出することが可能となる。以上のように構成された関節では、図17に示すように、アーム106から装置エンコーダ108が突出している形となる。
なお、装置エンコーダ108は、減速機105の高速回転軸105aの回転(つまりモータ103の回転)を基準としてアーム106(又は減速機105の駆動フランジ105c)の位置を計測することになる。このとき、モータ103の回転を基準とするためには、高速回転軸105aの位置(モータエンコーダ104の検出値)で補正する必要がある。この際、モータエンコーダ104と装置エンコーダ108との検出値の向きが、例えばCW(時計回り)を正とする、というように揃っているとする。この場合、アーム106の位置(装置位置P)は、装置エンコーダ108の検出値からモータエンコーダ104の検出値を減算することで補正できる。
次に、第1の変形例について図18に沿って説明する。図18に示すように、第1の変形例は、装置エンコーダ108を中空構造の推力計107の中心部分に配置して一体としたものである。このように構成にすることで、推力計107により検出される推力Fと、装置エンコーダ108により検出される装置位置Pとを同位置で計測することが可能になり、同期ずれを抑制することができる。また、推力計107及び装置エンコーダ108と、減速機105と、を別体として配置しているため、減速機105の内部振動や発熱の影響を受けずに推力Fや装置位置Pを計測することが可能となっている。
次に、第2の変形例について図19に沿って説明する。図16〜図18に示す形態では、装置エンコーダ108の本体108bが、アーム106又は減速機105の駆動フランジ105cに締結されているものとしたが、図19に示すように、推力計107と締結されている構成であってもよい。この場合は、アーム106と装置エンコーダ108とを一体的に配置することができる。
<第8の実施の形態>
ついで、上記第7の実施の形態を一部変更した第8の実施の形態として、ロボットアームに用いる関節の構成を、図20及び図21に沿って説明する。図20は第8の実施の形態における関節の分解図、図21は第8の実施の形態における関節の概略図である。
図20及び図21に示すように、モータエンコーダ104が接続されたモータ103は、その出力軸103aがカップリング109を介して減速機105の高速回転軸105aに締結されている。本第8の実施の形態における減速機105の本体105bは、モータ103の本体103bに締結されており、つまりモータ103に対して回転しない。
一方、減速機105の駆動フランジ105cは、推力計107を挟んでアーム106に締結されている。装置エンコーダ108のシャフト108aは、アーム106に締結されるカップリング119に締結されている。なお、装置エンコーダ108のシャフト108a或いはカップリング119は、減速機105の駆動フランジ105c或いは推力計107に対して締結されていてもよい。
そして、構造体120は、装置エンコーダ108の本体108bに締結される支持板120aと、この支持板120aと減速機105の本体105b(又はモータ103の本体103b)とを連結する連結アーム120bとを有している。つまり、装置エンコーダ108の本体108bは、構造体120によって減速機105の本体105b(又はモータ103の本体103b)に対し、回転不能に一体的に締結されている。
即ち、第7の実施の形態にあっては、上述したように、装置エンコーダ108が、モータ103の回転を基準としてアーム106の位置を計測する。この際、装置エンコーダ108の検出値からモータエンコーダ104の検出値を減算するなどの演算が必要であった。しかしながら、本第8の実施の形態にあっては、モータ103の本体103bに対して装置エンコーダ108の本体108bが回転不能に固定されているため、上記のような演算が不要となる。また、このように構成にすることで、推力計107により検出される推力Fと、装置エンコーダ108により検出される装置位置Pとをほぼ同位置で計測することが可能になり、同期ずれを抑制することができる。
なお、第1乃至第6の実施の形態では、教示用端末装置102を用いて推力指令値や位置指令値をコントローラ101に印加するものを説明した。しかしながら、これに限らず、例えばコントローラ101を管理する他のコンピュータなどから推力指令値や位置指令値をコントローラ101に印加してもよい。また、この場合は、コントローラ101にある各部の機能を他のコンピュータに備えてもよく、つまりサーボ制御装置とそれに接続した他のコンピュータとの中で、どのソフト的な機能をどのハード構成に搭載させるかは、設計上の自由である。
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
100…モータ駆動装置(ロボットアーム):101…モータ駆動装置の制御装置(コントローラ):103,113…モータ:104,114…モータ位置検出手段(モータエンコーダ):105,115…伝達機構(減速機):106,116…移動部材(アーム):107…推力検出手段(推力計):108,118…移動部材位置検出手段(装置エンコーダ):301…駆動装置制御部(装置制御器):302…推力制御部:303…モータ制御部:305…モータ速度制御部:304…モータ位置制御部:306…電流制御部:307…駆動装置FF制御部(装置制御器理想モデル演算部):308…モータFF制御部(微分器):309…モータFF制御部(モータ制御器理想モデル演算部):313…移動部材位置制御部(装置位置制御部):314…移動部材速度制御部(装置速度制御部):316…ねじれ量制御部(推力伝達部物理特性部):317…監視制御部(装置オブザーバ部):318…推力検出手段(推力推定部):320…動力学モデル制御部、複軸動力学モデル制御部(動力学モデル演算部):A…モータの出力部材の加速度(モータ加速度):Fd…外乱により発生する推力(外乱推力):F…推力:FLref…移動部材の推力指令値(推力指令値):FLEref…動力学推力予測値(想定推力):FLFFref…フィードフォワード値(装置推力FF指令値):FMref…モータの推力指令値:FMFFref…フィードフォワード値(モータ推力FF指令値):I…電流値:P…移動部材の位置(装置位置):PLref…移動部材の位置指令値(装置位置指令値):PLFFref…フィードフォワード値(装置位置FF指令値):P…モータの出力部材の位置(モータ位置):PMref…モータの位置指令値:PMFFref…フィードフォワード値(モータ位置FF指令値):PTref…ねじれ量の予測値:VLref…移動部材の速度指令値(装置速度指令値):VLFFref…フィードフォワード値(装置速度FF指令値):V…モータの出力部材の速度(モータ速度):VMref…モータの速度指令値:VMFFref…フィードフォワード値(モータ速度FF指令値)

Claims (18)

  1. モータに接続された減速機を介して移動部材を制御するロボット装置の制御方法において、
    前記ロボット装置は、
    前記減速機を介して移動する前記移動部材にかかるトルクを計測するトルク計測手段と、
    前記モータの出力軸の位置を検出する第1の位置検出手段と、
    前記移動部材の位置を検出する第2の位置検出手段と、
    前記モータを制御する制御装置と、を備え、
    前記制御装置は、
    第1のフィードバックとして、前記第1の位置検出手段の検出結果を前記モータの制御にフィードバックし、
    第2のフィードバックとして、前記トルク計測手段の検出結果を前記モータの制御にフィードバックし、
    第3のフィードバックとして、前記第2の位置検出手段の検出結果を前記モータの制御にフィードバックし、
    入力された前記移動部材の位置指令値に前記第2のフィードバックと前記第3のフィードバックを行い、前記第2のフィードバックと前記第3のフィードバックが行われた前記位置指令値に前記第1のフィードバックを行う、
    ことを特徴とする制御方法。
  2. 前記制御装置は、
    前記第2のフィードバックと前記第3のフィードバックが行われた前記位置指令値と、前記モータをモデル化したモータモデルと、に基づきフィードフォワード値を生成するモータフィードフォワード制御部を有している、
    ことを特徴とする請求項1に記載の制御方法。
  3. 前記モータフィードフォワード制御部は、前記第2のフィードバックと前記第3のフィードバックが行われた前記位置指令値に基づいて前記ロボット装置に作用する外乱を演算するオブザーバ部を有しており、
    前記制御装置は、
    前記外乱に応じて前記フィードフォワード値を生成する、
    ことを特徴とする請求項2に記載の制御方法。
  4. 前記モータモデルは、前記モータのイナーシャをモデル化したイナーシャ仮想モデルと、所定の制御ゲインを設定して前記モータの通電回路をモデル化した回路仮想モデルと、を有する、
    ことを特徴とする請求項2または3に記載の制御方法。
  5. 前記制御装置は、
    前記第2のフィードバックと前記第3のフィードバックが行われた前記指令値に基づき前記モータの速度指令値を生成するモータ位置制御部と、
    前記モータ位置制御部により生成された前記モータの速度指令値に基づき前記モータのトルク指令値を生成するモータ速度制御部と、
    前記速度制御部により生成された前記モータのトルク指令値に基づき電流値を生成する電流制御部と、を有し、
    前記第1の位置検出手段の検出結果は、
    検出された前記出力軸の位置、検出された前記出力軸の位置を微分した前記出力軸の速度、検出された前記出力軸の位置を2階微分した前記出力軸の加速度、のうちの少なくとも1つであり、
    前記第1のフィードバックとして、前記モータ位置制御部による前記出力軸の位置に応じたフィードバック制御、前記モータ速度制御部による前記出力軸の速度に応じたフィードバック制御、前記電流制御部による前記出力軸の加速度に応じたフィードバック制御、のうちの少なくとも1つを実行する、
    ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の制御方法。
  6. 前記制御装置は、
    前記モータを動力学的にモデル化した動力学モデルにより、外部より入力される前記移動部材の位置指令値から動力学トルク予測値を生成する動力学モデル制御部を有する、
    ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の制御方法。
  7. 前記制御装置は、
    前記動力学モデル制御部により、前記動力学トルク予測値に応じたフィードフォワード制御を実行する、
    ことを特徴とする請求項6に記載の制御方法。
  8. 前記制御装置は、
    前記減速機の剛性に基づき前記動力学トルク予測値から前記減速機のねじれ量の予測値を生成するねじれ量制御部を有する、
    ことを特徴とする請求項6または7に記載の制御方法。
  9. 前記制御装置は、
    力され前記移動部材の位置指令値に基づき前記移動部材の速度指令値を生成する移動部材位置制御部と、
    前記移動部材位置制御部により生成された前記移動部材の速度指令値に基づき前記移動部材のトルク指令値を生成する移動部材速度制御部と、を有し、
    前記第2の位置検出手段の検出結果は、検出された前記移動部材の位置、検出された前記移動部材の位置を微分した前記移動部材の速度、のうちの少なくとも1つであり、
    前記第3のフィードバックとして、前記移動部材位置制御部による前記移動部材の位置に応じたフィードバック制御、前記移動部材速度制御部による前記移動部材の速度に応じたフィードバック制御、のうちの少なくとも1つを実行する、
    ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の制御方法。
  10. 前記制御装置は、
    力され前記移動部材の位置指令値と、前記ロボット装置をモデル化したロボットモデルとに基づきフィードフォワード値を生成する駆動装置フィードフォワード制御部を有する、
    ことを特徴とする請求項9に記載の制御方法。
  11. 前記ロボットモデルは、前記ロボット装置の質量または慣性モーメントをモデル化したロボット装置仮想モデルと、所定の制御ゲインを設定して前記ロボット装置の制御回路をモデル化した制御回路仮想モデルと、を有する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の制御方法。
  12. 前記制御装置は、
    前記トルク計測手段の検出結果と前記第2の位置検出手段の検出結果とに基づき前記移動部材に外乱により発生するトルクを監視する監視制御部を有し、
    前記監視制御部により、前記外乱により発生するトルクに応じた第4のフィードバック制御を実行する、
    ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の制御方法。
  13. 請求項1から12のいずれか1項に記載の制御方法を用いて前記ロボット装置を制御し、物品を製造する物品の製造方法。
  14. 請求項1から12のいずれか1項に記載の制御方法を前記制御装置に実行させるための制御プログラム。
  15. 請求項14に記載の制御プログラムを格納した、コンピュータで読み取り可能な記録媒体。
  16. 請求項13に記載の物品の製造方法を前記制御装置に実行させるための制御プログラム。
  17. 請求項16に記載の制御プログラムを格納した、コンピュータで読み取り可能な記録媒体。
  18. モータに接続された減速機を介して移動部材を制御するロボット装置において、
    前記ロボット装置は、
    前記減速機を介して移動する前記移動部材にかかるトルクを計測するトルク計測手段と、
    前記モータの出力軸の位置を検出する第1の位置検出手段と、
    前記移動部材の位置を検出する第2の位置検出手段と、
    前記モータを制御する制御装置と、を備え、
    前記制御装置は、
    第1のフィードバックとして、前記第1の位置検出手段の検出結果を前記モータの制御にフィードバックし、
    第2のフィードバックとして、前記トルク計測手段の検出結果を前記モータの制御にフィードバックし、
    第3のフィードバックとして、前記第2の位置検出手段の検出結果を前記モータの制御にフィードバックし、
    入力された前記移動部材の位置指令値に前記第2のフィードバックと前記第3のフィードバックを行い、前記第2のフィードバックと前記第3のフィードバックが行われた前記位置指令値に前記第1のフィードバックを行う、
    ことを特徴とするロボット装置。
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