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JP6650713B2 - 親水性焼結多孔質体及びその製造方法 - Google Patents

親水性焼結多孔質体及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、親水性焼結多孔質体及びその製造方法に関する。
焼結多孔質体は、ろ過機能、透過機能などの優れた特徴を有しており、吸着搬送シート、フィルタ、散気管などに広く利用されている。特に、親水性を有する焼結多孔質体は、その吸水機能を生かして、水の吸収、水の拡散などの用途に役立てられている。具体的には、親水性を有する焼結多孔質体は、加湿エレメント、プリンタのインク吸収体などの用途において実用化されている。
特許文献1には、ポリオレフィン焼結多孔質体を親水化するための技術が開示されている。具体的には、親水性の官能基を有する重合性モノマーをグラフト重合反応によってポリオレフィンの分子鎖に結合させる。これにより、ポリオレフィン焼結多孔質体に親水性を付与することができる。
国際公開第2009/017030号
親水性が付与された焼結多孔質体は、水に浸漬させることによって膨潤したり、変形したりする。過剰な膨潤又は過剰な変形は、焼結多孔質体の用途にとって好ましくない場合がある。その反面、十分な吸水性能は要求される。
本発明は、十分な吸水性能を有していながら、水に浸漬したときに過剰に膨潤又は過剰に変形しない親水性焼結多孔質体を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、
ポリオレフィン焼結多孔質体と、
前記ポリオレフィン焼結多孔質体の表面に導入された親水性グラフト鎖と、
を備えた親水性焼結多孔質体であって、
前記親水性グラフト鎖は、前記親水性焼結多孔質体の表面から深さ10μmの位置までの範囲に局在しており、
前記親水性焼結多孔質体を水中に浸漬し、浸漬前の前記親水性焼結多孔質体の重量をW0、浸漬後の前記親水性焼結多孔質体の重量をW1、100×(W1−W0)/W0で表される値を含水率と定義したとき、前記親水性焼結多孔質体の気孔率に対する前記含水率の比率が0.5〜1.5の範囲にある、親水性焼結多孔質体を提供する。
他の側面において、本発明は、
親水性焼結多孔質体の製造方法であって、
親水性グラフト鎖の原料としての重合性モノマーの存在下で、ポリオレフィン焼結多孔質体に電離放射線を照射して前記親水性グラフト鎖を前記ポリオレフィン焼結多孔質体の表面に導入する工程を含み、
前記親水性グラフト鎖は、前記親水性焼結多孔質体の表面から深さ10μmの位置までの範囲に局在しており、
前記親水性焼結多孔質体を水中に浸漬し、浸漬前の前記親水性焼結多孔質体の重量をW0、浸漬後の前記親水性焼結多孔質体の重量をW1、100×(W1−W0)/W0で表される値を含水率と定義したとき、前記親水性焼結多孔質体の気孔率に対する前記含水率の比率が0.5〜1.5の範囲にある、親水性焼結多孔質体の製造方法を提供する。
上記の技術によれば、十分な吸水性能を有していながら、水に浸漬したときに過剰に膨潤又は過剰に変形しない親水性焼結多孔質体を提供することができる。
親水性焼結多孔質体の概略断面図
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されない。
図1に示すように、本実施形態に係る親水性焼結多孔質体10は、ポリオレフィン焼結多孔質体12及び親水性部分14を備えている。ポリオレフィン焼結多孔質体12は、ポリオレフィン粒子を焼結させることによって形成された部分である。親水性部分14は、ポリオレフィン焼結多孔質体12の表面に親水性グラフト鎖を導入することによって形成された部分である。詳細には、親水性部分14は、ポリオレフィン焼結多孔質体12の表面に結合した親水性グラフト鎖によって形成されている。
親水性グラフト鎖は、親水性焼結多孔質体10の表面から深さ10μmの位置までの範囲に局在している。「親水性焼結多孔質体10の表面」には、親水性焼結多孔質体10の平面視での最表面だけでなく、親水性焼結多孔質体10の空孔を形成している部分の表面も含まれる。つまり、ポリオレフィン焼結多孔質体12の空孔を形成している部分の表面にもグラフト鎖が導入されている。親水性部分14は、局在化した親水性グラフト鎖を含む部分である。親水性部分14の厚さが10μm以下である。ポリオレフィン焼結多孔質体12の内部(詳細には、ポリオレフィン粒子の内部)はグラフト化されていない、あるいは、後述する顕微ラマン分光法にてポリオレフィン焼結多孔質体12の内部に存在するグラフト鎖を確認できない。このような構造によれば、親水性焼結多孔質体10を水に浸漬したとき、親水性焼結多孔質体10の全体が均一に水に濡れる。また、親水性焼結多孔質体10を水に浸漬したとき、ポリオレフィンの膨潤による過剰な体積変化も小さく抑えることが可能である。親水性グラフト鎖は、親水性焼結多孔質体10の表面から深さ5μmの位置までの範囲に局在していてもよく、親水性焼結多孔質体10の表面から深さ2.5μmの位置までの範囲に局在していてもよい。「親水性部分14の厚さ」は、例えば、ラマンマッピング像において、最大の厚さの位置及び最小の厚さの位置を含む任意の10点で測定した厚さの平均値を意味する。
本実施形態において、親水性焼結多孔質体10の形状はシート状である。親水性焼結多孔質体10の厚さは、例えば、0.04〜0.5mmの範囲にある。親水性焼結多孔質体10の平均孔径は、例えば、1〜100μmの範囲にある。平均孔径がこのような範囲にあれば、親水性焼結多孔質体10が十分な吸水性能及び十分な通気性能を発揮しうる。親水性焼結多孔質体10の気孔率は、例えば、20〜70%の範囲にある。気孔率がこのような範囲にあれば、親水性焼結多孔質体10が十分な強度を有するとともに、親水性焼結多孔質体10が十分な吸水能力を発揮しうる。
本明細書において、「平均孔径」の語句は、乾燥した試料について、水銀圧入法により測定・算出された径を意味する。「乾燥した試料」の語句は、温度25℃、湿度60%の環境下で時間経過により重量が変化しなくなるまで(例えば、12時間以上)静置した試料を意味する。また、本明細書において、「気孔率」の語句は、以下の式で算出される値を意味する。
気孔率(%)=100×[VT−((WS/DS)+(WG/DG))]/VT
T:親水性焼結多孔質体10の体積
S:親水性焼結多孔質体10の製造に使用したポリオレフィン焼結多孔質体の重量
S:ポリオレフィン焼結多孔質体におけるポリオレフィンの密度
G:(親水性焼結多孔質体10の重量)−(親水性焼結多孔質体10の製造に使用したポリオレフィン焼結多孔質体の重量)
G:グラフト重合に使用された重合性モノマーから生成されるホモポリマーの密度
上記の式で算出された気孔率に代えて、水銀圧入法で測定及び算出された気孔率であってもよい。上記の式で算出された気孔率は、水銀圧入法で測定及び算出された気孔率に十分な精度で一致する。
本実施形態において、ポリオレフィン焼結多孔質体12の形状もシート状である。ポリオレフィン焼結多孔質体12におけるポリオレフィンの例には、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのオレフィンの重合体、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)などが含まれる。これらの中でも、優れた強度を有する、優れた耐薬品性を有するといった理由により、超高分子量ポリエチレンが推奨される。本明細書において、「UHMWPE」の語句は、平均分子量50万以上のポリエチレンを意味する。UHMWPEの平均分子量は、通常、200〜1000万の範囲である。平均分子量は、ASTM D4020(粘度法)に規定された方法によって測定することができる。
UHMWPE焼結多孔質体は、切削法、塗工法、金型を用いた焼結法などの公知の方法で作製されうる。本実施形態では、いずれの方法によって作製されたUHMWPE焼結多孔質体もポリオレフィン焼結多孔質体12として使用できる。
切削法によれば、以下の工程を経てシート状のUHMWPE焼結多孔質体を作製できる。UHMWPE粒子(平均粒径30〜400μm)を金型に充填し、UHMWPEの融点付近の温度で焼結させる。これにより、UHMWPE粒子の焼結体が得られる。得られた焼結体は、通常、ブロック状である。ブロック状の焼結体を切削加工によってシート状に成形すれば、ポリオレフィン焼結多孔質体12として使用できるUHMWPE焼結多孔質シートが得られる。本明細書において、「平均粒径」の語句は、レーザー回折式粒度計によって測定された粒度分布での体積累積50%に相当する粒径(D50)を意味する。
塗工法によれば、以下の工程を経てシート状のUHMWPE焼結多孔質体を作製できる。UHMWPE粒子と溶媒とを含む分散液を調製する。分散液を支持体上に塗布して塗布層を形成する。塗布層を焼成して塗布層に含まれた溶媒を除去する。これにより、ポリオレフィン焼結多孔質体12として使用できるUHMWPE焼結多孔質シートが得られる。
金型を用いた焼結法によれば、以下の工程を経てシート状のUHMWPE焼結多孔質体を作製できる。UHMWPE粒子を平板状の金型に充填し、UHMWPEの融点付近の温度で焼結させる。これにより、シート状のUHMWPE粒子の焼結体が得られる。
親水性部分14は、親水性グラフト鎖をポリオレフィン焼結多孔質体12の表面に導入することによって形成されうる。本実施形態では、親水性グラフト鎖の原料としての重合性モノマーの存在下で、ポリオレフィン焼結多孔質体12に電離放射線を照射して親水性グラフト鎖をポリオレフィン焼結多孔質体12の表面に導入する。詳細には、親水性グラフト鎖の原料としての重合性モノマーを含む原料溶液をポリオレフィン焼結多孔質体12に接触させつつ、ポリオレフィン焼結多孔質体12に電離放射線を照射する。この方法は、グラフト重合の分野において、「同時照射法」と呼ばれている。同時照射法によれば、親水性焼結多孔質体10の表面から深さ10μmの位置までの範囲に親水性グラフト鎖が局在した構造を得ることができる。
電離放射線を用いたグラフト重合法においては、ポリオレフィン焼結多孔質体12に電離放射線を照射することによってポリオレフィン焼結多孔質体12にラジカルが形成される。ラジカルと重合性モノマーとが反応し、重合性モノマーに由来するグラフト鎖がポリオレフィン焼結多孔質体12に結合する。本実施形態では、ポリオレフィン焼結多孔質体12を形成するポリオレフィンの分子鎖に親水性官能基を有するグラフト鎖が結合する。親水性グラフト鎖が共有結合によってポリオレフィンの分子鎖に結合するので、親水性焼結多孔質体10は恒久的な親水性を有する。
グラフト重合のための原料溶液には、例えば、親水性グラフト鎖の原料としての重合性モノマーと、溶媒とが含まれている。原料溶液における重合性モノマーの濃度は、例えば、50〜100重量%である。重合性モノマーの濃度を適切に調整することによって、所望のグラフト率を持った親水性焼結多孔質体10が得られる。原料溶液には、1種類の重合性モノマーのみが含まれていてもよいし、2種以上の重合性モノマーが含まれていてもよい。
ポリオレフィン焼結多孔質体12に導入されるべき親水性グラフト鎖は、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、スルホ基、ホスホリルコリン基、リン酸基、及びそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1つの親水性官能基を含む。親水性グラフト鎖の原料としての重合性モノマーの例には、アクリル酸、メタクリル酸、2−ヒドロキシメチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、酢酸ビニル、アリルアミン、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートアクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、メチルビニルピリジン、エチルビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、アミノスチレン、アルキルアミノスチレン、ジアルキルアミノスチレン、トリアルキルアミノスチレン、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、これらの塩などが含まれる。中でも、アクリル酸、メタクリル酸、2−ヒドロキシメチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリルアミド又はメタクリルアミドを使用することが望ましい。これらのモノマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、グラフト重合を行った後、アルカリ水溶液(例えば、約1規定の水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液など)を用いて中和処理を行うことにより、更に親水化効果を高めることができる。
原料溶液における溶媒の例には、メタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール、水などが含まれる。
グラフト重合を実施する際の原料溶液の温度は、例えば、20〜80℃の範囲にある。原料溶液の温度を適切に調整することによって、所望のグラフト率を持った親水性焼結多孔質体10が得られる。また、酸素によってグラフト重合反応が阻害されることを防ぐために、希ガス雰囲気、窒素ガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気下でグラフト重合を実施してもよい。
電離放射線の種類は、ラジカルを生じさせることができる限り特に限定されない。電離放射線の例には、α線、β線、γ線、X線、及び電子線が含まれる。ポリオレフィン焼結多孔質体12に照射される放射線量は、例えば、30〜200kGyの範囲にある。放射線量が適切な範囲にあると、ポリオレフィン焼結多孔質体12を形成するポリオレフィンの分子鎖の切断を抑制しつつ、ラジカルの発生量を十分に確保できるので、グラフト重合反応を効率的に進行させやすい。電離放射線の照射時間は、所望のグラフト率を達成できるように適切に調整する。
また、グラフト重合を実施する際に原料溶液に多官能性のビニルモノマーを含有させておき、グラフト重合と同時に架橋反応を生じさせてもよい。安定した架橋構造が形成されるので、グラフト鎖の損傷が減少し、親水性焼結多孔質体10を繰り返し利用することが可能になる。多官能性ビニルモノマーとしては、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラエチレングリコールアクリレートなどが挙げられる。
親水性焼結多孔質体10における親水性グラフト鎖の分布は、分光学的手法によって調べることができる。具体的には、シート状の親水性焼結多孔質体10の断面における親水性グラフト鎖の分布を顕微ラマン分光法(ラマンイメージング)によって調べることができる。例えば、親水性グラフト鎖におけるカルボキシル基の分布をラマンイメージングによって調べることができる。
親水性焼結多孔質体10は、例えば、1〜20%の範囲のグラフト率を有する。グラフト率が適切な範囲に収まっているとき、親水性焼結多孔質体10は、十分な吸水性能を発揮しうる。また、水に浸漬したときに親水性焼結多孔質体10が過剰に膨潤したり、過剰に変形したりすることを防止できる。本明細書では、グラフト処理の前の基材(ポリオレフィン焼結多孔質体12)の重量がG0、グラフト処理後の親水性焼結多孔質体10の重量がG1で表されるとき、100×(G1−G0)/G0で表される値をグラフト率(重量グラフト率)と定義する。
親水性焼結多孔質体10を水に浸漬したときの含水率は、例えば、20〜70%の範囲にある。含水率が低すぎると、親水性焼結多孔質体10を均一に濡らすことが難しい。含水率は、次の方法によって特定される値である。所定の寸法の親水性焼結多孔質体10を水中に十分な時間(例えば5時間)にわたって浸漬する。親水性焼結多孔質体10を水中から取り出した後、ろ紙で水分を軽く吸い取り、重量を測定する。浸漬前の親水性焼結多孔質体10の重量(乾燥時の重量)がW0、浸漬後の親水性焼結多孔質体10の重量がW1で表されるとき、100×(W1−W0)/W0で表される値を含水率と定義する。
本実施形態において、親水性焼結多孔質体10の気孔率に対する含水率の比率(含水率/気孔率)は、0.5〜1.5の範囲にある。比率(含水率/気孔率)がこの範囲に収まっている場合、親水性焼結多孔質体10の膨潤を抑制しつつ、親水性焼結多孔質体10の全面を均一に濡らすことができる。比率(含水率/気孔率)が小さすぎると、親水性焼結多孔質体10を均一に濡らすことが難しい。比率(含水率/気孔率)が大きすぎると、含水時に親水性焼結多孔質体10が過剰に膨潤する傾向にある。
比率(含水率/気孔率)の下限値は、0.5に代えて、0.81であってもよい。比率(含水率/気孔率)の上限値は、1.5に代えて、1.33であってもよい。比率(含水率/気孔率)の望ましい範囲は、これらの下限値及び上限値の任意の組み合わせによって定めることができる。
親水性焼結多孔質体10を水に浸漬したときの吸水高さは、例えば、5〜70mm/分の範囲にある。吸水高さは、次の方法によって特定される値である。所定の寸法(例えば、10mm×100mm)の親水性焼結多孔質体10の一端を1cmの深さの水に浸し、1分後、水が吸い上げられた高さを測定する。得られた測定値を吸水高さと定義する。
親水性焼結多孔質体10を水に浸漬したときの面積変化率は、例えば、0〜3%の範囲にある。面積変化率は、次の方法によって特定される値である。所定の寸法(例えば、50mm×50mm)の親水性焼結多孔質体10を水中に十分な時間(例えば5時間)にわたって浸漬する。親水性焼結多孔質体10を水中から取り出した後、ろ紙で水分を軽く吸い取り、主表面の面積を測定する。浸漬前の親水性焼結多孔質体10の主表面の面積(乾燥時の面積)がS0、浸漬後の親水性焼結多孔質体10の主表面の面積がS1で表されるとき、100×(S1−S0)/S0で表される値を面積変化率と定義する。「主表面」の語句は、親水性焼結多孔質体10において最も広い面積を有する面を意味する。
親水性焼結多孔質体10を水に浸漬したときの厚さ変化率は、例えば、0〜3%の範囲にある。厚さ変化率は、次の方法によって特定される値である。所定の寸法(例えば、50mm×50mm)の親水性焼結多孔質体10を水中に十分な時間(例えば5時間)にわたって浸漬する。親水性焼結多孔質体10を水中から取り出した後、ろ紙で水分を軽く吸い取り、厚さを測定する。浸漬前の親水性焼結多孔質体10の厚さ(乾燥時の厚さ)がT0、浸漬後の親水性焼結多孔質体10の厚さがT1で表されるとき、100×(T1−T0)/T0で表される値を厚さ変化率と定義する。
親水性焼結多孔質体10を水に浸漬したときの体積変化率は、例えば、0〜3%の範囲にある。体積変化率は、次の方法によって特定される値である。所定の寸法(例えば、50mm×50mm)の親水性焼結多孔質体10を水中に十分な時間(例えば5時間)にわたって浸漬する。親水性焼結多孔質体10を水中から取り出した後、ろ紙で水分を軽く吸い取り、体積を測定する。浸漬前の親水性焼結多孔質体10の体積(乾燥時の体積)がV0、浸漬後の親水性焼結多孔質体10の体積がV1で表されるとき、100×(V1−V0)/V0で表される値を体積変化率と定義する。

面積変化率、厚さ変化率及び体積変化率が適切な範囲に収まっていることは、水に浸漬したときに親水性焼結多孔質体10が過剰に膨潤しないこと、過剰に変形しないことを意味する。
親水性焼結多孔質体10の通気度は、例えば、0.1〜100cm3/cm2/sの範囲にある。通気度は、日本工業規格(JIS) L 1096(2010)に規定された通気性測定法のA法(フラジール形法)に準拠して測定することができる。本実施形態において、親水性グラフト鎖は、親水性焼結多孔質体10の表面に局在している。そのため、グラフト率が低く、親水性焼結多孔質体10の通気度とグラフト処理前のポリオレフィン焼結多孔質体12の通気度との差は小さい。
(実施例1)
UHMWPE粉末(分子量900万、融点135℃、平均粒子径110μm)を内径500mm、高さ1000mmの金型に充填した。金型を金属製耐圧容器に入れ、容器内を4×103Paにまで減圧した。この後、加熱された水蒸気を容器に導入し、160℃、6気圧の条件で5時間加熱した。その後、容器を徐冷して円柱状の焼結多孔質体(ブロック状多孔質体)を得た。この焼結多孔質体を旋盤で0.1mmの厚さに切削した。その結果、UHMWPE多孔質シートを得た。
一方、反応容器にモノマー成分として10gのメタクリル酸と、溶媒として10gの純水とを入れ、グラフト重合のための原料溶液を調製した。原料溶液の温度を25℃に保ち、窒素のバブリングを1時間行うことで、原料溶液に残存している酸素を除去した。原料溶液における酸素濃度は300ppm未満であった。次に、原料溶液の温度を30℃に保ち、UHMWPE多孔質シートを原料溶液に浸漬させるとともに、60kGyの強度の電子線をUHMWPE多孔質シートに照射した。これにより、シート状の親水性焼結多孔質体を得た。シート状の親水性焼結多孔質体を60℃の純水中に30分間浸漬し、未反応モノマー及びホモポリマーを除去した。この洗浄操作を計3回繰り返した後、25℃で24時間乾燥させ、実施例1の親水性焼結多孔質体を得た。
(実施例2)
実施例1で作製した焼結多孔質体を0.5mmの厚さに切削し、実施例2のUHMWPE多孔質シートを得た。その後、実施例1と同じ条件でグラフト重合を実施し、実施例2の親水性焼結多孔質体を得た。
(実施例3)
UHMWPE粉末(分子量900万、融点135℃、平均粒子径150μm)を用いたことを除き、実施例1と同じ方法で焼結多孔質体を作製した。この焼結多孔質体を0.5mmの厚さに切削し、実施例3のUHMWPE多孔質シートを得た。その後、実施例1と同じ条件でグラフト重合を実施し、実施例3の親水性焼結多孔質体を得た。
(実施例4)
UHMWPE粉末(分子量900万、融点135℃、平均粒子径60μm)を用いたことを除き、実施例1と同じ方法で焼結多孔質体を作製した。この焼結多孔質体を0.5mmの厚さに切削し、実施例4のUHMWPE多孔質シートを得た。その後、実施例1と同じ条件でグラフト重合を実施し、実施例4の親水性焼結多孔質体を得た。
(実施例5)
UHMWPE粉末(平均分子量200万、融点135℃、平均粒子径30μm、粒子形状:球状)をグリセリン及び界面活性剤と混合し、分散液を調製した。分散液の固形分は40体積%とした。次に、表面にコロナ処理を施したポリイミドフィルム(カプトン100H)上にアプリケータを用いて分散液を塗布した。塗布層の厚さ(溶媒を含む)は200μmであった。ポリイミドフィルム上の塗布層を180℃の雰囲気温度の乾燥炉に入れ、20分間焼結させた。これにより、実施例5のUHMWPE多孔質シートを得た。その後、実施例1と同じ条件でグラフト重合を実施し、実施例5の親水性焼結多孔質体を得た。
(比較例1)
実施例1と同じ方法でUHMWPE多孔質シートを作製した。このUHMWPE多孔質シートに60kGyの電子線を照射した。
一方、グラフト重合のための原料溶液として、実施例1で使用したものと同じ原料溶液を準備した。原料溶液の温度を60℃に保ちつつ、電子線の照射が完了したUHMWPE多孔質シートを原料溶液に1秒間浸漬した。これにより、シート状の親水性焼結多孔質体を得た。その後、実施例1と同じ後処理を行い、比較例1の親水性焼結多孔質体を得た。
(比較例2)
原料溶液へのUHMWPE多孔質シートの浸漬時間が1分間であったことを除き、比較例1と同じ方法で比較例2の親水性焼結多孔質体を得た。
(比較例3)
グラフト率が2%となるようにUHMWPE多孔質シートへの電子線の照射時間を調整したことを除き、実施例2と同じ方法で比較例3の親水性焼結多孔質体を得た。
先に説明した方法に沿って、実施例及び比較例の親水性焼結多孔質体のグラフト率、含水率、吸水高さ、面積変化率、厚さ変化率、体積変化率、気孔率及び通気度を算出又は測定した。通気度の測定は、グラフト重合前のUHMWPE多孔質シート(表1における矢印の左側の値)及びグラフト重合を経て得られた親水性焼結多孔質体(表1における⇒の右側の値)の両方について実施した。通気度の測定には、直径75mmの円形状のUHMWPE多孔質シート及び親水性焼結多孔質体を使用した。結果を表1に示す。
また、顕微ラマン分光法によって実施例1及び比較例2の親水性焼結多孔質体の断面におけるグラフト鎖の分布を調べた。具体的には、クライオミクロトーム(−60℃)にて親水性焼結多孔質体の断面を作製した。顕微ラマン分光装置(WITec社製 alpfa300RSA)を用い、次の測定条件にて親水性焼結多孔質体の断面のラマンマッピング像を得た。ラマンマッピング像からグラフト鎖の分布(親水性焼結多孔質体の表面からの深さ)を見積もった。結果を表1に示す。
(ラマン測定の条件)
励起波長 :532nm
測定波数範囲:約60〜3700cm-1
Grating :600gr/mm
対物レンズ :×50
測定範囲 :150×100μm
測定点 :300×200点
測定時間 :0.05sec/スペクトル
検出器 :EMCCD
Figure 0006650713
実施例1〜5の親水性焼結多孔質体は、その全体が均一に水に濡れ、十分な含水率を達成できたにもかかわらず、体積変化率も小さかった。実施例1において、親水性グラフト鎖は、親水性焼結多孔質体の表層部(親水性焼結多孔質体の表面から深さ10μmの位置までの範囲)に局在していた。実施例1〜5の親水性焼結多孔質体において、気孔率に対する含水率の比率は、いずれも0.5〜1.5の範囲に収まっていた。
一方、比較例1及び比較例3の親水性焼結多孔質体は水に浸漬したときに均一に濡れず、その含水率は低くかった。比較例2において、親水性グラフト鎖は、親水性焼結多孔質体の全体に均一に存在していた。また、比較例2の親水性焼結多孔質体の通気度は、グラフト前のUHMWPE多孔質シートの通気度から大幅に低下した。比較例2の親水性焼結多孔質体の面積変化率及び体積変化率は非常に大きかった。これらの結果は、グラフト率が高いこと、及び、UHMWPE多孔質シートの全体がグラフト化されたことに起因していると考えられる。
本明細書に開示された親水性焼結多孔質体は、加湿エレメント、プリンタのインク吸収体、フィルタ、隔膜、支持体などに使用できる。
10 親水性焼結多孔質体
12 ポリオレフィン焼結多孔質体
14 親水性部分

Claims (6)

  1. ポリオレフィン焼結多孔質体と、
    前記ポリオレフィン焼結多孔質体の表面に導入された親水性グラフト鎖と、
    を備えた親水性焼結多孔質体であって、
    前記親水性グラフト鎖は、前記親水性焼結多孔質体の表面から深さ10μmの位置までの範囲に局在しており、
    前記親水性焼結多孔質体を水中に浸漬し、浸漬前の前記親水性焼結多孔質体の重量をW0、浸漬後の前記親水性焼結多孔質体の重量をW1、100×(W1−W0)/W0で表される値を含水率と定義したとき、前記親水性焼結多孔質体の気孔率に対する前記含水率の比率が0.5〜1.5の範囲にある、親水性焼結多孔質体。
  2. 1〜20%の範囲のグラフト率を有する、請求項1に記載の親水性焼結多孔質体。
  3. 水中に浸漬させたときの体積変化率が3%以下である、請求項1又は2に記載の親水性焼結多孔質体。
  4. 前記親水性グラフト鎖は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、スルホ基、ホスホリルコリン基、リン酸基、及びそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の親水性焼結多孔質体。
  5. 前記ポリオレフィン焼結多孔質体におけるポリオレフィンが超高分子量ポリエチレンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の親水性焼結多孔質体。
  6. 親水性焼結多孔質体の製造方法であって、
    親水性グラフト鎖の原料としての重合性モノマーの存在下で、ポリオレフィン焼結多孔質体に電離放射線を照射して前記親水性グラフト鎖を前記ポリオレフィン焼結多孔質体の表面に導入する工程を含み、
    前記親水性グラフト鎖は、前記親水性焼結多孔質体の表面から深さ10μmの位置までの範囲に局在しており、
    前記親水性焼結多孔質体を水中に浸漬し、浸漬前の前記親水性焼結多孔質体の重量をW0、浸漬後の前記親水性焼結多孔質体の重量をW1、100×(W1−W0)/W0で表される値を含水率と定義したとき、前記親水性焼結多孔質体の気孔率に対する前記含水率の比率が0.5〜1.5の範囲にある、親水性焼結多孔質体の製造方法。
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