JP6536460B2 - インバータ制御装置 - Google Patents
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Description
Fc=Fc0+ΔFc×k1
ここで、基本搬送波周波数Fc0は、電圧指令に応じて演算される。最大変動分ΔFcは予め設定された定数である。係数k1は、「−1」から「+1」までの範囲でランダムに変化するテーブルデータとして規定されており、全データの平均値が約0である。
したがって、搬送波周波数Fcを十分に拡散させるために最大変動分ΔFcを比較的大きく設定すると、係数k1の変化量によっては、インバータの出力電圧が急変し、制御が不安定になるおそれがある。一方、最大変動分ΔFcを比較的小さく設定すると、搬送波周波数Fcが十分に拡散されず、電磁音による騒音を低減することができない。
電圧指令演算部は、インバータに指令する電圧ベクトルを演算する。
PWM信号生成部は、インバータが出力する電圧波形を特定する方式として、相電圧と搬送波とを比較しPWM信号を生成する。搬送波周波数設定部は、PWM信号生成部が用いる搬送波の周波数(Fc)を設定する。
基礎周波数調整部は、搬送波周波数の基礎となる基礎周波数を、所定の変動範囲(Tb)において周期的且つ連続的に変化させる。
拡散周波数調整部は、基礎周波数に対し最大変動分(±ΔF)以内の範囲で分布する拡散周波数を、基礎周波数の変動周期(Tb)よりも短い間隔で基礎周波数に加算する。
したがって、本発明では、電磁音による騒音を低減するために拡散周波数の最大変動分を特段に大きく設定する必要がないため、拡散周波数の変動に伴う搬送波周波数の急変を防止することができる。よって、本発明のインバータ制御装置は、制御安定性の向上と、電磁音による騒音の低減とを適切に両立することができる。
また好ましくは、基礎周波数調整部は、基礎周波数を、変動範囲の下限周波数(Fm)から上限周波数(FM)まで単調増加させ、且つ、上限周波数から下限周波数まで単調減少させる。これにより、さらに搬送波周波数の急変を防止し、制御安定性をより向上させることができる。
本実施形態のインバータ制御装置は、ハイブリッド自動車や電気自動車の動力源であるモータジェネレータ(以下「MG」)を駆動するシステムにおいて、MGに三相交流電力を供給するインバータを制御する装置である。
まず、各実施形態のインバータ制御装置が適用されるMG駆動システムの全体構成について図1を参照して説明する。図1には、一つのMGを備えるシステムを例示する。
MG駆動システム90は、充放電可能な二次電池である「電源」としてのバッテリ11の直流電力をインバータ30で三相交流電力に変換してMG80に供給するシステムである。MG駆動システム90においてMG制御装置10は、主にインバータ30及びインバータ制御装置50を含む。
なお、MG制御装置10は、バッテリ11の電圧を昇圧してインバータ30に出力するコンバータを備えたMG駆動システムに適用されてもよい。また、MG制御装置10は、二つ以上のMGを備えたMG駆動システムにも同様に適用可能である。
MG80の電気角θeは、例えばレゾルバ等の回転角センサ85により検出される。
電圧センサ37はシステム電圧Vsysを検出する。
インバータ制御装置50の構成について、図2〜図4を参照して説明する。
図2に、インバータ30に指令する電圧ベクトルを演算する「電圧指令演算部」として、トルクフィードバック制御部540及び電流フィードバック制御部580を備えるインバータ制御装置50の構成を示す。図中、「フィードバック制御部」を「FB制御部」と記す。
なお、ハイブリッド自動車のMG駆動システム90に現実に適用される構成としては、トルクフィードバック制御部540と電流フィードバック制御部580との両方を備える構成が一般的であるため、ここでは、その構成を代表的な実施形態として説明する。
dq変換部51は、電気角θeに基づき、電流センサ87、88から取得した相電流をdq軸電流Id、Iqに変換し、電流減算器56にフィードバックする。
電流指令演算部55は、トルク指令Trq*に基づき、例えば電流当たり最大トルクが得られるように、マップや数式を用いてdq軸電流指令Id*、Iq*を演算する。
電流フィードバック制御部580の電流減算器56は、dq軸電流指令Id*、Iq*と、dq変換部51からフィードバックされるdq軸電流Id、Iqとの電流偏差ΔId、ΔIqを算出する。
トルク推定部52は、dq軸電流Id、Iq、及び、MG80のモータ定数に基づき、式(1)を用いてトルク推定値Trq_estを算出する。なお、MG80にトルクセンサを備えたシステムでは、トルク推定部52を設けず、トルク検出値を取得してもよい。
Trq_est=p×{Iq×ψ+(Ld−Lq)×Id×Iq} ・・・(1)
ただし、
p :MGの極対数
ψ :逆起電圧定数
Ld、Lq:d軸インダクタンス、q軸インダクタンス
また、電流フィードバック制御部580の制御器57は、電流偏差ΔId、ΔIqを0に収束させるように、PI演算により電圧振幅Vrを演算し、変調器60に出力する。
電流フィードバック制御部580の制御器58は、電流偏差ΔId、ΔIqを0に収束させるように、PI演算によりdq軸電圧指令Vd*、Vq*を演算する。電圧振幅/位相演算部59は、dq軸電圧指令Vd*、Vq*を電圧振幅Vr及び電圧位相φに変換し、変調器601に出力する。なお、図2では電圧位相φをd軸基準で示しているが、q軸基準で電圧位相を定義してもよい。
変調器60は、これらの情報に基づき、インバータ30を操作するパルス電圧の出力波形として、少なくともPWM信号を出力する。ここでは、変調器60がパルスパターン又はPWM信号を出力可能であるものとして説明する。
変調率算出部61は、電流フィードバック制御部580が出力した電圧振幅Vr、及びシステム電圧Vsysに基づいて、式(2)により変調率mを算出する。
m=2√(2/3)×(Vr/Vsys) ・・・(2)
電圧波形特定部63は、インバータ30が出力する電圧波形を特定する。具体的には、インバータ30を駆動する信号として、パルスパターン又はPWM信号を生成し、ゲート信号生成部79に出力する。ゲート信号生成部79は、変調器60が出力したパルスパターン又はPWM信号に基づいて、ゲート信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを生成し、インバータ30のスイッチング素子31−36に出力する。
パルスパターン設定部64は、インバータ30が出力する電圧波形を特定する方式として、記憶部65に予め記憶された複数の電圧波形から、いずれかのパルスパターンを選択する。パルスパターンは、変調率m、回転数ω等に応じて選択される。
本明細書では、パルスパターンに、電気1周期に1パルスの矩形波を出力するパターンを含む。典型的には、変調率が1.27のとき、矩形波のパルスパターンが選択される。変調率が1.27未満のときに選択される矩形波以外のパルスパターンは、変調率m、回転数ω等に応じて、電気1周期のパルス数、各パルスの位置及び幅により規定される。
詳しくは、PWM信号は、相電圧が換算されたdutyと、三角波等の搬送波とが比較されることにより生成される。例えば、変調率が0〜1.15の範囲では正弦波PWMが用いられ、変調率が1.15〜1.27の範囲では過変調PWMが用いられる。
ところで、搬送波周波数Fcは、PWM信号の電圧波形に含まれる周波数成分に反映される。そして、その周波数でインバータ30のスイッチング素子31−36が動作することにより、電磁音が発生する。この周波数が人間の可聴周波数帯に含まれる場合、同じ周波数の音がある時間にわたって継続すると、装置の近傍にいる使用者に騒音として聞こえるおそれがある。特にハイブリッド自動車のMG駆動システム90に適用されるインバータ制御装置50では、車両の商品性に影響を及ぼすおそれがある。
拡散周波数調整部69は、基礎周波数に対し最大変動分以内の範囲で分布する拡散周波数を、基礎周波数の変動周期よりも短い間隔で基礎周波数に加算する。
基礎周波数及び拡散周波数の具体的な設定については後述する。
特徴的な作用効果に直接的に関係しないパルスパターン設定部64や記憶部65を含むインバータ制御装置50の構成を、あえて代表的な実施形態として説明した意義は、この点を明示する点にある。
(第1実施形態)
第1実施形態の作用効果について、図5を参照して説明する。第1実施形態では、ある一相のPWM信号生成に用いられる搬送波の周波数Fcに着目する。
このように、拡散周波数は、基礎周波数の変動周期Tbよりも短い間隔で基礎周波数に加えられる。PWM信号生成部66は、こうして得られた周波数Fcの搬送波と相電圧とを比較することによりPWM信号を生成し、インバータ30の出力電圧波形を特定する。
拡散範囲Rsp内の任意の周波数における基礎周波数Fbからの変動分Δfは、係数k(−1≦k≦1)を用いて、式(3)で表される。
Δf=k×ΔF ・・・(3)
また、式(4)の通り、拡散範囲Rspの幅は、片側最大変動分ΔFの2倍となる。
Rsp=2ΔF ・・・(4)
周期的に変化する基礎周波数を中心として拡散周波数が加算されることにより、搬送波周波数Fcは、基礎周波数の下限Fm及び上限FMに拡散周波数の最大変動分±ΔFを加えた範囲で変動する。よって、搬送波周波数Fcは、(Fm−ΔF)から(FM+ΔF)の範囲で変動することになる。
この搬送波周波数Fcの頻度分布は、PWM信号の電圧波形に含まれる周波数成分の分布となる。その結果、例えばインバータ母線電流を高速フーリエ変換して得られるスペクトル振幅の周波数特性に反映される。また、搬送波周波数Fcの頻度分布は、インバータ30の動作による電磁音の発生に影響する。
(1)本実施形態の効果について、従来技術と対比しつつ説明する。
特許文献1、2(特許第4974457号公報、特許第5121895号公報)に開示された従来技術を図10に示す。従来技術では、式(5)により、基本搬送波周波数Fc0に、最大変動分ΔFcと係数k1とを乗じて得られる拡散周波数(ΔFc×k1)を加算して搬送波周波数Fcを算出する。
Fc=Fc0+ΔFc×k1 ・・・(5)
一方、図10(b)に示すように、最大変動分ΔFcを比較的小さく設定すると、搬送波周波数Fcが十分に拡散されず、電磁音による騒音を低減することができない。
したがって、本実施形態では、電磁音による騒音を低減するために拡散周波数の最大変動分を特段に大きく設定する必要がないため、拡散周波数の変動に伴う搬送波周波数Fcの急変を防止することができる。よって、インバータ制御装置50は、制御安定性の向上と、電磁音による騒音の低減とを適切に両立することができる。
(3)本実施形態では、基礎周波数調整部68は、基礎周波数の変動範囲Rbにおいて基礎周波数を単調増加又は単調減少させる。これにより、さらに搬送波周波数Fcの急変を防止し、制御安定性をより向上させることができる。
さらに、基礎周波数調整部68は、基礎周波数の単調増加又は単調減少の時間変化率を制限するようにしてもよい。
第2実施形態について、図6を参照して説明する。第2実施形態は、インバータ30が三相インバータであることを前提とし、基礎周波数調整部68は、基礎周波数の変動周期Tbを、インバータ出力電圧の電気1周期の3n分の1(nは自然数)に設定するものである。
一般に三相以上のM相インバータについて、基礎周波数調整部68は、基礎周波数の変動周期Tbを、インバータ出力電圧の電気周期の「(M×n)分の1(nは自然数)」に設定することが好ましい。
第3実施形態について、図7を参照して説明する。第3実施形態は、インバータ30が三相以上の多相インバータであることを前提とし、基礎周波数調整部68は、各相の基礎周波数の変動範囲Rbが互いに重複することを避けるように設定する。言い換えれば、基礎周波数調整部68は、各相の基礎周波数の変動範囲Rbを分散させるように独立に調整する。
図7(b)に、三相の電圧波形特定用の基礎周波数の変動範囲Rbを同一とした場合の搬送波周波数Fcの頻度分布、或いは、その搬送波周波数Fcを用いて生成される電圧波形に基づくインバータ電流スペクトルの振幅を破線で示す。この場合、インバータ電流スペクトルの振幅が特定の周波数域に集中するため、電磁音の音圧が大きくなる。
これにより、インバータ30の電磁音の音圧を低減することができる。
(a)基礎周波数の周期変動を規定する周期関数は、図5(a)、図7(a)に示すように、時間軸に対して直線的に増減する三角波形状のものに限られない。その他、例えば図8(a)、(b)に示すように、正弦波や半楕円又はサイクロイドとしてもよい。これらの例では、基礎周波数は、いずれも周期的且つ連続的に変化している。また、下限周波数Fmから上限周波数FMまで単調増加し、上限周波数FMから下限周波数Fmまで単調減少している。また、他の実施形態では、単調増加又は単調減少に限らず、一回の変動周期Tbに変動範囲Rb内で複数回の増減を繰り返すようにしてもよい。このように周期関数の形状を微調整することで、電磁音をより聞こえにくくすることができる可能性がある。
しかし、図8(c)に示す例は、最小制御単位レベルのステップを意味するものではなく、最小制御単位よりも大きなオーダーであり、且つ、基礎周波数の変動範囲Rbよりも小さなサイズのステップである。
要するに、特許請求の範囲において基礎周波数の変化を特定する「連続的」という用語は、「制御安定性を向上させる」という本発明の解決課題に鑑み、基礎周波数の変動範囲Rbを基準として解釈されることが適当である。
それに比べ、基礎周波数が変動範囲Rbに対して小さなレベルでステップ状に変化する構成では、制御安定性の向上効果に影響を及ぼさない。したがって、本発明では、最小制御単位レベルの変化を含め、このような相対的に小さなステップ変化を「連続的」な変化であるとみなす。
(d)拡散周波数の頻度分布は、図5(b)に示すように基礎周波数Fbに対して正負対称に分布させる例に限らず、基礎周波数Fbに対して非対称としてもよい。図9においても同様である。
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
30・・・インバータ、 31−36・・・スイッチング素子、
50・・・インバータ制御装置、
580・・・電流フィードバック制御部(電圧指令演算部)、
66・・・PWM信号生成部、
67・・・搬送波周波数設定部、
68・・・基礎周波数調整部、
69・・・拡散周波数調整部、
80・・・MG(交流電動機)。
Claims (6)
- 電源(11)から入力される直流電力を複数のスイッチング素子(31−36)の動作により交流電力に変換するインバータ(30)を制御するインバータ制御装置であって、
前記インバータに指令する電圧ベクトルを演算する電圧指令演算部(580)と、
前記インバータが出力する電圧波形を特定する方式として、相電圧と搬送波とを比較しPWM信号を生成するPWM信号生成部(66)と、
前記PWM信号生成部が用いる搬送波の周波数(Fc)を設定する搬送波周波数設定部(67)と、
を備え、
前記搬送波周波数設定部は、
搬送波周波数の基礎となる基礎周波数を、所定の変動範囲(Tb)において周期的且つ連続的に変化させる基礎周波数調整部(68)と、
前記基礎周波数に対し最大変動分(±ΔF)以内の範囲で分布する拡散周波数を、前記基礎周波数の変動周期(Tb)よりも短い間隔で前記基礎周波数に加算する拡散周波数調整部(69)と、
を有することを特徴とするインバータ制御装置。 - 前記拡散周波数が分布する拡散範囲(Rsp)は、前記基礎周波数の変動範囲よりも小さく設定されている請求項1に記載のインバータ制御装置。
- 前記基礎周波数調整部は、
前記基礎周波数を、変動範囲の下限周波数(Fm)から上限周波数(FM)まで単調増加させ、且つ、前記上限周波数から前記下限周波数まで単調減少させる請求項1または2に記載のインバータ制御装置。 - 前記基礎周波数調整部は、
三相以上のM相インバータについて、前記基礎周波数の変動周期(Tb)を、前記インバータの出力電圧の電気1周期の(M×n)分の1(nは自然数)に設定する請求項1〜3のいずれか一項に記載のインバータ制御装置。 - 前記基礎周波数調整部は、
三相以上の多相インバータについて、各相電圧波形の特定に用いられる前記基礎周波数の変動範囲(Rbu、Rbv、Rbw)が互いに重複することを避けるように設定する請求項1〜4のいずれか一項に記載のインバータ制御装置。 - 前記インバータが出力する電圧波形を特定する方式として、予め記憶された複数のパルスパターンからいずれかのパルスパターンを選択するパルスパターン設定部(64)と、
前記PWM信号生成部又は前記パルスパターン設定部による電圧波形の特定方式を切替える方式切替部(62)と、
をさらに備える請求項1〜5のいずれか一項に記載のインバータ制御装置。
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