JP6534172B2 - セルロースナノファイバーの乾燥固形物及びその製造方法ならびに乾燥固形物の再分散体 - Google Patents
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Description
解繊してセルロースナノファイバー分散体とすること、及び、
還元剤を含む反応液中で還元すること
を行った後に、乾燥することを含む、セルロースナノファイバーの乾燥固形物の製造方法。
前記酸化工程は、N−オキシル化合物、及び共酸化剤を含む反応液中でセルロース原料を酸化して酸化セルロース繊維を得る工程である。この酸化反応により、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、表面にアルデヒド基と、カルボキシル基(−COOH)またはカルボキシレート基(−COO−)とを有する酸化セルロース繊維を得ることができる。
前記セルロース原料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、針葉樹または広葉樹のクラフトパルプ、サルファイトパルプ、サーモメカニカルパルプ、再生パルプ等の木材系パルプ、コットンリンターやコットンリントのような綿系パルプ、麦わら、バガス、竹、麻、ジュート、ケナフ等に由来する非木材系パルプ、バクテリアセルロースのような微生物由来セルロース、ホヤから単離されるセルロースのような動物由来セルロース、海草から単離されるセルロースのような藻類由来セルロースなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。好ましくは、木材、綿、非木材植物等の植物由来のパルプである。前記セルロース原料は、叩解等の表面積を高める処理を施したものであってもよい。
N−オキシル化合物は、ニトロキシラジカルを発生しうる化合物をいい、目的の酸化反応を促進する化合物であれば特に制限なく使用することができる。例えば、「「Cellulose」Vol.10、2003年、第335ページから341ページにおけるI. Shibata及びA. Isogaiによる「TEMPO誘導体を用いたセルロースの触媒酸化:酸化生成物のHPSEC及びNMR分析」と題する記事」に記載されている化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記共酸化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸、又はそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化水素や過有機酸などの過酸化物が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸化工程における反応系には、上述したセルロース原料、N−オキシル化合物、及び共酸化剤に加えて、臭化物、ヨウ化物、又はこれらの混合物等の添加物を加えてもよい。
酸化工程の反応系における前記セルロース原料の分散媒としては、酸化反応が進行するものであればよく、特に制限されない。取扱いの容易さや、副反応が生じにくいこと等から、水は好ましい。
前記酸化工程により得られる酸化セルロース繊維は、カルボキシル基量が0.6mmol/g〜2.2mmol/g、好ましくは0.8〜2.0mmol/g、さらに好ましくは1.0〜2.9mmol/g程度であり、アルデヒド基量が0.8mmol/g以下である。酸化セルロース繊維のカルボキシル基及びアルデヒド基の量は、上記した共酸化剤の添加量、反応時間等の反応条件を制御することにより調整することができる。
前記酸化工程に続いて、任意に、追酸化工程を行ってもよい。追酸化工程は、前記酸化工程で得られた酸化セルロース繊維を亜塩素酸ナトリウムにより更に酸化する工程である。
前記解繊工程は、酸化工程または追酸化工程で得られた酸化セルロース繊維、あるいは後述する還元工程後に得られた還元型酸化セルロース繊維を溶媒中で機械的なせん断力を用いて解繊しながらナノ分散させて、酸化セルロースナノファイバーの分散体を得る工程である。
解繊工程で用いる分散媒としては、特に制限されず、水、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール、グリセリンなど)、エーテル類(エチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイドなどを挙げることができるが、中でも、水が最も好ましい。分散媒中の酸化セルロース繊維の量は、特に限定されないが、0.1〜5質量%程度が好ましく、1〜3質量%程度がより好ましい。分散媒中の酸化セルロース繊維の量が5質量%を超えると、解繊/分散時に粘度が顕著に向上し、解繊/分散処理が継続できなくなる場合がある。
解繊工程で用いる装置(以下、「解繊/分散装置」と称することもある)は、酸化セルロース繊維に対してせん断力を付与できるものであればよく、特に制限されない。例えば、スクリュー型ミキサー、パドルミキサー、ディスパー型ミキサー、タービン型ミキサー、高速回転下でのホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、二重円筒型ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、水流対向衝突型分散機、ビーター、ディスク型リファイナー、コニカル型リファイナー、ダブルディスク型リファイナー、グラインダー、二軸混練機などが挙げられる。中でも、効率よく解繊するには、50MPa以上の圧力を印加できる湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。圧力はより好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。高圧ホモジナイザーでの解繊/分散処理に先立って、高速ミキサーなどによる予備分散を行ってもよい。
前記解繊工程により、酸化セルロース繊維または還元型酸化セルロース繊維が解繊されてナノ分散されたセルロースナノファイバー分散体を得ることができる。セルロースナノファイバー分散体は、幅が2〜5nm程度、長さが0.2μm〜5μm程度のセルロースのシングルミクロフィブリルの分散体である。分散媒は、上述の通り、水が最も好ましい。
前記還元工程は、前記酸化工程または追酸化工程で得られた酸化セルロース繊維、あるいは前記解繊工程で得られたセルロースナノファイバー分散体を、還元剤を含む反応液中で還元させる工程である。
還元工程に用いる還元剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、チオ尿素、ハイドロサルファイト、亜硫酸水素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記還元剤の中でも、選択的な反応性に優れる点で、水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。
還元工程の反応液に用いる溶媒としては、水が好ましい。反応液は、本発明の効果を損なわない限り、上述した酸化セルロース繊維または酸化セルロースナノファイバー、及び還元剤以外の成分を含んでいてもよい。
前記乾燥工程は、前記酸化工程(任意に追酸化工程)と、解繊工程及び還元工程をこの順序でまたは逆の順序で行った後に行われる工程であり、還元工程を経た酸化セルロースナノファイバー分散体(以下、「還元型酸化セルロースナノファイバー分散体」、「還元型セルロースナノファイバー分散体」、または「セルロースナノファイバー分散体」と称することがある)を乾燥して乾燥固形物を得る工程である。
前記乾燥の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、噴霧乾燥、圧搾、風乾、熱風乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥などが挙げられる。乾燥装置も特に制限されず、連続式のトンネル乾燥装置、バンド乾燥装置、縦型乾燥装置、垂直ターボ乾燥装置、多重段円板乾燥装置、通気乾燥装置、回転乾燥装置、気流乾燥装置、噴霧乾燥装置、円筒乾燥装置、ドラム乾燥装置、ベルト乾燥装置、スクリューコンベア乾燥装置、加熱管付回転乾燥装置、振動輸送乾燥装置、回分式の箱型乾燥装置、真空箱型乾燥装置、及び撹拌乾燥装置等を単独で又は2つ以上組み合わせて用いることができる。
本発明において、乾燥固形物とは、水分量が20質量%以下になるように乾燥させた状態をいう。水分量は0〜20質量%であることが好ましく、輸送にかかる費用を低減させるという観点からは0〜12質量%であることがさらに好ましい。乾燥時には、水分量0%(絶乾)まで乾燥させてもよい。例えば、105℃で3時間の乾燥により、絶乾させることができる。
105℃で3時間乾燥して得た乾燥固形物を、固形分濃度が0.1質量%となるように水で希釈して40mLの分散液とする。固形分濃度は、0.05〜0.5質量%の範囲で適宜選択することができる。前記分散液を50mL容器の遠心分離管(ポリプロピレン製;コーニング社製)に入れ、そのまま二重円筒型ホモジナイザー(刃の直径1.5cm、マイクロテック・ニチオン社製 NS−56)を用いて7,500rpmで2分間解繊処理を行う。次いで、前記二重円筒型ホモジナイザーによる解繊処理後、そのまま直ちに氷水で容器の周りを冷やしながら超音波ホモジナイザー(日本精機社製 US−300T、プローブチップ7mm、出力300W、19.5kHz)で8分間解繊処理を行う。
本発明による還元型酸化セルロースナノファイバーの乾燥固形物は、望ましいレオロジー特性、具体的には、チキソトロピー性、望ましい降伏応力、せん断力を加えても静置すればゲルに戻る可逆ゲル性、温度鈍感性の弾性率等を有するので、これらの特徴を利用するような用途に好ましく用いることができる。
本発明により得られた還元型酸化セルロースナノファイバーの乾燥固形物は、溶媒に再分散(ナノ分散)させることによって、還元型酸化セルロースナノファイバー分散体とすることができる。乾燥固形物を溶媒に再分散(ナノ分散)させる方法は、上述の解繊工程に記載した方法と同様である。分散媒は最も好ましくは水であり、分散媒中の固形分濃度は、特に限定されないが、0.1〜5質量%程度が好ましく、1〜3質量%程度がより好ましい。
こうして得られた再分散後の分散体におけるセルロースナノファイバーは、前記還元工程により、ケトン基の量、またはケトン基とアルデヒド基の量が、前記酸化工程または追酸化工程後で還元工程を行う前の酸化セルロース繊維または酸化セルロースナノファイバーにおける上記量よりも、低減されている。ケトン基の量、またはケトン基とアルデヒド基の量が低減されたことを確認する方法は、公知の方法を用いればよく、特に限定されない。例えば、上述した電導度滴定による方法や、紫外線吸収スペクトルの測定による方法を用いることができる。
固形分濃度が0.1質量%になるように水で希釈する。得られた分散液の波長600nmにおける光透過度を測定し、光透過度が80%以上であれば、ナノ分散されたと判断できる。一方、光透過度が、80%未満の場合には、ナノ分散されていない成分を含有していると判断できる。
固形分濃度が0.1質量%になるように水で希釈する。得られた分散液を直交偏光板の間に置き、複屈折を示すか否かを観察する。複屈折を示す場合には、ナノ分散されたと判断することができる。
本発明により得られる再分散後のセルロースナノファイバー分散体は、再分散及び乾燥前のセルロースナノファイバー分散体と同様の高アスペクト比、大比表面積、高強度、高いチキソトロピー性、水中での高いナノ分散性、高い透明性などの優れた特徴を有する。こうして得られた分散体は、例えば、必要に応じて、分散媒を適度に除去することにより、上述したセルロースナノファイバーの乾燥固形物と同様の用途に用いることができる。また、以下に説明する通り、フィルム等の所定形状の成形体とすることができ、また、他の材料と組み合わせて複合体とすることができる。
セルロースナノファイバー分散体を所定形状に保持しつつ分散媒を除去することにより、所定形状の成形体とすることができる。例えば、ガラス板などの基板上に、セルロースナノファイバー分散体を流延塗布した後、自然乾燥、送風乾燥、真空乾燥などの乾燥法により分散媒を除去することで膜を形成させることができ、膜を基板から剥がすことにより、フィルム状の成形体を得ることができる。
セルロースナノファイバー分散体と、所望の複合化材料を含む液体とを混合することにより、セルロースナノファイバーを含む複合体を製造することができる。
針葉樹漂白クラフトパルプ(乾燥質量で4g相当分)、62.4mgのTEMPO、及び0.4gの臭化ナトリウムを蒸留水400mLに分散させた後、13質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、1gのパルプに対して次亜塩素酸ナトリウムの量が5mmolとなるように加えて反応を開始した。反応中は、0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10に保ち、室温(20℃〜25℃)で撹拌しながら反応を行った。pHに変化が見られなくなった時点で反応終了とみなし、反応物をガラスフィルターにてろ過した後、十分な量の水による水洗、ろ過を5回繰り返し、固形分含量が9.3質量%である酸化セルロース繊維を得た(収率>90%)。
前記酸化工程で得られた酸化セルロース繊維を水に懸濁して、固形分含量が1質量%のスラリーを調製した。得られたスラリーをホモミキサーを用いて6000rpmで10分間撹拌し、固形分含量が1質量%の酸化セルロースナノファイバー分散体(参考例)を得た。
前記解繊工程で得られた酸化セルロースナノファイバー分散体(参考例)のpHを0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を用いて10に調整した後、セルロースナノファイバーの固形分100質量部に対して2.5質量部の水素化ホウ素ナトリウムを加え、室温(20℃〜25℃)で撹拌しながら反応を24時間行い、還元型酸化セルロースナノファイバー分散体を得た。
前記還元工程で得られた還元型酸化セルロースナノファイバー分散体を、105℃の恒温乾燥機中で3〜4時間乾燥させ、還元型酸化セルロースナノファイバーの乾燥固形物(絶乾)を得た。
前記乾燥工程で得られた還元型酸化セルロースナノファイバーの乾燥固形物を水に懸濁して、固形分含量が1質量%のスラリーを調製した。得られたスラリーをホモミキサーを用いて6000rpmで10分間撹拌し、固形分含量が1質量%の再分散後の還元型酸化セルロースナノファイバー分散体(実施例)を得た。
実施例、比較例、及び参考例の分散体/懸濁液のそれぞれを、0.1質量%に薄めてスライドガラスに乗せ、スライドガラスを傾けた時に未分散状態のゲル状の粒が見られるかどうかで分散性を評価した。粒が見られないものが3、粒が浮き出てみられるものが2、ほとんど分散せず粒と水が分離するものを1と評価した。
実施例、比較例、及び参考例の分散体/懸濁液のそれぞれ(固形分含量1質量%)について、波長600nmにおける光透過度を測定した。
実施例、比較例、及び参考例の分散体/懸濁液のそれぞれ(固形分含量1質量%)について、分散/懸濁直後のB型粘度(25℃、30rpm、3分間)と、一昼夜静置した後のB型粘度(25℃、30rpm、3分間)を測定した。
Claims (4)
- N−オキシル化合物及び共酸化剤を含む反応液中でセルロース原料を酸化することにより得られる酸化セルロース繊維に対し、以下の2つの工程:
解繊してセルロースナノファイバー分散体とすること、及び、
還元剤を含む反応液中で還元すること
を行った後に、乾燥することを含む、セルロースナノファイバーの乾燥固形物の製造方法。 - 前記酸化セルロース繊維を、解繊してセルロースナノファイバー分散体とした後に還元剤を含む反応液中で還元し、その後に乾燥する、請求項1に記載の方法。
- 前記酸化セルロース繊維を、還元剤を含む反応液中で還元した後に解繊してセルロースナノファイバー分散体とし、その後に乾燥する、請求項1に記載の方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法を行ってセルロースナノファイバーの乾燥固形物を得た後に、前記乾燥固形物を溶媒に再分散させてセルロースナノファイバー分散体を得ることを含む、セルロースナノファイバー分散体の製造方法。
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