以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る電動工具について説明する。本発明の第一の実施形態における電動工具として手持ち式の電動丸鋸(以下、「丸鋸」と称する)を例にし、その構造について、図1ないし図8を参照しつつ説明する。なお、便宜的に図1の正面図における左右方向を丸鋸1の左右方向、図2における平面図の上下方向を丸鋸1の前後方向として説明する。
図1に示すように、本実施形態の丸鋸1は、被加工材(図示せず)の上面を摺動可能な平板状の定盤5と、定盤5上に取り付けられる本体部10とを備えている。本体部10は、円盤状の丸鋸刃(切断刃の一例)11と、丸鋸刃11の略上半分を覆うとともに丸鋸刃11を回転駆動するための図示しない駆動モータなどの駆動部等を収容するケーシング12とを備えている。
本体部10は、傾斜機構部14を介して、丸鋸刃11を傾斜させることができるよう構成されている。傾斜機構部14は、サポータ4と、アンギュラープレート6を主要な構成部品として備えている。
本体部10は、定盤5に立設された前記アンギュラープレート6に軸7を中心にして傾動可能に取り付けられている前記サポータ4に、支軸ピン15を中心にして傾動可能に取り付けられている。アンギュラープレート6には、円弧状の開口8が形成されており、開口8に取り付けられる蝶ボルト9によって本体部10、すなわち丸鋸刃11の傾斜角を調整することができるようになっている。このような構成により、丸鋸1は、丸鋸刃11を左右方向に傾斜させて、いわゆる傾斜切りと称される切削を行うことが可能である。
定盤5には、その前側先端部にあって丸鋸刃11の前方に、被加工材に施された墨線へ、丸鋸刃11を合わせる際の目安となる切欠部18が形成されている。また、定盤5には、図示しない開口部が形成されており、丸鋸刃11は、その刃先が定盤5の前記開口部から下方に突出して配置されている。なお、丸鋸刃11は、定盤5からの突出量(切削深さ)を調整できるようになっている。
図2および図3に示すように、ケーシング12の後方には、丸鋸1を使用する使用者が丸鋸1を所定の方向に移動させるために把持するハンドル13が取り付けられている。
図4に示すように、定盤5の一方側(図では左側)には、扁平な板材からなる定規22を左端から挿入するための挿入口36と、挿入口36から右方向に延びる凹部溝21とが形成されている。このような挿入口36、凹部溝21は、丸鋸刃11の前後方向両側、つまり定盤5の前後両端部に一対で配置されている。定規22は、挿入口36から挿入されて凹部溝21内に嵌まることで、その前後方向を凹部溝21により位置決めされ、定盤5に対し左右方向に移動自在に支持される。なお、図2、図3に示すように、本実施形態では、前方に配置された定規22のみを表している。
図1に戻って、定規22は、その一端部(図では左端部)において下方に折り返され、端部には被加工材の加工時の基準面としての被加工材の側面に突き当てるためのストッパ23が取り付けられている。
図2および図3に示すように、丸鋸1は、定規22を凹部溝21に固定するための、定規固定機構部30を備える。定規固定機構部30は、定盤5(定規22)の上側に配置されており、図2に示すように、丸鋸刃11の右側で前後方向両側、つまり定盤5の右側端部の前後両端部に配置されている。
図4ないし図7に示すように、定規固定機構部30は、定盤5に一体的に形成された取付部3を備えている。図5および図6に示すように、取付部3は、回動支持片20,20と、取付片24と、案内片25とを備えている。回動支持片20,20は左右一対で設けられており、定盤5の前後方向に沿うよう板状に形成されている。
取付片24は、回動支持片20,20の前後方向一方側(本実施形態では前方側)に配置されて、後述する案内部材19を保持するよう構成されている。取付片24は、定盤5に対して垂直に形成された立上部34と、立上部34の上端部から案内片25側へ向けて傾斜する傾斜部35とを備えている。傾斜部35は定盤5の上面を基準として案内片25よりも高い位置にあって、左右方向途中部に案内部材19を挿入する挿入孔19aが形成されている。
案内片25は、回動支持片20,20の前後方向他方側(本実施形態では後方側)に配置されて、挿入口36から挿入される定規22を凹部溝21に沿うよう定盤5の上側で案内するものである。なお、取付片24、および案内片25は、定規22を前後方向で挟む位置に配置されている。
定規固定機構部30は、支軸5b回りに回動可能な操作レバー32を備える。操作レバー32は、その基端部32a側に、支軸5bを挿通可能な回動体27を備える。なお、支軸5bの軸方向各端部は、回動支持片20,20に挿通支持されている。操作レバー32は、使用者が手指で回動操作する部分である。操作レバー32における使用者の手指で回動操作される部分は、所定厚みの板状であり、回動体27よりも左右に幅広に形成されており、回動支持片20,20の離間幅に比べて大きい左右幅に設定されている。
回動体27は、円筒形状であり、支軸5bを挿通可能な孔が中心から径方向外側に位置ずれて形成されている。回動体27は回動支持片20,20の間で支軸5bに外嵌固定され、支軸5bの回動とともに回動する。回動体27の前記孔が中心から位置ずれして形成されているので、回動体27を支軸5bに外嵌固定した状態では、回動体27の中心は、支軸5bの中心に対して径方向に位置ずれされている。この構成により、回動体27は、支軸5bの外周面を始点として最短径部28と最長径部29とを備えることとなり、最短径部28と最長径部29との間の領域は、径が順次変化する(徐々に大きく又は小さくなる)よう構成される。
定規固定機構部30は、回動体27に外嵌される押圧体31を備える。押圧体31は、操作レバー32の回動操作によって、定規22の長手方向途中部分の上面を定盤5に向けて直接押圧する部材である。
押圧体31は、筒状部37と押圧部16とを備えている。押圧部16および筒状部37は、回動支持片20,20の間に収まるよう、回動支持片20,20の離間幅に対応した左右幅に形成されている。
筒状部37は、円筒状の部材であって、回動体27に遊嵌する部分である。図5に示すように、筒状部37は、回動支持片20,20の間にあって、軸心が左右方向に沿うよう形成されている。
なお、図5に示すように、回動体27の支軸5bに沿う一端側には、Oリング33が設置されている。Oリング33は、一方の回動支持片20の対向壁面20aに接触されて、潰されるよう弾性変形している。Oリング33が潰されるよう弾性変形していることで、操作レバー32及び押圧体31がそれ自体の重量で支軸5b回りに回動しないよう制限されている。
押圧部16は、筒状部37の周面から径方向外側(図6において斜め下方)に向けて延長するよう該筒状部37に一体的に形成されている。この押圧部16(特にその先端側)は、支軸5bを中心に操作レバー32を回動させることで、案内部材19と定規22との間に押し込まれる部分である。押圧部16の押し込み方向は、筒状部37に対する押圧部16の延長方向である。具体的に、押し込み方向は、図6において左斜め下方である。
押圧部16は、その周面31aに、定規22の上面に上側で対向する底面(押圧面に相当する)16aと、後述する案内部材19の先端面19cに対向する当接面17aとを備えている。底面16aおよび当接面17aは、押し込み方向の先端側ほど押圧部16の厚さを薄くさせるよう、水平面(例えば定規22の上面)に対して相対的に傾斜するよう形成されている。換言すれば、底面16aおよび当接面17aは、ともに筒状部37側へ向けて、斜め上方へ向かう面である。そして、底面16aの傾斜角度に比べて当接面17aの傾斜角度の方が急である。なお、底面16aと当接面17aとは、図6において左斜め下方に向けて凸となる先端円弧面Rによって連続している。
なお、当接面17aは、前記周面31aのうち、当接面17aの上方側(筒状部37側)に連続する部分に対して、わずかに先端面19c側に突出しており、該突出方向に凸となる円弧状に形成されている。また、底面16aは、略平面に形成されている。
なお、押圧部16の周面31aは、案内片25との干渉を避けるために底面16aから上方へ向かって筒状部37に連続する連続面16bを備えている。
押圧部16は、回動体27の左右幅寸法よりも大きい左右幅寸法に形成されており、回動支持片20,20の間にちょうど収まる幅に形成されている。この構成により、押圧部16は回動支持片20,20の間において、支軸5bの軸方向でのがたを防止している。
定規固定機構部30は、押圧部16を定盤5へ向けて案内する案内部材19を備える。案内部材19は取付片24(傾斜部35)の挿入孔19aに挿入される円柱状の部材であり、取付片24の傾斜部35の傾斜方向に直交する方向に移動および固定が自在に設けられている。
本実施形態において、挿入孔19aの内周面には雌ねじが形成され、案内部材19は、雌ねじに螺合する雄ねじ部材とされている。また、案内部材19は、先端部分19bが傾斜部35の案内片25側の側面35aから突出するよう設置されている。案内部材19の先端面19cは、案内面に相当し平面に形成されている。本実施形態では、先端面19cは当接面17aに当接可能に構成されている。
次に、上記構成の丸鋸1の使用方法を説明する。丸鋸1の使用者は、被加工材に施した墨線へ切欠部18を合わせるようにして、丸鋸1を被加工材に載置する。そして、定規22のストッパ23を被加工材の側面に突き当て、定規22が動かないように(図2においては、左右方向に動かないように)、定規固定機構部30を用いて定規22を固定し、ストッパ23が被加工材の側面から離れないように丸鋸1を移動させることで、被加工材を丸鋸刃11で切断加工することができる。
定規固定機構部30を用いて定規22を固定する際には、丸鋸1の使用者が、定規固定機構部30の操作レバー32を回動操作することで、定規22を固定することができる。
ここで、図7(a)ないし図7(f)を参照しつつ、定規固定機構部30によって定規22が固定されていない状態から固定された状態となる様子を説明する。なお、図7(a)ないし図7(f)においては、説明の便宜上、押圧体31の当接面17aが常に先端面19cに当接させて描いている。図7(a)ないし図7(c)の状態は、押圧体31の押圧部16の底面16aが定規22の上面に接触しておらず、したがって定規22がまだ押圧されていない状態である。図7(d)ないし図7(f)の状態は、押圧体31の押圧部16の底面16aが定規22の上面に接触しはじめて、定規22が固定されるまでを表している。
押圧部16の底面16aが定規22の上面に当接していない状態での操作レバー32の姿勢を非押圧姿勢と称すると、図7(a)ないし図7(c)に表した操作レバー32は、非押圧姿勢である。押圧部16の底面16aが定規22の上面に当接した状態での操作レバー32の姿勢を押圧姿勢と称すると、図7(d)ないし図7(f)に表した操作レバー32は、押圧姿勢である。但し、単に押圧部16の底面16aが定規22の上面に当接しただけでは定規22を押圧するものではないが、便宜上押圧姿勢と称する。
図7(a)ないし図7(f)において、一点鎖線で表わした符合C1は、操作レバー32の厚み方向中心線であり、二点鎖線で表わした符合C2は、支軸5bの中心から先端円弧面Rの円弧方向中心を結んだ延長線であって、これは、押圧体31が案内部材19と定規22との間に押し込まれる方向でもある。
図7(a)は、操作レバー32が、支軸5b回りにいっぱいに時計方向に回動されている状態、すなわち、支軸5bの中心を通る鉛直線Vに対し、操作レバー32がθ1だけ時計方向(後方)へ傾斜(回動)した状態であり、使用者が操作レバー32をまだ操作していない状態を表している。図7(a)では、延長線C2は、回動体27の最短径部28と最長径部29との間の径の延長上にある。
この状態では、押圧部16の当接面17aは、案内部材19の先端面19cに当接しているが、押圧部16の底面16aは、定規22の上面には当接していない。換言すれば、案内部材19は、操作レバー32が図7(a)に示す非押圧姿勢のときには、押圧部16の底面16aが定規22の上面を押圧しないよう、先端部分19bの突出量が調整されている。
図7(b)は、使用者が操作レバー32をわずかに支軸5b回りに反時計回りに回動させた状態を表している。この状態の操作レバー32は、鉛直線Vに対してθ2だけ時計方向に傾斜した状態にある。この姿勢の操作レバー32でも、押圧部16の底面16aが定規22の上面に当接していない。
図7(a)の状態から図7(b)の状態へ操作レバー32を反時計回りに回動させると、操作レバー32の回動とともに、支軸5bおよび回動体27が反時計回りに回動する。回動体27が反時計回りに回動すると、回動体27の最長径部29が、操作レバー32の回動角度に応じて延長線C2に近づくようになっている。押圧体31は、回動体27の最長径部29が延長線C2に近づいた分だけ、延長線C2に沿うよう案内部材19と定規22との間に押し込まれる。この場合、案内部材19の先端面19cが案内面となって、押圧体31が先端面19cに案内されつつ押し込まれる。
なお、押圧部16の当接面17aは、先端面19c側に向けて凸となる円弧状に形成されているので、案内部材19の先端面19cに線的に接触している。換言すれば、当接面17aと先端面19cとは平面どうしの接触ではないため、押圧体31を容易に案内部材19と定規22との間に押し込むことができる。
図7(b)の操作レバー32の姿勢から、使用者がさらに操作レバー32を反時計方向に回動させ、図7(c)で示すように、操作レバー32の厚み方向中心線C1を鉛直線Vに一致させた際も、操作レバー32は非押圧姿勢である。この場合では、回動体27の最長径部29が、図7(b)の状態に比べて、延長線C2にさらに近づく。したがって、押圧体31は、回動体27の最長径部29が延長線C2に近づいた分だけ、延長線C2に沿うよう案内部材19と定規22との間にさらに押し込まれる。この場合でも、案内部材19の先端面19cが案内面となって、押圧体31が先端面19cに案内されつつ押し込まれる。
図7(a)ないし図7(c)の状態では、押圧部16の当接面17aは案内部材19の先端面19cには当接しているが、押圧部16の底面16aは定規22の上面に当接していないため、操作レバー32の回動操作は楽である。また、図7(a)ないし図7(c)に示すように、押圧部16(底面16a)が定規22の上面に当接しない状態では、操作レバー32の回動操作量に応じて押圧部16は案内部材19と定規22との間に入り込むように変位するので、その変位に応じて当接面17aの位置、すなわち、案内部材19の先端面19cに接する押圧部16の位置は変化する。
続いて、図7(d)に示すように、厚み方向中心線C1が鉛直線Vに対して反時計方向(前方)に傾斜する(図では傾斜角度θ3で表わしている)よう、操作レバー32を回動させる。そうすると、押圧部16の底面16aが定規22の上面に当接する。この場合では、回動体27の最長径部29が、図7(c)の状態に比べて、延長線C2にさらに近づく。したがって、押圧体31は、回動体27の最長径部29が延長線C2に近づいた分だけ、延長線C2に沿うよう案内部材19と定規22との間にさらに押し込まれる。この場合でも、案内部材19の先端面19cが案内面となって、押圧体31が先端面19cに案内されつつ押し込まれる。
押圧部16の底面16aを定規22の上面に当接させただけでは、定規22を定盤5に押圧する力は発生しないので、定規22を定盤5に固定することはできない。このため、使用者は操作レバー32をさらに回動させる必要がある。しかしながら、押圧部16の当接面17aは案内部材19の先端面19cに当接し、押圧部16の底面16aを定規22の上面に当接していることから、相応の力を操作レバー32に与えることで、操作レバー32をさらに回動させる。
そして、図7(d)の状態から、厚み方向中心線C1が鉛直線Vに対してさらに反時計方向に傾斜する(図では傾斜角度θ4で表わしている)よう、操作レバー32を回動させる。操作レバー32の回動操作に伴って、図7(e)に示すように、回動体27の最長径部29が延長線C2にさらに近づいて一致した時点が、最も大きな力で案内部材19と定規22との間に押圧体31が押し込まれた状態となる。なお、本実施形態では、回動体27の最長径部29が延長線C2に一致した時点で、厚み方向中心線C1と延長線C2とが直角となるよう設定している。換言すると、操作レバー32が押圧体31の押し込み方向に対して直角の姿勢となったときに、最大の押込力が押圧体31に作用する状態となる。
ところで、図7(d)の状態からさらに操作レバー32を回動させることで、回動体27の最長径部29が延長線C2にさらに近づくと、押圧体31は延長線C2に沿う大きな押し込み力を受けるものの、押圧部16の当接面17aが案内部材19の先端面19cに当接し、押圧部16の底面16aが定規22の上面に当接していることで、押圧体31は押し込み方向には移動できない。
このため、操作レバー32の回動操作に伴って押圧体31に働く押し込み力が楔力となる。すなわち、押圧部16の当接面17aが案内部材19の先端面19cに当接している力(押込力)を反力として、押圧体31を下方へ向かわせる力へ変換され、定規22の上面に対し押圧部16の底面16aの当接する面積が増える。この押圧によって、定規22が定盤5に確実に固定される。
このように、回動体27の最長径部29が延長線C2に一致した時点が、最も大きな力で案内部材19と定規22との間に押圧体31が押し込まれた状態となる。しかしながら、この状態で丸鋸1を使用した場合、丸鋸1の使用に伴う振動によって操作レバー32が時計方向に戻ってしまう虞がある。そうなると、押圧部16の底面16aによる定規22の上面への押圧力が弱まって定規22の固定が意図せず解除されてしまう。
そこで、丸鋸1の使用時には、図7(f)に示すように、回動体27の最長径部29が延長線C2に一致した状態をわずかに超えて、さらに操作レバー32を回動させる(図では傾斜角度θ5で表わしている)。厚み方向中心線C1と延長線C2との関係としては、両者のなす角度が直角より小さくなるようにする。このようにすることで、丸鋸1の使用に伴う振動があっても、その振動では回動体27の最長径部29が延長戦C2に一致するように操作レバー32を回動させることはできないため、操作レバー32が戻らないように保持することができる。そして、固定された定規22により、本体部10を被加工材の加工位置に位置決めできれば、丸鋸1の使用者は、被加工材を正確に加工することができる。
案内部材19は雌ねじに螺合する雄ねじ部材であるから、その傾斜方向への位置移動を、軸心回りの回転によって操作でき、傾斜部35の側面35aから突出する突出量を容易に調整できる。この調整によって、案内部材19が押圧体31に当接する位置、具体的には、案内部材19の先端面19cが押圧部16の当接面17aに当接する位置を、当接面17aとの対向方向で位置調整できる。よって、案内部材19の突出量を調整することにより、定規22の厚みに違いがあったり、定規固定機構部30の成形精度に違いがあったりした場合でも、押圧体31によって最適な押圧力で定規22を押圧できるよう、押圧体31を適正な位置に上下位置調整させられる。すなわち、案内部材19は、押圧体31を押し込むことにより定規22の上面を押圧している状態における押圧部16の位置を、定規22の厚みに応じて上下させる上下動機構部としての機能を備えている。
案内部材19、押圧体31、および定規22の関係として、定規22の厚みが違っていても、案内部材19(先端面19c)は、押圧体31の押圧部16(底面16a)の前後方向位置をほぼ変えることなく、押圧部16によって、定規22の上面を押圧できるよう設定した構成となっている。例えば図8では、実線は定規22の厚みが薄い場合、二点鎖線は定規22の厚みが厚い場合を示しており、定規22の厚みに応じて変わる押圧部16の押圧位置に対する案内部材19の位置調整を示している。この図から明らかなように、案内部材19は、押圧体31を案内部材19と定規22との間に押し込んで定規22の上面を押圧している状態における押圧部16の位置を、定規22の厚みに応じて上下させる。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において多くの変更が考えられる。第一の実施形態では、回動体27の支軸5bに沿う一端側には、支軸5bを囲むようにOリング33が設置され、Oリング33が潰されるよう弾性変形していることで、操作レバー32及び押圧体31がそれ自体の重量で支軸5b回りに回動しないよう制限された例を示した。
しかしながら、図9および図10に示す第二の実施形態のように、定規固定機構部30において、Oリング33の代わりに、操作レバー32及び押圧体31がそれ自体の重量で支軸5b回りに回動しないよう制限するばね(コイルばね)40を用いることもできる。このばね40は、図において、押圧体31を支軸5b回りに時計方向に回動する方向に付勢するものである。つまり、ばね40の付勢力は、押圧体31の当接面17aを常に先端面19cに押圧させるので、操作レバー32及び押圧体31がそれ自体の自重で支軸5b回りに回動しないように規制することができる。なお、他の構成は第一の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
図11に第三の実施形態を示す。第三の実施形態では、定盤5において、定規固定機構部30に対応する箇所に、板ばね41を設置する板ばね載置部42,42が形成されている。そして、板ばね載置部42,42に板ばね41の端部が載置され、板ばね41は、定規22の上面と押圧部16の底面16aとの間に配置されている。なお、板ばね41は、左右方向途中部分が端部に比べて上方に位置する形状に形成されている。
この構成によれば、押圧部16の底面16aは、板ばね41を介して定規22の上面を押圧する。さらに、板ばね41の弾性により、押圧体31が支軸5b回りに時計方向に回動する方向に付勢され、この付勢力によって、押圧体31の当接面17aを常に先端面19cに押圧させることができる。従って、操作レバー32及び押圧体31がそれ自体の自重で支軸5b回りに回動しないように規制することができる。なお、他の構成は第一の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
図12に第四の実施形態を示す。第四の実施形態では、定規固定機構部30として、案内部材19は立上部45に対して水平方向に位置調整自在に構成されている。案内部材19は、立上部45に形成された雌ねじに螺合する雄ねじ部材とされている。また、操作レバー46と、押圧体47とは、それぞれ別の支軸48a,48b回りに回動するよう構成されている。さらに、操作レバー46の非押圧姿勢では、押圧体47は案内部材19の先端面19cに当接しておらず、案内部材19の上方に位置付けられる。
さらに具体的に、操作レバー46は、回動支持片20,20に端部を支持された支軸48a回りに回動自在とされている。押圧体47は、操作レバー46の基端部側に一体的に形成されて支軸48aと平行な支軸48bに揺動自在に支持されている。押圧体47は、支軸48b側が小径の小円弧面49で、先端側が大径の大円弧面50とした略楕円形に形成されている。支軸48bは、回動支持片20,20には支持されず、操作レバー46にのみ支持されている。押圧体47のうち、案内部材19の先端面19cに当接する当接面47aは、大円弧面50上にある。また、定規22の上面を押圧する押圧面も大円弧面50上にある。押圧体47は、回動支持片20,20の間に収容される支軸48b方向の厚みを備えている。
上記構成において、図12(a)では、操作レバー46は非押圧姿勢である。このとき、操作レバー46は、支軸48a回りに最大限時計方向に回動した状態にある。図12(b)では、図12(a)の状態から操作レバー46が支軸48a回りに反時計方向に回動された状態であり、操作レバー46の回動に伴い押圧体47が支軸48aの周囲を移動する。図12(b)の状態では、操作レバー46は非押圧姿勢であり、大円弧面50は定規22の上面には非接触の状態である。しかしながら、案内部材19の先端面19cに大円弧面50上の当接面47aが当接している。
さらに、図12(c)に示すように、操作レバー46を反時計方向に、支軸48a回りに回動させると、押圧体47は、当接面47aが案内部材19の先端面19cに当接していることで、その当接力が反力となって、大円弧面50上の押圧面が定規22の上面を押圧し、定盤5に対して定規22を確実に固定することができる。
このように、第四の実施形態の丸鋸1では、操作レバー46と押圧体47とを異なる支軸48a,48b回りに回動させるよう構成し、案内部材19の先端面19cに押圧体47の当接面47aが当接する力を反力として、押圧体47により、定規22を押圧するものである。
図13および図14は、さらに別の実施形態を表している。図13の例では、上下動機構部としての突起部材(例えば雄ねじ部材)55が、押圧体56側に設けられており、突起部材55の押圧体56の上面からの突出量が変更可能に構成されている。突起部材55の近傍には、突起部材55の突出側端面55aに当接可能な案内部材57が固定設置されている。そして、実線および仮想線で示すような、定規22の厚みに応じて前記突起部材55の突出量を変更して、案内部材57の案内面57aに突起部材55の突出側端面55aが当接するよう、定規固定機構部30が構成されている。このように構成されることで、突起部材55は、押圧体56を押し込むことにより定規22の上面を押圧している状態における押圧部16の位置を、定規22の厚みに応じて上下させる上下動機構部として機能する。
図14に示す例では、押し込み側を尖端形状とした押圧体60を水平方向から、案内部材19と定規22との間に押し込み、押圧体60により、定規22を定盤5に対して押圧するよう構成されている。案内部材19は、第一の実施形態ないし第四の実施形態と同様に、それ自体の位置調整が可能に構成されており、押圧体60の先端部60aが、案内部材19の先端部19cと定規22の上面との間に押し込まれ、楔力を発生させて、定規22の上面を押圧する。この場合では、案内部材19の位置調整により、図の実線および二点鎖線で示すような定規22の厚みに応じて、押圧体60の前後方向の位置を変更することなく、押圧体60を上下させて、定規22の上面を押圧することができる。
なお、本発明は、上記各実施形態では電動工具として丸鋸を例に用いているが、電動ジグゾーなどであっても適用できる。