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JP6509084B2 - 車両用変速装置のトランスミッションケース - Google Patents

車両用変速装置のトランスミッションケース Download PDF

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Description

本発明は、2つのプーリ間に巻き掛けたVベルトにより、一方のプーリの回転駆動力を他方のプーリに伝達するベルト式変速機構を主体とする車両用の無段変速装置(Continuously Variable Transmission:CVT)におけるトランスミッションケースに関する。
従来のCVTとしては、エンジンのシリンダブロック(以下、単にエンジンと言う)に接続されるコンバータハウジングとこのコンバータハウジングに結合するトランスミッションハウジングとでトランスミッションケースを形成し、コンバータハウジングにトルクコンバータを収納し、トランスミッションハウジングに変速機構を収納している。
多く採用されてきた変速機構は、トルクコンバータに連結される入力軸を第1軸としてプライマリプーリを配置し、入力軸と平行な第2軸にセカンダリプーリを配置して両プーリ間にVベルトを巻き掛けてベルト式の主変速機構を形成し、さらにそれぞれ入力軸と平行な第3軸にカウンタギア、第4軸にファイナルギアを配置して構成されており、カウンタギアがセカンダリプーリの回転をファイナルギアに伝達する。
コンバータハウジングは軸方向において駆動源であるエンジン側が開口し他側が隔壁をなすコンバータ収納部を形成するとともに、隔壁はトランスミッションハウジングに結合したときに各軸の支持部を形成する。
コンバータ収納部の開口周縁はエンジンとの合わせ面を有するフランジ部となっている。
なお、第1軸上にはトルクコンバータとの間にプラネタリギアなどからなる副変速機構を備える場合もある。
ところで、トランスミッションハウジングの下部にはオイルが溜められ、ギアその他の回転部材の潤滑必要箇所へのオイル供給安定確保のため、傾斜路面等による車両姿勢の変化や発進あるいはブレーキング時等でもオイル面が所定高さを保持するように設定されている。しかし他方、プーリや副変速機構においてはオイル内への浸漬量が大きいために攪拌抵抗が増大して燃費性能に悪影響を及ぼすことになる。
この対策として、例えば特開2011−21662号公報に示されるように、プライマリプーリおよびセカンダリプーリをCVTの車載姿勢において第1軸の入力軸から上方にオフセットさせた第2軸および第3軸に配置すれば、オイル面の高さを保持しながらプーリとオイルの接触量を低減することができる。
この場合、変速機構における軸数が増大すると軸受数増大を含めてコストの増大を招くとともにトランスミッションハウジングのサイズも大型化するので、プライマリプーリのオフセット前と同じ4軸に抑えるため、カウンタギアはセカンダリプーリと同じ第3軸の軸線上に配置される。
ここで、第4軸のファイナルギアはこれと一体のデファレンシャルがホイールの駆動シャフトと連結する関係でできるだけ入力軸の第1軸よりも低い位置に設定されるが、カウンタギア(およびセカンダリプーリ)は第2軸(プライマリプーリ)からプライマリプーリとセカンダリプーリの径サイズで決まる距離および第4軸からカウンタギアとファイナルギアの径サイズで決まる距離とで定まる位置に設定される。
第3軸のカウンタギアはファイナルギアよりも小径で、ファイナルギアとで最終減速段をなしているので、ホイール駆動時には大きなトルクがかかるとともに、例えばパーキングギア係止時にはホイール側から衝撃的な逆トルクがかかるなど大きな負荷を受ける。このため、その支持構造に歪みなどがあると車両走行時の振動騒音の原因となる。
このカウンタギアを支持するためのコンバータハウジング隔壁の支持部は、トランスミッションハウジング側に開口するとともにエンジン側に突出するシリンダ部となっており、そのシリンダ穴にブッシュが治具で圧入されて駆動ギアの軸心を規定するようになっている。シリンダ部の壁厚は隔壁の一般壁厚と同等である。
ここで、シリンダ部はその壁厚が隔壁と同じく薄いので、ブッシュの圧入の際に変形してシリンダ穴の軸線が倒れるとともに、ベアリング突き当て面の平面度が悪化するなどのおそれがあり、上述の振動騒音を招く。
そこで、従来、図9に示すように、シリンダ部50’ がコンバータ収納部35を囲むフランジ部36’より外方に位置する場合には、シリンダ部50’外壁から放射方向にリブ46を設けてシリンダ部50’の剛性を高めるようにしている。
特開2011−21662号公報
しかしながら、第2軸の位置やプライマリプーリとセカンダリプーリの径サイズ、あるいはカウンタギアとファイナルギアの径サイズ等の設定によっては、軸方向から見たときカウンタギア(第3軸)すなわちシリンダ部50’の位置がフランジ部36’と重なるまで第1軸寄りとなる場合がある。この結果はシリンダ部(の外壁)50’がコンバータ収納部35内に露出することになる。
この場合、フランジ部36’が部分的にリブ機能を果たすとしても、コンバータ収納部35内では第1軸の軸線まわりに不図示のトルクコンバータが回転するため、シリンダ部50’からコンバータ収納部35内方へ向かうような放射状を想定した補強リブは設けることができないため剛性バランスが崩れ、ブッシュ圧入の際などにシリンダ部50’に歪みが生ずることになる。
また車両の運行中においても、Vベルトにより動力伝達する第2軸と第3軸間には引張りやその緩み(以下、便宜的に引張・圧縮力と言う)が作用するので、その方向は第3軸と第2軸を結ぶ方向、すなわち第2軸が位置するフランジ部36’の内側(コンバータ収納部35内方)に向かう線上となる。
さらに、第3軸と第4軸との関係においても、カウンタギアとファイナルギアによる動力伝達で、両ギアの?み合いの接線方向の力が両軸に作用する。この接線方向の力もコンバータ収納部35内方に向かう。
したがって、第3軸を支持するシリンダ部50’はこれらの力が重なってコンバータ収納部35内方に向かう線方向に倒れやすい。
そして上述のように、第4軸のファイナルギア(デファレンシャル)を支持するベアリング受け部も、シリンダ部50’と同様に、コンバータ収納部35内方に向かう接線方向に大きな負荷を受ける。
ここで、駆動シャフトを通過させるとともにベアリング受け部を備えるシャフト通過孔55も一部フランジ部36’にかかっているので、フランジ部36’に沿った周方向の剛性は高く、またフランジ部36’より外部においては放射状のリブも設けられる。
しかし、コンバータ収納部35内方に向かう方向には放射状を想定した補強リブは設けることができない。こうして、ベアリング受け部が薄い壁厚の隔壁に連なっているだけでは、大きな負荷によってシリンダ部50’と同様に軸線が倒れる歪みが生じ、車両走行時の振動騒音の原因となる。
このような問題はトルクコンバータを収納するコンバータハウジングを有するトランスミッションケースのみでなく、トルクコンバータの代わりに電磁クラッチその他の継手を収納する継手ハウジング一般を有するトランスミッションケースにおいても同様である。
したがって本発明は、上述の問題に鑑み、トランスミッションハウジングと結合されるコンバータハウジング、とくにデファレンシャルを支持するベアリング受け部の剛性を向上させたトランスミッションケースを提供することを目的とする。
このため本発明は、継手と変速機構とを有してその変速機構に少なくともファイナルギアを備える車両用変速装置のトランスミッションケースであって、隔壁により継手収納部と変速機構収納部に区画され、継手収納部は駆動源に接続するフランジ部で囲まれ、隔壁には、継手収納部に隣接してファイナルギアと一体のデファレンシャルから延びる駆動シャフトを通すとともにデファレンシャルを支持するベアリング受け部を備えるシャフト通過孔が形成され、該シャフト通過孔と継手収納部の中心を結ぶ線を横切ってフランジ部の内周面より前記継手収納部内方に膨出する段部を設けた構成とした。
本発明によれば、シャフト通過孔と継手収納部間の剛性が段部により向上し、シャフト通過孔に形成されデファレンシャルを支持するベアリング受け部の変形や軸の倒れが防止される。
また、段部には給油パイプに代わる油路を形成することができ、部品削減となる。
実施の形態にかかるCVTを含むパワートレーンを示す図である。 CVTの断面展開図である。 コンバータハウジングの正面図である。 カウンタ軸を支持するシリンダ部の断面を示す図である。 金型中子抜き用の押しボスを参照して設定した補強壁の説明図である。 図3におけるC−C部断面図である。 コンバータハウジングの裏面図である。 図7におけるD−D部断面図である。 従来例を示すコンバータハウジングの正面図である。
以下、本発明をトルクコンバータを継手として備えるCVTのトランスミッションケースに適用した実施の形態について説明する。
図1は実施の形態にかかるCVTを含むパワートレーンを示す図、図2はCVTのカウンタギアを支持するシリンダ部を含む断面展開図である。
図1に示すように、エンジン1の出力がCVT2のトルクコンバータ3および変速機構4を経て、駆動シャフト5を介してホイール6に伝達される。
変速機構4においては、トルクコンバータ3に連結する入力軸10が第1ギア11を備え、プライマリプーリ13の軸(プライマリ軸12)が第2ギア14を備えて、第1ギア11と第2ギア14の噛み合いによりトルクコンバータ3の出力がプライマリプーリ13、Vベルト15およびセカンダリプーリ17からなる主変速機構7に入り、主変速機構7の出力が副変速機構8を経てファイナルドライブ9に入る。
ファイナルドライブ9はカウンタギア19とデファレンシャル21に取り付けられてカウンタギア19に噛み合うファイナルギア20とからなり、ファイナルギア20の回転が、デファレンシャル21を経て駆動シャフト5に伝達される。
副変速機構8はセカンダリプーリ17の軸(セカンダリ軸16)線上に配置され、カウンタギア19の軸(カウンタ軸18)もセカンダリ軸16の軸線上にある。
カウンタ軸18にはパーキングギア22も取り付けられている。
図1のパワートレーンは特開2011−21662号公報に記載されたものと実質同一であり、副変速機構8の詳細は同公報を引用して省略する。
パワートレーンのトルクコンバータ3以下、デファレンシャル21までの構成部品は、図2に示すように、合わせ面Fで結合したコンバータハウジング31とトランスミッションハウジング66とで形成されるトランスミッションケース30内に設けられ、トランスミッションハウジング66はまたハウジング本体67とサイドカバー68とからなる。
トルクコンバータ3はコンバータハウジング31のコンバータ収納部35に配置され、トランスミッションハウジング66内に第1ギア11を位置させた入力軸10がコンバータハウジング31の隔壁32を貫通してコンバータ収納部35内に延び、トルクコンバータ3の出力を主変速機構7に入力する。
入力軸10は、トルクコンバータ3に接続する一端がハウジング本体67の第1隔壁70からコンバータ収納部35へ延びるステータシャフト70aを貫通することにより当該ステータシャフト70aに支持され、他端がハウジング本体67の第2隔壁71に支持される。
なお、トルクコンバータ3からはコンバータスリーブ3aがステータシャフト70aの外周側をトランスミッションハウジング66側へ延びている。
トランスミッションハウジング66内では、入力軸10と並行にプライマリ軸12が設けられ、プライマリプーリ13を挟む軸方向一端はサイドカバー68に支持され、他方は第2隔壁71に支持されるとともに、当該第2隔壁71を貫通した先端に入力軸10の第1ギア11と噛み合う第2ギア14を備えている。
セカンダリ軸16もセカンダリプーリ17を挟む軸方向一端がサイドカバー68に支持され、他方は第2隔壁71に支持されている。
カウンタ軸18はセカンダリ軸16と同一の軸線上で、セカンダリ軸16よりコンバータハウジング31側に配置され、カウンタギア19を挟む一方の側をコンバータハウジング31の隔壁32に形成したシリンダ部50に支持され、他方の側はハウジング本体67内の第1隔壁70に支持されるとともに当該第1隔壁70を貫通してセカンダリ軸16側へ延びている。そして、軸方向セカンダリプーリ17とカウンタギア19の間に配置した副変速機構8は、とくに図示しないがその入力軸をセカンダリ軸16に連結させ、出力軸をカウンタ軸18に連結させている。
なお、プライマリプーリ13をオフセットさせる場合、入力軸10とプライマリ軸12の間は第1ギア11と第2ギア14の噛み合いにより連結することになるので、トランスミッションハウジング66の大型化によらなければ、これらのギアとの干渉を避けて副変速機構8をプライマリプーリ13とともにオフセットさせることはできない。このため、副変速機構8はセカンダリプーリ17より後段に配置してある。
また、コンバータハウジング31は隔壁32のシリンダ部50に隣接する所定部位をデファレンシャル収納スペース形成のための後退壁部32aとしている。
後退壁部32aは、合わせ面Fから所定量後退させてファイナルギア20と対向しカバーするギアカバー部33cと、ギアカバー部33cの内周側から立ち上がって筒部33aにつながる側壁部33bとからなる。
筒部33aは、デファレンシャル21からトランスミッションケース30外のホイール6へ延びる駆動シャフト5を通すシャフト通過孔55を有し、そのトランスミッションハウジング66側の端にベアリング受け部56を備えてベアリング62を保持する。
後退壁部32a(ギアカバー部33c、側壁部33bおよび筒部33a)は原則的にコンバータ収納部35の隔壁32から同等の壁厚で延びている。
そして、この後退壁部32aに対応させてハウジング本体67もコンバータハウジング31との合わせ面Fから離間した対向壁部73を有している。これにより後退壁部32aと対向壁部73の間にデファレンシャル収納スペースが形成され、デファレンシャル21はその軸の一端を後退壁部32a(ベアリング62)に支持され、他端を対向壁部73に支持されて、ファイナルギア20がカウンタギア19と噛み合う。
なお上述した各軸の支持は、特記する以外とくに参照符号は付さないが、負荷に応じた図示のボールベアリングあるいはローラベアリングを介している。
ここで、まずカウンタ軸18を支持するコンバータハウジング31のシリンダ部50まわりの詳細について説明する。
シリンダ部50は、隔壁32の一般肉厚と同等の壁厚をもって形成され、シリンダ孔としてトランスミッションハウジング66側に開口するベアリング受け部51と、その奥に続くより小径のスリーブ受け部52を有し、さらにスリーブ受け部52の奥は閉じた軸端収容部53となっており(後掲の図4の(b)参照)、外壁が隔壁32からコンバータハウジング31内方へ立ち上がる山形をなしている。
ベアリング受け部51には、カウンタ軸18にインナロータを圧入したベアリング60のアウタロータが保持される。スリーブ受け部52にはスリーブ61が圧入されており、このスリーブ61にカウンタ軸18が挿入されて当該カウンタ軸の軸心位置を規定する。そして、カウンタ軸18のスリーブ61を貫通した先端が軸端収容部53に延びている。
図3はコンバータハウジング31を軸方向エンジン側から見た正面図である。
コンバータ収納部35の開口を囲む周縁はエンジン1との合わせ面を有するフランジ部36となっており、フランジ部36には周方向適宜の間隔でエンジン取り付け用のボルト孔39が設けられている。
フランジ部36は面圧確保のため所定の軸方向肉厚を有しているので、ボルト孔39まわりを除いて可能な部位には多くの肉抜き穴40を形成して、重量および材料費の軽減を図っている。このため、フランジ部36は肉抜き穴40を挟んで離間したアウタ壁37とインナ壁38とからなる2重壁を呈している。すなわち、各ボルト孔39はアウタ壁37とインナ壁38間の幅内に位置している。
隔壁32のコンバータ収納部35中央には、内側に入力軸10を通したトルクコンバータ3のコンバータスリーブ3aを貫通させるスリーブ孔42が設けられており、その中心を入力軸10が通る。
また、フランジ部36の外方に後退壁部32aの外壁が図面手前方向に膨出しており、前述のシャフト通過孔55が開口している。
なお、仮想線は入力軸10(スリーブ孔42)からオフセットしたプライマリプーリ13とセカンダリプーリ17を示している。
カウンタギア19を支持するシリンダ部50はフランジ部36と重なっており、シリンダ部50(シリンダ孔:ベアリング受け部51、スリーブ受け部52)の軸心がほぼフランジ部36のインナ壁38上に位置している。
そこで本実施の形態では、フランジ部36(アウタ壁37、インナ壁38)より内径側に、シリンダ部50の外壁に接続するとともにフランジ部36にそって延びる補強壁45を設けてある。補強壁45はシリンダ部50と重なっている部分のアウタ壁37およびインナ壁38と同等の壁厚を有するとともに、スリーブ孔42を中心とする弧状をなし、シリンダ部50からコンバータ収納部35の周方向両側にほぼ同等長さだけ延びた上で、適宜のボルト孔39近傍でフランジ部36のインナ壁38に合流して終わる。これにより、シリンダ部50の少なくともスリーブ受け部52がフランジ部36から補強壁45にわたる幅W内に収まる(後掲の図4の(b)参照)。
図4の(a)は図3におけるA−A部断面を示し、(b)は図3におけるB−B部断面を示す。
(a)に示すように、補強壁45の軸方向高さはフランジ部36上端の合わせ面Mと面一になるようになっている。
補強壁45のフランジ部36からの張り出し量、逆に言えばスリーブ孔42からの距離(半径)にはコンバータ収納部35で回転するトルクコンバータ3との干渉を避けるために限度があって、回転時の遠心力や熱によるトルクコンバータ3の膨張も考慮する必要がある。
そこで、図5に示すように、コンバータハウジング鋳造における金型中子抜き用の押しボス44がフランジ部36より内側に設定してある場合には、当該押しボス44の位置をトルクコンバータ3と干渉しない最小径位置とすればよい。すなわち、図3、図5に示すように補強壁45の内径側壁面が押しボス44におけるトルクコンバータ3の回転軸線(スリーブ孔42の中心)から最短距離の側面に接するように形成すればよい。
ここでは押しボス44がフランジ部36からコンバータ収納部35内へ突出するとともにシリンダ部50と重なる位置に設定してあるので、図4の(b)に示すように、シリンダ部50の頂部においてフランジ部36のインナ壁38と補強壁45とが平坦な上面をもってつながり、この上面を押しボス44の端面としている。
こうして、シリンダ部50がフランジ部36と重なっているので、フランジ部36のアウタ壁37およびインナ壁38はそれぞれシリンダ部50の外壁に接続したリブとして機能する。そしてコンバータ収納部35に露出する部分についてもさらに弧状の補強壁45がリブとして機能することになって、コンバータ収納部35内方へ向かうなど放射状リブの設定が不可であるにもかかわらず、3重壁で偏りのない剛性バランスが得られる。
これにより、コンバータ収納部35内方に向かう線上に作用する引張・圧縮力に対し変形や軸の倒れが防止される。しかも、フランジ部36のアウタ壁37、インナ壁38はシリンダ部50の頂部よりも高く、補強壁45もこれらと同一高さを有しているので、シリンダ部50にとくに高い剛性を与える。
つぎに、図2に戻り、コンバータハウジング31の後退壁部32aは、前述のようにシャフト通過孔55のベアリング受け部56にベアリング62を保持してデファレンシャル21を支持する。
そして、図3に示すように、フランジ部36の外側においてシャフト通過孔55の周囲に放射状にリブ57を形成して補強している。
しかし、シャフト通過孔55は一部フランジ部36に重なっており、シャフト通過孔55につながるアウタ壁37もリブとして機能するが、コンバータ収納部35との間を横切るインナ壁38が薄い肉厚のままでは剛性のバランスが取れない。
そこで、シャフト通過孔55のコンバータ収納部35内方に向かう剛性を高めるため、本実施の形態では、シャフト通過孔55近傍においてコンバータ収納部35の隔壁32から立ち上がり、フランジ部36(インナ壁38)の内周面よりコンバータ収納部35内方に向かって膨出する段部58を設けてある。
段部58は図3の正面図においてシャフト通過孔55とコンバータ収納部35の中心を結ぶ線を横切っており、スリーブ孔42に対向する面が直線状で、両端は周方向両側のインナ壁38の一般面に合流している。
図6は図3のC−C部における段部58の断面を示し、インナ壁38からの最大突出量および隔壁32からの高さはコンバータ収納部35内で回転するトルクコンバータ3と干渉しない値に設定される。
これにより、ベアリング受け部56を備える筒部33aとコンバータ収納部35の間に肉厚部が形成され、コンバータ収納部35内方に向かう線上に作用する引張・圧縮力に対してもベアリング受け部56の変形や軸の倒れが防止される。
この段部58の設定領域には従来トランスミッションハウジング66の油路につながる図3における下部のシャフト通過孔55近傍から第3軸上の副変速機構8(シリンダ部50)への給油パイプが配置されていたので、これに代わる油路59が段部58内に形成してある。
なお、とくに図示しないが、油路59は通例のように外部からの穿鑿加工後その一端または両端を盲栓で閉じた複数の孔を交差させて連通させた曲折油路の一部をなす。
これにより、段部58による剛性向上とともに給油パイプが廃止され、部品が削減される。
段部58はコンバータハウジング31のコンバータ収納部35に突出するように設けられたが、さらにその裏側のデファレンシャル収納スペース(後退壁部32a)の内面にも段部64が設けられている。
図7はトランスミッションハウジング66側から見たコンバータハウジング31の裏面図、図8は図7におけるD−D部断面図である。なお、図3にはD−D部の対応位置を(D)−(D)で示している。
ファイナルギア20が取り付けられたデファレンシャル21は静止状態では下半部がオイルに浸かっているが、走行中はファイナルギア20がオイルをかき上げ他の部位へ流してしまうおそれがある。この対策として、後退壁部32aの側壁部33bからギアカバー部33cにかけて、車載姿勢におけるシャフト通過孔55の軸芯から垂直上方の線上に段部64が設けられ、ファイナルギア20の回転周方向に対する壁を形成している。
段部64の周方向断面はオイルの流れに対する抵抗となって壁として機能すれば、山形でも台形でも任意である。
これにより、不図示のファイナルギア20およびデファレンシャル21はとくに頻度の多い前進走行時反時計方向Rに回転し、オイルを同方向にかき上げる。かき上げられたオイルはデファレンシャル21の上方において段部64に捕捉され、デファレンシャル21へ落下するのでその十分な潤滑が確保される。
この段部64はまた肉厚部として筒部33aに対する放射状のリブとしても機能するからベアリング受け部56の剛性をさらに高める。
本実施の形態では、エンジン1が発明における駆動源であり、CVT2が車両用変速装置であり、トルクコンバータ3が継手に該当する。
コンバータハウジング31のコンバータ収納部35が継手収納部に該当し、トランスミッションハウジング66が変速機構収納部に該当する。
段部58が段部に該当し、段部64が第2の段部に該当する。
実施の形態は以上のように構成され、CVT2のトランスミッションケース30において、隔壁32によりトルクコンバータ3を収納するコンバータ収納部35と変速機構4を収納するトランスミッションハウジング66に区画され、コンバータ収納部35はエンジン1に接続するフランジ部36で囲まれて、トランスミッションハウジング66側に開口するベアリング受け部51とスリーブ受け部52を有してカウンタ軸18を支持するシリンダ部50がその外壁をコンバータ収納部35に露出するように軸方向から見てフランジ部36と重なり、コンバータ収納部35の内側に、シリンダ部50の外壁に接続するとともにフランジ部36にそって延びる補強壁45を有しているものとしたので、シリンダ部50がフランジ部36より外側に位置するときのようなコンバータ収納部35内方へ向かうリブの設定が不可であるにもかかわらず、シリンダ部50に高い剛性が得られる。
シリンダ部50のスリーブ受け部52にはカウンタギア軸18の軸線を規定するスリーブ61が圧入され、少なくともこのスリーブ受け部52がフランジ部36から補強壁45にわたる幅W内に収まるようにしているので、スリーブ圧入の際にスリーブ受け部52まわりが変形して歪むことが防止される。
補強壁45はとくにトルクコンバータ3の回転軸線を中心とする弧状をなしているので、フランジ部36よりもコンバータ収納部35内へ張り出すにもかかわらず、トルクコンバータとの干渉が補強壁45の長手方向に沿うどの場所でも安定して回避される。
この場合、とくに補強壁45の内径側壁面が金型中子抜き用の押しボス44におけるトルクコンバータ3の回転軸線から最短距離の側面に接するように設定することにより、押しボス44がトルクコンバータ3と干渉しない位置に設定されていることから確実な干渉回避が得られる。
フランジ部36がアウタ壁37およびインナ壁38の2重壁とされ、補強壁45がアウタ壁37およびインナ壁38と同等の壁厚を有するとともに、フランジ部36のエンジンとの合わせ面Mまでと同一の高さを有して、フランジ部36と補強壁45とで3重壁を形成しているので、バランスに偏りがなく且つとくに高い剛性を有する。
そして、隔壁32のコンバータ収納部35隣接部位(後退壁部32a)には、ファイナルギア20と一体のデファレンシャル21から延びる駆動シャフト5を通すとともにデファレンシャル21を支持するベアリング受け部56を備えるシャフト通過孔55が形成され、シャフト通過孔55とコンバータ収納部35の中心を結ぶ線を横切ってフランジ部36の内周面よりコンバータ収納部35内方に膨出する段部58を設けてあるので、シャフト通過孔55とコンバータ収納部35の間の剛性が向上し、ベアリング受け部56の変形や軸の倒れが防止される。
(請求項1に対応する効果)
段部58は、隔壁32からフランジ部36と重なったシリンダ部50までコンバータ収納部35の周方向に延びており、段部58内にはカウンタギア19の軸へオイルを供給する油路59が形成されているので、給油パイプの廃止により、部品が削減される。
(請求項2に対応する効果)
さらに、隔壁32のトランスミッションハウジング66側においてファイナルギア20に対向するギアカバー部33cまたはデファレンシャル21に対向する側壁部33bの車載姿勢におけるシャフト通過孔55の軸芯より高い位置に、シリンダ部50から該軸芯に向かう方向に段部64を設けたので、ファイナルギア20およびデファレンシャル21によりかき上げられるオイルがデファレンシャル21の上方で捕捉され落下することにより、デファレンシャル21の十分な潤滑が確保されるとともに、筒部33aを含む後退壁部32aに対する放射状のリブとしても機能してその剛性をさらに高める。
(請求項3に対応する効果)
実施の形態はトルクコンバータを継手として備えるCVTを例として示したが、継手としてはメカニカルクラッチや電磁クラッチその他でもよく、本発明は継手の種類に制限はない。駆動源もエンジンに限定されず、電動モータその他も採用可能である。
シリンダ部50はベアリング受け部51に加えてスリーブ受け部52を有するものとしたが、カウンタ軸の支持にスリーブを用いない場合には、スリーブ受け部は不要である。
段部58はコンバータハウジング31の正面図においてスリーブ孔42に対向する面を直線状としたが、これに限定されず、弧状としてコンバータ収納部35の周方向、すなわちフランジ部36の内面に沿って長さを延ばすこともできる。
また、コンバータハウジング31裏面側の段部64は後退壁部32aの側壁部33bからギアカバー部33cにまたがって設けたが、デファレンシャル21またはファイナルギア20との間隙の制約によっては側壁部33bまたはギアカバー部33cの一方にだけ形成してもよい。
段部64はシャフト通過孔55の軸芯から車載姿勢における直上(垂直上方の線上)に設けたが、軸芯より高い範囲内で直上から車両前進走行時のファイナルギア20およびデファレンシャル21の回転方向に対向する位置、すなわちオイルがかき上げられる側にずれた位置でもよく、これにより、オイルを有効に捕捉し確実にデファレンシャル21へ誘導することができる。
(請求項4に対応する効果)
さらに、実施の形態では変速装置がプーリとベルトを用いた無段変速の機構を有するものとしたが、他の形式による無段変速機構を有するものでもよく、さらにはシリンダ部がファイナルドライブにおいてファイナルギアと噛み合うカウンタギアの軸を支持するものであれば、本発明は有段変速装置のトランスミッションケースにも適用可能である。
1 エンジン
2 CVT
3 トルクコンバータ
3a コンバータスリーブ
4 変速機構
5 駆動シャフト
6 ホイール
7 主変速機構
8 副変速機構
9 ファイナルドライブ
10 入力軸
11 第1ギア
12 プライマリ軸
13 プライマリプーリ
14 第2ギア
15 Vベルト
16 セカンダリ軸
17 セカンダリプーリ
18 カウンタ軸
19 カウンタギア
20 ファイナルギア
21 デファレンシャル
22 パーキングギア
30 トランスミッションケース
31 コンバータハウジング
32 隔壁
32a 後退壁部
33a 筒部
33b 側壁部
33c ギアカバー部
35 コンバータ収納部
36 フランジ部
37 アウタ壁
38 インナ壁
39 ボルト孔
40 肉抜き穴
42 スリーブ孔
44 押しボス
45 補強壁
46 リブ
50 シリンダ部
51 ベアリング受け部
52 スリーブ受け部
53 軸端収容部
55 シャフト通過孔
56 ベアリング受け部
57 リブ
58 段部
59 油路
60 ベアリング
61 スリーブ
62 ベアリング
64 段部
66 トランスミッションハウジング
67 ハウジング本体
68 サイドカバー
70 第1隔壁
70a ステータシャフト
71 第2隔壁
73 対向壁部
F、M 合わせ面

Claims (4)

  1. 継手と変速機構とを有してその変速機構に少なくともファイナルギアを備える車両用変速装置のトランスミッションケースであって、
    隔壁により継手収納部と変速機構収納部に区画され、
    前記継手収納部は駆動源に接続するフランジ部で囲まれ、
    前記隔壁には、前記継手収納部に隣接して前記ファイナルギアと一体のデファレンシャルから延びる駆動シャフトを通すとともに前記デファレンシャルを支持するベアリング受け部を備えるシャフト通過孔が形成され、該シャフト通過孔と前記継手収納部の中心を結ぶ線を横切って前記フランジ部の内周面より前記継手収納部内方に膨出する段部を設けたことを特徴とする車両用変速装置のトランスミッションケース。
  2. 前記ファイナルギアに噛み合うカウンタギアをさらに備えると共に、
    前記隔壁には前記変速機構収納部側にシリンダ孔が開口して前記カウンタギアの軸を支持するシリンダ部が形成され、
    前記シリンダ部は軸方向から見て前記フランジ部と重なり、
    前記段部は前記隔壁から前記継手収納部の周方向前記シリンダ部まで延びており、
    前記段部内には前記カウンタギアの軸へオイルを供給する油路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用変速装置のトランスミッションケース。
  3. さらに前記隔壁の変速機構収納部側において、前記ファイナルギアまたはデファレンシャルに対向する面の車載姿勢における前記シャフト通過孔の軸芯より高い位置に、前記シリンダ部から該軸芯に向かう方向に第2の段部を設けたことを特徴とする請求項に記載の車両用変速装置のトランスミッションケース。
  4. 前記第2の段部を、前記シャフト通過孔の軸芯の直上または直上から車両前進走行時の前記ファイナルギアおよびデファレンシャルの回転方向に対向する位置に設けたことを特徴とする請求項3に記載の車両用変速装置のトランスミッションケース。
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