以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、本発明の吸水性物品を使い捨ておむつとして具体化している。図1は、その使い捨ておむつを展開した状態で示す展開図である。また、図1では、その展開状態の使い捨ておむつをトップシート側から見ている。図2は、使い捨ておむつの構成を示す断面図である。なお、図2は図1のA−A線断面図に相当する。
図1に示すように、本実施形態の使い捨ておむつ10は、いわゆるテープ型の使い捨ておむつとされており、例えば大人(高齢者)を着用対象として用いられる大人用(高齢者用)の使い捨ておむつとされている。使い捨ておむつ10(以下、略しておむつ1という)は、着用時において着用者の腹側に配置される腹側部10aと、着用者の背側に配置される背側部10bと、着用者の股下に配置される股下部10cとを備える。おむつ10は、これら各部10a〜10cが並ぶ並び方向に長い縦長形状を有しており、上記並び方向が長手方向(図1の上下方向)、その長手方向と厚み方向とに直交する方向が幅方向(図1の左右方向)となっている。
図1及び図2に示すように、おむつ10は、液透過性のトップシート11と、液不透過性のバックシート12と、それら両シート11,12の間に介在された吸収体13とを備える。トップシート11は着用者の肌に接触(対向)させて配置される肌側の部材であり、バックシート12は肌側とは反対側(以下、反肌側ともいう)に配置される部材である。トップシート11とバックシート12と吸収体13とはいずれもおむつ10の長手方向に長い縦長形状を有している。
トップシート11は、液透過性材料(親水性材料)により形成され、例えば不織布により形成されている。トップシート11は、矩形形状(長方形状)をなしており、その長手方向の長さがおむつ10の長手方向の長さと同じとなっており、その幅方向の長さが吸収体13の幅方向の長さよりも若干大きくなっている。トップシート11は、吸収体13を肌側から覆うように配置され、詳しくは吸収体13の全体を肌側から覆うように配置されている。
バックシート12は、液不透過性材料(疎水性材料)により形成され、例えばポリエチレン樹脂等の樹脂フィルムにより形成されている。バックシート12は、矩形形状(長方形状)をなしており、その長手方向の長さが吸収体13の長手方向の長さよりも若干大きく、かつその幅方向の長さが吸収体13の幅方向の長さよりも若干大きくなっている。バックシート12は、吸収体13をトップシート11側とは反対側(換言すると反肌側)から覆うように配置され、詳しくは吸収体13の全体を反肌側から覆うように配置されている。また、バックシート12は、ホットメルト接着剤等を用いて吸収体13に接合されている。
上記の構成によれば、着用者により排泄された尿等の液体はトップシート11を透過して吸収体13に吸収され同吸収体13において保持される。そして、吸収体13に吸収保持された液体がおむつ10の外部に漏れ出ることがバックシート12により防止される。なお、吸収体13の構成については後述することとする。
おむつ10には、その幅方向における吸収体13を挟んだ両側に一対のサイドシート14が設けられている。各サイドシート14は、おむつ10の長手方向に延びており、その長さがおむつ10の長手方向の長さと同じとなっている。サイドシート14は、トップシート11とバックシート12とに跨がって配置され、その幅方向の一端側がトップシート11にホットメルト接着剤等を用いて接合され、他端側がバックシート12にホットメルト接着剤等を用いて接合されている。
各サイドシート14には、トップシート11との接合部付近からトップシート11とは反対側(換言すると肌側)に向けて起立する起立部14aが形成されている。起立部14aは、サイドシート14の長手方向に延びており、その起立部14aには弾性を有する糸ゴム等の伸縮部材15が上記長手方向に沿って配設されている。この場合、起立部14aと伸縮部材15とにより立体ギャザーが構成され、その立体ギャザーにより尿等の液体が横漏れすることが防止されている。なお、図1では便宜上、伸縮部材15を一点鎖線で示している。
サイドシート14とバックシート12とが接合される接合部分には弾性を有する糸ゴム等の伸縮部材16が配設されている。伸縮部材16は、これら各シート12,14の間においてサイドシート14の長手方向に沿って配設されている。この伸縮部材16等によりレグギャザーが構成され、そのレグギャザーにより脚廻りの密着性が高められている。なお、図1では便宜上、伸縮部材16を二点鎖線で示している。
バックシート12には、反肌側にカバーシート19が設けられている。カバーシート19は、バックシート12を補強するとともに、おむつ10の手触りを向上するためのシートである。カバーシート19は、液不透過性材料(疎水性材料)により形成され、例えば不織布、とりわけ手触りに優れる不織布により形成されている。カバーシート19は、平面視した際に、おむつ10の外観形状に略一致する形状を有する。また、カバーシート19は、ホットメルト接着剤等を用いてバックシート12に接合されている。
カバーシート19には、おむつ10の背側部10bに相当する部位に一対のフックテープ17が設けられている。これらのフックテープ17はカバーシート19の幅方向の両端部にそれぞれ取りつけられている。また、カバーシート19には、おむつ10の腹側部10aに相当する部位にフロントパッチ18が取り付けられている。フロントパッチ18は、カバーシート19の幅方向の中央部に取り付けられている。フロントパッチ18にはフックテープ17が止着可能とされており、おむつ10を装着する際には、各フックテープ17をそれぞれフロントパッチ18に止着することでおむつ10を装着する。
次に、吸収体13の構成について図1に加え図3を用いながら詳しく説明する。なお、図3は吸収体13の構成を示す断面図である。また、図3において(a)は吸収体13が液体を吸収する前の状態、すなわち吸収体13が液体を吸収して膨潤する前の状態(初期状態)を示しており、(b)は吸収体13が液体を吸収して膨潤した後の状態を示している。
図1に示すように、吸収体13は、おむつ10の長手方向に長い矩形形状(長方形状)を有している。そのため、吸収体13は、その長手方向がおむつ10の長手方向と同方向、その幅方向がおむつ10の幅方向と同方向となっている。
図3(a)に示すように、吸収体13は、厚み方向に積層された複数の吸液層21〜24を有している。つまり、吸収体13は、それら複数の吸液層21〜24からなる複層構造となっている。これらの吸液層21〜24はいずれも矩形(長方形)のマット状(板状)をなしており、その平面視の大きさ(詳しくは長手方向の長さ及び幅方向の長さ)がいずれも同じ大きさとなっている。
吸収体13は、吸液層として、トップシート11側に配置されたトップシート側層21と、バックシート12側に配置されたバックシート側層22と、それらトップシート側層21とバックシート側層22との間に配置された中間層23,24とを有している。中間層23,24には、厚み方向に積層された第1中間層23と第2中間層24とがある。したがって、中間層は、これら各中間層23,24からなる2層構造となっている。各中間層23,24のうち、第1中間層23はトップシート11側に配置され、トップシート側層21に隣接している。また、第2中間層24はバックシート12側に配置され、バックシート側層22に隣接している。このように、本吸収体13は、トップシート側層21、第1中間層23、第2中間層24及びバックシート側層22がこの順に積層された4層構造となっている。
吸収体13には、トップシート11側に開放された溝部31が形成されている。溝部31は、吸収体13の長手方向に沿って延びており、腹側部10aと股下部10cと背側部10bとに跨がって形成されている。溝部31は、吸収体13に1つだけ形成されており、吸収体13の幅方向において略中央部に配置されている。この場合、尿等の液体をこの溝部31を通じて吸収体13の長手方向に拡散させることができるため、液体を吸収体13の長手方向の広範囲において吸収させることができる。なお、溝部31が液体通路に相当する。
溝部31は、吸収体13のトップシート側層21、第1中間層23及び第2中間層24に跨がって形成されている。すなわち、吸収体13の上記各層21,23,24にはそれぞれ吸収体13の長手方向に延びるスリット32〜34が形成され(図4(a)〜(c)も参照)、それらのスリット32〜34はいずれも各々の層21,23,24を厚み方向に貫通し、互いに連通された状態となっている。そして、それら連通された各スリット32〜34により溝部31が形成されている。
続いて、各吸液層21〜24の構成について図3(a)に加え図4を参照しながら説明する。図4において(a)はトップシート側層21を示す正面図であり、(b)は第1中間層23を示す正面図であり、(c)は第2中間層24を示す正面図であり、(d)はバックシート側層22を示す正面図である。
トップシート側層21は、パルプにより形成されており、詳しくはパルプのみにより形成されたパルプ層となっている。これにより、トップシート側層21では、液体の吸収速度が高められている。トップシート側層21には、上述したようにスリット32が形成されている。スリット32は、図4(a)に示すように、その長手方向の両端部がいずれもトップシート側層21の端縁に達しておらず閉じた状態とされている。但し、スリット32の長手方向の両端部をトップシート側層21の端縁に達するように形成し、開放させるようにしてもよい。
バックシート側層22は、高吸水性ポリマー(SAP)とパルプとが混合されて形成された混合層となっている。これにより、バックシート側層22では、液体をしっかりと保持することが可能となっている。バックシート側層22では、図4(d)に示すように、それ以外の吸液層21,23,24と異なり、スリットが形成されていない。そのため、バックシート側層22は吸収体13の溝部31をバックシート12側から覆った状態で配置されている。なお、バックシート側層22を、トップシート側層21と同様、パルプのみにより形成されたパルプ層としてもよい。
第1中間層23は、図4(b)に示すように、その長手方向に延びる第1吸液部27と第2吸液部28とを有する。これら各吸液部27,28はいずれも一対ずつ設けられ、第1中間層23の長手方向全域に亘って延びている。また、各吸液部27,28はいずれも同じ厚みを有しており、またいずれも同じ幅を有している。
第1吸液部27は、高吸水性ポリマーにより形成され、詳しくは高吸水性ポリマーのみにより形成されたポリマー層となっている。また、第2吸液部28は、パルプにより形成され、詳しくはパルプのみにより形成されたパルプ層となっている。ここで、高吸水性ポリマーは尿等の液体を吸収すると膨潤し体積が著しく大きくなる性質を有しているのに対して、パルプ(ひいては繊維材料)は尿等の液体を吸収してもそれ程膨潤せず体積がさほど変わらない性質を有している。つまり、高吸水性ポリマーは液体吸収時における膨潤度(膨潤率)が大きい材料であるのに対して、パルプは液体吸収時における膨潤度(膨潤率)が小さい材料となっている。したがって、高吸水性ポリマーからなる第1吸液部27は膨潤度の大きい高膨潤度層となっており、パルプからなる第2吸液部28は膨潤度の小さい低膨潤度層となっている。このように、第1吸液部27は、第2吸液部28よりも膨潤度が大きくなっており、詳しくは第2吸液部28よりも少なくとも厚み方向への膨潤度が大きくなっている。
第1中間層23において各第2吸液部28は幅方向に所定の隙間を隔てて隣り合って配置されている。この場合、これら各第2吸液部28の間の隙間が上述のスリット33となっている。そのため、スリット33は、その長手方向の両端部がいずれも開放された状態となっている。但し、スリット33の長手方向の両端部は必ずしも開放させる必要はなく閉じた状態としてもよい。その場合、各第2吸液部28が互いに一体化された状態となる。
各第1吸液部27はそれぞれ両第2吸液部28を挟んだ両側に配置されている。この場合、各第1吸液部27は、第1中間層23において幅方向の両端側に配置され、第1中間層23の幅方向の両端部を構成している。また、各第1吸液部27は、それぞれスリット33とは反対側において第2吸液部28に隣接して配置され、詳しくは第2吸液部28に当接した状態で配置されている。このように、第1中間層23では、第1吸液部27と第2吸液部28とがいずれもスリット33を挟んだ両側に配置されている。なお、以下の説明では便宜上、スリット33を挟んだ両側の各吸液部27,28のうち一方側の各吸液部27,28の符号にAを付し、他方側の各吸液部27,28の符号にBを付す。
第2中間層24は、図4(c)に示すように、その長手方向に延びる2つの第3吸液部29を有する。これら各第3吸液部29はいずれも高吸水性ポリマーにより形成され、詳しくは高吸水性ポリマーのみにより形成されたポリマー層となっている。したがって、第3吸液部29は、その膨潤度が第2吸液部28よりも大きくなっており、詳しくは少なくとも厚み方向への膨潤度が第2吸液部28よりも大きくなっている。また、より詳しくは、第3吸液部29は、高吸水性ポリマーの坪量が第1吸液部27と同じとなっており、そのため、第3吸液部29は、その厚み方向への膨潤度が第1吸液部27と同じとなっている。
各第3吸液部29は、幅方向に所定の隙間を隔てて配置されている。この場合、それら各第3吸液部29の間の隙間が上述のスリット34となっている。そのため、スリット34は、その長手方向の両端部がいずれも開放された状態となっている。但し、スリット34の長手方向の両端部は必ずしも開放させる必要はなく閉じた状態としてもよい。その場合、各第3吸液部29が互いに一体化された状態となる。
各第3吸液部29はいずれも同じ厚みでかつ同じ幅を有している。また、第3吸液部29は、その幅が第1中間層23の第1吸液部27の幅と第2吸液部28の幅との和と同じとなっている。この場合、各第3吸液部29のうち一方の第3吸液部29(以下、この符号にAを付す)は、第1中間層23の第1吸液部27A及び第2吸液部28Aのバックシート12側に跨がる状態で配置され、他方の第3吸液部29(以下、この符号にBを付す)は、第1中間層23の第1吸液部27B及び第2吸液部28Bのバックシート12側に跨がる状態で配置されている。
図3(a)に示すように、吸収体13には、中間層23,24を被覆する一対のシート材41が設けられている。シート材41は液透過性を有しており、例えばティッシュからなる。なお、シート材41として、ティッシュに代えて不織布を用いてもよい。
各シート材41のうち一方のシート材41Aは各中間層23,24の第1吸液部27A、第2吸液部28A及び第3吸液部29Aを被覆して設けられ、他方のシート材41Bは各中間層23,24の第1吸液部27B、第2吸液部28B及び第3吸液部29Bを被覆して設けられている。この場合、シート材41Aにより被覆される各吸液部27A〜29Aによって吸液集合部36Aが構成され、シート材41Bにより被覆される各吸液部27B〜29Bによって吸液集合部36Bが構成されている。
各シート材41A,41Bは、各吸液部27〜29(換言すると溝部31)の長手方向に延びる長尺状とされ、詳しくは各吸液部27〜29の長手方向全域に亘って延びている。これら各シート材41A、41Bはいずれも同様の構成を有しており、そのため、以下においてはこれらシート材41A、41Bの構成をまとめて説明する。
各シート材41A(41B)は、溝部31において吸収体13の幅方向に折り返されており、詳しくは幅方向において互いに反対側に折り返されている。シート材41A(41B)は、その折り返し部分41aを挟んだ両側部分41b、41cのうち一方(以下、第1部分41bという)が第1吸液部27A(27B)及び第2吸液部28A(28B)のトップシート11側の面に配置され、他方(以下、第2部分41cという)が第3吸液部29A(29B)のバックシート12側の面に配置されている。つまり、第1部分41bは、第1吸液部27A(27B)及び第2吸液部28A(28B)とトップシート側層21との間に介在され、第2部分41cは、第3吸液部29A(29B)とバックシート側層22との間に介在されている。
かかる構成では、シート材41A(41B)により、各吸液部27A〜29A(27B〜29B)すなわち吸液集合部36A(36B)が溝部31側から覆われた状態となっている。そのため、吸液部27A〜29A(27B〜29B)を形成するパルプや高吸水性ポリマーが溝部31に入り込むのを防止することができる。特に、高吸水性ポリマーは上述したように膨潤度が大きい材料であるため、溝部31に入り込んで膨潤すると溝部31が塞がれてしまうおそれがある。この点、高吸水性ポリマーが溝部31に入り込むのを防止することで、かかる事態が生じるのを回避することができる。
第1部分41bは、第1吸液部27A(27B)及び第2吸液部28A(28B)の各トップシート11側面に接着剤(例えばホットメルト接着剤)により接着固定されている。また、第2部分41cは、第3吸液部29A(29B)のバックシート12側面に接着剤(例えばホットメルト接着剤)により接着固定されている。したがって、第1部分41bと第2部分41cとは吸液集合部36A(36B)の厚み方向の両面にそれぞれ接着固定されている。なお、図2では便宜上、接着剤43を黒丸で示している。
第1部分41bと第2部分41cとはいずれも折り返し部分41aとは反対側において、その一部が第1吸液部27A(27B)及び第3吸液部29A(29B)よりも幅方向(吸収体幅方向)外側に延出している。この場合、それら各部分41b、41cの上記延出した部分はその延出側の端部、換言すると各部分41b、41cにおける折り返し部分41aとは反対側の端部41d,41e(自由端)が上記幅方向外側を向いている。したがって、第1吸液部27A(27B)及び第3吸液部29A(29B)はシート材41A(41B)により幅方向外側からは覆われておらず、幅方向外側に露出した状態となっている。また、この場合、第1部分41bと第2部分41cとは、折り返し部分41aとは反対側において互いに非固定の状態とされている。
次に、上述した吸収体13の作用について図3を参照しながら説明する。
図3(a)に示すように、吸収体13は、尿等の液体が吸収される前、すなわち膨潤前においては、その厚みが吸収体13全域(詳しくは溝部31が形成されている部位を除く)において一定となっている。そして、おむつ10の着用者により尿等の液体が排泄され、その液体が吸収体13に吸収されると、図3(b)に示すように、吸収体13が厚み方向に膨潤する。
ここで、吸収体13の第1中間層23では、厚み方向への膨潤度が異なる第1吸液部27及び第2吸液部28が設けられているため、膨潤後においては幅方向の両端側に配置された各第1吸液部27の厚みが、幅方向内側(中央側)に配置された各第2吸液部28の厚みよりも大きくなる。そのため、膨潤後においては吸収体13の幅方向の両端側において吸収体13の厚みを大きくすることができ、その結果吸収体13の両端側において吸収体13をトップシート11側に張り出させることができる。これにより、それら吸収体13の張出部分により液体が吸収体13の幅方向外側に流れるのを抑制することができ、その結果横漏れが生じるのを抑制することができる。
また、第1中間層23では、各第2吸液部28が溝部31に隣接配置され、各第1吸液部27が溝部31とは反対側で第2吸液部28に隣接配置されているため、この場合、吸収体13において溝部31に隣接する部分(第2吸液部28を含む部分)の厚みよりも溝部31から離れた部分(第1吸液部27を含む部分)の厚みを大きくすることができる。この場合、吸収体13において溝部31に隣接する部分よりも溝部31から離れた部分をトップシート11側に張り出させることができるため、その張出部分から溝部31へ向けて尿等の液体を導き易くすることができる。具体的には、吸収体13に上記の張出部分が形成されることで、吸収体13におけるトップシート11側の面には、溝部31側へ向かうほどバックシート12側に近づく傾斜面が形成され、その傾斜面に沿って液体を溝部31へと導き易くすることが可能となる。これにより、溝部31を通じた液体の拡散を促すことができ、その結果吸液効率の向上を図ることができる。なお、図3(b)では、溝部31へ向けた液体の流れを矢印線にて示している。
さらに、吸収体13には、第1吸液部27及び第2吸液部28と第2中間層24の第3吸液部29と(すなわち吸液集合部36A,36B)をまとめて被覆するシート材41が設けられている。この場合、そのシート材41における折り返し部分41aを挟んだ両側部分41b,41c(第1部分41b及び第2部分41c)はそれぞれ吸液集合部36A,36Bの厚み方向の両面に固定されている一方、折り返し部分41aとは反対側において互いに非固定の状態とされている。このような構成では、吸液集合部36A,36Bが液体を吸収して膨潤する際に、吸液集合部36A,36Bにおける溝部31側については厚み方向への膨潤がシート材41(詳しくは折り返し部分41a)により大きく制限される一方、溝部31から離れた側については厚み方向への膨潤が溝部31側ほど制限されることがない。このため、かかる構成では、吸液集合部36A,36Bが膨潤した際に、吸液集合部36A,36Bの厚みを溝部31側よりも溝部31から離れた側の方を大きくし易くすることができる。したがって、この場合、吸収体13において溝部31から離れた部分(換言すると吸収体13における幅方向の両端側)をより一層トップシート11側に張り出させることができる。そのため、その張出部分による上述の横漏れ抑制効果を高めることができるとともに、吸液効率をより向上させることができる。
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
吸収体13は液体を吸収して膨潤すると、その吸収能力(吸収速度)が低下すると考えられるため、吸収体13の膨潤後に尿等の液体が排泄された場合には液体が吸収体13に速やかに吸収されず、吸収されない液体が吸収体13の幅方向に流れ易くなると考えられる。その点、上述したように、上記の実施形態では、吸収体13の膨潤後に吸収体13の両端側が張り出して液体の幅方向外側への流れが抑制されるようになっているため、吸収体13の膨潤後において好適に横漏れを抑制することができる。
また、吸収体13の膨潤後において、吸収体13の吸液能力(吸収速度)が低下すると、尿等の液体が吸収体13に速やかに吸収されず残ってしまうことが考えられる。その点、上述したように、上記の実施形態では、吸収体13の膨潤後において尿等の液体を溝部31に導き易くしたため、吸収体13に吸収されずに残った液体を溝部31に好適に導くことができる。これにより、吸収体13の膨潤後において吸液効率の向上を好適に図ることができる。
第1中間層23の第1吸液部27及び第2吸液部28に跨がる状態で第2吸液部28よりも厚み方向への膨潤度が大きい第3吸液部29を設け、その第3吸液部29を溝部31に隣接配置させた。すなわち、溝部31に、第2吸液部28に加え、それよりも膨潤度の大きい第3吸液部29を隣接配置させた。かかる構成では、液体吸収時において第3吸液部29が比較的大きく膨潤するため、膨潤後において溝部31の深さを比較的大きくすることができる。これにより、膨潤後において溝部31を通じた液体の拡散を好適に行うことができる。特に、膨潤後において吸収体13の吸液能力(吸収速度)が低下すると、吸収体13に吸収されない液体が溝部31に流れ込み易くなると考えられるため、膨潤後においては膨潤前(液体吸収前)と比べて溝部31を流れる液体の量が多くなると考えられる。したがって、この点を鑑みても、膨潤後において溝部31の深さを大きくしたことの意義は大きいといえる。
第3吸液部29を第1吸液部27及び第2吸液部28のバックシート12側に跨がって配置したため、これら各吸液部27,28(特に第1吸液部27)がバックシート12側に膨潤するのを抑制することができる。この場合、各吸液部27,28(特に第1吸液部27)のトップシート11側への膨潤を促すことができるため、吸収体13の幅方向の両端側をトップシート11側に好適に張り出させることができる。これにより、それら張出部分による横漏れの抑制等を好適に図ることができる。
吸収体13に、各第1吸液部27及び各第2吸液部28のバックシート12側に跨がるバックシート側層22を設け、そのバックシート側層22をバックシート12側から溝部31(液体通路に相当)を覆うように配置した。この場合、液体通路がバックシート側層22を含めて貫通するスリットからなる場合と比べて、第1吸液部27及び第2吸液部28(特に第1吸液部27)がバックシート12側に膨潤するのを抑制することができる。そのため、各吸液部27,28(特に第1吸液部27)のトップシート11側への膨潤を促すことができ、その結果吸収体13の幅方向の両端側をトップシート11側に好適に張り出させることができる。これにより、それら張出部分による横漏れの抑制等を好適に図ることができる。
第1吸液部27を高吸水性ポリマーにより形成し、第2吸液部28を繊維材料としてのパルプにより形成した。この場合、各吸液部27,28の厚み方向への膨潤度を大きく異ならせることができるため、各吸液部27,28が膨潤した際に第1吸液部27の厚みを第2吸液部28の厚みよりも大いに大きくすることができる。そのため、吸収体13の幅方向の両端側において吸収体13をトップシート11側に大きく張り出させることができ、その結果、それら張出部分による横漏れ抑制効果を高めることができる。
シート材41により第1吸液部27及び第2吸液部28を含む吸液集合部36A,36Bを溝部31側から覆うようにした構成にあって、シート材41において折り返し部分41aを挟んだ両側部分41b,41cを当該折り返し部分41aとは反対側において互いに非固定とした。これにより、吸液集合部36A,36Bの厚み方向への膨潤(特に第1吸液部27の膨潤)がシート材41により制限されるのを抑制することができるため、溝部31が塞がれる事態を回避しながら、横漏れの抑制等を図ることができる。
シート材41における折り返し部分41aを挟んだ両側部分41b,41cの一方である第1部分41bを第1吸液部27に接着固定したため、第1吸液部27の膨潤に伴い第1吸液部27がシート材41に対して位置ずれしてしまうのを抑制することができる。また、これと同様に、両側部分41b,41cの他方である第2部分41cを第3吸液部29に接着固定したため、第3吸液部29の膨潤に伴い第3吸液部29がシート材41に対して位置ずれしてしまうのを抑制することができる。
また、シート材41を拡散性に優れたティッシュから構成したため、溝部31から離れた位置に配置されている第1吸液部27に速やかに液体を拡散(到達)させることができる。これにより、第1吸液部27を速やかに膨潤させることができるため、その膨潤に伴う横漏れ抑制等の上述の効果を速やかに得ることが可能となる。
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
(1)上記実施形態では、第2中間層24を第1中間層23のバックシート12側に積層したが、第2中間層24を第1中間層23のトップシート11側に積層してもよい。この場合、第2中間層24の第3吸液部29が第1中間層23の第1吸液部27及び第2吸液部28のトップシート11側に跨がる状態で配置される。したがって、この場合にも、膨潤度の大きい第3吸液部29が第2吸液部28とともに溝部31に隣接配置されるため、膨潤後において溝部31の深さを比較的大きくすることができる。
なお、吸収体13に第2中間層24を設けないようにして、中間層を第1中間層23のみからなる単層構造としてもよい。
(2)上記実施形態では、第1吸液部27を高吸水性ポリマーのみにより形成したが、第1吸液部27を高吸水性ポリマーを主材として形成すれば必ずしも高吸水性ポリマーのみにより形成する必要はない。また、上記実施形態では、第2吸液部28をパルプのみにより形成したが、第2吸液部28をパルプを主材として形成すれば必ずしもパルプのみにより形成する必要はない。
また、第1吸液部27及び第2吸液部28のうちいずれか一方を高吸水性ポリマーとパルプとの双方を含む混合層としてもよい。その場合にも、第1吸液部27の厚み方向への膨潤度を第2吸液部28の厚み方向への膨潤度よりも大きくすることができる。さらに、各吸液部27、28の両方を高吸水性ポリマーとパルプとの双方を含む混合層としてもよい。その場合にも、第1吸液部27における高吸水性ポリマーの坪量を第2吸液部28における高吸水性ポリマーの坪量よりも大きくすることで、第1吸液部27の厚み方向への膨潤度を第2吸液部28の厚み方向への膨潤度よりも大きくすることができる。
(3)上記実施形態では、第1吸液部27を繊維材料としてのパルプ(パルプ繊維)により形成したが、第1吸液部27をレーヨン繊維やコットン繊維等、パルプ繊維以外の繊維材料により形成してもよい。
(4)上記実施形態では、シート材41の第1部分41bを第1吸液部27及び第2吸液部28にそれぞれ接着固定したが、第1部分41bを各吸液部27,28のうち第1吸液部27にのみ接着固定してもよい。少なくとも第1吸液部27にシート材41を接着固定すれば、第1吸液部27の膨潤に際し第1吸液部27がシート材41に対して位置ずれするのを抑制することができる。
また、上記実施形態では、シート材41の両側部分41b,41cをそれぞれ吸液集合部36A,36Bの厚み方向の両面に固定したが、これら両側部分41b,41cのうちいずれか一方のみを吸液集合部36A,36Bに固定するようにしてもよい。また、両側部分41b,41cの両方を吸液集合部36A,36Bに固定しないようにしてもよい。これらの場合、吸液集合部36A,36B(特に第1吸液部27)の厚み方向への膨潤がシート材41により制限されるのをより一層抑制することができる。
(5)上記実施形態では、シート材41により吸液集合部36A,36Bを被覆するにあたって、シート材41の両側部分41b,41cにおける折り返し部分41aとは反対側の端部をそれぞれ吸収体幅方向の外側に向けるようにしたが、シート材41による吸液集合部36A,36Bの被覆の仕方は必ずしもこれに限らない。例えば、吸液集合部36A,36Bを包むようにして第1シート材37を設けるようにしてもよい。この場合にも、シート材41の両側部分41b,41cにおいて折り返し部分41aとは反対側の部分が互いに非固定の状態とされていれば、吸液集合部36A,36B(特に第1吸液部27)の厚み方向への膨潤がシート材41により制限されるのを抑制することができる。
上記実施形態では、シート材41により第1吸液部27、第2吸液部28及び第3吸液部29(つまり、吸液集合部36A,36B)を被覆するようにしたが、シート材41により第1吸液部27及び第2吸液部28だけを被覆するようにしてもよい。この場合、第1吸液部27と第2吸液部28とにより吸液集合部が構成される。
(6)上記実施形態では、吸収体13に溝部31を1つだけ設けたが、吸収体13に溝部31を複数設けてもよい。例えば、吸収体13に溝部31を2つ(一対)設けることが考えられる。この場合、それら一対の溝部31を挟んだ両側にそれぞれ第1吸液部27と第2吸液部28とを配置する。そして、各第2吸液部28をそれぞれ溝部31に隣接させて配置する一方、各第1吸液部27をそれぞれ溝部31とは反対側で第2吸液部28に隣接させて配置することが考えられる。この場合においても、吸収体13における各溝部31を挟んだ両側で、吸収体13において溝部31に隣接する部分よりも溝部31から離れた部分をトップシート11側に張り出させることができるため、それら張出部分から溝部31へ向けて尿等の液体を導き易くすることができる。
(7)上記実施形態では、吸収体30に液体通路として溝部31を設けたが、溝部31に代えてスリットを設けてもよい。つまり、吸収体30に厚み方向に貫通するスリットを設け、そのスリットを液体通路としてもよい。例えば、バックシート側層22にも厚み方向に貫通するスリットを形成し、そのスリットとトップシート側層21、第1中間層23及び第2中間層24の各スリット32〜34とを連通させる。そして、それらのスリットにより、吸収体13を厚み方向に貫通するスリット(液体通路に相当)を形成することが考えられる。
(8)吸収体30に溝部31ひいては液体通路を設けないようにしてもよい。図5には、溝部31を有しない吸収体50が示されている。以下、この図5に基づいて、かかる吸収体50の構成について説明する。なお、図5において(a)が吸収体50が液体を吸収して膨潤する前の状態(初期状態)を示しており、(b)が吸収体50が液体を吸収して膨潤した後の状態を示している。
図5(a)に示すように、吸収体50は、上記実施形態の吸収体13と同様、トップシート側層51と、バックシート側層52と、それら各層51,52の間に配置された2つの中間層53,54とを備える4層構造となっている。2層の中間層のうち、トップシート側層51側に隣接する第1中間層53は、その長手方向に延びる第1吸液部55及び第2吸液部56を有している。第1吸液部55は高吸水性ポリマーにより形成され、第2吸液部56はパルプにより形成されている。第1吸液部55は、第1中間層53において幅方向の両端側にそれぞれ配置され、第2吸液部56は、各第1吸液部55の間においてそれら各第1吸液部55に隣接して配置されている。
上述の構成において、吸収体50(各吸液層51〜54)に尿等の液体が吸収されると、図5(b)に示すように、吸収体50が厚み方向に膨潤する。この場合、第1中間層53では、厚み方向への膨潤度が異なる第1吸液部55及び第2吸液部56が設けられているため、膨潤後においては第1中間層53における幅方向の両端側に配置された各第1吸液部55の厚みが幅方向の中間部に配置された第2吸液部56の厚みよりも大きくなる。そのため、吸収体50の膨潤後において吸収体50の幅方向の両端側をトップシート11側に張り出させることができ、その結果それら張出部分により液体が吸収体50の幅方向外側に流れるのを抑制することができる。したがって、横漏れが生じるのを抑制することができる。
(9)上記実施形態では、テープ型の使い捨ておむつ10に本発明を適用したが、パンツ型の使い捨ておむつに本発明を適用してもよい。また、大人用に限らず子供用の使い捨ておむつに本発明を適用してもよい。さらに、使い捨ておむつに限らず、尿パッドや軽失禁パッド、生理用ナプキン等、その他の吸収性物品に本発明を適用してもよい。