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JP6439313B2 - スクライブ方法およびスクライブ装置 - Google Patents

スクライブ方法およびスクライブ装置 Download PDF

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Description

本発明は、基板にスクライブラインを形成するためのスクライブ方法およびスクライブ装置に関する。
従来、ガラス基板等の脆性材料基板の分断は、基板表面にスクライブラインを形成するスクライブ工程と、形成されたスクライブラインに沿って基板表面に所定の力を付加するブレイク工程とによって行われる。スクライブ工程では、スクライビングホイールの刃先が、基板表面に押し付けられながら、所定のラインに沿って移動される。スクライブラインの形成には、スクライブヘッドを備えたスクライブ装置が用いられる。
以下の特許文献1には、マザー基板から液晶パネルを切り出すための方法が記載されている。この方法では、薄膜トランジスタ(TFT)が形成された基板と、カラーフィルタ(CF)が形成された基板とをシール材を介して貼り合わせることによって、マザー基板が形成される。このマザー基板が分断されることにより個々の液晶パネルが取得される。シール材は、2つの基板が貼り合わされた状態で液晶注入領域となる空間が残るように配置される。
上記構成のマザー基板を分断する場合には、2つのスクライブヘッドを用いて、マザー基板の両面に、同時にスクライブラインを形成する方法が用いられ得る(たとえば、特許文献2参照)。この場合、2つのスクライブヘッドがマザー基板を挟むように配置される。2つのスクライビングホイールは、マザー基板を平面視したときに同じ位置に位置付けられる。この状態で、2つのスクライビングホイールが同じ方向に同時に移動されて、マザー基板の各面にスクライブラインが形成される。
特開2006−137641号公報 特開2012−240902号公報
上記特許文献1にも示されるように、従前のマザー基板には、隣り合う液晶注入領域の間に、シール材が介在しない領域が存在していた。したがって、上記のように2つのスクライブヘッドによってマザー基板の両面に同時にスクライブラインを形成する場合には、シール材が介在しない領域に、スクライブラインを形成することができた。このようにスクライブラインを形成してマザー基板を分断すると、液晶パネルには、液晶注入領域の周りに所定幅の額縁領域が残ることとなる。
しかしながら、近年、特にモバイル用の液晶パネルにおいて、上記額縁領域を極限まで狭くすることが主流になりつつある。この要求に応えるためには、マザー基板においてシール材が介在しない領域が省略され、隣り合う液晶注入領域は、シール材のみによって区切られるよう構成される必要がある。この場合、スクライブラインは、シール材の直上および直下に形成されることになる。
ところが、このようにシール材の直上および直下の位置にスクライブラインを形成すると、2つのガラス基板にクラックが十分に入らないといった問題が本願発明者らによって確認された。このようにクラックが不十分な状態でブレイク工程が実行されると、ブレイク後の基板の端縁に細かい亀裂や破損が生じて、ガラス基板の強度が低下する恐れがある。
かかる課題に鑑み、本発明は、シール材の直上および直下の位置にスクライブラインを形成する場合に、十分な深さのクラックを基板に形成することが可能なスクライブ方法およびスクライブ装置を提供することを目的とする。
本願発明者らは、試行錯誤の上、シール材の直上および直下の位置にスクライブラインを形成する場合に、マザー基板の上面および下面の各スクライブ位置をスクライブ方向に所定距離だけずらすことにより、各基板により深いクラックが入ることを発見した。
本発明の第1の態様は、第1基板と第2基板をシール材により貼り合わせてなるマザー基板にスクライブラインを形成するスクライブ方法に関する。本態様に係るスクライブ方法は、前記第1基板の表面の前記シール材に対向する位置に第1の刃を押し当てながら前記第1の刃を前記シール材に沿って移動させて、前記第1基板の表面にスクライブラインを形成する。また、前記第1の刃の移動に並行して、前記第2基板の表面の前記第1の刃から前記シール材に沿う方向に少なくとも0.6mmだけ変位した位置に第2の刃を押し当てながら前記第2の刃を前記シール材に沿って移動させて、前記第2基板の表面にスクライブラインを形成する。
本態様に係るスクライブ方法によれば、シール材の直上および直下の位置にスクライブラインを形成する場合に、十分な深さのクラックをマザー基板に形成することができる。
また、本態様に係るスクライブ方法は、前記第1基板の表面の前記第2の刃に対応する位置に第1のローラを押し当てながら前記第1のローラを前記シール材に沿って移動させ、前記第2基板の表面の前記第1の刃に対応する位置に第2のローラを押し当てながら前記第2のローラを前記シール材に沿って移動させるように構成することが望ましい。こうすると、クラックの深さを深くしつつ、クラックの形成状況を安定化させることができる。
本発明の第2の態様は、第1基板と第2基板をシール材により貼り合わせてなるマザー基板にスクライブラインを形成するスクライブ装置に関する。本態様に係るスクライブ装置は、前記第1基板の表面にスクライブラインを形成する第1スクライブヘッドと、前記第2基板の表面にスクライブラインを形成する第2スクライブヘッドと、前記第1スクライブヘッドと前記第2スクライブヘッドを前記マザー基板に平行に移動させる駆動部と、を備える。前記第1スクライブヘッドは、前記第1基板の表面の前記シール材に対向する位置に第1の刃を押し当てた状態で、前記第1の刃が前記シール材に沿って移動するように駆動され、前記第2スクライブヘッドは、前記第1スクライブヘッドの駆動に並行して、前記第2基板の表面の前記第1の刃から前記シール材に沿う方向に少なくとも0.6mmだけ変位した位置に第2の刃を押し当てた状態で、前記第2の刃が前記シール材に沿って移動するように駆動される。
本態様に係るスクライブ装置によれば、上記第1の態様に係るスクライブ方法と同様、シール材の直上および直下の位置にスクライブラインを形成する場合に、十分な深さのクラックをマザー基板に形成することができる。
また、本態様に係るスクライブ装置において、前記第1スクライブヘッドは、前記第1基板の表面の前記第2の刃に対応する位置に第1のローラを押し当てながら前記第1のローラを前記シール材に沿って移動させ、前記第2スクライブヘッドは、前記第2基板の表面の前記第1の刃に対応する位置に第2のローラを押し当てながら前記第2のローラを前記シール材に沿って移動させるよう構成され得る。こうすると、クラックの深さをさらに深くすることができる。
また、本態様に係るスクライブ装置において、前記第1スクライブヘッドは、前記第1の刃と前記第1ローラの両方を保持する第1スクライビングツールを備え、前記第2スクライブヘッドは、前記第2の刃と前記第2ローラの両方を保持する第2スクライビングツールを備えるよう構成され得る。こうすると、スクライビングツールを装着するだけで、刃とローラを所望の間隔で位置付けることができる。
また、本態様に係るスクライブ装置において、前記第1の刃と前記第2の刃は、それぞれ、円板の外周にV字状の刃先が形成されるとともに前記刃先の稜線に所定の間隔で溝を有するスクライビングホイールから構成され得る。以下に示す実施の形態では、この種の刃によって実験が行われ、クラックが深く入ることが確認されている。
以上のとおり、本発明によれば、シール材の直上および直下の位置にスクライブラインを形成する場合に、十分な深さのクラックを基板に形成することが可能なスクライブ方法およびスクライブ装置を提供することができる。
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
実施の形態に係るスクライブ装置の構成を模式的に示す図である。 実施の形態に係るスクライブヘッドの構成を示す分解斜視図である。 実施の形態に係るスクライブヘッドの構成を示す斜視図である。 実施の形態に係るスクライブ方法を説明する図である。 実施の形態に係るスクライブ方法による実験結果を示す図である。 実施の形態に係る他のスクライブ方法を説明する図である。 実施の形態に係る他のスクライブ方法による実験結果を示す図である。 実施の形態に係るスクライブビングツールの構成を示す斜視図である。 実施の形態に係るスクライブビングツールの装着方法を模式的に示す図である。 変更例に係るスクライブビングツールの構成を示す斜視図である。 変更例に係るスクライブビングツールの構成を模式的に示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図には、便宜上、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸が付記されている。X−Y平面は水平面に平行で、Z軸方向は鉛直方向である。
<スクライブ装置>
図1(a)、(b)は、スクライブ装置1の構成を模式的に示す図である。図1(a)は、Y軸正側からスクライブ装置1を見た図、図1(b)は、X軸正側からスクライブ装置1を見た図である。
図1(a)を参照して、スクライブ装置1は、コンベア11と、支柱12a、12bと、ガイド13a、13bと、ガイド14a、14bと、摺動ユニット15、16と、2つのスクライブヘッド2を備える。
図1(b)に示すように、コンベア11は、スクライブヘッド2が配置される箇所を除いて、Y軸方向に延びるように設けられている。コンベア11上には、マザー基板Gが載置される。マザー基板Gは、一対のガラス基板が相互に貼り合わされた基板構造を有する。マザー基板Gは、コンベア11によりY軸方向に送られる。
支柱12a、12bは、スクライブ装置1のベースにコンベア11を挟んで垂直に設けられている。ガイド13a、13bおよびガイド14a、14bは、それぞれ、X軸方向に平行となるように、支柱12a、12bの間に架設されている。摺動ユニット15、16は、それぞれ、ガイド13a、13b、ガイド14a、14bに摺動自在に設けられている。ガイド13a、13bおよびガイド14a、14には、それぞれ、所定の駆動機構が設けられており、この駆動機構により、摺動ユニット15、16がX軸方向に移動される。
摺動ユニット15、16には、それぞれ、スクライブヘッド2が装着されている。Z軸正側のスクライブヘッド2とZ軸負側のスクライブヘッド2には、それぞれ、マザー基板Gに対向するようにスクライビングツール30、40が取り付けられている。スクライビングツール30、40に保持されたスクライビングホイールがマザー基板Gの表面に押し付けられた状態でスクライブヘッド2がX軸方向に移動する。これにより、マザー基板Gの表面にスクライブラインが形成される。
<スクライブヘッド>
図2は、スクライブヘッド2の構成を示す一部分解斜視図、図3は、スクライブヘッド2の構成を示す斜視図である。
図2を参照して、スクライブヘッド2は、昇降機構21と、スクライブライン形成機構22と、ベースプレート23と、トッププレート24と、ボトムプレート25と、ゴム枠26と、カバー27と、サーボモータ28とを備える。
昇降機構21は、サーボモータ28の駆動軸に連結された円筒カム21aと、昇降部21bの上面に形成されたカムフォロア21cとを備える。昇降部21bは、スライダー(図示せず)を介してベースプレート23に上下方向に移動可能に支持され、バネ21dによってZ軸正方向に付勢されている。バネ21dの付勢により、カムフォロア21cは円筒カム21aの下面に押し付けられている。昇降部21bはスクライブライン形成機構22に連結されている。サーボモータ28により円筒カム21aが回動すると、円筒カム21aのカム作用によって昇降部21bが昇降し、これに伴い、スクライブライン形成機構22が昇降する。スクライブライン形成機構22の下端に、スクライビングツール30、40が装着される。
ゴム枠26は、空気を通さない弾性部材である。ゴム枠26は、ベースプレート23の溝23a、トッププレート24の溝24aおよびボトムプレート25の溝25aに嵌まり込む形状を有している。ゴム枠26が溝23a、24a、25aに装着された状態で、ゴム枠26の表面は、ベースプレート23、トッププレート24およびボトムプレート25の側面よりも僅かに外側に突出する。
カバー27は、前面部27a、右側面部27bおよび左側面部27cの3つの板部が折り曲げられた形状を有する。前面部27aの上下の端縁には、2つの孔27fが形成されている。
ゴム枠26が溝23a、24a、25aに嵌め込まれた状態で、カバー27の右側面部27bと左側面部27cが外側に撓むように変形されて、カバー27がベースプレート23、トッププレート24およびボトムプレート25に取り付けられる。この状態で、前面部27aの上下の端縁に形成された2つの孔27fを介して、ネジがトッププレート24およびボトムプレート25に螺着される。さらに、ベースプレート23、トッププレート24およびボトムプレート25の溝23a、24a、25aのやや外側に形成されたネジ穴に、ネジが螺着される。これにより、カバー27が、ベースプレート23、トッププレート24およびボトムプレート25とネジの頭部とによって挟み込まれ、右側面部27bおよび左側面部27cの周縁部がゴム枠26に押し付けられる。こうして、図3に示すようにスクライブヘッド2が組み立てられる。
図1(a)に示すように、2つのスクライブヘッド2がマザー基板Gの上下にそれぞれ配される。2つのスクライブヘッド2は同じ構成となっている。2つのスクライブヘッド2に装着されるスクライビングツール30、40は、スクライブ方法に応じて変更される。以下に示す2つのスクライブ方法のうち、スクライブ方法1では、スクライビングホイール301、401のみを保持するスクライビングツール30、40が用いられる。また、スクライブ方法2では、スクライビングホイール301、401とローラ302、402を保持するスクライビングツール30、40が用いられる。
以下、これら2つのスクライブ方法について説明する。
<スクライブ方法1>
図4(a)〜(c)は、本実施の形態に係るスクライブ方法を説明する図である。図4(a)はY軸負側からスクライブ位置付近を見たときの模式図、図4(b)はX軸正側からスクライブ位置付近を見たときの模式図、図4(c)はZ軸正側からスクライブ位置付近を見たときの模式図である。
図4(a)に示すように、本スクライブ方法では、上側(Z軸正側)のスクライブヘッド2のスクライビングホイール301が、下側(Z軸負側)のスクライブヘッド2のスクライビングホイール401よりも、スクライブ方向(X軸正方向)に距離W1だけ先行するようにして、2つのスクライビングホイール301、401が移動される。2つのスクライビングホイール301、401は、それぞれ、軸301a、401aを回転軸として回転可能にスクライビングツール30、40が取り付けられている。
図4(b)を参照して、マザー基板Gは、シール材SLを介して2つのガラス基板G1、G2を貼り合わせて構成されている。ガラス基板G1にはカラーフィルタ(CF)が形成され、ガラス基板G2には薄膜トランジスタ(TFT)が形成されている。シール材SLと2つのガラス基板G1、G2によって、液晶注入領域Rが形成され、この液晶注入領域Rに液晶が注入される。2つのスクライビングホイール301、401は、Y軸方向に互いにずれることなく位置付けられる。スクライビングホイール301は、シール材SLの直上の位置においてガラス基板G1の表面に押し付けられ、スクライビングホイール401は、シール材SLの直下の位置においてガラス基板G2の表面に押し付けられる。
図4(c)に示すように、シール材SLは格子状に配置されている。2つのスクライビングホイール301、401は、シール材SLに沿ってX軸正方向に移動される。これにより、図4(b)、(c)に示すように、ガラス基板G1、G2の表面に、それぞれ、スクライブラインL1、L2が形成される。
図4(a)〜(c)に示すスクライブ方法では、スクライビングホイール301と反対側(Z軸負側)のマザー基板Gの表面を押さえるローラは設けられておらず、また、スクライビングホイール401と反対側(Z軸正側)のマザー基板Gの表面を押さえるローラも設けられていない。
<実験1>
本願発明者らは、図4(a)〜(c)に示すスクライブ方法に従ってマザー基板Gにスクライブラインを形成する実験を行った。以下、この実験と実験結果について説明する。
実験では、厚みがそれぞれ0.2mmのガラス基板G1、G2をシール材SLを介して貼り合わせた基板(マザー基板)を用いた。貼り合わせ基板(マザー基板)のサイズは118mm×500mmである。スクライビングホイール301、401は、三星ダイヤモンド工業株式会社製、マイクロぺネット(三星ダイヤモンド工業株式会社の登録商標)を用いた。スクライビングホイール301、401は、それぞれ、円板の外周にV字状の刃先が形成されるとともに刃先の稜線に所定の間隔で溝を有する構造となっている。スクライビングホイール301、401は、直径3mm、刃先角度110°、溝個数550、溝深さ3μmである。
この構成のスクライビングホイール301、401を、それぞれ、図4(a)〜(c)に示すようにガラス基板G1、G2に押し付けつつ移動させてスクライブ動作を行った。スクライブ動作時にスクライビングホイール301、401に付与される荷重は6.5Nに制御した。また、スクライビングホイール301、401の移動速度は、一定(200mm/sec)とした。
以上の条件のもと、2つのスクライビングホイール301、401間の距離W1を変化させながら、ガラス基板G1、G2におけるクラックの浸透量を計測した。比較例として、スクライビングホイール301、401間の距離W1が0の場合のクラックの浸透量も計測した。各測定では、クラックの浸透量の他、リブマーク量も併せて計測した。
図5(a)〜(e)に実験結果を示す。図5(a)は、クラックの浸透量とリブマーク量を数値で示す図、図5(b)〜(e)は、スクライブライン上におけるマザー基板Gの断面写真であり、それぞれ、距離W1が0.4mm、0.6mm、0.8mm、1.0mmの場合のものである。図5(b)〜(e)において、D1、D3はリブマーク量、D2、D4はクラックの浸透量を示している。
図5(a)を参照すると、距離W1が0.6mmを超えると、距離W1が0mmの場合に比べて、ガラス基板G1のクラックの浸透量が大きくなっている。ガラス基板G1、G2のうち何れか一方に大きな浸透量でクラックが入ると、ブレイク工程において、マザー基板Gを適正に分断することができる。
たとえば、比較例(W1=0mm)のように、ガラス基板G1、G2におけるクラック量が共にガラス基板G1、G2の厚み(0.2mm)の半分程度であると、ブレイク工程において、マザー基板Gの両側からガラス基板G1、G2をそれぞれブレイクする必要がある。このようにマザー基板Gの両側からガラス基板G1、G2をそれぞれブレイクする動作が行われると、ガラス基板G1、G2の端縁に細かい亀裂や破損が生じて、ガラス基板G1、G2の強度が低下する惧れがある。
これに対し、距離W1が0.6mm〜1.4mmである場合には、ガラス基板G2におけるクラックの浸透量は小さいものの、ガラス基板G1におけるクラックの浸透量が大きい。このようにガラス基板G1におけるクラックの浸透量が大きい場合、ブレイク工程では、クラックの浸透量が小さいガラス基板G2をマザー基板Gの一方側のみからブレイクする動作が行われればよく、このブレイク動作の際に、深くクラックが入ったガラス基板G1も同時にクラックに沿って分断される。このようにマザー基板Gの一方側のみからガラス基板G1、G2をブレイクすると、ガラス基板G1、G2の端縁に細かい亀裂や破損が生じることがなく、ガラス基板G1、G2の強度が高く保たれる。
以上の理由から、マザー基板Gの分断においては、ガラス基板G1、G2の何れか一方に大きな浸透量でクラックが入っていることが望ましい。本実験では、図5(a)に示すように、2つのスクライビングホイール301、401間の距離W1が0.6mmを超えると、比較例(W1=0mm)に比べて、ガラス基板G1のクラックの浸透量が大きくなっている。このことから、2つのスクライビングホイール301、401間の距離W1は、0.6mm以上であることが望ましいと言える。このように2つのスクライビングホイール301、401間の距離W1を設定することにより、マザー基板Gのブレイクを適正に行うことができる。
<スクライブ方法2>
図4(a)〜(c)に示すスクライブ方法(スクライブ方法1)では、スクライビングホイール301と反対側(Z軸負側)のマザー基板Gの表面がローラで押さえられておらず、また、スクライビングホイール401と反対側(Z軸正側)のマザー基板Gの表面もローラで押さえられていない。これに対し、本スクライブ方法では、スクライビングホイール301と反対側(Z軸負側)のマザー基板Gの表面と、スクライビングホイール401と反対側(Z軸正側)のマザー基板Gの表面が、それぞれ、ローラによって押さえられている。
図6(a)、(b)は、スクライブ方法2を説明する図である。図6(a)はY軸負側からスクライブ位置付近を見たときの模式図、図6(b)はX軸正側からスクライブ位置付近を見たときの模式図である。
図6(a)に示すように、本スクライブ方法では、スクライビングホイール301と反対側(Z軸負側)のマザー基板Gの表面が2つのローラ402で押さえられ、また、スクライビングホイール401と反対側(Z軸正側)のマザー基板Gの表面も2つのローラ302で押さえられている。2つのローラ302は、スクライブングホイール301を挟むように配置され、軸302aを回転軸として回転可能となっている。また、2つのローラ402は、スクライブングホイール401を挟むように配置され、軸402aを回転軸として回転可能となっている。
スクライブ方法1と同様、2つのスクライビングホイール301、401は、スクライブ方向(X軸方向)に距離W1だけずれている。2つのスクライビングホイール301、401は、それぞれ、ガラス基板G1、G2に押し付けられながら、シール材SLに沿って移動する。スクライビングホイール301と2つのローラ302との間にはY軸方向の隙間があり、スクライビングホイール401と2つのローラ402との間にもY軸方向の隙間がある。このため、ローラ302、402は、スクライビングホイール301、401によって形成されるスクライブラインL1、L2を跨ぐようにしてX軸正方向に移動する。
<実験2>
本願発明者らは、図6(a)、(b)に示すスクライブ方法に従ってマザー基板Gにスクライブラインを形成する実験を行った。以下、この実験と実験結果について説明する。
本実験で用いたマザー基板Gとスクライビングホイール301、401は、上記実験1と同じとした。本実験では、スクライビングホイール301、401間の距離W1が2.2mmに設定された。また、スクライビングホイール301、401の移動速度は、一定(200mm/sec)とした。上側のスクライブヘッド2の荷重中心に対するスクライビングホイール301の偏心量は1.0mmであり、下側のスクライブヘッド2の荷重中心に対するスクライビングホイール401の偏心量は3.2mmであった。
スクライビングホイール301、401の軸301a、401aの中心位置は、それぞれ、ローラ302、402の軸302a、402aの中心位置と、Z軸方向において一致し、ローラ302、402の直径は、それぞれ、スクライビングホイール301、401の直径と同じく3mmに設定した。
以上の条件のもと、スクライビングツール30、40に付与される荷重を変化させながら、ガラス基板G1、G2におけるクラックの浸透量を計測した。
図7(a)〜(e)に実験結果を示す。図7(a)は、クラックの浸透量とリブマーク量を数値で示す図、図7(b)〜(e)は、スクライブライン上におけるマザー基板Gの断面写真であり、それぞれ、荷重が6N、7N、8N、9Nの場合のものである。図5(b)〜(e)において、D1、D3はリブマーク量、D2、D4はクラックの浸透量を示している。
図7(a)を参照すると、荷重が5Nから6Nに変化すると、ガラス基板G1におけるクラックの浸透量が急激に増加することが分かる。また、荷重が6Nを超えると、ガラス基板G1のクラックの浸透量がガラス基板G1の厚み(0.2mm)の80%を超え、ガラス基板G1に大きな浸透量でクラックが入る。上記のように、ガラス基板G1、G2のうち何れか一方に大きな浸透量でクラックが入ると、ブレイク工程において、マザー基板Gを適正に分断することができる。したがって、スクライブ方法2においては、スクライビングツール30、40に付与される荷重を6N以上に設定することが望ましいと言える。
なお、本実験では、上記実験1に比べて、ガラス基板G1に対するクラックの浸透量がさらに大きくなっている。したがって、クラックの浸透量を大きくしつつ安定的にクラックを形成するには、スクライブ方法2のように、マザー基板Gのスクライビングホイール301、401と反対側の面をローラ402、302で押さえるようにすることが望ましいと言える。
<スクライビングツール>
図8(a)、(b)は、それぞれ、スクライビングツール30、40の構成を示す斜視図である。
スクライビングツール30、40は、スクライビングホイール301、401とローラ302、402の配列順序を除いて同様の構成を備えている。スクライビングツール30、40は、それぞれ、スクライビングホイール301、401とローラ302、402を保持するホルダ303、403を備える。ホルダ303、403は、スクライビングホイール301、401が装着される溝303a、403aと、ローラ302、402が装着される溝303b、403bと、傾斜面303c、403cとを備える。スクライビングホイール301、401は、軸301a、401aをホルダ303、403の孔に嵌め込むことにより装着される。ローラ302、402は、軸302a、402aをホルダ303、403の孔に嵌め込むことにより装着される。
図9(a)、(b)は、スクライブライン形成機構22に対するスクライビングツール30の取り付け方法を模式的に示す図である。図9(a)、(b)では、スクライブライン形成機構22の内部が透視された状態が示されている。
スクライブライン形成機構22の下端には、スクライビングツール30を保持する保持部221が設けられ、この保持部221に、スクライビングツール30を挿入可能な穴222が形成されている。穴224の底には磁石224が設置され、穴224の中間位置にピン223が設けられている。スクライビングツール30のホルダ303は強磁性体からなっている。
スクライブライン形成機構22にスクライビングツール30を取り付ける場合、スクライビングツール30のホルダ303が保持部221の穴222に挿入される。ホルダ303の上端が磁石224に接近するとホルダ303が磁石224に吸着される。このとき、ホルダ303の傾斜面303cがピン223に当接し、ホルダ303が正規の位置に位置決めされる。こうして、図9(b)に示すように、スクライビングツール30がスクライブライン形成機構22の下端に装着される。
スクライビングツール40も同様にしてスクライブライン形成機構22の下端に装着される。こうして、スクライビングツール30、40が、それぞれ、対応するスクライブヘッド2のスクライブライン形成機構22に装着されると、図6(a)、(b)に示すように、スクライビングホイール301に対応する位置にローラ402が位置付けられ、スクライビングホイール401に対応する位置にローラ302が位置付けられる。図8(a)、(b)に示す構成のスクライビングツール30、40を用いれば、スクライビングツール30、40をそれぞれ、対応するスクライブヘッド2のスクライブライン形成機構22に装着するだけで、スクライビングホイール301とスクライビングホイール401との距離W1を所定の距離に保ちつつ、スクライビングホイール301、401とローラ402、302とを互いに向き合わせることができる。
なお、上記実験2は、図8(a)、(b)に示す構成のスクライビングツール30、40を用いて行った。また、上記実験1は、ホルダ303、403から溝303b、403bが省略され、溝303a、403aのみを有するホルダ303、403に、それぞれ、スクライビングホイール301、401が装着されたスクライビングツール30、40を用いて行った。
<実施形態の効果>
本実施の形態によれば、以下の効果が奏される。
実験1、2で示したとおり、シール材SLの直上の位置に、深いクラックでスクライブラインL1を形成することができる。特に、スクライブ方法2のようにローラ302、402を設けることにより、クラックの浸透量をさらに大きくしつつ安定的にクラックを形成することができる。
<変更例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も上記以外に種々の変更が可能である。
たとえば、上記実施の形態では、刃先の稜線に一定間隔で溝が形成されたスクライビングホールが用いられたが、稜線に溝が形成されていないスクライビングホイールを用いても同様の効果が奏されることが想定され得る。スクライビングホイール(刃先)の大きさや形状は、上記実施の形態に記載されたものに限定されるものではなく、他の大きさや形状、種類の刃先を適宜用いることができる。
また、上記実施の形態では、マザー基板Gの上側のスクライビングホイール301を下側のスクライビングホイール401に対してスクライブ方向に先行させたが、マザー基板Gの下側のスクライビングホイール301を上側のスクライビングホイール401に対してスクライブ方向に先行させても良い。この場合も、上記と同様の効果が奏され得る。
また、図6(a)、(b)および図8(a)、(b)の構成では、距離W1が小さいため、2つのローラ302がスクライビングホイール301を挟むようにして、2つのローラ302とスクライビングホイール301が配置された。しかしながら、距離W1が大きい場合には、2つのローラ302がスクライビングホイール301を挟むことなく2つのローラ302とスクライビングホイール301が配置される。
図10(a)、(b)は、距離W1が大きい場合の他の構成例を模式的に示す図である。
この構成例では、Y軸方向に幅広の一つのローラ304、404が用いられる。ローラ304、404は、軸304a、404aの周りに回転可能となっている。ローラ304、404外周には、Y軸方向の中央位置に、全周に亘って溝304b、404bが形成されている。このように溝304b、404bが形成されることにより、図6(a)、(b)および図8(a)、(b)の構成と同様、スクライビングホイール301、401で形成されるスクライブラインL1、L2をローラ304、404が踏むことが回避され得る。
図10(a)、(b)の構成では、距離W1が大きいため、図8(a)、(b)の構成に比べて、スクライビングツール30、40のホルダ303、403の下部がX軸方向に幅広となる。しかしながら、図9(b)に示すように、ホルダ303、403の下部は、スクライブライン形成機構22の下端から露出しているため、ホルダ303、403の下部がX軸方向に幅広となっても、スクライブライン形成機構22に対してスクライビングツール30、40を支障なく装着することができる。
なお、図10(a)、(b)の構成において、溝304b、404bが深ければ、溝304b、404b内にスクライビングホイール301、401の外周部を入り込ませることが可能となる。この場合、図6(a)の場合と同様、Y軸方向に見て、スクライビングホイール301、401の一部がローラ304、404と重なる。このように、溝304b、404bを深くして、溝304b、404b内にスクライビングホイール301、401の外周部を入り込ませることにより、幅W1を狭くすることができる。
また、図6(a)、(b)および図8(a)、(b)の構成では、スクライビングホイール301、401の軸301a、401aの中心位置が、それぞれ、ローラ302、402の軸302a、402aの中心位置と、Z軸方向において一致し、スクライビングホイール301、401の直径が、それぞれ、ローラ302、402の直径と同じとされた。しかしながら、スクライビングホイール301、401とローラ302、402の関係は、これに限定されるものではなく、他に種々の変更が可能である。
たとえば、図11(a)に示すように、スクライブングホイール301の直径がローラ302の直径よりもΔd1だけ大きくても良く、あるいは、図11(b)に示すように、スクライブングホイール301の直径がローラ302の直径よりもΔd2だけ小さくても良い。また、図11(c)に示すように、スクライブングホイール301の軸301aの中心位置がローラ302の軸302aの中心位置よりもΔd3だけZ軸負方向にずれていても良く、あるいは、図11(d)に示すように、スクライブングホイール301の軸301aの中心位置がローラ302の軸302aの中心位置よりもΔd4だけZ軸正方向にずれていても良い。スクライビングホイール401とローラ402についても同様に変更され得る。
なお、図11(b)、(d)の構成例では、ローラ302の下端がスクライブングホイール301の下端よりも下側にあるため、スクライブ動作時に、ローラ302aがより強くガラス基板G1に押し付けられる。このようにローラ302aが強く押し付けられると、ガラス基板G1がZ軸負方向に撓み、これにより、ガラス基板G1の裏面にクラックを開く方向の引っ張り力が掛かる。このため、ローラ302が押しつけられたガラス基板G1の部分の裏面に他方のスクライビングホイール401の刃先が押しつけられると、この引っ張り力によってクラックが深く入り易くなる。よって、図11(b)、(d)の構成例では、ローラ302aに対応する裏側のスクライビングホイール401によって、より深くクラックが形成されるとの作用が想定され得る。
なお、図10(a)、(b)の構成例においても、上記と同様、スクライビングホイール301、401とローラ302、402の直径が調整され、あるいは、スクライビングホイール301、401の軸301a、401aの中心位置とローラ302、402の軸302a、402aの中心位置が調整されても良い。
また、図6(a)、(b)および図8(a)、(b)の構成では、スクライビングホイール301、401の両側に一対のローラ302、402が配されたが、スクライビングホイール301、401の片側のみに一つのローラ302、402が配される構成も想定され得る。
この他、マザー基板Gの構成、厚み、材質等は、上記実施の形態に示すものに限定されるものではなく、他の構成のマザー基板Gの切断にも、上記スクライブ方法1、2およびスクライブ装置を用いることができる。
本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
1 … スクライブ装置
2 … スクライブヘッド
30、40 … スクライビングツール
301、401 … スクライビングホイール
302、402 … ローラ
G … マザー基板
G1、G2 … ガラス基板

Claims (2)

  1. 第1基板と第2基板をシール材により貼り合わせてなるマザー基板にスクライブラインを形成するスクライブ方法であって、
    前記第1基板の表面の前記シール材に対向する位置に第1の刃を押し当てながら前記第1の刃を前記シール材に沿って移動させて、前記第1基板の表面にスクライブラインを形成し、
    前記第1の刃の移動に並行して、前記第2基板の表面の前記第1の刃から前記シール材に沿う方向に少なくとも0.6mmだけ変位した位置に第2の刃を押し当てながら前記第2の刃を前記シール材に沿って移動させて、前記第2基板の表面にスクライブラインを形成する、
    ことを特徴とするスクライブ方法。
  2. 第1基板と第2基板をシール材により貼り合わせてなるマザー基板にスクライブラインを形成するスクライブ装置であって、
    前記第1基板の表面にスクライブラインを形成する第1スクライブヘッドと、
    前記第2基板の表面にスクライブラインを形成する第2スクライブヘッドと、
    前記第1スクライブヘッドと前記第2スクライブヘッドを前記マザー基板に平行に移動させる駆動部と、を備え、
    前記第1スクライブヘッドは、前記第1基板の表面の前記シール材に対向する位置に第1の刃を押し当てた状態で、前記第1の刃が前記シール材に沿って移動するように駆動され、
    前記第2スクライブヘッドは、前記第1スクライブヘッドの駆動に並行して、前記第2基板の表面の前記第1の刃から前記シール材に沿う方向に少なくとも0.6mmだけ変位した位置に第2の刃を押し当てた状態で、前記第2の刃が前記シール材に沿って移動するように駆動される、
    ことを特徴とするスクライブ装置。
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