JP6430384B2 - シート - Google Patents

Description

本発明は、シートに係り、特に、着座者が着座した状態で当該着座者の身体電位を検出するセンサを内蔵したシートに関する。

着座者の健康状態や覚醒状態をモニタリングするために着座者の身体電位を検出するセンサをシートに取り付けている構成は、既に知られている。その一例を挙げると、特許文献１には、自動車の運転手の心拍を測定するために運転席シートの背凭れのカバー内に電極センサが埋め込まれている構成が開示されている。

上記の電極センサは、運転手の皮膚に接触せずに運転手の衣服及びシートのカバー部材を介して身体電位を検出することが可能なセンサ、すなわち、静電容量結合型のセンサである。かかるセンサを利用することにより、特許文献１に係る構成では、運転手がシートに着座している間に当該運転手の心臓からの微弱な信号を検出することが可能となる。このような効果により、特許文献１に開示のセンサによれば、車両に搭載するのに好適な心電測定装置が実現されるようになる。

特開２００９−５０６７９号公報

ところで、特許文献１に開示された電極センサについては、当該センサと被検者（具体的には運転手）の皮膚との間における静電容量が身体電位の検出精度に大きく影響し、静電容量が小さくなるほど検出精度が低下してしまう傾向にある。一方、被検者の皮膚と電極センサの間のスペースは、運転中における運転手の姿勢の変化や車両の振動等に起因して変動することがあり、かかるスペースの変動により上記静電容量が変化してしまう。

以上の問題への対策としては、電極センサのサイズ、特に電位検出面の面積を拡大することが考えられるが、当該センサをシート内に埋め込んで設置する構造を採用する場合、設置スペースの制約がある都合上、容易には上記の電位検出面の面積を拡大し得ない。

また、電極センサをシート内に埋め込む構成において上記の静電容量に関する問題の解決策を講じる際には、シートの品質、特にシートの着座感（座り心地）を維持しながら当該解決策を講じる必要がある。そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、着座者の身体電位を検出するためにシート内に設けられたセンサの検出精度を、シートの着座感を損なうことなく向上させることが可能なシートを提供することにある。

前記課題は、本発明のシートによれば、着座者との接触面を有するカバー部材と、前記接触面とは反対側に配置され、着座者が着座した状態で前記着座者の身体電位を検出し、該身体電位に応じた信号を出力するセンサと、を有するシートであって、該センサは、前記カバー部材を介して前記身体電位を検出する静電容量結合型のセンサであり、前記カバー部材における、前記センサと対向する部位のうちの少なくとも一部分に、誘電体を含有した貼り付け部材が貼り付けられており、前記貼り付け部材の外縁部には、該外縁部から内側に向かう方向に形成された切り欠き部が複数設けられており、複数の前記切り欠き部は、前記センサを挟む位置に設けられていることにより解決される。

上記のように構成されたシートでは、シート内のセンサと対向する部分に、当該部分の誘電率を増加させる誘電体を備えていることで、センサと着座者の皮膚との間における静電容量が増加する。このように静電容量が増加する結果、センサが着座者の身体電位を検出する際の検出精度が向上する。一方、上記の誘電体は、シート内部に備えられているので、誘電体がシートの着座感に及ぼす影響が抑えられる。したがって、本発明のシートであれば、シートの着座感を維持しながらセンサの検出精度を向上させることが可能となる。
また、カバー部材におけるセンサとの対向部位の静電容量を増加させるにあたり、誘電体を含有した貼り付け部材を上記の対向部位に貼り付けることとすれば、より簡易な構成で静電容量を増加させることが可能であり、さらに着脱自在とすれば容易に交換することも可能となる。
また、貼り付け部材の外縁部に切り欠き部が設けられていることで、着座者の背がシートに凭れ掛かることでカバー部材が撓む際、これに追従する形で貼り付け部材が撓むのを容易にさせることが可能である。すなわち、貼り付け部材については、着座者の背がシートに凭れ掛かる度に作用する負荷に対して柔軟に変形することで当該負荷に対する耐久性を向上させることが可能となる。

また、上記のシートにおいて、前記カバー部材中、前記センサと対向する部分全体に亘って前記誘電体が含有されていると、より好適である。
上記の構成であれば、カバー部材中、センサと対向する部分全体に誘電体が含有されているので、着座者の皮膚とセンサとの間における静電容量がより増加することになり、センサの検出精度をより向上させることが可能となる。

また、上記のシートにおいて、前記センサは前記貼り付け部よりも小さく、前記切り欠き部よりも内側に設けられていると、より好適である。

また、上記のシートにおいて、前記貼り付け部材は略矩形状であり、四辺すべてに前記切り欠き部が設けられていると、より好適である。

また、上記のシートにおいて、前記切り欠き部は三角形状であると、より好適である。
また、上記のシートにおいて、前記センサは切り欠き部を有していないと、より好適である。

また、上記のシートにおいて、前記センサは、面状のセンサであり、前記シート内の前記誘電体が備えられている部分の、前記センサと対向する側の面のサイズは、前記センサの前記カバー部材と対向する側の面のサイズ以上となっていると、更に好適である。
上記の構成のように、シート内の誘電体を備えている部分のサイズが、センサのサイズ以上となっていれば、センサと着座者の皮膚との間における静電容量を効果的に増加させることが可能となる。この結果、センサが着座者の身体電位を検出する際の検出精度がより向上することとなる。

また、上記のシートにおいて、前記センサは、複数配置されており、前記シート内の前記誘電体が備えられている部分は、複数の前記センサのうちの少なくとも２つ以上と対向し、かつ、連続した状態で設けられていると、益々好適である。
上記の構成のように、シート内の誘電体を備えている部分が複数のセンサの少なくとも２つ以上と対向し、かつ、連続した状態で設けられていれば、当該誘電体を備えている部分をまとめて設ける形となるので、同部分を設けることがより容易となる。

また、上記のシートにおいて、前記誘電体は、酸化チタン又はチタン酸バリウムであることとしてもよい。
誘電体としては酸化チタンやチタン酸バリウムが有効であるので、カバー部材中、センサと対向する部位の少なくとも一部分に含有させれば、着座者の皮膚とセンサとの間における静電容量が増加し、センサの検出精度を向上させることが可能となる。

また、前記シートは、車両に搭載される車両用シートであると、本発明の効果がより有効に発揮される。具体的に説明すると、前述したように、車両用シートの場合には、車両の走行中に着座者の姿勢が変化したり車両が振動したりするので、これに起因して着座者の皮膚とセンサとの間における静電容量が変動する結果、静電容量が低下する虞がある。一方、車両用シートについては、その品質として着座感（座り心地）が重視される。このため、シートの着座感を維持しながらセンサの検出精度を向上させるという本発明の効果が、より有意義なものとなる。

本発明のシートによれば、シートの着座感を維持しながらセンサの検出精度を向上させることが可能であり、かかる効果は、車両に搭載される車両用シートにおいてより有効に発揮される。具体的に説明すると、車両用シートの場合、車両の走行中に着座者の姿勢が変化したり車両が振動したりすることに起因して着座者の皮膚とセンサとの間における静電容量が変動する結果、静電容量が低下する虞がある。一方、車両用シートについては、その品質として着座感が重視される。このため、シートの着座感を維持しながらセンサの検出精度を向上させるという本発明の効果が、より有意義なものとなる。
また、本発明のシートによれば、センサの表面に誘電体を含有する塗布剤の層やフィルムを設けることで誘電体を備えている部分がセンサと一体する結果、着者がシートに凭れ掛かったときにセンサに作用する荷重に対するセンサの柔軟性（追従性）が向上する。
また、本発明のシートによれば、カバー部材中、センサと対向する部分全体に誘電体が含有されているので、着座者の皮膚とセンサとの間における静電容量がより増加し、センサの検出精度がより向上する。
また、本発明のシートによれば、カバー部材のワディング材中、センサと対向する部位のうちの少なくとも一部分に誘電体が含有されているので、誘電体を含有させ易く、センサの検出精度をより容易に向上させることが可能である。
また、本発明のシートによれば、ワディング材に形成された連通気泡中に誘電体を含有させるので、誘電体を含有させ易くなり、誘電体の含有率も比較的高くなる。この結果、センサの検出精度をより一層容易に向上させることが可能となる。
また、本発明のシートによれば、誘電体として酸化チタン又はチタン酸バリウムを利用するので、着座者の皮膚とセンサとの間における静電容量が増加し、センサの検出精度を向上させることが可能となる。
また、本発明のシートによれば、カバー部材におけるセンサとの対向部位の静電容量を増加させるにあたり、誘電体を含有した貼り付け部材を上記の対向部位に貼り付けることで、より簡易な構成で静電容量を増加させることが可能となり、さらに着脱自在とすれば容易に交換することも可能となる。
また、本発明のシートによれば、シリコンゴムからなる貼り付け部材の外縁部に切り欠き部を設けることで、着座者の背がシートに凭れ掛かることでカバー部材が撓む際、これに追従する形で貼り付け部材が撓むのを容易にさせることが可能である。この結果、シリコンゴムからなる貼り付け部材について、着座者の背がシートに凭れ掛かる度に作用する負荷に対して耐久性を向上させることが可能となる。
また、本発明のシートによれば、シート内の誘電体を備えている部分のサイズがセンサのサイズ以上となることで、センサと着座者の皮膚との間における静電容量を効果的に増加させ、着座者の身体電位の検出精度をより向上させることが可能となる。
また、本発明のシートによれば、シート内の誘電体を備えている部分が複数のセンサのうち少なくとも２つ以上と対向し、かつ、連続した状態で設けられていることで、当該誘電体を備えている部分がまとまった形となり、同部分を設けることがより容易となる。

本発明の一実施形態に係るシートの外観図を示した図である。 本発明の一実施形態に係るシートの内部構造を示した図である。 本発明の一実施形態に係るセンサによる心拍計測システムの概念図である。 カバー部材中の誘電体を含有した部分の配置のバリエーションを示した図である。 変形例に係るシートに用いられる貼り付け部材を示した図である。 第二変形例に係るシートにおけるセンサの断面図を示した図である。 第三変形例に係るシートにおけるセンサの断面図を示した図である。

以下、本発明の一実施形態に係るシート（以下、本シートＳ）について図面を参照しながら説明する。本シートＳは、車両に搭載された車両用シートであり、主として運転席用のシートとして用いられる。ただし、本シートＳの用途は運転席用のシートに限定されるものではなく、補助席用のシート、あるいは、後部座席用のシートとして使用されることとしてもよい。

本シートＳは、図１に示すような外観を有しており、その構造は、後に説明するワディング材４及びセンサ５を除き、公知の車両用シートと同様である。図１は、本シートＳの外観図である。

また、図１に示すように、本シートＳは、着座者が着座した際に着座者を背側から支持するシートバックＳ１を備えている。このシートバックＳ１は、図２に示すように、その骨格を形成するバックフレームｆと、バックフレームｆの前側に配置されるパッド材１と、バックフレームｆ及びパッド材１を被覆するカバー部材としてのトリムカバー２とを主な構成要素として備えている。図２は、本シートＳの内部構造を示す図であり、図１のＡ−Ａ断面を模式的に示している。

トリムカバー２は、着座者の背と接触する接触面２ａを有しており、図２に示すように、接触面２ａを形成する表皮材３と、表皮材３の裏面（すなわち、接触面２ａとは反対側の面）に取り付けられたワディング材４とによって構成されている。ワディング材４は、柔軟性を有する材料からなり、シートバックＳ１の厚み方向において表皮材３とパッド材１との間に介在し、例えば、着座者の背がシートバックＳ１に凭れ掛かった状態において着座者の背全面に宛がわれるように配置されている。さらに、本シートＳで採用されているワディング材４は、連通気泡が形成された発泡材料、具体的にはウレタン発泡材により構成されている。なお、上記のワディング材４の材質及び発泡成形方法については、車両用シートの品質を確保し、且つ、ワディング材４内に連通気泡を形成することができるものであれば制限なく利用可能である。

また、本シートＳには、着座者の心拍をモニタリングする目的から、着座者の身体電位を検出するためのセンサ５が埋め込まれている。このセンサ５は、着座者が着座した状態において、当該着座者とは接触せずに着座者着用の衣服及びトリムカバー２を介して身体電位を検出する静電容量型の電極センサである。なお、電極センサの構成は特に限定されるものではないが、本実施形態では、ＰＥＴ製の薄板上にカーボン製の薄膜と当該薄膜の表面（トリムカバー２側に面する表面）に埋め込まれた帯状の銀を取り付けて構成されている。また、センサ５は、面状のセンサであり、図１に示すように正面視で略矩形状の外形形状を有しており、シートバックＳ１の厚み方向において接触面２ａとは反対側に配置されており、より具体的には、図２の（ａ）に示すようにワディング材４とパッド材１との間に挟まれた位置に配置されている。

さらに、センサ５は、シートバックＳ１の幅方向において中央寄りの位置に、対を成した状態で左右それぞれに配置されており、特に本シートＳでは、図１に示すように、４組のセンサ５がシートバックＳ１の上下方向に沿って列状に配置されている。

そして、いずれのセンサ５についても、その前方位置にワディング材４が配置されており、その後方位置にパッド材１が配置されている。換言すると、ワディング材４は、センサ５と対向する部位をセンサ５と同じ数（本シートＳでは８個）だけ備えていることになる。ここで、本実施形態におけるセンサ５の配置について図１を参照しながら詳しく説明すると、トリムカバー２において表皮材３を吊り込むために形成された溝状部分（以下、吊り込み部３ａ）を境界として、上方の領域と下方の領域にそれぞれ４つのセンサ５が配置されている。また、各領域において４つのセンサ５は、図１に示すように、左右方向に２つ、上下方向に２つ並ぶように配置されている。

一方、センサ５は、図３に図示のボルテージフォロワ６に接続されており、身体電位を検出すると、当該身体電位に応じた信号をボルテージフォロワ６に向けて出力する。図３は、本シートＳ内に埋め込まれたセンサ５による心拍計測システムの概念図である。なお、同図では、説明を分かり易くする目的から２つのセンサ５のみを図示している。

ボルテージフォロワ６は、３つのオペアンプ６ａ、６ｂ、６ｃからなり、その中の２つのオペアンプ６ａ、６ｂにはセンサ５からの出力信号が入力される。より厳密に説明すると、一方のオペアンプ６ａには、所定のセンサ５からの出力信号が入力され、他方のオペアンプ６ｂには、上記所定のセンサ５と対を成すセンサ５からの出力信号が入力される。そして、上記２つのオペアンプ６ａ、６ｂは、それぞれ、対応するセンサ５からの出力信号を増幅し、増幅後の信号をもう一つのオペアンプ６ｃに向けて出力する。オペアンプ６ｃは、差動増幅器からなり、具体的には、両オペアンプ６ａ、６ｂから出力された信号の差（差信号）を増幅し、増幅後の差信号を出力する。

なお、ボルテージフォロワ６は、基準電位としてグランド電位を採り、このために、グランドに接地された電極（図３に図示した接地電極７）が本シートＳに設けられている。より具体的に説明すると、上記の接地電極７は、本シートＳのうち、着座者の臀部を支持するシートクッションＳ２（厳密には、シートクッションＳ２の骨格を成す不図示のフレーム）に取り付けられ、ボルテージフォロワ６の所定箇所と電気的に接続されている。

オペアンプ６ｃから出力された増幅後差信号は、ＤＣ成分除去回路８、反転増幅器９、ノイズ除去用のフィルタ処理回路１０、及びＡ／Ｄ変換回路１１を経由した後に演算装置１２へ入力される。演算装置１２は、入力された信号、すなわち、デジタルデータとして変換された上記の差信号に基づいて着座者の心拍波形を示す波形データを生成する演算処理を実行する。以上の構成により、本シートＳに着座している着座者の心拍について、本シートＳ内に埋め込まれたセンサ５を用いて計測するシステムが構築されている。

ところで、上記のセンサ５は、前述したように、着座者の衣服やトリムカバー２を介して当該着座者の身体電位を検出する静電容量結合型のセンサであり、その検出精度は、センサ５と着座者の皮膚との間の空間（スペース）における静電容量に依存する。一方、センサ５と着座者の皮膚との間のスペースは、運転中に着座者の姿勢が変化したり車両が振動したりすることに起因して変動し、かかるスペースの変動に伴って上記の静電容量が変化してしまう。このとき、静電容量が低下するように上記のスペースが変化してしまうと、センサ５による身体電位検出の精度が低下してしまうことになる。

そこで、本シートＳでは、静電容量を比較的高い水準で確保する目的で、トリムカバー２中のセンサ５と対向する部位に、当該部位の誘電率を増加させる誘電体を含有させている。より具体的に説明すると、トリムカバー２が表皮材３の裏側に備えるワディング材４中、センサ５と対向する部位全体に亘って誘電体としての酸化チタン、特にルチル型の酸化チタンが含有されている。ここで、ワディング材４においてセンサ５と対向する部位とは、矩形状のセンサ５の直ぐ前方に位置している部位のことであり、本シートＳでは８箇所存在する。つまり、各対向部位は、センサ５の外縁と略等しい外縁を有し、シートバックＳ１の上下方向及び幅方向においてセンサ５と同じ位置に位置している。

なお、本シートＳでは、センサ５との対向部位を含むワディング材４全体に亘って酸化チタンが含有されている。換言すると、本シートＳでは、トリムカバー２において酸化チタンを備えている部分の、センサ５と対向する側の面のサイズは、センサ５のトリムカバー２と対向する側の面のサイズよりも大きくなっている。これにより、センサ５と着座者の皮膚との間における静電容量を効果的に増加させることが可能となり、この結果、各センサ５が着座者の身体電位を検出する際の検出精度がより向上することとなる。

また、本シートＳでは、前述したように、センサ５が複数配置された一方で、センサ５との対向部位を含むワディング材４全体に亘って酸化チタンが含有されている。すなわち、トリムカバー２において酸化チタンを備えている部分は、複数のセンサ５のすべてと対向し、かつ、連続した状態で設けられていることとなる。したがって、本シートＳでは、トリムカバー２において酸化チタンを備えている部分がひとまとまりの部材として設けられている形となる。このような構成により、本シートＳでは、トリムカバー２において酸化チタンを備えている部分を設けることが容易となっている。

ここで、ワディング材４に含有させるための方法としては、例えば、予め発泡成形したワディング材４を、微粉状の酸化チタンと水等の液体とを混合した混合液に浸した後に乾燥させる方法が挙げられる。かかる方法であれば、ワディング材４に形成された気泡に微粉状の酸化チタンが含浸され、効果的に酸化チタンをワディング材４に含有させることが可能となる。

さらに、本シートＳでは、ワディング材４に形成された気泡が連通気泡であるため、酸化チタンを含浸させ易く、結果として、酸化チタンの含有率が比較的に高いワディング材４が得られるようになる。

以上のようにワディング材４中、センサ５との対向部位に酸化チタンが含有されている本シートＳでは、当該部位の誘電率が増加するので、センサ５と着座者の皮膚との間のスペースにおける静電容量が向上することとなる。この結果、本シートＳでは、センサ５を内部に埋め込んだ従来のシートと比較して、センサ５による着座者の身体電位の検出精度が向上することになる。

より具体的に説明すると、ワディング材４中のセンサ５との対向部位に酸化チタンが含有されていると、酸化チタンが含有されていない場合に比較して誘電率が増加する。一方、センサ５と着座者の皮膚との間のスペースにおける静電容量は、上記の誘電率に比例して大きくなる。そして、ワディング材４中のセンサ５との対向部位に酸化チタンが含有されることで、本シートＳでの静電容量は、酸化チタンが含有されていない従来のシートの静電容量に比して格段に増加した値となる。具体的に説明すると、センサ５のサイズを所定のサイズに設定し温度２５℃・湿度５０％の環境下で測定したとき、ワディング材４に酸化チタンを含有した場合の静電容量は、含有していない場合の静電容量の数倍（例えば約３倍）まで増加する。

以上のように本シートＳでは、静電容量を増加させるために、ワディング材４に酸化チタンを含有し、より具体的にはワディング材４の気泡中に微粉状の酸化チタンを含浸させている。このような構成であれば、ワディング材４の柔軟性を維持しながら静電容量を増加させることが可能となる。したがって、本シートＳの構成であれば、その着座感（座り心地）を維持しながらセンサ５の検出精度を向上させることが可能となる。この結果、本シートＳの着座者に対して快適な着座感を付与しつつ、当該着座者の心拍を安定的に計測することが可能となる。

以上、本発明の一実施形態に係るシートについて説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするために挙げた一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。

また、上記の実施形態では、ワディング材４にルチル型の酸化チタンを含有させることとしたが、これに限定されるものではなく、アナターゼ型の酸化チタンを含有させることとしてもよい。さらに、酸化チタン以外の誘電体としては、チタン酸バリウムも有効である。つまり、ワディング材４中、センサ５との対向部位にチタン酸バリウムを含有させることとしてもよい。
なお、上記の対向部位に含有されることで当該部位の誘電率を増加させる誘電体であれば、酸化チタン及びチタン酸バリウム以外の物質を用いることとしてもよい。ただし、センサ５が安定的に身体電位を検出する上では、センサ５との対向部位における誘電率を１０〜３０（Ｆ／ｍ）まで増加させることが可能な、比誘電率が比較的に高い物質であることが望ましい。

また、上記の実施形態では、酸化チタンを含有したワディング材４を構成する方法として、微粉状の酸化チタンを含む液体にワディング材４を浸して乾燥させることにより酸化チタンをワディング材４に含浸させる方法を挙げたが、かかる方法に限定されるものではない。例えば、予め発泡成形されたワディング材４に対して、微粉状の酸化チタンやチタン酸バリウムをスプレー等で噴き付けることとしてもよい。かかる方法であれば、ワディング材４に対して酸化チタンやチタン酸バリウムを局所的に含有させることが可能となるので、例えば、シートバックＳ１内にセンサ５を埋め込んだ状態で当該センサ５と対向する部位にのみ上記の誘電体を含有させることが可能となる。
さらにまた、ワディング材４の基材であるウレタン基材に微粉状の酸化チタンやチタン酸バリウムを予め混入させておき、その後にウレタン基材を発泡させることで、上記の誘電体を含有したワディング材４を構成することとしてもよい。

また、上記の実施形態では、連通気泡が形成されたワディング材４を用いることとしたが、これに限定されるものではなく、独立気泡が形成されたワディング材４を用いることとしてもよい。ただし、連通気泡が形成されたワディング材４であれば、気泡中に酸化チタンやチタン酸バリウムを含有させ易くなり、その含有率も比較的高くなる。これにより、センサ５の検出精度をより一層容易に向上させることが可能となる。かかる点において、連通気泡が形成されたワディング材４は、本発明の実施形態として好適なものである。

また、ワディング材４のうち、センサ５と対向する部分については、一部材として成形され、トリムカバー２において吊り込み部３ａを跨るように設けられていることとしてもよい。あるいは、図４に示すように、吊り込み部３ａを境界として上下に分かれた状態でワディング材４、厳密には酸化チタンが含有されたワディング材４が設けられていることとしてもよい。図４は、酸化チタンを含有したワディング材４の配置のバリエーションを示した図である。

図４のように酸化チタンを含有したワディング材４が複数個に分かれていることで、個々のワディング材４が小型化し、これに伴って各ワディング材４の取り付けがより容易となる。また、図４に示すように上下方向において吊り込み部３ａを挟んだ位置にワディング材４が配置されていれば、吊り込み部３ａを跨ぐ場合と比較して吊り込み部３ａの影響を受け難くワディング材４を良好に取り付けることが可能となる。一方で、酸化チタンを含有したワディング材４が断片化せず一部材として取り扱われる場合には、部品点数を削減することが可能となる。

また、上記の実施形態では、トリムカバー２のワディング材４に誘電体としての酸化チタンを含有させる構成について説明した。ただし、トリムカバー２に誘電体を備える構成については、上記の実施形態の内容に限定されず、他の構成（以下、変形例）も考えられる。そして、変形例としては、トリムカバー２におけるセンサ５との対向部分の少なくとも一部分に、酸化チタン等の誘電体を含有した貼り付け部材２０を貼り付ける構成が考えられる。

より具体的に説明すると、トリムカバー２におけるセンサ５との対向部分に、酸化チタンを含有した貼り付け部材２０が貼り付けられている。この貼り付け部材２０は、シリコンゴム製のシート体からなり、可撓性を有する。そして、各センサ５と対向する位置に、それぞれ個別の貼り付け部材２０が設けられている。換言すると、上記の貼り付け部材２０は、センサ５毎に設けられ、各センサ５と対向する位置（前方位置）に配置されている。

ここで、貼り付け部材２０の構成について説明すると、図５に示すように、そのセンサ５と対向する側の面のサイズが、センサ５のトリムカバー２と対向する側の面のサイズよりも大きくなっている。これにより、センサ５と着座者の皮膚との間における静電容量を効果的に増加させることが可能となり、結果として、各センサ５が着座者の身体電位を検出する際の検出精度がより向上することとなる。図５は、変形例に係るシートに用いられる貼り付け部材２０を示した図である。なお、同図には、貼り付け部材２０とセンサ５との位置関係を示すため、センサ５を破線にて図示している。

また、各貼り付け部材２０の形状について説明すると、図５に示すように、四辺各々の中央部を三角形状に切り欠いた略矩形型の外観を呈している。このように貼り付け部材２０の各辺に切り欠き部２０ａが形成されていることで、着座者の背がシートＳに凭れ掛かることでトリムカバー２が撓む際、これに追従する形で貼り付け部材２０が撓むのを容易にさせることが可能である。すなわち、シリコンゴムからなる貼り付け部材２０については、着座者の背が凭れ掛かる度に貼り付け部材２０に作用する負荷に対して柔軟に変形することで当該負荷に対する耐久性を向上させることが可能となる。

なお、上述の効果は、略矩形状の貼り付け部材２０の四辺すべてに切り欠き部２０ａが形成されていることで、より効果的に発揮される。ただし、切り欠き部２０ａについては少なくとも１つ以上形成されていればよく、貼り付け部材２０の四辺のいずれか一つのみに切り欠き部２０ａが形成されていることとしてもよい。

また、上記の実施形態では、ワディング材４の全体に亘って酸化チタンが含有されていることとしたが、本発明の効果を奏するには、ワディング材４中、センサ５との対向部位の少なくとも一部分に酸化チタンやチタン酸バリウムが含有されていればよい。なお、本発明の効果をより効果的に奏する上では、センサ５との対向部位全体に亘って酸化チタンやチタン酸バリウムが含有されていることが望ましい。

また、以上までに説明してきた実施形態は、いずれもトリムカバー２（具体的には、ワディング材４や貼り付け部材２０）に誘電体を備える構成であるが、シート内においてセンサ５と対向する部分に誘電体が備えられていればよい。すなわち、シート内において誘電体を備えている部分については、トリムカバー２以外のものであってもよい。一例を挙げて説明すると、上記の実施形態では、トリムカバー２におけるセンサ５との対向部分に、酸化チタンを含有した貼り付け部材２０が貼り付けられていることした。ただし、これに限定されるものではなく、上記の貼り付け部材２０がセンサ５のうち、トリムカバー２側に面する表面（以下、トリムカバー２側の面）に貼り付けられていることとしてもよい。

誘電体が備えられている部分をトリムカバー２以外に設ける構成については、他にも考えられ、例えば図６や図７に図示の構成が挙げられる。図６及び７に示す構成は、いずれも、センサ５のうち、トリムカバー２側の面に誘電体を備える部分が設けられている構成である。図６に示す構成について説明すると、センサ５のトリムカバー２側の面に、誘電体であるチタン酸バリウムを含有するペースト剤又はインク剤（塗布剤に相当）を塗布して塗布剤層３０が形成されている。なお、ペースト剤又はインク剤は、センサ５のトリムカバー２側の面の少なくとも一部分に塗布されていればよく、ドット状や格子状に塗布されていてもよい。

図７に示す構成について説明すると、センサ５のトリムカバー２側の面に、高誘電体であるチタン酸バリウムを含有するフィルム３１が貼付されている。ここで、フィルム３１は、導電性の両面テープ３２を介してセンサ５のトリムカバー２側の面に貼り付けられている。なお、フィルム３１は、センサ５のトリムカバー２側の面の少なくとも一部分に貼付されていればよく、ドット状や格子状に貼付されていてもよい。

以上までに説明してきた構成、すなわち、誘電体を備える部分がセンサ５のトリムカバー２側の面に直接設けられていてセンサ５と一体化している構成では、誘電体を備える部分がセンサ５とは別体をなしている構成（例えばトリムカバー２に設けられている構成）よりもセンサ５の柔軟性を確保し易くなる。具体的に説明すると、誘電体を備える部分がセンサ５と一体化している構成では、誘電体を備える部分がセンサ５の変形に追従し易くなっている。つまり、着座者が本シートＳに着座してシートバックＳ１に凭れ掛かったことでセンサ５に荷重が作用するとき、一体化しているセンサ５及び誘電体を備える部分は、上記荷重に対して自在に変形し良好な追従性を示すようになる。

また、上記の実施形態では、本発明のシートの一例として車両用シートを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、本発明は、車両搭載以外の目的で使用されるシート、例えば映画館等の施設内に設置されているシートにも適用可能である。ただし、車両用シートであれば、本発明の効果がより効果的に発揮されることになる。具体的に説明すると、車両の走行中に着座者の姿勢が変化したり車両が振動したりするので、これに起因して着座者の皮膚とセンサとの間における静電容量が変動する結果、静電容量が低下する虞がある。一方、車両用シートについては、その品質として着座感（座り心地）が重視される。このため、シートの着座感を維持しながらセンサの検出精度を向上させるという本発明の効果が、より有意義なものとなる。かかる点において、車両用シートは、本発明の実施形態として好適なものである。

１ パッド材
２ トリムカバー（カバー部材）
２ａ 接触面
３ 表皮材
３ａ 吊り込み部
４ ワディング材
５ センサ
６ ボルテージフォロワ
６ａ，６ｂ，６ｃ オペアンプ
７ 接地電極
８ ＤＣ成分除去回路
９ 反転増幅器
１０ フィルタ処理回路
１１ Ａ／Ｄ変換回路
１２ 演算装置
２０ 貼り付け部材
２０ａ 切り欠き部
３０ 塗布剤層
３１ フィルム
３２ 両面テープ
Ｓ 本シート（シート）
Ｓ１ シートバック
Ｓ２ シートクッション
ｆ バックフレーム

Claims (10)

1. 着座者との接触面を有するカバー部材と、
   前記接触面とは反対側に配置され、着座者が着座した状態で前記着座者の身体電位を検出し、該身体電位に応じた信号を出力するセンサと、を有するシートであって、
   該センサは、前記カバー部材を介して前記身体電位を検出する静電容量結合型のセンサであり、
   前記カバー部材における、前記センサと対向する部位のうちの少なくとも一部分に、誘電体を含有した貼り付け部材が貼り付けられており、
   前記貼り付け部材の外縁部には、該外縁部から内側に向かう方向に形成された切り欠き部が複数設けられており、
   複数の前記切り欠き部は、前記センサを挟む位置に設けられていることを特徴とするシート。
2. 前記カバー部材中、前記センサと対向する部分全体に亘って前記誘電体が含有されていることを特徴とする請求項１に記載のシート。
3. 前記センサは前記貼り付け部材よりも小さく、前記切り欠き部よりも内側に設けられていることを特徴とする請求項１又は２に記載のシート。
4. 前記貼り付け部材は略矩形状であり、四辺すべてに前記切り欠き部が設けられていることを特徴とする請求項１乃至３のいずれか一項に記載のシート。
5. 前記切り欠き部は三角形状であることを特徴とする請求項１乃至４のいずれか一項に記載のシート。
6. 前記センサは切り欠き部を有していないことを特徴とする請求項１乃至５のいずれか一項に記載のシート。
7. 前記センサは、面状のセンサであり、
   前記シート内の前記誘電体が備えられている部分の、前記センサと対向する側の面のサイズは、前記センサの前記カバー部材と対向する側の面のサイズ以上となっていることを特徴とする請求項１乃至６のいずれか一項に記載のシート。
8. 前記センサは、複数配置されており、
   前記シート内の前記誘電体が備えられている部分は、複数の前記センサのうちの少なくとも２つ以上と対向し、かつ、連続した状態で設けられていることを特徴とする請求項１乃至７のいずれか一項に記載のシート。
9. 前記誘電体は、酸化チタン又はチタン酸バリウムであることを特徴とする請求項１乃至８のいずれか一項に記載のシート。
10. 前記シートは、車両に搭載される車両用シートであることを特徴とする請求項１乃至９のいずれか一項に記載のシート。

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