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JP6497231B2 - モータ制御装置 - Google Patents

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JP6497231B2 JP2015122502A JP2015122502A JP6497231B2 JP 6497231 B2 JP6497231 B2 JP 6497231B2 JP 2015122502 A JP2015122502 A JP 2015122502A JP 2015122502 A JP2015122502 A JP 2015122502A JP 6497231 B2 JP6497231 B2 JP 6497231B2
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Description

本発明は、モータ制御装置に関する。
従来、トルク指令値をdq軸電流指令値に変換し、インバータを制御することでモータ巻線の電流の振幅と位相をフィードバック制御するモータ制御装置が知られている。例えば特許文献1に記載のモータ制御装置は、目標トルクを得るための最小電流となる電流位相で電流を制御する。これにより、モータ効率の向上を図っている。
特開2012−200073号公報
しかし、従来のモータ制御装置にあっては、電流制御に起因する電磁加振力(起振力)がステータに発生し、騒音が発生するおそれがあった。本発明は、上記問題に着目したものであって、騒音を抑制することができるモータ制御装置を提案することを目的とする。
この目的のため、本発明のモータ制御装置は、目標トルクを得るための最小電流となる電流位相よりも0°に近い電流位相で、かつ、前記最小電流に対し、所定の許容電流増加量だけ増加させた大きさで電流を制御するとともに、前記最小電流に対し前記許容電流増加量だけ電流が増加することによるモータ効率の変化代が、他の要因によるモータ効率のばらつきの範囲内に収まるように、前記許容電流増加量が設定される
目標トルクを得るための最小電流となる電流位相よりも0°に近い電流位相で、かつ、前記最小電流に対し、所定の許容電流増加量だけ増加させた大きさで電流を制御するとともに、前記最小電流に対し前記許容電流増加量だけ電流が増加することによるモータ効率の変化代が、他の要因によるモータ効率のばらつきの範囲内に収まるように、前記許容電流増加量が設定され、電磁加振力が低減される。よって騒音を抑制することができる。
実施形態のモータ制御装置1の構成を概略的に示すブロック線図である。 実施形態のバッテリ電圧Vが低いときの運転条件判断マップを示す。 実施形態のバッテリ電圧Vが高いときの運転条件判断マップを示す。 実施形態の電流指令値マップを示す。 実施形態の電流位相βとトルクTの特性曲線である。 実施形態の電流位相βと電流Iaの特性曲線である。 実施形態の効率重視電流マップ使用時と静粛性重視電流マップ使用時のモータ効率ηをばらつきを含め示す。 実施形態の電流位相βと電流Iaの特性曲線を複数のトルクT毎に示す。 実施形態の電流位相βと電磁加振力Fとの関係を示す特性曲線である。
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
まず、構成を説明する。図1は、実施形態のモータ制御装置1の構成を概略的に示す。モータ制御装置1は電気自動車に適用される。電気自動車は、回転電機2と、電源3と、センサ4と、モータ制御装置1とを備える。電源(以下、バッテリという。)3は車載の直流電源である。回転電機(以下、モータという。)2は、電気自動車のインホイールモータ(車輪駆動ユニット)に用いられる。モータ2は各車輪に設けられ、車輪を個別に駆動して車両を走行可能とする。モータ2は、バッテリ3の放電時には電動機として機能し動力を発生する一方、発電機(ジェネレータ)としても機能しバッテリ3を充電可能である。モータ2は、車輪を回転自在に支持する部材の内部に収容される。モータ2は、3相交流同期モータSMであり、永久磁石PMを用いる永久磁石型PMSMであって、永久磁石がロータの内部に埋め込まれた内部型IPMSMである。
モータ2は、インナーロータ型であり、円環状(中空円筒形状)のステータ(固定子)と、出力軸に連結されるロータ(可動子)と、ステータを収容するモータケースとを有する。ステータは、ステータコアと、ステータコアに巻回されるコイルとを有する。ステータコアは、例えば、複数のコアピース(分割ステータコア)を円環状に配置することで構成される。コアピースは、例えば、磁性体の電磁鋼板を軸方向に複数積層することで形成される。ステータコアは、複数(例えば18個)のティースをその内周側に有する。ティースは径方向に延び、ロータ側に突出する突極部である。複数のティースは周方向に並んで配列され、その基端側でバックヨーク部により互いに連結される。隣接するティース間にはスロットが形成される。コイルは、スロットに嵌り合うように、インシュレータ(絶縁部材)を介してティースに巻き付けられるモータ巻線である。モータケースは、円筒状であり、その内周側にステータが嵌合することにより、ステータを内部に格納し固定保持する。
ロータは、円柱状(円板状)であり、ステータの内周側に、ステータと略同軸に配置される。ロータは、ステータに対し径方向のエアギャップ(ラジアルギャップ)を介して配置される。このギャップを通して磁路が形成される。ロータは、例えば、出力軸の周りに磁性体の電磁鋼板を軸方向に複数積層することで構成されたロータコアと、ロータコアに複数埋設された永久磁石とを有する。複数の永久磁石は、ロータコアの内部に、周方向に等間隔に並ぶように埋め込まれている。出力軸の一端側(車輪に近い側)は、モータケースの半径方向内側の軸受により回転自在に支持されるとともに、車輪(ホイールハブ)に結合する。
ロータに埋め込まれた永久磁石と、ロータコアを構成する磁性体(電磁鋼板)と、ステータコアを構成する磁性体(電磁鋼板)とによって、主磁気回路が形成される。永久磁石からの磁束、および、インバータ制御によりステータ(コイル)に3相交流が通電されることで発生する交番磁束が、主磁気回路を流れる。これにより、電磁力によるトルクが発生し、ロータおよびこれに連結された出力軸が回転駆動される。モータ2の出力は車輪に回転力として伝達され、車輪を出力軸と一体に回転させることで、電気自動車の走行を可能にする。車両の回生制動時には、車輪は車体の慣性力により回転させられ、車輪からの回転力により出力軸を介してモータ2が駆動される。このときモータ2は発電機として作動し、発電された電力はインバータ100を介してバッテリ3に蓄えられる。
センサ4は、ロータ位置センサ41と電流センサ42を有する。ロータ位置センサ41は、モータ2に設けられるエンコーダやレゾルバ等であり、ロータの回転位置を検出する。電流センサ42は、モータ2の各相に対応して設けられるホール素子等であり、ステータに通電される各相の電流、すなわちU相電流iuとV相電流ivとW相電流iwとを検出する。
モータ制御装置1は、インバータ100と制御装置10を有する。インバータ100は、PWMインバータであり、制御装置10からのインバータ駆動信号に応じてスイッチング素子をオン動作またはオフ動作することにより、バッテリ3からの直流電力を3相交流に変換して、モータ2に供給する。制御装置10は、インバータ100の出力を制御することにより、モータ2を制御する。制御装置10は、トルク指令値T*をd軸およびq軸電流指令値id*,iq*に変換し、センサ4の検出値に基づきインバータ100を制御することで、コイル(モータ巻線)に供給する交流電流の振幅と位相をフィードバック制御する。ここで、dq軸座標系は、d軸とq軸から成る直交座標系であり、モータ2の機械的な回転速度の整数倍の電気的な回転速度で回転する。モータ2は同期機であり、dq軸座標系はモータ回転に同期して回転する。コイルに供給する電流を界磁分電流(d軸電流)とトルク分電流(q軸電流)とに分けてベクトル表示したとき、電流ベクトルがq軸となす角度βが上記位相に相当し、電流ベクトルの長さIaが上記振幅に相当する。βは、q軸側を0°とする電流位相角である。
制御装置10は、電流指令値演算部11と、電流制御部12と、インバータ駆動信号生成部13とを有する。電流指令値演算部11は、ロータの回転速度(モータ2の回転数)Nとトルク指令値T*の入力を受け、これらに基づき、d軸電流指令値id*とq軸電流指令値iq*を算出する。ロータの回転速度Nは、例えばロータ位置センサ41の検出値に基づき得られる。トルク指令値T*は、モータ2の目標トルクを得るための指令値であり、例えば車両の運動状態を統合的に制御する車両制御装置から入力される。id*,iq*は、事前に用意された電流指令値マップを参照することで得られる。決定されたid*,iq*は、電流制御部12へ出力される。
電流制御部12は、電流指令値演算部11から入力されたid*,iq*を実現するため、電流のフィードバック制御を行う。電流制御部12は、電流センサ42により検出された3相交流iu,iv,iwを、位相θに基づき、d軸電流idとq軸電流iqに変換する。位相θは、ロータ4の位置を電気的な位相として表すものであり、ロータ位置センサ41の検出値に基づき得られる。電流制御部12は、電流指令値演算部11から入力されるid*,iq*と、上記変換したid,iqとの差がそれぞれ0になるように、PI制御を用いてd軸およびq軸制御電圧Vd,Vqを算出する。電流制御部12は、位相θを参照した上で、Vd,Vqを、各相に対応する電圧指令値Vu,Vv,Vwに変換する。Vu,Vv,Vwは、インバータ駆動信号生成部13へ出力される。
インバータ駆動信号生成部13は、電流制御部12から入力されたVu,Vv,Vwを実現するためのインバータ駆動信号を生成し、インバータ100に出力する。このインバータ駆動信号によって、インバータ100のスイッチング素子がオンオフ動作し、モータ端子に電圧が印加され、電流が流れる。これによりトルクが発生し、モータ2が駆動される。
電流指令値演算部11は、バッテリ電圧検出部111と制御切換部112を有する。バッテリ電圧検出部111は、バッテリ3の電圧(以下、バッテリ電圧という。)Vを検出する。
制御切換部112は、複数の運転条件判断マップと、2種の電流指令値マップを有する。図2はバッテリ電圧Vが低いときの運転条件判断マップの一例を示し、図3はVが高いときの運転条件判断マップの一例を示す。運転条件判断マップは、トルク指令値T*とモータ回転数Nとにより規定されるモータ2の出力可能領域を2分し、高トルク側を効率重視の領域とし、低トルク側を静粛性重視の領域としたものである。両領域を2分する境界線はバッテリ電圧Vの高低に応じて変化する。図2に示すように、Vが比較的低いときは、上記境界線は低トルク側にあり、効率重視の領域が比較的広く、静粛性重視の領域が比較的狭い。図3に示すように、Vが比較的高いときは、上記境界線は高トルク側にあり、効率重視の領域が比較的狭く、静粛性重視の領域が比較的広い。制御切換部112は、Vに応じて(例えば複数のV毎に)上記境界線が異なる複数の運転条件判断マップを有する。制御切換部112は、現在のVの入力を受けて、このVに対応する運転条件判断マップを選択すると共に、現在のNとT*の入力を受けて、上記選択した運転条件判断マップを参照し、現在の運転点(N,T*)が効率重視の領域にあるか静粛性重視の領域にあるかを判断する。
図4は電流指令値マップの一例を示す。電流指令値マップは、トルク指令値T*とモータ回転数Nとによる運転点毎にid*,iq*を予め規定してテーブル化したものである。制御切換部112は、電流指令値マップとして、効率重視電流マップと静粛性重視電流マップとを有する。各運転点で規定されるid*,iq*が両マップで相違する。制御切換部112は、現在の運転点が効率重視の領域にあると判断したとき効率重視電流マップを選択し、静粛性重視の領域にあると判断したとき静粛性重視電流マップを選択する。電流指令値演算部11は、制御切換部112により選択された電流指令値マップを参照し、現在のNとT*に基づき、id*,iq*を決定する。
効率重視電流マップでは、電流位相β=βiが実現されるよう、id*,iq*が規定される。βiは、電流ベクトルの長さ(以下、単に電流という。)Iaが、目標トルクを得るための最小値(最小電流)Ia_iとなるような電流位相である。図5は、電流Iaを一定としたときの電流位相βとトルクTとの関係を示す特性曲線を、複数の電流Ia毎に示したものである。磁石埋込型同期機であるモータ2では、q軸のリラクタンスはd軸のリラクタンスよりも小さくなり、リラクタンスモータの突極ロータに励磁巻線を施した突極同期機と同様の特性となる。すなわち、ロータの界磁極の突極性によってリラクタンストルクが発生し、このリラクタンストルクがモータ2のトルク発生に寄与する。マグネットトルクとリラクタンストルクの和が最大となる電流位相βiで運転することにより、最大トルクが得られる。電流Iaが小さいほど、最大トルクは小さくなり、最大トルク付近で特性曲線はなだらかになる(βの変化量に対するTの変化量が小さくなる)。電流Iaが大きいほど、最大トルクは大きくなり、最大トルク付近で特性曲線は急峻になる(βの変化量に対するTの変化量が大きくなる)。破線の矢印で示すように、トルクTが任意の最大トルクで一定のとき、電流位相がβiから変化すると、電流Iaは増加する。言換えると、βがβiのときIaは最小となる。効率重視電流マップを使用して決定されるid*,iq*により、最大効率制御が行われる。損失(電流Ia)が最小となるようにid*,iq*の比を決定することで、モータ効率ηが最大になる。
静粛性重視電流マップでは、電流位相β=βnが実現されるよう、id*,iq*が規定される。βnは、βiよりも0°に近い電流位相である。βnでは、電流Iaが、目標トルクを得るための最小電流Ia_iよりもΔIaだけ大きいIa_nとなる。図6は、トルクTを一定としたときの電流位相βと電流Iaとの関係を示す特性曲線である。βがβiから0°の側へ変化してβnになると、Iaは最小電流Ia_iからΔIaだけ増加してIa_nになる。静粛性重視電流マップを作る際に許容できる電流増加量ΔIaの考え方としては、例えば、以下のものがある。すなわち、使用する電流指令値マップを効率重視電流マップから静粛性重視電流マップへ切り換えたときのΔIaに起因するモータ効率ηの低下代Δηが、モータ2の個体(製品)間における効率ηのばらつき範囲(±σ)より小さくなるように、ΔIaの許容範囲を設定する。図7は、ばらつきを含むηを、効率重視電流マップを使用したときと静粛性重視電流マップを使用したときとで対比して示す。±σ(=0.3%)は、ηの公差範囲である。効率重視電流マップを使用したときのηは例えば95%であり、そのばらつき範囲は0.6%(=0.3%×2)である。静粛性重視電流マップを使用したときのηは例えば0.1%だけ下がって94.9%であり、そのばらつき範囲は同じく0.6%である。ΔIaに起因するηの低下代Δη(0.1%)は、ばらつき範囲(0.6%)より小さい。
静粛性重視電流マップにおいて、低負荷(低トルク、低回転数)側の所定の運転領域(図4の斜線部分)では、他の運転領域におけるよりも、βiからβnへのβの変化量Δβが大きくなるよう、id*,iq*が規定される。この運転領域では、Δβが大きくなっても、IaのIa_iからの増加量ΔIaが所定の許容範囲内に収まるからである。図8は、図6の特性曲線を、複数のトルクT毎に示したものである。トルクTが小さいほど、最小電流Ia_iは小さくなると共に、Ia_i付近で特性曲線がなだらかになる(βの変化量Δβに対する電流Iaの変化量ΔIaが小さくなる)。トルクTが大きいほど、最小電流Ia_iは大きくなると共に、Ia_i付近で特性曲線が急峻になる(Δβに対するΔIaが大きくなる)。ΔIaを同じとした場合、矢印で示すように、トルクTが小さいときは大きいときよりも、電流位相βのβiからの変化量Δβは大きい。
次に、作用効果を説明する。モータ2は、電動機として駆動力の発生時に振動する。ステータコアはモータ2の振動の発振源であり、ステータコアの電磁加振力Fがモータケースに伝達されると、モータケースの外部への騒音が発生してしまう。例えば、ステータコアは外周部において比較的大きな振幅で放射状に(半径方向に)振動する。このようなステータの半径方向の電磁加振力Fにより振動や騒音が発生する。半径方向の電磁加振力Fは、ロータとステータの相対回転時に、ロータの磁極から発生する界磁磁束の磁路が、ステータに設けられたスロットの開口部をロータの磁極が横切る毎に周期的に変化し、ギャップでの磁束分布に変化が生じることにより、発生する。電磁加振力Fの回転次数、空間次数、振幅は、モータ2の磁極数(ロータの有効磁極開角の極数とステータに設けられたスロットの数)等に依存する。電磁加振力Fによる振動モードとしては、ステータがモータ2の半径方向に同相に振動する円環0次モード等がある。モータ2の磁極数に依存する電磁加振力Fが、モータケースの構造に起因する共振モードを励起すると、耳障りとなる高い音色の騒音となる。
本発明者は、電磁加振力Fが電流位相βとどのような関係にあるのかを解析と実測により調べ、その結果、βを0°に近づけるほどFが低減されることを発見した。図9は、βとFとの関係を示す特性曲線である。少なくともβi以下の範囲では、βが小さいときは大きいときよりもFが小さいという傾向、具体的には、βがβiよりも0°に近づくほどFが小さくなるという傾向がある。モータ制御装置1は、効率重視電流マップを選択したとき、βiが実現されるようにid*,iq*を設定して、電流のフィードバック制御を行う。すなわち、βiで電流を制御することで、最大効率を実現する。一方、静粛性重視電流マップを選択したとき、βiよりも0°に近いβnが実現されるようにid*,iq*を設定して、電流のフィードバック制御を行う。すなわち、モータ制御装置1は、βnで電流を制御することで、電磁加振力Fの低減を実現する。よって、運転者が不快と感じるモータ2の振動・騒音を低減可能となり、静粛で快適な車室内空間を提供可能となる。
なお、モータ2の部品形状の変更等、メカ的な改変により、電磁加振力Fによる影響を低減することも考えられる。例えば、ロータにスキューを設けることで、電磁加振力Fの発生を抑制することが可能である。しかし、この場合、平均トルクが低下してしまい、モータ効率が悪化するおそれがある。また、ステータの取り付け構造により、電磁加振力Fの伝達を抑制することも可能である。例えば、モータケースとステータとの間に防振部材を設けたり、モータケースに対してステータを浮かした状態で支持するフローティング構造としたりすることも考えられる。しかし、この場合、防振部材等が必要になると共に、防振部材等の設置スペースが必要となる。一方、インホイールモータでは、モータ周囲のスペースが限られている。すなわち、効率やレイアウト性の悪化を抑制しつつ、電磁加振力Fを低減することは困難であった。モータ制御装置1は、形状の変更ではなく、電流制御の変更により、効率等の悪化を抑制しつつ、電磁加振力Fを低減することができる。
なお、モータ2はハイブリッド車両等の駆動ユニット等に用いられてもよく、用途は特に限定しない。また、モータ2へ供給する交流は3相に限らない。バッテリの直流を交流に変換するためのインバータ100の制御方式は、電流の振幅と位相を制御するものであればよく、PWMに限らずPAMでもよい。実施形態の電流制御はインホイールモータのモータ2以外にも適用可能である。上記電流制御をインホイールモータのモータ2に適用することで、レイアウト性の悪化抑制や振動・騒音の低減効果を顕著に得ることができる。
効率重視電流マップを選択したときに実現されるβiでは、目標トルクを得るための電流Iaが最小電流Ia_iとなる。一方、静粛性重視電流マップを選択したときに実現されるβnでは、目標トルクを得るための電流Iaが最小電流Ia_iよりもΔIaだけ増加する。この増加量ΔIaが所定の許容範囲内となるように、静粛性重視電流マップのid*,iq*が規定される。すなわち、モータ制御装置1は、静粛性重視電流マップを使用するときは、Ia_iに対し、所定の許容電流増加量ΔIaだけ増加させた大きさで電流を制御する。これにより、Iaの増加による損失を抑制し、モータ効率ηの悪化を抑制できる。すなわち、コイルの銅損が過度に増えない程度にβをβiよりも0°側に振ることで、振動・騒音を低減しつつ、効率の悪化を抑制できる。なお、上記電流制御が適用されるモータは、図5に示すような、0°より大きいβでトルクTが最大となるT-β特性を有するもの(リラクタンストルクがモータトルク発生に寄与するもの)であればよい。
ΔIaの上記所定の許容範囲は、ΔIaに起因するモータ効率ηの低下代Δηが、Iaの増加以外の要因(製造誤差等)によるηのばらつき範囲内に収まるような範囲に設定される。すなわち、最小電流Ia_iに対しΔIaだけ電流Iaを増加させることによるηの変化代Δηが、他の要因によるηのばらつきの範囲内に収まるように、許容電流増加量ΔIaが設定される。図8に示す例では、ΔIaに起因するΔη(0.1%)は、ばらつき範囲(0.6%)よりも小さく、ばらつき幅σ(=0.3%)よりも小さい。よって、図8に矢印αの範囲で示すように、モータ2の個体(製品)群における過半数において、静粛性重視電流マップを使用したときのηが、効率重視電流マップを使用したときのηと同じとなる。すなわち、静粛性重視電流マップを使用しても、効率重視電流マップを使用したときに比べ、ηが実質的に変化しない。また、ΔIaに起因するΔηが、ばらつき幅σ(=0.3%)よりも大きくても、ばらつき範囲(0.6%)よりも小さければ、静粛性重視電流マップを使用したときのηが、効率重視電流マップを使用したときのηの公差範囲に収まるモータ2の個体(製品)が存在することになる。よって、ΔIaによる効率悪化代を実質的に抑制することができる。
静粛性重視電流マップにおいて、低負荷(低トルク、低回転数)側の所定の運転領域(図4の斜線部分)では、他の運転領域におけるよりも、βiからβnへの変化量Δβが大きくなるよう、id*,iq*が規定される。すなわち、モータ制御装置1は、トルクTが小さいときは大きいときよりも、最小電流Ia_iとなる電流位相βiに対して0°に近い電流位相βnで電流を制御する。トルクTが比較的小さい運転領域では、Δβが大きくなっても、IaのIa_iからの増加量ΔIaが所定の許容範囲内に収まるからである。よって、ΔIaによる効率悪化を抑制しつつ、Δβを可及的に大きくすることで電磁加振力を効果的に低減することができる。
制御切換部112は、運転条件判断マップを参照し、現在の運転点(N,T*)が効率重視の領域にあるか静粛性重視の領域にあるかを判断する。現在の運転点が効率重視の領域にあると判断したとき効率重視電流マップを選択し、静粛性重視の領域にあると判断したとき静粛性重視電流マップを選択する。これにより、最小電流Ia_iとなる電流位相βiでの(効率重視の)電流制御と、0°に近い電流位相βnでの(静粛性重視の)電流制御とを切り換える。このように、効率重視の制御と静粛性重視の制御とを切り換えることが可能であるため、運転条件等に応じて両制御を切り換えることで、効率悪化の抑制効果と振動・騒音の低減効果とを共に向上できる。
運転条件判断マップにおいて効率重視の領域と静粛性重視の領域との境界線は、バッテリ電圧Vの高低に応じて変化する。同じ運転状態(T,N)でバッテリ電圧Vに応じて効率重視か静粛性重視かの判断を切り換えることは、バッテリ3の充電状態(SOC)に基づき電流制御を切り換えることに相当する。すなわち、VはSOCに正比例的に相関する。Vの低下時に判断を静粛性重視から効率重視へ切り換えることは、SOCの低下時にモータ2の電流制御を静粛性重視から効率重視へ切り換えることに相当する。このように、モータ制御装置1は、バッテリ3の容量(SOC)の低下時に、0°に近い電流位相βnでの(静粛性重視の)電流制御から、最小電流Ia_iとなる電流位相βiでの(効率重視の)電流制御へ切り換える。これにより、電流Iaが小さくなり、それ以上のバッテリ3の容量低下が抑制されることから、車両の航続距離を確保することができる。
[他の実施例]
以上、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明したが、本発明の具体的な構成は、実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
1 モータ制御装置
100 インバータ

Claims (4)

  1. トルク指令値をdq軸電流指令値に変換し、インバータを制御することでモータ巻線の電流の振幅と位相をフィードバック制御するモータ制御装置であって、
    q軸側を0°とした場合、目標トルクを得るための最小電流となる電流位相よりも0°に近い電流位相で、かつ、前記最小電流に対し、所定の許容電流増加量だけ増加させた大きさで電流を制御するとともに、
    前記最小電流に対し前記許容電流増加量だけ電流が増加することによるモータ効率の変化代が、他の要因によるモータ効率のばらつきの範囲内に収まるように、前記許容電流増加量が設定される、
    ことを特徴とするモータ制御装置。
  2. 請求項1に記載のモータ制御装置において、
    前記最小電流となる電流位相での電流制御と、前記0°に近い電流位相での電流制御とを切り換える、
    ことを特徴とするモータ制御装置。
  3. 請求項2に記載のモータ制御装置において、
    バッテリの容量低下時に、前記0°に近い電流位相での電流制御から、前記最小電流となる電流位相での電流制御へ切り換える
    ことを特徴とするモータ制御装置。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1つに記載のモータ制御装置において、
    目標トルクが小さいときは大きいときよりも0°に近い電流位相で電流を制御する
    ことを特徴とするモータ制御装置。
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