JP6496545B2 - ろう付性に優れる熱交換器用アルミニウム合金フィン材 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1では、Fe、Mn、Siを適量含有し、結晶粒径を調整することで成形性、ろう付け性などを改善したフィン材が提案されており、特許文献2では、Mn、Si、Feを適量含有し、Fe/Mn比を規定することで強度、耐食性、熱伝導性などを改善したフィン材が提案されている。また、特許文献3では、Mn、Si、Fe、Znを適量含有し、Mn、Si量相互の関係を規定し、さらに金属間化合物を規定することで高強度、高熱伝導性を改善したフィン材が提案されている。
また、最近では熱交換器として組み付けられた後のろう付加熱過程におけるフィン材の強度変化特性が非常に重要であることが分かってきている。つまり、ろう付加熱過程において、フィン材がチューブ材に対して、低温領域で軟化すると、フィンの強度が低下して座屈を生じ、局部的にろう付不良(フィンの未接着)が生じる。一方でチューブ材に対して、高温領域まで軟化しないと、相対的にフィンの強度が高いために、接合体であるチューブを変形させてしまう問題がある。このように、近年ではDC製法において、ろう付後の高強度と高導電牲を満足しつつ、なお且つ熱交換器としてのろう付性に優れるフィン材が求められている。
前記アルミニウム合金フィン材が、常温において、ろう付後の引張強さが140MPa以上、耐力が50MPa以上であり、
前記Al−Mn系アルミニウム合金材が、常温において、ろう付後の引張強さが150MPa以上、耐力が50MPa以上であることを特徴とする。
Mnは、Al−(Mn、Fe)−Si系粒子を析出させ、分散強化によるろう付後の強度を得るために含有する。ただし、1.0%未満であると、Al−(Mn、Fe)−Si系金属化合物による分散強化の効果が小さく、所望のろう付後強度が得られない。一方、2.0%を越えると、鋳造性、圧延性などにおいて製造性を悪化させる。このためMn含有量を1.0〜2.0%とする。なお、同様の理由で下限を1.5%、上限を1.8%とするのが望ましい。
Al−(Mn、Fe)−Si系粒子は、Al、Mn、Siを必須の成分として含む。Al−(Mn、Fe)−Si系粒子は、Al、Mn、Siのみで構成されていてもよく、これにFeを含んでいてもよい。以下も同様である。
Cuは、ろう付け後の強度向上に寄与する。ただし、0.01%未満の含有では、強度向上の効果が小さく、一方、0.20%を超えて含有すると、鋳造性が低下して製造性が悪化し、また、融点が低下してろう付け性が低下する。このため、Cu含有量は、0.01〜0.20%とする。なお、同様の理由で下限を0.05%、上限を0.15%とするのが望ましい。
Siは、Al−(Mn、Fe)−Si系粒子を析出させ、分散強化によるろう付後の強度を得るために含有する。ただし、0.5%未満の含有では、Al−(Mn、Fe)−Si系金属間化合物による分散強化の効果が小さく、所望のろう付後強度が得られない。一方、1.50%を超えて含有すると、融点が低下してろう付け性が低下する。このため、Si含有量を0.5〜1.50%とする。なお、同様の理由で下限を1.00%、上限を1.20%とするのが望ましい。
Feは、Al−(Mn、Fe)−Si系粒子を析出させ、分散強化によるろう付後の強度を向上させる効果がある。ただし、0.5%を超えて含有すると、鋳造性、圧延性などにおいて製造性を悪化させ、耐食性が低下する。このため、Fe含有量は、0.1〜0.5%以下とする。また、上記効果を得るため、Fe含有量は0.2〜0.4%とするのが望ましい。
Znは、アルミニウム合金の電位を卑にする作用があり、犠牲陽極効果を得て耐食性を向上させるために含有する。ただし、1.0%未満の含有では、所望の耐食性向上効果が得られない。一方、3.0%を超えて含有すると融点が低下し、ろう付加熱時に局部溶融が発生する。このため、Zn含有量を1.0〜3.0%とする。なお、同様の理由で下限を1.5%、上限を2.5%とするのが望ましい。
Ti、Cr、Mgは金属間化合物を形成し、分散強化および固溶強化により強度が向上するので、所望により1種以上を含有する。ただし、それぞれ含有量が下限未満であると、分散強化および固溶強化への影響が小さく、強度が向上する効果が小さい。Ti、Crがそれぞれの上限を超えると、鋳造時の晶出物が粗大化し、製造性が低下する。また、Mgは、上限を超えるとろう付性を低下させる。
したがって、それぞれの含有量を上記範囲に定める。なお、同様の理由でTi、Cr、Mg:下限0.03%、上限0.15%とするのが望ましい。
フィン材の厚さが薄いことにより、ろう付け時の強度が課題になり、本願発明の効果が顕著になる。
熱交換器使用時に十分な耐久強度を得るために上記引張強さ、耐力を規定する。
部材の薄肉化に伴い、高強度材が求められている。フィン材のろう付後強度が低いと車載搭載時に熱交換器に負荷される繰り返しの振動や冷却水の膨張、圧縮により、フィン破断が生じやすくなる。このような破断部ではフィンのチューブ膨張、圧縮を抑制する効果が得られず、チューブは太鼓状に膨張して、早期の破断つまり内部冷却水の漏れにつながる。これまでの実績ではフィン板厚が80μm以下となった場合でもろう付後の引張強さが140MPa以上有していれば、市場でのフィン破断を大幅に軽減できることが分かっている。
耐力は弾性限度を示しており、ろう付後の耐力が低い場合、車載搭載時の繰り返し振動により、フィン破断に至らなくても、塑性変形を生じて原形を留めず、複数段のフィンが変形する事でコア収縮が生じる。フィン板厚が80μm以下となった場合でもろう付後の耐力50MPa以上有していれば、上記影響を軽減できることが分かっている。
本発明のろう付け対象となるAl−Mn系アルミニウム合金材は、成分が特定のものに限定されるものではないが、好適には質量%で、Mn:1.0〜1.8%、Cu:0.3〜1.0%、Si:0.30〜1.0%、Fe:0.1〜0.5%を含有し、さらに、所望によりTi:0.01〜0.20%、Cr:0.01〜0.20%、Mg:0.01〜0.50%のうち、1種または2種以上を含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有するものが挙げられる。以下にその理由を説明する。
Al−Mn系アルミニウム合金材は、チューブ材やヘッダー材が例示される。
Al−Mn系アルミニウム合金材は、単材でもよく、また、少なくともろう付け側にろう材がクラッドされたクラッド材によって提供されるものであってもよい。
Mnは、Al−(Mn、Fe)−Si系粒子を析出させ、分散強化によるろう付後の強度を得るために含有する。ただし、1.0%未満であると、Al−(Mn、Fe)−Si系金属化合物による分散強化の効果が小さく、所望のろう付後強度が得られない。一方、1.8%を越えると、鋳造性、圧延性などにおいて製造性を悪化させる。このためMn含有量を1.0〜1.8%とする。なお、同様の理由で下限を1.3%、上限を1.6%とするのが望ましい。
Al−(Mn、Fe)−Si系粒子は、Al、Mn、Siを必須の成分として含む。Al−(Mn、Fe)−Si系粒子は、Al、Mn、Siのみで構成されていてもよく、これにFeを含んでいてもよい。以下も同様である。
Cuは、ろう付け後の強度向上に寄与する。ただし、0.3%未満の含有では、強度向上の効果が小さく、一方、1.0%を超えて含有すると、鋳造性などが低下して製造性が悪化し、また、融点が低下してろう付け性が低下する。このため、Cu含有量は、0.3〜1.0%とする。なお、同様の理由で下限を0.5%、上限を0.8%とするのが望ましい。
Siは、Al−(Mn、Fe)−Si系粒子を析出させ、分散強化によるろう付後の強度を得るために含有する。ただし、0.30%未満の含有では、Al−(Mn、Fe)−Si系金属間化合物による分散強化の効果が小さく、所望のろう付後強度が得られない。一方、1.0%を超えて含有すると、融点が低下してろう付け性が低下する。このため、Si含有量を0.30〜1.0%とする。なお、同様の理由で下限を0.5%、上限を0.7%とするのが望ましい。
Feは、Al−(Mn、Fe)−Si系粒子を析出させ、分散強化によるろう付後の強度を向上させる効果がある。ただし、0.5%を超えて含有すると、鋳造性、圧延性などにおいて製造性を悪化させ、耐食性が低下する。このため、Fe含有量は、0.5%以下とする。また、上記効果を得るため、Fe含有量は下限を0.1%、上限を0.3%とするのが望ましい。
Ti、Cr、Mgは金属間化合物を形成し、分散強化および固溶強化により強度が向上するので、所望により1種以上を含有する。ただし、それぞれ含有量が下限未満であると、分散強化および固溶強化への影響が小さく、強度が向上する効果が小さい。Ti、Crがそれぞれの上限を超えると、鋳造時の晶出物が粗大化し、製造性が低下する。また、Mgは、上限を超えるとろう付性を低下させる。
したがって、それぞれの含有量を上記範囲に定める。なお、同様の理由でTi、Cr、Mg:下限0.03%、上限0.15%とするのが望ましい。
部材の薄肉化に伴い、高強度材が求められている。チューブ材のろう付後強度が低いと車両搭載時に熱交換器に負荷される繰り返しの振動や冷却水の膨張、圧縮により、チューブ破断が生じやすくなる。このような破断部では、チューブは太鼓状に膨張して、早期の破断つまり内部冷却水の漏れにつながる。これまでの実績ではチューブ板厚が250μm以下となった場合でもろう付後の引張強さ150MPa以上有していれば、市場でのチューブ破断を大幅に軽減できることが分かっている。
耐力は弾性限度を示しており、ろう付後の耐力が低い場合、車両搭載時の繰り返し振動により、チューブ破断に至らなくても、塑性変形を生じて原形を留めず、複数段のチューブが変形する事でコア収縮が生じる。チューブ板厚が250μm以下となった場合でもろう付後の耐力が50MPa以上有していれば、上記影響を軽減できることが分かっている。
当該フィン材と被接合部材に関して、ろう付加熱時に各温度での強度差が上記範囲内に収まることで、フィン材の座屈あるいは被接合部材の変形を抑制でき優れたろう付材料が得られる。
本発明のフィン材は、例えば常法の工程を利用して製造することができるが、添加元素の固溶度を制御する工程を含むのが望ましい。
アルミニウム合金は、本発明組成に調製して溶製することができる。該溶製は半連続鋳造法によって行うことができる。
得られたアルミニウム合金鋳塊に対しては、均質化処理を施さないか、所定条件で均質化処理を行う。すなわち、均質化処理は、温度350〜450℃、保持時間3〜12時間が望ましい。
その後、熱間圧延、冷間圧延などを経て、例えば板厚80μm以下の薄板状フィン材とする。本発明では、上記のように半連続鋳造法の適用が可能であるが、CC鋳造法(連続鋳造圧延法)の適用を排除するものではなく、連続鋳造法の後、冷間圧延を行ってもよい。
フィン材は単材として用いてもよく、ろう材とクラッドしたブレージングシートとして用いてもよい。ブレージングシートでは、一面にAl−Si系などのろう材をクラッドし、他面に犠牲陽極材などをクラッドしたものとしてもよい。
なお、相手部材の材料組成や製造方法は特に限定されるものではないが、例えばMn:1.0〜1.8%、Cu:0.3〜1.0%、Si:0.30〜1.0%、Fe:0.30%以下を含有し、さらに、所望によりTi:0.01〜0.20%、Cr:0.01〜0.20%、Mg:0.01〜0.50%のうち、1種または2種以上を含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有するものが挙げられる。該Al−Mn系合金材は、厚さ250μm以下が好適例とされる。
なお、本発明としては、ろう付における条件(ろう付温度、雰囲気、フラックスの使用の有無、ろう材の種別など)は特に限定されるものではない。ろう付けの際の温度管理としては、例えば、昇温速度10〜100℃/min、保持温度590〜610℃、保持時間1〜10min、冷却速度10〜100℃/minなどの条件で行うことができる。
上記ろう付け条件内において、本発明における耐力の条件を満たすものは、本発明の範囲内となり得るものである。
上記加熱温度では、それぞれの材料は、上記耐力を維持するか、高温に連れて強度が低下する。
また、ろう付け対象となるAl−Mn系合金材は、ろう付後の引張強さが150MPa以上、耐力が50MPa以上の特性を有しているのが望ましい。
表1に示す組成(残部Al+不可避不純物)を有するフィン材およびAl−Mn系合金を、DC法(半連続鋳造法)により溶解、鋳造した。なお、スラブの冷却速度は、0.5〜3.5℃/秒であった。さらに、得られた鋳塊に対し、表1に示す条件にて均質化処理を行い、その後、同様に表1に示す条件にて均熱を行い熱間圧延、その後冷間圧延を行った。なおAl−Mn系合金に関しては片面側にろう材としてAl−10%Si合金をクラッド率10%になるように熱間貼り合わせ圧延を行った。
冷間圧延工程では、いずれも75%以上で冷間圧延を行った後、350℃にて中間焼鈍を行い、その後圧延率40%の最終圧延を行い、フィン材は板厚0.06mm、ろう材を貼り合わせたAl−Mn系合金(チューブ材)は0.25mmで、質別H14の供試材を得た。
室温から600℃まで平均昇温速度40℃/分で昇温し、600℃で3分保持後、100℃/分の降温速度で降温冷却する熱処理の条件でろう付相当加熱を行った。
作製した前記フィン材に、ろう付相当の熱処理を施した。その後、圧延方向と平行にサンプルを切り出して、常温で引張試験を実施し、引張強さと耐力を測定した。引張速度は3mm/分とした。
ろう付加熱を想定して常温から250℃〜500℃の間の温度まで一定の速度100℃/分で昇温し、各温度(250℃、260℃、270℃、・・・500℃:10℃おき)に到達後、各温度で高温引張試験を実施し、耐力を測定した。引張速度は15mm/分とした。表1に、アルミニウム合金フィン材の耐力値とAl−Mn系アルミニウム合金材の耐力値の比を示す。
Claims (7)
- 質量%で、Mn:1.0〜2.0%、Cu:0.01〜0.20%、Si:0.5〜1.5%、Fe:0.1〜0.5%、Zn:1.0〜3.0%を含有し、残部がAlと不可避不純物の組成のアルミニウム合金フィン材であって、Al−Mn系アルミニウム合金材をろう付け対象とし、ろう付加熱において、前記アルミニウム合金フィン材の耐力(YSfin)と前記Al−Mn系アルミニウム合金材の耐力(YStube)とが、同一温度での耐力の比(YSfin/YStube)において、加熱温度が250℃〜500℃の範囲で常に0.7≦(YSfin/YStube)≦1.7の範囲であり、
前記アルミニウム合金フィン材が、常温において、ろう付後の引張強さが140MPa以上、耐力が50MPa以上であり、
前記Al−Mn系アルミニウム合金材が、常温において、ろう付後の引張強さが150MPa以上、耐力が50MPa以上であることを特徴とするろう付性に優れる熱交換器用アルミニウム合金フィン材。 - さらに質量%で、Ti:0.01〜0.20%、Cr:0.01〜0.20%、Mg:0.01〜0.20%のうち、1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載のろう付性に優れる熱交換器用アルミニウム合金フィン材。
- 前記Al−Mn系アルミニウム合金材は、質量%で、Mn:1.0〜1.8%、Cu:0.30〜1.0%、Si:0.30〜1.0%、Fe:0.1〜0.5%を含有し、残部がAlと不可避不純物からなる組成を有することを特徴とする請求項1または2に記載のろう付性に優れる熱交換器用アルミニウム合金フィン材。
- 前記Al−Mn系アルミニウム合金材は、さらに、質量%で、Ti:0.01〜0.20%、Cr:0.01〜0.20%、Mg:0.01〜0.50%のうち、1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項3に記載のろう付性に優れる熱交換器用アルミニウム合金フィン材。
- 前記Al−Mn系アルミニウム合金材がチューブ材の芯材であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のろう付性に優れる熱交換器用アルミニウム合金フィン材。
- 板厚が80μm以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載のろう付性に優れる熱交換器用アルミニウム合金フィン材。
- 前記Al−Mn系アルミニウム合金材は、板厚が250μm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のろう付性に優れる熱交換器用アルミニウム合金フィン材。
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