本願の実施の形態に関わる電力変換装置について、図を参照しながら以下に説明する。なお、各図において、同一または同様の構成部分については同じ符号を付しており、対応する各構成部のサイズと縮尺はそれぞれ独立している。例えば、構成の一部を変更した断面図の間で、変更されていない同一構成部分を図示する際に、同一構成部分のサイズと縮尺が異なっている場合もある。また、電力変換装置は、実際にはさらに複数の部材を備えているが、説明を簡単にするため、説明に必要な部分のみを記載し、他の部分については省略している。
実施の形態1.
以下、本願の実施の形態1について説明する。図1は、本願の実施の形態を説明するための電力変換装置の回路図である。同図に示すように、電力変換装置100は、DC/DCコンバーター50と、モータードライバー51と、コントローラー6などから構成されている。また、電力変換装置100の入力側(低圧側)、すなわち、端子P1と端子N1の間には、直流電源101(またはバッテリー)が、接続されている。電力変換装置100の出力側(高圧側)、すなわち、端子P2と端子N2の間には、モータードライバー51を介して、モーター102が接続されている。
DC/DCコンバーター50は、リアクトル1(L1)と、第1半導体スイッチング回路2aと、第2半導体スイッチング回路2bと、第3半導体スイッチング回路2cと、第4半導体スイッチング回路2dと、低圧側コンデンサー3(C1)と、高圧側コンデンサー4(C2)と、中間コンデンサー5(C0)と、電流センサー7と、第1電圧センサー8と、第2電圧センサー9などから構成されている。電流センサー7は、リアクトル1(L1)を流れる電流を検出する。第1電圧センサー8は、中間電圧とも称せられる中間コンデンサー5の両端電圧(V0真値)を検出する。第2電圧センサー9は、出力電圧とも称せられる高圧側コンデンサー4の両端電圧(V2真値)を検出する。
第1半導体スイッチング回路2a〜第4半導体スイッチング回路2dは、スイッチング素子S1〜スイッチング素子S4と、それに逆並列に接続されたダイオードとで構成されている。スイッチング素子S1〜スイッチング素子S4は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を適用する。さらに、第1半導体スイッチング回路2a〜第4半導体スイッチング回路2dのエミッタ端子(負極側端子)には、センス電流が流れるセンス端子を設けている。ここで、センス電流は、コレクタ電流を分流させた電流を指していて、各センス端子は、コントローラー6に接続されている。
コントローラー6は、第1半導体スイッチング回路2a、第2半導体スイッチング回路2b、第3半導体スイッチング回路2c、第4半導体スイッチング回路2d、モータードライバー51、モーター102を制御するものである。また、モータードライバー51は、モーター102を駆動するために直流電圧を交流電圧に変換するDC/ACインバータである。例えば、モータードライバー51は、スイッチング素子とそれに逆並列に接続されたダイオードとで構成されている、半導体スイッチング回路を6組フルブリッジ接続して構成される。コントローラー6は、制御信号MDをモータードライバー51に、送信することで、モータードライバー51の動作を制御することができる。
DC/DCコンバーター50は、低圧側(入力側)と高圧側(出力側)との間で双方向の電力変換が可能な双方向型のものである。低圧側の端子(端子P1および端子N1)の間に入力された入力電圧(低圧側電圧;第1電圧)V1を、V1以上の電圧に昇圧し、昇圧後の出力電圧(高圧側電圧;第2電圧)V2を高圧側の端子(端子P2および端子N2)の間に出力するものである。第1半導体スイッチング回路2a、第2半導体スイッチング回路2b、第3半導体スイッチング回路2c、および、第4半導体スイッチング回路2dは、直列に、接続されている。
第1半導体スイッチング回路2aは、一端が低圧側コンデンサー3(C1;入力側コンデンサー)の負極側端子に接続されている。第2半導体スイッチング回路2bは、一端が第1半導体スイッチング回路2aの他端に接続され、他端がリアクトル1(L1)を介して低圧側コンデンサー3の正極側端子に接続されている。第3半導体スイッチング回路2cは、一端が第2半導体スイッチング回路2bの他端に接続されている。第4半導体スイッチング回路2dは、一端が第3半導体スイッチング回路2cの他端に接続され、他端が高圧側コンデンサー4(C2;出力側コンデンサー)の正極側端子に接続されている。
中間コンデンサー5(C0)は、一端が第1半導体スイッチング回路2aと第2半導体スイッチング回路2bとの中間接続点に接続され、他端が第3半導体スイッチング回路2cと第4半導体スイッチング回路2dとの中間接続点に接続されている。ゲート信号G1〜G4は、第1半導体スイッチング回路2a〜第4半導体スイッチング回路2dに対して、コントローラー6が生成する。コントローラー6は、第1半導体スイッチング回路2a〜第4半導体スイッチング回路2dをスイッチング周波数fsw(スイッチング周期Tsw)にてオンオフ動作させる。
DC/DCコンバーター50の動作は、本出願人による特許文献1(特許第5457559号公報)に詳しく説明されているので、ここでは簡単に言及するに留める。定常状態におけるDC/DCコンバーター50の動作状態として、直流電源101からモーター102に電力が供給されることによりモーター102を駆動する状態(力行動作)と、モーター102が発電状態で発電した電力が直流電源101に供給される状態(回生動作)の2つの状態が存在する。
図2は、本願の実施の形態におけるコントローラーを説明するための回路図である。コントローラー6は、CPU6a( Central Processing Unit )と記憶装置6bなどから構成されている。コントローラー6は、第1半導体スイッチング回路2a〜第4半導体スイッチング回路2dに対して、ゲート信号G1〜G4を発信する。この実施の形態においては、ゲート信号G1〜G4がHighの時に、第1半導体スイッチング回路2a〜第4半導体スイッチング回路2dが、オンする(図24A〜図24Dを参照)。
コントローラー6の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアとファームウェアはプログラムとして記述され、記憶装置6bに格納される。CPU6a(処理回路)は、記憶装置6bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。すなわち、コントローラー6は、処理回路により実行されるときに、各ステップが結果的に実行されることになるプログラムを格納するための記憶装置6bを備える。
また、これらのプログラムは、コントローラー6の手順と方法を、コンピュータに実行させるものであるともいえる。ここで、記憶装置6bとは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read−Only Memory)、フラッシュメモリー、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等が該当する。
本願の実施の形態に関わるDC/DCコンバーター50の動作モードを、図3〜図6に示された回路図を用いて説明する。定常状態におけるDC/DCコンバーター50の動作モードとして、動作モードA、動作モードB、動作モードC、および、動作モードDを定義する。図3は、DC/DCコンバーター50の動作モードAを示している。動作モードAでは、第1半導体スイッチング回路2aと第2半導体スイッチング回路2bがオン、第3半導体スイッチング回路2cと第4半導体スイッチング回路2dがオフとなっている。
動作モードAの力行動作時は、リアクトル1(L1)にエネルギーを蓄積する状態、回生動作時は、リアクトル1(L1)のエネルギーを放出する状態となる。スイッチング素子S1(第1スイッチング素子)、スイッチング素子S2(第2スイッチング素子)、スイッチング素子S3(第3スイッチング素子)、およびスイッチング素子S4(第4スイッチング素子)は、それぞれ、負極側端子S−、正極側端子S+、およびゲートSgを有している。
図4は、DC/DCコンバーター50の動作モードBを示している。動作モードBでは、第1半導体スイッチング回路2aと第3半導体スイッチング回路2cがオン、第2半導体スイッチング回路2bと第4半導体スイッチング回路2dがオフとなっている。力行動作時は、中間コンデンサー5にエネルギーを蓄積する状態、回生動作時は、中間コンデンサー5のエネルギーを放出する状態となる。
図5は、DC/DCコンバーター50の動作モードCを示している。動作モードCでは、第2半導体スイッチング回路2bと第4半導体スイッチング回路2dがオン、第1半導体スイッチング回路2aと第3半導体スイッチング回路2cがオフとなっている。力行動作時は、中間コンデンサー5のエネルギーを放出する状態、回生動作時は、中間コンデンサー5にエネルギーを蓄積する状態となる。
図6は、DC/DCコンバーター50の動作モードDを示している。動作モードDでは、第3半導体スイッチング回路2cと第4半導体スイッチング回路2dがオン、第1半導体スイッチング回路2aと第2半導体スイッチング回路2bがオフとなっている。力行動作時は、リアクトル1(L1)のエネルギーを放出する状態、回生動作時は、リアクトル1(L1)のエネルギーを蓄積する状態となる。DC/DCコンバーター50は、これらの動作モードA〜動作モードDの時間比率を適宜調整することにより、端子P1−端子N1の間に入力された入力電圧V1(低圧側電圧)を任意の電圧に昇圧して、端子P2−端子N2の間に出力電圧V2(高圧側電圧)として出力することができる。
なお、入力電圧V1に対する出力電圧V2の昇圧比Nが2倍未満の場合は、「動作モードB→動作モードD→動作モードC→動作モードD」が繰り返される。この繰り返しにより、中間コンデンサー5の両端電圧(V0)をV2の2分の1の電圧に保ちながら、入力電圧V1を1倍から2倍未満の任意の電圧に昇圧して出力電圧V2として出力する。入力電圧V1に対する出力電圧V2の昇圧比Nが2倍以上の場合は、「動作モードA→動作モードB→動作モードA→動作モードC」が繰り返される。この繰り返しにより、中間コンデンサー5の両端電圧(V0)をV2の2分の1の電圧に保ちながら、入力電圧V1を2倍以上の任意の電圧に昇圧して出力電圧V2として出力する。
ところで、DC/DCコンバーター50では、第1電圧センサー8で検出した中間コンデンサー5の両端電圧(V0)の検出値(V0検出値:第1電圧センサーの検出値)と、中間コンデンサー5の両端電圧(V0)の目標値(V0目標値;中間コンデンサーの目標値)が一致するように、コントローラー6において、フィードバック制御が行われる。ここで、中間コンデンサーの目標値(V0目標値)は、第2電圧センサー9で検出した高圧側コンデンサー4の両端電圧V2の検出値(V2検出値:第2電圧センサーの検出値)の2分の1の電圧とする。したがって、第1電圧センサー8に異常が発生しても、該異常を検出できない場合、誤ったV0検出値とV0目標値が一致するようにフィードバック制御されるため、V0真値はV0目標値からずれることとなる。
この第1電圧センサー8の異常例として、V0検出値(第1電圧センサーの検出値)がV0真値(V0目標値)以外の値に固着する状態を挙げる。この現象を、以降、固着異常と称することにする。本願の実施の形態における第1電圧センサーの固着異常(V0センサーの固着異常)を、電圧波形図を使って説明する。図7は、V0検出値>V0目標値となる固着異常が発生した場合の電圧波形図である。この場合、V0目標値に対するV0検出値のプラスの差分がゼロとなることはなく、フィードバック制御の結果、V0真値=0Vとなる。
一方、図8は、V0検出値<V0目標値となる固着異常(V0センサーの固着異常)が発生した場合の電圧波形図である。この場合、V0目標値に対するV0検出値のマイナスの差分がゼロとなることはなく、フィードバック制御の結果、V0真値=出力電圧V2となる。また、このDC/DCコンバーター50では、第1半導体スイッチング回路〜第4半導体スイッチング回路のいずれかが故障した場合においても、前記第1電圧センサーの固着異常と同様、V0目標値とV0検出値の差分が大きくなる。
第1電圧センサーの固着異常の他に、オン固着異常とオフ固着異常が存在する。実施の形態に関わる第1半導体スイッチング回路のオン固着異常を、図を参照しながら、説明する。図9は、各動作モードにおける電流経路を示す回路図である。一方、図10は、各動作モードにおけるタイミングチャートである。第1半導体スイッチング回路2aにオン固着異常(第1スイッチング素子のオン固着異常)が発生した場合、動作モードCにおいて、高圧側コンデンサー4(C2)→第4半導体スイッチング回路2d(S4)→中間コンデンサー5(C0)→第1半導体スイッチング回路2a(S1)→高圧側コンデンサー4(C2)という経路で短絡する。中間コンデンサー5(C0)と高圧側コンデンサー4(C2)が短絡しているので、その結果、V0真値=V2真値となる。したがって、V0目標値とV0検出値の差分が大きくなる。
実施の形態に関わる第2半導体スイッチング回路のオン固着異常(第2スイッチング素子のオン固着異常)を、図を参照しながら、説明する。図11は、各動作モードにおける電流経路を示す回路図である。一方、図12は、タイミングチャートである。第2半導体スイッチング回路2bにオン固着異常が発生した場合、動作モードBにおいて、中間コンデンサー5(C0)→第3半導体スイッチング回路2c(S3)→第2半導体スイッチング回路2b(S2)→中間コンデンサー5(C0)という経路で短絡する。中間コンデンサー5(C0)が短絡しているので、その結果、V0真値=0Vとなる。したがって、V0目標値とV0検出値の差分が大きくなる。
実施の形態に関わる第3半導体スイッチング回路のオン固着異常(第3スイッチング素子のオン固着異常)を、図を参照しながら、説明する。図13、は各動作モードにおける電流経路を示す回路図である。一方、図14は、タイミングチャートである。第3半導体スイッチング回路2cにオン固着異常が発生した場合、動作モードAおよび動作モードCにおいて、中間コンデンサー5(C0)→第3半導体スイッチング回路2c(S3)→第2半導体スイッチング回路2b(S2)→中間コンデンサー5(C0)という経路で短絡する。中間コンデンサー5(C0)が短絡しているので、その結果、V0真値=0Vとなる。したがって、V0目標値とV0検出値の差分が大きくなる。
実施の形態に関わる第4半導体スイッチング回路のオン固着異常(第4スイッチング素子のオン固着異常)を、図を参照しながら、説明する。図15は、各動作モードにおける電流経路を示す回路図である。一方、図16は、タイミングチャートである。第4半導体スイッチング回路2dにオン固着異常が発生した場合、動作モードAおよび動作モードBにおいて、高圧側コンデンサー4(C2)→第4半導体スイッチング回路2d(S4)→中間コンデンサー5(C0)→第1半導体スイッチング回路2a(S1)→高圧側コンデンサー4(C2)という経路で短絡する。中間コンデンサー5(C0)と高圧側コンデンサー4(C2)が短絡しているので、その結果、V0真値=V2真値となる。したがって、V0目標値とV0検出値の差分が大きくなる。
実施の形態に関わる第1半導体スイッチング回路のオフ固着異常(第1スイッチング素子のオフ固着異常)を、図を参照しながら、説明する。図17は、各動作モードにおける電流経路を示す回路図である。一方、図18は、タイミングチャートである。第1半導体スイッチング回路2aにオフ固着異常が発生した場合、動作モードAにおいて電流経路が無く、リアクトル1(L1)が励磁不可となる。続く動作モードBにおいても電流経路が無く、中間コンデンサー5(C0)が充電不可となる。そして、動作モードCにおいて、中間コンデンサー5(C0)が放電される。その結果、V0真値=0V、V2真値=V1真値、となる。したがって、V0目標値とV0検出値の差分が大きくなる。
実施の形態に関わる第2半導体スイッチング回路のオフ固着異常(第2スイッチング素子のオフ固着異常)を、図を参照しながら、説明する。図19は、各動作モードにおける電流経路を示す回路図である。一方、図20は、タイミングチャートである。第2半導体スイッチング回路2bにオフ固着異常が発生した場合、動作モードAにおいて電流経路が無く、リアクトル1(L1)が励磁不可となる。続く動作モードBにおいて中間コンデンサー5(C0)が充電されるため、V0真値=V1真値となる。続く動作モードAにおいて電流経路が無く、リアクトル1(L1)が励磁不可である。そして、動作モードCにおいて電流経路が無く中間コンデンサー5(C0)が放電されない。その結果、V0真値=V1真値のままとなる。したがって、V0目標値とV0検出値の差分が大きくなる。
以上のように、第1電圧センサー8の固着異常、第1半導体スイッチング回路2aのオン固着異常、第2半導体スイッチング回路2bのオン固着異常、第3半導体スイッチング回路2cのオン固着異常、第4半導体スイッチング回路2dのオン固着異常、第1半導体スイッチング回路2aのオフ固着異常、第2半導体スイッチング回路2bのオフ固着異常、の場合、V0真値がV0目標値(V2検出値の1/2)から乖離する異常な状態となる。すなわち、V0目標値とV0検出値の差分が大きくなる。このような異常をV0電圧異常と呼称する。本願では、コントローラー6において、以降で説明する異常検出処理を実行することで、V0電圧異常を判定する。
図21は、実施の形態に関わるV0電圧異常を判定するためのフロー図である。同図に示すように、まず、V0目標値をV2検出値×0.5により演算する(ステップS11)。つぎに、ステップS11で演算したV0目標値とV0検出値の差分の絶対値と、異常判定閾値とを比較することにより、V0電圧異常が発生しているかどうかを判定する(ステップS12)。ステップS12で異常判定条件が成立する場合は、ステップS13に進み、V0電圧異常が発生していると判定する。ステップS12で異常判定条件が成立しない場合は、ステップS14に進み、V0電圧異常が発生していないと判定する。異常判定閾値については、第2電圧センサー9の誤差と、第1電圧センサー8の誤差を考慮するなどして決定すればよい。
ところで、このV0電圧異常には前述の通り7種類の異常が含まれている。本実施の形態では、V0電圧異常を判定した後、さらに異常箇所を特定する(異常種類判定処理)。まず、第1半導体スイッチング回路2a(スイッチング素子S1)のゲート信号G1のオンデューティー比(S1_Duty:S1オン時間比率)および第3半導体スイッチング回路2c(スイッチング素子S3)のゲート信号G3のオンデューティー比(S3_Duty:S3オン時間比率)を0%〜100%に徐々に変化させるソフトスタート制御を行うことで、第2半導体スイッチング回路2b(スイッチング素子S2)のオン固着異常を判定する。
図22は、本願に開示される実施の形態において、S1オン固着時に、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S3をソフトスタート制御した場合の電流経路を示している回路図である。一方、図23は、S1オン固着時に、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S3をソフトスタート制御した場合の電圧変化を示す説明図である。図に示すように、S1オン固着の場合、V0の初期電圧はV2である。
この時に、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S3をソフトスタート制御した場合、動作モードB(ただし、電流の向きは回生方向)の経路で電流が流れ、V0は徐々に減少し、V0=V1となる。また、後述の通り、電力伝送が力行方向となるようにモータードライバー51を駆動制御するため、高圧側電圧V2は徐々に減少し、V2=V0=V1=Vbattとなる。ここで、Vbattは、直流電源101の両端電圧(第1電圧)を指している。したがって、この場合は過電流または過電圧等の異常は発生しない、すなわち、過電流または過電圧等の異常発生からまぬがれることができる。
図24A〜図24Eは、実施の形態に関わるソフトスタート制御を説明するためのタイミングチャートである。図24Aは、第1半導体スイッチング回路2a(スイッチング素子S1)のスイッチングパターンを示すタイミングチャートである。図24Bは、第2半導体スイッチング回路2b(スイッチング素子S2)のスイッチングパターンを示すタイミングチャートである。図24Cは、第3半導体スイッチング回路2c(スイッチング素子S3)のスイッチングパターンを示すタイミングチャートである。図24Dは、第4半導体スイッチング回路2d(スイッチング素子S4)のスイッチングパターンを示すタイミングチャートである。
図24Eは、V1とV0とV2の電圧変化を示すタイミングチャートである。図24A〜図24Dに示した通り、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S3に対してソフトスタート制御を行い、ソフトスタート制御を行わない半導体スイッチング回路であるスイッチング素子S2およびスイッチング素子S4をオフする。なお、第1半導体スイッチング回路2a〜第4半導体スイッチング回路2dは、ゲート信号G1〜G4がHighの場合にオンし、Lowの場合にオフする。図24Eに示した通り、V1=V2=Vbattの状態でソフトスタート制御は、開始する。
この場合、ゲート信号G1がHighの期間に、動作モードBの経路で電流が流れ、V0が徐々に上昇し、V0=V1(=V2=Vbat)に収束する。ソフトスタート時間Tsoftについては、定格電流の最も小さい構成部品が破壊することのないように設定している。設定値は、コンデンサー間に流れる電流が該部品の定格電流未満となるように、予めシミュレーション等により決定しておく。なお、コンデンサー間の電位差に応じて流れる電流が大きくなる。想定される最大電位差を条件にして、シミュレーション等により、ソフトスタート時間Tsoftを算出しておくと良い。
つぎに、実施の形態において、S2オン固着時にスイッチング素子S1およびスイッチング素子S3をソフトスタート制御した場合を、図を参照しながら、説明する。図25Aと図25Bは、電流経路を示す回路図である。一方、図26Aは、電圧変化を示す説明図であり、図26Bは、電流変化を示す説明図である。S2オン固着の場合、V0の初期電圧は0Vである。この時に、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S3をソフトスタート制御した場合、S1オン時に動作モードAの経路で電流が流れるためリアクトル1(L1)がエネルギーを蓄積する。S1オフ時には動作モードDの経路で電流が流れるため、リアクトル1(L1)に蓄積したエネルギーが放出され、V2が増加する。
このスイッチング素子S1のオンオフ動作を繰り返すことで、V2が徐々に増加する。またその際、リアクトル1(L1)を流れる電流ILも徐々に上昇する。したがって、V2の過電圧閾値(V2閾値3)を所定値に設定し、V2≧過電圧閾値(V2閾値3)の条件を満足した場合にS2オン固着を判定することができる。また、ILの過電流閾値(IL閾値)を所定値に設定し、IL≧過電流閾値となった場合にS2オン固着を判定することができる。なお、過電圧閾値(V2閾値3)はスイッチング素子S2がオン固着していない場合のV2最大電圧に第1電圧センサー8の誤差等を考慮し設定すれば良い。同様に、過電流閾値はS2がオン固着していない場合のIL最大電流に電流センサー7の誤差等を考慮し設定すれば良い。
つぎに、実施の形態において、S3オン固着時にスイッチング素子S1およびスイッチング素子S3をソフトスタート制御した場合の電流経路および電圧変化を、図を参照しながら、説明する。図27は、電流経路を示す回路図である。一方、図28は、電圧変化を示す説明図である。図に示すように、S3オン固着の場合、V0の初期電圧は0Vである。この時に、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S3をソフトスタート制御した場合、動作モードBの経路で電流が流れる。V0は徐々に増加し、V0=V1(=Vbatt)となる。また、後述の通り、電力伝送が力行方向となるようにモータードライバー51を駆動制御するため、V2は徐々に減少し、V2=V0=V1=Vbattとなる。したがって、この場合は過電流または過電圧等の異常は発生しない、すなわち、過電流または過電圧等の異常発生からまぬがれることができる。
つぎに、実施の形態1において、S4オン固着時にスイッチング素子S1およびスイッチング素子S3をソフトスタート制御した場合の電流経路および電圧変化を、図を参照しながら、説明する。図29Aおよび図29Bは、電流経路を示す回路図である。一方、図30は、電圧変化を示す説明図である。図に示すように、S4オン固着の場合、V0の初期電圧はV2である。この時に、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S3をソフトスタート制御した場合、動作モードBおよび動作モードDの経路で電流が流れる。V0およびV2は徐々に減少し、V1=V0=V2=Vbattとなる。したがって、この場合は過電流または過電圧等の異常は発生しない、すなわち、過電流または過電圧等の異常発生からまぬがれることができる。
なお、S1オフ固着時にスイッチング素子S1およびスイッチング素子S3をソフトスタート制御した場合は、図18に示した通り、V0電圧異常時にV1=V2、V0=0Vの状態となっている。回路に電流が流れないため、過電流等の異常は発生せず、電圧状態も変化しない。また、S2オフ固着時にスイッチング素子S1およびスイッチング素子S3をソフトスタートした場合は、図20に示した通り、V0電圧異常時に、V1=V0=V2の状態となっている。回路に電流が流れないため、過電流等の異常は発生せず、電圧状態も変化しない。
さらに、V0センサーの固着異常時にスイッチング素子S1およびスイッチング素子S3をソフトスタート制御した場合を説明する。図7に示した通り、V0検出値>V0目標値となる固着異常が発生した場合には、V0=0Vとなっている。スイッチング素子S1をオンした際に電流は動作モードBの経路(図27を参照)で流れる。ソフトスタート制御しているため、過電流等の異常は発生せず、V1=V0=V2=Vbattの状態となる。
また、図8に示した通り、V0検出値<V0目標値となる固着異常が発生した場合は、V0=V2となっている。スイッチング素子S3をオンした際に電流が動作モードB(ただし、電流の向きは回生方向)の経路(図29Aおよび図29Bを参照)で流れる。ソフトスタート制御しているため、過電流等の異常は発生せず、V1=V0=V2=Vbattの状態となる。
以上のように、V0電圧異常が発生している場合に、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S3をソフトスタート制御した時、S2オン固着の場合のみ、新たに異常が発生する。したがって、V0電圧異常に含まれる7種類の異常から、S2オン固着異常を判定することができる。
つぎに、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S3をソフトスタート制御した後に、第2半導体スイッチング回路2b(スイッチング素子S2)のゲート信号G2のオンデューティー比(S2_Duty:S2オン時間比率)を0%〜100%に徐々に変化させるソフトスタート制御を実施する。これにより、スイッチング素子S1のオン固着またはスイッチング素子S3のオン固着異常を判定する。
つぎに、本願に開示される実施の形態において、S1オン固着時にスイッチング素子S2をソフトスタート制御した場合の電流経路および電圧変化を、図を参照しながら、説明する。図31Aと図31Bは、電流経路を示す回路図である。一方、図32Aは、電圧変化を示す説明図、図32Bは、電流変化を示す説明図である。図に示すように、S1オン固着の場合にスイッチング素子S1およびスイッチング素子S3をソフトスタート制御した後の電圧状態は、V1=V0=V2=Vbattである。
この時にスイッチング素子S2をソフトスタート制御した場合、S2オン時には、動作モードAの経路でリアクトル1(L1)がエネルギーを蓄積する。S2オフ時には、動作モードDの経路でリアクトル1(L1)に蓄積したエネルギーが放出され、V2が増加する。このスイッチング素子S2のオンオフ動作を繰り返すことでV2が徐々に増加する。またその際、リアクトル1(L1)を流れる電流ILも徐々に上昇する。したがって、図26Aおよび図26Bでの説明と同様に、S1オン固着異常を判定することができる。
つぎに、本願に開示される実施の形態1においてS3オン固着時にスイッチング素子S2をソフトスタート制御した場合の電流経路および電圧変化を、図を参照しながら、説明する。図33は、電流経路を示す回路図である。一方、図34は、電圧変化を示す説明図である。図に示すように、S3オン固着の場合にスイッチング素子S1およびスイッチング素子S3をソフトスタート制御した後の電圧状態はV1=V0=V2=Vbattである。この時にスイッチング素子S2をソフトスタート制御した場合、S2オン時にC0→S3→S2→C0の経路で短絡する。その結果、経路には短絡電流が流れる。
この短絡電流は、コントローラー6において、センス電流と短絡電流閾値を比較することで検出する。すなわち、センス電流≧短絡電流閾値の条件を満足した場合にS3オン固着異常を判定することができる。短絡電流閾値は、短絡異常が発生していない場合の最大電流にセンス端子の分流比等を考慮して設定すれば良い。なお、ここでは、第1半導体スイッチング回路2a〜第4半導体スイッチング回路2dに流れる電流により、短絡異常を検出する方式としたが、例えば、公知技術であるゲート電圧またはコレクタ電圧により短絡異常を検出する方式としても良い。
つぎに、本願に開示される実施の形態において、S4オン固着時にスイッチング素子S2をソフトスタート制御した場合の電流経路および電圧変化を、図を参照しながら、説明する。図35は、電流経路を示す回路図である。一方、図36は、電圧変化を示す説明図である。図に示すように、S4オン固着の場合にスイッチング素子S1およびスイッチング素子S3をソフトスタート制御した後の電圧状態は、V1=V0=V2=Vbattである。
この時に、スイッチング素子S2をソフトスタート制御した場合、S2オン時に動作モードCの経路で電流が流れる。V0が徐々に減少し、V1+V0=V2の状態、すなわち、V1=V2=VbattおよびV0=0Vの状態となる。したがって、この場合は過電流または過電圧等の異常は発生しない、すなわち、過電流または過電圧等の異常の発生からまぬがれることができる。
なお、S1オフ固着時にスイッチング素子S2をソフトスタート制御した場合は、前述の通り、V1=V2、V0=0Vの状態となっている。回路に電流が流れないため過電流等の異常は発生せず、電圧状態も変化しない。さらに、V0センサーの固着異常時にS2をソフトスタート制御した場合は、前述の通り、V1=V0=V2=Vbattの状態から電圧が変化する。この場合の電流経路および電圧変化は、図35および図36と同様である。V1=V2=VbattおよびV0=0Vの状態となり、過電流等の異常は発生しない、すなわち、過電流等の異常発生からまぬがれることができる。
以上のように、V0電圧異常が発生している場合に、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S3をソフトスタート制御した後、スイッチング素子S2をソフトスタート制御した時、S1オン固着およびS3オン固着の場合、新たに異常が発生する。したがって、V0電圧異常に含まれる7種類の異常からS1オン固着異常またはS3オン固着異常を判定することができる。なお、スイッチング素子S2に加えて、例えばスイッチング素子S4を同時にソフトスタート制御しても良い。
この場合、S1オン固着時は、図32Aに示した電圧変化および図32Bに示した電流変化をする。このため、新たな異常が発生し、S1オン固着を判定することができる。S3オン固着時は、図33に示した経路で短絡電流が流れる。このため、新たな異常が発生し、S3オン固着を判定することができる。最後に、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S3をソフトスタート制御した後に、スイッチング素子S2をソフトスタート制御し、その後、スイッチング素子S1をソフトスタート制御する。これにより、S4オン固着異常を判定する。
つぎに、本願に開示される実施の形態においてS4オン固着時にスイッチング素子S1をソフトスタート制御した場合の電流経路および電圧変化を、図を参照しながら、説明する。図37は、電流経路を示す回路図である。一方、図38は、電圧変化を示す説明図である。図に示すように、S4オン固着の場合にスイッチング素子S1およびスイッチング素子S3をソフトスタート制御する。
その後、スイッチング素子S2をソフトスタート制御した場合の電圧状態は、V1=V0=V2=Vbattである。この時に、スイッチング素子S1をソフトスタート制御した場合、S1オン時にC2→S4→C0→S1→C2の経路で短絡する。その結果、経路には短絡電流が流れる。したがって、図33および図34での説明と同様に、S4オン固着異常を判定することができる。
なお、S2オフ固着時にスイッチング素子S1をソフトスタートした場合は、前述の通り、V1=V0=V2の状態となっている。回路に電流が流れないため、過電流等の異常は発生せず、電圧状態も変化しない。さらに、V0センサーの固着異常時にスイッチング素子S1をソフトスタート制御した場合は、前述の通り、V1=V2=VbattおよびV0=0Vの状態から電圧が変化する。この場合は、図27および図28と同様、動作モードBの経路で電流が流れる。V1=V0=V2=Vbattの状態となり、過電流等の異常は発生しない。
以上のように、V0電圧異常が発生している場合に、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S3をソフトスタート制御した後、スイッチング素子S2をソフトスタート制御し、その後、スイッチング素子S1をソフトスタート制御した時、S4オン固着の場合、新たに異常が発生する。したがって、V0電圧異常に含まれる7種類の異常から、S4オン固着異常を判定することができる。
なお、スイッチング素子S1に加えて、例えばスイッチング素子S3を同時にソフトスタート制御しても良い。また、スイッチング素子S1をオン、またはスイッチング素子S1およびスイッチング素子S3をオンしても良い。これらの場合、図37に示した経路で短絡電流が流れるため、S4オン固着異常を判定することができる。
図39は、本願に開示される実施の形態1における異常種類判定処理を説明するためのフロー図である。本処理は、V0電圧異常が発生している場合に実施される。図に示すように、まず、第1半導体スイッチング回路2a〜第4半導体スイッチング回路2dを構成するスイッチング素子のゲート、およびモータードライバー51を構成するスイッチング素子のゲートを全てオフする(ステップS21)。つぎに、V2がV2閾値1(第1閾値)以下であるか判定する(ステップS22)。判定条件が成立する場合はステップS23に進み、成立しない場合は本処理を繰り返す。本処理は、モータードライバー51の過電圧破壊防止のために実施する。
なお、V2閾値1(第1閾値)は、サージ電圧等を考慮した上で、モータードライバー51を構成するスイッチング素子が破壊しないように決定される。つぎに、電力伝送が力行方向となるように、モータードライバー51およびモーター102を制御する(ステップS23)。本処理は、高圧側コンデンサー4の電荷を放電するために実施する。具体的には、コントローラー6は、モータードライバー51を構成するスイッチング素子のゲートを全てオンする。
つぎに、V2がV2閾値2(第2閾値)以下であるか判定する(ステップS24)。判定条件が成立する場合はステップS25に進み、成立しない場合は本処理を繰り返す。本処理は、第1半導体スイッチング回路2a〜第4半導体スイッチング回路2dの過電圧破壊防止のために実施する。なお、V2閾値2(第2閾値)は、サージ電圧等を考慮した上で、該半導体スイッチング回路が破壊しないように決定される。
つぎに、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S3をソフトスタート制御する(ステップS25)。言い換えれば、S1_DutyおよびS3_Dutyを所定変化量で除変させる。ソフトスタート制御を行わない第2半導体スイッチング回路2bおよび第4半導体スイッチング回路2dのゲート信号はオフする。本処理の目的は、S2オン固着の場合に異常を発生させること、さらに、後述の2回目のソフトスタート制御時に短絡電流を発生させS3オン固着を特定できるように中間コンデンサー5(C0)を充電することである。
ソフトスタート時間については、定格電流の最も小さい構成部品が破壊することがないように設定する。設定値は、コンデンサー間に流れる電流が該部品の定格電流未満となるように、予めシミュレーション等により決定しておく。なお、コンデンサー間の電位差に応じて流れる電流が大きくなる。このため、想定される最大電位差の条件の基、シミュレーション等により、ソフトスタート時間を算出しておくと良い。
つぎに、V2がV2閾値3(過電圧閾値;第3閾値)以上、ILがIL閾値(過電流閾値)以上、短絡電流が発生(短絡電流閾値以上の電流が流れること)のいずれかの条件が成立するか否か判定する(ステップS26)。ステップS26の異常判定条件が成立する場合はステップS27に進み、第2半導体スイッチング回路2bのオン固着異常を確定する。異常判定条件が成立しない場合は、S1_DutyおよびS3_Dutyが100%となるまで(ステップS28が成立するまで)、ステップS26を繰り返す。S1_DutyおよびS3_Dutyが100%となった場合、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S3をオフする(ステップS29)。
つぎに、スイッチング素子S1(第1スイッチング素子)からスイッチング素子S4(第4スイッチング素子)のうちすくなくともスイッチング素子S2をソフトスタート制御する(ステップS30)。ソフトスタート制御を行わない第1半導体スイッチング回路2aおよび第3半導体スイッチング回路2cおよび第4半導体スイッチング回路2dのゲート信号はオフする。本処理の目的は、S1オン固着の場合またはS3オン固着の場合に異常を発生させること、さらに、後述の3回目のソフトスタート制御時に短絡電流を発生させS4オン固着を特定できるように中間コンデンサー5(C0)を放電することである。ソフトスタート時間については、前記同様に決定する。
つぎに、V2がV2閾値3(過電圧閾値;第3閾値)以上、ILがIL閾値(過電流閾値)以上、短絡電流が発生(短絡電流閾値以上の電流が流れること)のいずれかの条件が成立するか否かを判定する(ステップS31)。ステップS31の異常判定条件が成立する場合は、ステップS32に進み、第1半導体スイッチング回路2aおよび第3半導体スイッチング回路2cのオン固着異常を確定する。異常判定条件が成立しない場合は、S2_Dutyが100%となるまで(ステップS33が成立するまで)、ステップS31を繰り返す。
S2_Dutyが100%となった場合、スイッチング素子S2をオフする(ステップS34)。つぎに、スイッチング素子S1(第1スイッチング素子)からスイッチング素子S4(第4スイッチング素子)のうちすくなくともスイッチング素子S1をソフトスタート制御する(ステップS35)。ソフトスタート制御を行わない第2半導体スイッチング回路から第4半導体スイッチング回路のゲート信号は、オフする。本処理の目的は、S4オン固着の場合に異常を発生させることである。ソフトスタート時間については、前記同様に決定する。
つぎに、短絡電流が発生するか否か判定する(ステップS36)。判定条件が成立する場合はステップS37に進み、第4半導体スイッチング回路2dのオン固着異常を確定する。判定条件が成立しない場合は、S1_Dutyが100%となるまで(ステップS38が成立するまで)、ステップS36を繰り返す。S1_Dutyが100%となった場合、半導体スイッチング回路S1をオフする(ステップS39)。最後に、S1オフ固着およびS2オフ固着およびV0センサーの固着異常を確定する(ステップS40)。
以上のようにして、この実施の形態に関わる電力変換装置では、第1電圧センサーの検出値が所定目標値から所定値以上乖離しているかどうか判定することで中間コンデンサーの電圧の異常(V0電圧異常)を判定することができる。また、V0電圧異常が発生している場合に、第1半導体スイッチング回路および第3半導体スイッチング回路をソフトスタート制御した時に、過電圧、または過電流、または短絡電流が発生するかどうか判定することで、第2半導体スイッチング回路のオン固着異常を判定することができる。
なお、半導体スイッチング回路をソフトスタート制御するのではなく単純にオンする場合では、上記過電圧は発生しない。したがって、ソフトスタート制御することにより、単純にオンする場合と比較して、新たな異常を発生させることが可能であり、異常検知率を高くすることができる。さらに、第1半導体スイッチング回路および第3半導体スイッチング回路をソフトスタート制御した時に上記異常が発生しない場合に、すくなくとも第2半導体スイッチング回路をソフトスタート制御する。その際に、上記異常が発生するかどうか判定することで、第1半導体スイッチング回路または第3半導体スイッチング回路のオン固着異常を判定することができる。
さらに、すくなくとも第2半導体スイッチング回路をソフトスタート制御した時に、上記異常が発生しない場合に、すくなくとも第1半導体スイッチング回路をソフトスタート制御する。その際に、短絡異常が発生するかどうか判定することで、第4半導体スイッチング回路のオン固着異常を判定することができる。さらに、すくなくとも第1半導体スイッチング回路をソフトスタート制御した時に上記異常が発生しない場合に、第1半導体スイッチング回路のオフ固着または第2半導体スイッチング回路のオフ固着またはV0センサーの固着異常を判定することができる。
また、V0電圧異常を判定した後、第2電圧センサーの検出値が所定値以下の場合に高圧側コンデンサーの電荷を放電するようにモーターおよびモータードライバーを制御することで、高圧側コンデンサーおよびモータードライバーの破壊を防止できる。また、異常時に高圧側電圧が増加することを検知することで、異常判定可能とする。さらに、V0電圧異常を判定した後、第2電圧センサーの検出値が所定値以下の場合に、第1半導体スイッチング回路〜第4半導体スイッチング回路のすくなくとも1つをオンすることで、第1半導体スイッチング回路〜第4半導体スイッチング回路の過電圧破壊を防止できる。
したがって、本願に開示される電力変換装置は、負極側端子と正極側端子とゲートとを有し、この負極側端子が直流電源の負極側に接続されている第1スイッチング素子と、負極側端子と正極側端子とゲートとを有し、この負極側端子が前記第1スイッチング素子の正極側端子に接続されている第2スイッチング素子と、負極側端子と正極側端子とゲートとを有し、この負極側端子が前記第2スイッチング素子の正極側端子に接続されている第3スイッチング素子と、負極側端子と正極側端子とゲートとを有し、この負極側端子が前記第3スイッチング素子の正極側端子に接続されている第4スイッチング素子と、前記直流電源と直列に接続されているリアクトルと、前記直流電源と並列に接続されている入力側コンデンサーと、一端が前記第2スイッチング素子の負極側端子に接続され、他端が前記第3スイッチング素子の正極側端子に接続されている中間コンデンサーと、一端が前記第1スイッチング素子の負極側端子に接続され、他端が前記第4スイッチング素子の正極側端子に接続されている出力側コンデンサーと、前記リアクトルに流れる電流を検出する電流センサーと、前記中間コンデンサーの両端電圧を検出する第1電圧センサーと、前記出力側コンデンサーの両端電圧を検出する第2電圧センサーと、スイッチング素子を有し、前記出力側コンデンサーの両端と接続されているドライバーと、前記第2電圧センサーの検出値から中間コンデンサーの目標値を演算し、この演算された中間コンデンサーの目標値が前記第1電圧センサーの検出値と一致するように、前記第1スイッチング素子のオン時間比率、前記第2スイッチング素子のオン時間比率、前記第3スイッチング素子のオン時間比率、および第4スイッチング素子のオン時間比率を制御するコントローラーと、を備え、前記コントローラーは、前記中間コンデンサーの目標値と前記第1電圧センサーの検出値との差分を求め、この差分の絶対値が異常判定閾値よりも大きい場合に、電圧異常が発生したと判定することを特徴とするものである。
また、本願に開示される電力変換装置は、半導体スイッチング回路、前記半導体スイッチング回路のスイッチングによって充放電動作を行うコンデンサー、および前記コンデンサーの電圧を検出する電圧検出手段を備えた電力変換装置において、前記電圧検出手段の検出値が所定目標値から所定値以上乖離する場合に前記コンデンサーの電圧の異常を判定することを特徴とする電力変換装置である。
また、本願に開示される電力変換装置は、低圧側に直流電源が接続され、出力側に回生可能な負荷が接続され、低圧側電圧を保持する低圧側コンデンサー、負極が前記低圧側コンデンサーの負極に接続され高圧側電圧を保持する高圧側コンデンサー、負端が前記低圧側コンデンサーの負極に接続される第1半導体スイッチング回路、負端が前記第1半導体スイッチング回路の他端に接続され、他端が前記リアクトルを介して前記入力側コンデンサーの正極に接続される第2半導体スイッチング回路、一端が前記第2半導体スイッチング回路の他端に接続される第3半導体スイッチング回路、一端が前記第3半導体スイッチング回路の他端に接続され、他端が前記高圧側コンデンサーの正極に接続される第4半導体スイッチング回路、一端が前記第1半導体スイッチング回路と前記第2半導体スイッチング回路の接続点に接続され、前記第3半導体スイッチング回路と前記第4半導体スイッチング回路の接続点に接続された中間コンデンサー、前記中間コンデンサーの電圧を検出する第1電圧センサー、前記第1〜第4半導体スイッチング回路のオン時間比率を制御することにより、前記中間コンデンサーの電圧を所定目標値に制御するコントローラーを備えた電力変換装置において、前記電圧検出手段の検出値が所定目標値から所定値以上乖離する場合に前記中間コンデンサーの電圧の異常を判定することを特徴とする電力変換装置である。
前記コントローラーは、前記中間コンデンサーの電圧の異常を判定した後、所定の半導体スイッチング回路をオンした時、さらに所定の異常が発生した場合に異常箇所を特定することを特徴とするものである。また、前記負荷を駆動する負荷駆動部を備え、前記コントローラーは前記負荷と前記負荷駆動部を制御可能であり、前記中間コンデンサーの電圧の異常を判定した後、前記高圧側コンデンサーの電荷を放電するように前記負荷および前記負荷駆動部を制御することを特徴とするものである。
さらに、前記高圧側コンデンサーの電圧を検出する第2電圧検出手段を備え、前記コントローラーは、該電圧検出手段の検出値が所定値以下の場合に、前記高圧側コンデンサーの電荷を放電するように前記負荷および前記負荷駆動部を制御することを特徴とするものである。前記コントローラーは、前記第1半導体スイッチング回路および前記第3半導体スイッチング回路をソフトスタート制御した時に所定の異常が発生した場合に、前記第2半導体スイッチング回路のオン固着異常を判定することを特徴とするものである。
さらに、電力変換装置において所定の異常が発生しない場合に、前記第1〜第4半導体スイッチング回路のうちすくなくとも前記第2半導体スイッチング回路をソフトスタート制御し、所定の異常が発生した場合に、前記第1半導体スイッチング回路または前記第3半導体スイッチング回路のオン固着異常と判定することを特徴とするものである。上記記載の電力変換装置において所定の異常が発生しない場合に、前記第1〜第4半導体スイッチング回路のうちすくなくとも前記第1半導体スイッチング回路をオンし、所定の異常が発生した場合に、前記第4半導体スイッチング回路のオン固着異常と判定することを特徴とするものである。
さらに、前記第1〜第4半導体スイッチング回路のうちすくなくとも前記第1半導体スイッチング回路をソフトスタート制御し、所定の異常が発生した場合に、前記第4半導体スイッチング回路のオン固着異常と判定することを特徴とするものである。上記記載の電力変換装置において所定の異常が発生しない場合に、前記第1半導体スイッチング回路のオフ固着異常または前記第2半導体スイッチング回路のオフ固着異常または前記第1電圧センサーの固着異常と判定することを特徴とするものである。
さらに、前記リアクトルに流れる電流を検出するリアクトル電流検出手段を備え、該電流検出手段の検出値が所定値以上の場合に、異常箇所を特定することを特徴とする電力変換装置である。前記第1〜第4半導体スイッチング回路それぞれに流れる電流を検出する第1〜第4電流検出手段を備え、該電流検出手段の検出値のすくなくとも1つが所定値以上の場合に、異常箇所を特定することを特徴とする電力変換装置である。前記高圧側コンデンサーの電圧を検出する第2電圧検出手段を備え、該電圧検出手段の検出値が所定値以上の場合に、異常箇所を特定することを特徴とする電力変換装置である。
実施の形態2.
以下、本願に開示される実施の形態2に関わる電力変換装置について説明する。本実施の形態に関わる電力変換装置の回路構成は、図1に示した回路構成と同様であるため説明を省略する。また、V0電圧異常を判定するまでの異常検出処理は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
図40は、本願に開示される実施の形態2に関わる異常種類判定処理を説明するためのフロー図である。本処理は、V0電圧異常が発生している場合に実施される。ステップS21からステップS24の処理は実施の形態1と同様であるため説明を省略し、ステップS101から説明する。まず、スイッチング素子S1からスイッチング素子S4のうち、すくなくとも1つをオンする(ステップS101)。つぎに、ILがIL閾値(過電流閾値)以上、短絡電流が発生(短絡電流閾値以上の電流が流れること)のいずれかの条件が成立するか否か判定する(ステップS102)。
ステップS102の判定条件が成立する場合は、ステップS103に進み、スイッチング素子S1からスイッチング素子S4のいずれかのオン固着異常またはV0センサーの固着異常を確定する。判定条件が成立しない場合は、全ゲートをオフする(ステップS104)。最後に、V0電圧異常を確定する(ステップS105)。なお、V0電圧異常が発生している場合に、スイッチング素子S1からスイッチング素子S4をオンした場合の電流経路、電圧変化については以下の通りである。
まず、S1オン固着時の電流経路、電圧変化について説明する。S1オン固着時にスイッチング素子S2をオンした場合、図25Aおよび図25Bに示したC1→L1→S2→S1の経路で電流が流れ続ける。したがって、IL≧IL閾値(過電流閾値)または短絡電流が発生することとなり、オン固着異常を判定することができる。
また、S1オン固着時にスイッチング素子S3をオンした場合、図22に示したC0→S3→L1→C1→S1→C0の経路でV0=V1となるまで電流が流れ続ける。このため、上述と同様、オン固着異常を判定することができる。さらに、S1オン固着時にスイッチング素子S4をオンする場合は、スイッチング素子S4をオンする前の電圧状態がV0=V2であるため電流が流れない。したがって、過電流等の異常は発生しない。
つぎに、S2オン固着時について説明する。S2オン固着時にスイッチング素子S1をオンした場合、図25Aおよび図25Bに示したC1→L1→S2→S1の経路で電流が流れ続ける。したがって、IL≧IL閾値(過電流閾値)または短絡電流が発生することとなり、オン固着異常を判定することができる。また、S2オン固着時にスイッチング素子S3をオンした場合、スイッチング素子S3をオンする前の電圧状態がV0=0Vであるため電流が流れない。
したがって、過電流等の異常は発生しない。さらに、S2オン固着時にスイッチング素子S4をオンした場合、C2→S4→C0→S2→L1→C1→C2の経路で、V1+V0=V2となるまで電流が流れ続ける。この経路は、図35に示した経路と電流の向きが逆の経路である。このため、上述と同様、オン固着異常を判定することができる。
つぎに、S3オン固着異常について説明する。S3オン固着時にスイッチング素子S1をオンした場合、図27に示したC1→L1→S3→C0→S1→C1の経路でV0=V1となるまで電流が流れ続ける。したがって、IL≧IL閾値(過電流閾値)または短絡電流が発生することとなり、オン固着異常を判定することができる。
また、S3オン固着時にスイッチング素子S2をオンした場合、スイッチング素子S2をオンする前の電圧状態がV0=0Vであるため電流が流れない。したがって、過電流等の異常は発生しない。さらに、S3オン固着時にスイッチング素子S4をオンした場合、図29Aおよび図29Bに示したC2→S4→S3→L1→C1→C2の経路でV2=V1となるまで電流が流れ続ける。このため、上述と同様、オン固着異常を判定することができる。
つぎに、S4オン固着時について説明する。S4オン固着時にスイッチング素子S1をオンした場合、スイッチング素子S1をオンする前の電圧状態がV0=V2であるため電流が流れない。したがって、過電流等の異常は発生しない。また、S4オン固着時にスイッチング素子S2をオンした場合、図35に示したC1→L1→S2→C0→S4→C2→C1の経路で、V1+V0=V2となるまで電流が流れ続ける。
したがって、IL≧IL閾値(過電流閾値)または短絡電流が発生することとなり、オン固着異常を判定することができる。さらに、S4オン固着時にスイッチング素子S3をオンした場合、図29Aおよび図29Bに示したC2→S4→S3→L1→C1→C2の経路でV2=V1となるまで電流が流れ続ける。このため、上述と同様、オン固着異常を判定することができる。
つぎに、V0センサーの固着異常時について説明する。V0検出値>V0目標値となる固着異常の場合は、上述のS3オン固着時と同様である。スイッチング素子S1またはスイッチング素子S4をオンした場合に、IL≧IL閾値(過電流閾値)または短絡電流が発生することとなり、オン固着異常を判定することができる。V0検出値<V0目標値となる固着異常の場合は、上述のS4オン固着時と同様である。スイッチング素子S2またはスイッチング素子S3をオンした場合に、IL≧IL閾値(過電流閾値)または短絡電流が発生することとなり、オン固着異常を判定することができる。
つぎに、S1オフ固着異常について説明する。この場合の電圧状態はV1=V2、V0=0Vである。S1オフ固着時にスイッチング素子S2をオンした場合、既にV1+V0=V2が成立しているため、電流が流れず、過電流等の異常は発生しない。また、スイッチング素子S3をオンした場合は電流経路が無いため、過電流等の異常は発生しない。さらにスイッチング素子S4をオンした場合は、既にV1+V0=V2が成立しているため、電流が流れず、過電流等の異常は発生しない。
最後に、S2オフ固着異常について説明する。この場合の電圧状態はV1=V0=V2である。S2オフ固着時にスイッチング素子S1またはスイッチング素子S3をオンした場合、既にV0=V1が成立しているため、電流が流れず、過電流等の異常は発生しない。また、スイッチング素子S4をオンした場合は電流経路が無いため、過電流等の異常は発生しない。
なお、スイッチング素子S1からスイッチング素子S4のいずれか1つをオンする場合を説明したが、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S3を同時にオンしても良い。この場合、スイッチング素子S1またはスイッチング素子S3のどちらかをオンする場合と電流経路および電圧変化が変わらない。また、同様に、スイッチング素子S2またはスイッチング素子S4のどちらかをオンする場合と電流経路および電圧変化が変わらないため、スイッチング素子S2およびスイッチング素子S4を同時にオンしても良い。
以上のようにして、本実施の形態に係る電力変換装置では、V0電圧異常が発生している場合に、第1半導体スイッチング回路から第4半導体スイッチング回路のすくなくとも1つをオンした時に過電流または短絡電流が発生するかどうか判定することで、第1半導体スイッチング回路から第4半導体スイッチング回路のいずれかのオン固着異常または第1電圧センサーの固着異常を判定することができる。
本実施の形態に開示される電力変換装置は、前記高圧側コンデンサーの電圧を検出する第2電圧検出手段を備え、前記コントローラーは、該電圧検出手段の検出値が所定値以下の場合に、前記第1〜第4半導体スイッチング回路のすくなくとも1つをオンすることを特徴とする電力変換装置である。前記コントローラーは、前記第1〜第4半導体スイッチング回路のすくなくとも1つをオンした時に所定の異常が発生した場合に、前記第1〜第4半導体スイッチング回路のいずれかのオン固着異常または前記第1電圧センサーの固着異常と判定することを特徴とする電力変換装置である。
実施の形態3.
以下、本願に開示される実施の形態3に関わる電力変換装置について説明する。本実施の形態に関わる電力変換装置の回路構成は、図1に示した回路構成と同様であるため説明を省略する。また、V0電圧異常を判定するまでの異常検出処理は、実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
図41は、本願に開示される実施の形態3の異常種類判定処理を説明するためのフロー図である。本処理は、V0電圧異常が発生している場合に実施される。ステップS21からステップS24の処理は、実施の形態1と同様であるため説明を省略し、ステップS106から説明する。まず、スイッチング素子S1からスイッチング素子S4のうちすくなくとも1つをソフトスタート制御する(ステップS106)。ソフトスタート制御を行わない半導体スイッチング回路のゲート信号はオフする。
つぎに、V2がV2閾値3(過電圧閾値;第3閾値)以上、ILがIL閾値(過電流閾値)以上、短絡電流が発生(短絡電流閾値以上の電流が流れること)のいずれかの条件が成立するか否か判定する(ステップS26)。ステップS26の異常判定条件が成立する場合はステップS108に進み、S1オン固着異常またはS2オン固着異常を確定する。異常判定条件が成立しない場合は、ソフトスタート制御を実施した半導体スイッチング回路のゲート信号のDuty(オン時間比率)が100%となるまで(ステップS107が成立するまで)、ステップS26を繰り返す。Duty(オン時間比率)が100%となった場合、全ゲートをオフする(ステップS104)。最後に、V0電圧異常を確定する(ステップS105)。
なお、V0電圧異常が発生している場合に、スイッチング素子S1またはスイッチング素子S2をソフトスタート制御した場合の電流経路、電圧変化については以下の通りである。まず、S1オン固着時の電流経路と、電圧変化について説明する。S1オン固着時にスイッチング素子S2をソフトスタート制御した場合、図26Aおよび図26Bでの説明と同様に、V2増加あるいはIL増加が発生することにより、S1オン固着異常を判定することができる。
また、S1オン固着時にスイッチング素子S3をソフトスタート制御した場合、図22に示したC0→S3→L1→C1→S1→C0の経路で、V0=V1となるまで徐々に電流が流れる。したがって、過電流等の異常は発生しない。さらに、S1オン固着時にS4をソフトスタート制御する場合は、スイッチング素子S4をオンする前の電圧状態がV0=V2であるため電流が流れない。したがって、過電流等の異常は発生しない。
つぎに、S2オン固着異常について説明する。S2オン固着時にスイッチング素子S1をソフトスタート制御した場合、上記と同様、V2増加あるいはIL増加が発生することにより、S2オン固着異常を判定することができる。また、S2オン固着時にスイッチング素子S3をソフトスタート制御した場合、スイッチング素子S3をオンする前の電圧状態がV0=0Vであるため電流が流れない。したがって、過電流等の異常は発生しない。さらに、S2オン固着時にスイッチング素子S4をソフトスタート制御した場合、C2→S4→C0→S2→L1→C1→C2の経路で、V1+V0=V2となるまで徐々に電流が流れる。この経路は、図35に示した経路と電流の向きが逆の経路である。したがって、過電流等の異常は発生しない。
つぎに、S3オン固着異常について説明する。S3オン固着時にスイッチング素子S1をソフトスタート制御した場合は、図27および図28での説明と同様、過電流または過電圧等の異常は発生しない。また、S3オン固着時にスイッチング素子S2をソフトスタート制御した場合は、スイッチング素子S2をオンする前の電圧状態がV0=0Vであるため電流が流れない。したがって、過電流等の異常は発生しない。さらに、S3オン固着時にスイッチング素子S4をソフトスタート制御した場合、図29Aおよび図29Bに示したC2→S4→S3→L1→C1→C2の経路でV2=V1となるまで徐々に電流が流れる。したがって、過電流等の異常は発生しない。
つぎに、S4オン固着異常について説明する。S4オン固着時にスイッチング素子S1をソフトスタート制御した場合、スイッチング素子S1をオンする前の電圧状態がV0=V2であるため電流が流れない。したがって、過電流等の異常は発生しない。また、S4オン固着時にスイッチング素子S2をソフトスタート制御した場合、図35に示したC1→L1→S2→C0→S4→C2→C1の経路で、V1+V0=V2となるまで徐々に電流が流れる。したがって、過電流等の異常は発生しない。
さらに、S4オン固着時にスイッチング素子S3をソフトスタート制御した場合、図29Aおよび図29Bに示したC2→S4→S3→L1→C1→C2の経路でV2=V1となるまで徐々に電流が流れる。したがって、S4オン固着時にスイッチング素子S3をソフトスタート制御した場合、過電流等の異常は発生しない。
つぎに、S1オフ固着異常またはS2オフ固着異常またはV0センサーの固着異常について説明する。前述までの通り、ソフトスタート制御を実施する場合は、動作モードAから動作モードDに遷移する場合、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S4がオンとなる場合、スイッチング素子S2およびスイッチング素子S3がオンとなる場合のいずれかの動作において、V2増加、IL増加または短絡電流などの異常が発生する。S1オフ固着またはS2オフ固着またはV0センサー固着の場合は、スイッチング素子S1からスイッチング素子S4のいずれか1つをソフトスタート制御した場合、上記異常が発生する動作とならない。
なお、スイッチング素子S1からスイッチング素子S4のいずれか1つをソフトスタート制御する場合を説明したが、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S3を同時にソフトスタート制御しても良い。この場合、スイッチング素子S1またはスイッチング素子S3のどちらかをソフトスタート制御する場合と電流経路と電圧変化が変わらない。また、同様に、スイッチング素子S2またはスイッチング素子S4のどちらかをソフトスタート制御する場合と電流経路と電圧変化が変わらないため、スイッチング素子S2およびスイッチング素子S4を同時にソフトスタート制御しても良い。
以上のようにして、本実施の形態に関わる電力変換装置では、V0電圧異常が発生している場合に、第1半導体スイッチング回路から第4半導体スイッチング回路のすくなくとも1つをソフトスタート制御した時に過電圧、または過電流、または短絡電流が発生するかどうか判定することで、第1半導体スイッチング回路または第2半導体スイッチング回路のオン固着異常を判定することができる。
なお、前述の実施の形態において、コントローラー6に異常カウンタを設けることが考えられる。異常判定条件が成立した場合に異常カウンタをカウントアップし、異常カウンタのカウント値が閾値を超えた場合に、V0電圧異常と各オン固着異常の判定を実施する。これにより、瞬間的な異常判定を排除して、確実な異常判定を行うことができる。
本実施の形態に開示される電力変換装置において、前記コントローラーは、前記第1〜第4半導体スイッチング回路のすくなくとも1つのオン時間比率を0%から100%へ徐々に変化させるソフトスタート制御を実施した時に所定の異常が発生した場合に、前記第1または第2半導体スイッチング回路のオン固着異常と判定することを特徴とする電力変換装置である。
さらに、前述の実施の形態では、第1半導体スイッチング回路2a〜第4半導体スイッチング回路2dをIGBTとダイオードにより構成した例として説明したが、IGBTの代わりに、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor FIELD Efect Transistor)、JFET(Junction Feild Effect Transistor)等としてもよい。
第1半導体スイッチング回路2aから第4半導体スイッチング回路2dに、MOSFETを用いる場合は、ダイオードの代わりにMOSFETのボディダイオードを利用してもよい。また、第1半導体スイッチング回路2a〜第4半導体スイッチング回路2dは、シリコンに比べてバンドギャップが大きいワイドバンドギャップ半導体、例えば、炭化シリコン(SiC)、窒化ガリウム系材料又はダイヤモンドによって形成してもよい。
なお、本願の明細書に開示された技術は、上記の各実施の形態1〜3に限定されるものではなく、これらの実施の形態の可能な組み合わせを全て含むことは言うまでもない。また、本願の明細書に開示された技術は、開示された技術思想の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。