近年、太陽光発電設備などの分散形電源の連系が配電系統を中心に拡大している。太陽光発電は、戸建て住宅へも普及が進んでいるため、単相低圧系統への連系が増大している。一方、戸建て住宅のオール電化も普及しており、単相低圧系統へ電気温水器やヒートポンプ式給湯機のような大容量負荷が接続されている状況にある。
以上のような状況下で、配電線の電圧は三相不平衡となることが予想されるため、配電系統の電圧管理,負荷管理を実施するためには、電力会社でこれまで実施されてきた電圧三相平衡を仮定した管理方法では、十分ではなくなる可能性がある。また、太陽光発電は出力が天候に左右され、給湯器等は朝方の負荷を増大させるなど、電圧三相不平衡の状態も時々刻々変化し、管理が非常に難しい状況となる。以上より、従来から電力会社が電圧平衡を維持するために実施してきた相管理では、電圧三相平衡が維持できない可能性があるという問題がある。
電圧三相不平衡が問題となる具体的事例として、例えば、配電系統における電圧制御機器は代表相のみの電圧を監視しているケースが多いため、電圧三相不平衡が発生している場合には、監視相は適正電圧を保っているものの、他の相は適正電圧を逸脱しているというケースが起こり得るという例が挙げられる。また、電圧三相不平衡はモータの停止や故障の原因となることが確認されている。
一方、電力会社では電圧三相不平衡の実態把握などを目的として三相計測機能付開閉器の設置を始めているものの、これら機器によって得られた計測データを活用した具体的な設備構成法は明らかにされていない。
そこで、本発明は、配電線における電圧三相不平衡を是正するために柱上変圧器が接続されるべき接続相を、多大な手間を掛けることなく且つ大掛かりな仕組みが必要とされることなく簡便に決定することができる接続相の決定方法、決定装置、及び決定プログラムを提供することを目的とする。
発明者は、電圧三相不平衡を是正するための柱上変圧器の接続相の決定方法の検討を行う中で、以下のような電圧三相不平衡の発生メカニズムを究明した。なお、本発明の説明においては、配電用変電所から配電線へと供給される三相交流電力の各相のことをA相,B相,C相と呼ぶ。そして、B相はA相から位相が120°遅れている相であり、C相はB相から位相が120°遅れている相である。
(1)基本解析
まず、図4に示す高圧配電線モデルを用いて解析を行った。このモデルは、配電線に纏わる各種評価を行う際に一般的に使用されているものであり、電気協同研究会の標準的な住宅地域モデルである(一般社団法人電気協同研究会「高圧受電設備における高調波問題の現状と対策」,第54巻第2号,平成10年)。
電気協同研究会の住宅地域モデルでは、線種は決められているものの、三相不平衡計算用の線路インピーダンスは決められていない。そこで、図5に示すデルタ配列での不平衡線路インピーダンスが用いられた。なお、デルタ配列は、各電線の線間距離が等しいため、一般的に線路インピーダンスの不平衡が小さいことが確認されている。
図4の高圧配電線モデルの配電線末端に、負荷カーブが図6に示すとおりである、例えばヒートポンプ式給湯機などの朝方(若しくは深夜)負荷及び太陽光発電が取り付けられたオール電化集合住宅を模擬した負荷が以下のパターン1乃至3のように接続される場合が設定された。なお、負荷の力率は1に設定された。
パターン1:CA相のみに接続(他の相には接続負荷無し)
パターン2:BC相及びCA相に接続(他の相には接続負荷無し)
パターン3:AB相,BC相,及びCA相の全てに接続
1)パターン1:CA相のみに接続される場合の解析結果
基本解析の条件では、朝方(深夜)負荷が働く朝方(深夜)において、図7Aのとおり、線間電圧は、BC相は上昇し、AB相及びCA相は低下した。また、図7Bのとおり、相電圧は、B相電圧は変化がなく、C相電圧は若干低下し、A相電圧は大幅に低下した。
このメカニズムは、以下のように説明され得る。すなわち、住宅負荷のような力率が1に近い負荷がCA相に接続されると、線電流はCA相線間電圧と同位相となるため、配電線路の電圧降下は、A相電圧を押し下げるように、また、C相電圧の位相を遅らせるように働く。その結果、相電圧の絶対値としては、A相においては大きく低下するが、C相においてはA相ほどは低下しない。また、A相電圧が低下することとC相電圧の位相が遅れることとにより、線間電圧の絶対値としては、AB相及びCA相は低下し、BC相は上昇する。
一方、太陽光発電出力が大きくなる日中においては、図7Aのとおり、線間電圧は、AB相及びCA相は上昇し、BC相は低下した。また、図7Bのとおり、相電圧は、B相電圧は変化がなく、A相電圧は大幅に上昇し、C相電圧は若干上昇した。
このメカニズムは、朝方(深夜)の現象と基本原理は同じであり、以下のように説明され得る。すなわち、力率1の太陽光発電がCA相に接続されると、配電線では逆潮流が発生して電流の位相が180°反転するため、配電線路の電圧降下は、A相電圧を押し上げるように、また、C相電圧の位相を進ませるように働く。その結果、相電圧の絶対値としては、A相においては大きく上昇するが、C相においてはA相ほどは上昇しない。また、A相電圧が上昇することとC相電圧の位相が進むこととにより、線間電圧の絶対値としては、AB相及びCA相は上昇し、BC相は低下する。
以上のことが、配電線末端に低圧単相負荷及び低圧単相太陽光発電をCA相のみに接続した際に発生する電圧三相不平衡のメカニズムとして知見された。
ここで、上記解析結果から得られた接続負荷の不平衡(言い換えると、低圧単相負荷や低圧単相太陽光発電の不平衡接続による不平衡)と線間電圧の不平衡との間の関係を整理して図8が得られ、当該図8から、以下の関係が成立していることが知見された。
《知見》
線路インピーダンスのリアクタンス分により、重負荷相又は太陽光発電連系量の少ない相から位相が120°進んだ相の線間電圧が他相より高くなり、軽負荷相又は太陽光発電連系量の多い相から位相が120°進んだ相の線間電圧が他相より低くなる。
2)パターン2:BC相及びCA相に接続される場合の解析結果
朝方(深夜)負荷が働く朝方(深夜)において、図9Aのとおり、線間電圧は、AB相及びBC相は若干低下し、CA相のみ大幅に低下した。また、図9Bのとおり、相電圧は、B相電圧は若干低下し、A相電圧及びC相電圧は大幅に低下した。
一方、太陽光発電出力が大きくなる日中においては、図9Aのとおり、線間電圧は、CA相は大幅に上昇し、AB相及びBC相は若干上昇した。また、図9Bのとおり、相電圧は、A相電圧及びC相電圧が大幅に上昇し、B相電圧は若干上昇した。
このメカニズムも、上記パターン1のメカニズムと同様のものとして説明され得る。
そして、上記解析結果から得られた接続負荷の不平衡と線間電圧の不平衡との間の関係を整理して図10が得られ、当該図10から、前述の接続負荷の不平衡と線間電圧の不平衡とに係る知見が成立していることが確認された。
3)パターン3:AB相,BC相,及びCA相の全てに接続される場合の解析結果
負荷は三相平衡となるため、図11A及び図11Bのとおり、線間電圧及び相電圧は、不平衡が無くなる。
このメカニズムも、上記パターン1のメカニズムと同様のものとして説明され得る。
また、本パターンは三相平衡条件であったが、図8及び図10と同様に整理して図12が得られた。そして、図12から、三相平衡の場合においても、前述の接続負荷の不平衡と線間電圧の不平衡とに係る知見が成立していることが確認された。
(2)汎用性の確認に関する解析
続いて、上述の基本解析の結果から得られた知見である「接続負荷の不平衡と線間電圧の不平衡との間の関係」は基本解析の条件の場合だけでなく実際の配電系統においても成立する関係であることを確認するため、基本解析の条件を基準としつつ以下の六つの解析を行った。
なお、以下の解析I,解析II,及び解析IIIでは、配電線末端に接続する不平衡負荷について、実際の配電系統に近い回路構成とするため、特定の相の負荷及び太陽光発電の接続量が他の相よりも多い以下の二つのケースが設定された。また、線路インピーダンスは平衡とされた。
ケースa)AB相:BC相:CA相=1:1:2
ケースb)AB相:BC相:CA相=1:2:2
〈解析I〉不平衡負荷の力率をパラメータとした解析
接続する不平衡負荷の力率が異なる条件での解析の結果、低圧負荷の力率として多い、遅れ0.9から1.0の範囲では、ケースaとケースbとのいずれの場合においても、上記知見に係る線間電圧が最も高い相及び最も低い相と重負荷相及び軽負荷相との間の関係が成立することが確認された。
〈解析II〉系統力率をパラメータとした解析
不平衡負荷とは別に接続された容量の大きな平衡負荷の力率を変化させることによって系統力率を変化させた条件での解析の結果、系統力率が異なる場合でも、ケースaとケースbとのいずれの場合においても、上記知見に係る線間電圧が最も高い相及び最も低い相と重負荷相及び軽負荷相との間の関係が成立することが確認された。
〈解析III〉線種(即ち、線路インピーダンス)をパラメータとした解析
配電線路の線種が異なる条件(具体的には、幹線:120 mm2 及び25 mm2 のアルミ線)での解析の結果、実配電系統に近い幹線が120 mm2 のアルミ線である系統だけでなく、通過電流の小さい箇所において使用される25 mm2 のアルミ線を幹線とした系統においても、上記知見に係る線間電圧が最も高い相及び最も低い相と重負荷相及び軽負荷相との間の関係が成立することが確認された。
〈解析IV〉線路インピーダンスの不平衡による電圧三相不平衡の発生メカニズム
高圧配電線の線路インピーダンスの不平衡(具体的には、装柱形態の違いによる相互インダクタンスの不平衡によるもの)による電圧三相不平衡の発生メカニズムを検証するための解析を行った。
具体的には、図5に示すデルタ配列(即ち、線路インピーダンス平衡を模擬)の場合と、図13に示す垂直配列(即ち、線路インピーダンス不平衡を模擬)の場合とが設定された。なお、垂直配列は実線路で多く用いられている装柱である。
また、図4の高圧配電線モデルの配電線末端に、負荷カーブが図6に示すとおりである、例えばヒートポンプ式給湯機などの朝方(若しくは深夜)負荷及び太陽光発電が取り付けられたオール電化集合住宅を模擬した負荷をAB相,BC相,及びCA相の3相全てに接続することにより、三相平衡負荷が模擬された。
まず、線路インピーダンス平衡(即ち、デルタ配列)の場合については、上記基本解析のパターン3と解析条件が同様になるため、解析結果は図11A及び図11Bのとおりとなる。
一方、線路インピーダンス不平衡(即ち、垂直配列)の場合については、線間電圧は図14Aのようになり、相電圧は図14Bのようになった。線間電圧(図14A)は、図11Aと比べ、朝方(深夜)負荷が働く朝方(深夜)において、AB相は上昇し、BC相は低下し、また、CA相はほぼ変化がなかった。相電圧は(図14B)、図11Bと比べ、朝方(深夜)負荷が働く朝方(深夜)において、B相電圧は変化がなく、A相電圧は上昇し、C相電圧は低下した。
以上より、デルタ配列の場合と比べ、垂直配列の場合は、線路インピーダンス不平衡の影響によって不平衡が拡大することが確認された。これは、線間距離の違いによる相互インピーダンスの違い、及び、相互インピーダンスの違いによる各相線電流の大きさの違いなどの要因が複雑に絡み合った結果、平衡状態から各電圧降下成分等の大きさが変化した結果として現れるものであると考えられた。
また、図14A及び図14Bにおいて、太陽光発電出力が大きくなる日中においても同様に、デルタ配列の場合と比べ、垂直配列の場合は、線路インピーダンス不平衡の影響によって不平衡が拡大することが確認された。
〈解析V〉実系統レベルの配電線モデルでの検証1
上述の基本解析によって得られた接続負荷の不平衡と線間電圧の不平衡との間の関係に関する知見が実系統レベルの配電線モデルにおいても同様に成立するか否かを検証するため、複数の線路インピーダンス,複数の負荷モデル,及び複数の負荷パターンを準備し、これらの組み合わせ及び電気協同研究会の住宅地域モデルへの負荷(具体的には、負荷カーブ)の接続パターンを変えることによって作り出した種々の設定について解析を行った。
この解析では、図15に示す高圧配電線モデルを用いて解析を行った。このモデルは、配電線に纏わる各種評価を行う際に一般的に使用されているものであり、電気協同研究会の標準的な住宅地域モデルである(一般社団法人電気協同研究会「高圧受電設備における高調波問題の現状と対策」,第54巻第2号,平成10年)。
そして、線路インピーダンスについては、線路インピーダンス平衡パターン(デルタ配列;図5)と線路インピーダンス不平衡パターン(垂直配列;図13)とが設定された。
負荷モデルについては、非オール電化住宅として想定される負荷カーブと、オール電化で太陽光発電が設置されていない住宅として想定される負荷カーブと、オール電化で太陽光発電が設置されている住宅として想定される負荷カーブとが設定された。
負荷パターンについては、同一の需要家が配電線の各相(線間)に均等に接続されて接続相の不平衡はないパターンと、隣の負荷点と接続相を変えて配電線全体でほぼ均等になっているものの接続位置が異なるので線路インピーダンスの影響で小さな不平衡は発生するパターン(これは、電力会社が相管理している状況を模擬したものである)と、極端なケースとして全負荷点ともに需要家接続の組み合わせを一致させて不平衡を最大にしたパターンとが設定された。
解析の結果、朝方(深夜)負荷が働く朝方(深夜)において、平衡負荷に接続している場合及び負荷接続相を適切に管理している場合には電圧不平衡率は極めて小さい一方で、負荷の不平衡が大きい場合には電圧不平衡率が大きくなることが確認された。さらに、特に電圧三相不平衡が大きくなる場合は、線路インピーダンスの不平衡に対し、接続負荷の不平衡が主要因であって支配的であると考えられた。また、日中において、特に電圧三相不平衡が大きくなる場合は、太陽光発電の不平衡が主要因であると考えられた。
〈解析VI〉実系統レベルの配電線モデルでの検証2
上述の基本解析によって得られた接続負荷の不平衡と線間電圧の不平衡との間の関係に関する知見が実系統レベルの配電線モデルにおいても同様に成立するか否かを検証するため、線路インピーダンスを平衡パターン(デルタ配列;図5)とし、負荷モデルとして上記解析Vの三つの負荷カーブに加えてオール電化で太陽光発電が設置されている住宅で解析Vと比べて朝方(深夜)負荷の消費電力及び太陽光発電の出力を半減させた負荷カーブを加え、負荷パターンは不平衡を最大にしたものとし、電気協同研究会の住宅地域モデルへの負荷(具体的には、負荷カーブ)の接続パターンを変えることによって作り出した種々の設定について解析を行った。
この解析でも、図15に示す高圧配電線モデルを用いて解析を行った。
解析の結果、実系統レベルの配電線モデルにおいても接続負荷の不平衡と線間電圧の不平衡との間の関係に関する知見が成立することが確認され、さらに、深夜と日中という時間帯の区分にも着目して接続負荷の不平衡と三相線間電圧の不平衡との間の関係に関して以下の知見が得られた。
1)深夜について
ア)負荷が最も重い相は、線間電圧が最も高い相から位相が120°遅れている相にある。
イ)負荷が最も軽い相は、線間電圧が最も低い相から位相が120°遅れている相にある。
ウ)負荷量が3相の中で中間の相は、線間電圧が中間の相から位相が120°遅れている相にある。
2)日中について
ア)太陽光発電出力が最も多い相は、線間電圧が最も低い相から位相が120°遅れている相にある。
イ)太陽光発電出力が最も少ない(若しくは太陽光発電が無い)相は、線間電圧が最も高い相から位相が120°遅れている相にある。
ウ)太陽光発電出力が3相の中で中間の相は、線間電圧が中間の相から位相が120°遅れている相にある。
なお、上記の時間帯の区分について、例えば、「日中」とは太陽光発電によって電力が出力され得る時間帯、具体的には例えば日の出から日の入りまでの時間帯を言い、「深夜」とはその他の時間帯を言う。
本発明の接続相の決定方法は、上述の発明者独自の新たな知見に基づくものであり、配電線において計測された三相の各線間電圧が用いられて計測時刻別の線間毎の電圧不平衡率が算出され、当該電圧不平衡率が最大になっている計測時刻における三相の各線間電圧が用いられて線間毎の電圧の高低特性の組み合わせが作成され、電圧不平衡率が最大になっている計測時刻と線間毎の電圧の高低特性の組み合わせとに基づいて柱上変圧器の接続相が決定されるようにしている。
また、本発明の接続相の決定装置は、配電線において計測された三相の各線間電圧を用いて計測時刻別の線間毎の電圧不平衡率を算出する手段と、電圧不平衡率が最大になっている計測時刻における三相の各線間電圧を用いて線間毎の電圧の高低特性の組み合わせを作成する手段と、電圧不平衡率が最大になっている計測時刻と線間毎の電圧の高低特性の組み合わせとに基づいて柱上変圧器の接続相を決定する手段とを有するようにしている。
また、本発明の接続相の決定プログラムは、配電線において計測された三相の各線間電圧を用いて計測時刻別の線間毎の電圧不平衡率を算出する処理と、電圧不平衡率が最大になっている計測時刻における三相の各線間電圧を用いて線間毎の電圧の高低特性の組み合わせを作成する処理と、電圧不平衡率が最大になっている計測時刻と線間毎の電圧の高低特性の組み合わせとに基づいて柱上変圧器の接続相を決定する処理とをコンピュータに行わせるようにしている。
したがって、これらの接続相の決定方法、決定装置、及び決定プログラムによると、配電線の三相の各線間電圧を計測することにより、上述の接続負荷の不平衡と線間電圧の不平衡とに係る知見により、三相の各線間電圧の不平衡を改善するように柱上変圧器の接続相が決定される。
また、本発明の接続相の決定方法、決定装置、及び決定プログラムは、現状の三相の各線間電圧の不平衡を改善するための既設の柱上変圧器の接続相の変更と将来の三相の各線間電圧の不平衡を抑制するための新設する柱上変圧器の接続相の選定とのうちの少なくとも一方に関する決定が行われるようにしても良い。この場合には、現状における電圧三相不平衡の是正に適切な対策と将来における電圧三相不平衡の予防に適切な対策とのうちの少なくとも一方に関する決定が行われる。
ここで、実配電線路への三相計測機能付開閉器の導入が進んできている。このような背景のもと、本発明では、既設の三相計測機能付開閉器により計測されるデータを利用することによって柱上変圧器の接続相が決定されるようにしても良く、新たに必要とされる費用が抑制される。また、検討対象の配電線に三相計測機能付開閉器が設置されていないために計測機器を新たに設置する必要があるとしても、三相計測機能付開閉器によって計測されるデータには種々の用途があるので、本発明の実施のために限定されない三相計測機能付開閉器を設置することによって本発明は実施され得る。
上述のことも踏まえ、本発明の接続相の決定方法、決定装置、及び決定プログラムは、配電線に設置された三相計測機能付開閉器によって三相の各線間電圧が計測されるようにしても良い。この場合には、既設の三相計測機能付開閉器によって計測されるデータを利用して柱上変圧器の接続相の決定が行われたり、三相計測機能付開閉器を新たに設置する場合でも本発明の実施のために限定されない三相計測機能付開閉器を設置して柱上変圧器の接続相の決定が行われたりする。
本発明の接続相の決定方法、決定装置、及び決定プログラムによれば、単に配電線の三相の各線間電圧を計測することによって三相の各線間電圧の不平衡を改善し得る柱上変圧器の接続相を決定することができるので、多大な手間や大掛かりな仕組みが必要とされることなく柱上変圧器の接続相の決定が可能であり、接続相の決定技術としての汎用性の向上を図ることが可能になる。
また、本発明の接続相の決定方法、決定装置、及び決定プログラムは、現状の不平衡の改善と将来の不平衡の抑制とのうちの少なくとも一方に関する接続相の決定が行われるようにした場合には、現状における電圧三相不平衡の是正に適切な対策と将来における電圧三相不平衡の予防に適切な対策とのうちの少なくとも一方に関する決定を行うことができるので、多様な場面において必要に即した接続相の決定を行って接続相の決定技術としての汎用性のより一層の向上を図ることが可能になる。
また、本発明の接続相の決定方法、決定装置、及び決定プログラムは、三相の各線間電圧が三相計測機能付開閉器によって計測されるようにした場合には、既設の三相計測機能付開閉器によって計測されるデータを利用して柱上変圧器の接続相の決定を行うことができるので、コストを低減させることが可能になる。また、三相計測機能付開閉器を新たに設置する場合でも本発明の実施のために限定されない三相計測機能付開閉器を設置して柱上変圧器の接続相の決定を行うことができるので、機器の多様な有効活用の可能性を確保して配電系統の監視・運用全体としてコストを低減させることが可能になる。
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
図1から図3に、本発明の接続相の決定方法、決定装置、及び決定プログラムの実施形態の一例を示す。
本実施形態の接続相の決定方法は、配電線において計測された三相の各線間電圧が用いられて計測時刻別の線間毎の電圧不平衡率が算出され(S1,S2)、当該電圧不平衡率が最大になっている計測時刻における三相の各線間電圧が用いられて線間毎の電圧の高低特性の組み合わせが作成され(S3,S4)、電圧不平衡率が最大になっている計測時刻と線間毎の電圧の高低特性の組み合わせとに基づいて柱上変圧器の接続相が決定される(S5)ようにしている(図1参照)。
上記接続相の決定方法は、接続相の決定装置によって実施され得る。本実施形態の接続相の決定装置10は、配電線において計測された三相の各線間電圧の計測値の入力を受ける手段としてのデータ受部11aと、三相の各線間電圧を用いて計測時刻別の線間毎の電圧不平衡率を算出する手段としての不平衡率算出部11bと、電圧不平衡率が最大になっている計測時刻を特定する手段としての時刻特定部11cと、電圧不平衡率が最大になっている計測時刻における三相の各線間電圧を用いて線間毎の電圧の高低特性の組み合わせを作成する手段としての電圧高低判定部11dと、電圧不平衡率が最大になっている計測時刻と線間毎の電圧の高低特性の組み合わせとに基づいて柱上変圧器の接続相を決定する手段としての接続相決定部11eとを有する。
また、上記接続相の決定方法及び接続相の決定装置は、接続相の決定プログラムがコンピュータ上で実行されることによっても実施・実現され得る。ここでは、接続相の決定プログラムがコンピュータ上で実行されることによって接続相の決定装置が実現されると共に接続相の決定方法が実施される場合を説明する。
本実施形態の接続相の決定プログラム17を実行するためのコンピュータ10(本実施形態では、接続相の決定装置10でもある)の全体構成を図2に示す。このコンピュータ10(接続相の決定装置10)は制御部11,記憶部12,入力部13,表示部14,及びメモリ15を備え、これらが相互にバス等の信号回線によって接続されている。
制御部11は、記憶部12に記憶されている接続相の決定プログラム17によってコンピュータ10全体の制御並びに柱上変圧器の接続相の決定に係る演算を行うものであり、例えばCPU(中央演算処理装置)である。
記憶部12は、少なくともデータやプログラムを記憶可能な装置であり、例えばハードディスクである。
入力部13は、少なくとも作業者の命令や種々の情報を制御部11に与えるためのインターフェイス(即ち、情報入力の仕組み)であり、例えばキーボードやマウスである。なお、例えばキーボードとマウスとの両方のように複数種類のインターフェイスを入力部13として有するようにしても良い。
表示部14は、制御部11の制御によって文字や図形或いは画像等の描画・表示を行うものであり、例えばディスプレイである。
メモリ15は、制御部11が種々の制御や演算を実行する際の作業領域であるメモリ空間となるものであり、例えばRAM(Random Access Memory の略)である。
そして、コンピュータ10(以下、接続相の決定装置10と表記する)の制御部11には、接続相の決定プログラム17が実行されることにより、配電線において計測された三相の各線間電圧の計測値の入力を受ける処理を行うデータ受部11aと、三相の各線間電圧を用いて計測時刻別の線間毎の電圧不平衡率を算出する処理を行う不平衡率算出部11bと、電圧不平衡率が最大になっている計測時刻を特定する処理を行う時刻特定部11cと、電圧不平衡率が最大になっている計測時刻における三相の各線間電圧を用いて線間毎の電圧の高低特性の組み合わせを作成する処理を行う電圧高低判定部11dと、電圧不平衡率が最大になっている計測時刻と線間毎の電圧の高低特性の組み合わせとに基づいて柱上変圧器の接続相を決定する処理を行う接続相決定部11eとが構成される。
そして、接続相の決定方法の実行として、まず、配電線の三相の各線間電圧の計測が行われて計測データの取得が行われる(S1)。
配電線の三相(ここでは、A相,B相,及びC相)の各線間(ここでは、AB相,BC相,及びCA相)電圧の計測の仕方は、配電線の三相の各線間電圧を少なくとも計測可能であれば特定の方法や機器によるものに限定されるものではなく、配電線の三相の各線間電圧の計測が可能な方法や機器が適宜選択され得る。具体的には例えば、既設の若しくは新設の三相計測機能付開閉器が利用され得る。
配電線の三相の各線間電圧の計測の間隔は、特定の時間〔秒,分〕に限定されるものではなく、例えば配電線の線間電圧に関して想定される変動ピッチや必要とされる精度などが考慮されて適当な値に適宜設定され得る。具体的には例えば、15分から60分程度の範囲で適当な値に設定されることが考えられる。
なお、配電線の三相の各線間電圧に関する少なくとも一日分の計測データがあれば本発明に係る以下の処理が行われ得る。ただし、日中において太陽光発電設備が大凡性能程度の発電出力をし得るように少なくとも日中の天候が良好な日の計測データであることが望ましい。
また、配電線の三相の各線間電圧は、系統によって電圧不平衡率が最大となる時刻は異なるため、24時間に亙る計測データであることが望ましい。
計測によって得られた配電線の三相の各線間電圧の計測値は、データ受部11aを介して接続相の決定装置10に入力される。
計測データ(具体的には、配電線の三相の各線間電圧の計測値,当該計測値に対応する計測時刻)は、接続相の決定装置10に、記録媒体やデータサーバを介して入力されるようにしても良いし、接続相の決定装置10と計測機器とがデータや制御指令等の信号の送受信(即ち、出入力)が可能であるように電気的に接続されて入力されるようにしても良い。
記録媒体を介して計測データが入力される場合には、配電線の三相の各線間電圧に関する計測データが記録媒体に記録され、当該記録媒体が接続相の決定装置10の記録媒体接続用端子(図示していない)に差し込まれることによって計測データが入力されるようにしても良い。
また、データサーバを介して計測データが入力される場合には、データサーバがバス等の信号回線によって接続相の決定装置10に接続され、当該データサーバに配電線の三相の各線間電圧に関する計測データがデータファイル等として格納(保存)され、当該データファイル等として保存された計測データが読み込まれるようにしても良い。
また、接続相の決定装置10と計測機器とが電気的に接続されて計測データが入力される場合には、例えば、各々に接続されて敷設されたケーブル等が用いられる有線による信号送受の仕組みを介して信号の送受信が可能であるように電気的に接続されるようにしても良いし、各々に接続された無線信号送受信機が用いられる無線による信号送受の仕組みを介して信号の送受信が可能であるように電気的に接続されるようにしても良い。そして、これら信号送受の仕組みによって計測データが入力されるようにしても良い。
さらに、記録媒体やデータサーバや有線・無線による信号送受の仕組みが組み合わされて用いられて計測データが接続相の決定装置10に入力されるようにしても良い。
そして、データ受部11aにより、入力された計測データとしての配電線の三相の各線間電圧の計測値及び当該計測値に対応する(言い換えると、計測値毎の)計測時刻がメモリ15に記憶させられる。
次に、制御部11の不平衡率算出部11bにより、S1の処理によって計測されて取得された計測データが用いられて計測時刻別の線間毎の電圧不平衡率の算出が行われる(S2)。
具体的には、不平衡率算出部11bにより、S1の処理においてメモリ15に記憶された計測データ(即ち、配電線の三相の各線間電圧の計測値,計測時刻)が読み込まれ、計測時刻別に線間毎に逆相電圧〔V〕を正相電圧〔V〕で除すことによって電圧不平衡率〔%〕が算出される。
そして、不平衡率算出部11bにより、算出された電圧不平衡率の値が、計測時刻及び線間種類と関連づけられて(言い換えると、計測時刻及び線間種類と共に)メモリ15に記憶させられる。
次に、制御部11の時刻特定部11cにより、S2の処理によって算出された計測時刻別の線間毎の電圧不平衡率に基づいて電圧不平衡率が最大になっている計測時刻の特定が行われる(S3)。
具体的には、時刻特定部11cにより、S2の処理においてメモリ15に記憶された計測時刻と当該計測時刻における線間毎の電圧不平衡率の値が読み込まれ、電圧不平衡率が最大になっている計測時刻が特定される。
ここでは、或る計測時刻の或る線間種類の電圧不平衡率が、他の計測時刻の他の線間種類の電圧不平衡率と比べて最大になっているとき、前記或る計測時刻の他の線間種類の電圧不平衡率の大きさに拘わらず、前記或る計測時刻が電圧不平衡率が最大になっている計測時刻(以下「不平衡最大時刻」という)であるとされる。
そして、時刻特定部11cにより、特定された不平衡最大時刻がメモリ15に記憶させられる。
次に、制御部11の電圧高低判定部11dにより、S3の処理によって特定された不平衡最大時刻と当該不平衡最大時刻における計測データに基づいて各線間電圧の高低特性の判定が行われる(S4)。
具体的には、電圧高低判定部11dにより、S3の処理においてメモリ15に記憶された不平衡最大時刻が読み込まれ、さらに、S1の処理においてメモリ15に記憶された計測データのうち不平衡最大時刻における配電線の三相の各線間電圧の計測値が読み込まれる。
そして、電圧高低判定部11dにより、不平衡最大時刻における各線間電圧の相互比較による線間毎の電圧の高低が判定される。
三相の各線間の電圧の相互比較による(言い換えると、相互の相対的な関係における)高低特性は、相対的な関係における高低の水準を表す「低い」,「中間」,及び「高い」の指標が用いられて以下の組み合わせのうちのいずれかに当てはめられる。
1) 低い:一つ,中間:一つ,高い:一つ
2) 低い:一つ,高い:二つ
3) 低い:二つ,高い:一つ
ここで、各線間電圧の相互比較による「中間」と「低い」や「高い」とを区別したり、「低い」と「高い」とを区別したりするための電圧の差違の閾値は、特定の値に限定されるものではなく、配電線に連系している負荷や太陽光発電の定格容量などが考慮されたうえで適宜設定される。
なお、電圧の差違の閾値は、電圧相互の差の絶対値として設定されるようにしても良いし、電圧相互の差の絶対値の相対割合として設定されるようにしても良い。
S2の処理の結果としては、具体的には例えば、配電線のA相,B相,及びC相の三相のAB相,BC相,及びCA相の各線間の電圧の組み合わせを[AB相,BC相,CA相]と表すとすると、各線間電圧の組み合わせとして[低い,高い,中間]や[高い,低い,高い]や[低い,低い,高い]などの組み合わせが作成される。
そして、電圧高低判定部11dにより、作成された線間毎の電圧の高低特性の組み合わせがメモリ15に記憶させられる。
次に、制御部11の接続相決定部11eにより、S3の処理によって特定された不平衡最大時刻とS4の処理によって判定されて作成された線間毎の電圧の高低特性の組み合わせとに基づいて柱上変圧器の接続相の決定が行われる(S5)。
具体的には、接続相決定部11eにより、S4の処理においてメモリ15に記憶された不平衡最大時刻と線間毎の電圧の高低特性の組み合わせとが読み込まれる。
そして、本発明では、接続負荷の不平衡と線間電圧の不平衡とに係る、発明者独自の新たな知見に基づいて導出された図3に示す接続相決定チャートが用いられて柱上変圧器(具体的には、単相変圧器や灯動共用変圧器のように三相配電線における三相のうちのいずれか二相に接続される変圧器)の接続相が決定される。
図3に示す接続相決定チャートは、電圧三相不平衡が発生する時間帯に基本的には対応する「時間帯」による区分を有し、具体的には「深夜」と「日中」とに区分されている。
そして、この接続相決定チャートの基本的な考え方は、「接続負荷の影響による電圧三相不平衡」は「深夜」区分に列挙されている線間電圧の高低特性の組み合わせ(図3では、「線間電圧(計測データ)/ AB相|BC相|CA相」と表示している)に対応する改善策を実施し、一方、「太陽光発電の影響による電圧三相不平衡」は「日中」区分に列挙されている線間電圧の高低特性の組み合わせに対応する改善策を実施するというものである。
なお、「日中」と「深夜」とを区分する時刻、言い換えると、「日中」時間帯と「深夜」時間帯とを特定する時刻は、特定の時刻に限定されるものではなく、太陽光発電によって電力が出力され得る時間帯を基本として、具体的には例えば日の出時刻や日の入り時刻などが考慮されて、適当な時刻に適宜設定され得る。
図3に示す接続相決定チャートは、また、現状の電圧三相不平衡を改善する場合の対策と将来の電圧三相不平衡を抑制する場合の対策とに区分されている。現状の電圧三相不平衡を改善する場合は具体的には既に設置されている柱上変圧器の接続相を変更する場合に対応するものであり、将来の電圧三相不平衡を抑制する場合は具体的には新たに設置する柱上変圧器の接続相を選定する場合に対応するものである。
図3に示す接続相決定チャートは、具体的には以下の手順によって用いられる。
1)まず、不平衡最大時刻が日中であるのか深夜であるのかが判定される。
2)そして、不平衡最大時刻が「日中」である場合には図3のうちの「時間帯」が「日中」区分が原則として参照され、不平衡最大時刻が「深夜」である場合には図3のうちの「時間帯」が「深夜」区分が参照される。
3)ただし、不平衡最大時刻が日中でありながらも、当該不平衡最大時刻において線間電圧の上昇が起こっていないときは、図3のうちの「時間帯」が「深夜」区分が参照される。
4)また、不平衡最大時刻が日中でありながらも、太陽光発電設備が連系されていない柱上変圧器が新たに設置されるときは、図3のうちの「時間帯」が「深夜」区分が参照される。
図3に示す接続相決定チャートは、〈I〉現状の電圧三相不平衡を改善する場合と〈II〉将来の電圧三相不平衡を抑制する場合とのそれぞれで具体的には例えば以下のように用いられる。
〈I〉現状の電圧三相不平衡を改善する場合
メモリ15から読み込まれた不平衡最大時刻が午前4時であって例えば日の入り後且つ日の出前であることが考慮されて「時間帯」が「深夜」であると判定された場合の例を説明する。
まず、メモリ15から読み込まれた線間電圧の高低特性の組み合わせが[AB相,BC相,CA相]=[中間,高い,低い]である場合には、「S1の処理において三相の各線間電圧の計測が行われた配電線に設置されている柱上変圧器」若しくは「S1の処理において三相の各線間電圧の計測が行われた配電線に接続している配電線に設置されている柱上変圧器」についてCA相への接続をAB相への接続に変更する(図3のうち「時間帯」が「深夜」区分の7段目を参照)。
なお、「深夜」時間帯において線間電圧の高低特性の組み合わせが[AB相,BC相,CA相]=[中間,高い,低い]である場合は、負荷の状況が[AB相,BC相,CA相]=[軽い,中間,重い]であると想定される(図3のうち「時間帯」が「深夜」区分の7段目を参照)。
このため、現状の電圧三相不平衡を改善するために負荷が最も重い相から最も軽い相へと負荷をシフトさせるように柱上変圧器の接続相を変更するようにし、上記の場合では具体的にCA相への接続をAB相への接続に変更する。
また、メモリ15から読み込まれた線間電圧の高低特性の組み合わせが[AB相,BC相,CA相]=[高い,高い,低い]である場合には、「S1の処理において三相の各線間電圧の計測が行われた配電線に設置されている柱上変圧器」若しくは「S1の処理において三相の各線間電圧の計測が行われた配電線に接続している配電線に設置されている柱上変圧器」についてBC相への接続若しくはCA相への接続をAB相への接続に変更する(図3のうち「時間帯」が「深夜」区分の4段目を参照)。
なお、「深夜」時間帯において線間電圧の高低特性の組み合わせが[AB相,BC相,CA相]=[高い,高い,低い]である場合は、負荷の状況が[AB相,BC相,CA相]=[軽い,重い,重い]であると想定される(図3のうち「時間帯」が「深夜」区分の4段目を参照)。
このため、現状の電圧三相不平衡を改善するために負荷が重い相から最も軽い相へと負荷をシフトさせるように柱上変圧器の接続相を変更するようにし、上記の場合では具体的にBC相への接続とCA相への接続とのうちのどちらかをAB相への接続に変更する。
次に、メモリ15から読み込まれた不平衡最大時刻が午後1時であって例えば日の出後且つ日の入り前であることが考慮されて「時間帯」が「日中」であると判定された場合の例を説明する。
この場合には、S1の処理においてメモリ15に記憶された計測データのうち不平衡最大時刻(ここでの例では具体的には午後1時)における配電線の三相の各線間電圧の計測値が読み込まれる。
そして、各線間電圧のうちの少なくとも一つが正相電圧を大きく上回っているとき(以下「電圧上昇ありのとき」という)は接続相決定チャートの「日中」区分を参照し、一方で、いずれの線間電圧も正相電圧を大きく上回っていないとき(以下「電圧上昇なしのとき」という)は接続相決定チャートの「深夜」区分を参照する。
なお、線間電圧が正相電圧を大きく上回っているか否かを判断するための正相電圧との電圧の差分の閾値は、特定の値に限定されるものではなく、適当な値に適宜設定される。
そして、電圧上昇ありのときで、メモリ15から読み込まれた線間電圧の高低特性の組み合わせが[AB相,BC相,CA相]=[高い,低い,中間]である場合には、「S1の処理において三相の各線間電圧の計測が行われた配電線に設置されている柱上変圧器」若しくは「S1の処理において三相の各線間電圧の計測が行われた配電線に接続している配電線に設置されている柱上変圧器」についてCA相への接続をBC相への接続に変更する(図3のうち「時間帯」が「日中」区分の9段目を参照)。
ここで、不平衡最大時刻が日中であり且つ日中において電圧上昇が起こっている場合には、電圧三相不平衡の原因は太陽光発電であると考え、「時間帯」について「日中」区分を参照する。
そして、「日中」時間帯において電圧上昇ありのときで線間電圧の高低特性の組み合わせが[AB相,BC相,CA相]=[高い,低い,中間]である場合は、太陽光発電出力の状況が[AB相,BC相,CA相]=[中間,少ない,多い]であると想定される(図3のうち「時間帯」が「日中」区分の9段目を参照)。ここで、太陽光発電出力が少ない状況には、太陽光発電出力が無い場合も含まれる。
このため、現状の電圧三相不平衡を改善するために太陽光発電出力が最も多い相から最も少ない相へと太陽光発電出力を配分するように太陽光発電設備が連系されている柱上変圧器の接続相を変更するようにし、上記の場合では具体的にCA相への接続をBC相への接続に変更する。
一方、電圧上昇なしのときで、メモリ15から読み込まれた線間電圧の高低特性の組み合わせが[AB相,BC相,CA相]=[高い,低い,中間]である場合には、「S1の処理において三相の各線間電圧の計測が行われた配電線に設置されている柱上変圧器」若しくは「S1の処理において三相の各線間電圧の計測が行われた配電線に接続している配電線に設置されている柱上変圧器」についてBC相への接続をCA相への接続に変更する(図3のうち「時間帯」が「深夜」区分の10段目を参照)。
ここで、不平衡最大時刻が日中であっても、日中において電圧上昇が起こっていない場合には、電圧三相不平衡の原因は太陽光発電ではなく接続負荷であると考え、「時間帯」について「深夜」区分を参照する。
そして、「深夜」区分においては、[AB相,BC相,CA相]=[高い,低い,中間]である場合は、負荷の状況が[AB相,BC相,CA相]=[中間,重い,軽い]であると想定される(図3のうち「時間帯」が「深夜」区分の10段目を参照)。
このため、現状の電圧三相不平衡を改善するために負荷が最も重い相から最も軽い相へと負荷をシフトさせるように柱上変圧器の接続相を変更するようにし、上記の場合では具体的にBC相への接続をCA相への接続に変更する。
〈II〉将来の電圧三相不平衡を抑制する場合
メモリ15から読み込まれた不平衡最大時刻が午前4時であって例えば日の入り後且つ日の出前であることが考慮されて「時間帯」が「深夜」であると判定された場合の例を説明する。
まず、メモリ15から読み込まれた線間電圧の高低特性の組み合わせが[AB相,BC相,CA相]=[中間,高い,低い]である場合には、「S1の処理において三相の各線間電圧の計測が行われた配電線に対して新たに設置する柱上変圧器」若しくは「S1の処理において三相の各線間電圧の計測が行われた配電線に接続している配電線に対して新たに設置する柱上変圧器」をAB相へと接続する(図3のうち「時間帯」が「深夜」区分の7段目を参照)。
なお、「深夜」時間帯において線間電圧の高低特性の組み合わせが[AB相,BC相,CA相]=[中間,高い,低い]である場合は、負荷の状況が[AB相,BC相,CA相]=[軽い,中間,重い]であると想定される(図3のうち「時間帯」が「深夜」区分の7段目を参照)。
このため、将来の電圧三相不平衡を抑制するために現状において負荷が最も軽い相に負荷を分担させるように新設する柱上変圧器の接続相を選定するようにし、上記の場合では具体的にAB相へと接続する。
また、メモリ15から読み込まれた線間電圧の高低特性の組み合わせが[AB相,BC相,CA相]=[低い,低い,高い]である場合には、「S1の処理において三相の各線間電圧の計測が行われた配電線に対して新たに設置する柱上変圧器」若しくは「S1の処理において三相の各線間電圧の計測が行われた配電線に接続している配電線に対して新たに設置する柱上変圧器」をBC相若しくはCA相へと接続する(図3のうち「時間帯」が「深夜」区分の2段目を参照)。
なお、「深夜」時間帯において線間電圧の高低特性の組み合わせが[AB相,BC相,CA相]=[低い,低い,高い]である場合は、負荷の状況が[AB相,BC相,CA相]=[重い,軽い,軽い]であると想定される(図3のうち「時間帯」が「深夜」区分の2段目を参照)。
このため、将来の電圧三相不平衡を抑制するために現状において負荷が軽い相に負荷を分担させるように新設する柱上変圧器の接続相を選定するようにし、上記の場合では具体的にBC相若しくはCA相へと接続する。
次に、メモリ15から読み込まれた不平衡最大時刻が午後1時であって例えば日の出後且つ日の入り前であることが考慮されて「時間帯」が「日中」であると判定された場合の例を説明する。
この場合には、太陽光発電設備が連系されている柱上変圧器を新たに設置するとき(以下「発電連系ありのとき」という)は接続相決定チャートの「日中」区分を参照し、一方で、太陽光発電設備が連系されていない柱上変圧器を新たに設置するとき(以下「発電連系なしのとき」という)は接続相決定チャートの「深夜」区分を参照する。
そして、発電連系ありのときで、メモリ15から読み込まれた線間電圧の高低特性の組み合わせが[AB相,BC相,CA相]=[高い,低い,中間]である場合には、「S1の処理において三相の各線間電圧の計測が行われた配電線に対して新たに設置する柱上変圧器」若しくは「S1の処理において三相の各線間電圧の計測が行われた配電線に接続している配電線に対して新たに設置する柱上変圧器」をBC相へと接続する(図3のうち「時間帯」が「日中」区分の9段目を参照)。
ここで、不平衡最大時刻が日中であり且つ配電線に新たに設置する柱上変圧器に太陽光発電設備が連系されている場合には、電圧三相不平衡を抑制するために留意すべき要素は太陽光発電であると考え、「時間帯」について「日中」区分を参照する。
そして、「日中」時間帯において発電連系ありのときで線間電圧の高低特性の組み合わせが[AB相,BC相,CA相]=[高い,低い,中間]である場合は、太陽光発電出力の状況が[AB相,BC相,CA相]=[中間,少ない,多い]であると想定される(図3のうち「時間帯」が「日中」区分の9段目を参照)。ここで、太陽光発電出力が少ない状況には、太陽光発電出力が無い場合も含まれる。
このため、将来の電圧三相不平衡を抑制するために太陽光発電出力が現状において最も少ない相へと太陽光発電出力を配分するように太陽光発電設備が連系されている新設の柱上変圧器の接続相を選定するようにし、上記の場合では具体的にBC相へと接続する。
一方、発電連系なしのときで、メモリ15から読み込まれた線間電圧の高低特性の組み合わせが[AB相,BC相,CA相]=[高い,低い,中間]である場合には、「S1の処理において三相の各線間電圧の計測が行われた配電線に対して新たに設置する柱上変圧器」若しくは「S1の処理において三相の各線間電圧の計測が行われた配電線に接続している配電線に対して新たに設置する柱上変圧器」をCA相へと接続する(図3のうち「時間帯」が「深夜」区分の10段目を参照)。
ここで、不平衡最大時刻が日中であっても、配電線に新たに設置する柱上変圧器に太陽光発電設備が連系されていない場合には、電圧三相不平衡を抑制するために留意すべき要素は太陽光発電ではなく接続負荷であると考え、「時間帯」について「深夜」区分を参照する。
そして、「深夜」区分においては、[AB相,BC相,CA相]=[高い,低い,中間]である場合は、負荷の状況が[AB相,BC相,CA相]=[中間,重い,軽い]であると想定される(図3のうち「時間帯」が「深夜」区分の10段目を参照)。
このため、将来の電圧三相不平衡を抑制するために現状において負荷が最も軽い相に負荷を分担させるように新設する柱上変圧器の接続相を選定するようにし、上記の場合では具体的にCA相へと接続する。
なお、発電連系あり且つ電圧上昇なしのときは、不平衡最大時刻が日中であっても日中において電圧上昇が起こっていない場合には(たとえ、配電線に新たに設置する柱上変圧器に太陽光発電設備が連系されている場合であっても)電圧三相不平衡の原因は太陽光発電ではなく接続負荷であると考えられるために現状の電圧三相不平衡を改善することを重視して「時間帯」について原則として「深夜」区分を参照する。ただし、発電連系あり且つ電圧上昇なしのときで、配電線に新たに設置する柱上変圧器に連系される太陽光発電設備が大規模であって発電出力が大きいことが想定されるときなどは、不平衡最大時刻が日中であり且つ配電線に新たに設置する柱上変圧器に大規模・大出力の太陽光発電設備が連系されている場合には(たとえ、現状では日中において電圧上昇が起こっていない場合であっても)電圧三相不平衡を抑制するために留意すべき要素は太陽光発電であるとも考えられるために将来の電圧三相不平衡を改善することを重視して「時間帯」について「日中」区分を参照するようにしても良い。
図3に示す接続相決定チャートの、〈I〉現状の電圧三相不平衡を改善する場合と〈II〉将来の電圧三相不平衡を抑制する場合とのそれぞれにおける用いられ方の例は以上の通りである。
そして、図3に示す接続相決定チャートの内容が接続相の決定プログラム17内に規定され、接続相決定部11eにより、不平衡最大時刻と線間電圧の高低特性の組み合わせとの読み込み、並びに、必要な場合における不平衡最大時刻における各線間電圧の計測値の読み込み及び電圧上昇あり/なしの判断が行われると共に、接続相決定チャートに従う柱上変圧器の接続相の変更や選定が行われる。
なお、現状の電圧三相不平衡を改善する場合と将来の電圧三相不平衡を抑制する場合とに関しては、作業者によって入力部13を介して予め指定がされて当該指定された場合に対応する対策のみが決定されるようにしても良いし、両方の場合のそれぞれに対応する対策が決定されるようにしても良い。
言い換えると、本発明は、現状の電圧三相不平衡を改善する場合の対策と将来の電圧三相不平衡を抑制する場合の対策とのうちの少なくとも一つを決定するようにしても良い。すなわち、柱上変圧器の新設を前提とせずに既設の柱上変圧器の接続相の変更のみを検討する場合は現状の電圧三相不平衡を改善する場合の対策のみを決定し、新設する柱上変圧器の接続相の選定のみを検討する場合には将来の電圧三相不平衡を抑制する場合の対策のみを決定し、また、既設の柱上変圧器の接続相の変更と新設する柱上変圧器の接続相の選定との両面から検討する場合は現状の電圧三相不平衡を改善する場合の対策と将来の電圧三相不平衡を抑制する場合の対策との両方を決定するようにする。
また、太陽光発電設備が連系されている柱上変圧器が新たに設置される場合と、太陽光発電設備が連系されていない柱上変圧器が新たに設置される場合とに関しては、作業者によって入力部13を介して予め指定がされて当該指定された場合に対応する対策のみが決定されるようにしても良いし、両方の場合のそれぞれに対応する対策が決定されるようにしても良い。
そして、接続相決定部11eにより、現状の電圧三相不平衡を改善する場合の既設柱上変圧器の接続相の変更内容や、将来の電圧三相不平衡を抑制する場合の新設柱上変圧器の接続相の選定内容が、データファイル等に記録されて記憶部12などに格納(保存)されたり表示部14に表示されたりする。
そして、制御部11は、或る既設の柱上変圧器若しくは新設する柱上変圧器に関する処理を終了する(END)。
以上のように構成された接続相の決定方法、決定装置、及び決定プログラムによれば、単に配電線の三相の各線間電圧を計測することによって三相の各線間電圧の不平衡を改善し得る柱上変圧器の接続相を決定することができるので、多大な手間や大掛かりな仕組みが必要とされることなく柱上変圧器の接続相の決定が可能であり、接続相の決定技術としての汎用性の向上を図ることが可能になる。
以上のように構成された接続相の決定方法、決定装置、及び決定プログラムによれば、また、現状における電圧三相不平衡の是正に適切な対策と将来における電圧三相不平衡の予防に適切な対策とに関する決定を行うことができるので、多様な場面において必要に即した接続相の決定を行うことが可能であり、この点においても接続相の決定技術としての汎用性の向上を図ることが可能になる。
なお、上述の形態は本発明を実施する際の好適な形態の一例ではあるものの本発明の実施の形態が上述のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において本発明は種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態では「接続負荷の影響による電圧三相不平衡」に対応する「深夜」区分と「太陽光発電の影響による電圧三相不平衡」に対応する「日中」区分とを有する接続相決定チャート(図3参照)が用いられるようにしているが、これに限られず、太陽光発電設備が連系されていない柱上変圧器の接続相の変更や太陽光発電設備が連系されていない柱上変圧器を新設する際の接続相の選定を行う場合には「深夜」区分のみの接続相決定チャートが用いられるようにしても良い。
本発明の接続相の決定方法による配電線の電圧三相不平衡の改善効果の検証例を図16,図17A,及び図17Bを用いて説明する。本実施例では、電圧三相不平衡の改善策として柱上変圧器(具体的には、単相変圧器や灯動共用変圧器のように三相配電線における三相のうちのいずれか二相に接続される変圧器)接続相の変更を実施する場合を取り上げて効果を検証する。
本実施例では、[課題を解決するための手段]において整理した〈解析VI〉で用いられた解析ケースが改善策実施前のケースとされた。
そして、改善策として、第32負荷点よりも負荷側(即ち、配電用変電所と反対側である下流側)において柱上変圧器の接続相の変更が実施される場合を考える。
まず、改善策実施前の状態は図16に示す通りである。すなわち、配電線の三相の各線間電圧の計測が行われると、改善策実施前の実態として図16に示す計測データが取得される。
ここで、電圧三相不平衡の改善策として柱上変圧器の接続相の変更が実施される場合、従来は、線間電圧の絶対値から判断して以下のような対策がとられることが一般的である。
深夜時間帯に着目し、線間電圧が最も低いCA相を重負荷相であると判定すると共に線間電圧が最も高いAB相を軽負荷相であると判定し、柱上変圧器の接続相をCA相からAB相へと変更することが適切であると判断する。
また、日中時間帯に着目し、線間電圧が最も高いCA相を太陽光発電設備連系の多い相であると判定すると共に線間電圧が最も低いAB相を太陽光発電設備連系が少ない相であると判定し、柱上変圧器の接続相をCA相からAB相へと変更することが適切であると判断する。
これに対して本発明の接続相の決定方法によると、深夜時間帯における線間電圧の高低特性の組み合わせが[AB相,BC相,CA相]=[高い,中間,低い]であるので、図3のうち「時間帯」が「深夜」区分の八段目に該当し、柱上変圧器の接続相をBC相からAB相へと変更することが最適であると決定される。
また、日中時間帯における線間電圧の高低特性の組み合わせが[AB相,BC相,CA相]=[低い,中間,高い]であるので、図3のうち「時間帯」が「日中」区分の八段目に該当し、柱上変圧器の接続相をBC相からAB相へと変更することが最適であると決定される。
すなわち、本発明の接続相の決定方法によると、深夜時間帯に着目した場合も日中時間帯に着目した場合も、柱上変圧器の接続相をBC相からAB相へと変更することが最適であると決定される。
そして、従来手法に基づいて柱上変圧器の接続相をCA相からAB相へと変更した後の三相の各線間電圧として図17Aに示す結果が得られ、本発明に基づいて柱上変圧器の接続相をBC相からAB相へと変更した後の三相の各線間電圧として図17Bに示す結果が得られた。
図17Aに示す結果から、従来手法では、電圧不平衡率は若干低減するものの、BC相電圧がAB相電圧から離れてCA相電圧に概ね一致するほどに近付いてしまい、三相の線間電圧を相互に近づけるという不平衡改善効果は得られないことが確認された。
これに対して図17Bに示す結果から、本発明によれば、電圧不平衡率が従来手法と比べて大幅に低減すると共に三相の線間電圧が相互に近付くという理想的な不平衡改善効果が得られることが確認された。
以上の結果から、本発明では、柱上変圧器の接続相の変更を実施する場合に電圧不平衡率を低減させ且つ三相の線間電圧を相互に近付けるという理想的な不平衡改善効果が得られるように変更前後の接続相を決定可能であることが確認された。
本発明の接続相の決定方法による配電線の電圧三相不平衡の改善効果の他の検証例を図18,図19A,及び図19Bを用いて説明する。本実施例では、電圧三相不平衡の改善策として太陽光発電設備が連系された柱上変圧器(具体的には、単相変圧器や灯動共用変圧器のように三相配電線における三相のうちのいずれか二相に接続される変圧器)が新たに接続される場合を取り上げて効果を検証する。
本実施例では、[課題を解決するための手段]において整理した〈解析VI〉で用いられた解析ケースが改善策実施前のケースとされた。
そして、第39負荷点に、ヒートポンプ式給湯機などの朝方(深夜)負荷及び太陽光発電が取り付けられたオール電化集合住宅を模擬した負荷が新設される場合を考える。
まず、改善策実施前の状態は図18に示す通りである。すなわち、配電線の三相の各線間電圧の計測が行われると、改善策実施前の実態として図18に示す計測データが取得される。
ここで、太陽光発電設備が連系された柱上変圧器が新たに接続される場合、従来は、線間電圧の絶対値から判断して以下のような対策がとられることが一般的である。
深夜時間帯に着目し、線間電圧が最も高いAB相を軽負荷相であると判定し、新たな柱上変圧器をAB相へと接続することが適切であると判断する。
また、日中時間帯に着目し、線間電圧が最も低いAB相を太陽光発電設備連系が少ない相であると判定し、新たな柱上変圧器をAB相へと接続することが適切であると判断する。
これに対して本発明の接続相の決定方法によると、深夜時間帯における線間電圧の高低特性の組み合わせが[AB相,BC相,CA相]=[高い,低い,中間]であるので、図3のうち「時間帯」が「深夜」区分の十段目に該当し、新たな柱上変圧器をCA相へと接続することが最適であると決定される。
また、日中時間帯における線間電圧の高低特性の組み合わせが[AB相,BC相,CA相]=[低い,高い,中間]であるので、図3のうち「時間帯」が「日中」区分の十段目に該当し、新たな柱上変圧器をCA相へと接続することが最適であると決定される。
すなわち、本発明の接続相の決定方法によると、深夜時間帯に着目した場合も日中時間帯に着目した場合も、太陽光発電設備が連系された新たな柱上変圧器をCA相へと接続することが最適であると決定される。
そして、従来手法に基づいて柱上変圧器をAB相へと新たに接続した後の三相の各線間電圧として図19Aに示す結果が得られ、本発明に基づいて柱上変圧器をCA相へと新たに接続した後の三相の各線間電圧として図19Bに示す結果が得られた。
図19Aに示す結果から、従来手法では、三相の線間電圧を相互に近づけるという不平衡改善効果は得られないことが確認された。
これに対して図19Bに示す結果から、本発明によれば、電圧不平衡率が低減すると共に三相の線間電圧が相互に近付くという理想的な不平衡改善効果が得られることが確認された。
以上の結果から、本発明では、太陽光発電設備が連系された柱上変圧器を新たに接続する場合に電圧不平衡率を低減させ且つ三相の線間電圧を相互に近付けるという理想的な不平衡改善効果が得られるように接続相を決定可能であることが確認された。