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JP6466110B2 - プリント配線板用基板、プリント配線板及びプリント配線板用基板の製造方法 - Google Patents

プリント配線板用基板、プリント配線板及びプリント配線板用基板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、プリント配線板用基板、プリント配線板及びプリント配線板用基板の製造方法に関する。
近年、電子機器の小型化及び高性能化に伴い、プリント配線板の高密度化が要求されている。このような高密度化の要求を満たすプリント配線板用基板として、導電層の厚さを低減したプリント配線板用基板が求められている。
このような要求に対し、耐熱性絶縁ベースフィルムに接着剤層を介することなく銅薄層を積層したプリント配線板用基板が提案されている(特許第3570802号公報参照)。この従来のプリント配線板用基板は、耐熱性絶縁ベースフィルムの両面にスパッタリング法を用いて厚み0.25〜0.30μmの銅薄膜層(第1導電層)を形成し、その上に電気メッキ法を用いて銅厚膜層(第2導電層)を形成している。
特許第3570802号公報
上記従来のプリント配線板用基板は、導電層を薄くできる点において高密度プリント配線の要求に沿う基板であるといえる。しかし、上記従来のプリント配線板用基板は、導電層をベースフィルムに密着させるためスパッタリング法を用いて第1導電層を形成しているので、真空設備を必要とし、設備の建設、維持、運転等におけるコストが高くなる。また、使用するベースフィルムの供給、導電層の形成、ベースフィルムの収納等の全てを真空中で取り扱わなければならない。また設備面において、基板のサイズを大きくすることに限界がある。
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、低コストで導電層を十分に薄くできるプリント配線板用基板、プリント配線板及びプリント配線板用基板の製造方法を提供することを目的とする。
発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、プリント配線板用基板のベースフィルムに導電性インクの塗布により形成した導電層の表面に無電解メッキを施した際、無電解メッキに由来する金属(ニッケル、パラジウム等)がベースフィルム及び導電層内に存在し、ベースフィルムと導電層との間の界面近傍の上記無電解メッキに由来する金属の量が多くなるとベースフィルムと導電層との間の密着力が大きくなる傾向があることを知見した。このことより、発明者らは、真空設備を使用しなくても導電層をベースフィルムに密着させられることを見出した。
この知見に基づいて考案した本発明の一態様に係るプリント配線板用基板は、絶縁性を有するベースフィルムと、金属粒子を含む導電性インクの塗布により上記ベースフィルムの少なくとも一方の面に積層される第1導電層と、無電解メッキにより上記第1導電層のベースフィルムと反対側の面に積層される第2導電層とを備え、上記第1導電層、第2導電層及びベースフィルムにニッケルが存在し、上記第1導電層及びベースフィルムの界面から500nm以下の界面近傍層におけるニッケル量が、EDX(エネルギー分散型X線分光法)分析による定量で1質量%以上であるプリント配線板用基板である。
上記課題を解決するためになされた別の本発明の一態様に係るプリント配線板は、導電パターンを有するプリント配線板であって、上記導電パターンが、上記プリント配線板用基板の第1導電層及び第2導電層にサブトラクティブ法又はセミアディティブ法を用いることで形成されているプリント配線板である。
上記課題を解決するためになされたさらに別の本発明の一態様に係るプリント配線板用基板の製造方法は、絶縁性を有するベースフィルムの少なくとも一方の面への金属粒子を含む導電性インクの塗布及び加熱により第1導電層を形成する工程と、ニッケルを含むメッキ液を用い、無電解メッキにより上記第1導電層のベースフィルムと反対側の面に第2導電層を形成する工程とを備え、上記第1導電層、第2導電層及びベースフィルムにニッケルが存在し、上記第1導電層及びベースフィルムの界面から500nm以下の界面近傍層におけるニッケル量が、EDX分析による定量で1質量%以上であるプリント配線板用基板の製造方法である。
本発明のプリント配線板用基板、プリント配線板及びプリント配線板用基板の製造方法は、低コストで導電層を十分に薄くできる。
本発明の一実施形態に係るプリント配線板用基板の模式的斜視図である。 図1のプリント配線板用基板の模式的部分断面図である。 図1のプリント配線板用基板の製造方法を説明する模式的部分断面図である。 図1のプリント配線板用基板の製造方法の図3Aの次の工程を説明する模式的部分断面図である。 図1のプリント配線板用基板を用いるプリント配線板の製造方法を説明する模式的部分断面図である。 図1のプリント配線板用基板を用いるプリント配線板の製造方法の図4Aの次の工程を説明する模式的部分断面図である。 図1のプリント配線板用基板を用いるプリント配線板の製造方法の図4Bの次の工程を説明する模式的部分断面図である。 図1のプリント配線板用基板を用いるプリント配線板の製造方法の図4Cの次の工程を説明する模式的部分断面図である。
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一態様に係るプリント配線板用基板は、絶縁性を有するベースフィルムと、金属粒子を含む導電性インクの塗布により上記ベースフィルムの少なくとも一方の面に積層される第1導電層と、無電解メッキにより上記第1導電層のベースフィルムと反対側の面に積層される第2導電層とを備え、上記第1導電層、第2導電層及びベースフィルムにニッケルが存在し、上記第1導電層及びベースフィルムの界面から500nm以下の界面近傍層におけるニッケル量が、EDX(エネルギー分散型X線分光法)分析による定量で1質量%以上であるプリント配線板用基板である。
当該プリント配線板用基板は、ベースフィルムの少なくとも一方の面に金属粒子を含む導電性インクの塗布により第1導電層が積層され、上記第1導電層のベースフィルムと反対側の面に無電解メッキにより第2導電層が積層されているので、スパッタリング等の物理的蒸着に必要な高価な真空設備を必要としない。そのため、当該プリント配線板用基板の大きさが真空設備により制限されることがない。また、当該プリント配線板用基板は、上記ベースフィルム及び第1導電層の界面近傍層に所定量以上のニッケルが存在することにより、接着剤層を設けることなくベースフィルムと第1導電層との間に大きな密着力が得られる。この理由は定かではないが、ニッケルの存在によりベースフィルム及び第1導電層の残留応力が低下し、その結果、ベースフィルムと第1導電層との間の密着力が向上していると考えられる。また、当該プリント配線板用基板は、接着剤層を介さずにベースフィルムが第1導電層に積層されているので、導電層を十分に薄く形成できる。さらに、当該プリント配線板用基板は、金属粒子を含む導電性インクの塗布により上記ベースフィルムの少なくとも一方の面に第1導電層が積層されることにより、ベースフィルムの材質に制限されることなく種々のベースフィルムを用いたプリント配線板用基板を提供することができる。なお、上記第2導電層は、無電解メッキにより積層された一方の面に、さらに電気メッキが施されてもよい。また、第1導電層の平均厚みが500nmに満たない場合、上記界面近傍層に第2導電層は含まれないものとする。
上記界面近傍層のニッケルの質量割合が、上記第2導電層の第1導電層との界面から500nm以下のA層のニッケルの質量割合よりも大きいことが好ましい。このように、界面近傍層のニッケルの質量割合を第2導電層のA層のニッケルの質量割合よりも大きくすることにより、第1導電層及びベースフィルム間の剥離に大きく影響を与える第1導電層及びベースフィルムの残留応力がより低減されるので、ベースフィルムと第1導電層との間の密着力がより向上すると考えられる。なお、第2導電層の平均厚みが500nm以下の場合、上記A層は第2導電層全体を表すものとする。
上記第1導電層、第2導電層及びベースフィルムにパラジウムが存在する場合、上記ベースフィルムの第1導電層との界面から1μm以下のB層のパラジウムの質量割合が、上記第2導電層の第1導電層との界面から500nm以下のA層のパラジウムの質量割合よりも大きいことが好ましい。このように、ベースフィルムのB層のパラジウムの質量割合を第2導電層のA層のパラジウムの質量割合よりも大きくすることにより、ベースフィルム及び第1導電層の界面でのメッキ析出がより緻密となり、ベースフィルムと第1導電層との間の密着力がより向上する。なお、ベースフィルムの平均厚みが1μm以下の場合、上記B層はベースフィルム全体を表すものとする。
上記無電解メッキが銅メッキであるとよい。このように、銅メッキによる無電解メッキを用いることで、銅メッキ液に含有させるニッケルの作用により、より低応力の第2導電層が形成できる。
上記金属粒子の平均粒子径としては、1nm以上500nm以下が好ましい。このように、上記範囲内の平均粒子径を有する金属粒子を含む導電性インクの塗布により第1導電層がベースフィルムの表面に積層されることで、絶縁性を有するベースフィルムの表面上に、緻密で均一な第1導電層が安定して形成される。これにより、無電解メッキによる第2導電層を均一に形成することができる。なお、ここで「平均粒子径」とは、分散液中の粒度分布の中心径D50で表されるものを意味する。平均粒子径は、粒子径分布測定装置(例えば、日機装株式会社のマイクロトラック粒度分布計「UPA−150EX」)で測定することができる。
上記ベースフィルムの第1導電層の積層面に親水化処理が施されているとよい。このように、上記ベースフィルムの第1導電層の積層面に親水化処理が施されていることにより、上記導電性インクのベースフィルムに対する表面張力が小さくなり、上記ベースフィルムの表面に導電性インクが均一に塗り易くなる。これにより、第1導電層をベースフィルムの表面に均一の厚さで形成し易くなる。
上記金属が銅であるとよい。このように、上記金属が銅であることにより、第1導電層の導電性が高くなり、導電性の優れたプリント配線板が作成できる。
本発明の他の一態様に係るプリント配線板は、導電パターンを有するプリント配線板であって、上記導電パターンが、上記プリント配線板用基板の第1導電層及び第2導電層にサブトラクティブ法又はセミアディティブ法を用いることで形成されているプリント配線板である。
当該プリント配線板は、上記プリント配線板用基板を用いて製造したものであるので、薄く形成することができると共に、ベースフィルムと導電層との密着力が大きく、ベースフィルムから導電層が剥離し難い。
本発明のさらに他の一態様に係るプリント配線板用基板の製造方法は、絶縁性を有するベースフィルムの少なくとも一方の面への金属粒子を含む導電性インクの塗布及び加熱により第1導電層を形成する工程と、ニッケルを含むメッキ液を用い、無電解メッキにより上記第1導電層のベースフィルムと反対側の面に第2導電層を形成する工程とを備え、上記第1導電層、第2導電層及びベースフィルムにニッケルが存在し、上記第1導電層及びベースフィルムの界面から500nm以下の界面近傍層におけるニッケル量が、EDX分析による定量で1質量%以上であるプリント配線板用基板の製造方法である。
当該プリント配線板用基板の製造方法は、ベースフィルムの少なくとも一方の面への金属粒子を含む導電性インクの塗布及び加熱により第1導電層を形成し、無電解メッキにより第1導電層のベースフィルムと反対側の面に第2導電層を形成するので、スパッタリング等の物理的蒸着に必要な高価な真空設備を必要としない。そのため、当該プリント配線板用基板の製造方法により製造するプリント配線板用基板の大きさが真空設備によって制限されることがない。また、当該プリント配線板用基板の製造方法は、ニッケルを含むメッキ液を用いて無電解メッキを行うので、上記第1導電層及びベースフィルムの界面近傍層に所定量以上のニッケルが存在し、その結果、上記ベースフィルムと第1導電層との間の密着力が向上する。なお、無電解メッキを施した上に電気メッキを施して第2導電層を形成してもよい。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の実施形態に係るプリント配線板用基板、プリント配線板及びプリント配線板用基板の製造方法を図面を参照しつつ説明する。
〔プリント配線板用基板〕
図1及び図2の当該プリント配線板用基板は、絶縁性を有するベースフィルム1と、金属粒子を含む導電性インクの塗布によりベースフィルム1の一方の面に積層される第1導電層2と、無電解メッキにより第1導電層2のベースフィルム1と反対側の面に積層される第2導電層3とを備える。また、上記第1導電層2、第2導電層3及びベースフィルム1にはニッケルが存在する。
<ベースフィルム>
当該プリント配線板用基板を構成するベースフィルム1は絶縁性を有する。このベースフィルム1の材料としては、例えばポリイミド、液晶ポリマー、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の可撓性を有する樹脂、紙フェノール、紙エポキシ、ガラスコンポジット、ガラスエポキシ、テフロン(登録商標)、ガラス基材等のリジッド材、硬質材料と軟質材料とを複合したリジッドフレキシブル材を用いることが可能である。これらの中でも、金属酸化物等との結合力が大きいことから、ポリイミドが特に好ましい。
上記ベースフィルム1の厚みは、当該プリント配線板用基板を利用するプリント配線板によって設定されるものであり特に限定されないが、例えば上記ベースフィルム1の平均厚みの下限としては、5μmが好ましく、12μmがより好ましい。一方、上記ベースフィルム1の平均厚みの上限としては、2mmが好ましく、1.6mmがより好ましい。上記ベースフィルム1の平均厚みが上記下限未満の場合、ベースフィルム1の強度が不十分となるおそれがある。逆に、ベースフィルム1の平均厚みが上記上限を超える場合、プリント配線板の薄板化が困難となるおそれがある。
上記ベースフィルム1には、導電性インクを塗布する側の表面に親水化処理を施すことが好ましい。上記親水化処理として、例えばプラズマを照射して表面を親水化するプラズマ処理や、アルカリ溶液で表面を親水化するアルカリ処理等を採用することができる。ベースフィルム1に親水化処理を施すことにより、導電性インクのベースフィルム1に対する表面張力が小さくなるので、導電性インクをベースフィルム1に均一に塗り易くなる。
<第1導電層>
上記第1導電層2は、金属粒子を含む導電性インクの塗布により、ベースフィルム1の一方の面に積層されている。当該プリント配線板用基板では、導電性インクの塗布により第1導電層2を形成するので、ベースフィルム1の一方の面を容易に導電性の皮膜で覆うことができる。なお、導電性インク中の不要な有機物等を除去して金属粒子を確実にベースフィルム1の一方の面に固着させるため、第1導電層2は導電性インクの塗布後に熱処理が施されることが好ましい。
(導電性インク)
上記第1導電層2を形成する導電性インクは、導電性をもたらす導電性物質として金属粒子を含んでいる。本実施形態では、導電性インクとして、金属粒子と、その金属粒子を分散させる分散剤と、分散媒とを含むものを用いる。このような導電性インクを用いて塗布することで、微細な金属粒子による第1導電層2がベースフィルム1の一方の面に積層される。
上記導電性インクに含まれる金属粒子を構成する金属は、特に限定されるものではないが、第1導電層2とベースフィルム1との間の密着力向上の観点より、その金属に基づく金属酸化物又はその金属酸化物に由来する基並びにその金属に基づく金属水酸化物又はその金属水酸化物に由来する基が生成されるものであるものが好ましく、例えば銅、ニッケル、アルミニウム、金又は銀を用いることができる。この中でも、導電性がよく、ベースフィルム1との密着性に優れる金属として、銅が好ましく用いられる。
上記導電性インクに含まれる金属粒子の平均粒子径の下限は、1nmが好ましく、30nmがより好ましい。また、上記金属粒子の平均粒子径の上限は、500nmが好ましく、100nmがより好ましい。上記金属粒子の平均粒子径が上記下限未満の場合、導電性インク中での金属粒子の分散性及び安定性が低下するおそれがある。また、上記金属粒子の平均粒子径が上記上限を超える場合、金属粒子が沈殿し易くなるおそれがあると共に、導電性インクを塗布した際に金属粒子の密度が均一になり難くなる。
上記第1導電層2の平均厚みの下限としては、0.05μmが好ましく、0.1μmがより好ましい。一方、上記第1導電層2の平均厚みの上限としては、2μmが好ましく、1.5μmがより好ましい。上記第1導電層2の平均厚みが上記下限未満の場合、厚み方向に金属粒子が存在しない部分が多くなり導電性が低下するおそれがある。逆に、上記第1導電層2の平均厚みが上記上限を超える場合、導電層の薄膜化が困難となるおそれがある。
<第2導電層>
上記第2導電層3は、無電解メッキにより第1導電層2のベースフィルム1と反対側の面に積層されている。このように上記第2導電層3が無電解メッキにより形成されているので、第1導電層2を形成する金属粒子間の空隙には第2導電層3の金属が充填されている。第1導電層2に空隙が残存していると、この空隙部分が破壊起点となって第1導電層2がベースフィルム1から剥離し易くなるが、この空隙部分に第2導電層3が充填されていることにより第1導電層2の剥離が防止される。
上記無電解メッキに用いる金属として、導通性のよい銅、ニッケル、銀等を用いることができるが、第1導電層2を形成する金属粒子に銅を使用する場合には、第1導電層2との密着性を考慮して、銅又はニッケルを用いることが好ましい。なお、本実施形態では、無電解メッキに用いるメッキ液は、ニッケル以外の金属を無電解メッキに用いる場合、メッキ金属に加えてニッケル又はニッケル化合物を含有させたものを用いる。
無電解メッキにより形成する第2導電層3の平均厚みの下限としては、0.2μmが好ましく、0.3μmがより好ましい。一方、上記無電解メッキにより形成する第2導電層3の平均厚みの上限としては、1μmが好ましく、0.5μmがより好ましい。上記無電解メッキにより形成する第2導電層3の平均厚みが上記下限未満の場合、第2導電層3が第1導電層2の空隙部分に十分に充填されず導電性が低下するおそれがある。逆に、上記無電解メッキにより形成する第2導電層3の平均厚みが上記上限を超える場合、無電解メッキに要する時間が長くなり生産性が低下するおそれがある。
また、上記無電解メッキによる薄層を形成した後に、さらに電気メッキを行い第2導電層3を厚く形成することも好ましい。無電解メッキ後に電気メッキを行うことにより、導電層の厚みの調整が容易かつ正確に行え、また比較的短時間でプリント配線を形成するのに必要な厚みの導電層を形成することができる。この電気メッキに用いる金属として、導通性のよい銅、ニッケル、銀等を用いることができる。
上記電気メッキ後の第2導電層3の厚みは、どのようなプリント回路を作成するかによって設定されるもので特に限定されないが、例えば上記電気メッキ後の第2導電層3の平均厚みの下限としては、1μmが好ましく、2μmがより好ましい。一方、上記電気メッキ後の第2導電層3の平均厚みの上限としては、100μmが好ましく、50μmがより好ましい。上記電気メッキ後の第2導電層3の平均厚みが上記下限未満の場合、導電層が損傷し易くなるおそれがある。逆に、上記電気メッキ後の第2導電層3の平均厚みが上記上限を超える場合、プリント配線板の薄板化が困難となるおそれがある。
(ニッケル量)
ベースフィルム1及び第1導電層2の界面4(第1界面)近傍には、ニッケルが凝集している。このニッケルは、上記無電解メッキで用いるメッキ液に含まれるニッケル又はニッケル化合物に由来するニッケルであり、無電解メッキ時に上記第1界面4近傍に析出したものである。
上記第1界面4から500nm以下の第1導電層2及びベースフィルム1内の領域を界面近傍層6とした場合、界面近傍層6におけるニッケル量の下限としては、EDX分析による定量で1質量%であり、3質量%がより好ましい。一方、上記界面近傍層6におけるニッケル量の上限としては、EDX分析による定量で10質量%が好ましく、8質量%がより好ましい。上記界面近傍層6におけるニッケル量が上記下限未満の場合、ニッケルの存在による残留応力の低減効果が低下するため、ベースフィルム1と第1導電層2との間の密着力が十分に向上しないおそれがある。逆に、上記界面近傍層6におけるニッケル量が上記上限を超える場合、メッキ液に含まれるニッケル量の増加又はメッキ量の増大により、当該プリント配線板用基板の製造コストが高くなるおそれがある。
このように、当該プリント配線板用基板は、上記第1界面4近傍にニッケルが凝集しているので、第2導電層3よりも第1界面4近傍に、より多くのニッケルが存在する。具体的には、図2に示すように、上記第2導電層3の第2界面5から500nm以下をA層7とした場合、界面近傍層6のニッケルの質量割合が、A層7のニッケルの質量割合よりも大きい。このように多量のニッケルが第1界面4近傍に存在することにより、ベースフィルム1と第1導電層2との間の優れた密着力が得られる。
また、上記無電解メッキで用いるメッキ液に含まれるニッケル又はニッケル化合物に由来するニッケルは、無電解メッキ時に第2導電層3、第1導電層2及びベースフィルム1にも析出し、第2導電層3、第1導電層2及びベースフィルム1にも存在する。
当該プリント配線板用基板は、上記第1界面4近傍へのニッケルの凝集により、第2導電層3よりもベースフィルム1に、より多くのニッケルが存在する。具体的には、図2に示すように、上記ベースフィルム1の第1界面4から1μm以下をB層8とした場合、B層8のニッケルの質量割合が、A層7のニッケルの質量割合よりも大きい。このように多量のニッケルがベースフィルム1に存在することにより、第1導電層及びベースフィルム間の剥離に大きく影響を与えるベースフィルム1の残留応力を効果的に低減でき、ベースフィルム1と第1導電層2との間の密着力が向上する。
B層8におけるニッケル量の下限としては、EDX分析による定量で1質量%が好ましく、2質量%がより好ましい。一方、上記B層8におけるニッケル量の上限としては、EDX分析による定量で5質量%が好ましく、4質量%がより好ましい。上記B層8におけるニッケル量が上記下限未満の場合、ベースフィルム1の残留応力が十分に低減されず、ベースフィルム1と第1導電層2との間の密着力が十分に向上しないおそれがある。逆に、上記B層8におけるニッケル量が上記上限を超える場合、相対的に界面近傍層6のニッケル量が減るため、界面近傍層6の残留応力が十分に低減されず、ベースフィルム1と第1導電層2との間の密着力が十分に向上しないおそれがある。
A層7におけるニッケル量の下限としては、EDX分析による定量で0.5質量%が好ましく、1質量%がより好ましい。一方、上記A層7におけるニッケル量の上限としては、EDX分析による定量で3質量%が好ましく、2質量%がより好ましい。上記A層7におけるニッケル量が上記下限未満の場合、第2導電層3の残留応力が低減されず、第1導電層2と第2導電層3との間の密着力が低下するおそれがある。逆に、上記A層7におけるニッケル量が上記上限を超える場合、メッキ液に含まれるニッケル量の増加又はメッキ量の増大により、当該プリント配線板用基板の製造コストが高くなるおそれがある。
また、図2に示すように上記第1導電層2の界面近傍層6以外の領域をC層9とした場合、C層9におけるニッケル量の下限としては、EDX分析による定量で1質量%が好ましく、2質量%がより好ましい。一方、上記C層9におけるニッケル量の上限としては、EDX分析による定量で6質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。上記C層9におけるニッケル量が上記下限未満の場合、第1導電層2の残留応力が低減されず、ベースフィルム1と第1導電層2との間の密着力が十分に向上しないおそれがある。逆に、上記C層9におけるニッケル量が上記上限を超える場合、メッキ液に含まれるニッケル量の増加又はメッキ量の増大により、当該プリント配線板用基板の製造コストが高くなるおそれがある。
なお、上記無電解メッキの触媒としてパラジウムを使用した場合には、ニッケルと同様に、パラジウムも第1導電層2、第2導電層3及びベースフィルム1に含まれる。このようにパラジウムが含まれる場合、上記B層8のパラジウムの質量割合が、上記A層7のパラジウムの質量割合よりも大きく、また上記C層9のパラジウムの質量割合よりも大きいことが好ましい。このようにベースフィルム1における質量割合が第1導電層2及び第2導電層3の質量割合よりも大きくなるようパラジウムを分布させることにより、ベースフィルム1及び第1導電層2の界面でのメッキ析出がより緻密となり、ベースフィルム1と第1導電層2との間の密着力が向上する。なお、パラジウムを上記無電解メッキの触媒として必ずしも使用しなくてもよく、触媒としてパラジウムを使用しない場合には、当該プリント配線板用基板の第1導電層2、第2導電層3及びベースフィルム1にパラジウムは含まれない。
〔プリント配線板用基板の製造方法〕
当該プリント配線板用基板の製造方法は、絶縁性を有するベースフィルムの一方の面への金属粒子を含む導電性インクの塗布及び加熱により第1導電層を形成する工程(第1導電層形成工程)と、ニッケルを含むメッキ液を用いて、無電解メッキにより上記第1導電層のベースフィルムと反対側の面に第2導電層を形成する工程(第2導電層形成工程)とを備える。当該プリント配線板用基板の製造方法により製造されたプリント配線板用基板は、第1導電層、第2導電層及びベースフィルムにニッケルが存在し、上記第1導電層及びベースフィルムの界面から500nm以下の界面近傍層におけるニッケル量が、EDX分析による定量で1質量%以上である。
<第1導電層形成工程>
上記第1導電層形成工程では、図3Aに示すように、ベースフィルム1の表面に金属粒子を含む導電性インクを塗布し、乾燥した後、熱処理を施す。
(金属粒子の製造方法)
ここで、導電性インクに分散させる金属粒子の製造方法について説明する。上記金属粒子は、高温処理法、液相還元法、気相法等で製造することができる。
液相還元法によって上記金属粒子を製造するためには、例えば水に金属粒子を形成する金属のイオンのもとになる水溶性の金属化合物と分散剤とを溶解すると共に、還元剤を加えて一定時間金属イオンを還元反応させればよい。液相還元法の場合、製造される金属粒子は形状が球状又は粒状で揃っており、しかも微細な粒子とすることができる。上記金属イオンのもとになる水溶性の金属化合物として、例えば銅の場合は、硝酸銅(II)(Cu(NO)、硫酸銅(II)五水和物(CuSO・5HO)等を挙げることができる。また銀の場合は硝酸銀(I)(AgNO)、メタンスルホン酸銀(CHSOAg)等、金の場合はテトラクロロ金(III)酸四水和物(HAuCl・4HO)、ニッケルの場合は塩化ニッケル(II)六水和物(NiCl・6HO)、硝酸ニッケル(II)六水和物(Ni(NO・6HO)等を挙げることができる。他の金属粒子についても、塩化物、硝酸化合物、硫酸化合物等の水溶性の化合物を用いることができる。
液相還元法によって金属粒子を製造する場合の還元剤としては、液相(水溶液)の反応系において、金属イオンを還元及び析出させることができる種々の還元剤を用いることができる。この還元剤として、例えば水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、ヒドラジン、3価のチタンイオンや2価のコバルトイオン等の遷移金属のイオン、アスコルビン酸、グルコースやフルクトース等の還元性糖類、エチレングリコールやグリセリン等の多価アルコールなどを挙げることができる。このうち、3価のチタンイオンが4価に酸化する際の酸化還元作用によって金属イオンを還元し、金属粒子を析出させる方法がチタンレドックス法である。チタンレドックス法で得られる金属粒子は、粒子径が小さくかつ揃っており、さらにチタンレドックス法は金属粒子の形状を球形又は粒状にすることができる。そのため、チタンレドックス法を用いることで、金属粒子がより高密度に充填され、上記第1導電層2をより緻密な層に形成することができる。
金属粒子の粒子径を調整するには、金属化合物、分散剤、還元剤の種類及び配合割合を調整すると共に、金属化合物を還元反応させる際に、攪拌速度、温度、時間、pH等を調整すればよい。例えば反応系のpHは、本実施形態のように微小な粒子径の金属粒子を得るには、7以上13以下とすることが好ましい。このときpH調整剤を用いることで、反応系のpHを上記範囲に調整することができる。このpH調整剤としては、塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等の一般的な酸又はアルカリが使用されるが、特に周辺部材の劣化を防止するために、アルカリ金属やアルカリ土類金属、塩素等のハロゲン元素、硫黄、リン、ホウ素等の不純物元素を含まない硝酸やアンモニアが好ましい。
(導電性インクの調整)
次に、上記導電性インクの調整方法について説明する。上記導電性インクに含まれる分散剤としては、分子量が2,000以上300,000以下で、分散媒中で析出した金属粒子を良好に分散させることができる種々の分散剤を用いることができる。分子量が上記範囲の分散剤を用いることで、金属粒子を分散媒中に良好に分散させることができ、得られる第1導電層2の膜質を緻密でかつ欠陥のないものにすることができる。上記分散剤の分子量が上記下限未満の場合、金属粒子の凝集を防止して分散を維持する効果が十分に得られないおそれがあり、その結果、ベースフィルム1に積層される第1導電層2を緻密で欠陥の少ないものにできないおそれがある。一方、上記分散剤の分子量が上記上限を超える場合、分散剤の嵩が大きすぎ、導電性インクの塗布後に行う熱処理において、金属粒子同士の焼結を阻害してボイドを生じさせるおそれがある。また、分散剤の嵩が大きすぎると、第1導電層2の膜質の緻密さが低下したり、分散剤の分解残渣が導電性を低下させるおそれがある。
上記分散剤は、部品の劣化防止の観点より、硫黄、リン、ホウ素、ハロゲン及びアルカリを含まないものが好ましい。好ましい分散剤としては、分子量が上記範囲にあるもので、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン等のアミン系の高分子分散剤、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース等の分子中にカルボン酸基を有する炭化水素系の高分子分散剤、ポバール(ポリビニルアルコール)、スチレン−マレイン酸共重合体、オレフィン−マレイン酸共重合体、あるいは1分子中にポリエチレンイミン部分とポリエチレンオキサイド部分とを有する共重合体等の極性基を有する高分子分散剤等を挙げることができる。
上記分散剤は、水又は水溶性有機溶媒に溶解した溶液の状態で反応系に添加することもできる。分散剤の含有割合としては、金属粒子100質量部当たり1質量部以上60質量部以下が好ましい。分散剤が金属粒子を取り囲むことで凝集を防止して金属粒子を良好に分散させるが、上記分散剤の含有割合が上記下限未満の場合、この凝集防止効果が不十分となるおそれがある。一方、上記分散剤の含有割合が上記上限を超える場合、導電性インクの塗装後の熱処理時に、過剰の分散剤が金属粒子の焼結を含む焼成を阻害してボイドが発生するおそれがあり、また、高分子分散剤の分解残渣が不純物として第1導電層2中に残存して導電性を低下させるおそれがある。
導電性インクにおける分散媒となる水の含有割合としては、金属粒子100質量部当たり20質量部以上1900質量部以下が好ましい。分散媒の水は、分散剤を十分に膨潤させて分散剤で囲まれた金属粒子を良好に分散させるが、上記水の含有割合が上記下限未満の場合、水によるこの分散剤の膨潤効果が不十分となるおそれがある。一方、上記水の含有割合が上記上限を超える場合、導電性インク中の金属粒子割合が少なくなり、ベースフィルム1の表面に必要な厚みと密度とを有する良好な第1導電層2を形成できないおそれがある。
上記導電性インクに必要に応じて配合する有機溶媒として、水溶性である種々の有機溶媒が使用可能である。その具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールやその他のエステル類、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類等を挙げることができる。
水溶性の有機溶媒の含有割合としては、金属粒子100質量部当たり30質量部以上900質量部以下が好ましい。上記水溶性の有機溶媒の含有割合が上記下限未満の場合、上記有機溶媒による分散液の粘度調整及び蒸気圧調整の効果が十分に得られないおそれがある。一方、上記水溶性の有機溶媒の含有割合が上記上限を超える場合、水による分散剤の膨潤効果が不十分となり、導電性インク中で金属粒子の凝集が生じるおそれがある。
なお、液相還元法で金属粒子を製造する場合、液相(水溶液)の反応系で析出させた金属粒子は、ろ別、洗浄、乾燥、解砕等の工程を経て、一旦粉末状としたものを用いて導電性インクを調整することができる。この場合は、粉末状の金属粒子と、分散媒である水と、分散剤と、必要に応じて水溶性の有機溶媒とを所定の割合で配合し、金属粒子を含む導電性インクとすることができる。このとき、金属粒子を析出させた液相(水溶液)を出発原料として導電性インクを調整することが好ましい。具体的には、析出した金属粒子を含む液相(水溶液)を限外ろ過、遠心分離、水洗、電気透析等の処理に供して不純物を除去し、必要に応じて濃縮して水を除去する。又は、逆に水を加えて金属粒子の濃度を調整した後、さらに必要に応じて水溶性の有機溶媒を所定の割合で配合することによって金属粒子を含む導電性インクを調整する。この方法では、金属粒子の乾燥時の凝集による粗大で不定形な粒子の発生を防止することができ、緻密で均一な第1導電層2を形成し易い。
(導電性インクの塗布)
金属粒子を分散させた導電性インクをベースフィルム1の一方の面に塗布する方法としては、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ダイコート法、スリットコート法、ロールコート法、ディップコート法等の従来公知の塗布法を用いることができる。またスクリーン印刷、ディスペンサ等によりベースフィルム1の一方の面の一部のみに導電性インクを塗布するようにしてもよい。
(熱処理)
導電性インクをベースフィルム1の一方の面に塗布し、乾燥した後、熱処理を行う。ベースフィルム1の一方の面に導電性インクを塗布した後、熱処理をすることで、焼成された塗布層としてベースフィルム1の一方の面に固着された第1導電層2が得られる。熱処理により、塗布された導電性インクに含まれる分散剤やその他の有機物を揮発及び分解させて塗布層から除去することにより、残る金属粒子が焼結状態又は焼結に至る前段階にあって相互に密着して固体接合したような状態となる。
また、第1導電層2のベースフィルム1との界面4近傍では、熱処理によって金属粒子が酸化して、この金属粒子の金属に基づく金属水酸化物又はその金属水酸化物に由来する基の生成を抑えつつ、上記金属に基づく金属酸化物又はその金属酸化物に由来する基が生成される。具体的には、例えば金属粒子として銅を用いた場合、第1導電層2のベースフィルム1との界面近傍に酸化銅及び水酸化銅が生成するが、酸化銅の方が多く生成する。この第1界面4近傍に生成した酸化銅は、ベースフィルム1を構成するポリイミドと強く結合するため、第1導電層2とベースフィルム1との間の密着力が大きくなる。
上記熱処理は、一定量の酸素が含まれる雰囲気下で行う。熱処理時の雰囲気の酸素濃度の下限は、1ppmであり、10ppmがより好ましい。また、上記酸素濃度の上限としては、10,000ppmであり、1,000ppmがより好ましい。上記酸素濃度が上記下限未満の場合、第1導電層2の界面近傍における酸化銅の生成量が少なくなり、酸化銅による第1導電層2とベースフィルム1との密着力の向上効果が十分に得られないおそれがある。一方、上記酸素濃度が上記上限を超える場合、金属粒子が過剰に酸化してしまい第1導電層2の導電性が低下するおそれがある。
上記熱処理の温度の下限としては、150℃が好ましく、200℃がより好ましい。また、上記熱処理の温度の上限としては、500℃が好ましく、400℃がより好ましい。上記熱処理の温度が上記下限未満の場合、第1導電層2の界面4近傍における金属酸化物の生成量が少なくなり、金属酸化物による第1導電層2とベースフィルム1との密着力の向上効果が十分に得られないおそれがある。一方、上記熱処理の温度が上記上限を超える場合、ベースフィルム1がポリイミド等の有機樹脂の場合にベースフィルム1が変形するおそれがある。
<第2導電層形成工程>
上記第2導電層形成工程では、図3Bに示すように、上記第1導電層形成工程でベースフィルム1に積層した第1導電層2のベースフィルム1と反対側の面に、無電解メッキにより第2導電層3を形成する。
なお上記無電解メッキは、例えばクリーナー工程、水洗工程、酸処理工程、水洗工程、プレディップ工程、アクチベーター工程、水洗工程、還元工程、水洗工程、金属層形成工程(化学銅工程、化学ニッケル工程等)、水洗工程、乾燥工程等の処理と共に、無電解メッキを行う。なお、これらの工程のうち、アクチベーター工程は必須の工程ではなく、無電解メッキの際に実施しなくてもよい。
上述したように、無電解メッキに用いる金属として、銅、ニッケル、銀等を用いることができる。例えば銅メッキを行う場合、無電解メッキで用いる銅メッキ液として、微量のニッケルを含有する銅メッキ液を用いる。ニッケル又はニッケル化合物を含有させた銅メッキ液を用いることにより、低応力の第2導電層3を形成することができる。上記銅メッキ液として、例えば100モルの銅に対し0.1モル以上60モル以下のニッケルを含有するものを用いる。また、上記銅メッキ液に、錯化剤、還元剤、pH調整剤等の他の成分を適宜配合させてもよい。
当該プリント配線板用基板の製造方法では、ニッケル又はニッケル化合物を含有するメッキ液を用いて無電解メッキを行うことにより、メッキ液に含まれるニッケル又はニッケル化合物に由来するニッケルが、無電解メッキ時に第1導電層2、第2導電層3及びベースフィルム1に析出する。このニッケルは、界面近傍層6に凝集するように分布するので、当該プリント配線板用基板は、ベースフィルム1及び第1導電層2の残留応力が低減する。特に界面近傍層6の残留応力が大きく低減するので、第1導電層2とベースフィルム1との間の密着力が顕著に向上する。
また、上記無電解メッキで、メッキ金属の析出触媒としてパラジウムを用いてもよい。パラジウムを析出触媒として用いる場合、例えば上記アクチベーター工程において、第1導電層2の表面を塩化パラジウム溶液に接触させることにより第1導電層2表面にパラジウムイオンを吸着させ、上記還元工程において第1導電層2に吸着したパラジウムイオンを金属パラジウムに還元する。そして、例えば無電解銅メッキを行う場合には、上記化学銅工程において、例えば硫酸銅とホルマリンとを含む水溶液に浸積することにより、パラジウムを触媒として第1導電層2表面に銅の皮膜が形成される。また、例えば無電解ニッケルメッキを行う場合には、上記化学ニッケル工程において、例えば硫酸ニッケルと次亜リン酸ナトリウムとを含む水溶液に浸漬することにより、パラジウムを触媒として第1導電層2表面にニッケルの皮膜が形成される。
当該プリント配線板用基板の製造方法では、パラジウムを析出触媒として用いて無電解メッキを行うことにより、第1導電層2に吸着したパラジウムイオンの還元されたパラジウムは、無電解メッキ時に第1導電層2の表面からベースフィルム1へ向かって移動する。このように移動したパラジウムは、その質量割合が、第1導電層2及び第2導電層3よりもベースフィルム1の方が大きくなるよう分布する。パラジウムがベースフィルム1内に多く含まれることになり、ベースフィルム1及び第1導電層2の界面でのメッキ析出がより緻密となるので、ベースフィルム1と第1導電層2との間の密着力がより向上する。
なお、導電層として例えば1μm以上の平均厚みが要求される場合には、無電解メッキをした後、要求される導電層の厚みになるまでさらに電気メッキを行う。この電気メッキは、例えば銅、ニッケル、銀等のメッキする金属に応じた従来公知の電気メッキ浴を用いて、かつ適切な条件を選んで、所定厚の導電層が欠陥なく速やかに形成されるように行うことができる。
〔プリント配線板〕
当該プリント配線板は、図1に示す上記プリント配線板用基板に導電パターンを形成することにより製造される。上記導電パターンは、上記プリント配線板用基板の第1導電層2及び第2導電層3にサブトラクティブ法又はセミアディティブ法を用いて形成される。
〔プリント配線板の製造方法〕
次に、上記プリント配線板用基板を用いる当該プリント配線板の製造方法の実施形態について説明する。ここでは、サブトラクティブ法により導電パターンを形成する場合について説明する。
まず、図4Aに示すように、所定の大きさに調整された上記プリント配線板用基板の一方の面に、感光性のレジスト10を被覆形成する。次に、図4Bに示すように、露光、現像等により、レジスト10に対して導電パターンに対応するパターニングを行う。次に、図4Cに示すように、レジスト10をマスクとしてエッチングにより導電パターン以外の部分の第2導電層3及び第1導電層2を除去する。そして最後に、図4Dに示すように、残ったレジスト10を除去することにより、導電パターン11がベースフィルム1上に形成されたプリント配線板が得られる。
ここでは、サブトラクティブ法により回路を形成するプリント配線板の製造方法について説明したが、セミアディティブ法等、他の公知の製造方法を用いて回路を形成しても当該プリント配線板を製造できる。当該プリント配線板は、上記プリント配線板用基板を用いて製造したものなので、高密度のプリント配線の要求を満たすべく十分に薄く形成されると共に、ベースフィルム1と第1導電層2との密着力が大きく、ベースフィルム1から導電層が剥離し難い。
〔利点〕
当該プリント配線板用基板は、ベースフィルム及び第1導電層の界面近傍において、ニッケルが所定量存在し、第1導電層とベースフィルムとの密着力が大きく、導電層がベースフィルムから剥がれ難い。
また、当該プリント配線板用基板は、接着剤を使用しなくても第1導電層とベースフィルムとの間に大きな密着力が得られるので、導電層とベースフィルムとの密着力が大きく高密度のプリント配線板が低コストで製造できる。
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
上記実施形態では、ベースフィルム1の一方の面に第1導電層2及び第2導電層3を積層する構成としたが、同様の形成方法によりベースフィルムの両面に第1導電層及び第2導電層を積層する構成の両面プリント配線板用基板としてもよい。また、上記実施形態で得たプリント配線板用基板の他方の面に、他の方法で導電層を形成してもよい。例えば、上記プリント配線板用基板の他方の面に、電気メッキにより導電層を形成させてもよい。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例]
第2導電層を形成するための無電解メッキ液に含ませるニッケル量の条件を変えて、実施例として表1の試験No.1〜No.6の6種類のプリント配線板用基板を製造した。
表1の試験No.1に示すプリント配線板用基板の製造は、以下のようにして行った。まず、平均粒子径が60nmの銅粒子を溶媒の水に分散させ、銅濃度が26質量%の導電性インクを作成した。次に、絶縁性を有するベースフィルムとして平均厚み25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社の「カプトンEN−S」)を用い、この導電性インクをポリイミドフィルムの一方の面に塗布し、大気中で乾燥して平均厚み0.15μmの第1導電層を形成した。そして、酸素濃度が100ppmの窒素雰囲気中で30分間、350℃で熱処理を実施した。次に、第1導電層の一方の面に、銅の無電解メッキを行い、無電解メッキによる平均厚み0.4μmの第2導電層を形成した。ここで、無電解メッキに用いる無電解銅メッキ液として、銅100モルに対してニッケル0.1モルを含有するものを用いた。さらに銅の電気メッキを行い、銅で形成される導電層の合計平均厚みが18μmのプリント配線板用基板を得た。
また、無電解メッキに用いる無電解銅メッキ液として、銅100モルに対してニッケル1モルを含有するものを用いた以外は、上述の試験No.1に示すプリント配線板用基板と同様の方法により試験No.2のプリント配線板用基板を得た。また、無電解メッキに用いる無電解銅メッキ液として、銅100モルに対してニッケル20モルを含有するものを用いた以外は、上述の試験No.1に示すプリント配線板用基板と同様の方法により試験No.3のプリント配線板用基板を得た。また、無電解メッキに用いる無電解銅メッキ液として、銅100モルに対してニッケル60モルを含有するものを用いた以外は、上述の試験No.1に示すプリント配線板用基板と同様の方法により試験No.4のプリント配線板用基板を得た。
また、無電解メッキを行う前にアクチベーター工程を実施し、第1導電層を形成したポリイミドフィルムを0.3g/Lの塩化パラジウムに45℃、30秒間浸漬して第1導電層の表面に金属パラジウムを析出させ、その後に無電解メッキを行った以外は、上述の試験No.3に示すプリント配線板用基板と同様の方法により試験No.5のプリント配線板用基板を得た。なお、試験No.5以外のプリント配線板用基板の作成時には、アクチベーター工程を実施していない。
[比較例]
無電解メッキに用いる無電解銅メッキ液にニッケルを含有させなかった以外は、上述の試験No.1に示すプリント配線板用基板と同様の方法により、比較例として試験No.6のプリント配線板用基板を得た。
<密着力評価>
試験No.1〜No.6のプリント配線板用基板について、ポリイミドフィルム及び導電層間のピール強度(g/cm)を測定し、ポリイミドフィルムと導電層との密着力を評価した。ピール強度の測定は、JIS−C6471(1995)に準拠して実施し、導体層をポリイミドフィルムに対して180°方向に引き剥がす方法で測定した。ピール強度の測定結果を表1に示す。
<ニッケル量及びパラジウム量の測定>
試験No.1〜No.6のプリント配線板用基板の断面について、エネルギー分散型X線分析装置(株式会社日立ハイテクノロジーズの走査電子顕微鏡「SU8020」)を用いて、加速電圧3kVのEDXマッピングを観察し、界面近傍層、A層及びB層のニッケル量及びパラジウム量を測定した。各プリント配線板用基板のニッケル量及びパラジウム量の測定結果を表1に示す。
Figure 0006466110
[評価結果]
表1の結果より、試験No.1〜No.5のプリント配線板用基板のピール強度は700g/cm以上と大きく、ポリイミドフィルムと導電層との密着力が大きいことがわかる。これに対し、試験No.6のプリント配線板用基板のピール強度は小さく、ポリイミドフィルムから導電層が剥がれ易いといえる。
試験No.1〜No.5のプリント配線板用基板は、ポリイミドフィルムと導電層との界面近傍に多くのニッケルが存在していることにより、この界面近傍にニッケルが存在しないNo.6のプリント配線板用基板に比べてポリイミドフィルムと導電層との密着力が顕著に大きくなったと考えられる。また、試験No.1〜No.4のプリント配線板用基板のピール強度より、ポリイミドフィルムと導電層との界面近傍のニッケル量が多いほど、ポリイミドフィルムと導電層との密着力が向上するといえる。
アクチベーター工程を実施したことにより、試験No.5のプリント配線板用基板ではA層及びB層にパラジウムが存在している。試験No.3及び試験No.5の結果より、ポリイミドフィルムにパラジウムが存在しても、ニッケルの存在によるポリイミドフィルムと導電層との密着力の向上効果が得られることがわかる。
本発明のプリント配線板用基板、プリント配線板及びプリント配線板用基板の製造方法は、低コストで導電層を十分に薄くできるので、高密度のプリント配線が要求されるプリント配線板等に好適に用いられる。
1 ベースフィルム
2 第1導電層
3 第2導電層
4 第1界面(ベースフィルム及び第1導電層の界面)
5 第2界面(第1導電層及び第2導電層の界面)
6 界面近傍層
7 A層
8 B層
9 C層
10 レジスト
11 導電パターン

Claims (6)

  1. 絶縁性を有するベースフィルムと、
    銅粒子を含む導電性インクの塗布により上記ベースフィルムの少なくとも一方の面に積層される第1導電層と、
    無電解メッキにより上記第1導電層のベースフィルムと反対側の面に積層される第2導電層と
    を備え、
    上記第1導電層、第2導電層及びベースフィルムに上記無電解メッキに由来するニッケルが存在し、
    上記第1導電層及びベースフィルムの界面から500nm以下の界面近傍層におけるニッケル量が、EDX分析による定量で1質量%以上10質量%以下であり、
    上記界面近傍層のニッケルの質量割合が、上記第2導電層の第1導電層との界面から500nm以下のA層のニッケルの質量割合よりも大きく、
    上記無電解メッキがニッケルを含む銅メッキであるプリント配線板用基板。
  2. 上記第1導電層、第2導電層及びベースフィルムにパラジウムが存在し、
    上記ベースフィルムの第1導電層との界面から1μm以下のB層のパラジウムの質量割合が、上記第2導電層の第1導電層との界面から500nm以下のA層のパラジウムの質量割合よりも大きい請求項1に記載のプリント配線板用基板。
  3. 上記金属粒子の平均粒子径が1nm以上500nm以下である請求項1又は請求項2に記載のプリント配線板用基板。
  4. 上記ベースフィルムの第1導電層の積層面に親水化処理が施されている請求項1、請求項2又は請求項3に記載のプリント配線板用基板。
  5. 導電パターンを有するプリント配線板であって、
    上記導電パターンが、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプリント配線板用基板の第1導電層及び第2導電層にサブトラクティブ法又はセミアディティブ法を用いることで形成されているプリント配線板。
  6. 絶縁性を有するベースフィルムの少なくとも一方の面への銅粒子を含む導電性インクの塗布及び加熱により第1導電層を形成する工程と、
    ニッケルを含む銅メッキ液を用い、無電解メッキにより上記第1導電層のベースフィルムと反対側の面に第2導電層を形成する工程と
    を備え、
    上記第1導電層、第2導電層及びベースフィルムに上記無電解メッキに由来するニッケルが存在し、
    上記第1導電層及びベースフィルムの界面から500nm以下の界面近傍層におけるニッケル量が、EDX分析による定量で1質量%以上10質量%以下であり、
    上記界面近傍層のニッケルの質量割合が、上記第2導電層の第1導電層との界面から500nm以下のA層のニッケルの質量割合よりも大きいプリント配線板用基板の製造方法。
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