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JP6447393B2 - 成膜処理装置、成膜処理方法及び記憶媒体 - Google Patents

成膜処理装置、成膜処理方法及び記憶媒体 Download PDF

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Description

本発明は、基板を公転させながら処理ガスを基板に供給することにより成膜処理を行う技術分野に関する。
半導体装置の製造工程においては、エッチングマスクなどを形成するための各種の膜を基板である半導体ウエハ(以下、ウエハと記載する)に成膜するために、例えばALD(Atomic Layer Deposition)が行われる。半導体装置の生産性を高くするために上記のALDは、複数のウエハを載置した回転テーブルを回転させることで当該ウエハを公転させ、当該回転テーブルの径方向に沿うように配置される処理ガスの供給領域(処理領域)を繰り返し通過させる装置によって行われる場合がある。また、上記の各膜の成膜を行うためにはCVD(Chemical Vapor Deposition)が行われる場合があるが、このCVDによる成膜も上記のALDと同様に、ウエハを公転させることで行うことが考えられる。
ところで、成膜後のウエハをエッチングするエッチング装置においては、ウエハの径方向に沿った各部のエッチングレートが互いに異なるようにエッチングが行われる場合がある。そのためウエハの膜厚分布については、同心円状になるように成膜が行われることを要求される場合がある。この同心円状の膜厚分布とは、より具体的には、ウエハの中心から等距離である当該ウエハの周方向に沿った各位置にて膜厚が同じないしは概ね同じであると共に、ウエハの径方向に沿った各位置では互いに異なる膜厚となる膜厚分布である。
しかし、上記のウエハを公転させる成膜装置においては、上記のように回転テーブルの径方向に沿って処理ガスが供給されることから、ウエハに形成される膜厚分布は、回転テーブルの中心側から周縁側に向かうに従って膜厚が変移する膜厚分布となる傾向があり、上記の同心円状の膜厚分布とすることが困難であるという問題があった。特許文献1には、ウエハの面内に所定の温度分布を形成してCVDを行うことで、上記の同心円状の膜厚分布を形成する成膜装置が示されているが、この成膜装置においては成膜処理中にウエハは公転しない。従って、特許文献1は上記の問題を解決できるものではない。
特開2009−170822号公報
本発明はこのような事情の下になされたものであり、回転テーブルにより基板を公転させて成膜処理を行う装置において、同心形状の膜厚分布となるように基板に成膜を行うことができる技術を提供することにある。
本発明の成膜処理装置は、
真空容器内に設けられた回転テーブルの一面側に基板を載置し、前記回転テーブルを回転させることにより基板を公転させながら当該基板に対して処理ガスを供給して成膜処理する成膜処理装置において、
前記真空容器内の基板の熱処理領域全体を加熱する第1の加熱部と、
前記回転テーブルに載置された基板に対応して当該回転テーブルに対向して設けられ、基板を同心形状の面内温度分布で加熱するための第2の加熱部と、
前記回転テーブルの一面側に処理ガスを供給する処理ガス供給部と、
前記回転テーブル上の基板が前記第2の加熱部に対応する位置に置かれるように当該回転テーブルの回転位置を設定し、前記基板を前記第2の加熱部により加熱して当該基板に同心形状の面内温度分布を形成する第1のステップと、次いで前記基板が第2の加熱部から受ける加熱エネルギーを、前記第1のステップよりも小さくした状態で、前記回転テーブルを回転させながら前記処理ガスを供給して基板に対して成膜処理を行う第2のステップと、を実行するように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする。
本発明の成膜処理方法は、真空容器内に設けられた回転テーブルの一面側に基板を載置し、前記回転テーブルを回転させることにより基板を公転させながら当該基板に対して処理ガスを供給して成膜処理する方法において、
第1の加熱部と、前記回転テーブルに載置された基板に対応して当該回転テーブルに対向して設けられた第2の加熱部と、を用い、
前記真空容器内の基板の熱処理領域全体を第1の加熱部により加熱する工程と、
前記回転テーブル上の基板が前記第2の加熱部に対応する位置に置かれるように当該回転テーブルの回転位置を設定し、前記基板を前記第2の加熱部により加熱して当該基板に同心形状の面内温度分布を形成する第1の工程と、
次いで前記基板が第2の加熱部から受ける加熱エネルギーを、前記第1の工程よりも小さくした状態で、前記回転テーブルを回転させながら基板に対して処理ガスを供給して成膜処理を行う第2の工程と、を含むことを特徴とする。
本発明の記憶媒体は、真空容器内に設けられた回転テーブルの一面側に基板を載置し、前記回転テーブルを回転させることにより基板を公転させながら当該基板に対して処理ガスを供給して成膜処理する成膜処理装置に用いられるコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、上記の成膜処理方法を実行するようにステップ群が組まれていることを特徴とする。
本発明は、回転テーブルを回転させることにより基板を公転させながら当該基板に対して処理ガスを供給して成膜処理するにあたって、成膜処理の前に加熱部により基板に同心形状の面内温度分布を形成するように加熱し、次いで当該加熱部から基板が受ける加熱エネルギーを小さくした状態で基板を回転させて成膜処理を行っている。従って基板を公転させた状態で成膜処理を行う装置を用いながら、基板に同心形状の面内膜厚分布を形成することができる。
本発明の成膜装置の縦断側面図である。 前記成膜装置の概略横断斜視図である。 前記成膜装置の横断平面図である。 前記成膜装置に設けられる回転テーブル及び処理容器の天井の周方向に沿った縦断側面図である。 前記成膜装置の回転テーブルの下方側における横断平面図である。 前記成膜装置の動作を説明するための概略縦断側面図である。 前記成膜装置の動作を説明するための概略縦断側面図である。 前記成膜装置の動作を説明するための概略縦断側面図である。 成膜処理されるウエハの状態を示すための模式図である。 成膜処理されるウエハの状態を示すための模式図である。 成膜処理されるウエハの状態を示すための模式図である。 成膜処理されるウエハの状態を示すための模式図である。 成膜処理されるウエハの状態を示すための模式図である。 前記成膜装置に設けられるガスの流れを示すための概略横断平面図である。 成膜処理されるウエハの状態を示すための模式図である。 回転テーブルの他の構成例を示す斜視図である。 評価試験の結果を示すグラフ図である。 評価試験の結果を示すグラフ図である。 評価試験の結果を示すグラフ図である。 評価試験の結果を示すグラフ図である。 評価試験の結果を示すグラフ図である。
本発明の一実施形態であり、基板であるウエハWにALDを行い、TiO(酸化チタン)膜を形成する成膜処理装置1について図1〜図3を参照しながら説明する。この成膜処理装置1においては、円形の基板であるウエハWの面内に同心円状の膜厚分布を形成するために、当該ウエハWの面内に同心円状の温度分布を形成し、そのように温度分布が形成された状態で処理ガスを供給して成膜処理を行う。同心円状の温度分布とは、より具体的にはウエハWの中心から等距離である当該ウエハWの周方向に沿った各位置では同じないしは概ね同じ温度であり、ウエハWの径方向に沿った各位置では互いに異なる温度となる温度分布である。
図1は成膜処理装置1の縦断側面図であり、図2は成膜処理装置1の内部を示す概略斜視図であり、図3は成膜処理装置1の横断平面図である。成膜処理装置1は、概ね円形状の扁平な真空容器(処理容器)11と、真空容器11内に設けられた円板状の水平な回転テーブル2と、を備えている。真空容器11は、天板12と真空容器11の側壁及び底部をなす容器本体13とにより構成されている。図1中14は、容器本体13の下側中央部を塞ぐカバーである。図1中71はガス供給管であり、成膜処理中にカバー14内へパージガスであるN(窒素)ガスを供給し、それによって回転テーブル2の下面側をパージする。
上記の回転テーブル2の下面側中心部には垂直な支持軸21の上端が接続され、支持軸21の下端は、カバー14内に設けられる接離機構である駆動機構22に接続されている。回転テーブル2は駆動機構22によって、図1中に実線で示す上昇位置と二点鎖線で示す下降位置との間で昇降し、且つ当該回転テーブル2の周方向に回転できるように構成されている。回転テーブル2の表面側(一面側)には、当該回転テーブル2の回転方向に沿って5つの円形の凹部23が互いに間隔をおいて形成されており、この凹部23の底面24上にウエハWが水平に載置され、載置されたウエハWは回転テーブル2の回転によって公転する。凹部23の側壁は、底面24上に載置されたウエハWの位置を規制する。底面24上に載置されるウエハWに対して、後述のヒーター43により同心円状の温度分布を形成するために、回転テーブル2は熱伝導率が比較的高い材質、例えば石英により構成することが好ましいが、例えばアルミニウムなどの金属によって構成してもよい。
図3中25で示す孔は、成膜処理装置1に対してウエハWの搬入出を行うウエハ搬送機構26と、凹部23との間でウエハWを移載するための3本の昇降ピン27(図1〜図3では非表示)の昇降路をなし、回転テーブル2を上下方向に穿設されて各底面24に3つずつ開口している。また、真空容器11の側壁には、ウエハWの搬送口15が開口しており、ゲートバルブ16により開閉自在に構成されている。搬送口15を介して、上記のウエハ搬送機構26が、真空容器11の外部と真空容器11内との間で移動し、昇降ピン27を介して搬送口15に臨む位置における凹部23との間でウエハWの受け渡しが行われる。
回転テーブル2の上方には、夫々回転テーブル2の外周から中心へ向かって伸びる棒状の原料ガスノズル31、分離ガスノズル32、酸化ガスノズル33及び分離ガスノズル34が、この順で回転テーブル2の周方向に沿って間隔をおいて配設されている。これらのガスノズル31〜34はその下方に、長さ方向に沿って多数の開口部35を備え、回転テーブル2の径に沿って夫々ガスを供給する。処理ガス供給部である原料ガスノズル31は、成膜を行うための処理ガスとして、原料ガスである例えばチタニウムメチルペンタンジオナトビステトラメチルヘプタンジオナト(Ti(MPD)(THD)))ガスなどのTi(チタン)含有ガスを吐出する。酸化ガスノズル33はTi含有ガスを酸化するための酸化ガスとして、例えばO3(オゾン)ガスを吐出する。分離ガスノズル32、34は例えばN2(窒素)ガスを吐出する。
図4は、回転テーブル2及び前記真空容器11の天板12の周に沿った縦断側面を示している。この図4も参照しながら説明すると、天板12は下方に突出し、回転テーブル2の周方向に沿って形成された扇状の2つの突状部36、36を備え、突状部36、36は当該周方向に互いに間隔をおいて形成されている。前記分離ガスノズル32、34は、突状部36を周方向に分割するように当該突状部36にめり込むように設けられている。上記の原料ガスノズル31及び酸化ガスノズル33は、各突状部36から離れて設けられている。
図4においては、上昇位置、下降位置における回転テーブル2を実線、二点鎖線で夫々表示している。回転テーブル2が上昇位置に位置しているときに、回転テーブル2が回転すると共に、各ガスノズル31〜34からガスが供給される。原料ガスノズル31の下方のガス供給領域を第1の処理領域P1、酸化ガスノズル33の下方のガス供給領域を第2の処理領域P2とする。また、突状部36、36は上昇位置に位置する回転テーブル2に近接する。そのように近接すると共に、分離ガスノズル32、34からN2ガス(分離ガス)が供給されることによって、回転テーブル2と突状部36との間は、処理領域P1、P2の雰囲気を互いに分離する分離領域D、Dとして構成される。
真空容器11の底面において、回転テーブル2の径方向外側には排気口37が2つ開口している。図1に示すように、各排気口37には排気管38の一端が接続されている。各排気管38の他端は合流し、バルブを含む排気量調整部39を介して真空ポンプにより構成される排気機構30に接続される。排気量調整部39により各排気口37からの排気量が調整され、それによって真空容器11内の圧力が調整される。
回転テーブル2の中心部領域C上の空間には、N2ガスが供給されるように構成されている。当該N2ガスは天板12の中央部下方にリング状に突出したリング状突出部28の下方の流路を介して、回転テーブル2の径方向外側にパージガスとして流れる。リング状突出部28の下面は、分離領域Dを形成する突状部36の下面に連続するように構成されている。
図1に示すように、容器本体13の底部には、当該回転テーブル2の回転方向に沿ってヒーター収納空間41を構成する円形リング状の凹部が形成されている。図5は、このヒーター収納空間41を示す平面図である。このヒーター収納空間41には、熱処理領域である真空容器11内全体を加熱するための第1の加熱部であるヒーター42と、真空容器11内を加熱し、且つウエハWへ同心円状の温度分布を形成するための第2の加熱部であるヒーター43とが、回転テーブル2に対向するように設けられている。図中での確認を容易にするために、図5ではヒーター42、43に多数のドットを付して示している。ヒーター42、43は互いに重ならず、横方向に間隔をおいて配置されている。
ヒーター43は、上記の下降位置に位置すると共に回転が停止した状態の回転テーブル2に載置された各ウエハWを加熱し、当該各ウエハWの面内に上記の同心円状の温度分布を形成できるように5つ設けられており、1つのヒーター43は、ヒーター素子43A〜43Eにより構成されている。ヒーター素子43Aは例えば円板状に構成されている。ヒーター素子43B〜43Eは互いにその径が異なる円形リング状に形成され、ヒーター素子43Aの中心を中心とする同心円状に配置されている。43E>43D>43C>43Bの順にリングの径は大きい。ヒーター素子43A〜43Eの出力は個別に制御可能に構成され、この例では43B及び43Cについては互いに同じ温度となり、43D及び43Eについては互いに同じ温度となるように制御される。
図5では、上記の温度分布を形成するために加熱を行うときのウエハWとヒーター素子43A〜43Eとの位置関係を示している。ウエハWの中心部と周縁部との間のリング状の領域を中間部とすると、そのようにウエハWに温度分布を形成する際には、ヒーター素子43A、43B及び43C、43D及び43Eは、夫々中心部、中間部、周縁部の下方に位置し、ヒーター素子43A、43B及び42C、42D及び42Eは互いに異なる温度となる。それによって、ウエハWの中心部、中間部、周縁部が互いに異なる温度に加熱され、当該ウエハWに同心円状の温度分布を形成することができる。図1にH1で示す、このようにウエハWの温度分布が形成されるときの下降位置における回転テーブル2の下面と各ヒーター素子43A〜43Eとの離間距離は、例えば3mm〜4mmである。また、図1にH2で示す、上昇位置における回転テーブル2の下面とヒーター素子43A〜43Eとの離間距離は、例えば10mm〜15mmである。
図5に戻って、ヒーター42について説明する。ヒーター42は、上記のヒーター素子43Eが設けられる領域の外側を、回転テーブル2の回転中心を中心とする同心円に沿って配置される曲線状の多数のヒーター素子により構成されている。ヒーター42は真空容器11内全体を加熱できるように、例えばヒーター42を構成するヒーター素子のうち、ヒーター収納空間41の最も外側に配置されたヒーター素子(最外ヒーター素子とする)は、回転テーブル2の周縁部下方に位置し、ヒーター収納空間41を最も内側に配置されたヒーター素子(最内ヒーター素子とする)は、上記のヒーター素子43Eの最も回転テーブル2の回転中心に近い位置よりも内側に位置している。そして、ヒーター収納空間41を径方向に沿って見て、最内ヒーター素子と、最外ヒーター素子との間には、ヒーター42を構成する他のヒーター素子が複数配置されている。なお、既述の昇降ピン27は、昇降中にヒーター42、43に干渉しないように配置されている。
また、ヒーター収納空間41を形成する凹部を上側から塞ぐようにプレート44が設けられており(図1参照)、当該プレート44によって当該ヒーター収納空間41が、原料ガス及び酸化ガスが供給される雰囲気から区画されている。図示は省略しているが、ウエハWの処理中にヒーター収納空間41にパージガスを供給し、当該収納空間41に処理ガスの侵入を防ぐためのガス供給管が、容器本体13の下部に接続されている。
この成膜処理装置1には、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部10が設けられている。この制御部10には、後述のように成膜処理を実行するためのプログラムが格納されている。前記プログラムは、成膜処理装置1の各部に制御信号を送信して各部の動作を制御する。具体的には、図示しないガス供給源から各ガスノズル31〜34及び中心部領域Cなどに対する各ガスの給断、駆動機構22による回転テーブル2の昇降及び回転テーブル2の回転速度の制御、排気量調整部39による各真空排気口37、37からの排気量の調整、ヒーター42、43への電力供給によるウエハWの各部及び真空容器11内の温度制御などの各動作が制御される。
上記のプログラムにおいては、これらの動作を制御して、後述の各処理が実行されるようにステップ群が組まれている。また、当該プログラムは、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体から制御部10内にインストールされる。
続いて、成膜処理装置1により行われる動作について図6〜図8の概略縦断側面図を参照しながら説明する。また、成膜処理装置1の動作中のウエハWの状態を示す説明図である図9〜図13についても適宜参照しながら説明する。図9〜図13のうち図12を除いた各図では、便宜上、ウエハWの中心部、中間部、周縁部をW1、W2、W3として夫々示す。また、図9〜図11、図13では、これらW1〜W3の温度、あるいはヒーター素子の温度を3段階で概略的に表すように大、中、小の文字を付すことで、W1〜W3間での温度の分布、あるいは各ヒーター素子43A〜43E間での温度の分布について示している。この図6〜図13で説明する成膜処理では、ウエハWの中心側の膜厚が周縁側の膜厚よりも大きい同心円状の膜厚分布となるように、ヒーター43の温度が制御される。
先ず、回転テーブル2が下降位置に位置する状態で、ヒーター素子43A〜43Eの温度が上昇し、その温度について43A<43B=43C<43D=43Eとなる。またヒーター42も温度が上昇し、これらヒーター42、43によって、真空容器11内全体が加熱される。そして、ゲートバルブ16が開放された状態で、昇降ピン27の昇降と回転テーブル2の断続的な回転との協働により、ウエハWを保持した搬送機構26が真空容器11内への進入する度に、当該ウエハWが凹部23内へと移載される(図6)。そして、5つの凹部23にウエハWが収納され、搬送機構26が真空容器11から退避すると、ゲートバルブ16が閉じられる。
その後、各ウエハWが各ヒーター43上に位置するように回転テーブル2が回転した後、当該回転テーブル2の回転が停止する(図7)。つまり、図5で説明した位置でウエハWが静止する。排気口37から排気されることで真空容器11内が所定の圧力の真空雰囲気になるように調整される。この圧力調整に並行して、ヒーター43により回転テーブル2の凹部23の底面24が加熱され、それによってウエハWが加熱される。回転テーブル2が下降位置にあり、回転テーブル2とヒーター素子43A〜43Eとの距離が比較的近いため、ウエハWは回転テーブル2を介してヒーター素子43A〜43Eから比較的大きな加熱エネルギーを受ける。そして、上記のようにヒーター素子43A〜43E間で温度分布が形成されているため、ウエハWの面内には、周縁側の温度が中心側の温度よりも高い同心円状の温度分布が形成される(図9)。例えば中心部W1が170℃、周縁部W3が177℃、中間部W2が170℃より大きく177℃より小さい温度になるように、ウエハWが加熱される。
このようにウエハWに同心円状の温度分布が形成された状態で回転テーブル2が上昇位置へと移動し、然る後、平面視時計回りに回転する(図8)。この回転テーブル2の上昇によって、ウエハWがヒーター素子43A〜43Eから受ける加熱エネルギーが減少する。例えばヒーター素子43A〜43Eの温度は、回転テーブル2の上昇位置への移動後も下降位置にあるときと同じ温度に維持されるが、回転テーブル2とヒーター43との距離が大きくなったことにより、ヒーター素子43A〜43Eの温度の影響を回転テーブル2ひいてはウエハWが受け難くなり、上記のようにウエハWの面内に形成された温度分布が維持される(図10)。そして、分離ガスノズル32、34及び中心部領域Cから所定の流量でN2ガスが供給され、原料ガスノズル31、酸化ガスノズル33から例えばTi含有ガス、O3ガスが夫々供給される。
そして、温度分布が形成されているウエハWは、反応ガスノズル31の下方の第1の処理領域P1と酸化ガスノズル33の下方の第2の処理領域P2とを交互に繰り返し通過する(図11)。それによって、ウエハWへのTi含有ガスの吸着と、Oガスによる吸着されたTi含有ガスの酸化によるTiOの分子層の形成とからなるサイクルが繰り返し行われ、この分子層が積層される。このALDのサイクルが行われている間、ウエハWの面内には上記の温度分布が形成されていることにより、ウエハWの中心側では周縁側に比べてTi含有ガスの吸着量が多くなり、1サイクルで形成されるTiOの分子層の厚さが大きい。そのような分子層が上記のように積層されることで、中心側の膜厚が周縁側の膜厚よりも大きい同心円状のTiO2膜20が形成される(図12)。
図14では上記のTi含有ガスの吸着と酸化とのサイクルが行われているときの真空容器11内の各ガスの流れを矢印で示している。分離ガスノズル32、34から前記分離領域Dに供給された分離ガスであるNガスが、当該分離領域Dを周方向に広がり、回転テーブル2上でTi含有ガスとO3ガスとが混合されることを防ぐ。また、中心部領域Cに供給されたN2ガスが回転テーブル2の径方向外側に供給され、前記中心部領域CでのTi含有ガスとO3ガスとの混合を防ぐことが出来る。また、このサイクルが行われるときには、既述したようにヒーター収納空間41及び回転テーブル2の裏面側にもN2ガスが供給され、原料ガス及び酸化ガスがパージされる。
上記のサイクルが行われている間、ウエハWの面内における熱の移動によって、ウエハWの面内各部の温度は次第に均一化する。そこで、例えば回転テーブル2の上昇位置への移動から所定の時間経過後にTi含有ガス及びOガスの供給が停止し、回転テーブル2が下降位置へ移動して、各ヒーター43上に各ウエハWが位置するように回転テーブル2の回転が停止する。つまり、ウエハWは再度上記の図5、図7で示した位置で静止し、ヒーター43によってウエハWの面内に既述した同心円状の温度分布が形成される。
然る後、回転テーブル2が再度、図8で示したように上昇位置へ移動し、時計回りに回転する。そしてガスノズル31、33からTi含有ガス、O3ガスの供給が夫々再開されて、ウエハWにTiOの分子層が積層され、ウエハWの面内各部でTiO2膜の膜厚が上昇する。ここでもウエハWには上記のように温度分布が形成されているため、積層される分子層の厚さはウエハWの周縁側よりも中心側の方が大きくなるので、同心円状の膜厚分布とされつつ、ウエハWの面内各部でTiO2膜20の膜厚が上昇する。
回転テーブル2の再度の上昇位置への移動から所定の時間が経過し、ウエハWの面内各部が所望の膜厚になると、分離ガスノズル32、34及び中心部領域CへのN2ガスの供給量が低下して所定の流量となり、ガスノズル31、33から処理ガスの供給が停止する。回転テーブル2が下降位置へ移動すると共に、各ヒーター素子43A〜43Eの温度が、上記のウエハWに温度分布を形成したときにヒーター素子43A〜43Eの中で最高温度とされたヒーター素子43D、43Eの温度とされる。そして、各ヒーター43上に各ウエハWが位置するように回転テーブル2が回転した後で停止する。つまり、既述の温度分布が形成された図5、図7の位置でウエハWが静止する。
ヒーター43の温度が上記のように調整されていることで、ウエハWの面内全体が、温度分布形成時のウエハWの面内の最高温度とされる。上記のように温度分布形成時にはW1〜W3のうち周縁部W3が177℃と、最も高い温度とされたので、ここではウエハW全体が177℃に加熱される(図13)。このようにウエハW面内全体が加熱されることで、温度分布を形成して成膜したことにより、中心部W1と中間部W2と周縁部W3との間でTiO2膜20の膜質に差があったとしても、この差が緩和ないしは解消される。そして、回転テーブル2の回転停止から所定の時間経過後、ゲートバルブ16が開放されて昇降ピン27の昇降と回転テーブル2の間欠的な回転との協働により、真空容器11内に進入した搬送機構26に順次各ウエハWが受け渡されて、真空容器11から搬出される。なお、上記のW1〜W3間の膜質差を緩和するための加熱時には、温度分布形成時のウエハWの面内の最高温度である177℃よりもウエハWの面内全体が高い温度となるように、各ヒーター素子43A〜43Eの温度を制御してもよい。
この成膜処理装置1によれば、回転テーブル2を回転させることによりウエハWを公転させながら当該ウエハWに対して原料ガス及び酸化ガスを供給して成膜処理を行うにあたり、原料ガス及び酸化ガスを供給する前にヒーター43により下降位置における回転テーブル2上のウエハWに同心円状の面内温度分布が形成されるようにウエハWを加熱するステップが行われる。次いで回転テーブル2を上昇位置に移動させ、ウエハWが受ける加熱エネルギーを小さくした状態で、当該ウエハWを公転させると共に上記の原料ガス及び酸化ガスを当該ウエハWに供給して成膜するステップが行われる。それによって、同心円状の膜厚分布となるようにウエハWに成膜を行うことができる。
上記の例では、ウエハWの中心部の方が周縁部よりも小さい同心円状の膜厚分布となるようにTiO膜20を形成する例を示したが、図15に示すようにウエハWの周縁側の膜厚の方が中心側の膜厚よりも小さい同心円状の膜厚分布となるようにTiO膜20を成膜することもできる。その場合は、上記の成膜処理において、ウエハWの面内に同心円状の温度分布を形成する際に、ウエハWの中心から周縁に向かうに従って温度が高くなるようにウエハWに温度分布を形成する代わりに、ウエハWの中心から周縁に向かうに従って温度が低くなるようにウエハWに温度分布を形成する。具体的には例えば、ヒーター素子43A〜43Eの温度について43A>43B=43C>43D=43Eとなるように制御する。それによって、一例としては、ウエハWの中心部W1を170℃、周縁部W3を163℃、中間部W2を170℃より小さく163℃より高い温度にする。
上記の成膜処理では、ヒーター43によりウエハWに同心円状の温度分布を形成する工程と、ヒーター43からウエハWが受けるエネルギーを温度分布形成時よりも小さくした状態で回転テーブル2を回転させて各ガスによりTiO2膜を形成する工程と、を2回繰り返して行っているが、3回以上繰り返し行ってもよい。また、所望の膜厚を得ることができるように、十分な時間ウエハWの温度分布が維持できれば、そのような温度分布の形成工程とTiO2膜を形成する工程とを繰り返し複数回行わず、各工程を1回のみ行うようにしてもよい。
ところで、ウエハWに同心円状の温度分布が形成された後、当該温度分布が形成された状態が保たれるようにウエハWがヒーター43から受ける加熱エネルギーを小さくするためには、真空容器11内で回転テーブル2の高さが固定された構成としてもよい。その場合は、例えばヒーター43の高さが昇降機構により変更されることで、ヒーター43とウエハWとの離間距離が変更されるように装置が構成される。
また、このウエハWへの同心円状の温度分布形成後、当該ウエハWがヒーター43から受ける加熱エネルギーを小さくするためには、上記の回転テーブル2とヒーター43との離隔距離を変更することには限られない。例えばウエハWに温度分布を形成した後、ヒーター43の各ヒーター素子43A〜43Eの各温度を、当該温度分布形成時の各ヒーター素子43A〜43Eの各温度よりも低下させる、即ち発熱量を低下させることで、ウエハWへ供給する加熱エネルギーを低下させるようにしてもよい。そのように温度を低下させた各ヒーター素子43A〜43Eについては、互いに同じ温度であってもよいし、ウエハWの温度分布形成時と同様にヒーター素子間の温度に差があってもよい。そのようにウエハWの温度分布形成後にヒーター素子43A〜43Eの温度を低下させるために、ヒーター素子43A〜43Eへの電力供給を停止し、上記のALDのサイクルの実行中は、ヒーター42のみによって真空容器11内を加熱するようにしてもよい。
また、ウエハWに同心円状の温度分布を形成するためには、ヒーター素子43A〜43E間に温度分布を形成することには限られない。例えば、図16は回転テーブル2の凹部23の底面24は、ウエハWの中心部W1が載置される載置部51、中間部W2が載置される載置部52、周縁部W3が載置される載置部53により構成されており、これら載置部51〜53は、熱容量が互いに異なる材質により構成されている。このように載置部51〜53を設けた場合、ウエハWに同心円状の温度分布を形成する際には、例えば既述のように回転テーブル2が下降位置に位置すると共にウエハWがヒーター素子43A〜43E上に位置したとき、ヒーター素子43A〜43Eは例えば同じ温度になるように制御される。
そのようにヒーター素子43A〜43Eが同じ温度であっても載置部51〜53間の放射率が異なることで、載置部51〜53は互いに異なる温度に加熱される。それによってウエハWの中心部W1、中間部W2、周縁部W3が互いに異なる温度に加熱されて、載置部51〜53上のウエハWに同心円状の温度分布が形成される。例えば、図13で示した中心側の膜厚が大きいTiO2膜20を成膜するとした場合、載置部51を構成する材質としてはAl(アルミニウム):0.04(38℃)−0.08(538℃)、載置部52を構成する材質としてはSUS(ステンレス鋼):0.44(216℃)−0.36(490℃)、載置部53を構成する材質としては石英:0.92(260℃)−0.42(816℃)が用いられる。なお、上記のAl、SUS、石英について、夫々「:」の後には、これらの各材質が持ち得る放射率の範囲を記載している。また、括弧内には放射率が括弧の直前に記載された数値となるときの各材質の温度を記載している。
また、回転テーブル2の下方からウエハWを加熱して上記の同心円状の温度分布を形成することには限られない。例えば天板12に回転テーブル2に対向するようにランプヒーターを設け、下方に向けて光を照射することでウエハWを加熱し、温度分布を形成してもよい。例えばこのランプヒーターによる温度分布形成時には回転テーブル2は上昇位置に位置した状態で回転停止し、温度分布形成後は回転テーブル2が上昇位置に位置したまま回転すると共にランプヒーターの出力が低下し、ウエハWへの熱エネルギーの供給量が低下して、既述のようにALDのサイクルが行われる。
一例として、TiO膜20の形成について説明したが、ウエハWに形成する膜としてはTiOに限られない。例えば、原料ガスとして上記のTi含有ガスの代わりにBTBAS(ビスタ−シャルブチルアミノシラン)などのSi(シリコン)含有ガスを用いてSiO(酸化シリコン)膜を形成してもよい。また、本発明は基板の面内の温度によって当該基板への処理ガスの吸着量を調整できるものに適用することができる。従って、本発明はALDにより成膜を行う成膜装置に適用することには限られず、CVDにより成膜を行う装置にも適用することができる。
上記の例では、ウエハWの面内の3つの領域を夫々異なる温度に加熱しているが、より多くの領域を異なる温度に加熱して温度分布を形成してもよい。例えば、ヒーター素子43A〜43Eの全てが互いに異なる温度になるように制御し、ヒーター素子43A〜43Eに夫々対応するウエハWの各部が互いに異なる温度になるように加熱してもよい。また、ウエハWの中心部加熱用のヒーター素子と、周縁部加熱用のヒーター素子との2つのみを設けて、ウエハWに同心円状の温度分布を形成してもよい。
ところで、本発明は角型の基板を処理する場合にも適用することができる。その場合は、例えばヒーター43の各ヒーター素子43B〜43Eを円形リング状とする代わりに、角型基板の周に沿った角形リング状とすればよい。つまり、本発明は、基板に同心形状の面内温度分布を形成し、それによって同心形状の膜厚分布を形成することができる。この同心形状の面内温度分布には、幾何学的に同心形状であることに限られず、基板の周方向に概ね同じ温度の領域が形成され、このような領域が基板の径方向で見たときに複数存在する場合についても含まれる。
また、既述した装置の各構成例は互いに組み合わせることができる。具体的には、例えば既述のように互いに材質が異なる載置部51〜53を設けた上で、ヒーター素子43A〜43E間で温度分布を形成し、ウエハWに同心円状の温度分布を形成してもよい。また、ウエハWに供給されるヒーター43の加熱エネルギーを減少させるために、ヒーター43の出力を低下させると共に回転テーブル2を上昇位置に移動させてもよい。
(評価試験)
評価試験1
評価試験1−1として、既述した成膜処理装置1の成膜処理と略同様の成膜処理によってウエハWにTiO膜を形成した。この評価試験1−1の成膜処理では、上記の成膜処理との差異点として、既述のALDのサイクル実施時に、ウエハWに同心円状の温度分布は形成していない。また、この評価試験1−1の成膜処理では処理を行うたびに、上記のサイクル実施中のウエハWの温度を150℃〜180℃の範囲内で変更した。各成膜処理後のウエハWについては、TiO膜の膜厚を測定し、測定された膜厚を成膜を行った時間で除したデポレート(単位:nm/分)を算出した。
また、評価試験1−2として、TiO膜の代わりにSiO膜を形成したこと、及び成膜処理毎にウエハWの温度を50℃〜70℃の範囲内で変更したことを除いては、評価試験1−1と同様に試験を行った。さらに、評価試験1−3として、TiO2膜の代わりにSiO2膜を形成したこと、及び成膜処理毎にウエハWの温度を590℃〜637℃の範囲内で変更したことを除いては、評価試験1−1と同様に試験を行った。
評価試験1−1で、各ウエハWから算出されたデポレートは5.905nm/分〜5.406nm/分の範囲内の値となり、温度が大きくなるほどデポレートが小さくなった。取得されたデポレートのうちの一部を示すと、ウエハWの温度150℃、160℃、170℃、180℃であるときに、夫々デポレートは5.905nm/分、5.726nm/分、5.560nm/分、5.406nm/分であった。
評価試験1−2で、各ウエハWから算出されたデポレートは33.401nm/分〜29.534nm/分の範囲内の値となった。図17の片対数グラフは、この評価試験1−2の結果から得られたグラフであり、縦軸はデポレート、横軸は1000/(ウエハWの温度(単位:K))である。縦軸の値をY、横軸の値をXとしたときに測定結果から得られる近似式はY=4.741e0.6817Xであり、温度が大きくなるほどデポレートが小さくなる傾向が示された。
評価試験1−3で、各ウエハWから算出されたデポレートは8.187nm/分〜8.657nm/分の範囲内の値となった。図18の片対数グラフは、この評価試験1−3の結果を、図17の片対数グラフと同様に示したものである。グラフの縦軸の値をY、横軸の値をXとして、測定結果から得られる近似式はY=24.202e―0.932Xであり、この近似式の決定係数Rは0.9209である。グラフに示されるように、この評価試験1−3では温度が大きくなるほど、デポレートが大きくなる傾向が示された。このように評価試験1−1〜1−3の結果から、デポレートはウエハWの温度に対して依存性が有ることが示されている。従って、図6〜図13で説明したように、ウエハWの面内に温度分布を制御することで、ウエハWの面内各部の膜厚を制御することができることが推定される。
評価試験2
評価試験2−1〜2−3として、図1で示した成膜処理装置1と略同様に構成された成膜処理装置の回転テーブル2にウエハWを載置してヒーターで加熱した後に、昇降ピン27によってヒーターとウエハWとの距離を変更し、然る後にヒーターへの電力供給を停止させた。このように昇降ピン27及びヒーターの動作を制御する一方で、ウエハWの各部に設けられた熱電対を用いて当該ウエハWの各部の温度の推移を調べた。この評価試験2の成膜処理装置では、ヒーター43が設けられず、ヒーター42を回転テーブル2の周方向に沿って同心円状に形成し、上記のウエハWの加熱を行った。
評価試験2−1、2−2、2−3において、ヒーター42の動作中、回転テーブル2に載置されているときのウエハWの中心部の温度が夫々200℃、400℃、550℃になるように当該ヒーター42の出力が設定された。また、ウエハWの温度の測定は、ウエハWの中心部、ウエハWにおける回転テーブル2の中心側の端部(一端部とする)、ウエハWにおける回転テーブル2の周縁側の端部(他端部とする)の3箇所について行い、温度の測定中、回転テーブル2は静止させた。ヒーター42の動作中にウエハWが回転テーブル2に載置されているときに、ウエハWの一端部の温度はウエハWの中心部の温度よりも高く、ウエハWの他端部の温度はウエハWの中心部の温度よりも低くなるように、ヒーター42の出力を制御した。
この評価試験2で用いた成膜処理装置について、ヒーターの構成以外の成膜処理装置1との差異点を挙げると、ガスノズル31からTi含有ガスの代わりに原料ガスであるSiHClガスを供給すること、回転テーブル2の周方向に間隔をおいてガスノズル33が2本設けられていること、各ガスノズル33からOガスの代わりに原料ガスを窒化するためのN2ガスを供給すること、及び各ガスノズル33によりN2ガスが供給される領域にプラズマを形成するプラズマ形成部が設けられることが挙げられる。ただし、ウエハの温度の測定中に上記のプラズマは形成していない。また2つのガスノズル33は、一の分離領域Dから回転テーブル2の周方向に沿って見て他の分離領域Dに至るまでの間に設けられている。
上記の温度測定中、真空容器11内の圧力は1.8Torr(240Pa)になるように設定され、真空容器11の壁部に設けられる図示しない流路には冷媒を供給して、当該壁部が85℃になるように冷却した。温度測定中において成膜処理装置の各部に供給したガスの流量を説明すると、各ガスノズル33には5000sccmのN2ガスを供給し、中心部領域Cには1000sccmのN2ガスを供給し、ガスノズル32、34には1000sccmのN2ガスを夫々供給した。さらに、固体のSiHClが貯留されたタンクにN2ガスを1000sccmで供給してSiHClを気化させて生成したSiHClガスを、そのようにSiHClを気化させるために用いたN2ガスと共にガスノズル31に供給した。
図19、図20、図21は、評価試験2−1、2−2、2−3の結果を夫々示すグラフである。各グラフについて、縦軸は測定されたウエハWの温度(単位:℃)を示し、横軸は温度の測定が開始されてからの経過時間(単位:秒)を示している。グラフ中一点鎖線、実線、点線で、ウエハWの一端部、中心部、他端部の温度を夫々示している。グラフ中、時刻t1は昇降ピン27が上昇した時刻である。この昇降ピン27の上昇によって、ウエハWが回転テーブル2から浮き上がり、ウエハWとヒーター42との距離が大きくなる。時刻t1の後の時刻t2は、昇降ピン27が下降した時刻である。この昇降ピン27の下降によって、ウエハWは再度回転テーブル2に載置される。時刻t2の後の時刻t3は、ヒーター42への電力供給を停止させた時刻である。
評価試験2−1〜2−3において、時刻t1から時刻t2に至るまでと、時刻t3以降とにおいては、グラフに示すように、ウエハWの中心部、一端部、他端部との間の温度差が次第に小さくなると共に、これら中心部、一端部、他端部の温度が次第に低下する。評価試験2−1では時刻t1におけるウエハWの一端部と中心部との温度差(A1とする)は26.3℃、ウエハWの他端部と中心部との温度差(A2とする)は20.2℃であった。そして、ウエハWの中心部と一端部とについて、時刻t1における温度差よりも2℃小さくなる時刻t1からの経過時間(B1とする)は、5秒であった。また、ウエハWの周縁部と中心部とについて、時刻t1における温度差よりも2℃小さくなる時刻t1からの経過時間(B2とする)は、9秒であった。
また、評価試験2−1では時刻t3において、ウエハWの一端部と中心部との温度差(A3とする)は27.3℃、ウエハWの他端部と中心部との温度差(A4とする)は19.7℃であった。そして、ウエハWの中心部と一端部とについて、時刻t3における温度差よりも2℃小さくなる時刻t3からの経過時間(B3とする)は、1103秒であった。また、ウエハWの周縁部と中心部とについて、時刻t3における温度差よりも2℃小さくなる時刻t3からの経過時間(B4とする)は、1409秒であった。評価試験2−2では、温度差A1、A2、A3、A4は、夫々10.5℃、36.0℃、12.7℃、32.8℃であり、経過時間B1、B2、B3、B4は、夫々3秒、6秒、44秒、160秒であった。評価試験2−3では、温度差A1、A2、A3、A4は、夫々17.1℃、102.1℃、18.8℃、98.3℃であり、経過時間B1、B2、B3、B4は、夫々4秒、18秒、3秒、8秒であった。
また、時刻t1からウエハWの一端部の温度が2℃下がるまでの経過時間をC1とし、そのように2℃下がったときのウエハの一端部とウエハWの中心部との温度差をD1、ウエハの他端部とウエハWの中心部との温度差をD2とする。また、時刻t3からウエハWの一端部の温度が2℃下がるまでの経過時間をC2とし、そのように2℃下がったときのウエハの一端部とウエハWの中心部との温度差をD3、ウエハの他端部とウエハWの中心部との温度差をD4とする。評価試験2−1では、C1、C2、D1、D2、D3、D4は、夫々5秒、168秒、24.7℃、18.2℃、27.3℃、19.9℃であった。評価試験2−2では、C1、C2、D1、D2、D3、D4は、夫々3秒、130秒、8.5℃、34.1℃、9.1℃、34.0℃であった。評価試験2−3では、C1、C2、D1、D2、D3、D4は、夫々4秒、3秒、15.1℃、100.4℃、16.8℃、98.0℃であった。
このように時刻t1、t3の後、しばらくの間はウエハWの各部の温度及びウエハWの各部の温度差は維持される。特に評価試験2−1、2−2において時刻t3の後、ウエハWの各部の温度は比較的長い時間下がり難く、且つウエハWの各部の温度差が比較的長い時間維持されていることが分かる。これは、ヒーターによって加熱されているときのウエハWの温度が比較的低いことで、既述のように冷却されている真空容器11の側壁の影響を受け難かったためである。この評価試験2の結果から、発明の実施の形態で説明したように、ウエハWに温度分布を形成し、当該温度分布が維持された状態で成膜を行うことが可能であることが分かる。
W ウエハ
1 成膜処理装置
10 制御部
11 真空容器
2 回転テーブル
22 駆動機構
23 凹部
31 原料ガスノズル
42、43 ヒーター
43A〜43E ヒーター素子

Claims (7)

  1. 真空容器内に設けられた回転テーブルの一面側に基板を載置し、前記回転テーブルを回転させることにより基板を公転させながら当該基板に対して処理ガスを供給して成膜処理する成膜処理装置において、
    前記真空容器内の基板の熱処理領域全体を加熱する第1の加熱部と、
    前記回転テーブルに載置された基板に対応して当該回転テーブルに対向して設けられ、基板を同心形状の面内温度分布で加熱するための第2の加熱部と、
    前記回転テーブルの一面側に処理ガスを供給する処理ガス供給部と、
    前記回転テーブル上の基板が前記第2の加熱部に対応する位置に置かれるように当該回転テーブルの回転位置を設定し、前記基板を前記第2の加熱部により加熱して当該基板に同心形状の面内温度分布を形成する第1のステップと、次いで前記基板が第2の加熱部から受ける加熱エネルギーを、前記第1のステップよりも小さくした状態で、前記回転テーブルを回転させながら前記処理ガスを供給して基板に対して成膜処理を行う第2のステップと、を実行するように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする成膜処理装置。
  2. 前記回転テーブルを前記第2の加熱部に対して相対的に接近、離隔させるための接離機構を備え、
    前記回転テーブルと前記第2の加熱部との間の離間距離は、前記第1のステップよりも第2のステップの方が大きいことを特徴とする請求項1記載の成膜処理装置。
  3. 前記第2の加熱部の発熱量は、前記第1のステップよりも第2のステップの方が小さいことを特徴とする請求項1または2記載の成膜処理装置。
  4. 前記制御部は、前記第1のステップ及び第2のステップを繰り返し行うように制御信号を出力することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の成膜処理装置。
  5. 前記制御部は、前記成膜処理後の基板を真空容器から搬出する前に、前記回転テーブル上の基板全体を、前記第1のステップ時において同心形状の面内温度分布を形成したときの基板面内における最高温度以上の温度に前記第2の加熱部により加熱するステップを実行するように制御信号を出力することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の成膜処理装置。
  6. 真空容器内に設けられた回転テーブルの一面側に基板を載置し、前記回転テーブルを回転させることにより基板を公転させながら当該基板に対して処理ガスを供給して成膜処理する方法において、
    第1の加熱部と、前記回転テーブルに載置された基板に対応して当該回転テーブルに対向して設けられた第2の加熱部と、を用い、
    前記真空容器内の基板の熱処理領域全体を第1の加熱部により加熱する工程と、
    前記回転テーブル上の基板が前記第2の加熱部に対応する位置に置かれるように当該回転テーブルの回転位置を設定し、前記基板を前記第2の加熱部により加熱して当該基板に同心形状の面内温度分布を形成する第1の工程と、
    次いで前記基板が第2の加熱部から受ける加熱エネルギーを、前記第1の工程よりも小さくした状態で、前記回転テーブルを回転させながら基板に対して処理ガスを供給して成膜処理を行う第2の工程と、を含むことを特徴とする成膜処理方法。
  7. 真空容器内に設けられた回転テーブルの一面側に基板を載置し、前記回転テーブルを回転させることにより基板を公転させながら当該基板に対して処理ガスを供給して成膜処理する成膜処理装置に用いられるコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体であって、
    前記コンピュータプログラムは、請求項6記載の成膜処理方法を実行するようにステップ群が組まれていることを特徴とする記憶媒体。
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