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JP6324204B2 - トンネル覆工用コンクリート組成物およびその製造方法 - Google Patents

トンネル覆工用コンクリート組成物およびその製造方法 Download PDF

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JP6324204B2 JP2014100918A JP2014100918A JP6324204B2 JP 6324204 B2 JP6324204 B2 JP 6324204B2 JP 2014100918 A JP2014100918 A JP 2014100918A JP 2014100918 A JP2014100918 A JP 2014100918A JP 6324204 B2 JP6324204 B2 JP 6324204B2
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Description

本発明は、セメント添加剤を使用したトンネル覆工用コンクリート組成物に関するものである。
トンネル覆工工事において、効率性や省力化の観点から、中流動コンクリートの適用事例が増えてきている。中流動コンクリートは、スランプ値が15〜18cmの普通コンクリートとスランプフロー値が65cm程度の高流動コンクリートの中間的な性能を持つコンクリートであって、普通コンクリートよりも流動性が高く、振動締固めの軽減、すなわち施工の省力化の効果を併せ持つコンクリートである。
中流動覆工コンクリートの性能としては、前記の施工の省力化のみならず、品質管理の容易さも求められる(非特許文献1)。より具体的には、山岳など遠隔地の施工現場においても製造や供給が可能である、すなわち様々な骨材でも使用可能であること、レディミクストコンクリート工場から施工現場までのコンクリートの品質が変動しないことが求められる。また、トンネル内の狭い施工箇所においてもポンプ圧送が可能であり、少ない振動による締固めが可能であり、且つ、ブリーディングなどの材料分離抵抗性に優れる適度な粘性を持つコンクリートが求められる。大別すると、通常のコンクリートよりも粉体量を増加させた粉体系中流動覆工コンクリートと、増粘剤等の粘性を調整する薬剤を添加させた増粘剤系中流動覆工コンクリートがある。
粉体系中流動覆工コンクリートとは、水、セメント、細骨材、粗骨材およびセメント添加剤を使用した普通コンクリートに、石灰石微粉末およびフライアッシュ等の粉体を追加して製造され、スランプが18.5〜23.5cmまたはスランプフローの所定値が35〜50cmのコンクリートである。例えば、この粉体系中流動コンクリートと、トンネルの周方向および長さ方向に間隔を保って配置された複数の型枠振動機による締固めとを組み合わせることで、施工性を向上させる方法が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、特許文献1の方法のように、普通コンクリートに石灰石微粉末およびフライアッシュ等の混和材を追加するためには、新たな貯蔵サイロや計量器等を既設のレディミクストコンクリート工場に増設する必要が生じる。実際には全国の半数以上のレディミクストコンクリート工場において、このような設備の増設は困難であるとの調査結果が得られており(非特許文献2)、粉体系中流動覆工コンクリートの導入が困難となっている。
一方、増粘剤系中流動覆工コンクリートとは、レディミクストコンクリート工場で、水、セメント、細骨材及び粗骨材に、粘性調整成分を含有したセメント添加剤を添加して製造されるコンクリートである。石灰石微粉末及びフライアッシュ等の粉体を使用することなく製造される。例えば、普通コンクリートにおける各成分の配合割合に基づいて増粘剤を配合する方法が提案されている(特許文献2)。
しかし、特許文献2で開示されている増粘剤系中流動覆工コンクリートは、石灰石微粉末及びフライアッシュ等を使用した粉体系中流動覆工コンクリートに比べて容易に製造ができる一方で、結合材量が少なくなり、粉体系中流動覆工コンクリートよりもブリーディングが発生しやすい。特に振動機の振動が伝わりにくいトンネル天端部では、骨材下面の空隙や脆弱な打継ぎ目といった欠陥が生じるおそれがあった。
また、施工方法以外の影響として、近年、天然骨材の枯渇化が課題となっている。トンネル覆工コンクリートの製造には骨材が使用されているが、天然骨材の枯渇化が進み、主に砕石及び砕砂等の人工的な骨材を使用せざるを得なくなっている。人工的な骨材の製造過程において発生する粒径0.075mm以下の微粒分量は変動が生じ易く、微粒分量が5.0%以下の条件ではブリーディング量に及ぼす影響が大きいことが報告されている(非特許文献3)。さらに、細骨材の密度と粒度が大きいほどブリーディングが多くなることが報告されており(非特許文献3)、このような骨材事情の観点からも欠陥を生じさせるおそれがあり、コンクリートのブリーディングを低減させる必要性が高まってきている。
コンクリートのブリーディングは、スランプ値およびスランプフロー値の時間経過に伴う保持性を低下させることで低減される傾向にあるが、このような経時保持性の低下はむしろ施工性の低下につながるおそれがある。特に遠隔地に存在するトンネルの工事においては、スランプ値及びスランプフロー値の保持性を維持しつつ、ブリーディングを低減させる技術が必要である。
例えば、ブリーディングの低減を目的としたセメント添加剤として、ポリカルボン酸塩を含有する減水剤と、糖類の水素添加物および/または糖類と多価アルコールとの反応混合物とを含有するセメント添加剤が開示されている(特許文献3)。
特開2008−285843号公報 特開2011−236080号公報 特開平7−172889号公報
トンネル施工管理要領(中流動覆工コンクリート編)、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社、平成20年8月 トンネルの高速施工技術に関する検討報告書 第四章 中流動覆工コンクリートの適用性検討、日本トンネル技術協会、pp.104−109、2009.1 産地の異なる石灰石粗骨材を使用したコンクリートのフレッシュおよび強度性状、コンクリート工学年次論文集、Vol.29、No.1、2007 スラグ細骨材を用いたコンクリートのブリーディング制御方法の検討、コンクリート工学年次論文集、Vol.27、No.1、2005
しかしながら、特許文献3では、減水剤、糖類の水素添加物および糖アルコールの組み合わせによっては、糖類の水素添加物の沈殿が生じる場合があった。
本発明は、トンネルの覆工工事において、普通コンクリートに比べて高い流動性と経時保持性を維持しつつ、適度な粘性と材料分離抵抗性を付与したトンネル覆工用コンクリート組成物を提供することを目的とする。さらに詳しくは、通常のコンクリートよりも粉体量を増加させること無く、減水成分、粘性調整成分、ブリーディング低減成分を配合しても沈殿等が生じない均質なセメント添加剤を添加することにより得られるトンネル覆工用コンクリート組成物を提供することにある。
本発明のトンネル覆工用コンクリート組成物は、ポリカルボン酸系共重合体(A)からなる減水成分と、スルホ基含有(メタ)アクリル酸誘導体を由来とする構造単位を含む水溶性高分子(B)からなる粘性調整成分と、糖アルコール(C)からなるブリーディング低減成分とを含有するセメント添加剤を含有し、水結合材比が40〜60質量%、スランプ値が22.5±4.0cmの範囲で、かつ、スランプフロー値が35〜70cmであることを特徴とする。
好ましくは、前記スランプ値が21.0±2.5cmの範囲で、かつ、前記スランプフロー値が35〜50cmである。
前記セメント添加剤の全質量において、前記ポリカルボン酸系共重合体(A)の含有量は10〜30質量%、前記水溶性高分子(B)の含有量は0.05〜1質量%、前記糖アルコール(C)の含有量は5〜13質量%であり、コンクリート組成物における前記セメント添加剤の含有量は、セメント100質量%に対して、0.5〜2.0質量%であることが好ましい。
また、前記ポリカルボン酸系共重合体(A)が、一般式(1)で表される構造単位を含むことが好ましい。
Figure 0006324204
(式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。AOは、同一又は異なって、炭素数2〜3のオキシアルキレン基を表す。mは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜30の数である。)
好ましくは、前記ポリカルボン酸系共重合体(A)は、2種類のポリカルボン酸系共重合体の混合物であって、第1、第2のポリカルボン酸系共重合体をこれらの合計100質量%に対して、第1のポリカルボン酸系共重合体/第2のポリカルボン酸系共重合体=55〜85/15〜45の質量比で含有し、前記第1、第2のポリカルボン酸系共重合体は、一般式(1a)、一般式(1b)及び一般式(2)で表される構造単位を含み、
Figure 0006324204
(式(1a)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。AOは、同一又は異なって、炭素数2〜3のオキシアルキレン基を表す。mは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜9の整数である。)
Figure 0006324204
(式(1b)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。AOは、同一又は異なって、炭素数2〜3のオキシアルキレン基を表す。mは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、10〜30の整数である。m−mは8〜25である。)
Figure 0006324204
(式(2)中、Mは、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)
前記第1のポリカルボン酸系共重合体は、前記一般式(1a)で表される構造単位を形成するモノマー(I)と、前記一般式(1b)で表される構造単位を形成するモノマー(II)と、前記一般式(2)で表される構造単位を形成するモノマー(III)を、前記モノマー(I)〜(III)の合計100質量%に対して、モノマー(I)/モノマー(II)/モノマー(III)=1〜78/1〜78/21〜25の質量比で含むモノマー成分を重合して得られる共重合体であり、前記第2のポリカルボン酸系共重合体は、前記モノマー(I)〜(III)を、前記モノマー(I)〜(III)の合計100質量%に対して、モノマー(I)/モノマー(II)/モノマー(III)=3〜70/10〜83/14〜20の質量比で含むモノマー成分を重合して得られる共重合体である。
また、好ましくは、前記糖アルコール(C)は、エリトリトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、ガラクチトール、イノシトール及びマルチトールから選ばれる少なくとも1種である。
さらに、好ましくは、前記糖アルコール(C)は、ソルビトールとマルチトールの混合物であって、ソルビトールおよびマルチトールの合計含有量100質量%に対して、ソルビトール/マルチトール=50〜80/20〜50である。
前記水溶性高分子(B)は、前記スルホ基含有(メタ)アクリル酸誘導体を由来とする構造単位として、一般式(3)で表される構造単位を含み、質量平均分子量が50,000〜20,000,000g/molであることが好ましい。
Figure 0006324204
(式(3)中、Rは水素又はメチル基、R、R、Rは、水素、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、又は、メチル基で置換されていてもよいフェニル基であり、Mは、水素、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム又は有機アンモニウムであり、aは、1/2又は1である。)
前記セメント添加剤が温度5〜40℃において、水溶液であることが好ましい。
また、コンクリート組成物に含まれる骨材の粒径0.075mm以下の微粒分が1.0%以上5.0%以下であり、且つ細骨材の表乾密度が2.60g/cm以上3.20g/cm以下であることが好ましい。
本発明のトンネル覆工用コンクリート組成物の製造方法は、水結合材比が40〜60質量%、スランプ値が22.5±4.0cmの範囲で、かつ、スランプフロー値が35〜70cmであるトンネル覆工用コンクリート組成物の製造方法であって、ポリカルボン酸系共重合体(A)からなる減水成分と、スルホ基含有(メタ)アクリル酸誘導体を由来とする構造単位を含む水溶性高分子(B)からなる粘性調整成分と、糖アルコール(C)からなるブリーディング低減成分とを含むセメント添加剤を予備調製する工程と、予備調製したセメント添加剤、水、結合材および骨材を混合してコンクリート組成物を予備調製する工程と、予備調製したコンクリート組成物の温度を測定する工程と、前記予備調製したコンクリート組成物の温度が所定の閾値以下である場合に、前記予備調製したセメント添加剤と比較して前記糖アルコール(C)の含有率が高いセメント添加剤を新たに調製する工程と、新たに調製したセメント添加剤、前記水、前記結合材および前記骨材を混合して新たにコンクリート組成物を調製する工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明のトンネル覆工用コンクリート組成物の製造方法は、水結合材比が40〜60質量%、スランプ値が21.0±2.5cmの範囲で、かつ、スランプフロー値が35〜50cmであるトンネル覆工用コンクリート組成物の製造方法であって、ポリカルボン酸系共重合体(A)からなる減水成分と、スルホ基含有(メタ)アクリル酸誘導体を由来とする構造単位を含む水溶性高分子(B)からなる粘性調整成分と、糖アルコール(C)からなるブリーディング低減成分とを含むセメント添加剤を予備調製する工程と、予備調製したセメント添加剤、水、結合材および骨材を混合してコンクリート組成物を予備調製する工程と、予備調製したコンクリート組成物の温度を測定する工程と、前記予備調製したコンクリート組成物の温度が所定の閾値以下である場合に、前記予備調製したセメント添加剤と比較して前記糖アルコール(C)の含有率が高いセメント添加剤を新たに調製する工程と、新たに調製したセメント添加剤、前記水、前記結合材および前記骨材を混合して新たにコンクリート組成物を調製する工程と、を含むことを特徴とする。
本発明によれば、セメント組成物に適度な粘性を付与し、かつ、材料分離抵抗性を付与し、施工性の向上及び欠陥の防止に優れたトンネル覆工用コンクリート組成物を提供することが可能となる。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のコンクリート組成物は、中・高流動コンクリート組成物である。具体的に、スランプ値が22.5±4.0cmの範囲で、かつ、スランプフロー値が35〜70cmのコンクリート組成物である。好ましくは、スランプ値が21.0±2.5cmの範囲で、かつ、スランプフロー値が35〜50cmの中流動コンクリート組成物である。
本発明のトンネル覆工用コンクリート組成物は、ポリカルボン酸系共重合体(A)からなる減水成分と、水溶性高分子(B)からなる粘性調整成分と、糖アルコール(C)からなるブリーディング低減成分とを含有するセメント添加剤を含有する。
(1)減水成分:ポリカルボン酸系共重合体(A)
本発明におけるポリカルボン酸系共重合体(A)は、一般式(1)で表される構造単位を含むことが好ましい。
Figure 0006324204
式(1)において、Rは、水素原子又はメチル基を表す。AOは、同一又は異なって、炭素数2〜3のオキシアルキレン基を表す。mは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜30の整数で表される。
また、ポリカルボン酸系共重合体(A)は、下記の構造単位(I)、(II)及び(III)を含むことが好ましい。これにより、多様なトンネル覆工用コンクリート組成物の配合に対してもセメントペーストの分散性が得られ、トンネル覆工用コンクリート組成物の製造が可能となる。
構造単位(I)及び(II)は、一般式(1)で示される構造単位である。一般に、一般式(1)で示される構造単位中のオキシアルキレン基の平均付加モル数mが大きいほど、より高い立体的反発力が発生し、より高い分散性を発揮する。しかしながら、側鎖長が大きくなると共重合体の高分子量化に伴ってセメント添加剤の粘性が高くなる。さらに、セメント添加剤中において分子鎖が伸張するために必要とする時間が長くなるため、所要の分散性を発揮するための時間、すなわちセメント添加剤の練り混ぜに必要な時間が長くなる。一方、側鎖長が小さい場合、分散性は低いが、セメント添加剤の粘性は低く抑えることができる。また、所要の分散性を発揮するのに要する時間も短くなる傾向にある。このように側鎖長の長さによって共重合体の性能は大きく変化し、共重合体の性能に対してオキシアルキレン基の平均付加モル数の与える影響度は非常に大きい。係る観点から、所望の効果を得るために、本発明におけるポリカルボン酸系共重合体(A)において、このオキシアルキレン基の平均付加モル数mが異なる構造単位(I)及び(II)を含有することが好ましい。
具体的に、構造単位(I)は、一般式(1a)で示される構造単位である。構造単位(II)は、一般式(1b)で示される構造単位である。
Figure 0006324204
式(1a)において、Rは、水素原子又はメチル基を表す。AOは、同一又は異なって、炭素数2〜3のオキシアルキレン基を表す。mは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜9の整数で表される。
Figure 0006324204
式(1b)において、Rは、水素原子又はメチル基を表す。AOは、同一又は異なって、炭素数2〜3のオキシアルキレン基を表す。mは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、10〜30の整数で表される。m−mは8〜25である。平均付加モル数の差(m−m)が8より小さいと、空気連行性が高くなるおそれがある。一方、差が25より大きいと分散性やスランプおよびスランプフローの経時保持性が低下するおそれがある。
なお、平均付加モル数とは、モノマー1モル中において付加している当該オキシアルキレン基のモル数の平均値を意味する。
構造単位(III)は、一般式(2)で示される構造単位である。
Figure 0006324204
式(2)において、Mは、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。一価金属原子としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子が好ましい。二価金属原子としては、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子が好ましい。有機アミン基としては、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基が好ましい。
本発明に用いるポリカルボン酸系共重合体(A)は、各モノマーを重合することにより得られる。例えば、構造単位(I)を形成する不飽和ポリオキシアルキレングリコール系モノマー(モノマー(I))と、構造単位(II)を形成する不飽和ポリオキシアルキレングリコール系モノマー(モノマー(II))と、構造単位(III)を形成するメタクリル酸(塩)(モノマー(III))と、を重合することにより得られる。
モノマー(I)〜(III)の合計含有量100質量%におけるモノマー(III)の含有量は、13〜25質量%であることが好ましい。モノマー(III)の含有量が13質量%未満であると、ポリカルボン酸系共重合体の酸価が低くなり、セメント添加剤として分散性が低下する場合がある。一方、モノマー(III)の含有量が25質量%を超えると、ポリカルボン酸系共重合体の酸価が高くなり、スランプ値およびスランプフロー値の経時保持性が十分に確保されない場合がある。
具体的に、本発明に用いるポリカルボン酸系共重合体(A)は、モノマー(I)〜(III)をこれらの合計100質量%に対して、モノマー(I)/モノマー(II)/モノマー(III)=1〜86/1〜86/13〜25の質量比で含むモノマー成分を重合して得られる共重合体であることが好ましい。
さらに、本発明に用いるポリカルボン酸系共重合体(A)は、モノマー(I)〜(III)の質量比が異なるポリカルボン酸系共重合体を2種類以上組み合わせた混合物であることが好ましく、より好ましくは、2種類のポリカルボン酸系共重合体を組み合わせた混合物であることが好ましい。具体的に、混合物は、第1のポリカルボン酸系共重合体として、モノマー(I)〜(III)をこれらの合計100質量%に対して、モノマー(I)/モノマー(II)/モノマー(III)=1〜78/1〜78/21〜25の質量比で含むモノマー成分を重合して得られる共重合体と、第2のポリカルボン酸系共重合体として、モノマー(I)/モノマー(II)/モノマー(III)=3〜70/10〜83/14〜20の質量比で含むモノマー成分を重合して得られる共重合体と、を混合させることにより得られる。第1のポリカルボン酸系共重合体/第2のポリカルボン酸系共重合体(質量比)=55〜85/15〜45であることが好ましい。この共重合体の比率は、トンネル覆工用コンクリート組成物における分散性、練混ぜ特性、粘性、経時保持性の観点から好適な範囲である。
本発明で用いるポリカルボン酸系共重合体は、質量平均分子量が5,000〜100,000であることが好ましい。質量平均分子量が5,000より小さいと、充分な減水性能を得られないおそれがある。また、質量平均分子量が100,000より大きいと、減水性能、スランプ値およびスランプフロー値の経時保持性が十分でないものとなるおそれがある。本願明細書において、質量平均分子量はプルラン換算でゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することが好ましい。
本発明における減水成分の含有量は、セメント添加剤の全質量に対して10〜30質量%であることが好ましい。減水成分の含有量が10質量%以下であると、得られるトンネル覆工用コンクリート組成物の目標とするスランプ値及びスランプフロー値を得るために、セメント添加剤を過剰に添加することが必要となり、コンクリートのこわばりやしまりによる経時保持性の低下や硬化後のコンクリートに強度低下等の悪影響を与えるおそれがある。一方、減水成分の含有量が25質量%を超えると、セメント添加剤の添加量に対するスランプ値及びスランプフロー値の動きが敏感となり、目標とするスランプ値及びスランプフロー値の制御が困難となるおそれがある。
本発明におけるポリカルボン酸系共重合体(A)の製造方法について、以下に説明する。モノマーの共重合は、例えば、各モノマーと重合開始剤とを用いて、溶液重合や塊状重合等の公知の重合方法により行うことができる。重合開始剤としては、公知のものを使用することができ、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;アゾビス−2メチルプロピオンアミジン塩酸塩、アゾイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のパーオキシドが好適である。また、促進剤として、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、モール塩、ピロ重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート、アスコルビン酸等の還元剤;エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、グリシン等のアミン化合物を併用することもできる。これらの重合開始剤や促進剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、モノマーの共重合は、回分式でも連続式でも行うことができる。また、共重合の際、必要に応じて溶媒を使用してもよい。溶媒としては、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘプタン等の芳香族又は脂肪族炭化水素類;酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、モノマー及び得られるポリカルボン酸系共重合体の溶解性の点から、水及び炭素数1〜4の低級アルコールからなる群より選択される1種又は2種以上の溶媒が好ましい。
また、モノマーや重合開始剤等の反応容器への添加方法としては、反応容器にモノマーの全てを仕込み、重合開始剤を反応容器内に添加することによって共重合を行う方法;反応容器に一部のモノマーを仕込み、重合開始剤と残りのモノマーを反応容器内に添加することによって共重合を行う方法;反応容器に溶媒を仕込み、モノマーと重合開始剤の全量を添加する方法等が好適である。特に、得られる共重合体の分子量分布を狭く(シャープに)することができ、セメント添加剤の流動性を高める作用であるセメント分散性を向上することができることから、重合開始剤とモノマーを反応容器に逐次滴下する方法が好ましい。また、モノマーの共重合性が向上して得られる共重合体の保存安定性がより向上することから、重合中、反応容器内の水の濃度を50%以下に維持することが好ましい。
また、重合における温度条件としては、使用する重合方法、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤により適宜定められるが、通常0℃以上であることが好ましく、また、150℃以下であることが好ましい。より好ましくは、40℃以上であり、更に好ましくは、50℃以上であり、特に好ましくは、60℃以上である。また、より好ましくは、120℃以下であり、更に好ましくは、100℃以下であり、特に好ましくは、85℃以下である。
なお、得られる共重合体は、必要に応じて、さらにアルカリ化合物で中和して用いてもよい。アルカリ化合物としては、金属の水酸化物、塩化物及び炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミンが好ましい。
上記共重合方法では、モノマー(III)の中和率は0〜60mol%であることが好ましい。モノマー(III)の中和率は、モノマー(III)の全モル数を100mol%としたときに、塩を形成しているモノマー(III)のmol%で表されることになる。不飽和カルボン酸系モノマー(III)の中和率が60mol%を超えると、共重合工程における重合率が上がらず、得られる重合体の分子量が低下したり、製造効率が低下したりするおそれがある。より好ましくは、50mol%以下である。
上記モノマー(III)の中和率を0〜60mol%として共重合を行う方法としては、全て酸型であるモノマー(III)、すなわちモノマー(III)において上記一般式(2)におけるMが水素原子であるものを中和せずに共重合に付することにより行う方法や、モノマー(III)をアルカリ性物質を用いてナトリウム塩やアンモニウム塩等の塩の形態に中和するときに中和率を0〜60mol%としたものを共重合に付することにより行う方法が好適である。
(2)粘性調整成分:水溶性高分子(B)
本発明における水溶性高分子(B)は、スルホ基含有(メタ)アクリルアミド誘導体を由来とする構造単位を含む。スルホ基含有(メタ)アクリルアミド誘導体を由来とする構造単位としては、一般式(3)で表される構造単位(a)が好ましい。
Figure 0006324204
一般式(3)において、Rは水素又はメチル基であり、R、R、Rは、水素、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、又は、メチル基で置換されたフェニル基であり、Mは、水素、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム又は有機アンモニウムであり、aは、1/2又は1であることが好ましい。これにより、所定の粘性をコンクリートに付与することが可能となる。
構造単位(a)を形成するモノマー(a)としては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミドブタンスルホン酸、3−アクリルアミド−3−メチルブタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2、4、4−トリメチルペンタンスルホン酸が好ましく、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が特に好ましい。
また、水溶性高分子(B)は、構造単位(a)の他に、下記構造単位(b)、(c)及び(d)から選ばれる1種類以上を構造単位として含んでいてもよい。これにより、多様なコンクリート材料やコンクリート配合に対しても、セメントペーストと骨材の材料分離抵抗性をトンネル覆工用コンクリート組成物に付与させることが可能となるので好ましい。
構造単位(b)は、一般式(4)で示される構造単位である。
Figure 0006324204
一般式(4)において、Rは水素又はメチル基であり、R及びRはそれぞれ独立に、水素、1〜20個の炭素原子を含有する脂肪族炭化水素基、5〜8個の炭素原子を含有する脂環式炭化水素基又は6〜14個の炭素原子を含有するアリール基である。
構造単位(b)を形成するモノマー(b)としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N、N−ジメチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミドが好ましい。
構造単位(c)は、一般式(5)で示される構造単位である。
Figure 0006324204
式(5)において、Rは水素又はメチル基であり、Yは−COO(C2n)p−R、−(CH)q−O(C2nO)−Rであり、Rは下記一般式(6)、並びに、10〜40個の炭素原子を有する不飽和又は飽和、直鎖又は枝分れした脂肪族アルキル基、RはH、C〜Cアルキル、C〜C12アルキル基とC〜C14アリール基とを有するアリールアルキル基を表し、nは2〜4、pは0〜200、qは0〜20、xは0〜3である。
Figure 0006324204
構造単位(c)を形成するモノマー(c)としては、トリスチリルフェノールポリエチレングリコール(1100)−メタクリレート、ベヘニルポリエチレングリコール(1100)−メタクリレート、ステアリルポリエチレングリコール(1100)−メタクリレート、トリスチリルフェノール−ポリエチレングリコール(1100)−アクリレート、トリスチリルフェノール−ポリエチレングリコール(1100)−モノビニルエーテル、ベヘニルポリエチレングリコール(1100)−モノビニルエーテル、ステアリルポリエチレングリコール(1100)−モノビニルエーテル、トリスチリルフェノール−ポリエチレングリコール(1100)−ビニルオキシ−ブチルエーテル、ベヘニルポリエチレングリコール(1100)−ビニルオキシ−ブチルエーテル、トリスチリルフェノールポリエチレングリコール−b−プロピレングリコールアリルエーテル、ベヘニルポリエチレングリコール−b−プロピレングリコールアリルエーテル、ステアリルポリエチレングリコール−b−プロピレングリコールアリルエーテルが好ましい。
構造単位(d)は、一般式(7)で示される構造単位である。
Figure 0006324204
式(6)において、Rは水素又はメチル基であり、Zは−(CH−O−(C2nO)−Rであり、Rは水素又は炭素数1〜4のアルキル基であり、nは2〜4、pは0〜200、qは0〜20である。
構造単位(d)を形成するモノマー(d)としては、ポリエチレングリコール−b−プロピレングリコール(500〜5000)−ビニルオキシ−ブチルエーテル、アリルポリエチレングリコール(350〜2000)、メチルポリエチレングリコール(350〜2000)−モノビニルエーテル、ポリエチレングリコール(500〜5000)−ビニルオキシ−ブチルエーテル、ポリエチレングリコール−b−プロピレングリコール(500〜5000)−ビニルオキシ−ブチルエーテル、メチルポリエチレングリコール−b−プロピレングリコールアリルエーテルが好ましい。
本発明に用いる水溶性高分子(B)は、各モノマーを重合することにより得られる。具体的に、水溶性高分子(B)は、モノマー(a)〜(d)の合計含有量100mol%において、モノマー(a)の含有量が3〜96mol%、モノマー(b)の含有量が3〜96mol%、モノマー(c)の含有量が0〜10mol%、モノマー(d)の含有量が0〜30mol%となるように、モノマー(a)〜(d)を重合して得られる共重合体であることが好ましい。
モノマー(a)の含有量が3mol%未満であると、水溶性高分子の水への溶解性が低下するおそれがある。一方、モノマー(a)の含有量が96mol%を超えると、トンネル覆工用コンクリート組成物に所要の材料分離抵抗性が付与されにくくなるおそれがある。モノマー(b)の含有量が3mol%未満であると、トンネル覆工用コンクリート組成物に所要の材料分離抵抗性が付与されにくくなるおそれがある。一方、モノマー(b)の含有量が96mol%を超えると、水溶性高分子の水への溶解性が低下するおそれがある。また、モノマー(c)の含有量が10mol%を超える場合、及び、モノマー(d)の含有量が30mol%を超える場合には、トンネル覆工用コンクリート組成物に所要の材料分離抵抗性が付与されにくくなるおそれがある。モノマー(a)〜(d)の合計含有量100mol%において、モノマー(a)の含有量が20〜75mol%、モノマー(b)の含有量が10〜65mol%、モノマー(c)の含有量が0〜10mol%、モノマー(d)の含有量が0〜15mol%であることがより好ましい。
本発明では、所望により少量の架橋剤を組み込むことによって、粘性調整成分を構成するポリマー中に少しだけ枝分かれした、又は架橋した構造を提供することができる。架橋剤としては、例えば、トリアリルアミン、トリアリルメチルアンモニウムクロリド、テトラアリルアンモニウムクロリド、N、N'−メチレン−ビス−アクリルアミド、トリエチレングリコール−ビス−メタクリレート、トリエチレングリコール−ビス−アクリレート、ポリエチレングリコール(400)−ビス−メタクリレート及びポリエチレングリコール(400)−ビス−アクリレートが挙げられる。架橋剤は、粘性調整成分の作用を妨げない程度の量で使用することができ、モノマー(a)、(b)、(c)及び(d)の合計に対して0.1mol%以下であることが好ましい。
本発明の水溶性高分子(B)は、周知の水相中のゲル重合により製造することができる。低い反応温度で適切な重合開始剤を用いて重合を行うことが好ましい。最初は低温で光化学的に重合が開始され、ついで重合の発熱により熱的に開始される、2つの重合開始剤の組み合わせ(アゾ系重合開始剤及びレドックス系重合開始剤)が99%以上の反応率の達成を可能にする。
溶液重合は、好ましくは、−5〜50℃で実施される。水溶液の濃度は、好ましくは、35〜70質量%に調整される。溶液重合は、スルホ基含有(メタ)アクリル酸誘導体を水に溶解した後、アルカリ金属水酸化物の添加により中和し、モノマーと緩衝剤、分子量調整剤及びその他の重合助剤を撹拌しながら混合することにより行うのが好ましい。また、溶液重合は、pH4〜9の範囲で行い、ヘリウム又は窒素等の保護ガスでフラッシュした後、所定の温度に加熱又は冷却することが特に好ましい。
撹拌しない溶液重合を選択する場合、断熱的な反応条件下で、2〜20cm、特に8〜10cmの層厚みで実施するのが好ましい。溶液重合は、低温(−5〜10℃)で重合開始剤の添加及び紫外線の照射により開始する。モノマーの反応が完了次第、表面積を増加させて乾燥を促進させるために、得られた水溶性高分子を、剥離剤を用いて静かに砕くことが好ましい。
できるだけゆるやかな反応及び乾燥条件を用いることによって、架橋の二次反応を回避することが可能となる。したがって、ゲル含有率の非常に低い水溶性高分子を提供する。
本発明における水溶性高分子(B)の含有量は、セメント添加剤の全質量に対して0.05〜1質量%であることが好ましい。水溶性高分子(B)の含有量が0.05質量%未満であると、得られるコンクリートに十分な粘性を付与できないおそれがある。一方、水溶性高分子(B)の含有量が1質量%を超えると、セメント添加剤の溶液粘度が大きくなり、製造現場等での使用に適さなくなるおそれがある。水溶性高分子(B)の含有量は、0.08〜0.8質量%が特に好ましい。
本発明における水溶性高分子(B)は、質量平均分子量が50,000〜20,000,000g/molであることが好ましい。質量平均分子量が、50,000g/mol未満であると、適度な粘性をコンクリートに付与することができないおそれがある。一方、質量平均分子量が、20,000,000g/molを超えると、溶解が困難となり、また、セメント添加剤の溶液粘度が上昇し、製造現場等での使用に適さなくなるおそれがある。なお、本願明細書において、質量平均分子量はプルラン換算でゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することが好ましい。
(3)ブリーディング低減成分:糖アルコール(C)
本発明における糖アルコール(C)は、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、ガラクチトール、イノシトール及びマルチトールから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。特に、ソルビトールとマルチトールを組み合わせたものが好ましい。ソルビトールおよびマルチトールの合計含有量100質量%に対して、ソルビトール/マルチトール=50〜80/20〜50であることが好ましい。ソルビトールの含有量が50質量%未満ではブリーディング低減効果が得られない場合がある。一方、ソルビトールの含有量が80質量%を超えると、セメント添加剤の溶液安定性が低下する場合がある。また、マルチトールの含有量が20質量%未満ではスランプ値およびスランプフロー値の経時保持性が低下する場合がある。ソルビトールおよびマルチトールの合計含有量100質量%に対して、ソルビトール/マルチトール=55〜77/23〜45であることが特に好ましい。
本発明における糖アルコール(C)の含有量は、セメント添加剤の全質量に対して、5〜13質量%であることが好ましい。糖アルコール(C)の含有量が5質量%未満であると、ブリーディング低減効果が得られないため好ましくない。また、糖アルコール(C)の含有量が15質量を超えると、溶液安定性が低下して水溶性高分子が沈殿し、目標とするスランプフロー値の制御が困難となり、ブリーディング低減効果が得られないおそれがある。本発明における糖アルコール(C)の含有量は、8〜12質量%であることが特に好ましい。
本発明のセメント添加剤は、一液化が可能であり、温度5〜40℃において均質な水溶液であることが好ましい。すなわち、本発明のセメント添加剤は、減水成分、粘性調整成分、ブリーディング低減成分以外に、さらに溶媒として水を含有することが好ましい。セメント添加剤は、温度5〜40℃において、3か月間の溶液安定性を維持することが好ましく、6ヶ月間の溶液安定性を維持することが特に好ましい。均質な水溶液でない場合には、本発明のセメント添加剤の効果が十分に得られない可能性がある。
本発明のセメント添加剤は、減水成分、粘性調整成分、ブリーディング低減成分、水以外に、さらに無機塩を含有することが好ましい。
本発明では、無機塩の含有量は、セメント添加剤100質量%に対し、0.01〜5質量%であることが好ましい。無機塩は、安定化剤として使用され、減水成分、粘性調整成分およびブリーディング低減成分の混合溶液の粘度を低減させる効果や溶液安定性を向上させる効果がある。無機塩は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、アルミニウムイオンのハロゲン化物、硫酸化物、硝酸化物からなる単塩及び複塩が、コストの面で好ましい。
本発明のセメント添加剤は、さらに他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、慣用の空気量調整成分、ポリサッカライド誘導体、乾燥収縮低減成分、促進成分、遅延成分、起泡成分、消泡成分、防錆成分、急結成分等が挙げられる。
(4)コンクリート組成物の製造方法
本発明では、水硬性結合材、細骨材、粗骨材、水及びセメント添加剤を混合して練り混ぜ、スランプ値が22.5±4.0cmの範囲でスランプフロー値が35〜70cmの中・高流動コンクリート組成物を得ることが好ましい。より好ましくは、スランプ値が21.0±2.5cmの範囲でスランプフロー値が35〜50cmの中流動コンクリート組成物である。
本発明におけるコンクリート組成物を製造する際、セメント添加剤の使用量は、セメント100質量%に対して、0.5〜2.0質量%であることが好ましい。セメント添加剤の使用量が0.5質量%未満であると、目標とする流動性とブリーディング低減効果が得られないおそれがある。一方、セメント添加剤の使用量が2.0質量%を超えると、流動性が過剰となり凝結の遅延等を引き起こすおそれがある。セメント添加剤の使用量は、使用するセメント組成物に応じて適宜定められるが、基本的にはセメント組成物に十分なワーカビリティーを付与する量であればよい。特に、セメント添加剤の使用量は、セメント100質量%に対して、0.7〜1.5質量%であることが好ましい。しかしながら、使用量はこの範囲に特定されず、目的を達成する限り任意の範囲で定めることができる。
本発明では、水硬性結合材としては、セメントが好ましい。水硬性結合材には、必要に応じて、フライアッシュ、高炉スラグ、シリカフューム、石灰石微粉末等を添加することができる。
本発明では、細骨材として、JIS A 5308に規定されるものが好ましく、例えば、砂、砕砂、スラグ細骨材、軽量細骨材、再生細骨材等が挙げられる。
本発明では、細骨材の表乾密度は2.60g/cm以上3.20g/cm以下であることが好ましい。細骨材の表乾密度が2.60g/cm未満では細骨材自身の分離が小さく、発生するブリーディング量が少なくなるものの、骨材としての機械的特性が低下し弱点部位となりやすく、構造材としての特性が劣る。一方、細骨材の表乾密度が3.20g/cmを超えると細骨材自身の分離が大きいのみならず、細骨材の保水性が減少し、ブリーディング量が多くなり、中・高流動覆工コンクリートの耐久性に悪影響を及ぼすおそれがある。細骨材の表乾密度は、より好ましくは、2.65g/cm以上3.00g/cm以下である。
本発明では、粗骨材として、JIS A 5308に規定されるものが好ましく、例えば、砂利、砕石、スラグ粗骨材、軽量粗骨材、再生粗骨材等が挙げられる。
本発明では、コンクリートの骨材に含まれる微粒分量が1.0%以上5.0%以下であることが好ましい。骨材に含まれる微粒分量が1.0%以下ではブリーディング量の増加により材料分離抵抗性が低下するおそれがある。一方、骨材に含まれる微粒分量が5.0%を超えると、ブリーディング量が少なくなりすぎて、コンクリートの粘性が過多になり、コンクリートの仕上げ性に悪影響を及ぼすおそれがある。骨材の微粒分量は、より好ましくは、1.2%以上4.5%以下である。
本発明では、単位粗骨材体積は280〜370リットル/mであることが好ましい。単位粗骨材体積が、280リットル/m未満であると、得られるコンクリート1m中の結合材量が増加することに起因する硬化コンクリートの収縮量が増大するおそれがある、一方、370リットル/mを超えると、得られるコンクリートの流動性が低下し、所要の流動性が得られなくなるおそれがある。単位粗骨材体積は、290〜360リットル/mであることが特に好ましい。
本発明では、水は、JIS A 5308に規定されるものが好ましく、上水道水が特に好ましい。
本発明では、水結合材比が40〜60質量%以上であることが好ましい。水結合材比が40質量%未満であると、結合材の増加によってブリーディング量が少なくなる一方で、セメント添加剤の使用量が増加して凝結遅延を生じさせるおそれがあるため好ましくない。水結合材比が60質量%を超えると、配合される水の量が過剰となり、材料分離の起こるおそれがある。水結合材比は、45〜59質量%であることが特に好ましい。
本発明では、水硬性結合材、細骨材、粗骨材、水及びセメント添加剤を混合した後、練混ぜを行う。練混ぜ方法としては、例えば、水硬性結合材、細骨材、粗骨材を混練機に投入し空練りを行なった後、セメント添加剤を水に混合した練混ぜ水を混練機に投入する方法が挙げられる。コンクリート組成物を製造する際には、重力式ミキサ、パン型強制練りミキサ、二軸強制練りミキサ等の混練機を使用することが好ましい。
なお、本発明では、製造したコンクリート組成物の温度によって、セメント添加剤の組成を変更するのが好ましい。具体的には、コンクリート組成物の温度が所定の閾値以下(例えば、10℃以下)である場合に、セメント組成物に含まれる糖アルコール(C)の含有率を高くするのが好ましい。
まず、ポリカルボン酸系共重合体(A)からなる減水成分と、スルホ基含有(メタ)アクリル酸誘導体を由来とする構造単位を含む水溶性高分子(B)からなる粘性調整成分と、糖アルコール(C)からなるブリーディング低減成分とを含むセメント添加剤を予備調製する。そして、予備調製したセメント添加剤、水、結合材および骨材を混合してコンクリート組成物を予備調製する。予備調製したコンクリート組成物の温度を測定し、当該温度が所定の閾値以下である場合に、予備調製したセメント添加剤と比較して糖アルコール(C)の含有率が高いセメント添加剤を新たに調製する。新たに調製したセメント添加剤、水、結合材および骨材を混合して新たにコンクリート組成物を調製する。
コンクリートを均一に締め固めるためには、ある程度のブリーディング量が必要である。一方、ブリーディング量が多すぎると、空隙が生じ、強度が低下するおそれがある。コンクリート組成物の温度によって糖アルコール(C)の含有率を変更することで、ブリーディング量のバランスを保持することができる。
本発明におけるコンクリート組成物は、トンネル覆工用コンクリート組成物である。トンネルの中にスライドセントルを導入し、トンネルの内壁面とスライドセントルとの間にコンクリート組成物を打設する。その後、コンクリート組成物は半円形状に締め固められる。
トンネル覆工用コンクリートは夏季、冬季に亘る年間を通じて打設される場合が多い。打設される個々のコンクリートのブリーディング量に年間を通じて変動がある場合、トンネルの覆工体として一体構築されたコンクリートの品質にばらつきが生じる。このような品質のばらつきによって、例えば、漏水や剥落が発生する。本発明におけるトンネル覆工用コンクリート組成物の製造方法によれば、コンクリート組成物の温度が所定の閾値以下である場合に、糖アルコール(C)の含有率が高いセメント添加物を新たに調製することで、ブリーディング量の変動を抑制できるので、トンネル覆工体として一体構築されたコンクリートの品質にばらつきが発生しない。その結果、漏水や剥落の発生を低減できる。
本実施形態における予備調製は、トンネル覆工用コンクリート組成物に利用できる。その場合、打設するコンクリート組成物の温度を、年間を通じて継続して測定しておく。測定した温度が所定の閾値以下になったら、糖アルコール(C)の含有率が高いセメント添加剤を新たに調製し、当該セメント添加剤を他のコンクリート材料と混合する。一方、測定した温度が所定の閾値より高くなったら、糖アルコール(C)の含有率が低いセメント添加剤を調製し、当該セメント添加剤を他のコンクリート材料と混合する。
上記所定の閾値は、例えば10℃である。コンクリート組成物の温度が10℃以下である場合には、例えば、ポリカルボン酸系共重合体(A)の含有量は10〜30質量%、水溶性高分子(B)の含有量は0.05〜1質量%、糖アルコール(C)の含有率を10%〜15%とする。また、コンクリート組成物の温度が10℃を超える場合には、ポリカルボン酸系共重合体(A)と水溶性高分子(B)の含有量は同じままで、糖アルコール(C)の含有率を0〜4%とする。
トンネル覆工コンクリートでは、一般的に覆工厚さに対比して、打込み高さが高いコンクリート構築物を一体施工する。通常のコンクリート構築物に比べてブリーディング量を適切に管理することで、コンクリート品質が格段に向上する。
以下に、本発明のセメント添加剤の製造例を示すが、これらの製造態様例によって限定されるものではない。
<減水成分の合成>
[ポリカルボン酸共重合体の合成]
表1に示すように、モノマー(I)〜(III)の3種を含むモノマー成分を原料として共重合体(1)及び(2)を製造した。各共重合体の原料となったモノマー成分全体に占めるモノマー(III)の質量比、各共重合体の平均鎖長、モノマー(I)のオキシアルキレン基の平均付加モル数とモノマー(II)のオキシアルキレン基の平均付加モル数との差m−m、質量平均分子量を表1に示す。質量平均分子量は、東ソー社製ECOSEC HLC−8320GPCを用いて実施し、カラムはShodex、OHpak SB−803HQを2本使用し、較正曲線はプルラン、溶離液は0.5M酢酸及び硝酸を使用した。
モノマー(Ia):メトキシポリエチレングリコール(平均付加モル数6モル)モノメタクリレート
モノマー(Ib):ヒドロキシエチルメタクリレート
モノマー(IIa):メトキシポリエチレングリコール(平均付加モル数25モル)モノメタクリレート
モノマー(IIb):メトキシポリエチレングリコール(平均付加モル数10モル)モノメタクリレート
モノマー(IIIa):メタクリル酸ナトリウム
Figure 0006324204
上記共重合体(1)及び(2)を用いて、合計100質量%に対して、共重合体(1)/共重合体(2)=70/30に調製した混合物を減水成分とした。
<粘性調整成分の合成>
撹拌機及び温度計を備えた1リットルの三口フラスコ中に、水650gを加え、撹拌しながら、水酸化ナトリウム87gを加えて溶解し、56.6mol%の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(モノマー(a1))450gを少しずつ添加して、透明な水溶液を得た。得られた透明な水溶液に、クエン酸水和物0.50gを添加した後、冷却した状態で撹拌しながら、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pH4.6に調節した42.8mol%のN、N−ジメチルアクリルアミド(モノマー(b1))164g及び0.6mol%のトリスチリルフェノール−ポリエチレングリコール(1100)−メタクリレート(モノマー(c1))8.6gを加え、さらに、ギ酸300ppmを分子量調整剤として添加して混合溶液を得た。得られた混合溶液を、20質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH=6.0に調節し、30分間窒素でフラッシュした後、約5℃に冷却した、15cm×10cm×20cmの寸法を有する塑性材料容器中に移して、2、2’−アゾ−ビス−(2−アミジノプロパン)−二塩酸塩150mg、1質量%ロンガリット溶液1.0g及び0.1質量%t−ブチルヒドロペルオキシド溶液10gを連続して添加した。この後、紫外線(Philips管2本、Cleo Performance 40W)を照射することにより、溶液中のモノマーの重合を開始した。照射を約2〜3時間した後、硬いゲルが得られた。得られたゲルを塑性材料容器から取り出し、はさみを用いて約5cm×5cm×5cmの寸法の立方体のゲルに裁断した。得られた立方体のゲルに、剥離剤のポリジメチルシロキサンエマルジョンをはけで塗り、ミンサーで粉砕してゲル細粒を得た。得られたゲル細粒を敷き並べ、一定した質量となるまで、温度90〜120℃で真空下で空気循環乾燥器中において乾燥させて、約650gの白色の、硬い細粒が得られた。得られた細粒を遠心ミルにより粉末にして、水溶性高分子の粉末を得た。得られた水溶性高分子の粉末の平均細粒は、約40μmであり、100μmを超える直径を有する粒子の割合は、1質量%未満であった。得られた水溶性高分子を粘性調整成分(A)とした。
表2に記載のモノマーを使用して、同様の方法で水溶性高分子を得た。得られた水溶性高分子を粘性調整成分(B)とした。
得られた水溶性高分子の質量平均分子量の測定結果を併せて表2に示す。なお、質量平均分子量測定は、東ソー社製ECOSEC HLC−8320GPCを用いて実施し、カラムはShodex、OHpak SB−806HQを2本使用し、較正曲線はプルラン、溶離液は0.5M酢酸及び硝酸を使用した。
モノマー(a1):2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸
モノマー(b1):N,N−ジメチルアクリルアミド
モノマー(b2):アクリルアミド
モノマー(c1):トリスチリルフェノールポリエチレングリコール(1100)−メタクリレート
モノマー(d1):ポリエチレングリコール−b−プロピレングリコール(790)−ビニルオキシ−ブチルエーテル
モノマー(d2):ポリエチレングリコール−b−プロピレングリコール(3000)−ビニルオキシ−ブチルエーテル
Figure 0006324204
<ブリーディング低減成分の調製>
撹拌機及び温度計を備えた1リットルの三口フラスコ中に、水309.6gを加え、撹拌しながら、物産フードサイエンス社製のソルビトールF(以下、ソルビトールという)有姿で357.1g(固形で250g)及び同社製マルビット(以下「マルチトール」という)有姿で333.3g(固形で250g)を加えて、ソルビトール/マルチトール=50/50(固形換算の質量比)のブリーディング低減成分(a)を調製した。同様の方法で、表3に記載の質量比でブリーディング低減成分(b)〜(d)を得た。
Figure 0006324204
<セメント添加剤の調製>
撹拌機を備えた1リットルのビーカー中に、顆粒無水硫酸ナトリウム(試薬特級、和光純薬製)10g、水道水311gを加え、50rpmで2分撹拌した後、粘性調整成分(A)を4g添加し、200rpmで30分間撹拌した。次いで、同ビーカー中に減水成分の40質量%水溶液を475g、ブリーディング低減成分(a)の50質量%水溶液を200g添加し、200rpmで10分間撹拌し、セメント添加剤(添加剤1)を1000g調製した。
添加剤1の調製方法に従って、表4に示す組み合わせで、添加剤2〜19と比較添加剤1〜10を1000g調製した。なお、比較添加剤1〜7には、粘性調整成分としてヒドロキシメチルセルロース(信越化学工業社製「SFCA2000」)を使用した。
添加剤1〜19および比較添加剤1〜10について、5〜40℃での溶液安定性試験結果を表4に示す。
また、表4の溶液安定性試験は、セメント添加剤を調整した後、6ヶ月間5℃、20℃、40℃の環境下に保管し、目視によりその液体性状を観察するもので、溶液が6ヶ月間均一な状態を保持し、分離・ゲル・沈殿が観察されない場合を◎とし、分離・ゲル・沈殿が観察され、軽い撹拌により一液となるものを〇、撹拌しても一液にならないものを×とした。
Figure 0006324204
<コンクリート試験>
[コンクリートの試験方法]
コンクリートの評価は、以下の規格に準じて実施した。
スランプ値:JIS A 1101
スランプフロー値:JIS A 1150
空気量: JIS A 1128
コンクリートの温度: JIS A 1156
ブリーディング: JIS A 1123
中流動コンクリートの充填性試験: JHS 733
[中流動覆工コンクリートを対象とした実施例及び比較例]
中流動覆工コンクリートを対象としたコンクリートの配合を表5に示す。また、コンクリートの目標練上り温度は20℃および10℃とした。
Figure 0006324204
表5で使用した材料は、以下の通りである。
水(W):上水道水
セメント(C):普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、密度3.16g/cm
混和材(LS):石灰石微粉末(密度2.70g/cm
細骨材(S1):大井川水系陸砂(密度2.59g/cm、粗粒率2.65、微粒分量1.3%)
細骨材(S2):白山町藤産砕砂(密度2.66g/cm、粗粒率2.78、微粒分量1.5%)
粗骨材(G):青梅産硬質砂岩砕石2005(密度2.65g/cm、実績率62.5%、微粒分量0.1%)
空気量調整成分:変性ロジン酸化合物系陰イオン界面活性剤(BASFジャパン株式会社製、品名 マスターエア202)
表5の配合1、2について、容量55リットルのパン型強制練りミキサを使用し、コンクリートの練混ぜ量が40リットルとなるように配合量を決定した。セメント(C)、細骨材(S)及び粗骨材(G)をパン型強制練りミキサに投入し、10秒間練り混ぜ、次に、予めセメント添加剤及び空気量調整剤を上水道水(W)に混合した練混ぜ水をパン型強制練りミキサに投入し、90秒間練り混ぜて、中流動覆工コンクリートを製造した。なお、セメント添加剤及び空気量調整成分の添加量は、練上り後の中流動覆工用コンクリートの品質規格として、スランプ21.0±2.5cmの範囲でスランプフロー35〜50cm及び空気量が4.5±1.5容積%の範囲となるようにセメント100質量%あたりの質量%で調整した。また、比較添加剤10を使用した配合1’および2’において、セメント(C)、細骨材(S)および粗骨材(G)と共に混和材(LS)を加えた、粉体系中流動覆工コンクリートの例を示した。
実施例1〜8及び比較例1〜9によるコンクリートをさらにもう1バッチ分(40リットル)練り混ぜ、ブリーディング量の測定を実施した。
実施例1〜8及び比較例1〜9によるコンクリート試験結果を表6に示す。
Figure 0006324204
実施例1〜8及び比較例1〜9の評価結果を表7にまとめた。
評価は以下の基準に基づく。
[製造の容易性]
結合材にセメントのみを使用するもの:〇
結合材にセメントとそれ以外の粉体を使用するもの:×
[流動性]
混練直後のスランプ値が21.0±2.5cmの範囲、且つ、混練直後のスランプフロー値が35〜50cmの範囲内:○
混練直後のスランプ値および混練直後のスランプフロー値の少なくとも一方が同範囲外:×
[経時保持性]
環境温度 20℃(実施例1〜6、比較例1〜5)
経時15分後のスランプフロー値が35cm以上:〇
経時15分後のスランプフロー値が35cm未満:×
環境温度 10℃(実施例7〜8、比較例6〜9)
経時30分後のスランプフロー値が35cm以上:〇
経時30分後のスランプフロー値が35cm未満:×
[充填性]
環境温度 20℃(実施例1〜6、比較例1〜5)
経時15分後のU形充填性高さが280mm以上:〇
経時15分後のU形充填性高さが280mm未満:×
環境温度 10℃(実施例7〜8、比較例6〜9)
経時30分後のU形充填性高さが280mm以上:〇
経時30分後のU形充填性高さが280mm未満:×
[コンクリートの状態]
練上がり直後のスランプフローに目視で水の浮きが認められなければ:〇
練上がり直後のスランプフローに目視で水の浮きが認められれば:×
[ブリーディング量]
環境温度 20℃(実施例1〜6、比較例1〜5)
ブリーディング量が0.15cm/cm未満:〇
ブリーディング量が0.15cm/cm以上:×
環境温度 10℃(実施例7〜8、比較例6〜9)
ブリーディング量が0.30cm/cm未満:〇
ブリーディング量が0.30cm/cm以上:×
Figure 0006324204
本発明のコンクリート組成物は、いずれの環境温度においても、製造が容易であり、かつ、経時保持性、流動性および材料分離抵抗性に優れていることが分かった。
本発明のコンクリート組成物は、従来の粉体系中流動覆工コンクリートに比べて、中流動覆工コンクリートを得る際の取扱いが容易で、且つ、得られた中流動覆工コンクリートの経時保持性及び流動性が従来の増粘剤系中流動覆工コンクリートと同等以上であることが確認された。
細骨材の種類によりブリーディングが多く発生する条件でも従来の増粘剤系中流動覆工コンクリートに比べて低減効果が得られ、粉体系中流動覆工コンクリートと同程度であることが確認された。また、練上がり直後のスランプフローに水の浮きは認められず、材料分離抵抗性に優れる適度な粘性を持つコンクリートであることが確認された。
本発明は、セメント組成物に適度な粘性を付与し、且つ、ブリーディングを抑制し、施工性向上及び欠陥防止に優れたセメント組成物を提供することが可能となるため、特にトンネル工事における中・高流動覆工コンクリートに適用することができる。

Claims (12)

  1. ポリカルボン酸系共重合体(A)からなる減水成分と、スルホ基含有(メタ)アクリルアミド誘導体を由来とする構造単位を含む水溶性高分子(B)からなる粘性調整成分と、糖アルコール(C)からなるブリーディング低減成分とを含有するセメント添加剤を含有し、水結合材比が40〜60質量%、スランプ値が22.5±4.0cmの範囲で、かつ、スランプフロー値が35〜70cmであることを特徴とするトンネル覆工用コンクリート組成物。
  2. 前記スランプ値が21.0±2.5cmの範囲で、かつ、前記スランプフロー値が35〜50cmであることを特徴とする、請求項1に記載のトンネル覆工用コンクリート組成物。
  3. 前記セメント添加剤の全質量において、前記ポリカルボン酸系共重合体(A)の含有量は10〜30質量%、前記水溶性高分子(B)の含有量は0.05〜1質量%、前記糖アルコール(C)の含有量は5〜13質量%であり、コンクリート組成物における前記セメント添加剤の含有量は、セメント100質量%に対して、0.5〜2.0質量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のトンネル覆工用コンクリート組成物。
  4. 前記ポリカルボン酸系共重合体(A)が、一般式(1)で表される構造単位を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のトンネル覆工用コンクリート組成物。
    Figure 0006324204
    (式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。AOは、同一又は異なって、炭素数2〜3のオキシアルキレン基を表す。mは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜30の数である。)
  5. 前記ポリカルボン酸系共重合体(A)は、2種類のポリカルボン酸系共重合体の混合物であって、
    第1、第2のポリカルボン酸系共重合体をこれらの合計100質量%に対して、第1のポリカルボン酸系共重合体/第2のポリカルボン酸系共重合体=55〜85/15〜45の質量比で含有し、
    前記第1、第2のポリカルボン酸系共重合体は、一般式(1a)、一般式(1b)及び一般式(2)で表される構造単位を含み、
    Figure 0006324204
    (式(1a)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。AOは、同一又は異なって、炭素数2〜3のオキシアルキレン基を表す。mは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜9の整数である。)
    Figure 0006324204
    (式(1b)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。AOは、同一又は異なって、炭素数2〜3のオキシアルキレン基を表す。mは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、10〜30の整数である。m−mは8〜25である。)
    Figure 0006324204
    (式(2)中、Mは、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)
    前記第1のポリカルボン酸系共重合体は、前記一般式(1a)で表される構造単位を形成するモノマー(I)と、前記一般式(1b)で表される構造単位を形成するモノマー(II)と、前記一般式(2)で表される構造単位を形成するモノマー(III)を、前記モノマー(I)〜(III)の合計100質量%に対して、モノマー(I)/モノマー(II)/モノマー(III)=1〜78/1〜78/21〜25の質量比で含むモノマー成分を重合して得られる共重合体であり、
    前記第2のポリカルボン酸系共重合体は、前記モノマー(I)〜(III)を、前記モノマー(I)〜(III)の合計100質量%に対して、モノマー(I)/モノマー(II)/モノマー(III)=3〜70/10〜83/14〜20の質量比で含むモノマー成分を重合して得られる共重合体であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のトンネル覆工用コンクリート組成物。
  6. 前記糖アルコール(C)は、エリトリトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、ガラクチトール、イノシトール及びマルチトールから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載のトンネル覆工用コンクリート組成物。
  7. 前記糖アルコール(C)は、ソルビトールとマルチトールの混合物であって、ソルビトールおよびマルチトールの合計含有量100質量%に対して、ソルビトール/マルチトール=50〜80/20〜50であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のトンネル覆工用コンクリート組成物。
  8. 前記水溶性高分子(B)は、前記スルホ基含有(メタ)アクリルアミド誘導体を由来とする構造単位として、一般式(3)で表される構造単位を含み、質量平均分子量が50,000〜20,000,000g/molであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載のトンネル覆工用コンクリート組成物。
    Figure 0006324204
    (式(3)中、Rは水素又はメチル基、R、R、Rは、水素、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、又は、メチル基で置換されていてもよいフェニル基であり、Mは、水素、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム又は有機アンモニウムであり、aは、1/2又は1である。)
  9. 前記セメント添加剤が温度5〜40℃において、水溶液であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のトンネル覆工用コンクリート組成物。
  10. コンクリート組成物に含まれる骨材の粒径0.075mm以下の微粒分が1.0%以上5.0%以下であり、且つ細骨材の表乾密度が2.60g/cm以上3.20g/cm以下であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のトンネル覆工用コンクリート組成物。
  11. 水結合材比が40〜60質量%、スランプ値が22.5±4.0cmの範囲で、かつ、スランプフロー値が35〜70cmであるトンネル覆工用コンクリート組成物の製造方法であって、
    ポリカルボン酸系共重合体(A)からなる減水成分と、スルホ基含有(メタ)アクリルアミド誘導体を由来とする構造単位を含む水溶性高分子(B)からなる粘性調整成分と、糖アルコール(C)からなるブリーディング低減成分とを含むセメント添加剤を予備調製する工程と、
    予備調製したセメント添加剤、水、結合材および骨材を混合してコンクリート組成物を予備調製する工程と、
    予備調製したコンクリート組成物の温度を測定する工程と、
    前記予備調製したコンクリート組成物の温度が所定の閾値以下である場合に、前記予備調製したセメント添加剤と比較して前記糖アルコール(C)の含有率が高いセメント添加剤を新たに調製する工程と、
    新たに調製したセメント添加剤、前記水、前記結合材および前記骨材を混合して新たにコンクリート組成物を調製する工程と、を含むことを特徴とするトンネル覆工用コンクリート組成物の製造方法。
  12. 水結合材比が40〜60質量%、スランプ値が21.0±2.5cmの範囲で、かつ、スランプフロー値が35〜50cmであるトンネル覆工用コンクリート組成物の製造方法であって、
    ポリカルボン酸系共重合体(A)からなる減水成分と、スルホ基含有(メタ)アクリルアミド誘導体を由来とする構造単位を含む水溶性高分子(B)からなる粘性調整成分と、糖アルコール(C)からなるブリーディング低減成分とを含むセメント添加剤を予備調製する工程と、
    予備調製したセメント添加剤、水、結合材および骨材を混合してコンクリート組成物を予備調製する工程と、
    予備調製したコンクリート組成物の温度を測定する工程と、
    前記予備調製したコンクリート組成物の温度が所定の閾値以下である場合に、前記予備調製したセメント添加剤と比較して前記糖アルコール(C)の含有率が高いセメント添加剤を新たに調製する工程と、
    新たに調製したセメント添加剤、前記水、前記結合材および前記骨材を混合して新たにコンクリート組成物を調製する工程と、を含むことを特徴とするトンネル覆工用コンクリート組成物の製造方法。
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