JP6314615B2 - 加飾発泡プラスチック成形体 - Google Patents
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Description
また、レーザーマーキングのように、レーザー光をプラスチック成形体に照射しマーキングを行う手段も知られている。かかる手段は、インキ等を使用せず、衛生性、環境性を有するものの、コントラストが低く、視認性が低いという欠点があり、視認性を高めるためには、発色材やレーザー光吸収のための顔料等をプラスチック成形体に添加するなどの手段を採用することが必要となり、結果として、衛生性、環境性を犠牲にしなければならない。
かかる方法は、レーザー光を照射することにより、レーザー光照射部分を選択的に発泡させて加飾を行うというものであり、インキや顔料などの衛生性や環境に悪影響を与える添加剤を使用する必要が無いという点で極めて意義深い方法である。
本発明の他の目的は、容易な手段で前記加飾部が形成された加飾発泡プラスチック成形体を提供することにある。
(1)前記加飾部が線状形態を有していること、
(2)前記加飾部が文字形態を有していること、
(3)前記加飾部以外の発泡領域には、発泡セルが存在していない表皮層が2〜200μmの厚みで形成されていること、
(4)前記発泡領域内に分布しており且つ粗大化変形していない発泡セルは、前記発泡領域内に分布している発泡セルは、延伸により延伸方向に引き伸ばされた偏平形状を有していること、
(5)容器であること、
が好適である。
不活性ガスが含浸された熱可塑性樹脂からなるガス含浸未発泡成形体を用意する工程;
該ガス含浸未発泡成形体を加熱することにより、発泡セルが分布した発泡領域を有する未加飾発泡成形体を作製する工程;
次いで、前記発泡領域の一部を局部加熱して発泡セルの形態を局部的に粗大化変形させ、この発泡セルの局部的な粗大化変形により光線透過率の低下と成形体表面の粗面化により加飾部を形成する工程;
を含む加飾発泡プラスチック成形体の製造方法が提供される。
かかる製造方法においては、前記発泡領域の局部加熱に先立って、未加飾発泡成形体を延伸成形することが望ましい。
例えば、発泡セルの生成により加飾部を形成する場合には、加飾部の周囲が透明であるため、加飾部の背景が視認されてしまい、その視認性は低く、加飾部を鮮明に視認することができないが、本発明では、加飾部の周囲は、発泡によって遮光性が付与されて不透明となっており、加飾部の周囲の背景は視認されず、加飾部を選択的に視認することができるため、発泡領域中の加飾部を鮮明に視認することができるわけである。本発明において、加飾部の形状は模様、図形、文字など特に制限はないが、周囲が不透明となっているため、加飾部を細い線状の像(例えば文字像)とした場合にも、これを鮮明に視認することができるという特徴を有する。
しかも、本発明では、このような視認性の向上は、成形体中に着色剤等を配合することなく実現できるため、衛生性や環境性を低下せしめるおそれもなく、さらには、リサイクル性に優れているという発泡を利用した加飾の利点が損なわれることもない。
本発明の加飾発泡プラスチック成形体(以下、単に加飾発泡成形体と略す)における加飾部の形成原理を説明するための図1を参照して、全体として10で示されている加飾発泡成形体(図1(b))は、発泡セル3が分布している発泡領域Aを備えた未加飾の発泡成形体1を加飾処理することにより形成される。
即ち、予め設定されたデザインに対応して、この発泡領域Aの一部を局部的に加熱することにより、発泡領域A中の発泡セル3、特に表層部に分布している発泡セル3の一部の形態が変化して発泡領域A中に加飾部Bが形成されることとなる。図1(b)において、この局部的に形態変化した発泡セルはXで示されている。即ち、発泡領域Aの一部を加熱することにより、加熱された部分の表層部に存在している発泡セル3が膨張し且つ変形、または破泡すると同時に、このような形態変化した発泡セルXにより表面が突出した粗面(例えば表面粗さRaが5μm以上)となり、発泡セル3の膨張変形による遮光性の変化や表面の形態変化により、目的とするデザインに対応する加飾部Bが形成されるわけである。
このような発泡セル3の形態変化を利用して加飾部Bが形成される本発明では、加飾部Bの周囲が形態変化していない発泡セル3が分布している発泡領域Aであり、発泡セル3による光の散乱によって遮光性が付与され、透明性が大きく低下している。即ち、加飾部Bの周囲の背景を視認することができない。この結果、表面の粗面化と相俟って、加飾部Bの視認性が大きく向上することとなる。例えば、本発明では、加飾部Bを線状形態の像、例えば文字形態の像のように細いものであっても、高い視認性を確保することができる。
このように、本発明では、インキや着色剤などの添加剤を用いずに高い視認性を確保することができ、衛生性や環境性の点で極めて有利であり、さらにはリサイクル性にも優れたものとなる。
従って、このような手段では、視認性を高めようとするときには、顔料等の着色剤を配合して周囲を不透明とすることが必要となり、この結果、衛生性や環境性、さらには発泡成形体に特有のリサイクル性も損なわれてしまうこととなる。
特に、この成形体を容器の成形に用いる場合には、オレフィン系樹脂やポリエステル樹脂が好適であり、中でもポリエステル樹脂、特にポリエチレンテレフタレート(PET)は、本発明の利点を最大限に発揮させる上で最適である。
前述した本発明の加飾発泡プラスチック成形体10は、発泡後に、加飾のための局部加熱を行うことを除けば、それ自体公知の窒素ガスや炭酸ガスなどの不活性ガスを発泡剤として用いての物理発泡を利用して物理発泡により製造される。
即ち、本発明では、特に衛生性や環境性の観点、及び微細な発泡セル3を高密度で形成でき、さらにはラミネートなどの手段を用いずに発泡セル3が分布していない表皮層15を容易に形成できるという観点から、不活性ガスを用いた物理発泡を利用して未加飾の発泡成形体1を製造する。
成形中での発泡を抑制するためには、例えば適度な圧力に保持された成形金型内に、ガス含浸溶融樹脂を、保圧をかけながら射出充填することにより、射出成形を行えばよい。即ち、成形金型内を適度な圧力に保持してガス含浸溶融樹脂を射出充填することにより、表層部での破泡を回避し、スワールマークなどの表面荒れを抑制し、さらに、保圧(即ち、樹脂圧)によって成形金型内での発泡(発泡セル3の生成)を抑制できる。
例えば、本発明の加飾発泡成形体10を容器とする場合には、前述した方法により試験管状の発泡成形体を成形し、次いでブロー成形により、ボトル形状の未加飾発泡成形体とすればよく、カップ状の容器とする場合には、シート形状の発泡成形体を成形し、次いで、プラグアシスト成形に代表される真空成形などによって延伸を行うことにより、カップ形状の未加飾発泡成形体1を得ることができる。さらに、シート形状の発泡成形体を延伸成形して発泡延伸フィルムを作製し、この延伸フィルムを未加飾発泡成形体1とすることもできる。
また、レーザー光としても特に制限されないが、工業的には、ローコストなどの観点から炭酸ガスレーザーが好適に使用される。
(実施例1)
除湿乾燥機で十分乾燥させた市販のボトル用PET樹脂(固有粘度:0.84dl/g)を射出成形機のホッパーへ供給し、さらに射出成形機の加熱筒の途中から窒素ガスを0.1重量%供給しPET樹脂と混練して溶解させ、金型内での発泡を抑えるためあらかじめ金型内部を空気で昇圧しておき(金型内圧力5MPa)、発泡しないよう保圧の程度を調整(保圧力50MPa、射出保圧時間18秒)して射出成形し、ガスは含浸しているが非発泡である試験管形状の容器用プリフォーム(重量;25.0g)を得た。
ガスを溶解させないこと以外は実施例1と同等の条件で作成した非発泡ボトルから切り出したサンプル片を、高圧(8MPa)の炭酸ガス環境下に30分留置し、炭酸ガスを含浸させガス含浸非発泡PETシートを作製した。
実施例1と同じ条件で作製した発泡ボトルに対し、実施例1と同じレーザーマーカーを用い、出力20%、走査速度2000mm/secの条件でレーザー光を照射し、マーク状の加飾部を作製した。この加飾部は実施例1と同様に非加飾部とのコントラストにより高い視認性を発現し、また、非加飾部の表面平滑性により見る方向によって見え方の異なる独特な外観がえられた。作製した加飾部の写真を図5に示す。
ガスを溶解させないこと以外は実施例1と同等の条件で作成した非発泡ボトルに、実施例2と同じレーザーマーカーを用い、同じ条件でレーザー光を照射し、マーク状の加飾部を作製した。この加飾部の表面粗さRaは4.0μmであり、周辺の非加飾部の表面粗さRaは0.03μmと加飾部は十分に粗面化されているが、加飾部、非加飾部ともに透明でありコントラストが低く視認性が不十分であった。作製した加飾部の写真を図7に示す。
実施例1と同じ条件で作製した発泡ボトルに対し、実施例1と同じレーザーマーカーを用い、出力50%、走査速度1000mm/secの条件でレーザー光を照射し、マーク状の加飾部を作製した。加飾部周辺のボトル外壁がレーザーの熱により変形や変色が見られ、外観に悪影響を及ぼした。
実施例1と同じ条件で作製した発泡ボトルに対し、実施例1と同じレーザーマーカーを用い、出力10%、走査速度2000mm/secの条件でレーザー光を照射し、マーク状の加飾部を作製した。加飾部と非加飾部のコントラストが低く、十分な視認性を得ることができなかった。この加飾部の表面粗さRaは0.77μmであり、周辺の非加飾部の表面粗さRaは0.94μmと加飾部の表面粗さが非加飾部より低い値となっていた。
市販されているカップ型発泡スチロール容器の壁面(厚み:約2mm)に対し、実施例2と同じレーザーマーカーを用い同じ条件でレーザーを照射したところ、照射部が熱により溶融、陥没し、実施例2のような加飾効果を得ることはできなかった。この理由としては、発泡スチロール容器は発泡倍率が高いため表皮層が存在せず、内部の気泡間樹脂壁も5乃至15μm程度ときわめて薄いため照射されたレーザーの熱により溶融してしまったためである。
3:発泡セル
10:加飾発泡成形体
15:表皮層
A:発泡領域
B:加飾部
X:膨張変形した発泡セル
Claims (8)
- 物理発泡により生成した発泡セルが内部に分布した発泡領域が形成されている発泡プラスチック成形体において、該発泡セルの一部が局部的に粗大化変形しており、この発泡セルの局部的な粗大化変形による光線透過率の低下と成形体表面の粗面化とにより加飾部が形成されていることを特徴とする加飾発泡プラスチック成形体。
- 前記加飾部が線状形態を有している請求項1に記載の加飾発泡プラスチック成形体。
- 前記加飾部が文字形態を有している請求項2に記載の加飾発泡プラスチック成形体。
- 前記加飾部以外の発泡領域には、発泡セルが存在していない表皮層が2〜200μmの厚みで形成されている請求項1〜3の何れかに記載の加飾発泡プラスチック成形体。
- 前記発泡領域内に分布しており且つ粗大化変形していない発泡セルは、延伸により延伸方向に引き伸ばされた偏平形状を有している請求項1〜4の何れかに記載の加飾発泡プラスチック成形体。
- 容器である請求項1〜5の何れかに記載の加飾発泡プラスチック成形体。
- 不活性ガスが含浸された熱可塑性樹脂からなるガス含浸未発泡成形体を用意する工程;
該ガス含浸未発泡成形体を加熱することにより、発泡セルが分布した発泡領域を有する未加飾発泡成形体を作製する工程;
次いで、前記発泡領域の一部を局部加熱して発泡セルの形態を局部的に粗大化変形させ、この発泡セルの局部的な粗大化変形により光線透過率の低下と成形体表面の粗面化とにより加飾部を形成する工程;
を含む請求項1に記載の加飾発泡プラスチック成形体の製造方法。 - 前記発泡領域の局部加熱に先立って、未加飾発泡成形体を延伸成形する請求項7に記載の製造方法。
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