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JP6396188B2 - 車両の車体速度推定装置 - Google Patents

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JP6396188B2 JP2014239454A JP2014239454A JP6396188B2 JP 6396188 B2 JP6396188 B2 JP 6396188B2 JP 2014239454 A JP2014239454 A JP 2014239454A JP 2014239454 A JP2014239454 A JP 2014239454A JP 6396188 B2 JP6396188 B2 JP 6396188B2
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Description

この発明は、車両の車体速度推定装置に関し、例えば、トラクション制御やアンチロックブレーキ制御を行う際に必要とされる車体速度を推定する技術に関する。
トラクション制御装置やアンチロックブレーキ制御装置において、スリップ率制御を行う際には、車体速度が必要である。全ての車輪に制動力発生手段を備える車両では、車輪速から車体速度を推定するとき、全ての車輪が路面に対してロック方向にスリップする可能性があり、さらに駆動輪はスピン方向にもスリップし得るので、最もスリップの小さい車輪を判断する必要がある。
従来の車体速度演算装置としては、例えば、以下の従来例が公知である。
この従来例には、全輪の車輪速度を車輪速センサで個別に検出し、アンチロックブレーキ制御を指令していない場合には、各車輪速度の中での最低値を車体速度として推定し、アンチロックブレーキ制御を指令している場合には、各車輪速度の中での最高値を車体速度として推定するようにしたアンチロックブレーキ制御装置が開示されている(特許文献1)。
特開平1−218953号公報
前記従来例では、全輪ともロック傾向もしくはスピン傾向の場合には、最もグリップしている車輪の車輪速から車体速度が推定され、実際の車体速度に近い車体速度が得られる。
しかし、1輪もしくは複数輪に駆動トルク、他の1輪もしくは他の複数輪に制動トルクがそれぞれ付加され、ロック傾向の車輪とスピン傾向の車輪が混在する場合、前記従来例では最高値または最低値を車体速度として推定するため、推定された車体速度が実際の車体速度からかけ離れてしまうおそれがある。
この発明の目的は、少なくとも1輪に駆動力を発生しているときに、他の少なくとも1輪に制動力を発生可能な車両において、車輪速から車体速度を精度よく推定することができる車両の車体速度推定装置を提供することである。
この発明の車両の車体速度推定装置5は、全ての車輪1〜4に駆動力および制動力を発生可能な制駆動力発生手段6を備えた車両において、各車輪1〜4の車輪速から、車体速度を推定する車体速度推定装置であって、
全ての車輪1〜4の制駆動力の絶対値が閾値以上で、且つ、これら全ての車輪1〜4の制駆動力につき正負が混在するか否かを判定する判定手段20と、
この判定手段20により、全ての車輪1〜4の制駆動力の絶対値が閾値以上で、且つ、これら全ての車輪1〜4の制駆動力につき正負が混在すると判定されたとき、制駆動力が正の車輪のうち車輪速が最低値の車輪と、制駆動力が負の車輪のうち車輪速が最高値の車輪とを抽出し、抽出した二つの車輪iについて、それぞれ車輪角加速度と規範車輪角加速度との偏差を算出する偏差算出手段21と、
この偏差算出手段21でそれぞれ算出された偏差のうち、絶対値が小さい方の車輪iの車輪速から定められた基準に従って車体速度を推定する車体速度推定手段22と、
を設けたことを特徴とする。
前記「駆動力および制動力」は、総称して「制駆動力」と称される。
前記閾値、前記定められた基準は、試験やシミュレーション等の結果により定められる。
前記規範車輪角加速度とは、各車輪に作用する制駆動力の総和によって車体に生じる前後加速度から算出される、滑りがない場合の理想的な車輪角加速度である。
この構成によると、この車両の車体速度推定装置5は、以下のように各車輪1〜4の車輪速から車体速度を推定する。判定手段20は、全ての車輪1〜4の制駆動力の絶対値が閾値以上で、且つ、これら全ての車輪1〜4の制駆動力につき正負が混在するか否かを判定する。つまり判定手段20は、全ての車輪1〜4につき、ロック傾向の車輪とスピン傾向の車輪とが混在しているか判定する。
混在しているとの判定で、偏差算出手段21は、制駆動力が正の車輪のうち車輪速が最低値の車輪と、制駆動力が負の車輪のうち車輪速が最高値の車輪とを抽出し、抽出した二つの車輪iについて、それぞれ車輪角加速度と規範車輪角加速度との偏差を算出する。二つの車輪iから、滑りがない場合の理想的な車輪角加速度である規範車輪角加速度に近似する車輪角加速度の車輪i、つまり最も滑りの小さな車輪iを見出すためである。車体速度推定手段22は、偏差の絶対値が小さい方の車輪iの車輪速から車体速度を推定する。
このように全ての車輪1〜4とも滑りが大きくロック傾向とスピン傾向の車輪が混在する場合にも、最も滑りの小さな車輪iの車輪速から車体速度を推定するため、従来例よりも精度良く車体速度を推定することができる。
前記判定手段20は、制駆動力の絶対値が閾値未満の車輪iが存在するか否かを判定する機能を有し、前記判定手段20により、制駆動力の絶対値が閾値未満の車輪iが存在すると判定されたとき、前記車体速度推定手段22は、前記閾値未満の車輪iの車輪速から定められた基準に従って車体速度を推定するものとしても良い。この場合、判定手段20により、制駆動力の絶対値が閾値未満の車輪iが存在する、つまりグリップしている車輪iがあると判定されると、車体速度推定手段22は、そのグリップしている車輪iの車輪速から車体速度を推定する。したがって、推定された車体速度が実際の車体速度からかけ離れることを防止し得る。
前記判定手段20は、全ての車輪1〜4の制駆動力の絶対値が閾値以上で、且つ、これら全ての車輪1〜4の制駆動力が負であるか否かを判定する機能を有し、前記判定手段20により、全ての車輪1〜4の制駆動力の絶対値が閾値以上で、且つ、これら全ての車輪1〜4の制駆動力が負であると判定されたとき、前記車体速度推定手段22は、車輪速が最高値の車輪iの車輪速から定められた基準に従って車体速度を推定するものとしても良い。
全ての車輪1〜4の制駆動力の絶対値が閾値以上で、且つ、これら全ての車輪1〜4の制駆動力が負である場合、つまり全ての車輪1〜4がロック傾向にある場合、これら車輪1〜4の中から車輪速が最高値の車輪iを選択することで、最もグリップしている車輪iを見出すことができる。この最もグリップしている車輪iの車輪速から車体速度を推定し得る。したがって、推定された車体速度が実際の車体速度からかけ離れることを防止し得る。
前記判定手段20は、全ての車輪1〜4の制駆動力の絶対値が閾値以上で、且つ、これら全ての車輪1〜4の制駆動力が正であるか否かを判定する機能を有し、前記判定手段20により、全ての車輪1〜4の制駆動力の絶対値が閾値以上で、且つ、これら全ての車輪1〜4の制駆動力が正であると判定されたとき、前記車体速度推定手段22は、車輪速が最低値の車輪iの車輪速から定められた基準に従って車体速度を推定するものとしても良い。
全ての車輪1〜4の制駆動力の絶対値が閾値以上で、且つ、これら全ての車輪1〜4の制駆動力が正である場合、つまり全ての車輪1〜4がスピン傾向にある場合、これら車輪1〜4の中から車輪速が最低値の車輪iを選択することで、最もグリップしている車輪iを見出すことができる。この最もグリップしている車輪iの車輪速から車体速度を推定し得る。したがって、推定された車体速度が実際の車体速度からかけ離れることを防止し得る。
前記偏差算出手段21は、全車輪1〜4の制駆動力の和を車両重量で除した値を基に、前記規範車輪角加速度を算出するものとしても良い。この場合、例えば、前後加速度センサ24で検出された値に基づき規範車輪角加速度を算出するよりも、部品点数を低減でき、コスト低減を図ることができる。
前記車両の前後加速度を検出する前後加速度センサ24を設け、前記偏差算出手段21は、前記前後加速度センサ24で検出された前後加速度に基づき、前記規範車輪角加速度を算出するものとしても良い。
前記車両は、前記制駆動力発生手段としてモータ6を備え、このモータ6は、一部または全体が車輪内に配置されて前記モータ6と車輪用軸受16と減速機15とを含むインホイールモータ駆動装置IWMを構成するものとしても良い。
この発明の車両の車体速度推定装置は、全ての車輪に駆動力および制動力を発生可能な制駆動力発生手段を備えた車両において、各車輪の車輪速から、車体速度を推定する車体速度推定装置であって、全ての車輪の制駆動力の絶対値が閾値以上で、且つ、これら全ての車輪の制駆動力につき正負が混在するか否かを判定する判定手段と、この判定手段により、全ての車輪の制駆動力の絶対値が閾値以上で、且つ、これら全ての車輪の制駆動力につき正負が混在すると判定されたとき、制駆動力が正の車輪のうち車輪速が最低値の車輪と、制駆動力が負の車輪のうち車輪速が最高値の車輪とを抽出し、抽出した二つの車輪について、それぞれ車輪角加速度と規範車輪角加速度との偏差を算出する偏差算出手段と、この偏差算出手段でそれぞれ算出された偏差のうち、絶対値が小さい方の車輪の車輪速から定められた基準に従って車体速度を推定する車体速度推定手段とを設けた。このため、少なくとも1輪に駆動力を発生しているときに、他の少なくとも1輪に制動力を発生可能な車両において、車輪速から車体速度を精度よく推定することができる。
この発明の実施形態に係る車両の車体速度推定装置のシステム構成を平面視で概略示す図である。 同車両のインホイールモータ駆動装置の断面図である。 同車体速度推定装置の制御系のブロック図である。 同車両の制駆動力に応じて車体速度を推定する例を示す図である。 同車体速度推定装置の推定のフローチャートである。 この発明の他の実施形態係る車両の車体速度推定装置のシステム構成を平面視で概略示す図である。
この発明の実施形態に係る車両の車体速度推定装置を図1ないし図5と共に説明する。
図1は、この車両の車体速度推定装置5のシステム構成を平面視で概略示す図である。車体速度推定装置5は、各車輪の車輪速から、車体速度を推定する装置である。この実施形態では、車体速度推定装置5が搭載される車両として、左右の前輪1,2および後輪3,4が、それぞれ制駆動力発生手段であるモータ6によって独立して駆動される四輪独立駆動車が適用される。各車輪1〜4に、モータ6と、車輪の回転速度を検出する車輪速センサ7とを備えている。各モータ6は、後述のインホイールモータ駆動装置IWMを構成する。
車両の制御系は、車体速度推定装置5を含むECU8と、このECU8よりも上位の制御手段である上位ECU9と、インバータ装置10とを有する。ECU8および上位ECU9は、それぞれコンピュータとこれに実行されるプログラム、並びに各種の電子回路等で構成される。上位ECU9は、例えば、車両全体の協調制御、統括制御を行う電気制御ユニットであり、トルク分配手段9aが設けられている。
このトルク分配手段9aは、アクセル操作手段11からの加速指令、およびブレーキ操作手段12からの減速指令が入力され、前記加速指令と前記減速指令の差に応じた制駆動指令を、ECU8および各インバータ装置10に分配する。前記制駆動指令は、例えば、トルク指令である。
インバータ装置10は、各モータ6に対して設けられたパワー回路部10aと、このパワー回路部10aを制御するモータコントロール部10bとを有する。各パワー回路部10aは、互いにモータトルクが異なるように独立して制御可能なものとされる。モータコントロール部10bは、例えば、インホイールモータ駆動装置IWMに関する各検出値や制御値等の各情報をECU8に出力する機能を有する。
モータコントロール部10bは、ECU8から与えられる制駆動トルク指令値に従い、電流指令に変換して、パワー回路部10aのPWMドライバに電流指令を与える。なお、左右の前輪駆動用のモータ6,6に対応するインバータ装置10,10は、例えば、車体13上で一つの筐体に収容される。左右の後輪駆動用のモータ6,6に対応するインバータ装置10,10も同様である。
図2は、インホイールモータ駆動装置IWMの断面図である。各インホイールモータ駆動装置IWMは、それぞれ、モータ6、減速機15、および車輪用軸受16を有し、これらの一部または全体が車輪内に配置される。モータ6の回転は、減速機15および車輪用軸受16を介して車輪1,(2〜4)に伝達される。車輪用軸受16のハブ輪16aのフランジ部には、ブレーキロータ17が固定され、同ブレーキロータ17は車輪1,(2〜4)と一体に回転する。モータ6は、例えば、ロータ6aのコア部に永久磁石が内蔵された埋込磁石型同期モータである。このモータ6は、ハウジング18に固定したステータ6bと、回転出力軸19に取り付けたロータ6aとの間にラジアルギャップを設けたモータである。
図3は、この車体速度推定装置5の制御系のブロック図である。以後、図1も適宜参照しつつ説明する。ECU8に車体速度推定装置5が設けられ、この車体速度推定装置5は、判定手段20と、偏差算出手段21と、車体速度推定手段22と、記憶手段23とを有する。判定手段20は、各車輪に作用する制駆動力を推定し、これら制駆動力の絶対値がそれぞれ閾値以上か否かを判定する。さらに判定手段20は、各車輪の制駆動力の正負を判定する。車輪において、駆動力が発生しているとき制駆動力は「正」と判定され、制動力が発生しているとき制駆動力は「負」と判定される。
各車輪の車輪速ωと、各車輪に付加するトルクTから、各車輪に作用する制駆動力Fを、次式(1)により推定する。なお各車輪速ωは各車輪速センサ7から得られる。

Figure 0006396188
ただし、Iは車輪の慣性モーメント、rはタイヤ半径であり、iは車輪番号(i=1,…,4)である。モータコントロール部10bは、例えば、電流検出手段Saから得られるモータ電流値を得て、各車輪のモータトルクTを推定する。モータトルクTはモータ電流と比例関係にあるからである。
判定手段20により、制駆動力Fの絶対値が閾値A未満の車輪が存在すると判定されると、その閾値A未満の車輪がグリップしていると判断し、車体速度推定手段22は、前記車輪の車輪速ωから次式(2)に従って車体速度Vを推定する。閾値Aは、例えば、試験やシミュレーション等の結果により定められて記憶手段23に書き換え可能に記憶される。
V=rω (2)
判定手段20により、全ての車輪の制駆動力Fの絶対値が閾値A以上で、且つ、これら全ての車輪の制駆動力Fが「負」であると判定されると、全ての車輪がロック傾向であると判断する。この場合、車体速度推定手段22は、最もグリップ状態に近い車輪速が最高値の車輪の車輪速ωmax(=Max(ω))に、前記車輪のタイヤ半径rを乗じて、車体速度Vを推定する。
判定手段20により、全ての車輪の制駆動力Fの絶対値が閾値A以上で、且つ、これら全ての車輪の制駆動力Fが「正」であると判定されると、全ての車輪がスピン傾向であると判断する。この場合、車体速度推定手段22は、最もグリップ状態に近い車輪速が最低値の車輪の車輪速ωmin(=Min(ω))に、前記車輪のタイヤ半径rを乗じて、車体速度Vを推定する。
判定手段20により、全ての車輪の制駆動力Fの絶対値が閾値A以上で、且つ、これら全ての車輪の制駆動力Fにつき「正負」が混在すると判定されると、ロック傾向の車輪とスピン傾向の車輪が混在すると判断する。この場合、偏差算出手段21は、制駆動力Fが「正」の車輪のうち車輪速が最低値の車輪と、制駆動力Fが「負」の車輪のうち車輪速が最高値の車輪とを抽出する。
Figure 0006396188
Figure 0006396188
図4は、この車両の制駆動力に応じて車体速度を推定する例を示す図である。同図4において、車輪1〜4に付した矢印のうち、前向きの矢印は駆動力(制駆動力は「正」)を表し、後向きの矢印は制動力(制駆動力は「負」)を表す。図3も参照しつつ説明する。図4(a)に示すように、判定手段20により、全ての車輪1〜4の制駆動力の絶対値が閾値以上で、且つ、これら全ての車輪1〜4の制駆動力につき正負が混在すると判定されたとき、偏差算出手段21により算出対象となる二つの車輪を抽出する。
偏差算出手段21は、制駆動力が正の車輪1,3(図4(a)において左前輪および左後輪)のうち車輪速が最低値の車輪3(例えば、左後輪)と、制駆動力が負の車輪2,4(図4(a)において右前輪および右後輪)のうち車輪速が最高値の車輪2(例えば右前輪)とを抽出する。偏差算出手段21は、抽出した二つの車輪3,2について、それぞれ前述の式(3)により偏差を算出する。車体速度推定手段22は、算出された偏差のうち、絶対値が小さい方の車輪3,(2)の車輪速から式(2)に従って車体速度Vを推定する。
図4(b)に示すように、判定手段20により、制駆動力の絶対値が閾値未満の車輪2(例えば右前輪)が存在すると判定されたとき、車体速度推定手段22は、前記車輪2の車輪速から式(2)に従って車体速度Vを推定する。
図4(c)に示すように、判定手段20により、全ての車輪1〜4の制駆動力の絶対値が閾値以上で、且つ、これら全ての車輪1〜4の制駆動力が負であると判定されたとき、車体速度推定手段22は、車輪速が最高値の車輪1(例えば左前輪)の車輪速から式(2)に従って車体速度Vを推定する。
図4(d)に示すように、判定手段20により、全ての車輪1〜4の制駆動力の絶対値が閾値以上で、且つ、これら全ての車輪1〜4の制駆動力が正であると判定されたとき、車体速度推定手段22は、車輪速が最低値の車輪4(例えば右後輪)の車輪速から式(2)に従って車体速度Vを推定する。
以上のように推定した車体速度を用いて、例えば、トラクション制御装置やアンチロックブレーキ制御装置において、スリップ率制御を精度良く行うことができる。
図5は、この車体速度推定装置の推定のフローチャートである。図1,図3も参照しつつ説明する。例えば、この車両の主電源を投入後本処理が開始し、判定手段20は、各電流検出手段Saから推定された各車輪1〜4のモータトルクT、および、各車輪速センサ7から得られた車輪速ωを読み込む(ステップS1)。次に、判定手段20は、各車輪1〜4に作用する制駆動力Fを式(1)により推定する(ステップS2)。これら制駆動力Fは、例えば、記憶手段23に一時的に記憶される。
次に、判定手段20は、全ての制駆動力の絶対値|F|と閾値Aとの関係を比較する(ステップS3)。制駆動力の絶対値|F|が閾値A未満の車輪1,(2〜4)が存在すると判定されたとき(ステップS3:Yes)、車体速度推定手段22はその車輪1,(2〜4)の車輪速ωから車体速度を推定する(ステップS4)。その後本処理を終了する。
全ての車輪1〜4の制駆動力の絶対値|F|が閾値A以上と判定され(ステップS3:No)、さらに全ての車輪1〜4の制駆動力Fが「負」であると判定されると(ステップS5:Yes)、車体速度推定手段22は、車輪速が最高値の車輪の車輪速ωmax(=Max(ω))から車体速度を推定する(ステップS6,S7)。その後本処理を終了する。
全ての車輪1〜4の制駆動力の絶対値|F|が閾値A以上で、さらに全ての車輪1〜4の制駆動力Fが「正」であると判定されると、(ステップS8:Yes)、車体速度推定手段22は、車輪速が最低値の車輪の車輪速ωmin(=Min(ω))から車体速度を推定する(ステップS9,S10)。その後本処理を終了する。
全ての車輪1〜4の制駆動力Fにつき「正負」が混在すると判定されると(ステップS8:No)、偏差算出手段21は、制駆動力F>0を満たす車輪iについて車輪速が最低値の車輪の車輪速ωmin(=Min(ω))を抽出し(ステップS11)、制駆動力F<0を満たす車輪iについて車輪速が最高値の車輪の車輪速ωmax(=Max(ω))を抽出する(ステップS12)。
次に、偏差算出手段21は、規範車輪角加速度を算出し(ステップS13)、抽出した二つの車輪について、それぞれ車輪角加速度と規範車輪角加速度との偏差を算出する(ステップS14)。次に、偏差算出手段21は、算出した偏差のうち絶対値が小さい方の車輪iの車輪速から車体速度を推定する(ステップS15)。その後本処理を終了する。
作用効果について説明する。
本実施形態の制御では、車輪1〜4のグリップ、ロック傾向またはスピン傾向を制駆動力を用いて判断しているため、車輪1〜4の回転角加速度が大きい過渡的な状態においても、前記グリップ、ロック傾向またはスピン傾向を精度良く判断することができる。全ての車輪1〜4のうちグリップしている車輪iがある場合は、その車輪速から車体速度が推定される。全ての車輪1〜4の滑りが大きくロック傾向またはスピン傾向の場合には、最もグリップ状態に近い車輪iから車体速度が推定される。
ロック傾向の車輪とスピン傾向の車輪とが混在する場合にも、規範車輪角加速度との偏差が小さい車輪iの車輪速から車体速度を推定することにより、最も滑りが小さい可能性が高い車輪iの車輪速から車体速度を推定することができる。
以上により、グリップ、ロック傾向、スピン傾向の車輪が混在する場合においても、最も滑りが小さい車輪の車輪速から車体速度を推定するため、従来例よりも精度良く車体速度を推定することができる。
他の実施形態について説明する。
以下の説明においては、各形態で先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
インホイールモータ駆動装置IWMにおいては、サイクロイド式の減速機、遊星減速機、2軸並行減速機、その他の減速機を適用可能であり、また、減速機を採用しない、所謂ダイレクトモータタイプであってもよい。
本実施形態では、車両として、各車輪1〜4にモータ6を備えた四輪駆動車で説明したが、この例に限定されるものではない。例えば、車両として、前輪1,2または後輪3,4の左右それぞれに一つずつモータ6を備えた二輪駆動車や、図6に示すように、前輪1,2または後輪3,4の左右両輪を一つのモータ6で駆動し、他方の左右輪3,4にそれぞれ一つずつモータ6を備えた、いわゆる3モータ式の四輪駆動車にも本制御を適用できる。また、車両を四輪車だけでなく三輪車に適用し、この三輪車における左右二輪または全輪を独立して駆動しても良い。
以上、実施形態に基づいてこの発明を実施するための形態を説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1〜4…車輪
5…車体速度推定装置
6…モータ(制駆動力発生手段)
15…減速機
16…車輪用軸受
20…判定手段
21…偏差算出手段
22…車体速度推定手段
24…前後加速度センサ
IWM…インホイールモータ駆動装置

Claims (7)

  1. 全ての車輪に駆動力および制動力を発生可能な制駆動力発生手段を備えた車両において、各車輪の車輪速から、車体速度を推定する車体速度推定装置であって、
    全ての車輪の制駆動力の絶対値が閾値以上で、且つ、これら全ての車輪の制駆動力につき正負が混在するか否かを判定する判定手段と、
    この判定手段により、全ての車輪の制駆動力の絶対値が閾値以上で、且つ、これら全ての車輪の制駆動力につき正負が混在すると判定されたとき、制駆動力が正の車輪のうち車輪速が最低値の車輪と、制駆動力が負の車輪のうち車輪速が最高値の車輪とを抽出し、抽出した二つの車輪について、それぞれ車輪角加速度と規範車輪角加速度との偏差を算出する偏差算出手段と、
    この偏差算出手段でそれぞれ算出された偏差のうち、絶対値が小さい方の車輪の車輪速から定められた基準に従って車体速度を推定する車体速度推定手段と、
    を設けたことを特徴とする車両の車体速度推定装置。
  2. 請求項1に記載の車両の車体速度推定装置において、前記判定手段は、制駆動力の絶対値が閾値未満の車輪が存在するか否かを判定する機能を有し、前記判定手段により、制駆動力の絶対値が閾値未満の車輪が存在すると判定されたとき、前記車体速度推定手段は、前記閾値未満の車輪の車輪速から定められた基準に従って車体速度を推定する車両の車体速度推定装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の車両の車体速度推定装置において、前記判定手段は、全ての車輪の制駆動力の絶対値が閾値以上で、且つ、これら全ての車輪の制駆動力が負であるか否かを判定する機能を有し、前記判定手段により、全ての車輪の制駆動力の絶対値が閾値以上で、且つ、これら全ての車輪の制駆動力が負であると判定されたとき、前記車体速度推定手段は、車輪速が最高値の車輪の車輪速から定められた基準に従って車体速度を推定する車両の車体速度推定装置。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車両の車体速度推定装置において、前記判定手段は、全ての車輪の制駆動力の絶対値が閾値以上で、且つ、これら全ての車輪の制駆動力が正であるか否かを判定する機能を有し、前記判定手段により、全ての車輪の制駆動力の絶対値が閾値以上で、且つ、これら全ての車輪の制駆動力が正であると判定されたとき、前記車体速度推定手段は、車輪速が最低値の車輪の車輪速から定められた基準に従って車体速度を推定する車両の車体速度推定装置。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車両の車体速度推定装置において、前記偏差算出手段は、全車輪の制駆動力の和を車両重量で除した値を基に、前記規範車輪角加速度を算出する車両の車体速度推定装置。
  6. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車両の車体速度推定装置において、前記車両の前後加速度を検出する前後加速度センサを設け、前記偏差算出手段は、前記前後加速度センサで検出された前後加速度に基づき、前記規範車輪角加速度を算出する車両の車体速度推定装置。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の車両の車体速度推定装置において、前記車両は、前記制駆動力発生手段としてモータを備え、このモータは、一部または全体が車輪内に配置されて前記モータと車輪用軸受と減速機とを含むインホイールモータ駆動装置を構成する車両の車体速度推定装置。
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