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JP6396180B2 - 車輪独立駆動式車両の駆動制御装置 - Google Patents

車輪独立駆動式車両の駆動制御装置 Download PDF

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Description

この発明は、例えば、左右2輪にインホイールモータ等を搭載した車輪独立駆動式車両の駆動制御装置に関し、いずれか1輪のモータやインバータのパワーデバイスの温度検出回路に異常が発生した場合の駆動制御技術に関する。
電気自動車等モータで駆動するような車両において、モータやインバータのパワーデバイスが過熱した場合には、モータの出力制限や出力停止を行って過熱に対する保護制御を行う(特許文献1)。
特開2012−186930号公報
しかし、モータ等の過熱を検知する温度検出回路に異常が発生した場合には、モータの出力制限や出力停止の制御ができなくなる。もし、モータ等が過熱した状態で制御を続けようとするなら、モータやインバータのパワーデバイスが絶対に許容温度を超えないような限られた出力、回転数でしかモータを駆動することができない。
この発明の目的は、車輪独立駆動式車両において、モータまたはインバータの温度を検出する温度検出手段に異常が発生した場合でも、モータに必要十分な駆動トルクを与えることができる車輪独立駆動式車両の駆動制御装置を提供することである。
この発明の車輪独立駆動式車両の駆動制御装置20は、左右の駆動輪2,2を個別に駆動する左右のモータ6,6を備えた車両に搭載され、
操作部16,17の操作に応じて指令トルクを生成し出力するECU21と、
直流電力を交流電力に変換するインバータ31を含むパワー回路部28、および、前記ECU21から与えられる前記指令トルクに従って前記パワー回路部28を介し前記モータ6をトルク制御するモータコントロール部29を有するインバータ装置22とを備えた車輪独立駆動式車両の駆動制御装置20において、
駆動輪2毎に前記モータ6または前記インバータ31の温度を検出する温度検出手段49と、
この温度検出手段49で検出された温度に基づいて前記モータ6の出力制限を行うトルク上限値設定部39と、
前記温度検出手段49のうち、前記左右の駆動輪2,2におけるいずれか一方の駆動輪2の前記モータ6または前記インバータ31の温度を検出する温度検出手段49に異常が発生したか否かを検出する異常検出手段51とを設け、
この異常検出手段51によりいずれか一方の駆動輪2に対応する前記温度検出手段49に異常が検出されると、前記トルク上限値設定部39は、前記一方の駆動輪2を駆動する前記モータ6で出力可能な出力トルクの上限値を、異常が検出されていない他方の駆動輪2に対応する前記温度検出手段で検出された温度に応じて制御するように設定された指令トルクに基づいて、設定した出力トルクに制限することを特徴とする。
トルク上限値設定部39による出力制限は、モータ6の出力停止も含む。
異常検出手段51で検出する温度検出手段49の異常は、例えば、温度検出素子の異常だけでなく、ハーネスの断線またはショート、回路の異常等が考えられる。
前記設定した出力トルクは、例えば、試験やシミュレーション等の結果により定められる。
この構成によると、温度検出手段49は、駆動輪2毎にモータ6またはインバータ31の温度を検出する。トルク上限値設定部39は、温度検出手段49で検出された温度に基づいてモータ6の出力制限を行う。異常検出手段51は、温度検出手段49のうち、左右の駆動輪2,2におけるいずれか一方の駆動輪2のモータ6またはインバータ31の温度を検出する温度検出手段49に異常が発生したか否かを検出する。
トルク上限値設定部39は、いずれか一方の駆動輪2に対応する温度検出手段49に異常が検出されると、前記一方の駆動輪2を駆動するモータ6の出力トルクの上限値を制限する。このトルク上限値設定部39は、一方の駆動輪2を駆動するモータ6で出力可能な出力トルクの上限値を、異常が検出されていない他方の駆動輪2に対応する温度検出手段49で検出された温度に応じて制御するように設定された指令トルクに基づいて、設定した出力トルクに制限する。
このように、異常が検出されていない他方の駆動輪2に対応する温度検出手段49で検出された温度に応じて制御するように設定された指令トルクに基づいて、一方の駆動輪2を駆動するモータ6の出力トルクの上限値を制限する。換言すれば、正常な温度検出手段49に対応するモータ6を駆動するトルクを、異常な温度検出手段49に対応するモータ6を駆動するトルクの上限値にする。つまり、異常な温度検出手段49に対応するモータ6について、正常な温度検出手段49に対応するモータ6より大きなトルクは出さないように制限する。
このように制限することで、正常な温度検出手段49に対応するモータ6およびインバータ31の各温度より、異常な温度検出手段49に対応するモータ6およびインバータ31の各温度が高くならない。例えば、正常な温度検出手段49に対応するモータ6のトルクが温度により制限された場合、その制限されたトルクが、異常な温度検出手段49に対応するモータ6のトルク上限値となる。したがって、異常が検出された温度検出手段49に対応する一方のモータ6またはインバータ31の温度を抑制しながら、前記一方の駆動輪2にも走行に必要十分な駆動トルクを与えることができる。
前記異常検出手段51、51により前記左右の駆動輪2,2に対応する温度検出手段49,49共に異常が検出されると、前記トルク上限値設定部39は、前記左右のモータ6,6につき規定された制限値よりも定められた割合でさらに制限するようにしても良い。
前記定められた割合は、例えば、試験やシミュレーション等の結果により定められる。この場合、トルク上限値設定部39は、左右のモータ6,6共に大幅な出力制限を行うことで、車両が不所望に挙動することを未然に防止し得る。この車両の運転者は、車両を路側帯等に退避させる等の措置を講じることができる。
前記温度検出手段49で検出される温度が温度検出手段49の個体差によりばらつく場合、前記トルク上限値設定部39は、前記他方の駆動輪2を駆動する前記モータ6の指令トルクから、前記温度検出手段49で検出される温度のばらつきに応じたトルク値を減じたトルクを、前記一方の駆動輪2を駆動するモータ6で出力可能な出力トルクの上限値とするものとしても良い。
前記温度検出手段49で検出される温度のばらつきに応じたトルク値は、例えば、関数による演算で求めても良いし、マップにより設定しても良い。これら関数、マップは、試験やシミュレーション等の結果により定められる。
正常な温度検出手段49で検出される温度が個体差によりばらつく場合であっても、前記のようにモータ6の出力トルクの上限値を制限することで、一方の駆動輪2に走行に必要十分な駆動トルクを与えることができる。
前記異常検出手段51により異常が検出された一方の駆動輪2に対応する温度検出手段49につき、異常が検出される直前に検出される温度が、異常が検出されていない他方の駆動輪2に対応する温度検出手段49で検出される温度より高かった場合、前記トルク上限値設定部39は、その温度差に応じたトルク値を、前記他方の駆動輪2を駆動する前記モータ6の指令トルクから減じたトルクを、前記一方の駆動輪2を駆動するモータ6で出力可能な出力トルクの上限値とするものとしても良い。
前記温度差に応じたトルク値は、例えば、関数による演算で求めても良いし、マップにより設定しても良い。これら関数、マップは、試験やシミュレーション等の結果により定められる。なお異常が検出される直前に検出される温度が、正常な温度検出手段49で検出される温度以下の場合は、例えば、正常な他方の駆動輪2のトルクを、一方の駆動輪2を駆動するモータ6で出力可能な出力トルクの上限値としても良い。
前記モータ6は、このモータ6と、前記駆動輪2を回転支持する車輪用軸受4と、前記モータ6の回転を減速して前記車輪用軸受4に伝える減速機7とを含むインホイールモータ駆動装置IWMを構成するものとしても良い。
この発明の車輪独立駆動式車両の駆動制御装置は、左右の駆動輪を個別に駆動する左右のモータを備えた車両に搭載され、操作部の操作に応じて指令トルクを生成し出力するECUと、直流電力を交流電力に変換するインバータを含むパワー回路部、および、前記ECUから与えられる前記指令トルクに従って前記パワー回路部を介し前記モータをトルク制御するモータコントロール部を有するインバータ装置とを備えた車輪独立駆動式車両の駆動制御装置において、駆動輪毎に前記モータまたは前記インバータの温度を検出する温度検出手段と、この温度検出手段で検出された温度に基づいて前記モータの出力制限を行うトルク上限値設定部と、前記温度検出手段のうち、前記左右の駆動輪におけるいずれか一方の駆動輪の前記モータまたは前記インバータの温度を検出する温度検出手段に異常が発生したか否かを検出する異常検出手段とを設ける。
この異常検出手段によりいずれか一方の駆動輪に対応する前記温度検出手段に異常が検出されると、前記トルク上限値設定部は、前記一方の駆動輪を駆動する前記モータで出力可能な出力トルクの上限値を、異常が検出されていない他方の駆動輪に対応する前記温度検出手段で検出された温度に応じて制御するように設定された指令トルクに基づいて、設定した出力トルクに制限する。このため、車輪独立駆動式車両において、モータまたはインバータの温度を検出する温度検出手段に異常が発生した場合でも、モータに必要十分な駆動トルクを与えることができる。
この発明の実施形態に係る駆動制御装置を搭載した電気自動車を平面図で示す概念構成のブロック図である。 同電気自動車におけるインホイールモータ駆動装置の断面図である。 同駆動制御装置の制御系のブロック図である。 モータ回転数と出力トルクとの関係を示す図である。 同駆動制御装置の処理を段階的に示すフローチャートである。 同駆動制御装置の他の処理を段階的に示すフローチャートである。 同駆動制御装置のさらに他の処理を段階的に示すフローチャートである。 同駆動制御装置において、温度検出手段で検出される温度と時間との関係を示す図である。
この発明の実施形態を図1ないし図5と共に説明する。
図1は、この実施形態に係る駆動制御装置を搭載した車両である電気自動車を平面図で示す概略構成のブロック図である。この電気自動車は、車体1の左右の後輪となる車輪2が駆動輪とされ、左右の前輪となる車輪3が従動輪とされた4輪の自動車である。前輪となる車輪3は操舵輪とされている。駆動輪となる左右の車輪2,2は、それぞれ独立の走行用のモータ6により駆動される。各モータ6は、後述のインホイールモータ駆動装置IWMを構成する。各車輪2,3には、図示外のブレーキが設けられている。また左右の前輪となる操舵輪である車輪3,3は、図示しない転舵機構を介して転舵可能であり、ハンドル等の操舵手段15により操舵される。
図2は、この電気自動車におけるインホイールモータ駆動装置IWMの断面図である。各インホイールモータ駆動装置IWMは、それぞれ、モータ6、減速機7、および車輪用軸受4を有し、これらの一部または全体が車輪内に配置される。モータ6の回転は、減速機7および車輪用軸受4を介して駆動輪2に伝達される。車輪用軸受4のハブ輪4aのフランジ部には前記ブレーキを構成するブレーキロータ5が固定され、同ブレーキロータ5は駆動輪2と一体に回転する。モータ6は、例えば、ロータ6aのコア部に永久磁石が内蔵された埋込磁石型同期モータである。このモータ6は、ハウジング8に固定したステータ6bと、回転出力軸9に取り付けたロータ6aとの間にラジアルギャップを設けたモータである。
制御系を説明する。
図1に示すように、車体1には、ECU21と、複数(この例では2つ)のインバータ装置22とを含む駆動制御装置20が搭載されている。ECU21は、自動車全般の統括制御を行い、各インバータ装置22に指令を与える上位制御手段である。各インバータ装置22は、ECU21の指令に従って各走行用のモータ6の制御をそれぞれ行う。ECU21は、コンピュータとこれに実行されるプログラム、並びに各種の電子回路等で構成される。
ECU21は、指令トルク演算部47と、トルク配分手段48とを有する。指令トルク演算部47は、主に、アクセル操作部16の出力するアクセル開度の信号と、ブレーキ操作部17の出力する減速指令とから、左右輪2,2の走行用のモータ6,6に与える加速・減速指令を指令トルクとして生成する。トルク配分手段48は、指令トルク演算部47で演算された加速・減速指令を、操舵手段15の操舵角を検出する図示しない操舵角センサの出力する旋回指令を考慮して、左右の駆動輪2,2の走行用のモータ6,6へ分配するように各インバータ装置22へ出力する。
また、指令トルク演算部47は、ブレーキ操作部17の出力する減速指令があったときに、モータ6を回生ブレーキとして機能させる制動トルク指令値と、図示外の制動トルク指令値とに配分する機能を有する。回生ブレーキとして機能させる制動トルク指令値は、各走行用のモータ6,6に与える加速・減速指令の指令トルクに反映させる。アクセル操作部16およびブレーキ操作部17は、それぞれアクセルペダルおよびブレーキペダルと、各ペダルの動作量をそれぞれ検出するアクセルセンサ16aおよびブレーキセンサ17aとを有する。バッテリ19は、車体1に搭載され、モータ6の駆動、および車両全体の電気系統の電源として用いられる。
図3は、この駆動制御装置の制御系のブロック図である。以後、図1も適宜参照しつつ説明する。インバータ装置22は、各モータ6に対して設けられたパワー回路部28と、このパワー回路部28を制御するモータコントロール部29とを有する。モータコントロール部29は、このモータコントロール部29が持つインホイールモータ駆動装置IWMに関する各検出値や制御値等の各情報(例えば、ステータス、モータ回転数、制御トルク、モータ温度、後述のインバータの温度、異常情報等)をECU21に出力する機能を有する。
パワー回路部28は、インバータ31と、このインバータ31を駆動するPWMドライバ32とを有する。インバータ31は、バッテリ19(図1)の直流電力をモータ6の駆動に用いる3相の交流電力に変換する。インバータ31は、複数の半導体スイッチング素子(図示せず)で構成され、PWMドライバ32は、オンオフ指令に基づきインバータ31を駆動する。前記半導体スイッチング素子は、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等からなる。
モータコントロール部29は、その基本となる制御部としてモータ駆動制御部30を有している。モータ駆動制御部30は、上位制御手段であるECU21から与えられる指令トルクによる加速・減速指令に従い、電流指令に変換してパルス幅変調し、パワー回路部28のPWMドライバ32にオンオフ指令を与える。モータ駆動制御部30は、インバータ31からモータ6に流すモータ電流を電流検出手段S1から得て、電流フィードバック制御を行う。また、モータ駆動制御部30は、モータ6のロータ6a(図2)の回転角を図示外の回転角度検出手段から得て、ベクトル制御を行う。
この実施形態では、上記構成の駆動制御装置に、温度検出手段49、異常検出手段51、およびトルク上限値設定部39を設けている。
温度検出手段49は、駆動輪となる左右の車輪2,2(図1)毎に設けられている。この例の温度検出手段49は、モータ温度検出手段35とパワーデバイス温度検出手段38とを有する。
モータ温度検出手段35は、例えば、モータコイルに固着されサーミスタから成るモータ温度検出素子33と、このモータ温度検出素子33に接続されモータコントロール部29に設けられるモータ温度検出回路34とを有する。モータ温度検出回路34は、例えば、サーミスタの抵抗変化を電圧の変化に変換し、温度に換算する(以下のパワーデバイス温度検出回路37についても同じ)。
パワーデバイス温度検出手段38は、例えば、インバータ31における前記半導体スイッチング素子の一部またはその近傍に設置されサーミスタ等から成るパワーデバイス温度検出素子36と、このパワーデバイス温度検出素子36に接続されモータコントロール部29に設けられるパワーデバイス温度検出回路37とを有する。
トルク上限値設定部39はECU21のトルク配分手段48に設けられている。このトルク上限値設定部39は、モータ温度検出手段35またはパワーデバイス温度検出手段38で検出された温度に基づいてモータ6の出力制限を行う。トルク上限値設定部39は、例えば、モータ温度検出手段35またはパワーデバイス温度検出手段38から出力される値が定められた閾値以上のとき、電流検出手段S1で検出される電流が定められた電流以下となるように、モータ6の指令トルクを制限する。前記定められた電流は、試験やシミュレーション等の結果により定められる。
前記閾値は、試験やシミュレーション等の結果により、モータ温度検出手段35、パワーデバイス温度検出手段38毎にそれぞれ定められる。モータ温度検出手段35における閾値は、例えば、モータ6の永久磁石に減磁が生じるときのモータ温度を基準として定められる。パワーデバイス温度検出手段38における閾値は、例えば、半導体スイッチング素子の耐熱温度を基準として定められる。
異常検出手段51は、左右の駆動輪である車輪2,2(図1)毎にそれぞれ設けられる。各異常検出手段51は、モータ温度検出手段異常検出手段41と、パワーデバイス温度検出手段異常検出手段40とを有する。各モータ温度検出手段異常検出手段41は、一方の車輪2(図1)に対応するモータ温度検出手段35に異常が発生したか否かを検出する。
モータ温度検出手段35の異常とは、モータ温度検出素子33の異常だけでなく、このモータ温度検出素子33から延びるハーネスの断線またはショート、モータ温度検出回路34の異常等が考えられる(パワーデバイス温度検出手段38の異常についても、同様の考え方である)。モータ温度検出手段異常検出手段41は、モータ温度検出手段35で検出された温度が正常温度上限よりも高いとき、または、モータ温度検出手段35で検出された温度が正常温度下限よりも低いとき、モータ温度検出手段35に異常が発生したと判定する。
前記正常温度上限および前記正常温度下限は、予め、試験やシミュレーション等の結果により定められる。後述のパワーデバイス温度検出手段38における正常温度上限および正常温度下限についても同様である。
パワーデバイス温度検出手段異常検出手段40は、一方の車輪2(図1)に対応するパワーデバイス温度検出手段38に異常が発生したか否かを検出する。このパワーデバイス温度検出手段異常検出手段40は、パワーデバイス温度検出手段38で検出された温度が正常温度上限よりも高いとき、または、パワーデバイス温度検出手段38で検出された温度が正常温度下限よりも低いとき、パワーデバイス温度検出手段38に異常が発生したと判定する。
トルク上限値設定部39は、前述の異常検出手段51により一方の駆動輪に対応するモータ温度検出手段35またはパワーデバイス温度検出手段38に異常が検出されると、前記モータ6の出力トルクの上限値を制限する。このトルク上限値設定部39は、ECU21におけるトルク配分手段48に設けられる。
トルク上限値設定部39は、前記一方の駆動輪2(図1)を駆動するモータ6で出力可能な出力トルクの上限値を、異常が検出されていない他方の駆動輪2(図1)に設定した指令トルクを基に、設定した出力トルクに制限する。
ここで図4は、モータ回転数と出力トルクとの関係を示す図である。一般的にモータでは、ある程度以上の回転数になると、モータ回転数が大きくなるに従ってモータの最大トルクが小さくなる。トルク上限値設定部39は、異常な温度検出手段49に対応するモータ6で出力可能な出力トルクの上限値を、正常な温度検出手段49に対応するモータ6に設定した指令トルクを基に、設定した出力トルクに制限する。
但し、正常な温度検出手段49で検出された温度が高くなる程、正常な車輪2のモータ6で出力可能な出力トルクの上限値はより制限される。この出力トルクの上限値は、例えば、関数による演算で求めても良いし、マップにより設定しても良い。これら関数、マップは、例えば、試験やシミュレーション等の結果により定められる。
トルク上限値設定部39は、トルク配分手段48で演算される指令トルクが、例えば、同図4のP1に示す位置に演算されるとき、正常な温度検出手段49で検出された温度によるトルク制限値が図4の一点鎖線で表す曲線Taとなる場合、モータ回転数N1でのトルク上限値である指令トルクT1aに制限する。トルク上限値設定部39は、正常な温度検出手段49で検出された温度によるトルク制限値が図4の二点鎖線で表す曲線Tbである場合、モータ回転数N1で出力可能な出力トルクの上限値を、図4の二点鎖線との交点である指令トルクT1bに制限する。但し、Ta<Tbとする。
トルク上限値設定部39は、演算される指令トルクが、例えば、同図4のP2に示す位置に演算されるとき、正常な温度検出手段49で検出された温度によるトルク制限値が図4の一点鎖線で表す温度Taである場合、モータ回転数N2で出力可能な出力トルクの上限値を超えていないため、そのままの指令トルクT2aとする。つまり指令トルクの制限を行わない。演算される指令トルクが、例えば、同図4のP2に示す位置に演算されるとき、正常な温度検出手段49で検出された温度によるトルク制限値が図4の二点鎖線で表す温度Tbである場合、モータ回転数N2で出力可能な出力トルクの上限値を、図4の二点鎖線との交点である指令トルクT2bに制限する。
図5は、駆動制御装置の処理を段階的に示すフローチャートである。図3と共に説明する。後述する図6,7についても同じ。例えば、車両の主電源を投入後本処理が開始し、異常検出手段51は、モータ温度検出手段35、パワーデバイス温度検出手段38に異常が発生したか否かを検出する(ステップa1)。いずれの温度検出手段35,38にも異常が発生していないとき(ステップa1:No)、本処理を終了する。いずれか一方または両方の温度検出手段35、38に異常が発生したとき(ステップa1:Yes)、ステップa2に移行する。
ステップa2において、一方の駆動輪に対応する、モータ温度検出手段35またはパワーデバイス温度検出手段38に異常が発生したとECU21で判定されると、ステップa3に移行する。トルク上限値設定部39は、一方の駆動輪を駆動するモータ6で出力可能な出力トルクの上限値を、他方の駆動輪のモータ6に設定したトルクに対し設定した割合の出力トルクに制限する(ステップa3)。その後本処理を終了する。
ステップa2において、両方の駆動輪に対応する、モータ温度検出手段35またはパワーデバイス温度検出手段38に異常が発生したとECU21で判定されると、ステップa4に移行する。このステップa4において、トルク上限値設定部39は、左右のモータ6につき規定された制限値よりも定められた割合でさらに制限する。この場合、トルク上限値設定部39は、左右のモータ共に大幅な出力制限を行う。この場合の左右のモータ6の最大出力は、例えば、この車両を路側帯等に退避させ得る出力とする。その後本処理を終了する。
以上説明した駆動制御装置によると、トルク上限値設定部39は、いずれか一方の駆動輪2に対応する温度検出手段49に異常が検出されると、一方の駆動輪2を駆動するモータ6の出力トルクの上限値を制限する。このトルク上限値設定部39は、一方の駆動輪2を駆動するモータ6で出力可能な出力トルクの上限値を、異常が検出されていない他方の駆動輪2に対応する温度検出手段49で検出された温度を必要に応じて抑制するように設定された指令トルクに基づいて、他方の駆動輪2に設定されたトルクを基に、設定した出力トルクに制限する。
このように、他方の駆動輪2に対応する正常な温度検出手段49で検出された温度を必要に応じて抑制するように設定された指令トルクに基づいて、一方のモータ6の出力トルクの上限値を制限する。換言すれば、正常な温度検出手段49に対応するモータ6を駆動するトルクを、異常な温度検出手段49に対応するモータ6を駆動するトルクの上限値にする。つまり、異常な温度検出手段49に対応するモータ6について、正常な温度検出手段49に対応するモータ6より大きなトルクは出さないように制限する。
このように制限することで、正常な温度検出手段49に対応するモータ6およびインバータ31の各温度より、異常な温度検出手段49に対応するモータ6およびインバータ31の各温度が高くならない。例えば、正常な温度検出手段49に対応するモータ6のトルクが温度により制限された場合、その制限されたトルクが、異常な温度検出手段49に対応するモータ6のトルク上限値となる。したがって、異常が検出された温度検出手段49に対応する一方のモータ6またはインバータ31の温度を抑制しながら、一方の駆動輪2にも走行に必要十分な駆動トルクを与えることができる。
他の実施形態について説明する。
以下の説明においては、各形態で先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
温度検出手段49で検出される温度が温度検出手段49の個体差によりばらつく場合、次のように制御しても良い。トルク上限値設定部39は、他方の駆動輪2を駆動するモータ6の指令トルクから、温度検出手段49で検出される温度のばらつきに応じたトルク値を減じたトルクを、一方の駆動輪2を駆動するモータ6で出力可能な出力トルクの上限値とする。
温度検出手段49で検出される温度のばらつきに応じたトルク値は、例えば、関数による演算で求めても良いし、マップにより設定しても良い。これら関数、マップは、試験やシミュレーション等の結果により定められる。この場合、図6に示すように、ステップa2において、一方の駆動輪2に対応する温度検出手段49に異常が発生したとECU21で判定されたとき、トルク上限値設定部39は、他方のモータ6の最大トルクから、温度検出手段49で検出される温度のばらつきに応じたトルク値を減じたトルクを、一方のモータ6で出力可能な出力トルクの上限値とする(ステップa3a)。その後本処理を終了する。
この構成によると、温度検出手段49が個体差によりばらつきがある場合でも、前記のようにモータ6の出力トルクの上限値を制限することで、一方の駆動輪2に走行に必要十分な駆動トルクを与えることができる。
図7は、駆動制御装置のさらに他の処理を段階的に示すフローチャートである。図8は、この駆動制御装置において、温度検出手段49で検出される温度と時間との関係を示す図である。ステップa2において、一方の駆動輪2に対応する温度検出手段49に異常が発生したとECU21で判定されたとき、ステップa3bに移行する。
このステップa3bにおいて、異常検出手段51により異常が検出された一方の駆動輪2に対応する温度検出手段49につき、異常が検出される直前に検出される温度が、異常が検出されていない他方の駆動輪2に対応する温度検出手段49で検出される温度より高かった場合(ステップa3b:Yes)、トルク上限値設定部39は、その温度差δTに応じたトルク値を、他方のモータ6の指令トルクから減じたトルクを、一方のモータ6で出力可能な出力トルクの上限値とする(ステップa3c)。
異常が検出される直前に検出される温度が、正常な温度検出手段49で検出される温度以下の場合(ステップa3b:No)、トルク上限値設定部39は、正常な他方の駆動輪2の指令トルクを、一方の駆動輪2を駆動するモータ6で出力可能な出力トルクの上限値とする。
各インバータ装置の弱電系を、互いに共通のコンピュータや共通の基板上の電子回路で構成しても良い。
車両として、左右の前輪2輪を独立して駆動する2輪独立駆動車を適用しても良い。また車両として、左右の前輪2輪を独立して駆動し、左右の後輪2輪を独立して駆動する4輪独立駆動車を適用しても良い。
インホイールモータ駆動装置IWMにおいては、サイクロイド式の減速機、遊星減速機、2軸並行減速機、その他の減速機を適用可能であり、また、減速機を採用しない、所謂ダイレクトモータタイプであってもよい。
2…車輪(駆動輪)
4…車輪用軸受
6…モータ
7…減速機
16…アクセル操作部(操作部)
17…ブレーキ操作部(操作部)
20…駆動制御装置
21…ECU
22…インバータ装置
28…パワー回路部
29…モータコントロール部
31…インバータ
39…トルク上限値設定部
49…温度検出手段
51…異常検出手段
IWM…インホイールモータ駆動装置

Claims (5)

  1. 左右の駆動輪を個別に駆動する左右のモータを備えた車両に搭載され、
    操作部の操作に応じて指令トルクを生成し出力するECUと、
    直流電力を交流電力に変換するインバータを含むパワー回路部、および、前記ECUから与えられる前記指令トルクに従って前記パワー回路部を介し前記モータをトルク制御するモータコントロール部を有するインバータ装置とを備えた車輪独立駆動式車両の駆動制御装置において、
    駆動輪毎に前記モータまたは前記インバータの温度を検出する温度検出手段と、
    この温度検出手段で検出された温度に基づいて前記モータの出力制限を行うトルク上限値設定部と、
    前記温度検出手段のうち、前記左右の駆動輪におけるいずれか一方の駆動輪の前記モータまたは前記インバータの温度を検出する温度検出手段に異常が発生したか否かを検出する異常検出手段とを設け、
    この異常検出手段によりいずれか一方の駆動輪に対応する前記温度検出手段に異常が検出されると、前記トルク上限値設定部は、前記一方の駆動輪を駆動する前記モータで出力可能な出力トルクの上限値を、異常が検出されていない他方の駆動輪に対応する前記温度検出手段で検出された温度に応じて制御するように設定された指令トルクに基づいて、設定した出力トルクに制限することを特徴とする車輪独立駆動式車両の駆動制御装置。
  2. 請求項1に記載の車輪独立駆動式車両の駆動制御装置において、前記異常検出手段により前記左右の駆動輪に対応する温度検出手段共に異常が検出されると、前記トルク上限値設定部は、前記左右のモータにつき規定された制限値よりも定められた割合でさらに制限する車輪独立駆動式車両の駆動制御装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の車輪独立駆動式車両の駆動制御装置において、前記温度検出手段で検出される温度が温度検出手段の固体差によりばらつく場合、前記トルク上限値設定部は、前記他方の駆動輪を駆動する前記モータの指令トルクから、前記温度検出手段で検出される温度のばらつきに応じたトルク値を減じたトルクを、前記一方の駆動輪を駆動するモータで出力可能な出力トルクの上限値とする車輪独立駆動式車両の駆動制御装置。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車輪独立駆動式車両の駆動制御装置において、前記異常検出手段により異常が検出された一方の駆動輪に対応する温度検出手段につき、異常が検出される直前に検出される温度が、異常が検出されていない他方の駆動輪に対応する温度検出手段で検出される温度より高かった場合、前記トルク上限値設定部は、その温度差に応じたトルク値を、前記他方の駆動輪を駆動する前記モータの指令トルクから減じたトルクを、前記一方の駆動輪を駆動するモータで出力可能な出力トルクの上限値とする車輪独立駆動式車両の駆動制御装置。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車輪独立駆動式車両の駆動制御装置において、前記モータは、このモータと、前記駆動輪を回転支持する車輪用軸受と、前記モータの回転を減速して前記車輪用軸受に伝える減速機とを含むインホイールモータ駆動装置を構成する車輪独立駆動式車両の駆動制御装置。
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