WO2017018335A1 - モータ駆動装置 - Google Patents

Abstract

モータ駆動装置を搭載した車両の運転者がアクセル操作手段を操作するとき、運転者に違和感を与えることを防止できるモータ駆動装置を提供する。このモータ駆動装置は、電動モータ(5)、車速検出手段(7)、および制御装置(6)を有する。制御装置(6)は、ＥＣＵ(8)、車速対応トルク制御手段(10)、およびトルク制御部(11)を有する。車速対応トルク制御手段(10)は、アクセル操作手段(12)の最大操作量を示す信号を受けて車速対応トルク制御手段(10)からトルク制御部(11)に出力される調整後トルク指令値が、車速と、車速に依存する車速対応最大トルクとの関係から一意に定まる、現在の車速に対する車速対応最大トルクに一致し、かつアクセル操作手段(12)の操作量に、調整後トルク指令値が比例するように、駆動指令を調整するアクセル感度調整部を有する。

Description

モータ駆動装置 関連出願

　本出願は、２０１５年７月３０日出願の特願２０１５－１５０４６９の優先権を主張するものであり、その全体を参照により本願の一部をなすものとして引用する。

　この発明は、モータ駆動装置に関し、このモータ駆動装置を搭載した車両の運転者に与えられる違和感を低減し得る技術に関する。

　電気自動車において、一般に、アクセル開度は、リニアにトルク指令値へ変換され、インバータを経由して、その大きさのトルク指令値で電動モータが駆動される。特許文献１に記載の制御装置では、アクセル開度が小さい領域ではモータ負荷率の変化量を小さくし、アクセル開度が中程度の領域では大きくなるようにしている。但し、インバータでは、電動モータの出力に制限を掛ける制御を行うことが多い。この制御では、車速の増加に応じて、電動モータの出力トルクを減少させる装置がある。

特開平６－０５４４１５号公報

　車速の増加に応じて電動モータの出力トルクを減少させる装置では、アクセル開度に対応するトルク指令値が、電動モータの最大トルク（モータ最大トルク）を上回った分のアクセル踏込量は、トルクを発生させない余分の踏込量となる。この踏込みによって何の応答も得られないため、この電気自動車の運転者に違和感が与えられる。図１０に示すように、従来の電気自動車では、加速時に、アクセルペダルが半分強踏込まれただけで、車速対応最大トルクに到達してしまう場合がある。

　同図１０において、「１００％」，「９０％」，…，「５０％」の表示は、それぞれ、アクセルペダルの最大踏込み量に対して、車速対応最大トルクに到達する踏込量の割合を表す。この割合の臨界点、つまり１００％の割合と１００％を下回る割合との境界の速度が、規定車速とされる。車速が規定車速を超えている場合に、アクセルペダルが最大踏込み量に対して、ある割合（例えば、９０％～５０％）踏込まれると、その時点で車速対応最大トルクに到達する。この後、運転者がさらにアクセルペダルを踏み増ししても、実際に発生するトルクは増大しない。その結果として、運転者の操作が実際のトルクの変動として現れず、運転性が悪化したように運転者は感じる。このため、運転者に違和感が与えられる。

　この発明の目的は、モータ駆動装置を搭載した車両の運転者がアクセル操作手段を操作するとき、運転者に違和感が与えられることを防止できるモータ駆動装置を提供することである。

　以下、便宜上理解を容易にするために、実施形態の符号を参照して説明する。
　この発明の一構成に係るモータ駆動装置は、車両に設けられた車輪２，２を駆動する電動モータ５と、前記車両の車速を検出する車速検出手段７と、前記電動モータ５を制御する制御装置６とを備える。前記制御装置６は、前記車両のアクセル操作手段１２の操作量を示す信号を受けて駆動指令を出力する上位制御部８と、この上位制御部８から出力された駆動指令を、前記車速検出手段７によって検出される車速に応じて調整して調整後トルク指令値を調整後駆動指令として出力するアクセル感度調整部１０ａを含む車速対応トルク制御手段１０と、前記車速対応トルク制御手段１０によって出力された調整後駆動指令に従って前記電動モータ５をトルク制御するトルク制御部１１とを有する。

　この車速対応トルク制御手段１０の前記アクセル感度調整部１０ａは、前記アクセル操作手段１２の操作量が最大操作量である際における前記調整後トルク指令値が、車速と、車速に依存する前記電動モータ５の車速対応最大トルクとの関係から一意に定まる、前記車速検出手段７によって検出される現在の車速に対する車速対応最大トルクに一致し、かつ前記アクセル操作手段１２の操作量に、前記調整後トルク指令値が比例するように、前記駆動指令を調整する。ここで、一意に定まるとは、車両の仕様としてモータ最大出力が決められているため、そのモータ最大出力についての車速とトルクとが一対一の関係を有することを意味する。車速とトルクとの関係は、例えば、反比例の式で表される。

　この構成によると、運転者がアクセル操作手段１２を操作すると、上位制御部８は、アクセル操作手段１２の操作量の信号を受けて駆動指令を出力する。車速対応トルク制御手段１０のアクセル感度調整部１０ａは、前記操作量に応じて、以下の条件（１），（２）を全て満たすようにトルク制御部１１に与えられるトルク指令値を調整する。

　（１）アクセル操作手段１２の最大操作量を示す信号を受けて車速対応トルク制御手段１０からトルク制御部１１に出力されるトルク指令値が、車速と、車速に依存する電動モータ５の車速対応最大トルクとの関係から一意に定まる、現在の車速に対する車速対応最大トルクに一致する。
　（２）アクセル操作手段１２の操作量に調整後のトルク指令値が比例する。

　したがって、車速対応トルク制御手段１０は、例えば、加速時に、アクセル操作手段１２の操作量に応じたトルク指令値をトルク制御部１１に与えることができる。具体的には、運転者がアクセル操作手段１２を加速途中の操作量から最大操作量まで操作しようとするとき、この操作量分がトルク指令値に反映される。したがって、ドライバビリティが向上し、運転者に違和感を与えることを防止できる。

　この発明の別の構成に係るモータ駆動装置は、車両に設けられた車輪２，２を駆動する電動モータ５と、前記車両の車速を検出する車速検出手段７と、前記電動モータ５を制御する制御装置６とを備える。前記制御装置６は、前記車両のアクセル操作手段１２の操作量を示す信号を受けて駆動指令を出力する上位制御部８と、この上位制御部８から出力された駆動指令を、前記車速検出手段７によって検出される車速に応じて調整して調整後トルク指令値を調整後駆動指令として出力するアクセル感度調整部１０ａを含む車速対応トルク制御手段１０と、前記車速対応トルク制御手段１０によって出力された調整後駆動指令に従って前記電動モータをトルク制御するトルク制御部１１とを有する。

　前記車速対応トルク制御手段１０の前記アクセル感度調整部１０ａが、前記車速検出手段７によって検出された車速について、以下の式（１）に基づいて前記調整後トルク指令値（Ｔ＊）を求める。
　Ｔ＊＝（Ｔｍａｘ（ω）／Ｔ０）×Ｔ　　　　　　　式（１）
但し、Ｔｍａｘ（ω）：車速ω時の車速対応最大トルクであって、前記電動モータの最大出力から決まるトルクであり、Ｔ０：モータ最大トルクであり、Ｔ：調整前トルク指令値である。

　この構成によると、モータ最大トルク（Ｔ０）に対する、車速ω時の車速対応最大トルク（Ｔｍａｘ（ω））の比を、調整前トルク指令値に乗じて調整後トルク指令値を求めるため、上記条件（１）および（２）が満足される。

　前記車速検出手段７によって検出された車速が規定車速を超えるとき、前記電動モータ５の最大出力（Ｗ０）を前記車速検出手段７によって検出された車速（ω）で除して車速（ω）時の前記車速対応最大トルク（Ｔｍａｘ（ω））が求められても良い。前記規定車速は、例えば、前記電動モータ５の最大出力（Ｗ０）とモータ最大トルク（Ｔ０）とから計算により求められる。

　この構成によると、車速が時々刻々と変化する場合においても、車速対応最大トルクを用いて、車速に追従したトルク指令値が調整後のトルク指令値として精度良く算出される。

　前記車速検出手段によって検出された車速が規定車速以下のとき、前記電動モータ５の最大出力（Ｗ０）を前記規定車速（ω０）で除して車速（ω）時の前記車速対応最大トルク（Ｔｍａｘ（ω））が求められても良い。これにより、規定車速以下のとき演算処理負荷が低減される。

　好ましくは、前記アクセル感度調整部１０ａは、前記調整後トルク指令値が前記現在の車速対応最大トルクを超える場合に、前記現在の車速対応最大トルクを調整後のトルク指令値としても良い。この場合にも、演算処理負荷が低減される。

　前記アクセル感度調整部１０ａは、車速に反比例する車速対応最大トルクを用いて、前記調整後トルク指令値を求めても良い。また前記車速対応最大トルクは、車速の範囲によっては、車速に依存せずに一定であってもよい。またインバータおよびモータの出力特性に基づいて、車速に対する車速対応最大トルクが得られてもよい。車速に対する前記車速対応最大トルクは、例えば、試験やシミュレーション等の結果により定められてもよい。

　請求の範囲および／または明細書および／または図面に開示された少なくとも２つの構成のどのような組合せも、本発明に含まれる。特に、請求の範囲の各請求項の２つ以上のどのような組合せも、本発明に含まれる。

　この発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施形態の説明から、より明瞭に理解されるであろう。しかしながら、実施形態および図面は単なる図示および説明のためのものであり、この発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。この発明の範囲は添付の請求の範囲によって定まる。添付図面において、複数の図面における同一の符号は、同一または相当する部分を示す。
この発明の第１の実施形態に係るモータ駆動装置を搭載した電気自動車を平面図で示す概念構成のブロック図である。 図１のモータ駆動装置の制御系のブロック図である。 図１のモータ駆動装置の各制御部等を詳細に示すブロック図である。 図１の電気自動車のアクセルペダルの踏込み量と調整後のトルク指令値との関係を示す図である。 図１のモータ駆動装置による車速と車速対応最大トルクとの関係を示す図である。 図１のモータ駆動装置によるトルク指令値の調整を示すフローチャートである。 この発明の第２の実施形態に係るモータ駆動装置の断面図である。 この発明の第３の実施形態に係るモータ駆動装置を搭載した電気自動車を示す図である。 参考例のエンジン車による車速とトルク指令値との関係を示す図である。 従来例の電気自動車の車速と車速対応最大トルクとの関係を示す図である。

　この発明の第１の実施形態を図１ないし図６と共に説明する。
　図１は、この実施形態に係るモータ駆動装置を搭載した電気自動車を平面図で示す概念構成のブロック図である。この電気自動車は四輪自動車であり、車体１の左右の後輪が駆動輪２，２とされ、左右の前輪が従動輪３，３とされている。前輪３，３は操舵輪である。左右の前輪３，３は、図示しない転舵機構を介して転舵可能であり、ハンドル等の操舵手段４により操舵される。左右の駆動輪２，２は、この実施形態では、車体１に設置される一台の電動モータ５により駆動される１モータオンボード形式とされる。各車輪２，３には、図示外のブレーキが設けられている。モータ駆動装置１００は、前記電動モータ５と、制御装置６と、車速を検出する車速検出手段７（図２）とを有する。

　制御系について説明する。
　車体１には、電動モータ５を制御する制御装置６が搭載されている。この制御装置６は、上位制御部であるＥＣＵ８と、インバータ装置９とを有する。インバータ装置９は、車速対応トルク制御手段１０と、トルク制御部１１とを含む。ＥＣＵ８とトルク制御部１１との間に、後述する車速対応トルク制御手段１０を介在させている。ＥＣＵ８は、自動車全般の統括制御を行い、このＥＣＵ８から出力された駆動指令が車速対応トルク制御手段１０に与えられる。ＥＣＵ８は、コンピュータとこれに実行されるプログラム、並びに各種の電子回路等で構成される。

　図２は、モータ駆動装置の制御系のブロック図である。図１および図２に示すように、ＥＣＵ８は、駆動指令生成部８ａと、力行・回生制御指令部８ｂとを有する。駆動指令生成部８ａは、アクセル操作手段１２の出力する加速指令（力行）と、ブレーキ操作手段１３（図１参照）の出力する減速指令（回生）と、操舵手段４（図１参照）の操舵角を検出する操舵角センサ４ａの出力する旋回指令とから、走行用の電動モータ５に与える加減速指令を駆動指令として生成し、車速対応トルク制御手段１０へ出力する。力行・回生制御指令部８ｂは、力行と回生のいずれかを指定するための指令フラグを、車速対応トルク制御手段１０に与える。

　アクセル操作手段１２は、アクセルペダル１２ａと、このアクセルペダル１２ａの踏込み量（操作量）を検出するアクセルセンサ１２ｂとを有する。ブレーキ操作手段１３は、ブレーキペダル１３ａと、このブレーキペダル１３ａの踏込み量を検出するブレーキセンサ１３ｂとを有する（図１参照）。

　図３は、このモータ駆動装置の各制御部等を詳細に示すブロック図である。
　トルク制御部１１は、ＥＣＵ８の駆動指令生成部８ａから出力されて車速対応トルク制御手段１０を経た駆動指令に従って、電動モータ５をトルク制御する。このトルク制御部１１は、電動モータ５に対して設けられたパワー回路部１４と、このパワー回路部１４を制御するモータコントロール部１５とを有する。パワー回路部１４は、バッテリ１６の直流電力を電動モータ５の力行または回生に用いる３相の交流電力に変換するインバータ１４ａと、このインバータ１４ａを制御するＰＷＭドライバ１４ｂとを有する。前記インバータ１４ａは、複数の半導体スイッチング素子で構成され、前記ＰＷＭドライバ１４ｂは、入力された電流指令をパルス幅変調し、前記各半導体スイッチング素子にオンオフ指令を与える。

　電動モータ５は３相の同期モータである。電動モータ５には、そのモータロータの電気角としての回転角度を検出する回転角度センサ１７が設けられている。モータコントロール部１５には、速度計算手段１８が設けられている。速度計算手段１８は、回転角度センサ１７で検出された回転角度を微分することにより車速を計算し得る。本実施形態では、回転角度センサ１７と速度計算手段１８とによって、車速検出手段７が構成される。ただし、車速検出手段７は、これに限定されるわけものではなく、いかなる手法によって車速が検出されてもよい。

　モータコントロール部１５は、電流ＰＩ制御部１９と、３相２相変換部２０と、２相３相変換部２１とを有する。モータコントロール部１５は、コンピュータとこれに実行されるプログラム、および電子回路により構成される。このモータコントロール部１５は、車速対応トルク制御手段１０から与えられる調整後のトルク指令値および前記指令フラグにより、電動モータ５への指令電流を生成する。モータコントロール部１５は、前記指令フラグにより力行制御が選択されている場合、アクセルペダル１２ａ（図２）の踏込み量が大きくなる程、力行指令トルクを増加させる。モータコントロール部１５は、前記指令フラグにより回生制御が選択されている場合、ブレーキペダル１３ａ（図１）の踏込み量が大きくなる程、回生指令トルクを増加させる。

　車速対応トルク制御手段１０は、アクセル感度調整部１０ａと、指令電流生成部１０ｂとを有する。アクセル感度調整部１０ａは、アクセルペダル１２ａ（図２）の踏込み量に応じて、以下の条件（１），（２）を全て満たすようにトルク制御部１１に与えられるトルク指令値を調整する。車速対応トルク制御手段１０は、コンピュータとこれに実行されるプログラム、並びに各種の電子回路等で構成される。

　（１）アクセルペダル１２ａ（図２）の最大踏込み量（最大操作量）を示す信号を受けて車速対応トルク制御手段１０からトルク制御部１１に出力される調整後のトルク指令値が、車速と、車速に依存する電動モータ５の車速対応最大トルクとの関係から一意に定まる、現在の車速に対する車速対応最大トルクに一致する。
　（２）アクセルペダル１２ａ（図２）の踏込み量に調整後のトルク指令値が比例する。

　ここで図４は、任意の車速における、アクセルペダルの踏込み量と調整後のトルク指令値との関係を示す図である。以下、図３も参照しつつ説明する。アクセルペダル１２ａ（図２）の操作量である踏込み量と、調整後のトルク指令値とが比例関係になるように、トルク指令値が調整される。アクセル感度調整部１０ａ（図３）は、アクセルペダル１２ａ（図２）の踏込み量が増えるに従ってトルク指令値がリニアに増加するように、トルク制御部１１（図３）に与えられるトルク指令値を調整する。

　図５は、このモータ駆動装置による車速と車速対応最大トルクとの関係を示す図である。アクセル感度調整部１０ａ（図３）は、規定車速（ω０）を超えると車速が速くなるに従って最大トルクが低下する車速対応最大トルクの関係Ｌａを用いて、前記現在の車速対応最大トルクを計算により求めても良い。この場合、車速対応最大トルクの関係Ｌａは、例えば、インバータ装置９に設けられる記憶手段２２（図３）に書換え可能に記憶される。車速対応最大トルクの関係Ｌａは、車速（ω）の入力に対して車速ω時の車速対応最大トルク（Ｔｍａｘ（ω））を出力する関数から構成されてもよい。代わりに、記憶手段２２に、車速（ω）と車速対応最大トルク（Ｔｍａｘ）との対応関係を示すマッピングテーブルが記憶されてもよい。

　この車速対応最大トルクの関係Ｌａによると、車速が規定車速を超えているとき、車速が速くなるに従ってトルク指令値の最大値（車速対応最大トルク）が低下する。但し、車速の大きさにかかわらず、アクセルペダルの最大踏込み量（１００％、つまりフルストローク）でのトルク指令値が、現在の車速の車速対応最大トルク（トルク指令値の最大値）となるように調整される。すなわちアクセルペダルを最大踏込み量まで踏まないと、最大の加速性能は得られない。アクセルペダルを最大踏込み量（１００％）から緩めるとき、緩める割合（例えば、最大踏込み量１００％から半分の踏込み量５０％）に追従して電気自動車は減速していく。本実施形態のモータ駆動装置を搭載した電気自動車によると、以下の参考例のエンジン車と同様に、アクセルペダルの踏込み量に車両の加減速が追従する。

　図９は、参考例のエンジン車による車速とトルク指令値との関係を示す図である。参考例のエンジン車においても、車速が規定車速を超えているとき、車速が速くなるに従って反比例してトルク指令値の最大値が低下する。また、車速の大きさにかかわらず、アクセルペダルの最大踏込み量（１００％）でのトルク指令値が、現在の車速の車速対応最大トルクに一致する。またアクセルペダルを最大踏込み量（１００％）から緩めるとき、緩める割合に追従して車両は減速していく。

　図３に示すように、アクセル感度調整部１０ａは、アクセルペダル１２ａ（図２）の踏込み量に応じてトルク指令値を出力する。この場合のトルク指令値は以下のように調整される。
　先ず、電動モータ５の出力（Ｗ）の計算式を式（２）に示す。
　Ｗ＝ω×Ｔ　　　　　　　　式（２）
　但し、ω：車速、Ｔ：調整前トルク指令値
　調整前トルク指令値（Ｔ）は、駆動指令生成部８ａから与えられた駆動指令に対して定められた関係を適用して求められる。前記定められた関係は、例えば、試験やシミュレーション等の結果により予め取得されている。指令フラグが力行に選択されている間、調整前トルク指令値（Ｔ）はアクセルペダル１２ａの踏込み量に比例し、調整前トルク指令値（Ｔ）と踏込み量とのこの関係は、車速（ω）に関係なく一定である。

　アクセル感度調整部１０ａは、電動モータ５の出力（Ｗ）を前述のように計算した後、現在の車速が規定車速（ω０：例えば、数十Ｋｍ／ｈ）を超えるか否かを判定する。規定車速（ω０）は、電動モータ５の最大出力（Ｗ０）をモータ最大トルク（Ｔ０）で除して求められる。現在の車速が規定車速（ω０）を超えたとの判定で、アクセル感度調整部１０ａは、電動モータ５の最大出力（Ｗ０）を現在の車速（ω）で除した値（Ｗ０／ω）を、車速（ω）時の車速対応最大トルク（Ｔｍａｘ（ω））とする。アクセル感度調整部１０ａは、次に、以下の式（３）に基づいて調整後のトルク指令値（Ｔ＊）を求める。
　Ｔ＊＝（Ｔｍａｘ（ω）／Ｔ０）×Ｔ　　　　　　　式（３）
但し、Ｔｍａｘ（ω）：車速ω時の車速対応最大トルク、Ｔ０：モータ最大トルク、Ｔ：調整前トルク指令値である。

　これにより、車速が時々刻々と変化する場合においても、車速対応最大トルクを用いて、車速に追従したトルク指令値が調整後のトルク指令値として精度良く算出される。

　現在の車速が規定車速以下であるとの判定で、アクセル感度調整部１０ａは、電動モータ５の最大出力（Ｗ０）を規定車速（ω０）で除した値（Ｗ０／ω０）を、車速対応最大トルク（Ｔｍａｘ（ω））とする。アクセル感度調整部１０ａは、次に、上記式（３）に基づいて調整後のトルク指令値（Ｔ＊）を求める。代わりに、調整前指令値Ｔを調整後のトルク指令値（Ｔ＊）としてもよい。これにより、規定車速以下のとき演算処理負荷が低減される。但し、アクセル感度調整部１０ａは、前記調整後のトルク指令値Ｔ＊がモータ最大トルク（Ｔ０）を超えるとき、モータ最大トルク（Ｔ０）を調整後のトルク指令値（Ｔ＊）とする。

　指令電流生成部１０ｂは、調整後のトルク指令値Ｔ＊に基づき、電動モータ５の１次電流（Ｉａ）と電流進角（β）を生成する。さらに指令電流生成部１０ｂは、これら１次電流（Ｉａ）と電流進角（β）の値に基づき、ｄ軸電流（界磁成分）Ｉｄ＊およびｑ軸電流（トルク成分）Ｉｑ＊の２つの指令電流を生成する。

　電流ＰＩ制御部１９は、指令電流生成部１０ｂから出力されたｄ軸電流Ｉｄ＊およびｑ軸電流Ｉｑ＊の値と、モータ電流および電動モータの回転子角度から３相２相変換部２０で計算された２相電流Ｉｄ，Ｉｑとから、ＰＩ制御によって、電圧値の制御量Ｖｄｃ，Ｖｑｃを算出する。３相２相変換部２０では、電流センサ２３で検出された電動モータ５のｕ相電流（Ｉｕ）とｗ相電流（Ｉｗ）の検出値から、式Ｉｖ＝－（Ｉｕ＋Ｉｗ）を用いてｖ相電流（Ｉｖ）を算出する。３相２相変換部２０は、これらＩｕ，Ｉｖ，Ｉｗの３相電流をＩｄ，Ｉｑの２相電流に変換する。

　この変換に使われる前記電動モータ５の回転子角度は、回転角度センサ１７から取得される。２相３相変換部２１は、入力された２相の制御量Ｖｄｃ，Ｖｑｃを、回転角度センサ１７から取得された回転子角度を用いて、３相のＰＷＭデューティーＶｕ，Ｖｖ，Ｖｗに変換する。パワー回路部１４は、ＰＷＭデューティーＶｕ，Ｖｖ，Ｖｗに従って前記インバータをＰＷＭ制御し、電動モータ５を駆動する。

　図６は、本実施形態に係るモータ駆動装置によるトルク指令値の調整の処理を示すフローチャートである。
　本モータ駆動装置が動作していない間に、以下のステップＳ１およびＳ２が実行される。まず、車速対応トルク制御手段１０のアクセル感度調整部１０ａは、電動モータ５の最大出力（Ｗ０）およびモータ最大トルク（Ｔ０）をそれぞれ取得する（ステップＳ１）。電動モータ５の最大出力は、例えば数十ｋＷで、より具体的には３０ｋＷであってもよい。これら最大出力（Ｗ０）およびモータ最大トルク（Ｔ０）は、電動モータ固有の定格値であって、記憶手段２２に予め記憶されており、必要に応じて読み出される。

　次に、アクセル感度調整部１０ａは、規定車速（ω０）を算出する（ステップＳ２）。この規定車速（ω０）は、電動モータ５の最大出力（Ｗ０）をモータ最大トルク（Ｔ０）で除して求められる。算出された規定車速（ω０）は、記憶手段１２に記憶されてもよい。本モータ駆動装置が動作中、特に車両の走行中に、アクセル感度調整部１０ａは、アクセルセンサ１２ｂからアクセルペダル１２ａの踏込み量（アクセル信号Ａ）を検出する（ステップＳ３）。次に、アクセル感度調整部１０ａは、車速検出手段７から車速（ω）を取得する（ステップＳ４）。

　その後、アクセル感度調整部１０ａは、現在の車速（ω）、つまり車速検出手段７によって取得された車速（ω）が、規定車速（ω０）を超えているか否かを判定する（ステップＳ５）。

　現在の車速（ω）が規定車速（ω０）を超えたとの判定で（ステップＳ５のＹｅｓ）、アクセル感度調整部１０ａは、車速対応最大トルク（Ｔｍａｘ（ω））を求める（ステップＳ６）。具体的には、アクセル感度調整部１０ａは、記憶手段２２に記憶された車速対応最大トルクの関係Ｌａの関数を用いるなどして、ステップＳ４で取得した車速（ω）についての車速対応最大トルク（Ｔｍａｘ（ω））を取得してもよい。次に、この車速対応最大トルク（Ｔｍａｘ（ω））をステップＳ１で取得したモータ最大トルク（Ｔ０）で除した値を調整前トルク指令値（Ｔ）に乗算して、調整後のトルク指令値（Ｔ＊）を算出する（ステップＳ７）。すなわち、上記式（３）の演算を実行する。この後、ステップＳ３に戻る。

　現在の車速（ω）が規定車速以下であるとの判定で（ステップＳ５のＮｏ）、アクセル感度調整部１０ａは、調整前指令値Ｔを調整後のトルク指令値Ｔ＊とする（ステップＳ８）。但し、このステップＳ８において、アクセル感度調整部１０ａは、調整後のトルク指令値Ｔ＊がモータ最大トルク（Ｔ０）を超えるとき、モータ最大トルク（Ｔ０）を調整後のトルク指令値Ｔ＊とする。その後ステップＳ３に戻る。なお、現在の車速（ω）を規定車速と比較せず、つまりステップＳ５を省略して、現在の車速（ω）にかかわらず車速対応最大トルク（Ｔｍａｘ（ω））をステップＳ１で取得したモータ最大トルク（Ｔ０）で除した値を調整前トルク指令値（Ｔ）に乗算して、調整後のトルク指令値（Ｔ＊）を算出してもよい。現在の車速（ω）が規定車速以下では、車速対応最大トルク（Ｔｍａｘ（ω））がモータ最大トルク（Ｔ０）と等しいため、調整後のトルク指令値（Ｔ＊）は調整前指令値（Ｔ）のままである。

　以上説明したモータ駆動装置によると、車速対応トルク制御手段１０は、例えば、加速時に、アクセルペダル１２ａの踏込み量に応じたトルク指令値をトルク制御部１１に与えることができる。具体的には、運転者がアクセルペダル１２ａを加速途中の踏込み量から最大踏込み量まで操作しようとするとき、この踏込み量分がトルク指令値に反映される。また、運転者がアクセルペダル１２ａを最大踏込み量から緩めるとき、緩める割合に追従して電気自動車は減速していく。このようにアクセルペダル１２ａの踏込み量に車両の加減速が追従する。したがって、ドライバビリティが向上し、運転者に違和感を与えることを防止できる。

　この発明の第２の実施形態について説明する。
　以下の説明においては、各形態で先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。

　図７に示すように、電動モータ５は、インホイールモータ駆動装置ＩＷＭを構成するものとしても良い。この場合、左右の駆動輪２，２（図１）は、それぞれ独立の電動モータ５により駆動される。各インホイールモータ駆動装置ＩＷＭは、それぞれ、電動モータ５、減速機２４、および車輪用軸受２５を有し、これらの一部または全体が車輪内に配置される。電動モータ５の回転は、減速機２４および車輪用軸受２５を介して駆動輪２に伝達される。

　車輪用軸受２５のハブ輪２５ａのフランジ部にはブレーキを構成するブレーキロータ２６が固定され、同ブレーキロータ２６は駆動輪２と一体に回転する。

　電動モータ５は、例えば、ロータ５ａのコア部に永久磁石が内蔵された埋込磁石型同期モータである。電動モータ５は、ハウジング２７に固定されたステータ５ｂと、回転出力軸２８に取り付けられたロータ５ａとの間にラジアルギャップを設けたモータである。

　インホイールモータ駆動装置ＩＷＭの減速機２４としては、サイクロイド式の減速機、遊星減速機、平行２軸減速機、その他の減速機が適用可能である。代わりに、インホイールモータ駆動装置ＩＷＭは、減速機を採用しない、所謂ダイレクトモータタイプであっても良い。

　図８に示す第３の実施形態に係るモータ駆動装置では、このモータ駆動装置を搭載する車両が、車体１に設けた２個の電動モータ５，５で左右の後輪二輪２，２を独立して駆動する２モータオンボード形式であっても良い。

　車両として、１モータオンボード形式、２モータオンボード形式、またはインホイールモータ駆動形式において、左右の前輪二輪を駆動する前輪駆動式の電気自動車を適用しても良い。前記各モータ駆動形式において、前後左右の車輪を駆動する四輪駆動式の電気自動車を適用しても良い。

　以上、実施形態に基づいてこの発明を実施するための形態を説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

２…車輪
５…電動モータ
６…制御装置
７…車速検出手段
８…ＥＣＵ（上位制御部）
１０…車速対応トルク制御手段
１０ａ…アクセル感度調整部
１１…トルク制御部
１２…アクセル操作手段

Claims (6)

1. 　車両に設けられた車輪を駆動する電動モータと、
   　前記車両の車速を検出する車速検出手段と、
   　前記電動モータを制御する制御装置であって、
   　　前記車両のアクセル操作手段の操作量を示す信号を受けて駆動指令を出力する上位制御部、
   　　この上位制御部から出力された駆動指令を、前記車速検出手段によって検出される車速に応じて調整して調整後トルク指令値を調整後駆動指令として出力するアクセル感度調整部を含む車速対応トルク制御手段、および
   　　前記車速対応トルク制御手段によって出力された調整後駆動指令に従って前記電動モータをトルク制御するトルク制御部を有する制御装置とを備えたモータ駆動装置であって、
   　前記車速対応トルク制御手段の前記アクセル感度調整部が、
   　　前記アクセル操作手段の操作量が最大操作量である際における前記調整後トルク指令値が、車速と、車速に依存する前記電動モータの車速対応最大トルクとの関係から一意に定まる、前記車速検出手段によって検出される現在の車速に対する車速対応最大トルクに一致し、かつ前記アクセル操作手段の操作量に、前記調整後トルク指令値が比例するように、前記駆動指令を調整するモータ駆動装置。
2. 請求項１に記載のモータ駆動装置において、
   　前記アクセル感度調整部が、前記車速検出手段によって検出された車速（ω）について、以下の式（１）に基づいて前記調整後トルク指令値（Ｔ＊）を求めるモータ駆動装置。
   　Ｔ＊＝（Ｔｍａｘ（ω）／Ｔ０）×Ｔ　　　　　　　式（１）
   但し、Ｔｍａｘ（ω）：車速ω時の前記車速対応最大トルク、Ｔ０：モータ最大トルク、Ｔ：調整前トルク指令値である。
3. 　請求項１または請求項２に記載のモータ駆動装置において、前記車速検出手段によって検出された車速が規定車速を超えるとき、前記電動モータの最大出力（Ｗ０）を前記車速検出手段によって検出された車速（ω）で除して前記車速対応最大トルク（Ｔｍａｘ（ω））が求められるモータ駆動装置。
4. 　請求項１ないし請求項３に記載のモータ駆動装置において、前記車速検出手段によって検出された車速が規定車速以下のとき、前記電動モータの最大出力（Ｗ０）を前記規定車速（ω０）で除して前記車速対応最大トルク（Ｔｍａｘ（ω））が求められるモータ駆動装置。
5. 　請求項４に記載のモータ駆動装置において、前記アクセル感度調整部は、前記調整後トルク指令値が前記現在の車速対応最大トルクを超える場合に、前記現在の車速対応最大トルクを調整後のトルク指令値とするモータ駆動装置。
6. 　請求項１ないし請求項５のいずれか１項に記載のモータ駆動装置において、前記アクセル感度調整部は、車速に反比例する車速対応最大トルクを用いて、前記調整後トルク指令値を求めるモータ駆動装置。

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