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JP6375818B2 - 放熱板付パワーモジュール用基板の製造装置及び製造方法 - Google Patents

放熱板付パワーモジュール用基板の製造装置及び製造方法 Download PDF

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JP6375818B2 JP2014191558A JP2014191558A JP6375818B2 JP 6375818 B2 JP6375818 B2 JP 6375818B2 JP 2014191558 A JP2014191558 A JP 2014191558A JP 2014191558 A JP2014191558 A JP 2014191558A JP 6375818 B2 JP6375818 B2 JP 6375818B2
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Description

本発明は、大電流、高電圧を制御する半導体装置に用いられる放熱板付パワーモジュール用基板の製造装置及び製造方法に関する。
パワーモジュールには、一般に、窒化アルミニウムを始めとするセラミックス基板の一方の面に回路層を形成する金属板が接合されるとともに、他方の面に金属層を形成する金属板を介して放熱板が接合された放熱板付パワーモジュール用基板が用いられている。
このような放熱板付パワーモジュール用基板は、従来、次に示すように製造されてきた。
まず、セラミックス基板の表面に、セラミックス基板と回路層及び金属層との接合に適するろう材を介して2つの金属板を積層し、所定の圧力で加圧しながら、ろう材が溶融する温度以上まで加熱することにより、セラミックス基板と両面の金属板とを接合してパワーモジュール用基板を製造する。次に、このパワーモジュール用基板の金属層と放熱板とを、ろう付けや固相拡散接合により接合することにより、放熱板付パワーモジュール用基板を製造する。そして、この場合においても、パワーモジュール用基板と放熱板とを積層して、所定の圧力で加圧しながら加熱することにより、金属層と放熱板とを接合することができる。
また、このように構成される放熱板付パワーモジュール用基板は、例えば特許文献1に記載されているように、パワーモジュール用基板に放熱板を重ねた積層ユニットを平板治具で挟み、バネ等をセットして所定の面圧を付加して加熱することにより行われる。
特開2012‐160722号公報
ところで、放熱板付パワーモジュール用基板としては、従来、一枚の放熱板に一個のパワーモジュール用基板を接合したものが使用されてきたが、複数のパワーモジュール用基板を一体として取り扱えるようにするため、一枚の放熱板に複数のパワーモジュール用基板を接合することが行われている。この場合、複数のパワーモジュール用基板と放熱板との高い接合信頼性を得るためには、接合時に各パワーモジュール用基板の金属層と放熱板とを十分に密着させる必要がある。
ところが、特許文献1に記載される従来の治具のように、大面積の治具により複数のパワーモジュール用基板を一括して押圧する方法では、個々のパワーモジュール用基板が有する細かな形状の違いや、放熱板の表面形状の違い等によって、各パワーモジュール用基板に付加される押圧力にばらつきが生じ易く、全てのパワーモジュール用基板を同時に均一に加圧することが難しい。このため、複数のパワーモジュール用基板の全てにおいて放熱板との密着性を十分に確保することが難しく、放熱板付パワーモジュール用基板の接合信頼性や放熱性能の低下を引き起こすおそれがあった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、複数のパワーモジュール用基板を一枚の放熱板に接合する場合において、各パワーモジュール用基板と放熱板との接合信頼性を高めることができ、良好な放熱性能を確保することができる放熱板付パワーモジュール用基板の製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
本発明の放熱板付パワーモジュール用基板の製造装置は、セラミックス基板に回路層が配設されてなる複数のパワーモジュール用基板を、一枚の放熱板に面方向に間隔をあけて積層し、その積層方向に加圧しながら加熱することにより接合して放熱板付パワーモジュール用基板を製造するための装置であって、複数の前記パワーモジュール用基板を前記放熱板に重ねて配置した積層体を、その積層方向に加圧する加圧手段を備え、前記加圧手段は、前記パワーモジュール用基板の前記回路層表面を個別に押圧するための複数の上側加圧板と、前記放熱板背面を押圧するための一枚の下側加圧板と、前記上側加圧板に押圧力を付加する付勢手段とを有し、前記上側加圧板及び前記下側加圧板は、カーボン層により形成されていることを特徴とする。
複数設けられるパワーモジュール用基板ごとに押圧するための上側加圧板を複数備える構成とすることにより、個々のパワーモジュール用基板が有する細かな形状の違いや、放熱板の表面形状の違い等を、それぞれに備えられた上側加圧板により吸収して、各パワーモジュール用基板と放熱板との密着性を良好に保持することができる。したがって、各パワーモジュール用基板と放熱板との接合信頼性を高めることができ、良好な放熱性能を確保することができる。
本発明の放熱板付パワーモジュール用基板の製造装置において、前記上側加圧板及び前記下側加圧板は、前記カーボン層に、グラファイト層が積層されるとともに、該グラファイト層に前記カーボン層よりも薄い薄肉カーボン層が積層されており、該薄肉カーボン層が前記パワーモジュール用基板側に配置される。
上側加圧板及び下側加圧板を十分な厚さを有する硬質のカーボン層により形成するとともに、そのカーボン層と薄肉カーボン層との間にクッション性を有する軟質のグラファイト層を積層することにより、個々のパワーモジュール用基板や放熱板の表面に対して、圧力を均一にして加圧することができる。したがって、複数設けられたパワーモジュール用基板を、放熱板に良好な接合状態で接合することができる。
本発明の放熱板付パワーモジュール用基板の製造装置において、前記上側加圧板に設けられる前記グラファイト層は、複数の前記上側加圧板に跨って連結された一枚のシート状に設けられているとよい。
各上側加圧板は、バネ等の付勢手段によって、パワーモジュール用基板と放熱板との積層体に押圧力を付加する構成とされていることから、加圧時や加熱時において付勢手段が動くと、各上側加圧板はその影響を受け易い。その結果、放熱板に対する各パワーモジュール用基板の位置ずれを引き起こし易くなる。ところが、本発明おいては、上側加圧板に積層されるグラファイト層を、複数の上側加圧板に跨って連結した一枚のシート状に設けているので、そのクッション性により両側に積層されるカーボン層及び薄肉カーボン層の動きを拘束することができる。これにより、付勢手段が動くことにより生じる放熱板に対する各パワーモジュール用基板の位置ずれを防止することができ、パワーモジュール用基板の位置精度を向上させることができる。
また、グラファイト層により連結して各上側加圧板を一体に取り扱うことが可能となるので、作業性を向上させることもできる。
本発明の放熱板付パワーモジュール用基板の製造方法は、セラミックス基板に回路層が配設されてなる複数のパワーモジュール用基板を、一枚の放熱板に面方向に間隔をあけて接合して放熱板付パワーモジュール用基板を製造するための方法であって、各パワーモジュール用基板を前記放熱板に重ねて配置した積層体を、その積層方向に加圧しながら加熱することにより、前記パワーモジュール用基板と前記放熱板とを接合する接合工程を有し、前記接合工程において、前記パワーモジュール用基板の前記回路層表面を個別に押圧するための複数の上側加圧板と、前記放熱板背面を押圧するための一枚の下側加圧板との間に前記積層体を挟んで加圧し、前記上側加圧板及び前記下側加圧板は、カーボン層により形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、各パワーモジュール用基板と放熱板との接合信頼性を高めることができ、放熱板付パワーモジュール用基板の良好な放熱性能を確保することができる。
本発明の第1実施形態の放熱板付パワーモジュール用基板の製造装置を示す正面図である。 図1に示す放熱板付パワーモジュール用基板の製造装置のA‐A線に沿う断面図である。 放熱板付パワーモジュール用基板の製造方法を説明する断面図である。 本発明の第2実施形態の放熱板付パワーモジュール用基板の製造装置を示す正面図である。 従来の放熱板付パワーモジュール用基板の製造装置を示す。 放熱板付パワーモジュール用基板の金属層と放熱板との界面検査画像である。 パワーモジュール用基板の仮止め段階からの位置ずれを示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明に係る放熱板付パワーモジュール用基板の製造方法により製造される放熱板付パワーモジュール用基板100は、図3(c)に示すように、複数のパワーモジュール用基板10が、一枚の放熱板20に面方向に間隔をあけて接合されるものである。そして、この放熱板付パワーモジュール用基板100のパワーモジュール用基板10の表面に半導体チップ等の電子部品30が搭載されることにより、パワーモジュールが製造される。
放熱板20に接合される各パワーモジュール用基板10は、図3(b)に示すように、例えばセラミックス基板11と、セラミックス基板11の一方の面に積層された回路層12と、セラミックス基板11の他方の面に積層された金属層13とを備える。
セラミックス基板11は、例えばAlN(窒化アルミニウム)、Si(窒化珪素)等の窒化物系セラミックス、もしくはAl(アルミナ)等の酸化物系セラミックスを用いることができる。また、セラミックス基板11の厚さは0.2mm〜1.5mmの範囲内に設定することができ、本実施形態のセラミックス基板11は、AlNからなり、0.635mmの厚さとされる。
回路層12は、アルミニウム又はアルミニウム合金、もしくは銅又は銅合金からなる板材を、セラミックス基板11に接合することにより形成される。特に1N90(純度99.9質量%以上:いわゆる3Nアルミニウム)又は1N99(純度99.99質量%以上:いわゆる4Nアルミニウム)を好適に用いることができる。
また、金属層13は、アルミニウム又はアルミニウム合金、もしくは銅又は銅合金からなる板材を、セラミックス基板11に接合することにより形成される。特に純度1N99(純度99.99質量%以上:いわゆる4Nアルミニウム)を好適に用いることができる。
また、回路層12及び金属層13の厚さは、0.2mm〜2.0mmの範囲内に設定することができ、本実施形態においては、純度が99.99質量%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)の圧延板からなるアルミニウム板により、回路層12が0.4mm、金属層13が0.4mmの厚みに設けられている。
そして、これら回路層12及び金属層13とセラミックス基板11とは、例えばろう付けにより接合される。ろう材としては、Al‐Si系、Al‐Ge系、Al‐Cu系、Al‐Mg系又はAl‐Mn系等の合金が使用される。
なお、パワーモジュールを構成する電子部品30は、回路層12の表面に形成されたNiめっき(不図示)上に、Sn‐Ag‐Cu系、Zn‐Al系、Sn‐Ag系、Sn‐Cu系、Sn‐Sb系もしくはPb‐Sn系等のはんだ材を用いて接合される。また、電子部品30と回路層12の端子部との間は、アルミニウムからなるボンディングワイヤ(不図示)により接続される。
また、パワーモジュール用基板10に接合される放熱板20は、アルミニウム又はアルミニウム合金、もしくは銅又は銅合金により、厚さが1.0mm〜10mmの平板状に形成される。本実施形態の放熱板20は、無酸素銅からなり、3mmの厚さとされる。また、ここで放熱板20としては、板状の放熱板、フィンが形成された板状の放熱板などが含まれる。
そして、図1及び図2に示す放熱板付パワーモジュール用基板の製造装置50(以下、単に製造装置という。)は、6個のパワーモジュール用基板10と一枚の放熱板20とを接合した放熱板付パワーモジュール用基板100を製造する際に用いられる。
この製造装置50は、図1及び図2に示すように、四隅に設けられた支柱51により支持される天板52と座板53との間に、パワーモジュール用基板10を放熱板20に重ねた積層体25をその積層方向に加圧するための加圧手段60を備える。
天板52及び座板53は、それぞれ平板状に設けられ、天板52が座板53の上方に互いに平行となるように配置されている。また、各支柱51は、鉛直方向に延びる柱状に設けられ、両端には螺子が切られている。一方、座板53には、螺子穴が設けられており、各支柱51の一端側が座板53の螺子穴に立設されるとともに、他端側が天板52を貫通して上方に向かって延びて配置されており、その他端側に、ナット等の締結部材54が締結されている。そして、この4本の支柱51により、天板52が、座板53と平行状態を維持しながら、支柱51の延在方向(鉛直方向)にスライド移動可能に設けられている。
また、これら天板52及び座板53の間に挟まれて配置される加圧手段60は、パワーモジュール用基板10の回路層12表面を個別に押圧するための複数の上側加圧板70と、放熱板20背面を押圧するための一枚の下側加圧板80と、上側加圧板70に押圧力を付加する付勢手段90とを有する構成とされる。なお、上側加圧板70及び付勢手段90は、図2に示すように、それぞれパワーモジュール用基板10と同数の6個設けられる。
上側加圧板70及び下側加圧板80は、それぞれ耐熱性を有する硬質のカーボン層により平板状に形成される。そして、この上側加圧板70及び下側加圧板80に、クッション性を有する軟質のグラファイト層71,81が積層されるとともに、そのグラファイト層71,81に、上側加圧板70及び下側加圧板80を構成するカーボン層よりも厚さの薄い薄肉カーボン層72,82が積層され、上側加圧板70及び下側加圧板80を構成するカーボン層と薄肉カーボン層72,82との間にグラファイト層71,81を積層して、平板状に設けられている。
このグラファイト層71,81は、鱗片状のグラファイト薄膜が雲母のように複数積層されて構成されたものであり、天然黒鉛を酸処理した後にシート状に成形してロール圧延してなるものである。一方、上側加圧板70及び下側加圧板80を構成するカーボン層と薄肉カーボン層72,82は、カーボン板によって構成されており、3000℃程度の高温で焼成したものである。そして、グラファイト層71,81は、かさ密度が0.5Mg/m以上1.3Mg/m以下で軟質であるが、上側加圧板70及び下側加圧板80を構成するカーボン層と薄肉カーボン層72,82は、かさ密度が1.6Mg/m以上1.9Mg/m以下の比較的硬質で平滑な平面に形成される。
なお、上側加圧板70及び下側加圧板80を構成するカーボン層と薄肉カーボン層72,82とを構成するカーボン板には、例えば、旭グラファイト株式会社製G‐347(熱伝導率:116W/mK、弾性率:10.8GPa)を用いることができる。
また、グラファイト層71,81には、例えば旭グラファイト株式会社製T‐5(熱伝導率:75.4W/mK、弾性率:11.4GPa)や、東洋炭素工業株式会社製黒鉛シートPF(圧縮率47%、復元率14%)などを用いることができる。
また、下側加圧板70及び下側加圧板80の厚さは、例えば5mm以上(本実施例では20mm)に設けられ、パワーモジュール用基板10を放熱板20に重ねた積層体25を加圧するために十分な厚さに設定される。一方、グラファイト層71,81は、個々のパワーモジュール用基板10や放熱板20の形状の違いを吸収して圧力を均一にすることを目的とするから、その厚さは比較的薄く設けられ、例えば0.2mm以上4.0mm(本実施形態では1mm)とされる。
また、薄肉カーボン層72,82は、グラファイト層71,81とパワーモジュール用基板10とが直接接触することを避けるために設けられるので、その厚さは下側加圧板70及び下側加圧板80よりも薄く、例えば0.5mm以上5.0mm以下(本実施形態では1mm)とされる。
また、本実施形態の製造装置50においては、付勢手段90として圧縮コイルバネ91を用いており、各圧縮コイルバネ91は、その伸張方向を上下方向に向けて、上側加圧板70と天板52との間に介装されている。具体的には、各圧縮コイルバネ91は、そのコイル内径側に挿通して設けられる2本のガイド軸92により、伸張方向が案内されるようになっている。そして、各ガイド軸92の一端側(下端側)は、天板52と平行となるように配置されたばね受け皿93に固定され、他端側(上端側)は、天板52を貫通して上方に向かって延びて配置されており、その天板52から突出した一端部にナット等の締結部材94が締結されている。このように、ばね受け皿93は、天板52との平行状態を維持しながら、ガイド軸92の延在方向、すなわち、圧縮コイルバネ91の伸張方向にスライド可能に設けられている。そして、この圧縮コイルバネ91と支柱51に設けられる締結部材54との締め付けによって、上側加圧板70への加圧力が調整され、パワーモジュール用基板10と放熱板20との積層体25を所定の圧力で加圧できるようになっている。
ここで、本実施形態においては、付勢手段90を構成する圧縮コイルバネ91は、カーボンコンポジットを材料として形成される。このカーボンコンポジットは、線膨張係数が小さく、その値は、0.3×10−6/Kとされる。
また、本実施形態においては、支柱51、天板52、座板53、締結部材54、ガイド軸92、ばね受け皿93等の各部材も、圧縮コイルバネ91と同様にカーボンコンポジットから形成される。なお、これらの各部材の全てが必ずしもカーボンコンポジットから形成されている必要はなく、これらの各部材のうち少なくとも一つがカーボンコンポジットから形成されているものであってもよい。
次に、製造装置50によって、6個のパワーモジュール用基板10と、一枚の放熱板20とを接合して、放熱板付パワーモジュール用基板100を製造する方法について順を追って説明する。
まず、図3(a)及び(b)に示すように、回路層12及び金属層13として、それぞれ99.99質量%以上の純アルミニウム圧延板を準備し、これらの純アルミニウム圧延板を、セラミックス基板11の一方の面及び他方の面にそれぞれろう材18を介して積層し、加圧・加熱することによって、セラミックス基板11の一方の面及び他方の面に純アルミニウム圧延板が接合されたパワーモジュール用基板10を製造する。なお、このろう付け温度は、600℃〜655℃に設定される。
そして、このように構成されたパワーモジュール用基板10を放熱板20に接合するには、図1に示すように、製造装置50を用いて、下側加圧板80と上側加圧板70との間に、パワーモジュール用基板10と放熱板20との積層体25を配置する。
具体的には、まず、各パワーモジュール用基板10と放熱板20とをポリエチレングリコール(PEG)等の仮止め材(図示略)により仮止めした積層体25を作製する。この際、各パワーモジュール用基板10を、一枚の放熱板20の面方向に間隔をあけて載置し、パワーモジュール用基板10を放熱板20上に位置決めする。そして、この積層体25を下側加圧板80の上に載置し、各パワーモジュール用基板10上に、個々の上側加圧板70を接触させて、下側加圧板80とそれぞれの上側加圧板70とによって積層体25を挟持する。そして、天板52を下方に変位させ、圧縮コイルバネ91を圧縮することにより、積層体25に加圧力を付加する。また、このように圧縮コイルバネ91を圧縮した状態で、締結部材54を支柱51に締結することで、天板52の上方向への移動を制限する。これにより、圧縮コイルバネ91(付勢手段90)の付勢力を加圧力として、積層体25はその積層方向に加圧された状態に保持される。
そして、このように積層体25を積層方向に加圧した状態で、真空雰囲気下で銅とアルミニウムの共晶温度未満で加熱することにより、各パワーモジュール用基板10の金属層13と放熱板20とを、銅とアルミニウムとを相互に拡散させて固相拡散接合により接合する。この場合の加圧力としては、例えば、0.29MPa以上3.43MPa以下とされ、加熱温度としては400℃以上548℃未満とされ、この加圧及び加熱状態を5分以上240分以下の間で保持することにより、各パワーモジュール用基板10の金属層13と放熱板20とが固相拡散接合され、図3(c)に示すように、放熱板付パワーモジュール用基板100が得られる。なお、仮止め材は、加熱の初期の段階で分解されて消失する。
なお、本実施形態においては、各パワーモジュール用基板10の金属層13と放熱板20の、それぞれの接合面は、予め傷が除去されて平滑にされた後に固相拡散接合される。また、固相拡散接合における真空加熱の好ましい加熱温度は、アルミニウムと銅の共晶温度−5℃以上、共晶温度未満の範囲とされる。
このように、本実施形態の放熱板パワーモジュール用基板の製造装置及び製造方法においては、複数設けられるパワーモジュール用基板10ごとに押圧するための上側加圧板70を複数備える構成としている。これにより、個々のパワーモジュール用基板10が有する細かな形状の違いや、放熱板20の表面形状の違い等を、それぞれに備えられた上側加圧板70により吸収して、各パワーモジュール用基板10と放熱板20との密着性を良好に保持することができる。また、上側加圧板70及び下側加圧板80を十分な厚さを有する硬質のカーボン層により形成するとともに、そのカーボン層にクッション性を有する軟質のグラファイト層71,81を積層して設けているので、個々のパワーモジュール用基板10や放熱板20の表面に対して、圧力を均一にして加圧することができる。このため、複数設けられたパワーモジュール用基板10を、放熱板20に良好な接合状態で接合することができる。したがって、このようにして製造される放熱板付パワーモジュール用基板100においては、各パワーモジュール用基板10と放熱板20との接合信頼性を高めることができ、良好な放熱性能を確保することができる。
図4は、本発明の第2実施形態の放熱板付パワーモジュール用基板の製造装置250を示している。
図1に示す第1実施形態の製造装置50では、各上側加圧板70は、それぞれが独立して設けられていたが、第2実施形態の製造装置250では、図4に示すように、上側加圧板70に積層されるグラファイト層71Aが、上側加圧板70に跨って連結された一枚のシート状に設けられる。これにより、複数の上側加圧板70が、グラファイト層71Aによって連結された状態とされる。
なお、第2実施形態の製造装置250において、グラファイト層71A以外の他の構成要素は第1実施形態の製造装置50と同じものが用いられているので、各図において、第1実施形態と共通要素には同一符号を付して説明を省略する。
次に、この製造装置250によって、6個のパワーモジュール用基板10と、一枚の放熱板20とを接合して、放熱板付パワーモジュール用基板100を製造する方法について説明する。
まず、第1実施形態と同様に、図3(a)及び(b)に示すように、回路層12及び金属層13として、セラミックス基板11の一方の面及び他方の面に純アルミニウム圧延板が接合されたパワーモジュール用基板10を製造する。
次に、図4に示す製造装置250の下側加圧板80と上側加圧板70との間に、パワーモジュール用基板10と放熱板20とを仮止めした積層体25を配置し、積層体25を積層方向に加圧しながら加熱することにより、パワーモジュール用基板10と放熱板20とを接合して、図3(c)に示すように、放熱板付パワーモジュール用基板100を製造する。
この際、各上側加圧板70は、それぞれに個別に設けられた圧縮コイルバネ91からなる付勢手段90によって積層体25に押圧力を付加する構成とされていることから、加圧時や加熱時において付勢手段90が動くと、各上側加圧板70はその影響を受け易い。ところが、製造装置250では、クッション性を有するグラファイト層71Aを、複数の上側加圧板75に跨って連結した一枚のシート状に設けることで、このグラファイト層71の両側に配置された上側加圧板70及び薄肉カーボン層72を沈み込ませて動きを拘束することができる。これにより、付勢手段90が動くことによって、上側加圧板70が動くことを防止でき、付勢手段90の動きに起因する放熱板20に対する各パワーモジュール用基板10の位置ずれを防止することができる。
なお、複数の上側加圧板70が一枚のグラファイト層71Aによって連結された状態とされているが、グラファイト層71Aは軟質であるので、加圧時のパワーモジュール用基板10相互間のばらつきを吸収するために必要となる各上側加圧板70のわずかな相対移動は許容される。
このように、第2実施形態の放熱板パワーモジュール用基板の製造装置250及び製造方法においても、複数設けられるパワーモジュール用基板10ごとに押圧するための上側加圧板70を複数備える構成としており、各パワーモジュール用基板10と放熱板20との密着性を良好に保持することができる。また、クッション性を有するグラファイト層71Aを、複数の上側加圧板70に跨って連結した一枚のシート状に設けているので、付勢手段90が動くことにより生じる放熱板20に対する各パワーモジュール用基板10の位置ずれを防止することができる。さらに、グラファイト層71Aにより各上側加圧板75を一体に取り扱うことが可能となるので、作業性を向上させることもできる。
したがって、このようにして製造される放熱板付パワーモジュール用基板100においては、各パワーモジュール用基板10と放熱板20との接合信頼性を高めることができ、良好な放熱性能を確保することができるとともに、パワーモジュール用基板10の位置精度を向上させることができる。
次に、本発明の効果を確認するために、放熱板付パワーモジュール用基板を作製し、放熱板とパワーモジュール用基板との接合評価と、放熱板に対するパワーモジュール用基板の位置ずれの評価を行った。
放熱板付パワーモジュール用基板を構成するパワーモジュール用基板は、厚み0.635mmのAlNからなるセラミックス基板と、厚み0.6mmの純度99.99質量%以上のアルミニウム(4N‐Al)からなる回路層及び金属層とを、Al‐Si系ろう材によりろう付けしたものを用いた。また、放熱板は、厚み3.0mmの無酸素銅を用いた。なお、各部材のそれぞれの平面サイズは、セラミックス基板が30.7mm×43mm、回路層及び金属層が26.7mm×43mm、放熱板が165mm×144mmとされるものを用いた。
(接合の評価)
放熱板と2個のパワーモジュール用基板とを、図1に示す第1実施形態の製造装置50を用いて接合し、放熱板付パワーモジュール用基板の試料を作製した。また、従来例として、図5に示す製造装置300を用いて、放熱板付パワーモジュール用基板の試料を作製した。製造装置300では、上側加圧板70Bを、下側加圧板80と同様に一枚で構成しており、対となるこれら上側加圧板70Bと下側加圧板80とにより、パワーモジュール用基板と放熱板との積層体を挟持して加圧する構成とされる。また、上側加圧板70Bに積層されるグラファイト層71B及び薄肉カーボン層72Bも、下側加圧板80と同様に一枚で構成される。
そして、得られた放熱板付パワーモジュール用基板に対し、パワーモジュール用基板と放熱板との界面(金属層と放熱板との界面)の接合状態を、超音波探傷装置を用いて観察した。
図6に放熱板付パワーモジュール用基板の金属層と放熱板との界面検査画像を示す。また、図6(a)が製造装置50を用いて製造された実施例の放熱板付パワーモジュール用基板の金属層と放熱板との界面検査画像であり、図6(b)が製造装置300を用いて製造された従来例の放熱板付パワーモジュール用基板の金属層と放熱板との界面検査画像である。そして、これらの界面検査画像は、いずれも放熱板上に2個接合されたパワーモジュール用基板と放熱板との要部の画像である。また、界面検査画像において、非接合部は白色部で示される。
図6(b)からわかるように、従来例の放熱板付パワーモジュール用基板においては、2個のパワーモジュール用基板の両方に非接合部が確認された。一方、図6(a)に示す実施例の放熱板付パワーモジュール用基板においては、非接合部が殆ど生じることなく、2個のパワーモジュール用基板を良好に接合できることが確認できた。
(位置ずれ評価)
まず、放熱板に6個のパワーモジュール用基板を仮止めした積層体を作製し、この仮止め段階での放熱板に対する各パワーモジュール用基板の固定位置を、顕微鏡画像を用いて測定した。次に、これらパワーモジュール用基板と放熱板との積層体を、図1に示す第1実施形態の製造装置50と、図4に示す第2実施形態の製造装置250とを用いて接合し、放熱板付パワーモジュール用基板の試料を作製した。なお、第1実施形態の製造装置50及び第2実施形態の製造装置250のそれぞれについて、42個の放熱板付パワーモジュール用基板を作製した。そして、得られた放熱板付パワーモジュール用基板について、接合後の放熱板に対する各パワーモジュール用基板の固定位置を顕微鏡画像により測定し、パワーモジュール用基板の仮止め段階からの位置ずれ(位置精度)を評価した。
図7に結果を示す。また、図7(a)が図1に示す第1実施形態の製造装置50を用いて作製した放熱板付パワーモジュール用基板の結果であり、図7(b)が図4に示す第2実施形態の製造装置250を用いて作製した放熱板付パワーモジュール用基板の結果である。
図7(a)及び(b)からわかるように、上側加圧板に積層するグラファイト層を、複数の上側加圧板に跨ってシート状に設けた第2実施形態の製造装置250(図7(b))では、グラファイト層を個別に設けた第1実施形態の製造装置50の場合(図7(a))と比べて、パワーモジュール用基板の位置ずれを小さくすることができ、さらに位置ずれのばらつきを小さくすることができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前述の実施形態では、一枚の放熱板に6個のパワーモジュール用基板を接合する構成としたが、パワーモジュール用基板の搭載数はこれに限定されるものではない。パワーモジュール用基板が複数搭載される放熱板付パワーモジュール用基板において、パワーモジュール用基板と同数の上側加圧板を備える構成とすることができる。
また、上記実施形態では、回路層及び金属層が設けられたパワーモジュール用基板を用いたが、これに限らず、回路層のみを有するパワーモジュール用基板を用いることもできる。この場合、セラミックス基板と放熱板とが接合されることとなる。
また、前述の実施形態では、パワーモジュール用基板10と放熱板20とを固相拡散接合により接合して放熱板付パワーモジュール用基板100を製造する方法について説明したが、本発明の製造装置及び製造方法は、固相拡散接合以外のろう付け等の他の接合方法にも採用されるものである。すなわち、他の接合方法においても、接合時に加圧を必要とする場合に、本発明の放熱板付パワーモジュール用基板の製造装置及び製造方法を好適に用いることができる。
10 パワーモジュール用基板
11 セラミックス基板
12 回路層
13 金属層
18 ろう材
20 放熱板
25 積層体
30 電子部品
50,250,300 放熱板付パワーモジュール用基板の製造装置
51 支柱
52 天板
53 座板
54 締結部材
60 加圧手段
70 上側加圧板
71,71A,71B グラファイト層
72 薄肉カーボン層
80 下側加圧板
81 グラファイト層
82 薄肉カーボン層
90 付勢手段
91 圧縮コイルバネ
92 ガイド軸
93 ばね受け皿
94 締結部材

Claims (4)

  1. セラミックス基板に回路層が配設されてなる複数のパワーモジュール用基板を、一枚の放熱板に面方向に間隔をあけて積層し、その積層方向に加圧しながら加熱することにより接合して放熱板付パワーモジュール用基板を製造するための装置であって、
    複数の前記パワーモジュール用基板を前記放熱板に重ねて配置した積層体を、その積層方向に加圧する加圧手段を備え、
    前記加圧手段は、前記パワーモジュール用基板の前記回路層表面を個別に押圧するための複数の上側加圧板と、前記放熱板背面を押圧するための一枚の下側加圧板と、前記上側加圧板に押圧力を付加する付勢手段とを有し、
    前記上側加圧板及び前記下側加圧板は、カーボン層により形成されていることを特徴とする放熱板付パワーモジュール用基板の製造装置。
  2. 前記上側加圧板及び前記下側加圧板は、前記カーボン層に、グラファイト層が積層されるとともに、該グラファイト層に前記カーボン層よりも薄い薄肉カーボン層が積層されており、該薄肉カーボン層が前記パワーモジュール用基板側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の放熱板付パワーモジュール用基板の製造装置。
  3. 前記上側加圧板に設けられる前記グラファイト層は、複数の前記上側加圧板に跨って連結された一枚のシート状に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の放熱板付パワーモジュール用基板の製造装置
  4. セラミックス基板に回路層が配設されてなる複数のパワーモジュール用基板を、一枚の放熱板に面方向に間隔をあけて接合して放熱板付パワーモジュール用基板を製造するための方法であって、
    各パワーモジュール用基板を前記放熱板に重ねて配置した積層体を、その積層方向に加圧しながら加熱することにより、前記パワーモジュール用基板と前記放熱板とを接合する接合工程を有し、
    前記接合工程において、前記パワーモジュール用基板の前記回路層表面を個別に押圧するための複数の上側加圧板と、前記放熱板背面を押圧するための一枚の下側加圧板との間に前記積層体を挟んで加圧し、
    前記上側加圧板及び前記下側加圧板は、カーボン層により形成されていることを特徴とする放熱板付パワーモジュール用基板の製造方法。
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