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JP6360949B2 - インクジェットプリンタ - Google Patents

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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Description

本発明の実施形態は、インクジェットプリンタに関する。
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ等の画像記録装置(画像形成装置)として用いるインクジェット式記録装置では、マイクロアクチュエータを含む液滴吐出ヘッドであるインクジェット式記録ヘッドが使用される。インクジェット式記録ヘッドは、インク滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する圧力室(加圧室、液室、加圧液室、インク流路、吐出室等とも称される)と、この圧力室内のインクを加圧する圧力発生手段(アクチュエータ手段)とを備える。そして、アクチュエータ手段を駆動することで圧力室内インクを加圧してノズルからインク滴を吐出させる。
従来のインクジェット式記録ヘッドは、アクチュエータ手段の種類という点から、圧電型のものと、バブル型のものとに大別される。圧電型のアクチュエータ手段は、圧電素子を用いて圧力室の壁面を形成する振動板を変形変位させることでインク滴を吐出させる。バブル型のアクチュエータ手段は、圧力室内に配設した発熱抵抗体を用いてインクの膜沸騰でバブルを発生させてインク滴を吐出させる。
上述したようなインクジェット式記録ヘッドの内、圧電型にあっては、圧電素子がインクに直接接触せず、圧電素子の発熱も無視できる。そのため、使用するインク種類の制約がないという利点がある。反面、圧電素子の高熱処理(PZT焼成)や、積層型圧電素子を用いる場合には分割化、個々の圧電素子の位置合わせ等の機械的、熱的な技術課題が大きく、煩雑な工程と装置によってコストが高くなる。
また、バブル型にあっては、半導体技術の応用によってヒータを非常に小さくできることから、ヘッドの高集積化、小型化が容易であるという利点を有する。その反面、バブルを発生させるためにヒータ表面温度が400〜450℃と高くなる。このため、インクに極端な高熱を与えることからインク組成が変化し、ヒータのインク接触部分でのコゲーションが発生する。そのため、インク染料の選択が重要になり、顔料インクを使用することが難しく、カラー画像の高画質化に限界が生じる。また、コゲーションによるヒータの劣化でバブル発生が不良になったり、高熱のためにヒータ保護膜が劣化してクラックによるヒータ断線が生じたりするなどの不良が発生し易い。
そこで、半導体プロセス技術を上記圧電型に適用した、いわゆる圧電MEMS型のインクジェット式記録ヘッドが注目されている。
特開2011−56939号公報 特開2009−160822号公報
インクジェット式記録ヘッドでは、駆動中、ノズルに連通する液室である圧力室内に気泡が生成する現象が生じる。そして、インクジェット式記録ヘッドの問題点の一つに、圧力室内に気泡が生成するとインク吐出が妨げられる現象、いわゆるドット抜けが生じることがあげられる。
圧電MEMS型のインクジェット式記録ヘッドの一例として、例えば振動板の上に、ノズルに接して圧電素子を形成した構造の装置がある。この圧電MEMS型のインクジェット式記録ヘッドでは、圧力室を形成する基板の厚さとして一定の大きさが必要になる。例えば、基板の厚さが300μmの場合、基板の厚さ方向と直交する方向の圧力室の長さが100μm程度になる。そのため、圧力室の内部には、比較的大きな容積の単一空間が形成される。この場合、インクジェット式記録ヘッドの駆動中、気泡は圧力室の内部の単一空間のどこにでも発生する可能性がある。圧力室の内部で圧力変動が大きい場所では気泡が発生しやすくなっている。そして、基板の中に単純な1室構造である単一空間の圧力室が形成されている場合には、圧力室の内部の気泡の流れを制御することは難しい。そのため、気泡が圧力室内部に溜まる可能性があり、上記のドット抜けの問題に対処することが難しい。
実施形態は、このような事情に鑑み、気泡が圧力室内部に溜まることを防止して、ドット抜けを防止できるインクジェット式記録ヘッドの製造方法を提供することを課題とする。
実施形態のインクジェットプリンタは、一方の端面から他方の端面に亘って圧力室が設けられるシリコン基板と、シリコン基板の一方の端面にあって、圧力室を塞ぐ振動板と、圧力室に連通するノズルと、を有するノズルプレートと、ノズルプレートを変位させて圧力室内のインクをノズルから吐出させるアクチュエータと、シリコン基板の他方の端面にあって、圧力室へインクを供給する第1の接続口と、圧力室からインクが流出する第2の接続口と、を有するバックプレートとを有し、第1の接続口は、圧力室の一端、第2の接続口は、圧力室の他端にそれぞれ配置され、シリコン基板は、バックプレート側の端面に一体に形成され、圧力室内をノズルの近傍の連通路を除いて複数に仕切る仕切り壁を有し、仕切り壁は、第1の接続口と第2の接続口との間に圧力室の対向する一方の側壁面から他方の側壁面にわたって設けたインクジェット式記録ヘッドと;ノズルからインクが吐出される位置に記録媒体を搬送する搬送部と;を備える。
第1の実施の形態に係るインクジェットプリンタの全体の概略構成を示す縦断面図。 第1の実施の形態に係るインクジェットプリンタの全体の概略構成を示す斜視図。 第1の実施の形態のインクジェットヘッドの部分拡大平面図。 図3のF4−F4線断面図。 第1の実施の形態のインクジェットヘッドの製造方法におけるシリコン単結晶基板のウェハ表面にリング状の溝を形成した状態を示す要部の縦断面図。 図5のウェハ表面に熱酸化によりシリコン酸化膜からなる振動板およびシリコン酸化膜側壁を同時に形成した状態を示す要部の縦断面図。 図6の振動板上に下部電極と、圧電膜と、上部電極とを有する圧電素子を形成した状態を示す要部の縦断面図。 図7の振動板をパターニングしてノズル開口部を形成した状態を示す要部の縦断面図。 図8の流路形成基板の裏面側から裏面フォトリソグラフィーおよびD−RIEにより圧力室を形成した状態を示す要部の縦断面図。 図9の流路形成基板の裏面にバックプレートを接着した状態を示す要部の縦断面図。 第1の実施の形態の第1の変形例のインクジェットヘッドの部分拡大平面図。 図11のF12−F12線断面図。 第1の実施の形態の第2の変形例のインクジェットヘッドの部分拡大平面図。 図13のF14−F14線断面図。 第2の実施の形態のインクジェットヘッドの部分拡大平面図。 図15のF16−F16線断面図。 第2の実施の形態のインクジェットヘッドの製造方法におけるシリコン単結晶基板のウェハ表面に外側のリング状の溝および内側のリング状の溝を形成した状態を示す要部の縦断面図。 図17のウェハ表面に熱酸化によりシリコン酸化膜側壁およびシリコン酸化膜ノズル壁を同時に形成した状態を示す要部の縦断面図。 図18の振動板上に下部電極と、圧電膜と、上部電極とを有する圧電素子を形成した状態を示す要部の縦断面図。 図19の振動板をパターニングしてノズル開口部を形成した状態を示す要部の縦断面図。 図20の流路形成基板の裏面側から裏面フォトリソグラフィーおよびD−RIEにより圧力室を形成した状態を示す要部の縦断面図。 図21の流路形成基板の裏面にバックプレートを接着した状態を示す要部の縦断面図。 第3の実施の形態のインクジェットヘッドの上面図。 図23のF24−F24線断面図。 第4の実施の形態のインクジェットヘッドの縦断面図。 第5の実施の形態のインクジェットヘッドの上面図。 図26のF27−F27線断面図。 図26のF28−F28線断面図。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
図1は、実施形態のインクジェットプリンタ100(以下、単に、プリンタ100と称する)を示す概略図である。
プリンタ100は、筐体101を有する。筐体101内には、保持ローラ2が矢印方向に回転可能に設けられている。保持ローラ2の下方には、用紙Pを収容した給紙カセット3が設けられている。筐体101の上端には、排紙トレイ102が設けられている。
ピックアップローラ3aによって給紙カセット3から取り出された用紙Pは、2組の搬送ローラ対4a、4bによって保持ローラ2へ搬送される。保持ローラ2へ搬送された用紙Pは、押圧ローラ5aによって保持ローラ2の表面に押圧されて帯電ローラ5bによって帯電され、保持ローラ2の表面に静電的に吸着される。保持ローラ2の表面に吸着された用紙Pは、保持ローラ2の回転によってさらに搬送される。保持ローラ2は、円筒状のアルミニウムにより形成されて接地されている。
保持ローラ2の回転によって搬送された用紙Pは、複数色(ここでは一例として4色の場合を示す。)のインクジェット式記録ヘッド(以下、インクジェットヘッドと称する)6C、6M、6Y、6Kを通過される。各色のインクジェットヘッド6C、6M、6Y、6Kは、それぞれ、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのインクを吐出して各色の画像を用紙P上に重ねて形成する。インクジェットヘッド6C、6M、6Y、6Kは、同じ構造を有するため、以下の説明では、単に、インクジェットヘッド6と称する場合もある。
各色のインクジェットヘッド6C、6M、6Y、6Kを通過してカラー画像が形成された用紙Pは、除電チャージャ7aによって除電されて剥離爪7bによって保持ローラ2の表面から剥離される。保持ローラ2から剥離された用紙Pは、3組の排紙ローラ対8a、8b、8cを介して排紙トレイ102へ排出される。
或いは、用紙Pの両面に画像を形成する場合、保持ローラ2から剥離された用紙Pは、排紙ローラ対8aを介して反転部9へ送り込まれる。反転部9は、用紙Pの搬送方向を逆転して搬送ローラ対4bへ送り出すことで用紙Pを表裏反転する。搬送ローラ対4bは、反転された用紙Pを保持ローラ2へ再供給する。そして、用紙Pが剥離された後の保持ローラ2は、クリーニングローラ10によってクリーニングされる。
図2は、インクジェットヘッド6の分解斜視図を示す。このインクジェットヘッド6は、圧電MEMS型のヘッドである。
インクジェットヘッド6は、ノズルプレート12と、シリコン基板14と、バックプレート16と、インク流路ブロック300とを有する。インクジェットヘッド6は、ノズルプレート12の第1面(図示上面)が保持ローラ2の表面に対向する姿勢で取り付けられる。なお、ノズルプレート12は、後述するように、シリコン基板14と一体に形成されるものであり、実際には図示のように分離されるものではない。ここでは、説明を分かり易くするため、分離して図示してある。
ノズルプレート12は、インクを吐出するための複数のノズル孔12aを有する。各ノズル孔12aは、ノズルプレート12の第1面(図示上面)と第2面(不図示)を連絡するようにノズルプレート12を貫通して延びた貫通孔である。図2では、14個のノズル孔12aを2列に配置した状態を示したが、実際には、より多くのノズル孔12aが複数列並んで設けられている。つまり、ここでは説明を分かり易くするため、ノズル孔12aの数を実際のものより少なく図示してある。
シリコン基板14は、ノズル孔12aにそれぞれ対向する複数のインク圧力室14aを備えている。各インク圧力室14aは、シリコン基板14を貫通して延びている。バックプレート16は、複数のインク圧力室14aにそれぞれ対応するここでは図示しない複数のインク流通孔16a、16b(図4参照)を有する。本実施の形態では、バックプレート16は、1つのインク圧力室14aに対応して2つのインク流通孔16a、16bが形成されている。ここで、一方のインク流通孔16aは、インク圧力室14aへインクを供給する第1の接続口であり、他方のインク流通孔16bは、インク圧力室14aからインクが流出する第2の接続口である。
各インク流通孔16a、16bも、バックプレート16を貫通して延びている。インク流路ブロック300は、固定面301と、インク供給口302と、インク回収口303と、一対のインク供給流路304と、インク回収流路305とを有する。インク回収流路305は、インク排出流路の一例である。
インク供給口302は、図2中でX方向におけるインク流路ブロック300の一方の端部にある。インク供給口302は、インク流路ブロック300の厚さ方向(Z方向)に延びる円形の孔である。インク供給口302は、固定面301に開口する。固定面301に開口したインク供給口302は、バックプレート16が塞ぐ。
インク供給口302は、例えばチューブのような経路を通じて、インクタンク23に接続される。インクタンク23に収容されたインクは、例えば圧力制御によって、インク供給口302に供給される。
インク回収口303は、インク流路ブロック300の厚さ方向(Z方向)に延びる円形の孔である。インク回収口303は、固定面301に開口する。固定面301に開口したインク回収口303は、バックプレート16が塞ぐ。
インク回収口303は、例えばチューブのような経路を通じて、インクタンク23に接続される。インク回収口303に流入するインクは、例えば圧力制御によって、インクタンク23に回収される。
一対のインク供給流路304は、固定面301に設けられた溝である。一対のインク供給流路304は、X方向に沿って平行に延びている。インク供給流路304の一方の端部は、インク供給口302に接続される。このため、インクタンク23からインク供給口302に供給されたインクは、一対のインク供給流路304に流入する。
インク回収流路305は、固定面301に設けられた溝である。インク回収流路305は、一対のインク供給流路304の間に位置する。インク回収流路305は、X方向に沿って、インク供給流路304と平行に延びる。インク回収流路305の一方の端部は、インク回収口303に接続される。このため、インク回収流路305に流入したインクは、インク回収口303を通ってインクタンク23に回収される。
インクタンク23から供給されたインクは、インク供給口302を介して一対のインク供給流路304に流入し、インク供給流路304に流入したインクは、インク流通孔16aを通って、インク圧力室14aに流入する。また、インク圧力室14aのインクは、インク流通孔16bを通って、インク回収流路305に流出する。
つまり、インクジェットプリンタ100において、インクは、インクジェットヘッド6とインクタンク23との間で循環する。インク圧力室14aにおいて、インクはインク流通孔16aからインク流通孔16bへ常に流れている。このため、インク圧力室14aのインクは絶えず入れ替えられる。そして、インク圧力室14aにインクが充填され、ノズル孔12aにインクのメニスカスが形成される。各インク圧力室14aへ供給されたインクは、以下に説明する圧電素子(アクチュエータ)13の動作によって、ノズルプレート12の各ノズル孔12aを介して吐出される。
ノズルプレート12の第1面には、各ノズル孔12aに対応して複数の圧電素子13が設けられている。各圧電素子13は、駆動電圧を印加することでその厚み方向に変位する。圧電素子13の変位により、ノズル孔12aの周りのノズルプレート12も厚み方向に変位し、インク圧力室14aの容積が変化する。このように、インク圧力室14aの容積が変化すると、インク圧力室14a内の圧力が変化し、この圧力変化によってノズル孔12aからインクが吐出する。
(第1の実施の形態)
図3乃至図10は第1の実施の形態を示す。図3は、第1の実施形態のインクジェットヘッド6−1の要部、すなわち1つのノズル孔12aの周りの構造物をインクの吐出方向から見た部分拡大平面図である。また、図4は、図3のF4−F4線断面図である。図4では、図示簡略化のため、インク流路ブロック300の図示を省略してある。なお、以下に説明する複数の実施形態や変形例において、1つのノズル孔12aに着目してヘッドの全体構成を説明する。
本実施の形態のインクジェットヘッド6−1は、シリコン基板14と、ノズルプレート12と、圧電素子(アクチュエータ)13と、バックプレート16とを有する。シリコン基板14は、一方の端面から他方の端面に亘ってインク圧力室14aが設けられる。本実施の形態のインク圧力室14aは、図3に示すように断面形状が円形状に形成されている。ノズルプレート12は、前記シリコン基板14の一方の端面にあって、前記インク圧力室14aを塞ぐシリコン酸化膜からなる振動板30と、前記インク圧力室14aに連通するノズル孔12aと、を有する。圧電素子13は、前記ノズルプレート12を変位させて前記インク圧力室14a内のインクを前記ノズル孔12aから吐出させる。バックプレート16は、前記シリコン基板14の他方の端面にあって、前記インク圧力室14aへインクを供給する第1の接続口であるインク流通孔16aと、前記インク圧力室14aからインクが流出する第2の接続口であるインク流通孔16bと、を有する。前記シリコン基板14は、前記バックプレート16側の端面に一体に形成され、前記インク圧力室14a内を前記ノズル孔12aの近傍の連通路17を除いて複数、本実施の形態では2つに仕切る仕切り壁18を有する。
本実施の形態のインクジェットヘッド6−1は、上記構成を備えることにより、圧電素子13に電圧を印加することにより屈曲変形を生じる。このとき、圧電素子13が積層されてなる振動板30が全体として大きな変形を生じ、大きな駆動体積を有するインクジェットヘッド6−1を提供する。また、仕切り壁18によってインク圧力室14a内がノズル孔12aの近傍の連通路17を除いて2つの領域(第1領域14a1と第2領域14a2)に仕切られている。ここで、一方の第1領域14a1側にインク供給側のインク流通孔16aが配置されている。他方の第2領域14a2側にインク排出側のインク流通孔16bが配置されている。これにより、インク流通孔16aから第1領域14a1側に流入したインクが、連通路17を通り、第2領域14a2側に流れ、インク流通孔16bから流出するインク流路がインク圧力室14a内に形成される。そのため、インク圧力室14a内に気泡が生成されても速やかに気泡をインク圧力室14aの外に排出し、ドット抜けを防止することが可能になる。
インクジェットヘッド6−1は、シリコン基板14を使用して形成される。シリコン基板14の一方の面には、振動板30が設けられている。振動板30は、例えば、熱酸化ないしはCVD法により作成した、厚さ1〜5μmのシリコン酸化膜(二酸化シリコン)で形成される。シリコン酸化膜は非晶質であることが、均等な変形が実現できるという観点から望ましい。また、安定した組成および特性を備える膜の製造が容易という観点からも望ましい。さらに、従来の半導体プロセスとの整合性がよいという点からも望ましい。
振動板30の中央部分上面には、圧電素子13が積層されている。圧電素子13は、図3に示すように、ノズル孔12aの周囲に設けられた略円環状の薄膜である。圧電素子13は、図4に示すように、下部電極31、圧電膜32、および上部電極33を有する。下部電極31は、振動板30の上面に積層し、圧電膜32は、下部電極31の上に積層し、上部電極33は、圧電膜32の上に積層する。下部電極31と上部電極33の間に圧電膜32が挟まれている。
下部電極31の端部31aは、延長されて配線の一部とされている。また、上部電極33の一部33aは、下層の圧電膜32、下部電極31とともに延長されて配線の一部とされている。図2に示すように、下部電極31は、配線を介して共通電極105に接続され、上部電極33は、配線を介して個別電極24に接続されている。
シリコン基板14には、インク圧力室14aの側壁の一部となる、シリコン酸化膜側壁(側壁形成部)11a、11bと、シリコン基板14のエッチング面からなる側壁部14b1、14b2が設けられている。シリコン酸化膜側壁11a、11bは、振動板30の端面から連続して同じ材料で一体に圧力室14a内に延びて圧力室14aの側壁の一部をなす。振動板30は、シリコン酸化膜側壁11a、11bの固定端となっている。
シリコン基板14の他方の面には、シリコン基板からなるバックプレート16が接続される。バックプレート16は、インク圧力室14aの第1領域14a1へインクを供給するインク流通孔16aおよびインク圧力室14aの第2領域14a2からインクを排出するインク流通孔16bを備えている。
インク圧力室14aは、振動板30と、シリコン酸化膜側壁11a、11bと、シリコン基板14の側壁部14b1、14b2、および振動板30と対向するバックプレート16で構成されている。インク圧力室14a内の中央部には、ノズル孔12aの近傍の連通路17を除いて仕切り壁18が設けられている。インク圧力室14aの下部は仕切り壁18により2つの領域(第1領域14a1と第2領域14a2)に分かれ、それぞれバックプレート16のインク流通孔16aおよびインク流通孔16bに接続されている。
バックプレート16のインク流通孔16aと、インク圧力室14aの第1領域14a1と、ノズル孔12aの近傍の連通路17と、インク圧力室14aの第2領域14a2と、インク流通孔16bとでインク流路が構成されている。
振動板30には、例えばエッチングによりノズル孔12aが形成されている。ここで、インク滴吐出圧力をインクに与えるインク圧力室14aの大きさと、インク滴を吐出するノズル孔12aの大きさとは、吐出するインク滴の量、吐出スピード、吐出周波数に応じて最適化される。例えば、1インチ当たり360個のインク滴を記録する場合、ノズル孔12aは数十μmの溝幅で精度よく形成する必要がある。
シリコン基板14としては、例えば、100〜600μm程度の厚さのシリコン基板が用いられる。シリコン基板14の厚さは、望ましくは200〜500μm程度である。これは、シリコン基板14の製造時のハンドリングの容易さを保ちつつ、インク圧力室14aの配列密度を高くできるからである。
圧電素子13に使用される圧電膜32としては、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr、Ti)O3、PZT)などの電歪定数の大きな圧電材料が適している。圧電膜32にPZTを使用した場合、下部電極31や上部電極33として、Pt、Au、Irなどの貴金属や、SrRuO3などの導電性の酸化物が適している。
また、圧電膜32として、AlNやZnOなどのシリコンプロセスに適した圧電材料を使用することも可能である。この場合は、下部電極31や上部電極33として、Al,Cuなどの一般の電極材料や配線材料を使用することができる。
インクジェットヘッド6−1の駆動時には、図示しない外部の駆動回路からの記録信号に従い、下部電極31と上部電極33の間に駆動電圧を印加して、圧電膜32を収縮させる。これにより、振動板30の圧電素子13の周囲部分が凹状に屈曲変形し、インク圧力室14aの体積が増大する。このとき、インク圧力室14aにインク供給側のインク流通孔16aからインクが流入する。次に、駆動電圧を除去すると、振動板30の圧電素子13の周囲部分の屈曲変形が元に戻り、インク圧力室14aの体積が減少する。これにより、インク圧力室14aの中のインクの圧力が高まり、ノズル孔12aからインク滴が吐出する。
インク滴吐出動作中にインク圧力室14a内に気泡が発生することがある。気泡が発生すると、振動板30を駆動した場合に圧力変化が気泡に吸収され、インク滴の吐出が困難になる。気泡はノズル孔12aの近傍のインク圧力室14a内に発生しやすい。
本実施の形態のインクジェットヘッド6−1においては、インク圧力室14a内に設置された仕切り壁18によりインク圧力室14a内にインク流路が形成されている。そのため、図2に示すインク流路ブロック300を含むインク循環機構をバックプレート16のインク供給側のインク流通孔16aとインク排出側のインク流通孔16bとに接続することにより、インクを循環させることができる。ノズル孔12aの周囲ではオリフィスが形成されておりインクの流速が大きくなっている。したがって、ノズル孔12aの近傍のインク圧力室14aに気泡が発生した場合、インクの循環によって気泡は速やかにインク流通孔16bからインク圧力室14a外に排出することが可能である。このため、気泡発生によるドット抜けを短時間で回復することが可能になる。
以下、図5乃至図10を参照して、上記構造の第1の実施形態のインクジェットヘッド6−1の製造方法について説明する。
図5に示すように、まず、シリコン基板14となるシリコン単結晶基板21の平らなウェハ表面21aにリング状の溝22を例えばフォトリソグラフィーおよび反応性イオンエッチング(RIE)によって形成する。本実施形態では、溝22は、インク圧力室14aの外周形状と対応する大きさの円形状のリング状の溝22を2つに分割した2つの半円形状溝22a、22bを有し、ウェハ表面21aに対して略垂直に形成する。この溝22の位置および形状(深さや幅)は、後の工程で形成するシリコン酸化膜側壁11a、11bの位置、長さ、厚さを決める。
次に、図6に示すように、熱酸化によりシリコン単結晶基板21を酸化してシリコン酸化膜からなる振動板30およびシリコン酸化膜側壁11a、11bを同時に形成する。このとき、2つの半円形状溝22a、22bの幅と酸化膜厚を調整することで、2つの半円形状溝22a、22bの内部を酸化膜で埋めることができる。具体的には、酸化膜の振動板30の厚さを1とすると、2つの半円形状溝22a、22bの幅を1.12程度、酸化後の酸化膜側壁11a、11bの厚さを2程度ないしはそれ以上にすることが望ましい。なお、本実施の形態ではシリコン単結晶基板21の熱酸化により振動板30およびシリコン酸化膜側壁11a、11bを形成したが、熱酸化法以外のプラズマCVD法やTEOSを原材料とするCVD法なども使用することが可能である。
次に、図7に示すように、振動板30上に、スパッタリングによりTi/Ptからなる下部電極31と、PZTからなる圧電膜32と、Ptからなる上部電極33を有する圧電素子13を形成する。そして、フォトリソグラフィーおよび反応性イオンエッチングにより上部電極33および圧電膜32をパターニングする。さらに、フォトリソグラフィーおよび反応性イオンエッチングにより下部電極31をパターニングする。
続いて、図8に示すように、フォトリソグラフィーおよび反応性イオンエッチングにより振動板30をパターニングしてノズル孔12aを形成する。
次に、図6に示すように、シリコン単結晶基板21の裏面側にインク圧力室14aと同形状よりも一回り小さい2つの半円形状のレジストパターンを作成する。裏面フォトリソグラフィーおよびD−RIEにより、インク圧力室14aを形成する。このとき、D−RIEの初期にはエッチングおよび側面パッシベーションを繰り返して垂直な外周のシリコン基板14の側壁部14b1、14b2および仕切り壁18の側壁18a、18bを残しながらインク圧力室14aの2つの領域(第1領域14a1と第2領域14a2)を形成する。本実施の形態では仕切り壁18は、ノズル孔12aと対向する中心位置を含むインク圧力室14aの円形断面の直径に沿って配置される。
次に、シリコン単結晶基板21の裏面側からのエッチング先端がシリコン酸化膜側壁11a、11bの深さに達した後、側壁パッシベーションを弱くしてエッチング部分の外径が徐々に拡大する条件でエッチングを行う。これにより、仕切り壁18の先端部には、先細のテーパー面18a1、18b1を形成する。このとき、シリコン単結晶基板21の表面側には、シリコン酸化膜側壁11a、11bおよび振動板30を露出させると同時に、仕切り壁18の両側の2つの領域(第1領域14a1と第2領域14a2)を合体する。これにより、インク圧力室14a内に第1領域14a1と、ノズル孔12aの近傍の連通路17と、第2領域14a2とを結ぶインク流路を形成することができる。
本実施の形態では、シリコン単結晶基板21とシリコン酸化膜のエッチングレート比を100:1以上に取ることができる。そのため、シリコン酸化膜側壁11a、11bや振動板30をほとんどオーバーエッチングすることなしにシリコン単結晶基板21の内部に形成されるインク圧力室14aと対応する部分のシリコンを除去し、常に可動部が一定の直径の振動板30を形成することができる。
次に、図10に示すように、シリコン基板14と、バックプレート16とを接着する。バックプレート16にはインク供給口となるインク流通孔16aとインク排出口となるインク流通孔16bとが形成してある。これにより、インク流通孔16aからインク圧力室14aの第1領域14a1と、ノズル孔12aの近傍の連通路17と、インク圧力室14aの第2領域14a2を経て、インク流通孔16bに至るインク流路が完成する。
シリコン基板14と、バックプレート16との接着法としては、例えば、シリコンダイレクトボンディング法を用いても良い。シリコンダイレクトボンディング法は、真空雰囲気中で双方の基板表面を清浄処理した後、密着して加圧により接着する。また、有機接着剤を用いても良い。
なお、以上説明した一連の膜形成及びエッチングは、1つのインクジェットヘッド6−1のチップを製造するためのものではなく、一枚のウェハ上に多数のチップを同時に形成するものである。そして、プロセス終了後、一枚のウェハを複数のチップに分割することで、複数のインクジェットヘッド6−1を同時に製造できる。
以上の製造方法により、本実施の形態のインクジェットヘッド6−1を製造することが可能である。したがって、本実施の形態によれば、インク吐出時に生成するインク圧力室14aの内部の気泡を速やかに排出することが可能で、信頼性の高いインクジェットヘッド6−1を提供することが可能となる。そして、圧電MEMS型のインクジェットヘッド6−1において、インク循環に適した構造とすることができる。
(第1の実施の形態の第1の変形例)
図11および図12は、第1の実施の形態の第1の変形例を示す。図11は、第1の変形例のインクジェットヘッド6−2の部分拡大平面図である。図12は、図11のF12−F12線断面図である。
第1の実施の形態のインクジェットヘッド6−1では、インク圧力室14aの横断面形状を円形状にした例を示した。これに替えて、本変形例のインクジェットヘッド6−2は、インク圧力室14aの横断面形状を矩形状に変更したものである。それ以外は第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と同一部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
本変形例のインクジェットヘッド6−2は、矩形状のインク圧力室41および矩形状の圧電素子42を持つ。圧電素子42は、インク圧力室41を塞ぐ振動板30の中心寄りに配置している。圧電素子42は、図12に示すように、下部電極43、圧電膜44、および上部電極45を有する。下部電極43の端部43aは、延長されて配線の一部とされている。また、上部電極45の一部45aは、下層の圧電膜44、下部電極43とともに延長されて配線の一部とされている。
図11に示すように矩形状のインク圧力室41の長手方向の中央位置には仕切り壁46が設置されている。図12に示すように仕切り壁46は、インク圧力室41内を前記ノズル孔12aの近傍の連通路17を除いて2つの領域(第1領域41a1と第2領域41a2)に仕切る。
本変形例のインクジェットヘッド6−2においては、第1の実施の形態のインクジェットヘッド6−1に比較して、インク圧力室41の平面形状が矩形状であるという違いがある。これにより、インク圧力室14aの横断面形状を円形状にした場合に比べてインク吐出エネルギがやや大きくなる利点がある。その他は、第1の実施の形態と同様である。
(第1の実施の形態の第2の変形例)
図13および図14は、第1の実施の形態の第2の変形例を示す。図13は、第2の変形例のインクジェットヘッド6−3の部分拡大平面図である。図14は、図13のF14−F14線断面図である。
本変形例のインクジェットヘッド6−3は、第1の変形例のインクジェットヘッド6−2において、圧電素子42を振動板30の中心部から、周囲部分に移動したものである。それ以外は第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と同一部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
圧電素子42により振動板30を変形駆動するためには、圧電素子42を振動板30の中心寄りか周囲寄りに形成することが望ましい。第1の変形例におけるインクジェットヘッド6−2においては、圧電素子42を振動板30の中央寄りに形成した例である。本変形例のインクジェットヘッド6−3は、振動板30の周囲寄りに圧電素子42を形成した例である。
振動板30の周囲寄りに圧電素子42を形成することにより、次の2つの利点がある。その第1の利点は、圧電素子42から下部電極43の配線部43aや、上部電極45の配線部45aを引き出す際に、振動板30の上の広い面積を通らずに直接外側に引き出せる。そのため、振動板30の変形時の対称性が良くなる。第2の利点は、圧電素子42に駆動電圧を印加したときの振動板30のストロークがやや大きくなるという利点がある。なお、圧電素子42を振動板30の中央寄りに形成した場合は、振動板30の駆動力はやや大きくなる利点がある。
本変形例においても、インク圧力室41の外周に沿って形成されているシリコン酸化膜側壁11の固定端が振動板30に連結されて支持されている。これにより、プロセス条件のばらつきによらず一定の外形の振動板30の可動部が形成される。そのため、ウェハ全面に渡って均一な駆動力のインクジェットヘッド6−3を実現することが可能である。
(第2の実施の形態)
図15乃至図22は第2の実施の形態を示す。図15は、第2の実施の形態のインクジェットヘッド6−4の部分拡大平面図である。図16は、図15のF16−F16線断面図である。本実施の形態のインクジェットヘッド6−4は、圧電MEMS型のインクジェット式記録ヘッドである。
本実施の形態のインクジェットヘッド6−4は、ノズル孔12aの下部にインク圧力室41内に突き出た円筒状のノズル壁51が形成されている。また、インク圧力室41の下部の仕切り壁46はノズル孔12aと対向する位置から外れたオフセットの位置に形成されている。これらの点が第1の実施の形態の第1の変形例と異なっている。この点以外は基本的に第1の実施の形態と同様であるので、第1の実施の形態と同一部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態においては、図16に示すように、ノズル孔12aの下部にはインク圧力室41に突き出すようにノズル孔12aを延長して連続して一体に延びたノズル壁51が形成されている。ノズル壁51は、ノズルプレート12の振動板30と同じ材料、すなわちシリコン酸化膜により形成されており、ノズルプレート12と同時に形成される。このノズル壁51により、吐出したインクの方向性が正確になるとともに、幅広いインク吐出量に対応することが可能になる。
本実施の形態においては、図16に示すように、インク圧力室41の下部は、ノズル孔12aと対向する位置から外れたオフセットの位置に仕切り壁46が配置されている。この仕切り壁46によりインク圧力室41の内部空間がノズル壁51の近傍の連通路17を除いて2つの領域(第1領域41a1と第2領域41a2)に非対称に分割されている。バックプレート16には、圧力室41の第1領域41a1に対応したインク流通孔16aと、第2領域41a2に対応したインク流通孔16bとを備えている。インク流通孔16aから注入されたインクは、インク圧力室14aの第1領域41a1内を上昇し、振動板30の端面に突き当たる。これにより、インクの流れの方向を変えてノズル孔12aの周囲を通って、インク圧力室14aの第2領域41a2内を下降し、インク流通孔16bから排出される。このようにノズル孔12aの周囲を通ってインク循環が行われるため、ノズル孔12aの近傍で気泡が発生した場合でも速やかに排出することが可能となる。
図17〜図22は、本実施の形態のインクジェットヘッド6−4の製造方法を示す図である。以下、シリコン単結晶基板からなるシリコン基板14上に、振動板30及び圧電素子42等を形成するプロセスを、図17〜図22を参照しながら説明する。
図17に示すように、まずシリコン基板14となるシリコン単結晶基板のウェハ表面に2つのリング状の溝52、53を例えばフォトリソグラフィーおよび反応性イオンエッチング(RIE)によってウェハ表面に対して略垂直に形成する。ここで、一方のリング状の溝52は、矩形状の圧力室41の外周形状と対応する大きさの外側の2つのU字状溝52a、52bを有する。他方のリング状の溝53は、円筒状のノズル壁51の外周形状と対応する大きさの内側のリング状溝である。
次に、図18に示すように、熱酸化によりシリコン基板14を酸化してシリコン酸化膜からなる振動板30、シリコン酸化膜側壁11a、11b、およびシリコン酸化膜ノズル壁51を同時に形成する。このとき、2つのU字状溝52a、52bと、リング状溝53の幅と酸化膜厚を調整することで、2つのU字状溝52a、52bと、リング状溝53の内部を酸化膜で埋めることができる。具体的には、酸化膜振動板30の厚さを1とすると、2つのU字状溝52a、52bと、リング状溝53の幅を1.12程度、酸化後のシリコン酸化膜側壁11a、11b、およびシリコン酸化膜ノズル壁51の厚さを2程度ないしはそれ以上にすることが望ましい。
なお、本実施の形態ではシリコン基板14の熱酸化により振動板30、シリコン酸化膜側壁11、およびシリコン酸化膜ノズル壁51を形成したが、熱酸化法以外のプラズマCVD法やTEOSを原材料とするCVD法なども使用することが可能である。また、熱酸化法とプラズマCVD法やTEOSを原材料とするCVD法などを併用して形成することも可能である。
次に、図19に示すように、振動板30上に、スパッタリングによりTi/Ptからなる下部電極43と、PZTからなる圧電膜44と、Ptからなる上部電極45を有する圧電素子42とを形成する。そして、フォトリソグラフィーおよび反応性イオンエッチングにより上部電極45および圧電膜44をパターニングする。さらに、フォトリソグラフィーおよび反応性イオンエッチングにより下部電極43をパターニングする。
次に、図20に示すように、フォトリソグラフィーおよび反応性イオンエッチングにより振動板30をパターニングしてノズル孔12aを形成する。
次に、シリコン基板14の裏面側にインク圧力室41と同形状よりも一回り小さい2つの矩形状のレジストパターンを作成する。この状態で、図21に示すように、シリコン基板14の裏面側から、裏面フォトリソグラフィーおよびD−RIEにより、インク圧力室41を形成する。このとき、D−RIEの初期にはエッチングおよび側面パッシベーションを繰り返して垂直な外周のシリコン基板14の側壁部14b1、14b2および仕切り壁46の側壁46a、46bを残しながらインク圧力室41の2つの領域(第1領域41a1と第2領域41a2)を形成する。
次に、シリコン基板14の裏面側からのエッチング先端がシリコン酸化膜側壁11a、11bの深さに達した後、側壁パッシベーションを弱くしてエッチング部分の外径が徐々に拡大する条件でエッチングを行う。これにより、仕切り壁46の先端部には、先細のテーパー面46a1、46b1を形成する。このとき、シリコン基板14の表面側には、シリコン酸化膜側壁11a、11bおよび振動板30を露出させると同時に、仕切り壁46の両側の2つの領域(第1領域41a1と第2領域41a2)を合体する。これにより、インク圧力室41内に第1領域41a1と、ノズル孔12aの近傍の連通路17と、第2領域41a2とを結ぶインク流路を形成することができる。
次に、図22に示すように、シリコン基板14と、バックプレート16を接着する。バックプレート16にはインク供給口となるインク流通孔16aとインク排出口となるインク流通孔16bとが形成してある。これにより、インク流通孔16aからインク圧力室41の第1領域41a1と、ノズル孔12aの近傍の連通路17と、インク圧力室41の第2領域41a2を経て、インク流通孔16bに至るインク流路が完成する。
(第3の実施の形態)
図23および図24は、第3の実施の形態を示す。図23は、第3の実施の形態のインクジェットヘッド6−5の部分拡大平面図である。図24は、図23のF24−F24線断面図である。本実施の形態のインクジェットヘッド6−5は、圧電MEMS型のインクジェット式記録ヘッドである。本実施の形態のインクジェットヘッド6−5は、第2の実施の形態のインクジェットヘッド6−4の構成の一部を次のとおり変更した変形例である。そのため、第2の実施の形態と同一部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態のインクジェットヘッド6−5は、図23、24に示すように、インク圧力室41の下部に円筒状のノズル壁51と対向する位置から外れたオフセットの位置に2枚の仕切り壁61、62が配置されている。一方の仕切り壁61は、シリコン基板14の一方の側壁部14b1と、ノズル孔12aと対向する位置との間に配置されている。他方の仕切り壁62は、シリコン基板14の他方の側壁部14b2と、ノズル孔12aと対向する位置との間に配置されている。これにより、インク圧力室41の内部は2枚の仕切り壁61、62によりノズル壁51の近傍の連通路17を除いて3つの領域(第1領域63a1と、第2領域63a2と、第3領域63a3)に3分割されている。
バックプレート16には3分割されたインク圧力室41の3つの領域に合わせてインク供給口となる1個のインク流通孔16aと、インク排出口となる2個のインク流通孔16bを備えている。インク流通孔16aは、第2領域63a2と対応する位置に配置されている。2個のインク流通孔16bは、第1領域63a1と、第3領域63a3と対応する位置にそれぞれ配置されている。
本実施の形態においては、インク流通孔16aから注入されたインクの流れは、インク圧力室41の第2領域63a2内を上昇し、振動板30に沿って2手に分かれる。その一方は、第2領域63a2から第1領域63a1側に流れ、第1領域63a1内を下降し、インク流通孔16bから排出される。他方は第3領域63a3側に流れ、第3領域63a3内を下降し、インク流通孔16bから排出される。このようにノズル孔12aの周囲を通ってインク循環が行われるため、ノズル孔12aの近傍で気泡が発生した場合でも速やかに排出することが可能となる。
またノズル孔12aの下部にはインク圧力室41に突き出すようにノズル壁51が形成されている。ノズル壁51により、吐出したインクの方向性が正確になるとともに、幅広いインク吐出量に対応することが可能になる。
(第4の実施の形態)
図25は、第4の実施の形態を示す。図25は、第4の実施の形態のインクジェットヘッド6−6の断面図である。本実施の形態のインクジェットヘッド6−6は、圧電MEMS型のインクジェット式記録ヘッドである。
本実施の形態のインクジェットヘッド6−6は、第3の実施の形態のインクジェットヘッド6−5の構成の一部を次のとおり変更した変形例である。そのため、第3の実施の形態と同一部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態のインクジェットヘッド6−6は、図25に示すように、インク圧力室41の下部に円筒状のノズル壁51と対向する位置から外れたオフセットの位置に4枚の仕切り壁(第1仕切り壁71a、第2仕切り壁71b、第3仕切り壁71c、第4仕切り壁71d)が配置されている。第1仕切り壁71aは、シリコン基板14の一方の側壁部14b1と離間対向する位置に配置されている。第2仕切り壁71bは、第1仕切り壁71aとノズル孔12aと対向する位置との間に配置されている。第4仕切り壁71dは、シリコン基板14の他方の側壁部14b2と離間対向する位置に配置されている。第3仕切り壁71cは、第4仕切り壁71dとノズル孔12aと対向する位置との間に配置されている。インク圧力室41の上部には、4枚の仕切り壁71a〜71dの上部間を連通する連通路72が形成されている。これにより、インク圧力室41の内部は、4枚の仕切り壁71a〜71dによりノズル壁51の近傍の連通路72を除いて5つの領域(第1領域73aと、第2領域73bと、第3領域73cと、第4領域73dと、第5領域73e)に5分割されている。
バックプレート16には、インク圧力室41の第1領域73aに合わせてインク供給口となるインク流通孔16aと、第5領域73eに合わせてインク排出口となるインク流通孔16bを備えている。それ以外のインク圧力室41の第2領域73bと、第3領域73cと、第4領域73dの下部はバックプレート16により閉鎖されている。
本実施の形態においては、インク流通孔16aから注入されたインクの流れは、インク圧力室41の第1領域73a内を上昇し、振動板30に沿って連通路72を流れてノズル孔12aの近傍を通過する。さらに、第5領域73eに沿って下降し、インク流通孔16bから排出される。このようにノズル孔12aの周囲を通ってインク循環が行われるため、ノズル孔12aの近傍で気泡が発生した場合でも速やかに排出することが可能となる。
また、ノズル孔12aの下部にはインク圧力室41に突き出すようにノズル壁51が形成されている。ノズル壁51により、吐出したインクの方向性が正確になるとともに、幅広いインク吐出量に対応することが可能になる。
(第5の実施の形態)
図26乃至図28は第5の実施の形態を示す。図26は、第5の実施の形態のインクジェットヘッド6−7の部分拡大平面図である。図27は、図26のF27−F27線断面図、図28は、図26のF28−F28線断面図である。本実施の形態のインクジェットヘッド6−7は、圧電MEMS型のインクジェット式記録ヘッドである。
本実施の形態のインクジェットヘッド6−7は、第1の実施の形態の第1の変形例のインクジェットヘッド6−2の矩形状のインク圧力室41を複数個隣接して配置したものである。この点以外は基本的に第1の実施の形態の第1の変形例と同様であるので、第1の実施の形態と同一部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態においては、図28に示すように、複数の矩形状のインク圧力室41が隣接して形成されている。これにより、隣接するインク圧力室41間では、シリコン酸化膜側壁11およびシリコン側壁部14が共有されている。そして、インク圧力室41の中央のノズル孔12aの下部に形成された仕切り壁46により、各シリコン酸化膜側壁11およびシリコン側壁部14は連結されて補強されている。
本実施の形態のインクジェットヘッド6−2の駆動時には、シリコン酸化膜側壁11およびシリコン側壁部14は、振動板30上に形成された圧電素子42の駆動により変形する。このとき、隣接するインク圧力室41に発生する圧力が干渉する恐れがある。しかしながら、図27に示すように、インク圧力室41の中央のノズル孔12aの下部に形成された仕切り壁46により、各シリコン酸化膜側壁11およびシリコン側壁部14は連結されて補強される。そのため、変形するインク圧力室41に隣接するインク圧力室41では、各シリコン酸化膜側壁11およびシリコン側壁部14の変形が著しく抑制されるので、隣接するインク圧力室41に発生する圧力が干渉することがなくなる。
このように本実施の形態では、非常に高いノズル密度のインクジェット式記録ヘッドを安定に形成でき、かつ隣接するインク圧力室41間の圧力干渉を低減して独立したインク吐出を行うことが可能になる。
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。上記実施の形態はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。また、実施の形態の説明においては、インクジェット式記録ヘッドおよびその製造方法等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされるインクジェット式記録ヘッドおよびその製造方法等に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
これらの実施形態によれば、圧力室内に気泡が発生した場合でも、速やかに圧力室外に排出可能な圧電MEMS型のインクジェット式記録ヘッドとその製造方法を提供することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]一方の端面から他方の端面に亘って圧力室が設けられるシリコン基板と、前記シリコン基板の一方の端面にあって、前記圧力室を塞ぐ振動板と、前記圧力室に連通するノズルと、を有するノズルプレートと、前記ノズルプレートを変位させて前記圧力室内のインクを前記ノズルから吐出させるアクチュエータと、前記シリコン基板の他方の端面にあって、前記圧力室へインクを供給する第1の接続口と、前記圧力室からインクが流出する第2の接続口と、を有するバックプレートとを有し、前記シリコン基板は、前記バックプレート側の端面に一体に形成され、前記圧力室内を前記ノズルの近傍の連通路を除いて複数に仕切る仕切り壁を有するインクジェット式記録ヘッド。
[2]前記振動板は、シリコン酸化膜により形成されている[1]に記載のインクジェット式記録ヘッド。
[3]前記仕切り壁は、前記ノズルと対向する位置に配置され、前記ノズルと対向する端部側に先細のテーパー面が形成されている[1]に記載のインクジェット式記録ヘッド。
[4]前記振動板は、前記ノズルの孔を延長して前記振動板の端面から連続して同じ材料で一体に前記圧力室内に延びた筒状体を有し、前記仕切り壁は、前記ノズルと対向する位置から外れたオフセット位置に配置されている[1]に記載のインクジェット式記録ヘッド。
[5]前記振動板は、前記振動板の端面から連続して同じ材料で一体に前記圧力室内に延びて前記圧力室の側壁の一部をなす側壁形成部が形成されている[1]に記載のインクジェット式記録ヘッド。
[6]前記仕切り壁は、前記ノズルと対向する位置よりも一方側にオフセットした第1壁部と、前記ノズルと対向する位置よりも他方側にオフセットした第2壁部とを有し、前記圧力室は、前記第1壁部と前記第2壁部との間に配置された中央位置の第1室と、前記第1壁部と前記圧力室の一方の側壁との間に配置された第2室と、前記第2壁部と前記圧力室の他方の側壁との間に配置された第3室と、に3分割されており、前記バックプレートは、前記第1室と対応する位置に前記第1の接続口、前記第2室および前記第3室と対応する位置に前記第2の接続口がそれぞれ形成されている[1]に記載のインクジェット式記録ヘッド。
[7]前記仕切り壁は、前記ノズルと対向する位置よりも一方側にオフセットした位置に複数の第1壁部と、前記ノズルと対向する位置よりも他方側にオフセットした位置に複数の第2壁部とを有し、前記バックプレートは、前記圧力室の一方の側壁と前記第1壁部との間に前記第1の接続口、前記圧力室の他方の側壁と前記第2壁部との間に前記第2の接続口がそれぞれ形成されている[1]に記載のインクジェット式記録ヘッド。
[8]前記アクチュエータは、前記ノズルの孔の周りで前記ノズルプレートの前記振動板に積層した下部電極と圧電膜と上部電極とを含む圧電素子である[1]に記載のインクジェット式記録ヘッド。
[9]シリコン基板の一方の端面にリング状の溝を形成することと、前記シリコン基板を前記一方の端面側から熱酸化させてシリコン酸化膜からなる振動板を形成するとともに、前記シリコン基板の熱酸化により前記溝に対応する壁体を前記振動板の端面から連続して一体に形成することと、前記振動板の前記壁体と反対側の端面に下部電極と圧電膜と上部電極とを順に積層して圧電素子を成膜することと、前記振動板の端面にインクを吐出させるノズル開口部を形成することと、前記シリコン基板の前記一方の端面と反対の他方の端面側に前記振動板の前記壁体間の面積よりも小さい面積の2つのレジストパターンを作成することと、前記シリコン基板の前記2つのレジストパターンの作成部分から前記シリコン基板をエッチングおよび側面パッシベーションを繰り返して垂直な外周の側壁および前記側壁間の仕切り壁を残しながら前記シリコン基板から部分的に除去して前記ノズル開口部の両側に圧力室を作成することと、前記圧力室の作成用のエッチング先端が前記振動板の前記壁体の深さに達した後、前記側面パッシベーションを弱くして外径が徐々に拡大する条件でエッチングを行い、前記振動板の前記壁体および前記振動板を露出させることと、前記振動板の前記壁体および前記振動板を露出させると同時に、前記仕切り壁を両側から薄くして前記仕切り壁の両側の部分を合体することにより、前記圧力室内にインク流路を形成することと、前記シリコン基板の前記他方の端面にバックプレートを設けることと、を有するインクジェット式記録ヘッドの製造方法。
12…ノズルプレート、12a…ノズル孔、13…圧電素子(アクチュエータ)、14…シリコン基板、14a…圧力室、16…バックプレート、16a、16b…インク流通孔、17…連通路、18…仕切り壁、30…振動板。

Claims (5)

  1. 一方の端面から他方の端面に亘って圧力室が設けられるシリコン基板と、
    前記シリコン基板の一方の端面にあって、前記圧力室を塞ぐ振動板と、前記圧力室に連通するノズルと、を有するノズルプレートと、
    前記ノズルプレートを変位させて前記圧力室内のインクを前記ノズルから吐出させるアクチュエータと、
    前記シリコン基板の他方の端面にあって、前記圧力室へインクを供給する第1の接続口と、前記圧力室からインクが流出する第2の接続口と、を有するバックプレートとを有し、
    前記第1の接続口は、前記圧力室の一端、前記第2の接続口は、前記圧力室の他端にそれぞれ配置され、
    前記シリコン基板は、前記バックプレート側の端面に一体に形成され、前記圧力室内を前記ノズルの近傍の連通路を除いて複数に仕切る仕切り壁を有し、
    前記仕切り壁は、前記第1の接続口と前記第2の接続口との間に前記圧力室の対向する一方の側壁面から他方の側壁面にわたって設けたインクジェット式記録ヘッドと;
    前記ノズルから前記インクが吐出される位置に記録媒体を搬送する搬送部と;を備えることを特徴とするインクジェットプリンタ。
  2. 一方の端面から他方の端面に亘って圧力室が設けられるシリコン基板と、
    前記シリコン基板の一方の端面にあって、前記圧力室を塞ぐ振動板と、前記圧力室に連通するノズルと、を有するノズルプレートと、
    前記ノズルプレートを変位させて前記圧力室内のインクを前記ノズルから吐出させるアクチュエータと、
    前記シリコン基板の他方の端面にあって、前記圧力室へインクを供給する第1の接続口と、前記圧力室からインクが流出する第2の接続口と、を有するバックプレートとを有し、
    前記第1の接続口は、前記圧力室の中央部位、前記第2の接続口は、前記圧力室の周壁部位にそれぞれ配置され、
    前記シリコン基板は、前記バックプレート側の端面に一体に形成され、前記圧力室内を前記ノズルの近傍の連通路を除いて複数に仕切る仕切り壁を有し、
    前記仕切り壁は、前記第1の接続口と前記第2の接続口との間に前記圧力室の対向する一方の側壁面から他方の側壁面にわたって設けたインクジェット式記録ヘッドと;
    前記ノズルから前記インクが吐出される位置に記録媒体を搬送する搬送部と;を備えることを特徴とするインクジェットプリンタ。
  3. 前記振動板は、シリコン酸化膜により形成されている請求項1または2に記載のインクジェットプリンタ。
  4. 前記仕切り壁は、前記ノズルと対向する位置に配置され、前記ノズルと対向する端部側に先細のテーパー面が形成されている請求項1または2に記載のインクジェットプリンタ。
  5. 前記振動板は、前記ノズルの孔を延長して前記振動板の端面から連続して同じ材料で一体に前記圧力室内に延びた筒状体を有し、
    前記仕切り壁は、前記ノズルと対向する位置から外れたオフセット位置に配置されている請求項1または2に記載のインクジェットプリンタ。
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