JP6346077B2 - 光拡散性を有する帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents
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また、ポリカーボネート樹脂にジグリセリン脂肪酸エステルと酸化防止剤を配合することが行われている。(特許文献2)この組成物は帯電防止性能がある程度改良されるものの、成形時にジグリセリン脂肪酸エステルが分解しガスが発生するという問題を有しており、また光拡散性も有していない。
<A成分について>
本発明のA成分として使用されるポリカーボネート樹脂とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造された芳香族ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
これらは、単独または2種類以上混合して使用される。これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は通常10000〜100000、好ましくは15000〜35000である。かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調節剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
本発明のB成分として使用される多価アルコールと脂肪酸からなるエステル化合物は、多価アルコールのヒドロキシ基と脂肪酸のカルボキシル基とのモル比(ヒドロキシ基/カルボキシル基)が4〜8である。その範囲は、4〜6が好ましく、4〜5がより好ましい。モル比が4未満では帯電防止性が劣り、8を超えると熱安定性が悪化し、またガスが大量に発生する。
本発明のC成分として使用されるグリシジル基を含むエポキシ重合体は、グリシジルメタクリレートを共重合体に含むエポキシ重合体であることが好ましく、共重合体のもう一方の成分にはポリスチレンが好適に用いられる。グリシジル基を含有しないエポキシ重合体を用いた場合はA成分との相溶性が悪いため、熱安定性および光拡散性が低下すると共に、ガスが多量に発生する。
本発明のD成分として使用される光拡散剤は、高分子微粒子に代表される有機系微粒子、並びに無機系微粒子の何れであってもよい。高分子微粒子としては、非架橋性モノマーと架橋性モノマーとを重合して得られる有機架橋粒子が代表的に例示される。さらにかかるモノマー以外の他の共重合可能なモノマーを使用することもできる。また、他の有機架橋粒子としては、ポリオルガノシルセスキオキサンに代表されるシリコーン架橋粒子を挙げることができる。そのなかでも、高分子微粒子が好ましく、特に有機架橋粒子が好適に使用できる。かかる有機架橋粒子において、非架橋性モノマーとして使用されるモノマーとして、アクリル系モノマー、スチレン系モノマー、アクリロニトリル系モノマー等の非架橋性ビニル系モノマー及びオレフィン系モノマー等を挙げることができる。アクリル系モノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、およびフェニルメタクリレート等を単独でまたは混合して使用することが可能である。このなかでも特にメチルメタクリレートが好ましい。また、スチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン(ビニルトルエン)、およびエチルスチレン等のアルキルスチレン、並びにブロモ化スチレンの如きハロゲン化スチレンを使用することができ、特にスチレンが好ましい。アクリロニトリル系モノマーとしては、アクリロニトリル、およびメタクリロニトリルを使用することができる。また、オレフィン系モノマーとしては、エチレンおよび各種ノルボルネン型化合物等を使用することができる。さらに、他の共重合可能な他のモノマーとして、グリシジルメタクリレート、N−メチルマレイミド、および無水マレイン酸等を例示することができる。本発明の有機架橋粒子は結果としてN−メチルグルタルイミドの如き単位を有することもできる。一方、かかる非架橋性ビニル系モノマーに対する架橋性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、およびN−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物はE成分としてリン系酸化防止剤を含有することができる。リン系酸化防止剤としては下記一般式(1)〜(3)で表わされる亜リン酸エステル系酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
本発明のF成分として使用される金属塩系難燃剤としては、含フッ素有機金属塩化合物、特にパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩が好ましく使用される。パーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の金属イオンを構成する金属は、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属であることが好ましい。したがってより好適な金属塩系難燃剤は、パーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ(土類)金属塩である。(ここで、アルカリ(土類)金属塩の表記は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩のいずれも含む意味で使用する)アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムが挙げられ、アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムが挙げられる。より好適にはアルカリ金属である。かかるアルカリ金属の中でも、透明性の要求がより高い場合にはルビジウムおよびセシウムが好適である一方、これらは汎用的でなくまた精製もし難いことから、結果的にコストの点で不利となる場合がある。一方、コストや難燃性の点で有利であるがリチウムおよびナトリウムは逆に透明性の点で不利な場合がある。これらを勘案してパーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩中のアルカリ金属を使い分けることができるが、いずれの点においても特性のバランスに優れたパーフルオロアルキルスルホン酸カリウムが最も好適である。かかるカリウム塩と他のアルカリ金属からなるパーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩とを併用することもできる。
上記の中でも好ましいフッ素原子を含有しない有機スルホン酸の金属塩は、芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩であり、特にカリウム塩が好適である。
芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩の含有量は、A成分100重量部に対し、0.0001〜1.0重量部が好ましく、より好ましくは0.001〜0.5重量部、さらに好ましくは0.008〜0.2重量部である。
本発明の光拡散性を有する帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限り、他の帯電防止剤を併用することができる。併用することができる他の帯電防止剤としては、広く公知のものを使用することができ、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アンモニウム塩、他のホスホニウム塩等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、公知の添加剤、例えば、ガラス繊維(チョップドストランドやミルドファイバーなど)、熱安定剤、離型剤、紫外線吸収剤、難燃助剤、蛍光増白剤、染顔料等の添加剤を配合しても良い。
本発明の樹脂組成物はA成分、B成分、C成分、D成分および任意に他の成分を同時に、または任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合して製造することができる。好ましくは2軸押出機による溶融混練が好ましく、必要に応じて、任意の成分をサイドフィーダー等を用いて第2供給口より、溶融混合された他の成分中に供給することが好ましい。
本発明の樹脂組成物を用いてなる成形品は、上記の如く製造されたペレットを成形して得ることができる。好適には、射出成形、押出し成形により得られる。射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体を注入する方法を含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、多色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形等を挙げることができる。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。また押出成形では、各種異形押出成形品、シート、フィルム等が得られる。シート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法等も使用可能である。更に特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の樹脂組成物を回転成形やブロー成形等により成形品とすることも可能である。
表1に示す配合成分、配合量に基づき、タンブラーを用いて各種配合成分を混合し二軸押出機(日本製鋼所製TEX−30α)を用いて、シリンダー温度270℃にて溶融混練し、各種ペレットを得た。
1.A成分
PC:帝人社製パンライトL−1225WP(粘度平均分子量:22400)
B−1:ジグリセリンモノラウレート(多価アルコールのヒドロキシ基と脂肪酸のカルボキシル基とのモル比(ヒドロキシ基/カルボキシル基)が4)(理研ビタミン社製ポエムDL−100)
B−2:ショ糖脂肪酸エステル(多価アルコールのヒドロキシ基と脂肪酸のカルボキシル基とのモル比(ヒドロキシ基/カルボキシル基)が8)(第一工業株式会社DKエステルSS)
B−3:グリセリンモノステアレート(多価アルコールのヒドロキシ基と脂肪酸のカルボキシル基とのモル比(ヒドロキシ基/カルボキシル基)が3)(理研ビタミン社製リケマールS−100A)
B−4:デカグリセリンラウリン酸エステル(多価アルコールのヒドロキシ基と脂肪酸のカルボキシル基とのモル比(ヒドロキシ基/カルボキシル基)が約10)(三菱化学フーズ株式会社リョートーポリグリエステルL−10D)
C−1:ポリグリシジルメタクリレート―ポリスチレンブロック共重合体(日油社製マープルーフG0250SP)
C−2:側鎖エポキシ変性ポリジメチルシロキサン(信越化学社製KF−1001)
C−3:脂環エポキシ重合体(株式会社ダイセル製エポキシ化合物EHPE3150)
D−1:ビーズ状架橋シリコーン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社(株)製:トスパール120(商品名)、平均粒子径2μm)
D−2:ビーズ状架橋シリコーン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社(株)製:トスパール145(商品名)、平均粒子径5μm)
D−3:ビーズ状架橋アクリル粒子(積水化成品工業(株)製:MBX−5(商品名)、平均粒子径5μm)
D−4:ビーズ状架橋アクリル粒子(積水化成品工業(株)製:MBX−30(商品名)、平均粒子径30μm)
D−5:炭酸カルシウム(シプロ化成(株)製:シプロンA(商品名)、平均粒子径10μm)
E−1:亜リン酸エステル系酸化防止剤(ADEKA社製P−EPQ)
F−1:パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩(DIC(株)社製メガファックF114P)
90mm×50mm×2mmの平板を射出成形にて作成し、以下の条件にて測定を行った。平板試験片を23℃、50%相対湿度の条件で24時間以上状態調整した後、超絶縁計(日置電気製ディジタル超絶縁 DSM−8104)を使用し、測定電圧100Vの条件で表面固有抵抗率を測定した。表面抵抗率が1×1014Ω/□以下を合格とした。
90mm×50mm×2mmの平板を射出成形にて成形する際、設定温度320℃のシリンダー内で10分滞留させた。滞留成形時の成形品と通常成形時の成形品の色相をASTMD−1925に準拠して測定した。滞留成形時の成形品と通常成形時の成形品との差をΔEとし、5以下を合格とした。なお、ΔEは以下の式で定義される。
ΔE={(ΔL)2+(Δa)2+(Δb)2}1/2
「通常成形時から得られた平板」の色相:L、a、b
「滞留成形時から得られた平板」の色相:L’、a’、b’
ΔL:L−L’
Δa:a−a’
Δb:b−b’
90mm×50mm×2mmの平板を射出成形にて成形する際に、設定温度320℃のシリンダー内で10分滞留させた後のパージング作業にてパージ玉からのガスの発生を目視にて確認した。パージング作業開始後5ショット以内に発生ガスが見えなくなる場合を「○」、5ショットを超えても発生ガスが見えなくならない場合を「×」とした。
一辺150mm、厚み2mmの平板状試験片の拡散度を日本色彩技術研究所(株)製の変角光度計を使用して測定した。その際の測定方法を図1に示す。尚、拡散度とは図1において光線を上方から垂直に試験片面に当てたときγ=0度のときの透過光量を100とした場合、その透過光量が50になるときのγの角度をいう。平板表面が平滑な時は拡散度と拡散剤の添加量の関係は一般的に下記式で表されるが、平板表面にシルバーやヤケが発生している場合は、下記式にあてはまらない。γの値が下記理論値より±2の範囲にあるものを「○」とし、それ以外を「×」とした。
Y=60x(0≦x≦1)
Y=60 (x>1)
x:拡散剤の添加量(重量部)
Y:拡散度γの角度
試験の結果を表1および表2に示す。
一方、本発明の要件を満たさない場合においては、いずれの場合も何らかの欠点を有していた。比較例1は、帯電防止剤の含有量が少ない場合で、表面抵抗が要求レベルを満足しなかった。比較例2は、帯電防止剤の含有量が多い場合で、熱安定性に劣った上にガスが大量に発生し、光拡散性も要求レベルを満たさなかった。比較例3は、多価アルコールのヒドロキシ基と脂肪酸のカルボキシル基とのモル比(ヒドロキシ基/カルボキシル基)が4を下回る場合で、表面抵抗が要求レベルを満足しなかった。比較例4は多価アルコールのヒドロキシ基と脂肪酸のカルボキシル基とのモル比(ヒドロキシ基/カルボキシル基)が8を上回る場合で、熱安定性が要求レベルを満たさなかった上にガスが大量に発生し要求レベルを満たさなかった。比較例5は、グリシジル基を有するエポキシ重合体の配合量が少ない場合で、熱安定性およびガス発生量が要求レベルを満足しなかった。比較例6は、グリシジル基を有するエポキシ重合体の配合量が多い場合で、ガス発生量が要求レベルを満足しなかった。比較例7はエポキシ重合体がグリシジル基を有さない脂環エポキシ重合体であり、熱安定性、ガス発生量及び光拡散性が要求レベルを満たさなかった。比較例8は光拡散剤の配合量が少ない場合で、光拡散性が要求特性を満たさなかった。比較例9は光拡散剤の配合量が多い場合で、ガス発生量及び光拡散性が要求レベルを満たさなかった。
B 光源
γ 拡散度
Claims (10)
- (A)ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)多価アルコールと脂肪酸からなるエステル化合物(B成分)0.5〜5重量部、(C)グリシジル基を含むエポキシ重合体(C成分)0.003〜0.5重量部および(D)光拡散剤(D成分)0.05〜15重量部を含有し、かつB成分における多価アルコールのヒドロキシ基と脂肪酸のカルボキシル基とのモル比(ヒドロキシ基/カルボキシル基)が4〜8の範囲にあることを特徴とする光拡散性を有する帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物。
- A成分100重量部に対し、(E)リン系酸化防止剤(E成分)を0.005〜1重量部含有することを特徴とする請求項1に記載の光拡散性を有する帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物。
- E成分が亜リン酸エステル系酸化防止剤であることを特徴とする請求項2に記載の光拡散性を有する帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物。
- B成分における多価アルコールが、ジグリセリンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光拡散性を有する帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物。
- C成分が、グリシジルメタクリレートを含む共重合体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光拡散性を有する帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物。
- D成分の含有量が0.1〜3重量部であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光拡散性を有する帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物。
- D成分の平均粒径が1〜30μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光拡散性を有する帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物。
- A成分100重量部に対し(F)金属塩系難燃剤(F成分)を0.0001〜1.0重量部含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光拡散性を有する帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物。
- F成分がスルホン酸金属塩系難燃剤であることを特徴とする請求項8に記載の光拡散性を有する帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
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