以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるエンジンの始動制御装置について説明する。
<システム構成>
まず、図1を参照して、本発明の実施形態によるエンジンの始動制御装置が適用されたエンジンシステムについて説明する。図1は、本発明の実施形態によるエンジンの始動制御装置が適用されたエンジンシステムの概略構成図である。
図1に示すように、エンジンシステム100は、主に、外部から導入された吸気(空気)が通過する吸気通路1と、この吸気通路1から供給された吸気と、後述する燃料噴射弁13から供給された燃料との混合気を燃焼させて車両の動力を発生するエンジン10(具体的にはガソリンエンジン)と、このエンジン10内の燃焼により発生した排気ガスを排出する排気通路25と、エンジンシステム100に関する各種の状態を検出するセンサ31〜38と、エンジンシステム100全体を制御するECU(Electronic Control Unit)50とを有する。
吸気通路1には、上流側から順に、外部から導入された吸気を浄化するエアクリーナ3と、通過する吸気の量(吸入空気量)を調整するスロットルバルブ5と、エンジン10に供給する吸気を一時的に蓄えるサージタンク7と、が設けられている。
エンジン10は、主に、吸気通路1から供給された吸気を燃焼室11内に導入する吸気バルブ12と、燃焼室11に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁13と、燃焼室11内に供給された吸気と燃料との混合気に点火する点火プラグ14と、燃焼室11内での混合気の燃焼により往復運動するピストン15と、ピストン15の往復運動により回転されるクランクシャフト16と、燃焼室11内での混合気の燃焼により発生した排気ガスを排気通路25へ排出する排気バルブ17と、を有する。
また、エンジン10は、吸気バルブ12及び排気バルブ17のそれぞれの動作タイミング(バルブの位相に相当する)を、可変バルブタイミング機構(Variable Valve Timing Mechanism)としての可変吸気バルブ機構18及び可変排気バルブ機構19によって可変に構成されている。可変吸気バルブ機構18及び可変排気バルブ機構19としては、公知の種々の形式を適用可能であるが、例えば電磁式又は油圧式に構成された機構を用いて、吸気バルブ12及び排気バルブ17の動作タイミングを変化させる。
また、エンジン10には、このエンジン10の出力によって回転されて発電する、発電機としてのオルタネータ21が設けられている。オルタネータ21は、発電した電力をバッテリ22に充電する。バッテリ22は、車両内の種々の構成要素(ECU50も含む)に電気的に接続されており、それらの構成要素に電力を供給する。
排気通路25には、主に、例えばNOx触媒や三元触媒や酸化触媒などの、排気ガスの浄化機能を有する排気浄化触媒26a、26bが設けられている。以下では、排気浄化触媒26a、26bを区別しないで用いる場合には、単に「排気浄化触媒26」と表記する。
また、エンジンシステム100には、当該エンジンシステム100に関する各種の状態を検出するセンサ31〜38が設けられている。具体的には、エアフローセンサ31は、吸気通路1を通過する吸気の流量に相当する吸入空気量を検出し、スロットル開度センサ32は、スロットルバルブ5の開度であるスロットル開度を検出し、圧力センサ33は、エンジン10に供給される吸気の圧力に相当するインマニ圧(インテークマニホールドの圧力)を検出する。また、クランク角センサ34は、クランクシャフト16におけるクランク角を検出し、水温センサ35は、エンジン10を冷却する冷却水の温度である水温を検出し、温度センサ36は、エンジン10の気筒内の温度である筒内温度を検出し、カム角センサ37、38は、それぞれ、吸気バルブ12及び排気バルブ17の閉弁時期を含む動作タイミングを検出する。これらの各種センサ31〜38は、それぞれ、検出したパラメータに対応する検出信号S31〜S38をECU50に出力する。
ECU50は、上述した各種センサ31〜38から入力された検出信号S31〜S38に基づいて、エンジンシステム100内の構成要素に対する制御を行う。具体的には、ECU50は、スロットルバルブ5に制御信号S5を供給して、スロットルバルブ5の開閉時期やスロットル開度を制御し、燃料噴射弁13に制御信号S13を供給して、燃料噴射量や燃料噴射タイミングを制御し、点火プラグ14に制御信号S14を供給して、点火時期を制御し、可変吸気バルブ機構18、19に制御信号S18、S19を供給して、吸気バルブ12及び排気バルブ17の動作タイミングを制御し、オルタネータ21に制御信号S21を供給して、オルタネータ21の発電電流などを制御する。
ここで、図2を参照して、本発明の実施形態によるECU50の機能構成について説明する。図2に示すように、本実施形態によるECU50は、機能的には、回転数急上昇制御部50aと、発電制御部50bと、燃料カット制御部50cと、触媒暖機制御部50dと、制御禁止部50eとを有する。
回転数急上昇制御部50aは、エンジン10の始動時にエンジン回転数を急上昇させるための制御を行う。具体的には、回転数急上昇制御部50aは、吸入空気量を増大させてエンジン回転数を急上昇させるように、可変吸気バルブ機構18を介して吸気バルブ12の閉弁時期を制御する(この場合、回転数急上昇制御部50aは吸気バルブ閉弁時期制御手段として機能する)。また、発電制御部50bは、オルタネータ21の発電電流を制御する。また、燃料カット制御部50cは、エンジン10への燃料噴射の停止と、エンジン10への燃料噴射の再開とを制御する。触媒暖機制御部50dは、排気浄化触媒26が未活性状態である場合に、排気浄化触媒26を早期に活性化するための制御を行う。制御禁止部50eは、エンジン10の始動時において、排気浄化触媒26の昇温が必要な場合に、具体的には触媒暖機制御部50dによる制御が行われる場合に、回転数急上昇制御部50aによる制御及び燃料カット制御部50cによる燃料噴射の停止の両方を禁止する。
このように、ECU50は、本発明における「エンジンの始動制御装置」に相当する。
<ECUによる制御>
次に、本発明の実施形態においてECU50が行う制御について具体的に説明する。
本実施形態では、ECU50は、エンジン10の始動時にスポーティな始動感を実現すべく、エンジン回転数を急上昇させる制御を行うと共に、この制御の後に、エンジン回転数を急低下させる制御を行う。具体的には、ECU50の回転数急上昇制御部50aが、エンジン10の始動時に(完爆後であるものとする)、吸入空気量を増大させて、エンジン回転数を目標回転数に向けて急上昇させるように、可変吸気バルブ機構18によって吸気バルブ12の閉弁時期を制御する。以下では、このように回転数急上昇制御部50aが行う制御を「始動時回転数急上昇制御」と呼ぶ。
また、このような始動時回転数急上昇制御の実行後にエンジン回転数を急低下させるべく、ECU50の燃料カット制御部50cが、エンジン10への燃料噴射を停止すると共に、ECU50の発電制御部50bが、オルタネータ21による発電によってエンジン10に負荷を付加するための制御を行う。具体的には、発電制御部50bは、オルタネータ21の負荷を増加させるべく、オルタネータ21の発電電流を増加させる制御を実行する。この場合、発電制御部50bは、始動時回転数急上昇制御の実行中にオルタネータ21の発電電流を増加させる制御を開始しておき、始動時回転数急上昇制御の終了時に大きな発電電流が確保されているようにする。以下では、このように発電制御部50bが行う制御を「始動時オルタ発電制御」と呼ぶ。
更に、本実施形態では、ECU50の制御禁止部50eが、エンジン10の始動時において、排気浄化触媒26の昇温が必要な場合に、具体的には触媒暖機制御部50dによる制御が行われる場合に、回転数急上昇制御部50aによる始動時回転数急上昇制御、及び、燃料カット制御部50cによる燃料噴射の停止の両方を禁止する(発電制御部50bによる始動時オルタ発電制御も含む)。
なお、ECU50の触媒暖機制御部50dは、排気浄化触媒26が未活性状態である場合に、排気浄化触媒26を早期に活性化すべく、AWS(Accelerated Warm-up System)を作動させる。このAWSは、例えばエンジン10の冷間始動直後等において、排気浄化触媒26が未活性状態である場合に、同じ運転状態(例えばアイドル運転)で活性状態である場合よりも、吸入空気量を増大し、かつ圧縮上死点を越えて点火時期を遅角させるものである。こうすることで、混合気が膨張行程中に後燃えし、排気ガス温度ひいては排気熱量が増大して、排気浄化触媒26の暖機が促進される。
以下では、上述した始動時回転数急上昇制御及び始動時オルタ発電制御について具体的に説明する。
(始動時回転数急上昇制御)
最初に、始動時回転数急上昇制御の概要について簡単に説明する。ECU50の回転数急上昇制御部50aは、エンジン10の始動時に、吸入空気量を増大させて、エンジン回転数を目標回転数に向けて急上昇させるように、可変吸気バルブ機構18によって吸気バルブ12の閉弁時期を進角側に設定する制御を行う。この場合、本実施形態では、回転数急上昇制御部50aは、エンジン10の運転状態に基づいて、プリイグニッションが生じない吸気バルブ12の限界閉弁時期を推定し、この限界閉弁時期を超えないように制限を課して吸気バルブ12の限界閉弁時期を制御する、つまり限界閉弁時期を超えない範囲内で吸気バルブ12の閉弁時期を進角させる。
ここで、プリイグニッションとは、燃焼室11の温度や圧力が過度に上昇していること等が原因で、火花点火による正常な燃焼開始時期よりも前に混合気が自着火する異常燃焼現象である。プリイグニッションが生じると、早期に混合気が自着火することに伴い燃焼が急峻化するため、エンジン騒音がかなり大きくなったり、ピストン15などが破損したりするおそれがある。したがって、本実施形態では、ECU50の回転数急上昇制御部50aは、このようなプリイグニッションの発生を抑制すべく、上述したような限界閉弁時期を用いて、吸気バルブ12の閉弁時期を進角させる度合いを制限する。この限界閉弁時期は、プリイグニッションが生じない上限の有効圧縮比(言い換えるとプリイグニッションが生じない上限の吸入空気量)に対応する吸気バルブ12の閉弁時期である。
次に、図3を参照して、本発明の実施形態において、始動時回転数急上昇制御として吸気バルブ12の閉弁時期を進角側に制御する理由について説明する。図3は、横方向にクランク角を示し、吸気バルブ12及び排気バルブ17の動作タイミングを概略的に示している。具体的には、グラフG11、G12は吸気バルブ12の動作タイミングを示しており、グラフG13は排気バルブ17の動作タイミングを示している。
なお、ここでは、可変吸気バルブ機構18による動作によって、吸気バルブ12が開弁している時間(開弁から閉弁までの時間)は変化せずに、吸気バルブ12の開弁時期及び閉弁時期が変化する構成について例示している(可変排気バルブ機構19も同様である)。
図3に示すグラフG12は、エンジン10の通常始動時(始動時回転数急上昇制御を実行せずに始動させる場合に相当する。以下同様とする。)に適用する吸気バルブ12の動作タイミングを示している。グラフG12に示すように、エンジン10の通常始動時には、ポンプロスなどを低減するために、吸気バルブ12の動作タイミングを遅角側に設定している。こうすると、吸気バルブ12が下死点後に閉弁するので、ピストン15による圧縮動作中に吸気バルブ12が開いているため、この圧縮動作に伴って吸気バルブ12を介して気筒内から吸気が排出されて、吸入空気量が減ることとなる。通常始動時では、吸気バルブ12を上死点後に開弁すると共に吸気バルブ12を下死点後に閉弁して、吸入空気量を下げることで、スロットルバルブ5を開き側に動作させやすくしている。
これに対して、本実施形態では、始動時回転数急上昇制御を行う場合に、グラフG11に示すように、エンジン10の始動時に適用する吸気バルブ12の動作タイミングを、グラフG12に示した通常始動時に適用する吸気バルブ12の動作タイミングよりも進角側に設定する(矢印A11参照)。こうすることで、吸気バルブ12が下死点付近において閉弁するので、ピストン15による圧縮動作時に吸気バルブ12が閉じているため、この圧縮動作に伴って吸気バルブ12を介して気筒内から吸気が排出されなくなり、多くの吸入空気量が確保されることとなる。したがって、本実施形態では、ECU50の回転数急上昇制御部50aは、エンジン10の始動時において、エンジン回転数を急上昇させるべく吸入空気量を増大させるために、吸気バルブ12の動作タイミングを通常始動時よりも進角側に設定している、特に吸気バルブ12の閉弁時期を通常始動時よりも進角側に設定している。但し、吸入空気量が大きくなると有効圧縮比が高くなるが、有効圧縮比が高くなり過ぎるとプリイグニッションが発生する可能性が高くなるため、本実施形態では、回転数急上昇制御部50aは、プリイグニッションが発生しない範囲内で吸気バルブ12の閉弁時期を進角させている。
ところで、吸気通路1からエンジン10に向かって流れる吸気の慣性により、下死点の後であってもエンジン10の気筒内に吸気が導入されることがある。具体的には、エンジン回転数が高い場合には、吸気の流速が大きいので、例えば図3中の符号L11で示すような下死点後のタイミングであっても、気筒内に吸気が導入されることとなる。この場合、エンジン回転数が高くなるにつれて、吸気の慣性が大きくなっていき、下死点後でも気筒内に吸気が導入されるタイミングが遅角側へと移動していく。そのため、エンジン回転数が高い領域では、吸気バルブ12の閉弁時期を遅角させても、エンジン回転数を上昇させるのに十分な吸入空気量を確保することができる。
したがって、本実施形態では、回転数急上昇制御部50aは、エンジン始動時において、エンジン回転数が目標回転数未満の所定値未満である間は、上述したように吸気バルブ12の閉弁時期を進角させる制御を行い(矢印A11参照)、エンジン回転数が当該所定値以上になると、吸気バルブ12の閉弁時期を遅角させる制御を行う(矢印A12参照)。この場合、回転数急上昇制御部50aは、エンジン回転数の上昇に応じて移動していく、下死点後でも気筒内に吸気が導入されるタイミングに合わせて、吸気バルブ12の閉弁時期を遅角させる。
なお、上記した所定値は、例えば、目標回転数が2300rpm(revolution per minute)である場合、1600〜1800rpmとなる。以下では、この所定値のことを「第1閾値」と呼ぶ。第1閾値は、吸気バルブ12の閉弁時期を遅角させても、吸気の慣性により、下死点後でも気筒内に吸気が導入されるようなエンジン回転数に基づいて設定される。
一方で、上述したような吸気バルブ12の閉弁時期の制御(つまり始動時回転数急上昇制御)によりエンジン回転数が目標回転数に到達すると、スロットルバルブ5を閉じるなどしてエンジン負荷が下げられ、吸気の流速が小さくなるため、下死点後でも気筒内に吸気が導入されるタイミングが進角側に移動していく。そのため、上述したように、エンジン回転数が目標回転数に到達する前に吸気バルブ12の閉弁時期を遅角させておくと、エンジン回転数が目標回転数に到達した後に、吸入空気量が小さいためにエンジン回転数が速やかに低下することとなる。
次に、図4を参照して、本発明の実施形態において用いる、設定すべき吸気バルブ12の閉弁時期(吸気VVT位相に相当する)を定めたマップについて説明する。
図4(A)は、横方向にエンジン回転数を示し、縦方向にエンジン負荷を示しており、始動時回転数急上昇制御を行わない通常制御を行う場合に用いる吸気バルブ12の閉弁時期が定められたマップ(以下では「通常制御用マップ」と呼ぶ。)を概略的に示している。また、図4(B)は、横方向にエンジン回転数を示し、縦方向にエンジン水温を示しており、始動時回転数急上昇制御を行う場合に用いる吸気バルブ12の閉弁時期が定められたマップ(以下では「始動時回転数急上昇制御用マップ」と呼ぶ。)を概略的に示している。なお、図4(A)及び(B)中の「・」は、マップに規定された具体的な数値を代替的に表しているものとする。
図4(A)に示すように、通常制御用マップでは、概して、エンジン回転数が低回転数〜中回転数の領域では、エンジン回転数が高くなるほど、吸気バルブ12の閉弁時期が進角されるように定められており、エンジン回転数が中回転数以上の領域では、エンジン回転数が高くなるほど、吸気バルブ12の閉弁時期が遅角されるように定められている。また、通常制御用マップでは、概して、エンジン負荷が高くなるほど、吸気バルブ12の閉弁時期が進角されるように定められている。このような通常制御用マップは、吸気の慣性を考慮すると共に、エンジン回転数に応じたエンジン10での行程に要する時間(回転数が高くなるほど行程の時間が短くなる)を考慮して、運転状態によらずに吸入空気量がほぼ一定(つまり有効圧縮比がほぼ一定)となり、燃費の確保やエンジン10の回転の安定性を実現するような吸気バルブ12の閉弁時期が定められている。
他方で、図4(B)に示すように、始動時回転数急上昇制御用マップでは、概して、エンジン回転数(低回転数〜中回転数についてのみ規定されているものとする)が高くなるほど、吸気バルブ12の閉弁時期が進角されるように定められている。具体的には、始動時回転数急上昇制御用マップでは、通常制御用マップよりも、同一の運転状態において閉弁時期が進角側に定められている。また、始動時回転数急上昇制御用マップでは、概して、エンジン水温が高くなるほど、吸気バルブ12の閉弁時期が進角されるように定められている。
次に、図5を参照して、本発明の実施形態において、プリイグニッションの発生を抑制するために吸気バルブ12の閉弁時期に対して適用する限界閉弁時期について説明する。図5(A)は、限界閉弁時期の算出方法を説明するための図を示し、図5(B)は、限界閉弁時期を算出する場合に用いるマップを概略的に示している。なお、図5(B)では、マップに規定された数値の傾向のみを示し、具体的な数値については示していない。
本実施形態では、ECU50(具体的には回転数急上昇制御部50a)は、図5(A)に示すように、エンジン回転数と、燃料のオクタン価と、エンジン10の筒内温度と、エンジン10のインマニ圧(エンジン負荷に相当する)とに基づいて、所定の演算式やマップを用いて、プリイグニッションが生じない上限の有向圧縮比である有効圧縮比限界を求める。この場合、回転数急上昇制御部50aは、エンジン回転数が所定値(例えば2000rpm)以下においてプリイグニッションが発生しやすいこと、オクタン価が低いとプリイグニッションが発生しやすいこと、筒内温度が高いとプリイグニッションが発生しやすいこと、インマニ圧が高いとプリイグニッションが発生しやすいことなどの傾向を考慮して、有効圧縮比限界を求める。例えば、有効圧縮比限界の具体的な求め方については、特許5360121号に開示された手法を適用することができる。
この後、回転数急上昇制御部50aは、図5(B)に示すマップを参照して、上記のようにして求めた有効圧縮比限界に対応する吸気バルブ12の限界閉弁時期を求める。このマップでは、有効圧縮比限界が大きくなるほど、限界閉弁時期がより進角側になるように定められている、言い換えると、有効圧縮比限界が小さくなるほど、限界閉弁時期がより遅角側になるように定められている。
なお、本実施形態においては、ECU50の回転数急上昇制御部50aは、エンジン回転数が所定値(例えば500rpm)以上である場合にのみ、吸気バルブ12の閉弁時期を限界閉弁時期によって制限する。つまり、回転数急上昇制御部50aは、エンジン回転数が当該所定値未満である間は、吸気バルブ12の閉弁時期を限界閉弁時期によって制限しない。こうするのは、エンジン回転数が低い場合には、筒内温度が低い等の理由から、プリイグニッションが発生しにくいからである。また、仮にプリイグニッションが発生しても、エンジン回転数が所定値未満である時間がかなり短いため(例えばエンジン回転数が500rpm未満である間には数回の点火のみしか行われない)、プリイグニッションによる影響をほとんど受けないからである。
以下では、上記した所定値のことを「第2閾値」と呼ぶ。この第2閾値は、プリイグニッションが発生しにくいエンジン回転数、或いはプリイグニッションが発生しても問題とならないようなエンジン回転数に基づいて設定される。
次に、図6を参照して、本発明の実施形態による始動時回転数急上昇制御についてより具体的に説明する。図6は、本発明の実施形態による始動時回転数急上昇制御の一例を示すタイムチャートである。図6において上に示すグラフG21は、エンジン回転数の時間変化を示している。また、図6において下に示すグラフG22、G23は、吸気バルブ12の閉弁時期(吸気VVT位相に相当する)の時間変化を示している。具体的には、グラフG22は、吸気バルブ12の限界閉弁時期を示し、グラフG23は、吸気バルブ12の目標閉弁時期(吸気バルブ12の実際の閉弁時期と実質的に同じである)を示している。
まず、時刻t21において、イグニッション信号がオフからオンに切り替わること等により、エンジン10を始動させる制御が開始される。具体的には、グラフG21に示すように、時刻t21から時刻t22まで、スタータによりエンジン10がクランキングされる(矢印A21参照)。例えば、クランキングによってエンジン回転数が200rpm程度にまで上昇される。
そして、時刻t22から、エンジン10において、燃料噴射弁13から燃料が噴射されると共に点火プラグ14によって点火されて混合気が燃焼することで、エンジン回転数が上昇していく。この場合、ECU50の回転数急上昇制御部50aは、吸入空気量を増大させて、エンジン回転数を目標回転数N22に向けて急上昇させるべく、グラフG23に示すように、吸気バルブ12の目標閉弁時期を進角側に設定する。具体的には、回転数急上昇制御部50aは、エンジン10の運転状態に基づいて、グラフG22に示すようなプリイグニッションが生じない限界閉弁時期を求め、吸気バルブ12の目標閉弁時期を進角させる場合に限界閉弁時期を超えないように制限を課す、つまり限界閉弁時期を超えない範囲内で吸気バルブ12の目標閉弁時期をできるだけ進角させる(矢印A22、A23参照)。これにより、プリイグニッションの発生が抑制されつつ、エンジン回転数が急上昇することとなる(矢印A24参照)。
なお、図6には図示していないが、回転数急上昇制御部50aは、上記したような吸気バルブ12の閉弁時期を進角させる制御の他にも、点火時期を通常始動時よりも進角させる制御や、スロットル開度を通常始動時よりも大きくする制御を行い、エンジン回転数を急上昇させるようにする。
この後、時刻t23において、エンジン回転数が目標回転数N22未満の第1閾値N21に到達する。この際に、回転数急上昇制御部50aは、吸気バルブ12の目標閉弁時期を遅角させる(矢印A25参照)。このように目標閉弁時期を遅角させても、エンジン回転数が高いので、吸気の慣性により吸入空気量が確保されるため、エンジン回転数の急上昇が維持される(矢印A26参照)。
この後、エンジン回転数が目標回転数N22に到達する。この場合、回転数急上昇制御部50aは、クランク角センサ34の検出値に対応するエンジン回転数を直接的に用いて、エンジン回転数が目標回転数N22に到達したか否かを判断するのではなく、エンジン回転数が第1閾値N21に到達してから経過した時間に基づいて、エンジン回転数が目標回転数N22に到達したか否かを判断する。具体的には、回転数急上昇制御部50aは、事前に設定された、エンジン回転数が第1閾値N21に到達してから目標回転数N22に到達するまでに要する時間(推定時間)又はそれよりも大きな時間である所定時間T21を用いて、エンジン回転数が第1閾値N21に到達してから所定時間T21が経過したときに(時刻t24)、エンジン回転数が目標回転数N22に到達したと判断する。この際に、ECU50は、エンジン回転数を急低下させるように、スロットルバルブ5を閉じる制御と、エンジン10への燃料噴射を停止する制御(燃料カット)と、オルタネータ21の発電電流に関する始動時オルタ発電制御とを実行する(厳密には始動時オルタ発電制御は始動時回転数急上昇制御の実行中に開始される)。加えて、ECU50は、エンジン10への燃料噴射が再開されるときに(具体的には所定の復帰条件が成立したとき)、この燃料噴射の再開によりエンジン回転数が上昇することを抑制すべく、吸気バルブ12の閉弁時期を更に遅角させておく(矢印A27参照)。
なお、上述したように、エンジン回転数が第1閾値N21に到達してから経過した時間に基づいて、エンジン回転数が目標回転数N22に到達したか否かを判断するのは、クランク角センサ34の検出値に対応するエンジン回転数を直接的に用いてこの判断を行うと、以下のような不具合が発生する場合があるからである。1つ目として、エンジン回転数を直接的に用いて判断を行うと、エンジン10に適用するオイルなどにより、エンジン回転数が目標回転数N22にまで到達せずに、エンジン回転数が目標回転数N22に到達しないと判断され続けることで、その後の制御(具体的にはエンジン回転数を急低下させる制御)が行われないという不具合が発生する場合がある。2つ目として、エンジン回転数を直接的に用いて判断を行うと、当該判断に時間を要してしまい、エンジン回転数を短時間で低下させることができなくなるという不具合が発生する場合がある。3つ目として、エンジン回転数を直接的に用いて判断を行うと、エンジン回転数が目標回転数N22を跨いで増減する場合に、エンジン回転数が目標回転数N22に到達したか否かの判断を適切に行うことが困難になるという不具合が発生する場合がある。
(始動時オルタ発電制御)
次に、始動時オルタ発電制御について具体的に説明する。本実施形態では、ECU50の発電制御部50bは、上記した始動時回転数急上昇制御によってエンジン回転数が目標回転数に到達したとき若しくは目標回転数に到達した直後に、オルタネータ21の発電電流が所定値以上(好適には発電電流を最大値)になるように、オルタネータ21の発電電流を増加させる制御を行う。この場合、発電制御部50bは、始動時回転数急上昇制御を実行している最中にオルタネータ21の発電電流を増加させる制御を開始する。
このように、始動時回転数急上昇制御の実行中にオルタネータ21の発電電流を増加させる制御を開始する理由は、以下の通りである。エンジン始動時において、始動時回転数急上昇制御によってエンジン回転数を急上昇させた後に、エンジン回転数を急低下させるためには、エンジン回転数を低下させるべきタイミングで、オルタネータ21の発電電流をできるだけ大きくしておくことが望ましい。好適には、オルタネータ21の発電電流を最大値にしておくことが望ましい。この場合、オルタネータ21の発電電流を即座に最大値にすることは困難であり、オルタネータ21の発電電流を最大値にするまで時間がかかる。そのため、本実施形態では、発電制御部50bは、始動時回転数急上昇制御の実行中にオルタネータ21の発電電流を増加させる制御を開始する。具体的には、発電制御部50bは、始動時回転数急上昇制御によってエンジン回転数が目標回転数未満の所定値(例えば350rpm。以下ではこの所定値のことを「第3閾値」と呼ぶ。)に到達したときに、オルタネータ21の発電電流を増加させる制御を開始する。
また、本実施形態では、発電制御部50bは、このようなオルタネータ21の発電電流を増加させる制御を開始するエンジン回転数の第3閾値を、この第3閾値に対応するエンジン回転数からオルタネータ21の発電電流を増加させる制御を開始した場合に、エンジン回転数が目標回転数に到達したとき若しくは目標回転数に到達した直後に、オルタネータ21の発電電流が的確に最大値に到達するようなエンジン回転数に設定する。好適には、オルタネータ21の発電電流が最大値に到達するまでの時間が、オルタネータ21の状態によって変化するため、オルタネータ21の状態に応じて、オルタネータ21の発電電流を増加させる制御を開始するエンジン回転数の第3閾値を変更するのがよい。こうすることで、エンジン回転数が目標回転数に到達したとき若しくは目標回転数に到達した直後に、オルタネータ21の発電電流を的確に最大値に到達させることができるようになる。
更に、本実施形態では、発電制御部50bは、上記のようにオルタネータ21の発電電流を増加させる制御を行う場合に、バッテリ22の目標電圧も増加させ、バッテリ22が受け入れることができる充電量を増加させるようにする、言い換えると発電量の上限を増加させるようにする。
更に、本実施形態では、発電制御部50bは、電流変化速度制限手段として機能して、バッテリ22の目標電圧と実電圧との偏差に応じて電流変化速度制限値を設定して、オルタネータ21の発電電流の変化速度をこの電流変化速度制限値未満に制限しつつ、オルタネータ21の発電電流を増加させる。特に、本実施形態では、発電制御部50bは、始動時回転数急上昇制御が行われる場合には、通常時(始動時回転数急上昇制御が行われない場合を意味する。以下同様とする。)よりも、電流変化速度制限値を大きくして、オルタネータ21の発電電流の変化速度の制限を緩和する。
図7を参照して、上記した電流変化速度制限値について具体的に説明する。図7は、本発明の実施形態において用いる電流変化速度制限値が規定されたマップを示している。図7では、横軸にバッテリ22の目標電圧と実電圧との偏差(目標電圧−実電圧)を示しており、縦軸に電流変化速度制限値を示している。具体的には、グラフG31は、始動時回転数急上昇制御が行われない通常時に用いる電流変化速度制限値のマップを示しており、グラフG32は、始動時回転数急上昇制御が行われる場合に用いる電流変化速度制限値のマップを示している。
グラフG31に示すように、通常時に用いる電流変化速度制限値のマップは、目標電圧と実電圧との偏差が所定値未満である領域では、偏差が小さくなるほど、電流変化速度制限値が小さくなるように定められており(つまり発電電流の変化速度に対して課す制限が大きくなるように定められている)、これに対して、目標電圧と実電圧との偏差が所定値以上である領域では、偏差によらずに、電流変化速度制限値が一定になるように定められている(つまり発電電流の変化速度に対して課す制限が一定になるように定められている)。一方で、グラフG32に示すように、始動時回転数急上昇制御が行われる場合に用いる電流変化速度制限値のマップは、目標電圧と実電圧との偏差の全領域に渡って、偏差が大きくなるほど、電流変化速度制限値が大きくなるように定められている(つまり発電電流の変化速度に対して課す制限が小さくなるように定められている)。
ここで、上記したように、電流変化速度制限値を用いてオルタネータ21の発電電流の変化速度に対して制限を課しているのは、バッテリ22の電圧のオーバーシュート(過剰な電圧上昇)を防止するためである。バッテリ22の電圧のオーバーシュートが発生すると、バッテリ22の制御ユニットの保証電圧を超えることで故障を誤判定してしまったり、車両内のランプ類のバルブ寿命が縮んでしまったり、バッテリ22が過充電になってしまったりするため、電流変化速度制限値を用いてオーバーシュートを防止するようにしている。しかしながら、オーバーシュートによる不具合が発生するのは、オーバーシュート量が多い場合や、オーバーシュートが生じている時間が長い場合であり、エンジン始動時に相当する時間はかなり短いため、エンジン始動時ではこのようなオーバーシュートによる不具合は特に問題とならない。
したがって、本実施形態では、始動時回転数急上昇制御を行う場合には、通常時よりも電流変化速度制限値を大きくして(グラフG32参照)、オルタネータ21の発電電流の変化速度の制限を緩和することで、バッテリ22の電圧のオーバーシュートの防止よりも、オルタネータ21の発電電流の増加を優先して、発電電流を速やかに最大値に到達させるようにしている。このような大きな電流変化速度制限値を継続的に用いると、バッテリ22の電圧のオーバーシュートが発生しやすくなるが、本実施形態では、目標電圧と実電圧との偏差が比較的大きい領域でのみ、通常時よりも電流変化速度制限値を大きくし、目標電圧と実電圧との偏差が比較的小さい領域では、通常時と同様に電流変化速度制限値を小さくして(グラフG31、G32参照)、実電圧が目標電圧に近付くと発電電流の変化速度の制限を強化するようにすることで、オーバーシュートの発生を防止している。
次に、図8を参照して、本発明の実施形態による始動時オルタ発電制御についてより具体的に説明する。図8は、本発明の実施形態による始動時オルタ発電制御の一例を示すタイムチャートである。
図8において、グラフG41は、本実施形態による始動時オルタ発電制御を実行した場合のバッテリ22の実電圧を示しており、グラフG42は、本実施形態による始動時オルタ発電制御を実行しなかった場合のバッテリ22の実電圧を比較例として示している。また、グラフG43は、本実施形態による始動時回転数急上昇制御及び始動時オルタ発電制御の両方を実行した場合のエンジン回転数を示しており、グラフG44は、本実施形態による始動時回転数急上昇制御のみを実行した場合(つまり始動時オルタ発電制御を実行しなかった場合)のエンジン回転数を比較例として示している。また、グラフG45は、本実施形態による始動時オルタ発電制御を実行した場合のオルタネータ21の目標電流を示しており、グラフG46は、本実施形態による始動時オルタ発電制御を実行した場合(つまりグラフG45に示す目標電流に基づいて電流を制御した場合)のオルタネータ21の実電流を示しており、グラフG47は、本実施形態による始動時オルタ発電制御を実行しなかった場合のオルタネータ21の実電流を比較例として示している。
まず、時刻t41において、イグニッション信号がオフからオンに切り替わること等により、エンジン10を始動させる制御が開始され、スタータによりエンジン10がクランキングされる。この後、エンジン10において、燃料噴射弁13から燃料が噴射されると共に点火プラグ14によって点火されて混合気が燃焼される。この際に、上述したように、回転数急上昇制御部50aが、始動時回転数急上昇制御を実行する。これにより、エンジン回転数が上昇して、時刻t42においてエンジン回転数が第3閾値N41に到達することで、発電制御部50bが、グラフG45に示すように、オルタネータ21の目標電流を増加させ始める。
この場合、発電制御部50bは、始動時回転数急上昇制御が行われる場合に用いる、電流変化速度の制限が緩和された電流変化速度制限値のマップを適用して(図7のグラフG32参照)、オルタネータ21の目標電流を増加させる。これにより、グラフG45に付した矢印A44に示すように、オルタネータ21の目標電流が大きく増加し、その結果、グラフG46に付した矢印A45に示すように、目標電流に追従するようにオルタネータ21の実電流が大きく増加する。また、グラフG41に付した矢印A41に示すように、バッテリ22の実電圧が目標電圧V41(図8では目標電圧V41をほぼ一定にしている例を示している)に向かって増加していく。
なお、本実施形態による始動時オルタ発電制御を実行しなかった場合には、オルタネータ21の実電流はほとんど増加せず(グラフG47参照)、バッテリ22の実電圧もほとんど増加しない(グラフG42参照)。
この後、始動時回転数急上昇制御によってエンジン回転数が目標回転数に到達した直後に、グラフG46に示すように、オルタネータ21の実電流がほぼ最大値になる。そのため、オルタネータ21の発電による最大限の負荷がエンジン10に付与されることで、グラフG43に付した矢印A42に示すように、エンジン回転数が急低下していく。具体的には、始動時オルタ発電制御を実行しなかった場合(グラフG44に付した矢印A43参照)よりも急な傾きにてエンジン回転数が低下していく。
<処理フロー>
次に、図9乃至図12を参照して、本発明の実施形態においてECU50が行う処理フローについて説明する。
図9は、本発明の実施形態によるエンジン始動制御を示すフローチャートである。このフローは、ECU50によって所定の周期で繰り返し実行される。
まず、ステップS101において、ECU50は、エンジン10の始動要求があるか否かを判定する。例えば、ECU50は、イグニッション信号のオン/オフや、ブレーキペダル及び/又はアクセルペダルの操作に対応する信号などに基づいて、エンジン10の始動要求があるか否かを判定する。その結果、エンジン10の始動要求がないと判定された場合(ステップS101:No)、ステップS101に戻る。この場合、ECU50は、エンジン10の始動要求があると判定されるまで、ステップS101の判定を繰り返す。
一方で、エンジン10の始動要求があると判定された場合(ステップS101:Yes)、ステップS102に進み、ECU50は、エンジン10の始動要求が、エンジン自動停止後の再始動に対応する要求であるか否かを判定する。つまり、ECU50は、アイドリングストップによりエンジン10を自動停止した後にエンジン10を再始動させる要求があるか否かを判定する。その結果、エンジン10の始動要求がエンジン自動停止後の再始動に対応する要求であると判定された場合(ステップS102:Yes)、ステップS103に進み、ECU50は、自動停止された状態にあるエンジン10を再始動させる制御を行う。
一方で、エンジン10の始動要求がエンジン自動停止後の再始動に対応する要求でないと判定された場合(ステップS102:No)、ステップS104に進み、ECU50は、排気浄化触媒26を昇温させる要求があるか否かを判定する。つまり、ECU50は、排気浄化触媒26を早期に活性化するためのAWSの作動要求があるか否かを判定する。その結果、排気浄化触媒26を昇温させる要求があると判定された場合(ステップS104:Yes)、ステップS105に進み、ECU50は、始動時回転数急上昇制御とは異なる、通常の始動制御(通常始動制御)を実行する。つまり、ECU50の制御禁止部50eが、回転数急上昇制御部50aによる制御及び燃料カット制御部50cによる燃料噴射の停止の両方を禁止し、通常始動制御を実行するようにする。この場合には、ECU50の触媒暖機制御部50dが、未活性状態にある排気浄化触媒26を早期に活性化すべく、AWSを作動させる。具体的には、触媒暖機制御部50dは、排気ガス温度(排気熱量)を上昇させて排気浄化触媒26を速やかに暖機すべく、吸入空気量を増大させると共に、圧縮上死点を越えて点火時期を遅角させる制御を行う。
一方で、排気浄化触媒26を昇温させる要求がないと判定された場合(ステップS104:No)、ステップS106に進み、ECU50は、エンジン回転数を急上昇させた後、エンジン回転数を急低下させて、エンジン始動時のスポーティな始動感を実現すべく、本実施形態による始動時回転数急上昇制御を実行する。
次に、図10を参照して、図9のステップS106で実行される始動時回転数急上昇制御について説明する。図10は、本発明の実施形態による始動時回転数急上昇制御を示すフローチャートである。このフローは、主に、ECU50の回転数急上昇制御部50aによって実行される。
まず、ステップS201では、回転数急上昇制御部50aは、スタータでエンジン10をクランキングし、その最中に、クランク角センサ34及びカム角センサ37のそれぞれの検出信号のパターンに基づいて、気筒識別を行う。その結果、気筒識別が完了した場合(ステップS201:Yes)、ステップS202に進み、気筒識別が完了していない場合(ステップS201:No)、ステップS201に戻る。
次いで、ステップS202では、回転数急上昇制御部50aは、エンジン10のクランキングを終了して、エンジン10の燃料噴射を許可するか否かを判定する。その結果、燃料噴射を許可する場合(ステップS202:Yes)、ステップS203に進む。この場合、回転数急上昇制御部50aは、ステップS201における気筒識別の結果に基づき、燃料を噴射すべき気筒に対して、燃料を噴射して、混合気に点火する。一方で、燃料噴射を許可しない場合には(ステップS202:No)、ステップS202に戻る。
次いで、ステップS203では、回転数急上昇制御部50aは、吸入空気量を増大させてエンジン回転数を急上昇させるべく、吸気バルブ12の目標閉弁時期を進角側に設定するための制御(目標閉弁時期設定制御)を実行する。そして、この目標閉弁時期設定制御によって吸気バルブ12の目標閉弁時期を設定した後、ステップS204に進む。
ここで、図11を参照して、図10のステップS203で実行される目標閉弁時期設定制御について説明する。図11は、本発明の実施形態による目標閉弁時期設定制御を示すフローチャートである。このフローは、ECU50の回転数急上昇制御部50aによって実行される。
まず、ステップS301では、回転数急上昇制御部50aは、エンジン10の運転状態を取得する。具体的には、回転数急上昇制御部50aは、クランク角センサ34によって検出されたクランク角に対応するエンジン回転数や、圧力センサ33によって検出されたインマニ圧(エンジン負荷に相当する)や、水温センサ35によって検出された水温や、温度センサ36によって検出された筒内温度などを取得する。
次いで、ステップS302では、回転数急上昇制御部50aは、図4(B)に示した始動時回転数急上昇制御用マップを参照して、ステップS301で取得したエンジン回転数及び水温に対応する、設定すべき吸気バルブ12の閉弁時期を取得する。以下では、マップ(始動時回転数急上昇制御用マップだけでなく、通常制御用マップも含む)から取得された閉弁時期を、適宜「ベース閉弁時期」と呼ぶ。
次いで、ステップS303では、回転数急上昇制御部50aは、図5(A)及び(B)に示した手順により、吸気バルブ12の限界閉弁時期を求める。具体的には、回転数急上昇制御部50aは、まず、エンジン回転数、オクタン価、筒内温度、及びインマニ圧に基づいて、有効圧縮比限界を求め、この後、図5(B)に示したマップを参照して、求めた有効圧縮比限界に対応する限界閉弁時期を得る。なお、オクタン価については、エンジン10に振動センサを設け、この振動センサの検出値に基づいて推定すればよい。例えば、振動センサによって検出された振動強度が大きい場合には、オクタン価が小さいと推定することができる。
次いで、ステップS304では、回転数急上昇制御部50aは、ステップS302で取得したベース閉弁時期が、ステップS303で求めた限界閉弁時期よりも進角側の閉弁時期であるか否かを判定する。その結果、ベース閉弁時期が限界閉弁時期よりも進角側である場合(ステップS304:Yes)、ステップS305に進み、回転数急上昇制御部50aは、エンジン回転数が第2閾値(例えば500rpm)以上であるか否かを判定する。その結果、エンジン回転数が第2閾値以上である場合(ステップS305:Yes)、ステップS306に進む。この場合には、エンジン回転数が第2閾値以上であるため、プリイグニッションが発生する可能性がある状況であり、また、プリイグニッションの発生が問題となるような状況である。加えて、ベース閉弁時期が限界閉弁時期よりも進角側であるため、このベース閉弁時期を吸気バルブ12の目標閉弁時期に適用すると、プリイグニッションが発生する可能性が高くなる。そのため、ステップS306では、回転数急上昇制御部50aは、始動時回転数急上昇制御用マップから決定されたベース閉弁時期ではなく、プリイグニッションを抑制可能な限界閉弁時期を、吸気バルブ12の目標閉弁時期に設定する。
一方で、ベース閉弁時期が限界閉弁時期よりも進角側でない場合(ステップS304:No)、若しくはエンジン回転数が第2閾値以上でない場合(ステップS305:No)、ステップS307に進む。ベース閉弁時期が限界閉弁時期よりも進角側でない場合には、このベース閉弁時期を吸気バルブ12の目標閉弁時期に設定しても、プリイグニッションは発生しない。また、エンジン回転数が第2閾値以上でない場合には、プリイグニッションが発生する可能性はかなり低い状況であり、また、プリイグニッションが発生しても特に問題とならないような状況である。したがって、ステップS307では、回転数急上昇制御部50aは、始動時回転数急上昇制御用マップから決定されたベース閉弁時期をそのまま吸気バルブ12の目標閉弁時期に設定する。
次に、図10に戻って、ステップS204以降の制御について説明する。ステップS204では、回転数急上昇制御部50aは、スロットルバルブ5の目標開度(目標スロットル開度)と、点火プラグ14の目標点火時期とを設定する。この場合、回転数急上昇制御部50aは、エンジン回転数を急上昇させる観点から、通常始動時よりも大きなスロットル開度を目標スロットル開度に設定すると共に、通常始動時よりも進角させた点火時期を目標点火時期に設定する。
次いで、ステップS205において、回転数急上昇制御部50aは、ステップS203で設定した目標閉弁時期、ステップS204で設定した目標スロットル開度、及び目標点火時期に基づいて、吸気バルブ12、スロットルバルブ5、及び点火プラグ14のそれぞれを制御する。
次いで、ステップS206において、回転数急上昇制御部50aは、エンジン回転数が第3閾値(例えば350rpm)以上であるか否かを判定する。その結果、エンジン回転数が第3閾値以上でない場合(ステップS206:No)、ステップS203に戻り、ステップS203以降の制御を再度行う。
一方で、エンジン回転数が第3閾値以上である場合(ステップS206:Yes)、ステップS207に進み、回転数急上昇制御部50aは、始動時オルタ発電制御を実行するための始動時オルタ発電制御フラグを「1」に設定する。これにより、始動時回転数急上昇制御と並行して、オルタネータ21の発電電流を増加させるための始動時オルタ発電制御が実行されることとなる。なお、始動時オルタ発電制御については、詳細は後述する(図12参照)。
次いで、ステップS209において、回転数急上昇制御部50aは、エンジン回転数が第1閾値(例えば1800rpm)以上であるか否かを判定する。その結果、エンジン回転数が第1閾値以上でない場合には(ステップS209:No)、ステップS203に戻り、ステップS203以降の制御を再度行う。
一方で、エンジン回転数が第1閾値以上である場合(ステップS209:Yes)、ステップS210に進み、回転数急上昇制御部50aは、図4(A)に示した通常制御用マップを参照して、現在のエンジン回転数及びエンジン負荷に対応する吸気バルブ12の閉弁時期を取得し、この閉弁時期を目標閉弁時期に設定する。この場合、回転数急上昇制御部50aは、ステップS203の目標閉弁時期設定制御(図11参照)により始動時回転数急上昇制御用マップに基づいて進角側に設定した目標閉弁時期を、通常制御用マップに基づいて遅角させた閉弁時期を、新たな目標閉弁時期として設定する。
次いで、ステップS211において、回転数急上昇制御部50aは、エンジン回転数が第1閾値に到達してから所定時間が経過したか否かを判定する。回転数急上昇制御部50aは、当該判定を行うことで、エンジン回転数が目標回転数に到達したか否かを判定している。その結果、エンジン回転数が第1閾値に到達してから所定時間が経過していない場合には(ステップS211:No)、ステップS204に戻り、ステップS204以降の制御を再度行う。
一方で、エンジン回転数が第1閾値に到達してから所定時間が経過した場合(ステップS211:Yes)、ECU50は、ステップS212以降において、エンジン回転数を急低下させるための制御を行う。まず、ステップS212において、ECU50(具体的には燃料カット制御部50c)は、燃料カット制御を開始する、つまりエンジン10への燃料噴射を停止する。次いで、ステップS213において、ECU50は、その後の燃料噴射の再開によりエンジン回転数が上昇することを抑制すべく、ステップS210で設定した閉弁時期(ベース閉弁時期)を更に遅角させた閉弁時期を、吸気バルブ12の目標閉弁時期に設定する。なお、ステップS212の制御の後にステップS213の制御を行うことに限定はされず、ステップS213の制御の後にステップS212の制御を行ってもよい、つまり、ベース閉弁時期を遅角させた目標閉弁時期を設定した後に燃料噴射を停止してもよい。
次いで、ステップS214において、ECU50は、エンジン回転数が第4閾値以上であるか否かを判定する。この判定は、エンジン回転数を急低下させるための制御(燃料カットなど)を終了して、通常のアイドリング状態へと移行してもよい状態であるか否かを判断するために行っている。また、この判定は、燃料噴射を再開するための復帰条件が成立しているか否かを判断していることに相当する。このような観点より、当該判定に用いる第4閾値は、エアコン負荷などが存在している場合も考慮して、アイドル回転数よりも若干大きな回転数に設定するとよい。例えば、アイドル回転数が550rpm程度である場合には、第4閾値を700rpm程度に設定するとよい。
ステップS214の判定の結果、エンジン回転数が第4閾値以上でない場合には(ステップS214:No)、ステップS212に戻り、ステップS212以降の制御を再度行う。この場合、ECU50は、燃料噴射の停止状態を継続すると共に、吸気バルブ12の目標閉弁時期を遅角させた状態を継続する。
一方で、エンジン回転数が第4閾値以上である場合(ステップS214:Yes)、ステップS215に進み、ECU50(具体的には燃料カット制御部50c)は、燃料カット制御を停止する、つまりエンジン10への燃料噴射を再開する。
次いで、ステップS216において、ECU50は、始動時オルタ発電制御フラグを「0」に設定する。こうして始動時オルタ発電制御フラグが「0」に設定されると、エンジン回転数を急低下させるための始動時オルタ発電制御が終了することとなる(図12参照)。
次いで、ステップS217において、ECU50は、吸気バルブ12やスロットルバルブ5や点火プラグ14などに用いる種々の制御値を、通常制御時に適用すべき制御値(ベースセット)に戻す制御を行う。
次に、図12を参照して、本発明の実施形態による始動時オルタ発電制御について説明する。図12は、本発明の実施形態による始動時オルタ発電制御を示すフローチャートである。このフローは、ECU50の発電制御部50bによって実行される。
まず、ステップS401では、発電制御部50bは、始動時オルタ発電制御フラグが1であるか否かを判定する。ここでは、発電制御部50bは、エンジン回転数を急低下させるための始動時オルタ発電制御を実行するか否かを判定している。上述したように、始動時オルタ発電制御フラグは、図10に示したステップS207において「1」に設定されるものである。
ステップS401の判定の結果、始動時オルタ発電制御フラグが1でない場合(ステップS401:No)、ステップS412に進み、発電制御部50bは、通常時に用いる電流変化速度制限値のマップ(図7のグラフG31参照)を参照して、バッテリ22の目標電圧と実電圧との偏差に応じた電流変化速度制限値(以下では、図7のグラフG31のマップに基づいて設定される電流変化速度制限値を「第1の電流変化速度制限値」と呼ぶ。)を設定する。そして、ステップS413において、発電制御部50bは、通常時に適用すべき目標電圧(以下では「通常時目標電圧」と呼ぶ。)を、バッテリ22の目標電圧に設定する。発電制御部50bは、このように設定した第1の電流変化速度制限値及び通常時目標電圧に基づいて、オルタネータ21の発電を制御する。
一方で、始動時オルタ発電制御フラグが1である場合(ステップS401:Yes)、ステップS402に進み、発電制御部50bは、バッテリ22が受け入れることができる充電量を増加すべく、言い換えると発電量の上限を増加すべく、通常時目標電圧よりも増加させた電圧を目標電圧(以下では「始動時目標電圧」と呼ぶ。)に設定する。例えば、発電制御部50bは、バッテリ22の最大電圧付近にまで増加させた電圧を、始動時目標電圧に設定する。
次いで、ステップS403において、発電制御部50bは、バッテリ22の実電圧を取得する。例えば、発電制御部50bは、バッテリ22からECU50に入力される電圧に基づいて、バッテリ22の実電圧を推定する。
次いで、ステップS404において、発電制御部50bは、ステップS402で設定した始動時目標電圧とステップS403で取得した実電圧との偏差(始動時目標電圧−実電圧)を求める。
次いで、ステップS405において、発電制御部50bは、始動時回転数急上昇制御が行われる場合に用いる電流変化速度制限値のマップ(図7のグラフG32参照)を参照して、ステップS404で求めた偏差に応じた電流変化速度制限値(以下では、図7のグラフG32のマップに基づいて設定される電流変化速度制限値を「第2の電流変化速度制限値」と呼ぶ。)を設定する。
次いで、ステップS406において、発電制御部50bは、ステップS405で設定した第2の電流変化速度制限値の範囲内でオルタネータ21の目標電流を増加させる。つまり、発電制御部50bは、オルタネータ21の発電電流の変化速度を第2の電流変化速度制限値未満に制限しつつ、オルタネータ21の発電電流を増加させる。
次いで、ステップS407において、発電制御部50bは、始動時オルタ発電制御フラグが0であるか否かを判定する。ここでは、発電制御部50bは、エンジン回転数を急低下させるための始動時オルタ発電制御の実行を終了するか否かを判定している。上述したように、始動時オルタ発電制御フラグは、図10に示したステップS216において「0」に設定されるものである。
ステップS407の判定の結果、始動時オルタ発電制御フラグが0である場合(ステップS407:Yes)、ステップS409に進む。この場合には、発電制御部50bは、エンジン回転数を急低下させるための始動時オルタ発電制御を終了し、ステップS409以降において、オルタネータ21の目標電流及びバッテリ22の目標電圧などを通常時の目標値に戻すための制御を行う。
一方で、始動時オルタ発電制御フラグが0でない場合(ステップS407:No)、ステップS408に進み、発電制御部50bは、始動時目標電圧と実電圧との偏差が所定値未満であるか否かを判定する。ここでは、発電制御部50bは、バッテリ22の実電圧が始動時目標電圧にほぼ到達したか否かを判定している。図12に例示する始動時オルタ発電制御では、バッテリ12の目標電圧を増加させているので(ステップS402)、バッテリ12の電圧のオーバーシュートを防止するために、ステップS407の判定で用いる所定値を0よりも大きな値に設定するのがよい。他方で、始動時オルタ発電制御時にバッテリ12の目標電圧を増加させない場合には、例えば通常時目標電圧を目標電圧に設定する場合には、オーバーシュートをある程度許容して、ステップS408の判定で用いる所定値をほぼ0に設定してもよい。
ステップS408の判定の結果、始動時目標電圧と実電圧との偏差が所定値未満でない場合(ステップS408:No)、ステップS403に戻り、上記したステップS403以降の制御を再度行う。この場合には、発電制御部50bは、現在の実電圧を取得し、この実電圧に応じた第2の電流変化速度制限値を設定して、この第2の電流変化速度制限値の範囲内でオルタネータ21の目標電流を増加させることとなる。
一方で、始動時目標電圧と実電圧との偏差が所定値未満である場合(ステップS408:Yes)、ステップS409に進む。この場合にも、発電制御部50bは、エンジン回転数を急低下させるための始動時オルタ発電制御を終了し、ステップS409以降において、オルタネータ21の目標電流及びバッテリ22の目標電圧などを通常時の目標値に戻すための制御を行う。
次いで、ステップS409において、発電制御部50bは、上記したステップS412と同様に、通常時に用いる電流変化速度制限値のマップ(図7のグラフG31参照)を参照して、バッテリ22の目標電圧と実電圧との偏差に応じた第1の電流変化速度制限値を設定する。
次いで、ステップS410において、発電制御部50bは、ステップS402で設定した始動時目標電圧(通常時目標電圧よりも増加させた目標電圧)を通常時目標電圧に戻すべく、この始動時目標電圧を所定幅にて低下させる。この場合、発電制御部50bは、始動時目標電圧を徐々に低下させるようにする。こうすることで、例えばヘッドライトがオンである場合や空調を最大で動作させている場合において、バッテリ22の電圧が急変することにより、ライトのちらつきや空調性能(ブロア風量)の変化が生じてしまうことを防止している。
次いで、ステップS411において、発電制御部50bは、ステップS410において始動時目標電圧を低下させることで、バッテリ22の現在の目標電圧が通常時目標電圧未満にまで低下したか否かを判定する。つまり、発電制御部50bは、バッテリ22の目標電圧が通常時目標電圧に戻ったか否かを判定する。その結果、目標電圧が通常時目標電圧未満でない場合(ステップS411:No)、ステップS410に戻り、発電制御部50bは、バッテリ22の目標電圧を継続して低下させる。
一方で、目標電圧が通常時目標電圧未満である場合(ステップS411:Yes)、ステップS413に進み、発電制御部50bは、通常時目標電圧をバッテリ22の目標電圧に設定する。この後、発電制御部50bは、第1の電流変化速度制限値及び通常時目標電圧に基づいて、オルタネータ21の発電を制御する。
<作用効果>
次に、本発明の実施形態によるエンジンの始動制御装置の作用効果について説明する。
本実施形態によれば、エンジン始動時に、吸入空気量を増大させてエンジン回転数を急上昇させるべく、吸気バルブ12の閉弁時期を進角させる場合に、限界閉弁時期を超えないように制限を課して吸気バルブ12の閉弁時期を進角させるので、プリイグニッションの発生を抑制しつつ、エンジン回転数を適切に急上昇させることができる。特に、本実施形態によれば、吸入空気量を増大させるに当たって、スロットルバルブ5を制御するよりも吸気の制御性(応答性)が高い吸気バルブ12を可変吸気バルブ機構18によって制御するので(吸気バルブ12はスロットルバルブ5よりも筒内に近い位置にあるため吸気の応答性が高いため)、プリイグニッションの抑制とエンジン回転数の急上昇とを高い次元で両立させることができる。
また、本実施形態によれば、始動時回転数急上昇制御によってエンジン回転数が目標回転数付近の第1閾値に到達すると、吸気バルブ12の閉弁時期を遅角させる。そのため、エンジン回転数が目標回転数に向かって上昇している間は、吸気の慣性によって吸入空気量が確保されるので、エンジン回転数の急上昇を適切に維持することができると共に、この後、エンジン回転数が目標回転数に到達した後には、吸気の慣性(流速)の低下により吸入空気量が低下した状態が形成されるので、エンジン回転数を適切に急低下させることができる。したがって、エンジン回転数の急上昇、及び、この後のエンジン回転数の急低下の両方を適切に実現することができる。よって、スポーティな始動感を適切に実現することが可能となる。
また、本実施形態によれば、始動時回転数急上昇制御によってエンジン回転数が目標回転数に到達してから燃料噴射を停止し、この後に燃料噴射を再開する前に吸気バルブ12の閉弁時期を遅角させる。したがって、燃料噴射の再開時に吸入空気量を小さくしておくことができ、この再開時にエンジン回転数が上昇することを適切に抑制することができる。
また、本実施形態では、排気浄化触媒26の昇温が必要な場合に、排気浄化触媒26の昇温を優先してエミッションを確保すべく、燃料カット制御(燃料噴射の停止)を禁止する。そして、本実施形態では、始動時回転数急上昇制御を行う場合に燃料カット制御を行わないと、急上昇させたエンジン回転数を急低下させることが困難となり、適切な始動感を実現できなくなるという理由から、燃料カット制御を禁止する場合に、始動時回転数急上昇制御も禁止する。このように、本実施形態によれば、排気浄化触媒26の昇温が必要な場合に、始動時回転数急上昇制御及び燃料カット制御の両方を禁止し、排気浄化触媒26の昇温が必要でない場合に、始動時回転数急上昇制御及び燃料カット制御を実行するので、エミッションを確保しつつ、スポーティな始動感が得られる始動時回転数急上昇制御(つまりメリハリを持たせた始動時回転急上昇制御)を適切に実現することができる。
また、本実施形態によれば、始動時回転数急上昇制御によってエンジン回転数が目標回転数に到達してからオルタネータ21の発電によってエンジン10に負荷を与えるので、急上昇させたエンジン回転数を適切に急低下させることができる。このようにオルタネータ21の発電を利用することで、エンジン回転数を低下させるためにエンジン回転数の上昇中に吸入空気量を低下させる必要がないため、エンジン回転数の急上昇と、この後のエンジン回転数の急低下とを適切に両立させることができる。特に、本実施形態によれば、オルタネータ21の発電電流の変化における応答遅れを考慮して、始動時回転数急上昇制御中にオルタネータ21の発電電流の増加を開始するので、エンジン回転数が目標回転数に到達したときにオルタネータ21の発電電流を大きな値にすることができ、この後のエンジン回転数の急低下を効果的に実現することができる。また、本実施形態によれば、エンジン回転数の低下時にオルタネータ21が発電した電力をバッテリ22に充電するので、吸入空気量を低下させることのみでエンジン回転数を低下させる場合と比較して、燃費を改善することができる。
<変形例>
上述した実施形態に示した可変吸気バルブ機構18は、吸気バルブ12の閉弁時期を進角させることで吸入空気量を増大させ、吸気バルブ12の閉弁時期を遅角させることで吸入空気量を低下させるようなタイプの可変バルブタイミング機構であったが、吸気バルブ12の閉弁時期を遅角させることで吸入空気量を増大させ、吸気バルブ12の閉弁時期を進角させることで吸入空気量を低下させるようなタイプの可変バルブタイミング機構もあり、本発明は、そのような後者のタイプの可変バルブタイミング機構にも適用可能である。