JP6272798B2 - モータ駆動制御装置およびモータ駆動制御方法 - Google Patents
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Description
特許文献1の段落0023には、「四個の半導体スイッチング素子と、前記各半導体スイッチング素子にそれぞれ逆並列接続されたフライホイールダイオードとで誘導性負荷に順逆双方向に電流を流せるようにHブリッジ回路を構成し、電源から前記誘導性負荷に電流を供給する電流供給動作を行う際には、各半導体スイッチング素子のうちの二個を導通状態にし、誘導性負荷に対して所望方向に電流を流しており、そのような電流供給動作により、誘導性負荷に流れる電流が大きくなり、所定の基準電流値以上になった場合には、誘導性負荷に蓄積されたエネルギーを開放させ、誘導性負荷に流れる電流を制御している。」と記載されている。
なお、前者の閉電流経路に電流を流す場合は転流動作と呼ぶものとする。
しかしフライバックパルスの発生時間は、モータ駆動電圧、モータの駆動負荷および回転速度により変化するので、モータ動作状況に応じて適切な転流時間を管理することは困難である。よって転流動作の時間が最適でない場合が発生して電力損失が発生するという問題があった。
前記制御手段は、前記Hブリッジ回路を前記チャージモードに切り替え、前記Hブリッジ回路の直前の位相のHブリッジ回路に接続されたモータコイルの逆起電圧がゼロクロスしたことを前記ゼロクロス検知手段により検知したならば、前記Hブリッジ回路を前記高損失モードに切り替え、所定時間が経過した後に前記Hブリッジ回路を前記低損失モードに切り替え、前記電流検知手段により前記Hブリッジ回路に接続されたモータコイルに流れるモータ電流が前記チャージモードとは逆方向に流れだしたことを検知したならば、前記Hブリッジ回路を前記フリーモードに切り替える。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
《第1の実施形態と比較例に共通する構成》
図1は、本実施形態および比較例のモータ制御システムの全体ブロック図である。
X相のコイル124Xの一端は端子Mout0であり、他端は端子Mout1である。X相の電圧VMXは、端子Mout1の電圧と端子Mout0の電圧との差である。X相のコイル電流IMXは、端子Mout0から端子Mout1への方向を正とする。
またY相のコイル124Yの一端は端子Mout2であり、他端は端子Mout3である。Y相の電圧VMYは、端子Mout3の電圧と端子Mout2の電圧との差である。Y相のコイル電流IMYは、端子Mout2から端子Mout3への方向を正とする。
図2は、本実施形態および比較例のモータ駆動制御装置の詳細ブロック図である。なお、図1には2系統のコイル124X,124Yと、2系統のHブリッジ回路20X,20Yを示したが、図2では、これらを代表して1系統のコイル124と、1系統のHブリッジ回路20として示している。
図8(a)〜(c)は、比較例のHブリッジ回路20の動作モードの説明図である。
図8(a)は、チャージモードにおけるHブリッジ回路20の動作を示す図である。
コイル124にモータ電流を通電させる場合には、斜めに対向する2つのスイッチング素子をオン状態にする。図示の例では、スイッチング素子4,6がオン状態であり、スイッチング素子2,8がオフ状態である。この状態では、スイッチング素子6、コイル124、スイッチング素子4を介して太実線で示す方向にモータ電流が流れる。Hブリッジ回路20がチャージモードで動作する期間を「通電期間」という。
則ち、図8(a)に示したチャージモードから、スイッチング素子2,8をオフ状態にしたままスイッチング素子4,6をオフ状態にすると、図8(b)の高損失モードに遷移する。Hブリッジ回路20が高損失モードで動作する期間を、「高損失期間」という。
高損失モードにおいて、Hブリッジ回路20は、スイッチング素子2,4,6,8を全てオフする。このときコイル124に蓄えられたエネルギーにより、ダイオード18、コイル124、ダイオード12を介して太実線で示す方向に電流が流れる。すなわち、コイル124に蓄積されたエネルギーにより、太実線で示すモータ電流が流れる方向の側にあるハイサイド側のダイオード12と、太実線で示すモータ電流が流れる方向の反対側にあるロウサイド側のダイオード18とで形成される閉回路に電流が流れる。この高損失モードでは、ダイオード12,18それぞれの順方向電圧降下Vfに応じた電力損失が生じる。更に、このHブリッジ回路20をCMOSプロセスで構成すると、高損失モードにて、寄生トランジスタ効果により電流がグランド142に流出して発熱するため、更にエネルギー損失が大きくなるという問題がある。
図8(b)に示して高損失モードから、コイル124がエネルギーを十分に放出すると電流が流れなくなり、図8(c)に示す「フリーモード」に遷移する。Hブリッジ回路20がフリーモードで動作する期間を、「フリー期間」という。
フリーモードにおいて、Hブリッジ回路20は、スイッチング素子2,4,6,8を全てオフする。このときコイル124に蓄えられていたエネルギーは放出されている。このフリーモードにて、コイル124には逆起電圧が出現する。ブリッジ制御回路110は、フリー期間にてモータ120の逆起電圧のゼロクロスを検知することにより、次の象限へ移行する。そしてHブリッジ回路20は、再び図8(a)に示したチャージモードに移行する。
図9の波形図は、X相の電圧VMout0を太実線で、スイッチング素子6の設定を太破線で示している。X相の電圧VMout1を太実線で、スイッチング素子2の設定を太破線で示している。この太破線は、各スイッチング素子がオンしているときHレベルに、オフしているときLレベルに描かれている。更にその下に、X相のコイル電流IMXと動作モードとを示している。
図9の波形図は更に、Y相の電圧VMout2を実線で、端子Mout2側レッグのハイサイド側スイッチング素子の設定を破線で示している。Y相の電圧VMout3を実線で、端子Mout3側レッグのハイサイド側スイッチング素子の設定を破線で示している。更にその下に、Y相のコイル電流IMYと動作モードとを示している。
図9において第1象限は、時刻t111から時刻t121までの期間である。この第1象限にて、X相のHブリッジ回路20Xは、チャージモードで動作する。このときHブリッジ回路20Xの端子Mout0側レッグのハイサイド側スイッチング素子6と、端子Mout1側レッグのロウサイド側スイッチング素子4とがオン状態になる。これにより端子Mout0は直流電源140と導通して電源電圧MVddが印加され、端子Mout1はグランド142と導通して0[V]になる。X相のコイル電流IMXは、端子Mout0から端子Mout1の方向に流れると共に、次第に電流の絶対値が増加する。
時刻t111の直後に、Y相の端子Mout2の電圧VMout2はフライバックパルスにより(+MVdd+Vf)[V]以上になるとともにダイオードによってクランプされる。また、端子Mout3の電圧VMout3は(−Vf)[V]以下になるとともにダイオードによってクランプされる。端子Mout2の電圧VMout2と端子Mout3の電圧VMout3はそれらの電圧値が所定期間に亘って継続する。時刻t112に、電圧VMout2は急激に減少して0[V]となり、電圧VMout3はそれに遅れて僅かに増大したのちに緩やかに減少して時刻t121にて再び0[V]となる。Y相のコイル電流IMYは、時刻t111の直後に端子Mout3から端子Mout2の方向に流れるが、次第に電流の絶対値が減少して時刻t112の直前に0[mA]となり、以降は時刻t121まで0[mA]となる。
第2象限は、時刻t121から時刻t131までの期間である。この第2象限にて、X相のHブリッジ回路20Xは全てのスイッチング素子2,4,6,8がオフ状態であり、時刻t121から時刻t122までは高損失モードで動作し、時刻t122以降はフリーモードで動作する。
時刻t121の直後に、X相の端子Mout1の電圧VMout1は、フライバックパルスにより(+MVdd+Vf)[V]以上になるとともにダイオード12によってクランプされる。また、端子Mout0の電圧VMout0は(−Vf)[V]以下になるとともにダイオード18によってクランプされる。端子Mout1の電圧VMout1と端子Mout0の電圧VMout0はそれらの電圧値が所定期間に亘って継続する。時刻t122に、電圧VMout1は急激に減少して0[V]となり、電圧VMout0はそれに遅れて僅かに増大したのちに緩やかに減少して時刻t131にて再び0[V]となる。X相のコイル電流IMXは、時刻t121の直後に端子Mout0から端子Mout1の方向に流れるが、次第に電流の絶対値が減少して時刻t122の直前に0[mA]となり、以降は時刻t131まで0[mA]となる。
第3象限は、時刻t131から時刻t141までの期間である。この第3象限にて、X相のHブリッジ回路20Xは、チャージモードで動作する。このときHブリッジ回路20Xの端子Mout1側レッグのハイサイド側スイッチング素子2と、端子Mout0側レッグのロウサイド側スイッチング素子8とがオン状態になる。これにより端子Mout1は直流電源140と導通して電源電圧MVddが印加され、端子Mout0はグランド142と導通して印加電圧が0[V]になる。X相のコイル電流IMXは、端子Mout1から端子Mout0の方向に流れると共に、次第に電流の絶対値が増加する。
時刻t131の直後に、Y相の端子Mout3の電圧VMout3はフライバックパルスにより(+MVdd+Vf)[V]以上になるとともにダイオードによってクランプされる。また端子Mout2の電圧VMout2は(−Vf)[V]以下になるとともにダイオードによってクランプされる。端子Mout3の電圧VMout3と端子Mout2の電圧VMout2はそれらの電圧値が所定期間に亘って継続する。時刻t132に、電圧VMout3は急激に減少して0[V]となり、電圧VMout2はそれに遅れて僅かに増大したのちに緩やかに減少して時刻t141にて再び0[V]となる。Y相のコイル電流IMYは、時刻t131の直後に端子Mout2から端子Mout3の方向に流れるが、次第に電流の絶対値が減少して時刻t132の直前に0[mA]となり、以降は時刻t141まで0[mA]となる。
第4象限は、時刻t141から時刻t151までの期間である。この第4象限にて、X相のHブリッジ回路20Xは全てのスイッチング素子2,4,6,8がオフ状態であり、時刻t141から時刻t142までは高損失モードで動作し、時刻t142以降はフリーモードで動作する。
時刻t141の直後に、X相の端子Mout0の電圧VMout0は、フライバックパルスにより(+MVdd+Vf)[V]以上になるとともにダイオード16によってクランプされる。また、端子Mout1の電圧VMout1は(−Vf)[V]以下になるとともにダイオード14によってクランプされる。端子Mout0の電圧VMout0と端子Mout1の電圧VMout1はそれらの電圧値が所定期間に亘って継続する。時刻t142に、電圧VMout0は急激に減少して0[V]となり、電圧VMout1はそれに遅れて僅かに増大したのちに緩やかに減少して時刻t151にて再び0[V]となる。X相のコイル電流IMXは、時刻t141の直後に端子Mout1から端子Mout0の方向に流れるが、次第に電流の絶対値が減少して時刻t142の直前に0[mA]となり、以降は時刻t151まで0[mA]となる。
以下、第1象限から第4象限までの波形を繰り返しながら、モータ120が回転する。
X相は、第1象限を通電期間から開始する。ブリッジ制御回路110は、X相のHブリッジ回路20Xにて、端子Mout0側レッグのハイサイド側スイッチング素子6と、端子Mout1側レッグのロウサイド側スイッチング素子4とをオンする(ステップS30)。これにより、X相のHブリッジ回路20Xは第1象限の通電を行う。このとき、電圧VMout0と電圧VMout1との差は、電源電圧MVddとなる(ステップS31)。端子Mout0から端子Mout1に電流が流れてモータ120が回転し、コイル電流IMXの絶対値が次第に増大する(ステップS32)。
ここでY相の電圧VMYの逆起電圧がゼロクロスすると(ステップS33→Yes)、X相の端子Mout0側レッグのハイサイド側スイッチング素子6と、端子Mout1側レッグのロウサイド側スイッチング素子4とをオフし(ステップS34)、X相は高損失期間に移行する。これにより電圧VMout0と電圧VMout1とは等しくなり(ステップS35)、第1象限を終了する。
第1象限にてY相のHブリッジ回路20Yは、フライバック電圧と逆起電圧が相殺される電圧波形となる。第1象限の当初はモータ回転により逆起電圧が発生しているが、同時に直前の第4象限の最後に全てのスイッチング素子をオフした影響により、コイル124Yによるフライバック電圧が直前の通電の逆方向に発生し、高損失期間に移行する。このフライバック電圧により、電圧VMout2が電源電圧MVddとダイオードの順方向電圧降下Vfの和以上になるとともにダイオードによってクランプされ、かつ電圧VMout3がダイオードの順方向電圧降下Vf以下になるとともにダイオードによってクランプされる。電圧VMout2と電圧VMout3はそれらの電圧値が所定期間に亘って継続する。
第2象限にてX相のHブリッジ回路20Xは、フライバック電圧と逆起電圧が相殺される電圧波形となる。第2象限の当初はモータ回転により逆起電圧が発生しているが、同時に直前の第1象限の最後に全てのスイッチング素子をオフした影響により、フライバック電圧が直前の通電の逆方向に発生し、高損失期間に移行する。
第2象限の最初において、X相のHブリッジ回路20Xは、電圧VMout0と電圧VMout1とが等しい(ステップS40)。その後、コイル124Xに蓄えられたエネルギーが放出されてコイル電流IMXが減少し(ステップS41)、端子Mout1と端子Mout0との間にフライバック電圧が発生する(ステップS42)。
X相のフライバック電圧により、電圧VMout0が電源電圧MVddとダイオード12の順方向電圧降下Vfの和以上になるとともにダイオード16によってクランプされ、かつ電圧VMout1がダイオード18の順方向電圧降下Vf以下になるとともにダイオード14によってクランプされる。電圧VMout0と電圧VMout1はそれらの電圧値が所定期間に亘って継続する。よって、グランド142からダイオード18、コイル124X、ダイオード12を介して直流電源140に還流する電流経路が形成され、コイル電流IMXの絶対値は、0[mA]になるまで高速に減衰し(ステップS43)、フリー期間に移行する。
フリー期間にて端子Mout1と端子Mout0との間には、モータ回転による逆起電圧が出現する(ステップS44)。X相の電圧VMXの逆起電圧のゼロクロスにより(ステップS45→Yes)、第2象限が終了する。
第2象限にて、Y相のHブリッジ回路20Yは、図10のX相の動作に相当する動作を行う。つまり、Y相のHブリッジ回路20Yは、端子Mout2側レッグのハイサイド側スイッチング素子と、端子Mout3側レッグのロウサイド側スイッチング素子とをオンして(図10のステップS30相当)通電を行う。電圧VMout2と電圧VMout3との差は、電圧MVddとなる(図10のステップS31相当)。このとき端子Mout2から端子Mout3に電流が流れてモータ120が回転し、コイル電流IMYの絶対値が次第に増大する(図10のステップS32相当)。
ここでX相の電圧VMXの逆起電圧がゼロクロスすると(図10のステップS33相当→Yes)、Y相の端子Mout2側レッグのハイサイド側スイッチング素子と、端子Mout3側レッグのロウサイド側スイッチング素子とをオフし(図10のステップS34相当)、Y相は高損失期間に移行する。これにより電圧VMout2と電圧VMout3とは等しくなり(図10のステップS35相当)、第2象限を終了する。
図3(a)〜(e)は、本実施形態のHブリッジ回路20の動作モードの説明図である。
図3(a)は、チャージモードにおけるHブリッジ回路20の動作を示す図であり、図8(a)に示したHブリッジ回路20の動作と同様である。このときHブリッジ回路20は、チャージモードの後に、比較例と同様に図3(b)に示す高損失モードに移行する。
このときコイル124に蓄えられたエネルギーにより、スイッチング素子8、コイル124、スイッチング素子2を介して太実線で示す方向に電流が流れる。すなわち、太実線で示すモータ電流が流れる方向の側にあるハイサイド側のスイッチング素子2を導通状態として、コイル124に蓄積されたエネルギーにより、導通状態にあるハイサイド側のスイッチング素子2と太実線で示すモータ電流が流れる方向の反対側にあるロウサイド側のスイッチング素子8とで形成される閉回路に電流が流れる。図3(c)の低損失モードでは、スイッチング素子8,2のオン抵抗による電力損失のみとなり、電力損失は、高損失モードよりも低くなる。本実施形態のHブリッジ回路20は、CMOS製造プロセスで構成された場合であっても、寄生トランジスタ効果により電流がグランド142に流出して発熱することがなく、更にエネルギーの損失を防ぐことができる。Hブリッジ回路20が低損失モードで動作する期間を「フライバック対応期間」という。
図3(d)は、低損失モードにおけるHブリッジ回路20の動作を示す図である。
このとき、スイッチング素子2、コイル124、スイッチング素子8を介して太実線で示す方向に電流が流れる。この電流のミラー電流がスイッチング素子17に流れ、予めD/Aコンバータ115に設定した最小電流閾値クロスが比較器114で検出されたならば、図3(e)の状態に遷移する。なお、比較器114は、電流制御検出用にコイル124の正電流を測定するものを流用している。
図3(e)は、フリーモードにおけるHブリッジ回路20の動作を示す図であり、図8(c)に示したHブリッジ回路20の動作と同様である。ブリッジ制御回路110は、このフリー期間にてモータ120の逆起電圧のゼロクロスを検知することにより、次の象限へ移行する。そしてHブリッジ回路20は、再び図3(a)に示したチャージモードに移行する。
図4の波形図は、図9と同様に、X相の電圧VMout0を実線で、スイッチング素子6の設定を破線で示している。X相の電圧VMout1を太実線で、スイッチング素子2の設定を太破線で示している。この太破線は、各スイッチング素子がオンしているときHレベルに、オフしているときLレベルに描かれている。更にその下に、X相のコイル電流IMXと動作モードとを示している。
図4の波形図は更に、Y相の電圧VMout2を太実線で、端子Mout2側レッグのハイサイド側スイッチング素子の設定を太破線で示している。Y相の電圧VMout3を太実線で、端子Mout3側レッグのハイサイド側スイッチング素子の設定を太破線で示している。更にその下に、Y相のコイル電流IMYと動作モードとを示している。
本実施形態のモータ制御装置100は、比較例と同様に、モータ120をモータ駆動電圧と負荷に応じた1相励磁で駆動する。モータ120は、4つの位相(象限)で1つの電気角を構成して回転する。或る象限にてX相が通電期間(図3(a)参照)ならば、Y相は、高損失期間(図3(b)参照)を経てフライバック対応期間(図3(c)と図3(d)参照)となり、その後にフリー期間(図3(e)参照)となる。
図4において第1象限は、時刻t11から時刻t21までの期間である。この第1象限にて、X相のHブリッジ回路20Xは、チャージモードで動作する。このときHブリッジ回路20Xの端子Mout0側レッグのハイサイド側スイッチング素子6と、端子Mout1側レッグのロウサイド側スイッチング素子4とがオン状態になる。これにより端子Mout0は直流電源140と導通して電源電圧MVddが印加され、端子Mout1はグランド142と導通して0[V]になる。X相のコイル電流IMXは、端子Mout0から端子Mout1の方向に流れると共に、次第に電流の絶対値が増加する。
このときY相の電圧VMout2は(+MVdd)[V]となり、電圧VMout3は0[V]となる。Y相のコイル電流IMYは、端子Mout3から端子Mout2の方向に流れるとともに、次第に絶対値が減少して時刻t12にゼロクロスして反転する。時刻t13にコイル電流IMYは、最小電流閾値をクロスする。
第2象限は、時刻t21から時刻t31までの期間である。この第2象限の当初において、X相のHブリッジ回路20Xは全てのスイッチング素子2,4,6,8がオフ状態であり、時刻t21後の短時間(所定期間)に亘り高損失モードで動作する。このときX相の電圧VMout1はフライバックパルスにより(+MVdd+Vf)[V]以上になるとともにダイオード12によってクランプされる。また、電圧VMout0は(−Vf)[V]以下になるとともにダイオード18によってクランプされる。電圧VMout1と電圧VMout0はそれらの電圧値が所定期間に亘って継続する。X相のコイル電流IMXは、端子Mout0から端子Mout1の方向に流れるとともに、次第に絶対値が減少して時刻t22にゼロクロスして反転する。時刻t23にコイル電流IMXの絶対値は、最小電流閾値をクロスする。
時刻t23には、全てのスイッチング素子2,4,6,8がオフ状態になり、これ以降はフリーモードで動作する。このとき電圧VMout1は急激に減少して0[V]となり、電圧VMout0は急激に増大したのちにランプ状に減少し、時刻t31にて再び0[V]となる。コイル電流IMXは、0[mA]となる。
第3象限は、時刻t31から時刻t41までの期間である。この第3象限にて、X相のHブリッジ回路20Xは、チャージモードで動作する。このときHブリッジ回路20Xの端子Mout1側レッグのハイサイド側スイッチング素子2と、端子Mout0側レッグのロウサイド側スイッチング素子8とがオン状態になる。これにより端子Mout1は直流電源140と導通して電源電圧MVddが印加され、端子Mout0はグランド142と導通して印加電圧が0[V]になる。X相のコイル電流IMXは、端子Mout1から端子Mout0の方向に流れると共に、次第に電流の絶対値が増加する。
このときY相の電圧VMout3は(+MVdd)[V]となり、電圧VMout2は0[V]となる。Y相のコイル電流IMYは、端子Mout2から端子Mout3の方向に流れるとともに、次第に絶対値が減少して時刻t32にゼロクロスして反転する。時刻t33にコイル電流IMYは、最小電流閾値をクロスする。
第4象限は、時刻t41から時刻t51までの期間である。この第4象限の当初において、X相のHブリッジ回路20Xは全てのスイッチング素子2,4,6,8がオフ状態であり、時刻t41後の短時間(所定期間)に亘り高損失モードで動作する。このときX相の電圧VMout0はフライバックパルスにより(+MVdd+Vf)[V]以上になるとともにダイオード16によってクランプされる。また、電圧VMout1は(−Vf)[V]以下になるとともにダイオード14によってクランプされる。電圧VMout0と電圧VMout1はそれらの電圧値が所定期間に亘って継続する。X相のコイル電流IMXは、端子Mout1から端子Mout0の方向に流れるとともに、次第に絶対値が減少して時刻t42にゼロクロスして反転する。時刻t43にコイル電流IMXの絶対値は、最小電流閾値をクロスする。
時刻t43には、全てのスイッチング素子がオフ状態になり、これ以降はフリーモードで動作する。このとき電圧VMout0は急激に減少して0[V]となり、電圧VMout1は急激に増大したのちにランプ状に減少し、時刻t51にて再び0[V]となる。コイル電流IMXは、0[mA]となる。
以下、第1象限から第4象限までの波形を繰り返しながら、モータ120が回転する。
本実施形態の高損失モードにおいて、寄生トランジスタ効果により直流電源140に還流せず、全ての電流がグランド142に流出した場合を考える。このときの電力損失Poff2は、以下の式(4)で示される。
図5の波形図は、X相の電圧VMXおよびコイル電流IMXと、X相の電圧VMout0,VMout1とを全てオシロスコープの波形で示している。
第1象限にて、Hブリッジ回路20Xの端子Mout0側レッグのハイサイド側スイッチング素子6と、端子Mout1側レッグのロウサイド側スイッチング素子4とがオン状態になる。
X相の電圧VMXは(−MVdd)[V]となり、X相のコイル電流IMXは、端子Mout0から端子Mout1の方向に流れると共に、次第に電流の絶対値が増加する。
端子Mout0は直流電源140と導通するので、電圧VMout0は、(+MVdd)[V]となる。端子Mout1はグランド142と導通するので、電圧VMout1は、0[V]となる。
第2象限にて、Hブリッジ回路20Xの全てのスイッチング素子2,4,6,8はオフ状態になる。X相の電圧VMXは、時刻t21の直後にフライバックパルスにより(+MVdd+2Vf)[V]以上になるとともにダイオード12,18によってクランプされ、その後に低損失モードへの切替により(+MVdd)[V]となる。この電圧値が所定期間に亘って継続する。電圧VMXは、時刻t23の直前に急激に減少してゼロクロスし、所定電圧まで減少したのちに緩やかに増加して時刻t31にて再びゼロクロスする。X相のコイル電流IMXは、時刻t21の直後に端子Mout0から端子Mout1の方向(正方向)に流れるが、次第に電流の絶対値が減少し、時刻t23に電流(−IMX)が最小電流閾値よりも大きくなったのちに再び0[mA]となり、以降は時刻t31まで0[mA]となる。
端子Mout1の電圧VMout1は、フライバックパルスにより、時刻t21の直後に(+MVdd+Vf)[V]以上になるとともにダイオード12によってクランプされ、その後に低損失モードへの切替により(+MVdd)[V]となる。この電圧値が所定期間に亘って継続する。電圧VMout1は、時刻t23には急激に減少して0[V]となり、時刻t31まで0[V]となる。
第3象限にて、Hブリッジ回路20Xの端子Mout1側レッグのハイサイド側スイッチング素子2と、端子Mout0側レッグのロウサイド側スイッチング素子8とがオン状態になる。
X相の電圧VMXは(+MVdd)[V]となり、X相のコイル電流IMXは、端子Mout1から端子Mout0の方向に流れると共に、次第に電流の絶対値が増加する。
端子Mout0はグランド142と導通するので、電圧VMout0は、0[V]となる。端子Mout1は直流電源140と導通するので、電圧VMout1は、(+MVdd)[V]となる。
第4象限にて、Hブリッジ回路20Xの全てのスイッチング素子2,4,6,8はオフ状態になる。
X相の電圧VMXは、時刻t41の直後にフライバックパルスにより(−MVdd−2Vf)[V]以下になるとともにダイオード14,16によってクランプされ、その後に低損失モードへの切替により(−MVdd)[V]となる。この電圧値が所定期間に亘って継続する。電圧VMXは、時刻t43の直前に急激に増加してゼロクロスし、所定電圧まで増加したのちに緩やかに減少して時刻t51にて再びゼロクロスする。X相のコイル電流IMXは、時刻t41の直後に端子Mout1から端子Mout0の方向(負方向)に流れるが、次第に電流の絶対値が減少して時刻t43に最小電流閾値よりも大きくなったのちに再び0[mA]となり、以降は時刻t51まで0[mA]となる。
端子Mout1の電圧VMout1は、フライバックパルスにより、時刻t41の直後に(−Vf)[V]以上になるとともにダイオード14によってクランプされ、その後に低損失モードへの切替により時刻t43までは0[V]となり、時刻t43以降はモータ120の逆起電圧により緩やかに所定値に増加したのち減少し、時刻t51にて再び0[V]となる。
X相は、第1象限を通電期間から開始する。ブリッジ制御回路110は、X相のHブリッジ回路20Xにて、端子Mout0側レッグのハイサイド側スイッチング素子6と、端子Mout1側レッグのロウサイド側スイッチング素子4とをオンする(ステップS10)。これにより、X相のHブリッジ回路20Xは第1象限の通電を行う。このとき、電圧VMout0と電圧VMout1との差は、電源電圧MVddとなる(ステップS11)。端子Mout0から端子Mout1に電流が流れてモータ120が回転し、コイル電流IMXの絶対値が次第に増大する(ステップS12)。
第1象限にてY相のHブリッジ回路20Yは、フライバック電圧と逆起電圧が相殺される電圧波形となる。第1象限の当初はモータ回転により逆起電圧が発生しているが、同時に直前の第4象限の最後に全てのスイッチング素子をオフした影響により、コイル124Yによるフライバック電圧が直前の通電の逆方向に発生し、高損失期間に移行する。このフライバック電圧により、電圧VMout2が電源電圧MVddとダイオードの順方向電圧降下Vfの和以上になるとともにダイオードによってクランプされ、かつ電圧VMout3がダイオードの順方向電圧降下Vf以下になるとともにダイオードによってクランプされる。電圧VMout2と電圧VMout3はそれらの電圧値が所定期間に亘って継続する。よって、グランド142からコイル124Yを介して直流電源140に還流する電流経路が形成される。
第2象限にてX相のHブリッジ回路20Xは、フライバック電圧と逆起電圧が相殺される電圧波形となる。第2象限の当初はモータ回転により逆起電圧が発生しているが、同時に直前の第1象限の最後に全てのスイッチング素子2,4,6,8をオフした影響により、フライバック電圧が直前の通電の逆方向に発生し、高損失期間に移行する。
所定時間が経過すると、X相のフライバック電圧により、電圧VMout0が電源電圧MVddとダイオード12の順方向電圧降下Vfの和以上になるとともにダイオード16によってクランプされ、かつ電圧VMout1がダイオード18の順方向電圧降下Vf以下になるとともにダイオード14によってクランプされる。電圧VMout0と電圧VMout1はそれらの電圧値が所定期間に亘って継続する。よって、グランド142からダイオード18とコイル124Xとダイオード12を介して直流電源140に還流する電流経路が形成される。
第2象限にて、Y相のHブリッジ回路20Yは、図6のX相の動作に相当する動作を行う。つまり、Y相のHブリッジ回路20Yは、端子Mout2側レッグのハイサイド側スイッチング素子と、端子Mout3側レッグのロウサイド側スイッチング素子とをオンして(図6のステップS10相当)通電を行う。電圧VMout2と電圧VMout3との差は、MVddの電圧となる(図6のステップS11相当)。このとき端子Mout2から端子Mout3に電流が流れてモータ120が回転し、コイル電流IMYの絶対値が次第に増大する(図6のステップS12相当)。
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更実施が可能であり、例えば、次の(a)〜(i)のようなものがある。
(a) 本発明は2相ステッピングモータに限定されず、任意相のモータでもよく、例えば3相ステッピングモータであってもよい。また、モータコイルがスター結線やデルタ結線となっているブラシレスモータであってもよい。
(b) スイッチング素子はMOSFETに限られず、任意種類の半導体スイッチ素子であってもよい。
(c) 駆動制御装置の各構成要素は、少なくともその一部がハードウェアによる処理ではなく、ソフトウェアによる処理であってもよい。
(d) 駆動制御装置は、少なくともその一部を集積回路(IC:Integrated Circuit)としてもよい。
(e) 図1、図2に示した駆動制御装置の回路ブロック構成は具体例であって、これに限定されない。
(f) 図6、図7に示した制御フローは一例であって、これらのステップの処理に限定されるものではなく、例えば、各ステップ間に他の処理が挿入されてもよい。
(g) 高損失モードから低損失モードへの遷移は、所定時間の経過に限られず、フライバック電圧のゼロクロスによって遷移してもよく、限定されない。
(h) 本発明のHブリッジ回路は、ハーフブリッジを組み合わせたものであってもよく、限定されない。
12,14,16,18 ダイオード
20,20X,20Y Hブリッジ回路
100 モータ制御装置 (モータ駆動制御装置の一例)
101 CPU
107 ブリッジ制御部
110 ブリッジ制御回路
113 PWM信号発生器
114 比較器
115 D/Aコンバータ
116 電流検出部
118 BEMF検出部 (ゼロクロス検知手段の一例)
120 モータ
122YP,122XN,122YN,122XP 固定子
124 コイル
126 回転子
140 直流電源
142 グランド
Claims (6)
- スイッチング素子とフライホイールダイオードとを有し、モータに設けられたモータコイルに接続されたハーフブリッジを組み合わせたHブリッジ回路と、
前記モータコイルに流れるモータ電流を検知する電流検知手段と、
前記モータコイルの逆起電圧のゼロクロスを検知するゼロクロス検知手段と、
前記電流検知手段による検知結果に応じて前記スイッチング素子を駆動し、前記Hブリッジ回路に対して、前記モータコイルに流れるモータ電流を増加させるチャージモード、前記モータコイルのフライバックパルスを発生させ、かつエネルギー損失が高い高損失モード、前記高損失モードよりも損失が低い低損失モード、または前記モータコイルのフライバックパルスの減衰後に前記ゼロクロス検知手段により前記モータコイルの逆起電圧のゼロクロスを検知するフリーモード、のうち何れかの動作モードを指定する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記Hブリッジ回路を前記チャージモードに切り替え、前記Hブリッジ回路の直前の位相のHブリッジ回路に接続されたモータコイルの逆起電圧がゼロクロスしたことを前記ゼロクロス検知手段により検知したならば、前記Hブリッジ回路を前記高損失モードに切り替え、所定時間が経過した後に前記Hブリッジ回路を前記低損失モードに切り替え、前記電流検知手段により前記Hブリッジ回路に接続されたモータコイルに流れるモータ電流が前記チャージモードとは逆方向に流れだしたことを検知したならば、前記Hブリッジ回路を前記フリーモードに切り替える、
ことを特徴とするモータ駆動制御装置。 - 前記制御手段は、
前記低損失モードにて前記Hブリッジ回路のスイッチング素子のうち、前記モータ電流が流れる方向の側にあるハイサイド側の1個と、前記モータ電流が流れる方向の反対側にあるロウサイドの1個とを導通状態として、前記モータコイルに蓄積されたエネルギーにより、導通状態にあるハイサイド側のスイッチング素子とロウサイド側のスイッチング素子とで形成される閉回路に電流を流す、
ことを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動制御装置。 - 前記制御手段は、
前記高損失モードにて前記Hブリッジ回路のスイッチング素子を全て非導通状態として、前記モータコイルに蓄積されたエネルギーにより、前記モータ電流が流れる方向の側にあるハイサイド側のフライホイールダイオードと、前記モータ電流が流れる方向の反対側にあるロウサイド側のフライホイールダイオードとで形成される閉回路に電流を流す、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモータ駆動制御装置。 - 前記Hブリッジ回路を構成する前記スイッチング素子と前記フライホイールダイオードとは、CMOSプロセスで形成されている、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置。 - 前記電流検知手段は、カレントミラー回路と比較器とで構成される、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置。 - スイッチング素子を有し、モータに設けられたモータコイルに接続されたハーフブリッジを組み合わせたHブリッジ回路と、
前記モータコイルに流れるモータ電流を検知する電流検知手段と、
前記モータコイルの逆起電圧のゼロクロスを検知するゼロクロス検知手段と、
前記電流検知手段による検知結果に応じて前記スイッチング素子を駆動し、前記Hブリッジ回路に対して、前記モータコイルに流れるモータ電流を増加させるチャージモード、前記モータコイルのフライバックパルスを発生させ、かつエネルギー損失が高い高損失モード、前記高損失モードよりも損失が低い低損失モード、または前記モータコイルのフライバックパルスの減衰後に前記ゼロクロス検知手段により前記モータコイルの逆起電圧のゼロクロスを検知するフリーモード、のうち何れかの動作モードを指定する制御手段と、を有するモータ駆動制御装置のモータ駆動制御方法であって、
前記制御手段が前記Hブリッジ回路を前記チャージモードに切り替えるステップと、
前記制御手段が前記Hブリッジ回路の直前の位相のHブリッジ回路に接続されたモータコイルの逆起電圧がゼロクロスしたことを前記ゼロクロス検知手段により検知したならば、前記Hブリッジ回路を前記高損失モードに切り替えるステップと、
前記高損失モードに切り替えてから所定時間が経過した後に前記制御手段が前記Hブリッジ回路を前記低損失モードに切り替えるステップと、
前記電流検知手段により前記Hブリッジ回路に接続されたモータコイルに流れるモータ電流が前記チャージモードとは逆方向に流れだしたことを検知したならば、前記制御手段が前記Hブリッジ回路を前記フリーモードに切り替えるステップと、
を実行することを特徴とするモータ駆動制御方法。
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