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JP6173520B1 - 回転電機の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】回転電機の最大出力トルクにより、回転電機に出力させる振動トルク成分が上限制限されないようにできる回転電機の制御装置を提供する。【解決手段】基本トルク指令算出部からの基本トルク指令値Tcbに、振動指令算出部31からの振動トルク指令値Tcvの振幅を加算した振動最大値が上限指令値Tcmxを超える場合は、振動指令算出部31からの振動トルク指令値Tcvの加算をやめ、基本振動トルク算出部34で算出された基本振動トルク指令値Tcvbを最終トルク指令値Tcfとして回転電機2の制御を行う。【選択図】図1

Description

本発明は、回転電機の出力トルクにトルク振動成分を重畳させる回転電機の制御装置に関するものである。
近年、環境に配慮した自動車として、ハイブリッド自動車及び電気自動車が注目されている。ハイブリッド自動車は、従来の内燃機関に加え、回転電機を動力源とする自動車である。つまり、内燃機関と回転電機の双方が車輪の駆動力源とされている。電気自動車は、回転電機を駆動力源とする自動車である。しかし、回転電機にトルクリプル等のトルク振動成分が重畳し、車輪に振動成分が伝達される場合がある。車両の発進時、減速時、極低速走行時等において、運転者に、振動による違和感を与えるおそれがある。下記の特許文献1に開示されている技術では、回転電機にトルク振動成分を打ち消すための振動トルクを出力させるように構成されている。
特開平7−46878号公報
しかしながら、回転電機に出力させることができるトルクには磁気飽和等による限界があり、回転電機の最大出力トルクが定まっている。そのため、回転電機の出力トルクが最大出力トルク付近まで上昇している状態で、回転電機に振動トルクを出力させようとした場合に、振動トルク成分の山部分が最大出力トルクにより上限制限されて、回転電機に出力させることができない場合がある。一方、振動トルク成分の谷部分は最大出力トルクにより上限制限されないため、そのまま回転電機に出力させることができる。よって、上限制限される振動トルク成分の山部分だけ、回転電機の出力トルクの平均値が低下する。従って、回転電機の出力トルクを最大出力トルク付近まで増加させ、車両を加速させたい場合に、出力トルクが低下する問題があった。
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、回転電機の最大出力トルクにより、回転電機に出力させる振動トルク成分が上限制限されないようにできる回転電機の制御装置を得るものである。
本発明に係る回転電機の制御装置は、回転電機に出力させるトルクの基本指令値である基本トルク指令値を算出する基本トルク指令算出部と、振動周波数で振動するトルク指令値である振動トルク指令値を算出する振動指令算出部と、基本トルク指令値に振動トルク指令値を加算した加算トルク指令値を算出し、回転電機の最大出力トルクに対応して予め設定された上限指令値により加算トルク指令値を上限制限した値を、回転電機に指令する最終トルク指令値として算出する最終トルク指令算出部と、振動指令算出部に設けられ、基本トルク指令値に振動トルク指令値の振幅を加算した振動最大値が上限指令値より大きくなる場合に、振動最大値が上限指令値を超えないように、振動トルク指令値の加算を止める振動加算有無判断部とを備え、振動指令算出部は、基本トルク指令値に、振動トルク指令値の振幅、及び最終トルク指令値と回転電機の出力トルクとの間の予め設定されたずれ幅を加算した値を、振動最大値として算出するものである。
本発明に係る回転電機の制御装置によれば、最終トルク指令値に重畳する振動トルク指令値は、振幅が減少されるため、回転電機の最大出力トルクに対応して設定された上限指令値により上限制限されない。よって、最終トルク指令値の平均値及び回転電機の出力トルクの平均値が、基本トルク指令値よりも低くなることを防止できる。
本発明の実施の形態1に係る回転電機の制御装置の構成を示すブロック図である。 本発明の実施の形態1に係る回転電機の制御装置が搭載された車両の概略構成を示す図である。 本発明の実施の形態1に係る回転電機の制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。 本発明の実施の形態1に係る回転電機の制御装置におけるインバータ制御部を示すブロック図である。 本発明の実施の形態1に係る回転電機の制御装置における基本振動トルク算出部を示すブロック図である。 本発明の実施の形態1に係る回転電機の制御装置における振幅テーブルを説明する図である。 本発明の実施の形態における特性を説明するためのタイムチャートである。 本発明の実施の形態における特性を説明するためのタイムチャートである。
次に、本発明を実施するための形態を図を参照して説明する。なお、各図中、同一符号は、同一または相当部分を示すものとする。
実施の形態1.
実施の形態1に係る回転電機の制御装置(以下、単に制御装置と称す)について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態に係る制御装置1の概略ブロック図である。
回転電機2は、非回転部材に固定されたステータと、当該ステータの径方向内側に配置され、非回転部材に対して回転可能に支持されたロータと、を備えている。本実施の形態では、回転電機2は、永久磁石式同期回転電機とされており、ステータに3相の巻線Cu、Cv、Cwが巻装され、ロータに永久磁石が設けられている。回転電機2は、直流交流変換を行うインバータ10を介して、直流電源4に電気的に接続される。回転電機2は、少なくとも、直流電源4からの電力供給を受けて動力を発生する電動機の機能を有している。なお、回転電機2は、電動機の機能に加えて、発電機の機能を有してもよい。
インバータ10は、直流電源4と回転電機2との間で電力変換を行う直流交流変換装置である。インバータ10は、直流電源4の正極に接続される正極電線と直流電源4の負極に接続される負極電線との間に直列接続された2個のスイッチング素子が、3相各相(U相、V相、W相)の巻線に対応して3セット設けられたブリッジ回路に構成されている。正極側のスイッチング素子と負極側のスイッチング素子とを直列接続する接続点は、対応する相の巻線に接続される。スイッチング素子には、フリーホイールダイオードが逆並列接続されたIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)や、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等が用いられる。インバータ10は、各巻線に流れる電流を検出するための電流センサ11(図3参照)を備えている。電流センサ11は、スイッチング素子の直列回路と巻線とをつなぐ各相の電線上に備えられている。
本実施の形態では、図2に示すように、回転電機2は車両の駆動力源とされており、回転電機2のロータの回転軸は、減速機6及びディファレンシャルギア7を介して左右2つの車輪8に連結される。
制御装置1は、インバータ10を制御することにより、回転電機2の制御を行う制御装置である。図1に示すように、制御装置1は、基本トルク指令算出部30、振動指令算出部31、最終トルク指令算出部32、及びインバータ制御部33等の機能部を備えている。制御装置1が備える各部30〜33等は、制御装置1が備えた処理回路により実現される。具体的には、制御装置1は、図3に示すように、処理回路として、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等の演算処理装置90(コンピュータ)、演算処理装置90とデータのやり取りする記憶装置91、演算処理装置90に外部の信号を入力する入力回路92、及び演算処理装置90から外部に信号を出力する出力回路93等を備えている。記憶装置91として、演算処理装置90からデータを読み出し及び書き込みが可能に構成されたRAM(Random Access Memory)や、演算処理装置90からデータを読み出し可能に構成されたROM(Read Only Memory)等が備えられている。入力回路92は、各種のセンサやスイッチが接続され、これらセンサやスイッチの出力信号を演算処理装置90に入力するA/D変換器等を備えている。出力回路93は、スイッチング素子等の電気負荷が接続され、これら電気負荷に演算処理装置90から制御信号を出力する駆動回路等を備えている。本実施の形態では、入力回路92には、電流センサ11、回転速度センサ12、及び温度センサ13等が接続されている。出力回路93には、インバータ10(スイッチング素子又はスイッチング素子のゲート駆動回路)等が接続されている。
そして、制御装置1が備える各部30〜33等の各機能は、演算処理装置90が、ROM等の記憶装置91に記憶されたソフトウェア(プログラム)を実行し、記憶装置91、入力回路92、及び出力回路93等の制御装置1の他のハードウェアと協働することにより実現される。なお、各部30〜33等が用いる判定値やテーブル等の設定データは、ソフトウェア(プログラム)の一部として、ROM等の記憶装置91に記憶されている。以下、制御装置1の各機能について詳細に説明する。
図4のブロック図に示すように、インバータ制御部33は、後述する最終トルク指令算出部32から伝達された最終トルク指令値Tcfのトルクを回転電機2が出力するようにインバータ10のスイッチング素子をオンオフ制御する。本実施の形態では、インバータ制御部33は、ベクトル制御法を用いた電流フィードバック制御を行うように構成されている。インバータ制御部33は、dq軸電流指令算出部40、電流フィードバック制御部41、電圧座標変換部42、PWM信号生成部43、電流座標変換部44、及び回転速度検出部45を備えている。
回転速度検出部45は、回転電機2の回転速度を検出する。回転速度検出部45は、ロータの回転軸に設けられた回転速度センサ12の出力信号に基づいて、ロータの電気角θ(磁極位置θ)及び電気角速度を検出する。
dq軸電流指令算出部40には、最終トルク指令算出部32により算出された最終トルク指令値Tcfが入力される。dq軸電流指令算出部40は、最終トルク指令値Tcfのトルクを回転電機2に出力させるために、3相巻線Cu、Cv、Cwに流す電流をdq軸回転座標系で表したd軸電流指令値Idc及びq軸電流指令値Iqcを算出する。なお、d軸電流指令値Idc及びq軸電流指令値Iqcを纏めてdq軸電流指令値Idc、Iqcと称する。dq軸電流指令算出部40は、最大トルク電流制御、弱め磁束制御、Id=0制御、及び最大トルク磁束制御などの電流ベクトル制御方法に従って、dq軸電流指令値Idc、Iqcを演算する。最大トルク電流制御では、同一電流に対して発生トルクを最大にするようなdq軸電流指令値Idc、Iqcを算出する。弱め磁束制御では、最終トルク指令値Tcfに応じて、定誘起電圧楕円上を、dq軸電流指令値Idc、Iqcを移動させる。Id=0制御では、d軸電流指令値Idcを0に設定し、最終トルク指令値Tcf等に応じて、q軸電流指令値Iqcを変化させる。最大トルク磁束制御では、同一トルク発生時に鎖交磁束が最小となるようなdq軸電流指令値Idc、Iqcを算出する。本実施の形態では、dq軸電流指令算出部40は、最終トルク指令値Tcfとdq軸電流指令値Idc、Iqcとの関係が予め設定されたトルク電流変換マップを用い、最終トルク指令値Tcfに対応するdq軸電流指令値Idc、Iqcを算出するように構成されている。
dq軸回転座標は、ロータに設けられた永久磁石のN極の向き(磁極位置)に定めたd軸、及びd軸より電気角で90°(π/2)進んだ方向に定めたq軸からなる、ロータの電気角θでの回転に同期して回転する2軸の回転座標である。
電流座標変換部44は、電流センサ11の出力信号に基づいて、インバータ10から回転電機2の各相の巻線Cu、Cv、Cwに流れる3相電流Iu、Iv、Iwを検出する。電流座標変換部44は、各相の巻線に流れる3相電流Iu、Iv、Iwを、磁極位置θに基づいて3相2相変換及び回転座標変換を行って、dq軸回転座標系で表したd軸電流Id及びq軸電流Iqに変換する。
電流フィードバック制御部41は、dq軸電流Id、Iqが、dq軸電流指令値Idc、Iqcに近づくように、回転電機2に印加する電圧の指令信号をdq軸回転座標系で表したd軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vqを、PI制御等により変化させる電流フィードバック制御を行う。その後、電圧座標変換部42は、dq軸電圧指令値Vd、Vqを、磁極位置θに基づいて、固定座標変換及び2相3相変換を行って、3相各相の巻線への交流電圧指令値である3相交流電圧指令値Vu、Vv、Vwに変換する。
PWM信号生成部43は、3相交流電圧指令値Vu、Vv、Vwのそれぞれと、直流電源電圧の振動幅を有し、キャリア周波数で振動するキャリア波(三角波)とを比較し、交流電圧指令値がキャリア波を上回った場合は、矩形パルス波をオンさせ、交流電圧指令値がキャリア波を下回った場合は、矩形パルス波をオフさせる。PWM信号生成部43は、3相各相の矩形パルス波を、3相各相のインバータ制御信号Su、Sv、Swとしてインバータ10に出力し、インバータ10の各スイッチング素子をオンオフさせる。
次に、最終トルク指令値Tcfの算出について説明する。
図1に示すように、基本トルク指令算出部30は、回転電機2に出力させるトルクの基本指令値である基本トルク指令値Tcbを算出する。本実施の形態では、基本トルク指令算出部30は、アクセル開度、車速、及び直流電源4の充電量等に応じて、車輪8の駆動のために要求されている車両要求トルクを算出し、車両要求トルクに基づいて基本トルク指令値Tcbを設定する。
振動指令算出部31は、振動周波数で振動するトルク指令値である振動トルク指令値Tcvを算出する。本実施の形態では、振動指令算出部31は、基本振動トルク算出部34及び振幅加算有無判断部38を備えている。基本振動トルク算出部34は、振動トルク指令値の基本値である基本振動トルク指令値Tcvbを算出する。振幅加算有無判断部38は、基本振動トルク指令値Tcvbに対して、後述する振幅加算有無判断を行って最終的な振動トルク指令値Tcvを算出する。
基本振動トルク算出部34は、振動周波数を、回転電機2の回転周波数(電気角周波数)に応じた周波数に設定するように構成されている。基本振動トルク指令値Tcvbは、回転電機2の出力トルクに生じるトルクリプルやコギングトルク等のトルク振動成分を打ち消すためのトルク指令値とされており、トルク振動成分の逆位相のトルクに設定される。トルクリプルは、電流による磁束と磁石による磁束との相互作用により生じ、電流の基本周波数(電気角周波数)の6n倍(nは1以上の自然数)の周波数となる。コギングトルクは、ロータ位置によるステータとロータの静的な磁気吸引力の差により生じ、ステータのスロット数とロータの磁極数の最小公倍数×電気角周波数の周波数となる。
本実施の形態では、基本振動トルク算出部34は、基本振動トルク指令値Tcvbとして、式(1)に示すように、電気角周波数の次数m(mは1以上の自然数)の振動周波数で振動し、電気角θのm倍に対して位相γの差を有する基本振幅Abの正弦波(又は余弦波)を算出する。
Tcvb=Ab×sin(m×θ+γ) ・・・(1)
基本振動トルク算出部34は、図5のブロック図に示すように、振幅設定部35、振動波形算出部36、及び乗算器37を備えている。振幅設定部35は、基本トルク指令値Tcbに基づいて基本振幅Abを設定する。本例では、振幅設定部35は、図6に示すような、基本トルク指令値Tcbと基本振幅Abとの関係が予め設定された振幅テーブルを用い、基本トルク指令算出部30が算出した基本トルク指令値Tcbに対応する基本振幅Abを算出する。
振動波形算出部36は、回転速度検出部45が検出した電気角θ、予め設定された次数m、及び予め設定された位相γに基づいて振動波形を算出する。本例では、振動波形算出部36は、振動波形として、sin(m×θ+γ)を算出する。振動波形算出部36は、基本トルク指令値Tcb及び電気角速度等の運転条件に応じて位相γを変化させてもよい。そして、乗算器37は、振幅設定部35により設定された基本振幅Abと、振動波形算出部36により算出された振動波形sin(m×θ+γ)とを乗算して、基本振動トルク指令値Tcvbを算出する。
振幅テーブル及び位相γの設定方法の例について説明する。基本トルク指令値Tcbにトルク振動を打ち消すための振動トルク指令値Tcvを重畳させていない場合の、回転電機2の出力トルクを、異なる基本トルク指令値Tcb等の複数の運転条件で、トルクセンサにより計測する。そして、計測した出力トルク波形を、最小2乗法等によりsin波に近似する。近似したsin波の振幅を基本振幅Abとし、近似したsin波の位相の逆位相を位相γとする。図6に示すように、基本トルク指令値Tcbと基本振幅Abとの関係を振幅テーブルとして予め設定する。
基本トルク指令値Tcbの絶対値が大きくなるに従って、トルクリプル等のトルク振動の振幅も大きくなる。そのため、振幅テーブルには、基本トルク指令値Tcbの絶対値が大きくなるに従って、基本振幅Abが大きくなるように設定されている。よって、基本トルク指令値Tcbが大きくなるに従って振幅が増加するトルク振動を、振動トルク指令値により打ち消すことができる。しかし、基本トルク指令値Tcbが後述する上限指令値Tcmx付近まで増加すると、振幅が増加した振動トルク指令値が上限指令値Tcmxにより上限制限され、後述する問題が発生する。
なお、トルクリプルとコギングトルクとの電気角周波数の次数が異なる場合などに対応するため、振動指令算出部31は、次数mの異なる複数の基本振動トルク指令値Tcvbを算出し、複数の基本振動トルク指令値Tcvbの合計値を最終的な基本振動トルク指令値Tcvbとして算出するように構成されてもよい。
振幅加算有無判断部38は、基本トルク指令値Tcbを基に、振動トルク指令値Tcvの加算有無を判断する。
図1に示すように、最終トルク指令算出部32は、基本トルク指令算出部30により算出された基本トルク指令値Tcbに、振動指令算出部31により算出された振動トルク指令値Tcvを加算した加算トルク指令値Tcsmを算出し、回転電機2の最大出力トルクに対応して予め設定された上限指令値Tcmxにより加算トルク指令値Tcsmを上限制限した値を、最終的に回転電機2に指令する最終トルク指令値Tcfとして算出する。
ここで、回転電機2の最大出力トルクは、制御装置1により回転電機2に出力させることができる出力トルクの平均値の最大値であり、トルクリプル及びコギングトルク等のトルク振動成分が平均化された出力トルクとなる。すなわち、最大出力トルクは、最大平均出力トルクである。本実施の形態では、上限指令値Tcmxは、回転電機2の最大出力トルクに一致するように設定される。回転電機2の最大出力トルクは、ロータの電気角速度、直流電源4の電源電圧、充電量等に応じて変化する。最終トルク指令算出部32は、ロータの電気角速度、直流電源4の電源電圧、及び充電量に基づいて、上限指令値Tcmxを設定するように構成されている。
最終トルク指令算出部32は、式(2)に示すように、基本トルク指令値Tcbに振動トルク指令値Tcvを加算した加算トルク指令値Tcsmが、上限指令値Tcmxよりも大きい場合は、最終トルク指令値Tcfに上限指令値Tcmxを設定する。一方、最終トルク指令算出部32は、加算トルク指令値Tcsmが、上限指令値Tcmx以下である場合は、最終トルク指令値Tcfに加算トルク指令値Tcsmを設定する。
1)Tcsm(=Tcb+Tcv)>Tcmxの場合
Tcf=Tcmx
2)Tcsm(=Tcb+Tcv)≦Tcmxの場合 ・・・(2)
Tcf=Tcsm=Tcb+Tcv
ここで、本実施の形態とは異なり、後述する振幅加算有無判断部38により振幅加算判断処理を行わないように構成された比較例について説明する。図7のタイムチャートに示すように、基本トルク指令値Tcbが上限指令値Tcmx付近まで上昇している状態で、基本トルク指令値Tcbに、振幅減少処理が行われていない振動トルク指令値Tcv(基本振動トルク指令値Tcvb)を加算した加算トルク指令値Tcsmを算出すると、加算トルク指令値Tcsmが上限指令値Tcmxにより上限制限され、振動している振動トルク指令値Tcvの山部分が切り取られた状態となる。そのため、上限制限後の最終トルク指令値Tcfの平均値Tcfaveは、基本トルク指令値Tcbよりも低くなる。
また、図8のタイムチャートに、比較例に係る回転電機2の出力トルクTmの挙動を示す。図8の上段のタイムチャートが、本実施の形態とは異なり、基本トルク指令値Tcbに振動トルク指令値Tcvを加算せずに、基本トルク指令値Tcbをそのまま最終トルク指令値Tcfに設定した場合の回転電機2の出力トルクTmの挙動である。回転電機2の出力トルクTmは、基本トルク指令値Tcbにトルクリプル等のトルク振動成分が重畳した波形となっている。また、回転電機2の出力トルクTmの平均値Tmaveは、上限指令値Tcmx(最大出力トルク)を下回っているが、出力トルクTmのトルク振動成分の山部分は、上限指令値Tcmxを上回っている。
図8の下段のタイムチャートが、図7の比較例に対応する回転電機2の出力トルクTmの挙動である。出力トルクTmのトルク振動成分の山部分は、上限制限されていない振動トルク指令値Tcvの谷部分により打ち消されて、基本トルク指令値Tcbまで低減している。一方、出力トルクTmのトルク振動成分の谷部分は、振動トルク指令値Tcvの山部分が上限制限されているので、十分に打ち消されておらず、基本トルク指令値Tcbよりも低くなっている。よって、回転電機2の出力トルクTmの平均値Tmaveも、基本トルク指令値Tcbよりも低くなる。従って、比較例では、回転電機2の出力トルクTmを上限指令値Tcmx付近まで増加させ、車両を加速させたい場合に、出力トルクTmが低下する問題があった。
そこで、本実施の形態では、振動指令算出部31は、振幅加算有無判断部38の機能によって基本トルク指令値Tcbに振動トルク指令値Tcvの振幅を加算した振動最大値が上限指令値Tcmxより大きくなる場合に、振動最大値が上限指令値Tcmx以下になるように、振動トルク指令値Tcvの加算を止める構成となっている。
本実施の形態では、振幅加算有無判断部38は、基本トルク指令値Tcbに基本振動トルク指令値Tcvbの基本振幅Abを加算した判定振動最大値(Tcb+Ab)が上限指令値Tcmxより大きい場合に、振動トルク指令値Tcvの加算を止めるように構成されている。この構成によれば、振動トルク指令値Tcvを加算しないトルク範囲を必要最小限にし、トルク振動の低減効果の減少を必要最小限にすることができる。
振動トルク指令値Tcvの振幅をAとすると、Tcb+A>Tcmxとなるようであれば、A=0に設定すればよい。具体的には、式(3)に示すように、振幅加算有無判断部38は、基本トルク指令値Tcbに基本振動トルク指令値Tcvbの基本振幅Abを加算した判定振動最大値(Tcb+Ab)が上限指令値Tcmxより大きい場合は、振動トルク指令値Tcv=0とする。一方、振幅加算有無判断部38は判定振動最大値(Tcb+Ab)が上限指令値Tcmx以下である場合は、基本振動トルク指令値Tcvbをそのまま最終的な振動トルク指令値Tcvに設定する。
1)Tcb+Ab>Tcmxの場合
Tcv=0
2)Tcb+Ab≦Tcmxの場合 ・・・(3)
Tcv=Tcvb
なお、次数mの異なる複数の基本振動トルク指令値Tcvbの合計値が、最終的な基本振動トルク指令値Tcvbとされる場合は、振幅加算有無判断部38は、合計値の振幅を基本振幅Abに設定し、式(3)の演算を行う。
ところで、運転状態の急激な変化や、ノイズ等の外乱により、基本トルク指令値Tcbが急変した場合、基本トルク指令値Tcbに応じて算出される振動トルク指令値Tcvの振幅も急変する。例えば、電流センサ11により検出した電流検出値が、ノイズの影響で急変し、その影響で基本トルク指令値Tcbが急変する。振動トルク指令値Tcvの振幅が急変すると、回転電機2の出力トルクも急変するので、車輪8にトルク変動が伝達され、運転者に違和感を与える。
そこで、本実施の形態では、振動指令算出部31は、振動トルク指令値Tcvの振幅の設定値に対してローパスフィルタ処理を行うように構成されている。この構成によれば、振動トルク指令値Tcvの振幅の急変を抑制し、車輪8にトルク変動が伝達されることを抑制できる。振動指令算出部31は、式(1)を用いて振動トルク指令値Tcvを算出する場合は、基本振幅Abの設定値に対してローパスフィルタ処理を行う。
実施の形態2.
次に、実施の形態2に係る制御装置1について説明する。上記の実施の形態1と同様の構成部分は説明を省略する。本実施の形態に係る回転電機2及び制御装置1の基本的な構成及び処理は実施の形態1と同様であるが、振幅加算有無判断部における振幅加算有無判断値を補正する。
最終トルク指令値Tcfと実際の回転電機2の出力トルクとの間には、ずれが生じる。例えば、トルク電流変換マップを用いて、最終トルク指令値Tcfをdq軸電流指令値Idc、Iqcに変換する際に、内挿又は外挿の線形補間により変換誤差が生じる。また、回転電機2には、製造ばらつきによる個体差がある。コイル長が異なれば、コイル抵抗が異なるため、印加電圧が同じでも電流値が異なり、出力トルクが異なる。例えば、0〜300Nmのトルク範囲で、最終トルク指令値Tcfに対して回転電機2の出力トルクが+2Nmから−2Nm程度の範囲内でずれる場合がある。
そのため、回転電機2の最大出力トルクと上限指令値Tcmxとの間にずれが生じる。特に、上限指令値Tcmxが、回転電機2の最大出力トルクを上回るようにずれた場合は、最終トルク指令値Tcfに含まれる振動トルク指令値Tcvの山部分が上限指令値Tcmxにより上限制限されていない場合でも、実際には、回転電機2の最大出力トルクにより上限制限され、振動トルク指令値Tcvの山部分のトルクを回転電機2に出力させることができない場合が生じる。よって、図8の下段のグラフと同様の状態になり、回転電機2の出力トルクTmの平均値Tmaveが低下する問題があった。
そこで、本実施の形態では、予め設定された振幅加算有無判断閾値から、前記ずれのずれ幅ΔTshを減算するように構成されている。すなわち、振動指令算出部31は、基本トルク指令値Tcbに振動トルク指令値Tcvの振幅及びずれ幅ΔTshを加算した振動最大値が上限指令値Tcmxより大きくなる場合に、振動最大値が上限指令値Tcmx以下になるように、振幅加算有無判断値を減少させるように構成されている。
この構成によれば、上限指令値Tcmxが、回転電機2の最大出力トルクを上回るようにずれた場合、振動トルク指令値Tcvの山部分が回転電機2の最大出力トルクにより上限制限されることを抑制し、回転電機2の出力トルクTmの平均値Tmaveが低下することを抑制できる。
実施の形態3.
次に、実施の形態3に係る制御装置1について説明する。上記の実施の形態1と同様の構成部分は説明を省略する。本実施の形態に係る回転電機2及び制御装置1の基本的な構成及び処理は実施の形態1と同様であるが、振幅加算有無判断部38における振幅加算有無判断値を補正する
実施の形態1で説明したように、制御装置1は、最終トルク指令値Tcfに基づいて設定した電流指令値に、電流センサ11により検出した電流値が近づくように電流フィードバック制御を行うように構成されている。よって、電流センサ11に検出ずれが生じると、最終トルク指令値Tcfと実際の回転電機2の出力トルクとの間には、ずれが生じる。一般的に、電流センサ11は、常温において校正されているため、電流センサ11が高温になると、検出ずれが大きくなるおそれがある。例えば、シャント式の電流センサ11の場合、抵抗体の両端の電圧降下量に応じた電流値が算出される。そのため、抵抗体が高温になると、抵抗体の抵抗が増加し、電圧降下量が増加するため、検出電流値が実際の電流値よりも大きくなる。電流センサ11の温度上昇は、インバータ10内部の電流センサ11付近の温度が上昇した場合、又は抵抗体を流れる電流が増加した場合等に生じる。例えば、真夏等の外気温度が高い時、高速走行時等に、電流センサ11の温度上昇が大きくなり、電流検出ずれが大きくなる。
電流検出ずれが大きいと、最終トルク指令値Tcfと実際の回転電機2の出力トルクとの間のずれ幅も大きくなり、上記の実施の形態2で説明したような問題が生じる。すなわち、上限指令値Tcmxが、回転電機2の最大出力トルクを上回るようにずれた場合は、最大出力トルクの上限制限により、振動トルク指令値Tcvの山部分のトルクを回転電機2に出力させることができない場合が生じ、回転電機2の出力トルクTmの平均値Tmaveが低下する問題が生じる。
そこで、本実施の形態では、振動指令算出部31は、回転電機2に流れる電流を検出する電流センサ11の温度が、予め設定された判定温度(例えば、80℃)以上である場合に、電流センサ11の電流検出誤差により生じる最終トルク指令値Tcfと回転電機2の出力トルクとの間のずれ幅である電流トルクずれ幅ΔTshiを算出し、基本トルク指令値Tcbに、ずれ幅Δtshi加算した値で、振幅加算有無判断をする。
すなわち、振動指令算出部31は、電流センサ11の温度が、予め設定された判定温度以上である場合は、基本トルク指令値Tcbに振動トルク指令値Tcv及び電流トルクずれ幅ΔTshiを加算した振動最大値が上限指令値Tcmxより大きくなる場合に、振動最大値が上限指令値Tcmx以下になるように、振幅加算有無判断値を減少させるように構成されている。
この構成によれば、電流センサ11の温度が、判定温度以上になり、電流検出ずれが大きくなった場合、振幅加算有無判断値を減少させる。
これにより振動トルク指令値Tcvの山部分が回転電機2の最大出力トルクにより上限制限されることを抑制し、回転電機2の出力トルクTmの平均値Tmaveが低下することを抑制できる。一方、電流センサ11の温度が、判定温度未満であり、電流検出ずれが小さい場合は、電流トルクずれ幅ΔTshiの減算を行わず、振動トルク指令値Tcvの加算領域が必要以上に減少されることを防止し、トルク振動の低減効果を向上させることができる。
電流センサ11が温度検出機能を有している場合は、振動指令算出部31は、電流センサ11に設けられた温度センサ13の出力信号に基づいて、電流センサ11の温度を検出する。或いは、振動指令算出部31は、電流センサ11付近に設けられた温度センサ13の出力信号に基づいて、電流センサ11の温度を検出する。
電流トルクずれ幅ΔTshiは、予め設定された一定値であってもよいし、電流センサ11の温度に応じて変更されてもよい。後者の場合は、振動指令算出部31は、電流センサ11の温度と電流トルクずれ幅ΔTshiとの関係が予め設定されたずれ幅設定テーブルを用い、検出した電流センサ11の温度に対応する電流トルクずれ幅ΔTshiを算出する。
振幅加算有無判断部38は、基本トルク指令値Tcbに基本振動トルク指令値Tcvbの基本振幅Abを加算した判定振動最大値(Tcb+Ab+ΔTshi)が上限指令値Tcmxより大きい場合に、Tcvを0Nmとするように構成されている。
具体的には、振幅加算有無判断値からΔTshi引いて、振幅加算有無判断値(補正後)を算出する。
〔その他の実施の形態〕
本発明のその他の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する各実施の形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施の形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
上記の各実施の形態においては、振動指令算出部31は、正弦波(又は余弦波)の波形の振動トルク指令値Tcv(基本振動トルク指令値Tcvb)を算出するように構成されている場合を例に説明した。しかし、本発明の実施の形態はこれに限定されない。すなわち、振動指令算出部31は、振動周波数で振動する振動トルク指令値Tcv(基本振動トルク指令値Tcvb)であれば、どのような波形であってもよい。例えば、振動指令算出部31は、振動トルク指令値Tcv(基本振動トルク指令値Tcvb)の波形を、実験においてトルクセンサにより計測した回転電機2の出力トルクの振動成分に近い波形としてもよい。例えば、振動指令算出部31は、位相の異なる複数の正弦波(又は余弦波)を組み合わせて振幅が1の単位指令値を算出する、又は角度と単位指令値との関係が予め設定されたテーブルを用い、電気角θに対応する単位指令値を算出する。そして、振動指令算出部31は、単位指令値に基本振幅Abを乗算して基本振動トルク指令値Tcvbを算出してもよい。
上記の実施の形態2においては、最終トルク指令値Tcfと実際の回転電機2の出力トルクとの間のずれ幅として、トルク電流変換マップ及び製造ばらつきによるものが考慮されている場合を例として説明し、実施の形態3においては、最終トルク指令値Tcfと実際の回転電機2の出力トルクとの間のずれ幅として、電流検出ずれによるものが考慮されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施の形態はこれに限定されない。最終トルク指令値Tcfと実際の回転電機2の出力トルクとの間のずれ幅として、様々な要因によるものが考慮されてもよく、トルク電流変換マップ及び製造ばらつき、並びに電流検出ずれの双方によるものが考慮されてもよい。
上記の各実施の形態においては、振動指令算出部31は、トルクリプルやコギングトルク等の回転電機2が出力するトルク振動成分を打ち消すための振動トルク指令値Tcvを算出する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施の形態はこれに限定されない。振動指令算出部31は、振動周波数で振動する振動トルク指令値Tcvを算出すればよく、例えば、回転電機2と車輪8とを連結する動力伝達経路に発生する軸ねじり振動を打ち消すための振動トルク指令値Tcvを算出してもよく、或いはトルクリプル及びコギングトルク並びに軸ねじり振動の双方を打ち消すための振動トルク指令値Tcvを算出してもよい。
上記の各実施の形態においては、回転電機2は、電気自動車の駆動力源とされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施の形態はこれに限定されない。すなわち、回転電機2は、内燃機関を備えたハイブリッド自動車の駆動力源とされてもよく、或いは車両以外の装置の駆動力源とされてもよい。
上記の各実施の形態においては、回転電機2は、永久磁石式同期回転電機とされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施の形態はこれに限定されない。すなわち、回転電機2は、誘導回転電機などの各種の回転電機とされてもよい。
本発明は、ハイブリッド車両にも適用でき、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
1 制御装置、11 電流センサ、13 温度センサ、30 基本トルク指令算出部、31 振動指令算出部、32 最終トルク指令算出部、Ab 基本振幅、Ka 振幅減少係数、Tcb 基本トルク指令値、Tcf 最終トルク指令値

Claims (4)

  1. 回転電機に出力させるトルクの基本指令値である基本トルク指令値を算出する基本トルク指令算出部と、振動周波数で振動するトルク指令値である振動トルク指令値を算出する振動指令算出部と、前記基本トルク指令値に前記振動トルク指令値を加算した加算トルク指令値を算出し、前記回転電機の最大出力トルクに対応して予め設定された上限指令値により前記加算トルク指令値を上限制限した値を、前記回転電機に指令する最終トルク指令値として算出する最終トルク指令算出部と、前記振動指令算出部に設けられ、前記基本トルク指令値に前記振動トルク指令値の振幅を加算した振動最大値が前記上限指令値より大きくなる場合に、前記振動最大値が前記上限指令値を超えないように、前記振動トルク指令値の加算を止める振動加算有無判断部と、を備え、前記振動指令算出部は、前記基本トルク指令値に、前記振動トルク指令値の振幅、及び前記最終トルク指令値と前記回転電機の出力トルクとの間の予め設定されたずれ幅を加算した値を、前記振動最大値として算出することを特徴とする回転電機の制御装置。
  2. 前記振動指令算出部は、前記最終トルク指令値と前記回転電機の出力トルクとの間のずれ量に対し、予め設定された振幅加算有無判断値から、上記ずれ量に相当する分を引いた値を、補正後の振幅加算有無判断値とすることを特徴とする請求項1に記載の回転電機の制御装置。
  3. 前記振動指令算出部は、前記回転電機に流れる電流を検出する電流センサの温度が、予め設定された判定温度以上である場合に、前記電流センサの電流検出誤差により生じる前記最終トルク指令値と前記回転電機の出力トルクとの間のずれ幅である電流トルクずれ幅を算出し、予め設定された振幅加算有無判断値から、上記ずれ幅に相当する分を引いた値を、補正後の振幅加算有無判断値とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転電機の制御装置。
  4. 前記振動指令算出部は、前記振動トルク指令値の振幅の設定値に対してローパスフィルタ処理を行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の回転電機の制御装置。
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