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JP6162447B2 - 高視認性重ね織物 - Google Patents

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JP6162447B2 JP2013062173A JP2013062173A JP6162447B2 JP 6162447 B2 JP6162447 B2 JP 6162447B2 JP 2013062173 A JP2013062173 A JP 2013062173A JP 2013062173 A JP2013062173 A JP 2013062173A JP 6162447 B2 JP6162447 B2 JP 6162447B2
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Description

本発明は、高視認性の織物に関するものである。
自動車や電車・列車等の車両や、航空機、船舶等、高速で移動する乗り物の近くでの作業に従事する者は、常に接触事故の危険を伴っている。その為、視覚で認識しやすいように、蛍光色や鮮明色の生地や再起反射素材を使用した視認性の高い安全作業服を着用する必要がある。例えばEU諸国においては、特定の業務に従事する者は、EN471規格に規定された高視認性安全作業服の着用が義務付けられている。この様な高視認性安全作業服については、日本においても必要性が高まっている。
欧州におけるEN471規格を例にとると、高視認性安全作業服は、視覚的な認識効果に優れた特定の蛍光色に着色された生地と、光に対する再起反射性を有する素材をそれぞれ一定面積以上使用した衣類を着用する必要がある。これは、微細な違いはあるにせよ、米国規格協会の規定するANSI 107−1999規格等も同様の基準である。高視認性を付与した布帛に関する技術としては特許文献1が挙げられる。この技術によれば、ANSI 107−1999に適合する高視認性の色調に染色された布帛が開示されているが、屋外における太陽光が照射される環境下で長期に亘って使用した際の色調の退色については何ら言及したものではない。
特表2008−509297号公報
日本をはじめとするアジア諸国は、欧米と比較して太陽光の照射が強く、蛍光着色された生地の耐光堅牢度を維持するのが難しくなる。特に綿やレーヨン等、吸汗性・吸放湿性に優れたセルロース繊維は一般的にポリエステル等の合成繊維に比べて堅牢度の維持が難しい為、セルロース繊維を含む生地については太陽光による変色の懸念が高く、結果として吸汗性・吸放湿性に乏しいポリエステル等の合成繊維のみを素材として使用せざるを得ない状況であった。そこで、本発明は、視認性に優れた蛍光色が長期間着用しても維持されており、かつ吸汗性や吸放湿性にも優れた高視認性の織物を安定的に供給することを技術的な課題とするものである。
本発明は、表組織が経糸および緯糸ともにポリエステル繊維によって構成され、裏組織がセルロース系繊維を構成繊維として含んでなる重ね組織により構成される織物であり、表組織を構成するポリエステル繊維は二酸化チタンの含有量が多くとも1質量%であり、表組織のカバーファクターが22以上であり、少なくとも表組織を構成するポリエステル繊維が、蛍光黄色、蛍光橙色あるいは蛍光赤色のいずれかの色彩に着色されてなることを特徴とする高視認性重ね織物を要旨とするものである。
以下、本発明について説明する。
本発明の織物は、表組織が、経糸および緯糸ともにポリエステル繊維により構成され、該ポリエステル繊維が、蛍光黄色、蛍光橙色あるいは蛍光赤色のいずれかの色彩に着色され、裏組織が、セルロース系繊維を構成繊維として含んでなる重ね組織により構成される。本発明の織物においては、表組織は、高視認性の機能を奏するために鮮明な蛍光色を発色し、一方、裏組織は、この織物を衣料とした際に吸汗性・吸放湿性の機能を果たし快適性を保持する。なお、裏組織を構成する繊維としてセルロース系繊維が含まれているが、裏組織を構成する繊維の10質量%以上がセルロース系繊維によって構成されていることが好ましく、より好ましくは35質量%である。
表組織に用いるポリエステル繊維は、一般に汎用性が高く機械的強度にも優れるポリエチレンテレフタレート繊維を好ましく用いる。表組織を構成する糸の形態は、フィラメント糸であっても紡績糸であってもよく、特にフィラメントからなる仮撚加工糸を好ましく用いられる。
本発明において、表組織を構成するポリエステル繊維における二酸化チタンの含有量は、多くとも1質量%である。二酸化チタンの含有量が1質量%を超えると、光沢感が減少して発色性及び視認性が低下し、加えて二酸化チタンが太陽光によって励起して蛍光染料に作用し、耐光堅牢度等の低下を起こす懸念があるためである。なお、二酸化チタンの含有量は、耐光堅牢度を低下させないことを考慮すれば、ゼロに近くなるほど好ましいが、繊維を製造する際の製糸性を考慮して0.5質量%以下の範囲で少量含まれていることが好ましい。
裏組織を構成するセルロース系繊維としては、特に限定されるものではなく、綿やレーヨン、キュプラ、リヨセル等が挙げられるが、作業服という洗濯回数の多い用途を考慮すると、綿が最も好適である。裏組織にセルロース系繊維を主として用いる理由は、本発明の織物は、接触事故の危険を伴う場所での作業者が着用する安全作業服として好適に使用できるものであり、作業中には非常に多くの発汗を伴うことから、セルロース系繊維を主として配することにより、衣服内の蒸れた空気を吸収して外気へ放出することができることにある。
吸湿能力は、後述するRMA(Real Moisture Absorption)、放湿能力は、これも後述するRMD(Real Moisture Disabsorption)により評価することができる。
RMAは、25℃、60%RHの常温常湿条件下から34℃、90%RHの高温高湿条件下に生地を移動させたとき生地の吸湿能力を示し、RMAの値が大きいほど衣服内の蒸れにより発生した湿気を吸収する能力が高いことを示す。また、RMDは、34℃、90%RHの高温高湿条件下から25℃、60%RHの常温常湿条件下に生地を移動させたとき生地の放湿能力を示し、RMDの値が大きいほど生地が吸収した湿気を外気へ放出する能力が高いことを示す。具体的には、以下により測定する。すなわち、タテ・ヨコ25cmの正方形にカットした試料を105℃で2時間乾燥して絶乾状態での質量W(g)を測定した後、温度25℃、相対湿度60%RHの恒温恒湿槽内で2時間放置した後、質量W(g)を測定する。その後、温度34℃、相対湿度90%RHの恒温恒湿槽内で24時間放置した後、質量W(g)を測定する。その後、再度温度25℃、相対湿度60%RHの恒温恒湿槽内で24時間放置した後、質量W(g)を測定する。測定した質量W、W、W、Wから吸湿能力RMA,放湿能力RMDを下記式によって算出する。
RMA=({(W−W)/W} − {(W−W)/W})×100
RMD=({(W−W)/W} − {(W−W)/W})×100
本発明においては、衣服内の蒸れによる不快感を軽減するには、このRMA及びRMDの値が0.3以上であることが好ましく、より好ましくは0.5以上である。RMA及びRMDが0.3未満である場合、衣服内の蒸れを十分に軽減しにくい。
本発明の織物は、表組織にはポリエステル繊維を配し、裏組織には主としてセルロース系繊維を配した重ね組織により構成されるが、裏組織に配されるセルロース系繊維が表側に極力現れないように接結させる組織とする。セルロース系繊維は分散染料では染まらず、また、一般にセルロース系繊維に適用される蛍光染料は分散染料と比べて耐光堅牢度が低い。よって、セルロース系繊維にも蛍光色を発現させるために、セルロース系繊維が染まりやすい反応染料を使用すると、得られる織物は耐光堅牢度が低下する傾向となる。したがって、本発明においては、耐光堅牢度性を維持するためには、分散染料のみを用いた染色加工により特定の蛍光色に着色することが好ましい。また、本発明においては、セルロース系繊維は、分散染料では蛍光色に染まらないため蛍光色を発色しないが、裏組織を構成するセルロース系繊維が表側に極力現れず、かつ織物の表から観察した際にセルロール系繊維を視認しにくい組織を選択することにより、セルロース系繊維が蛍光色を発色しなくとも、本発明の目的とする高視認性を発現することが可能になる。
本発明の織物は、表組織と裏組織とからなる重ね組織により構成される。重ね組織としては、経二重織、緯二重織、経緯二重織等が挙げられ、これらの重ね組織を用いることができる。なお、経緯二重織とは、表組織と裏組織のそれぞれ1枚ずつの合計2枚の織物で構成され、織糸で接結されてなる織物である。また、織組織としては、経二重綾織、緯二重綾織あるいは経緯二重平織(ダブルプレイン)の組織が、表側から見た際に裏側のセルロース系繊維が表側のポリエステル繊維に隠れて見えにくく、特に好ましい。
表側から見た際に裏組織のセルロース系繊維が視認しにくくするには、表組織のカバーファクター(CF)が22以上であることが好ましい。ここで、カバーファクターとは、織物を構成する糸の太さと織物密度とによって定められる織物構造の粗密を表わす係数であり、下記式によって算出される。
カバーファクター(CF)=A+B
ただし、A、Bは下記式により算出される数値である。
A={(織物の経糸の密度(本/インチ)÷√経糸の番手)+(織物の緯糸の密度(本/インチ)÷√緯糸の番手)}÷2
B={(織物の経糸の密度(本/インチ)÷√経糸の番手)+(織物の緯糸の密度(本/インチ)÷√緯糸の番手)}×(1÷一完全組織の数)
表組織を構成するカバーファクターを算出するため、上記式の「経糸の密度」「緯糸の密度」には、表組織を構成する糸密度をそれぞれ用い、「経糸の番手」「緯糸の番手」には、表組織を構成する糸番手を用いる。具体的には、経緯二重織の場合は、表組織の織物を構成するそれぞれの数値を代入すればよい。また、緯二重織の場合は、同じ経糸の上下に表緯糸と裏緯糸が配置してなる組織であるため、「経糸の密度」は織物を構成する経糸全てが表組織を構成しているとして密度の値と用い、「緯糸の密度」は、表緯糸の密度の値を用いる。緯二重織の場合も同様である。なお、上記式中「一完全組織」とは、織物の組織の最小単位のことをいい、「一完全組織数」とは、一完全組織、すなわち織物を形成する周期的な織り柄の最小単位における経糸もしくは緯糸の本数の内、多い方を示す。例えば、平織、完全組織は経糸2本と緯糸2本であるので、「完全組織の値」は「2」である。また、2/1綾織は、完全組織は経糸3本と緯糸3本であるので、「完全組織の値」は「3」である。同様に、3/1綾織もしくは2/2綾織は、完全組織は経糸4本と緯糸4本であるので、完全組織数は「4」である。なお、糸の形態として連続繊維であるフィラメント糸を用いる場合は、太さの単位はデシテックスが用いられるため、番手に換算して上式に代入してカバーファクターを求めることは言うまでもない。
表組織のカバーファクターは、22以上であることが好ましく、より好ましくは23〜30である。カバーファクターが22未満であると、裏組織を構成するセルロース系繊維が表側より視認しやすくなり、視認性や耐光堅牢度の低下が懸念される。なお、カバーファクターが30を超えると、密度が高過ぎて製織が困難になり、重ね組織の織物が得にくい傾向となる。
本発明の織物は、表組織を構成するポリエステル繊維が蛍光黄色、蛍光橙色、蛍光赤色のいずれかに着色されている。蛍光黄色、蛍光橙色、蛍光赤色のいずれかに着色させることにより、本発明の織物を用いて衣服とし、工事現場や道路・港湾・空港等で作業者が着用する作業服として適用したときに、作業者の存在を明確に示すことができる。蛍光色である黄色、橙色、赤色は、いずれも注意・危険を喚起するのに優れた色であるため、本発明において用いる。さらには、より注意・危険を喚起する効果を奏するためには、本発明の織物の表側から測定される色度が、それぞれの色相において、表2に示すXY色度座標の各4点にて区画される範囲内にあり、輝度係数が表2に示す最小輝度係数の数値以上であることがより好ましい。
注意・危険を喚起する効果を奏するためには、昼夜・天候を問わず、視認性を維持する必要があり、特に太陽光下での使用によって変退色すると、目的とする効果を良好に奏することができにくくなる懸念がある。よって、本発明の織物は、カーボンアーク灯及びキセノンランプを光源とした耐光堅牢度がいずれも5級もしくは5級以上であることが好ましい。耐光堅牢度の光源として世界で一般的なのはキセノンランプであり、この波長領域は太陽光に近いものである。しかしながら、日本を始めとするアジア諸国を中心として、欧米と比較して太陽光の照射が強い地域においては、キセノンランプでの耐光堅牢度試験で合格したとしても、実際に太陽光の下で着用したときに受ける光が強いため、変退色を起こす懸念がある。よって、蛍光染料の変退色に強い影響を及ぼす紫外光領域の波長が強く、キセノンランプに比べて同一時間照射での曝露が強いカーボンアーク灯を光源として耐光堅牢度を評価した場合でも5級もしくは5級以上であるとよい。耐光堅牢度を5級もしくは5級以上とすることにより、太陽光曝露下で着用した場合に、経時で変退色が起こりにくく、長期に亘って良好に効果を奏しながら使用可能となる。
本発明の織物を作業服として使用したとき、作業内容によっては引火性ガスや粉塵等の存在する場所で着用する可能性がある。この様な場所での作業においては、静電気の帯電による火花が引火・爆発を引き起こす懸念があることから、織物の帯電電荷量を7μC/m以下にするとよく、4μC/m以下がより好ましい。織物の帯電電荷量を前記数値以下とすることにより、着用時の静電気の帯電を十分に抑える事ができる。なおこの数値を達成するためには、例えば、導電糸を織物の表組織に適宜挿入するとよい。
本発明の高視認性重ね織物は、視認性に優れた蛍光色が長期間着用しても維持されており、かつ吸汗性や吸放湿性にも優れたものである。
実施例1における織物の組織図である。
次に実施例により本発明を具体的に説明する。なお、実施例中の評価は下記の方法で行った。
(1)XYZ色度座標・最小輝度係数
EN471規格に基づき、色度座標及び最小輝度係数を測定した。
(2)耐光堅牢度
JIS L−0842(カーボンアーク灯)及びJIS L−0843(キセノンランプ)に基づき、第3露光法により、5級照射での耐光堅牢度を測定した。
(3)RMA、RMD
タテ・ヨコ25cmの正方形の試料を準備し、105℃で2時間乾燥して絶乾状態での質量W(g)を測定した後、温度25℃、相対湿度60%RHの恒温恒湿槽内で2時間放置した後、質量W(g)を測定した。その後、温度34℃、相対湿度90%RHの恒温恒湿槽内で24時間放置した後、質量W(g)を測定した。その後、再度温度25℃、相対湿度60%RHの恒温恒湿槽内で24時間放置した後、質量W(g)を測定した。測定した質量W、W、W、Wから吸湿能力RMA,放湿能力RMDを下記式で算出した。
RMA=({(W−W)/W} − {(W−W)/W})×100
RMD=({(W−W)/W} − {(W−W)/W})×100
(4)帯電電荷量
JIS−L−1094(生地評価)に基づき帯電電荷量を測定し、単位:μC/mで評価した。
(5)視認性
得られた織物を用いて半袖上衣とパンツからなる作業着を作成し、この作業着を着用した人物より60m離れたところから目視で視認性を晴天時・曇天時・雨天時に確認を行い、3段階評価(◎:視認性極めて良好である、○:視認性は良好であるが状況によりやや低下する場合があった、×:視認性が不良である)を行った。
実施例1
表組織に配する経糸として、酸化チタン0.5重量%を含有したポリエチレンテレフタレートからなる仮撚加工糸(167dtex/48f)を準備した。また、同様に表組織に配する経糸として、上記仮撚加工糸とポリエチレンテレフタレートからなる導電糸(商品名:「メガーナE」、ユニチカトレーディング社製、表面漏洩抵抗10Ω、28dtex/2f)と撚り合わせた合撚糸を準備した。また、裏組織に配する経糸として、綿紡績糸(40番手単糸)を準備した。
そして、表組織となる仮撚加工糸と合撚糸との配列が15:1になる様に配し、また、表組織の経糸と裏組織の経糸との配列が1:1となる様に合わせて配列して整経を行い、ビームを準備した。
一方、緯糸として、上記した仮撚加工糸と合撚糸を準備した。
準備したビームをエアージェット織機に仕掛け、仮撚加工糸:合撚糸=27:1となる様に緯糸打ち込みを行い、図1に示す組織で製織を行い、表組織および裏組織ともに平織組織である経緯二重織物生機を得た。この生機を精錬・リラックス処理後、テンターを用いて190℃で熱セットを行い、続いて液流染色機を用いて蛍光黄色の分散染料で染色加工を行った後、テンターを用いて160℃で熱セットを行い、経糸密度146本/インチ、緯糸密度132本/インチの高視認性の重ね織物を得た。該織物の表組織は経糸密度73本/インチ、緯糸密度本66/インチであり、表組織のカバーファクターを算出したところ23.3であった。
実施例2
実施例1において、緯糸として、実施例1で用いた仮撚加工糸のみを用いかつ仮撚加工糸の双糸と単糸として、双糸:単糸=1:1とのあるように緯糸打ち込みを行い、かつ、双糸が表組織を構成するようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、表組織および裏組織ともに平織組織である経緯二重織物生機を得た。また、得られた経緯二重織物生機を、蛍光燈色の分散染料で染色加工を行った以外は実施例1と同様にして、経糸密度146本/インチ、緯糸密度98本/インチの高視認性の重ね織物を得た。該織物の表組織は、経糸密度73本/インチ、緯糸密度49本/インチであり、表組織のカバーファクターは23.9であった。
実施例3
実施例1において、密度規格を調整により変更したこと以外は実施例1と同様にして、経糸密度130本/インチ、緯糸密度110本/インチの織物を得た。該織物の表組織は、経糸密度65本/インチ、緯糸密度本55/インチであり、表組織のカバーファクターは20.1であった。
実施例4
実施例3で得られた織物を、さらに蛍光黄色の反応染料で染色加工を行い、実施例4の織物を得た。すなわち、実施例4の織物は、蛍光黄色の分散染料で染色加工と蛍光黄色の反応染料で染色加工とが施されたものであり、分散染料によってポリエステル繊維は、良好に染色され、一方、分散染料ではほぼ染色されなかった綿繊維は、反応染料により染色された。この織物は、経糸密度130本/インチ、緯糸密度110本/インチであり、表組織は、経糸密度65本/インチ、緯糸密度本55/インチ、表組織のカバーファクターは20.1であった。
比較例1
実施例1において、経糸として、綿紡績糸に代えて実施例1で用いた仮撚加工糸を用いた以外は実施例1と同様にして、経糸密度142本/インチ、緯糸密度132本/インチの織物を得た。該織物の表組織は、経糸密度71本/インチ、緯糸密度66本/インチであり、表組織のカバーファクターは23.0であった。
比較例2
実施例1において、仮撚加工糸に含有する酸化チタンの量が2重量%である仮撚加工糸を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、経糸密度146本/インチ、緯糸密度132本/インチの織物を得た。該織物の表組織は、経糸密度73本/インチ、緯糸密度本66/インチであり、表組織のカバーファクターは23.3であった。
比較例3
実施例1において、導電糸を用いず、導電糸に代えて仮撚加工糸を用いたこと、染色加工の際に、蛍光ではない黄色の分散染料で染色加工を行ったこと以外は実施例1と同様にして、経糸密度146本/インチ、緯糸密度132本/インチの織物を得た。該織物の表組織は、経糸密度73本/インチ、緯糸密度本66/インチであり、表組織のカバーファクターは23.3であった。
得られた実施例1〜5及び比較例1〜3の織物生地について、前述した諸性能を評価した。その結果を表3に示す。
実施例1〜4については、良好に蛍光色を発現し、RMA、RMD、帯電電荷量の何れにおいても優秀な成績を示した。着用試験においても蒸れが少なく快適性に優れ、疲労も少ないと高評価が出ており、かつ視認性も良好で、高視認性安全作業衣用の生地として好適であることが実証された。特に、実施例1、2、4は、色度・輝度が良好で、視認性に優れていた。また、実施例1、2、3は、耐光堅牢度に特に優れていた。なお、実施例3は、表組織のカバーファクター22以下であり、表側より綿密に観察したところ綿繊維が露出していることが確認できたものであり、表2に示す色度座標が指定範囲から外れていた。実施例4は、反応染色も施したものであり耐光堅牢度の評価が5未満となった。
一方、比較例1は、綿繊維を含まなかったため、RMA、RMDが不十分であり、結果として着用感としての快適性が劣っていた。
比較例2は、表組織を構成する仮撚加工糸に含まれる酸化チタンの量が1質量%を大きく超えており、耐光堅牢度が劣っていた。したがって、長期間に亘り、太陽光が照射される屋外作業の作業着に適用すると、視認性の低下が懸念されるものであった。
比較例3は、蛍光染料を使用していなかったため、最小輝度係数が大きく劣り、本発明が目的とする視認性を有するものではなかった。また、導電性糸を用いなかったため帯電電荷量が大きく、静電気によるアーク放電を起こす懸念があった。

Claims (9)

  1. 表組織が経糸および緯糸ともにポリエステル繊維によって構成され、裏組織がセルロース系繊維を構成繊維として含んでなる重ね組織により構成される織物であり、
    表組織を構成するポリエステル繊維は二酸化チタンの含有量が多くとも1質量%であり、
    表組織のカバーファクターが22以上であり、
    少なくとも表組織を構成するポリエステル繊維が、蛍光黄色、蛍光橙色あるいは蛍光赤色のいずれかの色彩に着色されてなることを特徴とする高視認性重ね織物。
  2. 請求項1記載の重ね織物において、表側から測定する色度が、それぞれの色相において、表1に示すXY色度座標の各4点にて区画される範囲内にあり、輝度係数が表1に示す最小輝度係数の数値以上であることを特徴とする請求項1記載の高視認性重ね織物。
  3. カーボンアーク灯およびキセノンランプを光源とする耐光堅牢度がいずれも5級もしくは5級以上であることを特徴とする請求項1または2記載の高視認性重ね織物。
  4. 織物が経緯二重織物であり、裏組織には、経糸もしくは緯糸のいずれか一方にセルロース系繊維を配し、他方にポリエステル繊維を配し、該ポリエステル繊維が、蛍光黄色、蛍光橙色あるいは蛍光赤色のいずれかの色彩に着色されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の高視認性重ね織物。
  5. 織物が、表組織および裏組織がともに平織である二重織であることを特徴とする請求項4記載の高視認性重ね織物。
  6. 織物が、分散染料のみによって蛍光黄色、蛍光橙色あるいは蛍光赤色のいずれかに染色加工されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の高視認性重ね織物。
  7. 織物の吸湿能力(RMA)および放湿能力(RMD)が共に0.3以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の高視認性重ね織物。
  8. 帯電電荷密度が7μC/m2以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の高視認性重ね織物。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の高視認性重ね織物により構成される高視認性衣服。
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