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JP6034071B2 - 柱梁接合構造及び柱梁接合方法 - Google Patents

柱梁接合構造及び柱梁接合方法 Download PDF

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JP6034071B2 JP2012143258A JP2012143258A JP6034071B2 JP 6034071 B2 JP6034071 B2 JP 6034071B2 JP 2012143258 A JP2012143258 A JP 2012143258A JP 2012143258 A JP2012143258 A JP 2012143258A JP 6034071 B2 JP6034071 B2 JP 6034071B2
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Description

本発明は、柱梁接合構造及び柱梁接合方法に関する。
従来、現地でH形鋼製の梁を鋼製の柱に接合する場合、柱フランジから突出されたガセットプレートと梁のウェブをボルト接合し、上フランジ及び下フランジの端部に設けられたフランジ開先で、柱フランジ(通しダイアフラム形式又は外ダイアフラム形式の接合部ではダイアフラム)と突合せ溶接していた。
このとき、柱フランジ(通しダイアフラム形式又は外ダイアフラム形式の接合部ではダイアフラム)と下フランジの突合せ溶接時には、下フランジの上面と接するウェブの端面に予めスカラップを形成し、下フランジの溶接不良をなくしていた。
しかし、スカラップは、ウェブの断面を欠損させることから、柱梁接合部のせん断耐力を低下させてしまう。更に、ガセットプレートによる柱フランジへのウェブの接合は、ガセットプレートの幅が、スカラップを塞ぐのを避けるため上下方向に狭められ、ウェブから柱へ伝達する曲げモーメントが低下してしまう。
そこで、スカラップを形成せずに柱鉄骨のフランジに梁を接合する技術が提案されている(特許文献1)。
特許文献1に記載の梁鉄骨と柱鉄骨の接合方法は、梁鉄骨の上フランジ及び下フランジの端部に開先を形成し、上フランジ及び下フランジに取り付けた裏当て金を柱鉄骨のフランジに突き当て、柱鉄骨のフランジと、上フランジ及び下フランジの開先との間に5mm〜15mmのルート間隔を設けた状態で、柱鉄骨のフランジから突設されたガセットプレートに梁鉄骨のウェブをボルト接合した後、柱鉄骨のフランジと梁鉄骨の上フランジ及び下フランジの開先を突合せ溶接する。
しかし、特許文献1の接合方法では、梁鉄骨のウェブにスカラップは形成されていないものの、ガセットプレートを用いて梁鉄骨のウェブが、柱鉄骨のフランジにボルト接合されている。
このため、ガセットプレートの幅が、下フランジの溶接作業を確保するため上下方向に狭められ、ウェブから柱へ伝達する曲げモーメントが低下してしまう。
特開平8−311988号公報
本発明は、上記事実に鑑み、ガセットプレートで曲げモーメントを伝達させなくても、ウェブから柱フランジへ曲げモーメントを伝達させることのできる、現地施工による柱梁接合構造、及び柱梁接合方法を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明に係る柱梁接合構造は、鋼製の柱と、ウェブの端面に形成されたウェブ開先、及び上フランジと下フランジの端面に形成され上方へ開口するフランジ開先が設けられ、前記ウェブ開先と前記柱の柱フランジが突合せ溶接され、前記柱が内ダイアフラム形式の場合には前記フランジ開先と前記柱フランジが突合せ溶接され、前記柱が通しダイアフラム形式又は外ダイアフラム形式の場合には前記フランジ開先とダイアフラムが突合せ溶接されたH形鋼製の梁と、を有し、前記ウェブの前記端面の下端部に、前記フランジ開先の幅と等しい幅の切欠きが形成されていることを特徴としている。
請求項1に記載の発明によれば、ウェブの端面にウェブ開先が形成され、ウェブ開先と柱フランジが突合せ溶接される。これにより、ガセットプレートで曲げモーメントを伝達させなくても、ウェブと柱フランジの突合せ溶接部により、ウェブに作用する曲げモーメントを柱に伝達させることができる。このとき、ウェブにスカラップを設けた場合には、溶接金属で埋め戻すことで、ウェブの上端部から下端部までの全範囲を、柱フランジに突合せ溶接することができる。
また、上フランジと下フランジの端面には上方へ開口するフランジ開先が形成され、柱が内ダイアフラム形式の場合にはフランジ開先と柱フランジが突合せ溶接される。一方、柱が通しダイアフラム形式又は外ダイアフラム形式の場合にはフランジ開先とダイアフラムが突合せ溶接される。
なお、現地で下フランジを上方から突合せ溶接すると、ウェブの端部形状によっては、ウェブの板厚幅の未溶接部分が下フランジとの交差部に発生するが、ウェブを柱フランジに突合せ溶接しているので、梁の引張強度に問題は生じない。
また、ウェブ端部と下フランジとの交差部に発生する未溶接部は、ウェブの下部端面に開先を形成することでなくすことができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の柱梁接合構造において、前記柱フランジから突出され、前記ウェブがボルトで留められたガセットプレートと、前記上フランジ及び前記下フランジから突出され、前記柱が内ダイアフラム形式の場合には前記上フランジ及び前記下フランジの端面と前記柱フランジとのルート間隔を塞ぎ、前記柱が通しダイアフラム形式又は外ダイアフラム形式の場合には前記上フランジ及び前記下フランジの端面と前記ダイアフラムとのルート間隔を塞ぐ裏当て金と、を有することを特徴としている。
請求項2に記載の発明によれば、ウェブをガセットプレートで仮止めした状態で、柱フランジと梁の突合せ溶接ができる。このとき、ガセットプレートは、裏当て金としても機能するので、現地で、柱フランジとウェブとの突合せ溶接ができる。また、裏当て金により、柱が内ダイアフラム形式の場合には上フランジ及び下フランジの端面と柱フランジとのルート間隔が塞がれ、柱が通しダイアフラム形式又は外ダイアフラム形式の場合には上フランジ及び下フランジの端面とダイアフラムとのルート間隔が塞がれる。
これにより、現地で、柱フランジ又はダイアフラムとの突合せ溶接ができる。
請求項3に記載の発明に係る柱梁接合方法は、鋼製の柱の柱フランジにガセットプレートを取り付け、H形鋼製の梁の上フランジ及び下フランジの端面にフランジ開先を設け、ウェブの端面にウェブ開先を設け、前記上フランジ及び前記下フランジから突出され、前記柱が内ダイアフラム形式の場合には、前記上フランジ及び前記下フランジの端面と前記柱フランジとのルート間隔を塞ぎ、前記柱が通しダイアフラム形式又は外ダイアフラム形式の場合には、前記上フランジ及び前記下フランジの端面とダイアフラムとのルート間隔を塞ぐ裏当て金を取り付け、前記柱フランジと前記ウェブの先端とのルート間隔を維持した状態で、前記梁を前記ガセットプレートで仮止めし、前記ガセットプレートを裏当て金として、前記柱フランジと前記ウェブ開先を突合せ溶接し、前記上フランジ及び前記下フランジの上方から、前記柱が内ダイアフラム形式の場合には、前記フランジ開先と前記柱フランジを突合せ溶接し、前記柱が通しダイアフラム形式又は外ダイアフラム形式の場合には、前記フランジ開先と前記ダイアフラムを突合せ溶接することを特徴としている。
これにより、現地で柱フランジとウェブ、及び柱が内ダイアフラム形式の場合には、柱が内ダイアフラム形式の場合には、フランジ開先と柱フランジを突合せ溶接し、柱が通しダイアフラム形式又は外ダイアフラム形式の場合には、フランジ開先と柱ダイアフラムを突合せ溶接することができる。
このとき、ウェブにスカラップを設けた場合には、溶接金属で埋め戻すことで、ウェブの上端部から下端部までの全範囲を、柱フランジに突合せ溶接することができる。
本発明は、上記構成としてあるので、ガセットプレートで曲げモーメントを伝達させなくても、ウェブから柱フランジへ曲げモーメントを伝達させることのできる、現地施工による柱梁接合構造、及び柱梁接合方法を提供することができる。
は本発明の第1の実施形態に係る柱梁接合構造の基本構成を示す側面図である。 (a)は本発明の第1の実施形態に係る柱梁接合構造における上フランジの開先を示す拡大図であり、(b)は下フランジの開先を示す拡大図であり、(c)はウェブの開先を示す拡大図である。 (a)は従来の現場施工に係る柱梁接合構造の基本構成を示す側面図であり、(b)は平面図である。 (a)は本発明の第1の実施形態に係る柱梁接合構造における下フランジの開先を示す斜視図であり、(b)は溶接前の柱フランジとウェブ及び下フランジの開先の接合部を示す図である。 (a)は本発明の第1の実施の形態に係る柱梁接合構造におけるウェブと下フランジの正面図であり、(b)はウェブと下フランジの側面図である。 (a)は本発明の第1の実施の形態に係る柱梁接合構造におけるウェブと下フランジの正面図であり、(b)はウェブと下フランジの側面図である。 (a)は本発明の第1の実施の形態に係る柱梁接合構造におけるウェブと下フランジの正面図であり、(b)はウェブと下フランジの側面図である。 (a)は本発明の第1の実施の形態に係る柱梁接合構造におけるウェブと下フランジの正面図であり、(b)はウェブと下フランジの側面図である。 (a)は本発明の第1の実施の形態に係る柱梁接合構造におけるウェブと下フランジの正面図であり、(b)はウェブと下フランジの側面図である。 (a)は本発明の第2の実施の形態に係る柱梁接合構造におけるウェブと下フランジの正面図であり、(b)はウェブと下フランジの側面図である。 (a)は本発明の第2の実施の形態に係る柱梁接合構造におけるウェブと下フランジの正面図であり、(b)はウェブと下フランジの側面図である。 (a)は本発明の第3の実施の形態に係る柱梁接合構造におけるウェブと下フランジの正面図であり、(b)はウェブと下フランジの側面図である。 (a)は本発明の第3の実施の形態に係る柱梁接合構造におけるウェブと下フランジの正面図であり、(b)はウェブと下フランジの側面図である。 (a)は本発明の第4の実施の形態に係る柱梁接合構造におけるウェブと下フランジの斜視図であり、(b)は柱フランジとウェブ及び下フランジの側面図である。 (a)は本発明の第5の実施の形態に係る柱梁接合構造におけるウェブと下フランジの斜視図であり、(b)は溶接前の柱フランジとウェブ及び下フランジの側面図であり、(c)は溶接後の柱フランジとウェブ及び下フランジの側面図である。 (a)は本発明の柱梁接合構造の実証実験装置を示す側面図であり、(b)は試験体位置での断面図である。 は本発明の柱梁接合構造の実証実験で使用した試験体の実験パラメータの一覧を示す図である。 (a)(b)(c)(d)は、いずれも本発明の柱梁接合構造の実証実験で使用した試験体の柱フランジとウェブ及び下フランジの接合構成を示す側面図である。 は本発明の柱梁接合構造の実証実験結果を示す特性図である。 (a)は本発明の第6の実施形態に係る柱梁接合構造における側面図であり、(b)は他の展開例を示す側面図である。 (a)は本発明の第7の実施形態に係る柱梁接合構造における水平断面図であり、(b)はAA線の部分拡大図である。
(第1の実施形態)
図1、2に示すように、第1の実施形態に係る柱梁接合構造10は、鋼製の柱12の柱フランジ30に、H形鋼製の梁14が突合せ溶接された構成である。ここに、柱12は内ダイアフラム方式の柱であり、柱フランジ30と梁14との突合せ溶接作業は、現地で行われる。
図1は柱梁接合構造10の側面図を示し、図2(a)は梁14の上フランジ16と柱フランジ30の接合部(丸く囲んだA部)の拡大図を示し、図2(b)は梁14の下フランジ17と柱フランジ30の接合部(丸く囲んだB部)の拡大図を示し、図2(c)は梁14のウェブ18と柱フランジ30の接合部(C−C線視図)の拡大図を示す。
なお、各図におけるドットが施された範囲は溶接部24を示し、図2(a)〜図2(c)の一部には、溶接部24を取り除いた溶接前の状態が記載されている。
図1、図2(a)に示すように、上フランジ16の端部の上面側には、上方へ開口する開先16Fが形成されている。開先16Fの傾斜角度α(開先16Fの傾斜面がフランジ16の表面となす角度)は、一般的に実施されている約35度としている。なお、本実施形態においては、特に規定する場合を除き、下フランジ17の開先17F及びウェブ18の開先18Fも、傾斜角度は約35度とされている。
上フランジ16の端部下面には、柱フランジ30へ向けて、鋼板製の裏当て金26が接合されている。裏当て金26は、上フランジ16の端面と柱フランジ30との隙間48(ルート間隔)を塞ぎ、裏当て金26の一方の端部が柱フランジ30に突き当てられている。この状態で上フランジ16が、上方から柱フランジ30に突合せ溶接され、溶接部24U(ドットで示す範囲)が形成される。
図1、図2(b)に示すように、下フランジ17端部の上面側にも、上方へ開口する開先17Fが形成され、下フランジ17の端部下面には、柱フランジ30へ向けて、鋼板製の裏当て金26が接合されている。裏当て金26は、下フランジ17の端面と柱12の柱フランジ30との隙間49(ルート間隔)を塞ぎ、一方の端部が柱フランジ30に突き当てられている。この状態で下フランジ17が、上方から柱フランジ30に突合せ溶接され、溶接部24D(ドットで示す範囲)が形成される。
また、図1、図2(c)に示すように、柱フランジ30には、梁14へ向けて突出するガセットプレート20が溶接接合されている。ガセットプレート20の側面には、ウェブ18の側面が重ねられ、複数のボルト22で接合されている。
ガセットプレート20は、溶接接合時の裏当て金の役目も果たし、ウェブ18の端面と柱12の柱フランジ30との隙間47(ルート間隔)を塞いでいる。この状態でウェブ18が、柱12の柱フランジ30に突合せ溶接され、溶接部24W(ドットで示す範囲)が形成されている。
上述した接合構造とすることにより、ウェブ18をガセットプレート20で接合(仮止め)した状態で、柱フランジ30と梁14との突合せ溶接ができる。このとき、ガセットプレート20は、裏当て金としても機能するので、現地で、柱フランジ30とウェブ18との突合せ溶接が容易となる。
また、裏当て金26により、上フランジ16及び下フランジ17の端面と柱12の柱フランジ30とのルート間隔48、49が塞がれている。これにより、現地での、柱12の柱フランジ30と上フランジ及び下フランジとの突合せ溶接が容易となる。
ここで、従来の柱梁接合構造39との相違点について説明する。
図3(a)には、従来から現場作業で採用されている、柱梁接合構造39の側面図が示されている。
ここに、柱12の柱フランジ30には、柱フランジ30から突出してガセットプレート37が取り付けられている。ガセットプレート37の側面と梁33のウェブ36の側面が重ねられ、ガセットプレート37とウェブ36が複数の高力ボルト22で摩擦接合されている。
また、ウェブ36の柱フランジ30側端部の上下(上フランジ34及び下フランジ35とガセットプレート37の上下端との間)には、扇形に切りかかれたスカラップ38が設けられている。
本実施形態と同様に、上フランジ34及び下フランジ35の端面には、上方へ開口する開先33F、34Fが設けられ、上フランジ34及び下フランジ35の端部下面には、裏当て金26がそれぞれ取り付けられている。
この状態で、上フランジ34及び下フランジ35は、柱フランジ30と上方から突合せ溶接で接合されている(ドットが付された溶接部24U、24D参照)。
即ち、従来の柱梁接合構造39は、ウェブ36がガセットプレート37に高力ボルト接合され、上フランジ34及び下フランジ35が、柱フランジ30に溶接接合された混用接合形式であった。
従来の柱梁接合構造39の問題点としては、ウェブ36に設けられたスカラップ38により断面欠損が生じ、柱梁接合部のせん断耐力を低下させる点。更に、スカラップ38によりガセットプレート37の上下方向の寸法が狭められ、ウェブ36から柱12への曲げモーメントの伝達能力が低下するという点があった。
このため、図3(b)に示すように、上フランジ34と下フランジ35の柱フランジ30側端部に、拡幅部34K及び35Kを形成し(下フランジ35の拡幅部35Kは図示されていない)、拡幅部34K及び35Kの形成を始める拡幅起点部Mを最大応力位置とすることにより、梁33から柱12への曲げモーメントの伝達能力を向上させている。
これにより、梁端フランジの現場溶接部での破断を回避している。
しかし、この方法は、フランジ幅が一定の圧延H形鋼梁に対してはフランジ木端面に拡幅プレートを溶接接合する手間が生じる。また、組立H形断面梁に対しては、拡幅部を一体化させた鋼板を切り出すため歩留まりが悪化する等、製作上のコストアップとなる。更に、柱幅とフランジ幅の関係で拡幅できない場合もある。
一方、ガセットプレート37の上下にスカラップを設けない、ノンスカラップ工法も提案されている。しかし、上述した特許文献1のノンスカラップ工法は、工場内で溶接接合されるため、下フランジには下方へ開口した開先を設け、柱12を横にして下フランジと柱フランジを溶接接合している。
しかし、現場作業では、溶接精度を確保する観点から、下フランジにも上方へ開口する開先を設ける必要があり、特許文献1のノンスカラップ工法は採用できない。
このため、図3(a)に示すように、開先35Fの全幅に渡り完全溶け込み溶接を行うには、ウェブ36との交差部において、運棒の移動範囲を確保するために、ウェブ36にスカラップ38を設ける必要がある。
これに対し、本実施の形態では、ウェブ18の端面に開先18Fを形成し、ウェブ18と柱12の柱フランジ30を突合せ溶接する。このとき、ウェブ18には、スカラップを設けていないので、ウェブ18の上端部から下端部までの全範囲を突合せ溶接できる。
これにより、柱梁接合部のせん断耐力を低下させることなく、ウェブ18に作用する曲げモーメントを、柱12に伝達することができる。
即ち、現地作業で、柱12の柱フランジ30と、上フランジ16、下フランジ17及びウェブ18の端面を、柱フランジ30に、スカラップを設けずにそれぞれ突合せ溶接することができる。この結果、スカラップ加工による梁14のせん断耐力の低下が抑制される。また、圧延H形鋼への適用や鉄骨製作などで問題となる梁端拡幅工法を省略できる。
更に、現場接合のノンスカラップ工法は、ノンブラケット形式とすることができ、鉄骨製作や現場溶接施工における生産性・施工性に優れている。
また、以下に述べるように、ウェブ位置でのフランジ現場溶接部にある程度の溶接欠陥を許容でき、非破壊検査の管理が容易となる。このとき、溶接欠陥を小さくするためにウェブ18に切削部を設けても良いが、切削部は微小寸法でよく溶接量の節約となる。
次に、下フランジ及びウェブ下面の未溶接部について、図4〜図9を用いて説明する。
図4(a)の斜視図に示すように、溶接組立H形鋼の場合、部材段階で下フランジ17に開先17Fを形成し、ウェブ18にも部材段階で開先18Fを形成し、それらを溶接してH形鋼の梁14が形成される。
図4(b)は、溶接前の柱12と梁14の位置関係を示す側面図である。ガセットプレート20で仮止めされたウェブ18に、スカラップを設けずに下フランジ17の開先17Fを柱12と溶接接合した場合、下フランジ17の開先17Fとウェブ18の端部下面18Sに、一部未溶接部56が発生する。
未溶接部の具体例を図5〜図9に示す。図5(a)〜図9(a)は、いずれも図4(b)のX−X線視図であり、図5(b)〜図9(b)は側面図である。図5(a)〜図9(a)に示す一点鎖線R1、R2の傾斜は溶接時の運棒(図示せず)の保持角度を示し、一点鎖線R1、R2の位置は、溶接時の運棒の移動限度を示している。
図5(a)、図5(b)に示すように、ウェブ18にはスカラップが設けられていないため、矢印X1の方向から溶接を進めた運棒(図示せず)は、一点鎖線R1で示す角度を保持して移動され、ウェブ18の下端部と当接する位置が限界となり、それ以上進めない。同様に、矢印X2の方向から溶接を進めた運棒(図示せず)は、一点鎖線R2で示す角度を保持して移動され、ウェブ18の下端部と当接する位置が限界となり、それ以上進めない。
このとき、ウェブ18を仮止めするガセットプレート20の下端部は、一点鎖線R2で示す運棒のX2方向の移動に支障がない位置に設けられている。
即ち、ウェブ18の下面18Sに、ウェブ18の板厚W1と同じ幅S1で、一点鎖線R1とR2の交点を最下点とする三角柱状の未溶接部40(ドット部分)が生じる。なお、未溶接部40は、後述するように、ウェブ18が柱フランジ30に溶接接合されているため、未溶接部40の最大幅S1がウェブ18の板厚W1と同等程度であれば、梁14のせん断耐力の低下は見られない。
図6(a)、図6(b)に示すように、ウェブ18の下面18Sを切り欠いて、下フランジ17の上面からの高さh1だけ上方へ移動させることにより、未溶接部41も高さh1だけ上方へ移動し、下フランジ17の開先17Fの未溶接部分を縮小させることができる。
即ち、一点鎖線R1、R2で示す溶接時の運棒の保持角度と移動限度は、図5の場合と同じであるから、ウェブ18の下部端面が上方へ高さh1だけ移動すれば、未溶接部41も上方へ高さh1だけ移動する。この結果、下フランジ17の開先17Fの未溶接部41を小さくできる。
図7(a)、図7(b)に示すように、ウェブ18の下面18Sを切り欠いて、更に上方へ移動させることにより(下フランジ17の上面からの高さh2)、下フランジ17の開先17Fの未溶接部分を消滅させることができる。
即ち、一点鎖線R1、R2で示す、溶接時の運棒の保持角度と移動限度は、図5の場合と同じであるから、ウェブ18の下部端面の位置の上方への移動寸法h2に応じて、未溶接部42が上方へh2だけ移動する。この結果、移動寸法h2が未溶接部42の高さh3より大きいとき、下フランジ17の開先17Fの未溶接部42は消滅する。
図8(a)、図8(b)に示すように、ウェブ18の下面18Sの切り欠き加工においては、スカラップ46(扇形部)を設けてもよい。これによりスカラップカッターを用いた加工が可能となり、加工作業が容易となる。なお、スカラップ46を、下フランジの溶接接合後に、溶接金属で盛って消滅させることで、スカラップ46を設けることによるせん断耐力の低下等の弊害を解消することができる。
ここに、埋戻しの手間を考えた場合、スカラップの高さh4は、可能な限り小さくするのが望ましい。現状のスカラップカッターを用いた場合には、最小の高さh4(直径)は13mmである。しかし、必要に応じて高さh4の小さいスカラップカッターを製作することで、高さh4を更に小さくすることができる。
スカラップの高さh4が未溶接部42の高さ寸法h3より大きいとき、下フランジ17の開先17Fの未溶接部42は消滅する。
図9(a)、図9(b)に示すように、ウェブ18を仮止めするガセットプレート20の下端部が下フランジの近傍まで伸びて、一点鎖線R2で示す運棒のX2方向の移動を妨げる場合には、ガセットプレート20の下面20Sとウェブ18の下面18Sの両方に、未溶接部44が発生する。
この場合、ウェブ18の板厚W1とガセットプレート20の板厚W2が合計されるため、未溶接部の幅S2が大きくなる。この結果、未溶接部44の容積も大きくなる。
この場合も、上述した場合と同様に、ウェブ18の下端部とガセットプレート20の下端部を、下フランジ17の上面から上方へ移動させる(距離h5を大きくする)ことで未溶接部44を減少させることができる。
なお、未溶接部44を、フランジ17の開先17Fからウェブ18側へ移動させることは、スカラップ高さh5を大きくすることになる。この結果、スカラップ46内の空間が大きくなり、スカラップ46に盛る溶接量や溶接作業量が増える等の問題を生じる。このような場合には、後述する第2の実施形態を採用するのが望ましい。
次に、本実施形態に係る柱梁接合構造10の柱梁の接合方法について、図1〜9を用いて説明する。なお、それぞれの構成要素については、既に説明しているので詳細な説明は省略する。
先ず、鋼製の柱12の柱フランジ30に、柱フランジ30から梁14の方向へ突出させて、仮止め用のガセットプレート20を取り付ける。
次に、H形鋼製の梁14の上フランジ16、下フランジ17、及びウェブ18の端面に、それぞれ開先16F、17F、18Fを設ける。このとき、組立てH形鋼では、開先16F、17F、18Fを形成してから組み立てる。既成H形鋼では、ウェブ18にスカラップ(ミニスカラップ)46を設けて、開先16F、17F、18Fを加工する。
次に、上フランジ16及び下フランジ17の下部端面に、柱フランジ30と、開先16F及び開先17Fとのルート間隔48を塞ぐ裏当て金26を取り付ける。
次に、柱フランジ30と開先16F、17Fとのルート間隔48、49を維持した状態で、梁14をガセットプレート20で仮止めする。梁14を仮止めした状態で、柱フランジ30と上フランジ16、柱フランジ30と下フランジ17、及び柱フランジ30とウェブ18を突合せ溶接する。
このとき、柱フランジ30と上フランジ16、及び柱フランジ30と下フランジ17は上方から溶接作業を行う。また、柱フランジ30とウェブ18の突合せ溶接時には、ガセットプレート20を、ルート間隔47を塞ぐ裏当て金として利用する。その後、ミニスカラップ46を形成した場合には埋め戻す。
以上の手順により、ウェブ18にスカラップを設けずに、現地作業で、柱フランジ30と、上フランジ16、下フランジ17及びウェブ18の端面をそれぞれ突合せ溶接することができる。
(第2の実施形態)
図10、図11に示すように、第2の実施形態に係る柱梁接合構造50は、第1の実施形態で説明した柱梁接合構造10における、ウェブ52の柱側端面の下端部に開先を形成した構成である。第1の実施形態と同一部分には同じ番号を付して、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
図10に示すように、ウェブ52の柱側端面の下端部に設けられた開先52Fは、一点鎖線R1で示す溶接時の運棒の保持角度と同じ角度で、ウェブ52の両側から斜めにカットされた構成である。このとき、開先52Fの矢印P方向視図はV字状とされ、V字状にカットされた開先52Fの先端は、下フランジの上面より高さh7だけ高くされている。
これにより、矢印X1の方向から、一点鎖線R1の傾斜で溶接しながら運棒(図示せず)を移動させた場合、ウェブ52のV字状にカットされた下端部に運棒が当接する位置(一点鎖線R1で示す位置)が限界となる。
一方、一点鎖線R2は矢印X2の方向から溶接した場合、ウェブ52のV字状にカットされた下端部と運棒が当接する位置(一点鎖線R2で示す位置)が限界となる。
この結果、ウェブ52の下部に設けたV字状の開先52Fにより、下フランジ17の開先17Fの未溶接部、及びウェブ52の下面の未溶接部を解消させることができる。なお、ウェブ52を仮止めするガセットプレート20の下端部は、一点鎖線R2で示す運棒のX2方向の移動に支障がない位置に設けられている。
図11(a)、図11(b)に示すように、ウェブ52を仮止めするガセットプレート58の下端部が下フランジ17側に伸びて、一点鎖線R2で示す運棒のX2方向の移動に支障を生じる場合には、ガセットプレート58の下端部を斜めに切り欠けばよい。
このとき、ガセットプレート58の下端部を、矢印P方向からみたとき、断面形状がカタカナのレ字状にカットし、ウェブ52とガセットプレート58重ねた状態でV字状とする(図11(a)参照)。
これにより、矢印X1の方向から溶接した場合、運棒(図示せず)の移動範囲は、ウェブ52のV字状にカットされた下端部と当接する位置(一点鎖線R1で示す位置)が限界となる。また、矢印X2の方向から溶接した場合、運棒(図示せず)の移動範囲は、ガセットプレート58のカタカナのレ字状にカットされた傾斜部、及びウェブ52のV字状にカットされた下端部と当接する位置(一点鎖線R2で示す位置)が限界となる。
この結果、ガセットプレート58及びウェブ52に邪魔されることなく、溶接時の運棒の移動範囲を拡大でき、下フランジ17の開先17F、及びウェブ52の下面の未溶接部を削減できる。
なお、図11(c)に示すように、ウェブ53の下端部のV字状のカット部53Fは、下フランジ17の上面から、必要な高さh7を先端部に確保した位置から、X軸の方向へ直線状に減少する傾斜で斜めに形成してもよい。
これにより、ウェブ53に邪魔されることなく、溶接時の運棒の移動範囲を拡大でき、下フランジ17の開先17Fの未溶接部分、及びウェブ52の下面の未溶接部分を解消することができる。他の構成は第1の実施形態と同様であり、説明は省略する。
(第3の実施形態)
図12、図13に示すように、第3の実施形態に係る柱梁接合構造60は、第2の実施形態で説明した柱梁接合構造50における、ウェブ54の下端部の開先54Fの断面形状を、カタカナのレ字状にした構成である。第1の実施形態と同一部分には同じ番号を付して、第2の実施形態との相違点を中心に説明する。
図12(a)に示すように、ウェブ54の下端部が、一方向からのみ一点鎖線R1で示す溶接時の運棒の保持角度と同じ角度でカットされ、カタカナのレ字状の開先54Fとされている。このとき、カタカナのレ字状にカットされた開先54Fの先端は、下フランジの上面より高さh8だけ高くされている。
これにより、一点鎖線R1はX1の方向から溶接した場合、ウェブ54のカタカナのレ字状にカットされた下端部と当接する位置が限界となる。また、一点鎖線R2はX2の方向から溶接した場合、ウェブ54のカタカナのレ字状にカットされた下端部と当接する位置が限界となる。
即ち、ウェブ52の下部に設けたカタカナのレ字状の開先52Fにより、下フランジ17の開先17Fの未溶接部を解消させることができる。なお、ウェブ54を仮止めするガセットプレート20の下端部は、一点鎖線R2で示す運棒のX2方向の移動に支障がない位置に設けられている。
図13(a)、図13(b)に示すように、ウェブ54を仮止めするガセットプレート58の下端部が下フランジ17側に伸びて、一点鎖線R2で示す運棒のX2方向の移動に支障を生じる場合には、ガセットプレート58の先端を斜めに切り欠けばよい。
即ち、ウェブ54の下端面に設けられた下フランジ側の開先54Fは、矢印Pの方向から見たとき、カタカナのレ字状に斜めにカットされ、ガセットプレート58の下端部も、ウェブ54と反対向きにカタカナのレ字状にカットされ、ウェブ54とガセットプレート58を重ねた状態でV字状とされている。
これにより、矢印X1の方向から、一点鎖線R1の傾きで溶接しながら運棒(図示せず)を移動させた場合、ウェブ54のカタカナのレ字状にカットされた傾斜部54Fと当接する位置(一点鎖線R1の位置)が限界となる。また、矢印X2の方向から、一点鎖線R2の傾きで溶接しながら運棒(図示せず)を移動させ場合、ガセットプレート58のカタカナのレ字状にカットされた傾斜部58Fと当接する位置(一点鎖線R2の位置)が限界となる。
この結果、ガセットプレート58及びウェブ54に邪魔されることなく、溶接時の運棒の移動範囲を拡大でき、下フランジ17の開先17Fの未溶接部分、及びウェブ54の下面の未溶接部分を削減できる。
このとき、ウェブの柱側端面の下端面の高さh8を高くすれば、下フランジの開先とウェブの柱側端面の下端面の間の空間が大きくなり、溶接時の作業性が向上する。
他の構成は第2の実施形態と同様であり、説明は省略する。
(第4の実施形態)
図14に示すように、第4の実施形態に係る柱梁接合構造70は、鋼製の柱12と、鋼製の柱12の柱フランジ30に突合せ溶接されるH形鋼製の梁71を有している。梁71の下フランジ74には、上向きの開先74Fが設けられ、ウェブ72には開先72Fが設けられている。
第1の実施形態とは、ウェブ72の開先72Fの下端部が、下フランジ74の開先74Fの下端部(P点)まで達している点で相違する。第1の実施形態と同一部分には同じ番号を付して、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
図14(a)は梁71の接合部の斜視図を示し、図14(b)は柱梁接合構造70の側面図を示している。
図14(a)に示すように、下フランジ74の開先74Fは、開先74Fの加工時にウェブ72との交差部を切削せず、ウェブ72の両側に下フランジ74の開先74Fを形成する。その後、ウェブ72の端部に、柱12の柱フランジ30と突合せ溶接するための開先72Fを加工する。
この結果、ウェブ72の下端は、下フランジ74の下面(P点)まで伸びて、ウェブ72の開先72F形状をフランジ74の開先74F内にまで形成することができる。
これにより、ウェブ72と、柱12の柱フランジ30との接合部24Wの接合長さを長く確保することができ、柱梁の接合強度を高めることができる。
他の構成は第1の実施形態と同様であり、説明は省略する。
(第5の実施形態)
図15に示すように、第5の実施形態に係る柱梁接合構造76は、鋼製の柱12と、鋼製の柱12の柱フランジ30に突合せ溶接されるH形鋼製の梁68を有し、梁68の下フランジ75には、上向きの開先75Fが設けられ、ウェブ78には開先78F1、78F2が設けられている。
第4の実施形態とは、ウェブ78に設けられた開先78F1、78F2の形状が相違する。第4の実施形態と同一部分には同じ番号を付して、第4の実施形態との相違点を中心に説明する。
図15(a)は梁68の接合部の斜視図を示し、図15(b)は溶接接合前の柱梁接合構造76の側面図を示し、図15(c)は溶接接合後の柱梁接合構造76の側面図を示している。
図15(a)に示すように、ウェブ78の下端部は、下フランジ75の開先75Fの先端(P点)まで形成されており、柱12の柱フランジ30と突合せ溶接するウェブ78の端面には、カタカナのレ字形に加工された2つの開先78F1、78F2が、高さを異ならせて形成されている。
2つの開先78F1と開先78F2は、下フランジ75の底面からの高さh9で区画され、高さh9より低い範囲が開先78F2であり、高さh9より高い範囲が開先78F1である。ここに、高さh9は、下フランジの15の厚さTより大きくされている。
開先78F1の傾斜角度α1は35度であり、開先78F2の傾斜角度α2は35度より小さくされている。ここに、開先78F1の傾斜面は、P点を含むと共に、下フランジ75の上面と、開先75Fの傾斜面と、ウェブ78の壁面とが交差するQ点を含む平面とされている。
これにより、溶接時の運棒の移動範囲を拡大でき、現場における、柱12の柱フランジ30と下フランジ75の開先75Fとの溶接作業が容易となる。
他の構成は第4の実施形態と同様であり、説明は省略する。
次に、実証実験について、図16〜図19を用いて説明する。
第1の実施形態〜第5の実施形態で説明した柱梁接合構造10、50、60、70、76について、実証実験を行い、下フランジ部の一部に発生する未溶接部分が力学的挙動の欠点にならないことを検証した。
実証実験は、図16(a)に示すように、柱梁接合構造10、50、60、70、76を模した試験体80を、引張試験装置82で両側から矢印Fの方向へ引っ張り、引張荷重と伸び(変位)の関係を把握した。
図16(b)は、図16(a)のA−A線断面図であり、試験体80の断面形状を示している。試験体80は、H形鋼84の下フランジ88と、ウェブ90の下側半分程度で構成され、試験体80に形成したスカラップ等は、破線86で囲む位置に配置した。
図17の一覧表には、試験体80への実験パラメータの割り付けが示されている。試験体80は、図17の番号欄の(1)〜(10)に示す10種類とした。試験体80の未溶接部は、固形エンドタブのフラックス材により、所定位置に人工的に発生させた。
実験パラメータは、図17の一覧表の最上欄に示すように、スカラップの寸法等を変化させた「スカラップ形式」、下フランジの未溶接部の有無を変化させた「フランジ未溶接部」、スカラップの状態とウェブの未溶接部の有無を組み合わせた「ウェブ」とした。なお対象欄に記載の「既成H」は圧延H形鋼を意味し、「BH」は、現場組み立てH形鋼を意味している。
試験体(1)は、図17、図18(a)に示すように、作業環境が良好な工場で溶接接合された比較用の試験体であり、目標とする引張性能を備えており、試験体(1)と同等の引張性能を有すれば、引張強度は問題ないと評価することができる。
試験体(1)は、下フランジ88とウェブ90が溶接接合された状態(溶接部96は一部のみ図示されている)で、柱92の柱フランジ92Fに、下フランジ88とウェブ90とが溶接接合されている。
下フランジ88の開先88Fは下方へ向けて開口しており、裏当て金94は下フランジ88の上部に設けられ、開先88Fが設けられた下側から溶接されている。試験体(1)にはスカラップは形成されていない。
図17、図18(b)に示すように、試験体(2)は同じく比較用の試験体であり、従来型のスカラップ98が形成された試験体である。スカラップサイズは35R+10Rである。ここに、35R+10Rは半径35mmとフランジ側の接する半径10mmの複合円を意味している。
図17、図18(c)に示すように、試験体(3)〜(7)は、いずれも既成のH形鋼を使用し、スカラップ(ミニスカラップ)100が形成されている。スカラップ寸法2×6.5Rは、直径13mmの高さで円弧状に形成されている。なお、高さ13mmのミニスカラップ100は、現状のスカラップ加工用カッターで形成可能な最小高さである。
ここに、試験体(3)〜(5)は、ミニスカラップ100を突合せ溶接後に、開口部をそのまま残している。一方、試験体(6)(7)は、突合せ溶接後に、ミニスカラップ100の開口部に溶接金属を盛って、開口部をなくしている。また、試験体(6)(7)は、フランジ板厚の1/2、及びフランジ板厚と同等の未溶接部を有している。
図17、図18(d)に示すように、試験体(8)〜(10)は、いずれも組立H形鋼を使用しており、スカラップは設けられていない。スカラップの代わりに、直線状に切り欠いた開先102が形成されている。開先102には、カタカナのレ字状の傾斜部が設けられている。試験体(8)にはフランジ未溶接部はなく、試験体(9)(10)は、フランジ板厚の1/2、及びフランジ板厚と同等の未溶接部を有している。
図19に実証試験の結果を示す。図19の横軸は変位(mm)であり、縦軸は引張荷重(kN)である。
図19に示す特性は、大きく2つのグループ(AグループとBグループ)に区分できる。Aグループは、比較用の試験体(1)及び試験体(6)〜(10)で構成されている。Aグループは、比較用の試験体(1)とほぼ同じ引張荷重−変位特性を示している。
Aグループには、フランジ開先内に人工的に未溶接部を形成した試験体も含まれており、未溶接部の有無に限らず、変位と引張荷重の最大値は大きい(例えば変位30mmの時の引張荷重は約1800kN)。即ち、未溶接部が一部存在していても、ウェブを柱フランジに溶接接合することで、引張荷重−変位特性の低下を抑制できるということができる。
これに対し、Bグループは、いずれもスカラップが形成され、開口部がそのまま残された試験体(2)〜(5)で構成されている。Bグループは、Aグループに比べて変位と引張荷重の最大値が小さい(変位20mmの時の引張荷重は約1600kN)。即ち、スカラップが引張荷重−変位特性を低下させている、ということができる。
Aグループにはスカラップが設けられてなく、Bグループにはスカラップが設けられていることから、引張荷重の低下はスカラップの影響が大きいといえる。このとき、スカラップは、埋め戻すことで断面欠損を生じさせないことが検証された。
以上の検証結果から、Aグループを構成する本実施形態に係る柱梁接合構造においては、下フランジ部の一部に発生する未溶接部は力学的挙動の欠点とならないということができる。
なお、ウェブ側に未溶接部を移動させることを目的とし、ウェブの下部をカットしてフランジ開先側をV字状、又はカタカナのレ字状とした試験体については、図示は省略するが、溶接終了後に試験片を切断し、溶接が十分に溶け込み、未溶接部は観察されなかったことを確認した。
(第6の実施形態)
図20(a)に示すように、第6の実施形態に係る柱梁接合構造110は、鋼製の柱114を有し、柱114には、梁118との接合部に通しダイアフラム112が設けられている。柱114が通しダイアフラム形式である点が、柱12が内ダイアフラム形式である第1の実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
柱114には、柱114を水平方向へ貫通し、梁118の上フランジ(図示せず)及び下フランジ120と接合される通しダイアフラム112が設けられている。通しダイアフラム112は、鋼板製とされ、通しダイアフラム112の梁118側端面は、柱114の表面116から、所定寸法Lだけ突出されている。
H形鋼製の梁118のウェブ126の下端部には、スカラップ124が形成され、ウェブ126の端面には開先126Fが設けられている。また、上フランジ(図示せず)と下フランジ120は、いずれもウェブ126の先端から長さLだけ短くされ、それぞれに上方へ開口する開先120Fが設けられている。また、上フランジ(図示せず)と下フランジ120は、いずれも裏当て金122が設けられている。
柱114と梁118の接合は、柱114の柱フランジ116に設けられた、図示しないガセットプレートで仮止めした状態で、上フランジと上側の通しダイアフラム112(図示せず)、下フランジと下側の通しダイアフラム112をそれぞれ突合せ溶接する。続いて、スカラップ124を溶接金属で埋め戻し、最後に、柱フランジ116とウェブ126を突合せ溶接する。
本実施形態においては、通しダイアフラム112の端部が梁118の方向へ長さLだけ突出しているので、上フランジと下フランジの溶接接合部と柱フランジの溶接接合部は長さLだけ水平方向の位置が異なっている。
これにより、ダイアフラム方式の柱114においても、現地作業で、上側の通しダイアフラムの端面と上フランジ(図示せず)、下側の通しダイアフラム112の端面と下フランジ120の端面、及び柱フランジ116とウェブ126をそれぞれ突合せ溶接することができる。
他の構成は、第1の実施形態と同じであり詳細な説明は省略する。
なお、展開例として、図20(b)に示すように、ウェブ130の下端部に、スカラップ124を形成する代わりに、下フランジ120の上面から、ウェブ130の上方へ斜めに切り欠き部を形成し、切り欠き部に開先130F2を設けてもよい。
溶接手順は、上述した図20(a)と同じであり、切り欠き部は、上フランジと上側の通しダイアフラム112(図示せず)、下フランジと下側の通しダイアフラム112をそれぞれ突合せ溶接した後に溶接金属で埋め戻される。
これにより、現地作業で、上側の通しダイアフラムの端面と上フランジ(図示せず)、下側の通しダイアフラム112の端面と下フランジ120の端面、及び柱フランジ116とウェブ126をそれぞれ突合せ溶接することができる。
(第7の実施形態)
図21(a)、図21(b)に示すように、第7の実施形態に係る柱梁接合構造132は、鋼製の柱134を有し、柱134には、梁138との接合部に外ダイアフラム136が設けられている。柱134が外ダイアフラム形式である点が、柱12が内ダイアフラム形式である第1の実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
柱134には、柱134の周囲を囲み、梁138と接合される外ダイアフラム136が設けられている。外ダイアフラム136は、鋼板製とされ、柱134の表面145から所定寸法Wだけ突出され、梁138の上フランジ(図示せず)と下フランジ140のそれぞれと対応する高さに取り付けられている。
上側の外ダイアフラム(図示せず)と下側の外ダイアフラム136の間には、鉛直方法に両者をつなぐ柱フランジ144が設けられている。柱フランジ144は、鋼板製とされ、ウェブ142と対応する位置に、柱134の表面から所定寸法Wだけ突出されて設けられている。
H形鋼製の梁138のウェブ142にはスカラップ148が形成され、ウェブ142の先端には開先142Fが設けられている。更に、上フランジと下フランジ120は、それぞれに上方へ開口する開先140Fが設けられている。
柱134と梁138の接合は、仮止め板150で柱フランジ144とウェブ142を仮止めした状態で、上フランジと上側の通しダイアフラム(図示せず)の端面、下フランジ140と下側の外ダイアフラム136の端面をそれぞれ突合せ溶接する。
続いて、スカラップ148を溶接金属で埋め戻し、最後に、柱フランジ144とウェブ142を突合せ溶接する。
これにより、外ダイアフラム方式の柱134においても、現地作業で、上側の外ダイアフラムの端面と上フランジ(図示せず)、下側の外ダイアフラム136の端面と下フランジ140の端面、及び柱フランジ144とウェブ142をそれぞれ突合せ溶接することができる。
10 柱梁接合構造
12 柱
14 梁
16 上フランジ
16F 開先(フランジ開先)
17 下フランジ
17F 開先(フランジ開先)
18 ウェブ
18F 開先(ウェブ開先)
20 ガセットプレート(裏当て金)
22 ボルト
24 突合せ溶接部
26 裏当て金
30 柱フランジ
47 ルート間隔
48 ルート間隔
49 ルート間隔
112 通しダイアフラム
136 外ダイアフラム

Claims (3)

  1. 鋼製の柱と、
    ウェブの端面に形成されたウェブ開先、及び上フランジと下フランジの端面に形成され上方へ開口するフランジ開先が設けられ、前記ウェブ開先と前記柱の柱フランジが突合せ溶接され、前記柱が内ダイアフラム形式の場合には前記フランジ開先と前記柱フランジが突合せ溶接され、前記柱が通しダイアフラム形式又は外ダイアフラム形式の場合には前記フランジ開先とダイアフラムが突合せ溶接されたH形鋼製の梁と、
    を有し、前記ウェブの前記端面の下端部に、前記フランジ開先の幅と等しい幅の切欠きが形成されている、柱梁接合構造。
  2. 前記柱フランジから突出され、前記ウェブがボルトで留められたガセットプレートと、
    前記上フランジ及び前記下フランジから突出され、前記柱が内ダイアフラム形式の場合には前記上フランジ及び前記下フランジの端面と前記柱フランジとのルート間隔を塞ぎ、前記柱が通しダイアフラム形式又は外ダイアフラム形式の場合には前記上フランジ及び前記下フランジの端面と前記ダイアフラムとのルート間隔を塞ぐ裏当て金と、
    を有する請求項1に記載の柱梁接合構造。
  3. 鋼製の柱の柱フランジにガセットプレートを取り付け、
    H形鋼製の梁の上フランジ及び下フランジの端面にフランジ開先を設け、ウェブの端面にウェブ開先を設け、
    前記上フランジ及び前記下フランジから突出され、前記柱が内ダイアフラム形式の場合には、前記上フランジ及び前記下フランジの端面と前記柱フランジとのルート間隔を塞ぎ、前記柱が通しダイアフラム形式又は外ダイアフラム形式の場合には、前記上フランジ及び前記下フランジの端面とダイアフラムとのルート間隔を塞ぐ裏当て金を取り付け、
    前記柱フランジと前記ウェブの先端とのルート間隔を維持した状態で、前記梁を前記ガセットプレートで仮止めし、
    前記ガセットプレートを裏当て金として、前記柱フランジと前記ウェブ開先を突合せ溶接し、
    前記上フランジ及び前記下フランジの上方から、前記柱が内ダイアフラム形式の場合には、前記フランジ開先と前記柱フランジを突合せ溶接し、前記柱が通しダイアフラム形式又は外ダイアフラム形式の場合には、前記フランジ開先と前記ダイアフラムを突合せ溶接する柱梁接合方法。
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