JP6067158B1 - 偏光フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】延伸処理時におけるフィルム破断を抑制することができる偏光フィルムの製造方法を提供する。【解決手段】ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを処理浴に浸漬させながら搬送して上流側ニップロールと下流側ニップロールの間の周速差を利用して一軸延伸を行う延伸工程を有し、前記延伸工程は、幅減少率Rが0.55(%/秒)以下である低幅減少率延伸工程を有し、前記幅減少率Rは、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの、前記上流側ニップロールの通過時の幅をW1(mm)、前記下流側ニップロールの通過時の幅をW2(mm)、前記上流側ニップロールから前記下流側ニップロールまでの搬送に要する時間をT(秒)とした場合に、下記式(1)で算出される、偏光フィルムの製造方法。【選択図】図1
Description
本発明は、偏光板の構成部材として用いることのできる偏光フィルムの製造方法に関する。
偏光フィルムには、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素や二色性染料のような二色性色素を吸着配向させたものが従来用いられている。偏光フィルムは通常、その片面又は両面に接着剤を用いて保護フィルムを貼合して偏光板とされ、液晶テレビ、パーソナルコンピュータ用モニター及び携帯電話等の液晶表示装置に代表される画像表示装置に用いられている。
一般に偏光フィルムは、連続的に搬送される長尺のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤浴、染色浴、架橋浴のような処理浴に順次浸漬する処理を施すとともに、これら一連の処理の間に延伸処理を施すことによって製造される(例えば、特許文献1)。
偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの原反ロール(巻回品)からフィルムを連続的に巻出しつつ、上述のような各種処理浴を通るフィルム搬送経路に沿って搬送させるとともに、膨潤浴に浸漬させてから架橋浴より引き出すまでの間のいずれか1以上の段階で延伸処理を施すことによって連続製造することができる。ところが、連続製造中、特に延伸処理時にフィルムが破断することがあり、生産性や偏光フィルムの歩留まりの観点から改善が求められていた。
そこで本発明は、延伸処理時におけるフィルム破断を抑制することができる偏光フィルムの製造方法の提供を目的とする。
本発明は、以下に示す偏光フィルムの製造方法を提供する。
〔1〕 ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを処理浴に浸漬させながら搬送して上流側ニップロールと下流側ニップロールの間の周速差を利用して一軸延伸を行う延伸工程を有し、
前記延伸工程は、幅減少率Rが0.55(%/秒)以下である低幅減少率延伸工程を有し、
前記幅減少率Rは、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの、前記上流側ニップロールの通過時の幅をW1(mm)、前記下流側ニップロールの通過時の幅をW2(mm)、前記上流側ニップロールから前記下流側ニップロールまでの搬送に要する時間をT(秒)とした場合に、下記式(1)で算出される、偏光フィルムの製造方法。
〔1〕 ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを処理浴に浸漬させながら搬送して上流側ニップロールと下流側ニップロールの間の周速差を利用して一軸延伸を行う延伸工程を有し、
前記延伸工程は、幅減少率Rが0.55(%/秒)以下である低幅減少率延伸工程を有し、
前記幅減少率Rは、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの、前記上流側ニップロールの通過時の幅をW1(mm)、前記下流側ニップロールの通過時の幅をW2(mm)、前記上流側ニップロールから前記下流側ニップロールまでの搬送に要する時間をT(秒)とした場合に、下記式(1)で算出される、偏光フィルムの製造方法。
〔2〕 前記低幅減少率延伸工程は、下流側ニップロール通過時のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの累積延伸倍率が4.5倍以上の延伸を行う工程を有する、〔1〕に記載の偏光フィルムの製造方法。
〔3〕 前記低幅減少率延伸工程は、架橋浴に浸漬させながら搬送して一軸延伸を行う工程を有する、〔1〕または〔2〕に記載の偏光フィルムの製造方法。
〔4〕 前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、複数の架橋浴に浸漬され、
前記低幅減少率延伸工程は、搬送方向2番目以降に配置される架橋浴に浸漬させながら搬送して一軸延伸を行う工程を有する、〔3〕に記載の偏光フィルムの製造方法。
前記低幅減少率延伸工程は、搬送方向2番目以降に配置される架橋浴に浸漬させながら搬送して一軸延伸を行う工程を有する、〔3〕に記載の偏光フィルムの製造方法。
〔5〕 前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、複数の架橋浴に浸漬され、
前記延伸工程は、架橋浴への浸漬を伴う搬送方向最初の第1架橋時延伸工程を有し、
前記第1架橋時延伸工程において、上流側ニップロール通過時のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの累積延伸倍率が2.5倍以上である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の偏光フィルムの製造方法。
前記延伸工程は、架橋浴への浸漬を伴う搬送方向最初の第1架橋時延伸工程を有し、
前記第1架橋時延伸工程において、上流側ニップロール通過時のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの累積延伸倍率が2.5倍以上である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の偏光フィルムの製造方法。
〔6〕 前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、複数の架橋浴に浸漬され、
前記延伸工程は、架橋浴への浸漬を伴う搬送方向2段目の第2架橋時延伸工程を有し、
前記第2架橋時延伸工程において、上流側ニップロール通過時のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの累積延伸倍率が4.0倍以上である、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の偏光フィルムの製造方法。
前記延伸工程は、架橋浴への浸漬を伴う搬送方向2段目の第2架橋時延伸工程を有し、
前記第2架橋時延伸工程において、上流側ニップロール通過時のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの累積延伸倍率が4.0倍以上である、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の偏光フィルムの製造方法。
〔7〕 前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの厚みが、未延伸で65μm以下である、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の偏光フィルムの製造方法。
本発明の方法によれば、延伸時におけるフィルム破断を効果的に抑制することができる。
<偏光フィルムの製造方法>
本発明において偏光フィルムは、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素(ヨウ素や二色性染料)が吸着配向しているものである。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂は通常、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。そのケン化度は、通常約85モル%以上、好ましくは約90モル%以上、より好ましくは約99モル%以上である。ポリ酢酸ビニル系樹脂は、例えば、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体等であることができる。共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類等を挙げることができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常約1000〜10000、好ましくは約1500〜5000程度である。
本発明において偏光フィルムは、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素(ヨウ素や二色性染料)が吸着配向しているものである。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂は通常、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。そのケン化度は、通常約85モル%以上、好ましくは約90モル%以上、より好ましくは約99モル%以上である。ポリ酢酸ビニル系樹脂は、例えば、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体等であることができる。共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類等を挙げることができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常約1000〜10000、好ましくは約1500〜5000程度である。
これらのポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等も使用し得る。
本発明では、偏光フィルム製造の開始材料として、厚みが好ましくは65μm以下(例えば60μm以下)、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは35μm以下の未延伸のポリビニルアルコール系樹脂フィルム(原反フィルム)を用いる。これにより市場要求が益々高まっている薄膜の偏光フィルムを得ることができる。原反フィルムが薄いほど、延伸処理時のフィルム破断を生じやすいが、本発明によれば、原反フィルムが薄い場合(例えば60μm以下)でもフィルム破断を効果的に抑制することができる。なお、原反フィルムは厚みが10μm以上のものを用いることが好ましい。原反フィルムの幅は特に制限されず、例えば400〜6000mm程度であることができる。通常、フィルム幅が大きいほど延伸処理時にフィルム破断を生じやすい傾向にあるが、本発明によれば原反フィルム幅が大きくても効果的にフィルムの破断を抑制することができる。
本発明において原反フィルムは、長尺の未延伸のポリビニルアルコール系樹脂フィルムのロール(原反ロール)として用意することができる。
偏光フィルムは、上記の長尺の原反フィルムを原反ロールから巻出しつつ、偏光フィルム製造装置のフィルム搬送経路に沿って連続的に搬送させて所定の処理工程を実施することにより長尺の偏光フィルムとして連続製造することができる。所定の処理工程は、原反フィルムを膨潤浴に浸漬させた後に引き出す膨潤処理工程、膨潤処理工程後のフィルムを染色浴に浸漬させた後に引き出す染色処理工程、及び染色処理後のフィルムを架橋浴に浸漬させた後に引き出す架橋処理工程を含むことができる。
本発明においては、フィルムを処理浴(膨潤浴、染色浴、架橋浴及び洗浄浴のような、フィルム搬送経路上に設けられるポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して処理を施す処理液を収容する浴を総称して「処理浴」ともいう。)に浸漬させながら搬送させる上述のような処理工程のいずれか一以上の処理工程において、上流側ニップロールと下流側ニップロールの間の周速差を利用して一軸延伸を並行して行う延伸工程を有する。
本発明においては、一のニップロールとこれと周速が異なる搬送経路に沿った次のニップロールをそれぞれ「上流側ニップロール」と「下流側ニップロール」といい、上流側ニップロールから下流側ニップロールまでの工程を一つの延伸工程とする。本発明の製造方法は、このような延伸工程を一以上有する。なお、フィルムの処理浴への浸漬を伴う上記の延伸工程以外に、フィルムを処理浴に浸漬させる前後に気相中で行う延伸工程を有していてもよい。
搬送経路上に設けられる上記のような各処理浴は、同種の処理浴が一つであっても複数であってもよい。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムが、上流側ニップロールから次の下流側ニップロールに達するまでに複数の処理浴への浸漬を伴う場合であっても、上流側ニップロールから次の下流側ニップロールまでの間を一つの延伸工程とする。一方、上流側ニップロールから次の下流側ニップロールに達するまでに処理浴(例えば架橋浴)への浸漬を伴い、次の上流側ニップロールからさらに次の下流側ニップロールに達するまでに前段と同種の処理浴(例えば架橋浴)への浸漬を伴う場合であっても、これらはそれぞれ別の延伸工程とする。前段の延伸工程の下流側ニップロールが、次段の延伸工程の上流側ニップロールを兼ねる場合がある。本発明においては、必要に応じて他の処理工程を付加してもよい。
本発明においては、フィルムの処理浴への浸漬を伴う上記延伸工程として、幅減少率Rが0.55(%/秒)以下である低幅減少率延伸工程を有する。本発明者らは、フィルムの破断を抑制するためには、幅減少率Rを調整することが有効であり、さらに幅減少率Rが0.55(%/秒)以下の低幅減少率延伸工程を有することが有効であることを見出しなされたものである。なお、低幅減少率延伸工程における幅減少率Rは、好ましくは0.50(%/秒)以下、さらに好ましくは0.45(%/秒)以下である。また、幅減少率Rは、通常0.01(%/秒)以上である。ここで、幅減少率Rとは、処理浴への浸漬を伴う延伸工程において、上流側ニップロール通過時のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの幅をW1(mm)、下流側ニップロール通過時のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの幅をW2(mm)、前記上流側ニップロールから前記下流側ニップロールまでの搬送に要する時間をT(秒)とした場合に、下記式(1)で算出される値である。
以下、図1を参照しながら、本発明に係る偏光フィルムの製造方法についてより詳細に説明する。図1は、本発明に係る偏光フィルムの製造方法及びそれに用いる偏光フィルム製造装置の一例を模式的に示す断面図である。図1に示される偏光フィルム製造装置は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反(未延伸)フィルム10を、原反ロール11より連続的に巻出しながらフィルム搬送経路に沿って搬送させることにより、フィルム搬送経路上に設けられる膨潤浴13、染色浴15、第1架橋浴16、第2架橋浴17、及び洗浄浴18を順次通過させ、最後に乾燥炉21を通過させるように構成されている。得られた偏光フィルム23は、例えば、そのまま次の偏光板作製工程(偏光フィルム23の片面又は両面に保護フィルムを貼合する工程)に搬送することができる。図1における矢印は、フィルムの搬送方向を示している。
偏光フィルム製造装置のフィルム搬送経路は、上記処理浴の他、搬送されるフィルムを支持する、あるいはさらにフィルム搬送方向を変更することができるガイドロール30〜44,60,61や、搬送されるフィルムを押圧・挟持し、その回転による駆動力をフィルムに与えることができる、あるいはさらにフィルム搬送方向を変更することができるニップロール50〜56を適宜の位置に配置することによって構築することができる。ガイドロールやニップロールは、各処理浴の前後や処理浴中に配置することができ、これにより処理浴へのフィルムの導入・浸漬及び処理浴からの引き出しを行うことができる〔図1参照〕。例えば、各処理浴中に1以上のガイドロールを設け、これらのガイドロールに沿ってフィルムを搬送させることにより、各処理浴にフィルムを浸漬させることができる。
図1に示される偏光フィルム製造装置は、各処理浴の前後にニップロールが配置されており(ニップロール50〜55)、これにより、いずれか一以上の処理浴中で、その前後に配置されるニップロール間(上流ニップロールと下流ニップロールの間)に周速差をつけて縦一軸延伸を行うロール間延伸(延伸工程)を実施することが可能になっている。以下、各処理工程について説明する。
(膨潤処理)
膨潤処理は、原反フィルム10表面の異物除去、原反フィルム10中の可塑剤除去、易染色性の付与、原反フィルム10の可塑化等の目的で行われる。処理条件は、当該目的が達成できる範囲で、かつ原反フィルム10の極端な溶解や失透等の不具合を生じない範囲で決定される。
膨潤処理は、原反フィルム10表面の異物除去、原反フィルム10中の可塑剤除去、易染色性の付与、原反フィルム10の可塑化等の目的で行われる。処理条件は、当該目的が達成できる範囲で、かつ原反フィルム10の極端な溶解や失透等の不具合を生じない範囲で決定される。
図1を参照して、膨潤処理は、原反フィルム10を原反ロール11より連続的に巻出しながら、フィルム搬送経路に沿って搬送させ、原反フィルム10を膨潤浴13(膨潤槽に収容された処理液)に所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。図1の例において、原反フィルム10を巻き出してから膨潤浴13に浸漬させるまでの間、原反フィルム10は、ガイドロール60,61及びニップロール50によって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送される。膨潤処理においては、ガイドロール30〜32によって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送される。
膨潤浴13には、純水のほか、ホウ酸(特開平10−153709号公報)、塩化物(特開平06−281816号公報)、無機酸、無機塩、水溶性有機溶媒、アルコール類等を約0.01〜10重量%の範囲で添加した水溶液を使用することも可能である。
膨潤浴13の温度は、例えば10〜50℃程度、好ましくは10〜40℃程度、より好ましくは15〜30℃程度である。原反フィルム10の浸漬時間は、好ましくは10〜300秒程度、より好ましくは20〜200秒程度である。また、原反フィルム10が予め気体中で延伸したポリビニルアルコール系樹脂フィルムである場合、膨潤浴13の温度は、例えば20〜70℃程度、好ましくは30〜60℃程度である。原反フィルム10の浸漬時間は、好ましくは30〜300秒程度、より好ましくは60〜240秒程度である。
膨潤処理では、原反フィルム10が幅方向に膨潤してフィルムにシワが入るといった問題が生じやすい。このシワを取りつつフィルムを搬送するための1つの手段として、ガイドロール30,31及び/又は32にエキスパンダーロール、スパイラルロール、クラウンロールのような拡幅機能を有するロールを用いたり、クロスガイダー、ベンドバー、テンタークリップのような他の拡幅装置を用いたりすることが挙げられる。
膨潤処理では、ニップロール(上流側ニップロール)50とニップロール(下流側ニップロール)51との周速差を利用して一軸延伸処理を行う延伸工程を並行して実施してもよい。延伸工程を並行して行うことにより、シワの発生を抑制することもできる。
膨潤処理では、フィルムの搬送方向にもフィルムが膨潤拡大するので、フィルムに積極的な延伸を行わない場合は、搬送方向のフィルムのたるみを無くすために、例えば、膨潤浴13の前後に配置するニップロール50,51の速度をコントロールする等の手段を講ずることが好ましい。また、膨潤浴13中のフィルム搬送を安定化させる目的で、膨潤浴13中での水流を水中シャワーで制御したり、EPC装置(Edge Position
Control装置:フィルムの端部を検出し、フィルムの蛇行を防止する装置)等を併用したりすることも有用である。
Control装置:フィルムの端部を検出し、フィルムの蛇行を防止する装置)等を併用したりすることも有用である。
図1に示される例において、膨潤浴13から引き出されたフィルムは、ガイドロール32、ニップロール51を順に通過して染色浴15へ導入される。
(染色処理)
染色処理は、膨潤処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着、配向させる等の目的で行われる。処理条件は、当該目的が達成できる範囲で、かつフィルムの極端な溶解や失透等の不具合が生じない範囲で決定される。図1を参照して、染色処理は、ガイドロール33〜35及びニップロール51によって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送させ、膨潤処理後のフィルムを染色浴15(染色槽に収容された処理液)に所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。二色性色素の染色性を高めるために、染色処理工程に供されるフィルムは、少なくともある程度の一軸延伸処理を施したフィルムであることが好ましく、又は染色処理前の一軸延伸処理の代わりに、あるいは染色処理前の一軸延伸処理に加えて、染色処理時に並行して一軸延伸処理する延伸工程を行うことが好ましい。染色処理と並行して行う延伸工程は、染色浴15の前後に配置したニップロール(上流側ニップロール)51とニップロール(下流側ニップロール)52との間に周速差をつけることにより行うことができる。
染色処理は、膨潤処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着、配向させる等の目的で行われる。処理条件は、当該目的が達成できる範囲で、かつフィルムの極端な溶解や失透等の不具合が生じない範囲で決定される。図1を参照して、染色処理は、ガイドロール33〜35及びニップロール51によって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送させ、膨潤処理後のフィルムを染色浴15(染色槽に収容された処理液)に所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。二色性色素の染色性を高めるために、染色処理工程に供されるフィルムは、少なくともある程度の一軸延伸処理を施したフィルムであることが好ましく、又は染色処理前の一軸延伸処理の代わりに、あるいは染色処理前の一軸延伸処理に加えて、染色処理時に並行して一軸延伸処理する延伸工程を行うことが好ましい。染色処理と並行して行う延伸工程は、染色浴15の前後に配置したニップロール(上流側ニップロール)51とニップロール(下流側ニップロール)52との間に周速差をつけることにより行うことができる。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合、染色浴15には、例えば、濃度が重量比でヨウ素/ヨウ化カリウム/水=約0.003〜0.3/約0.1〜10/100である水溶液を用いることができる。ヨウ化カリウムに代えて、ヨウ化亜鉛等の他のヨウ化物を用いてもよく、ヨウ化カリウムと他のヨウ化物を併用してもよい。また、ヨウ化物以外の化合物、例えば、ホウ酸、塩化亜鉛、塩化コバルト等を共存させてもよい。ホウ酸を添加する場合は、ヨウ素を含む点で後述する架橋処理と区別され、水溶液が水100重量部に対し、ヨウ素を約0.003重量部以上含んでいるものであれば、染色浴15とみなすことができる。フィルムを浸漬するときの染色浴15の温度は、通常10〜45℃程度、好ましくは10〜40℃であり、より好ましくは20〜35℃であり、フィルムの浸漬時間は、通常30〜600秒程度、好ましくは60〜300秒である。
二色性色素として水溶性二色性染料を用いる場合、染色浴15には、例えば、濃度が重量比で二色性染料/水=約0.001〜0.1/100である水溶液を用いることができる。この染色浴15には、染色助剤等を共存させてもよく、例えば、硫酸ナトリウム等の無機塩や界面活性剤などを含有していてもよい。二色性染料は1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上の二色性染料を併用してもよい。フィルムを浸漬するときの染色浴15の温度は、例えば20〜80℃程度、好ましくは30〜70℃であり、フィルムの浸漬時間は、通常30〜600秒程度、好ましくは60〜300秒程度である。
染色処理においても、膨潤処理と同様にフィルムのシワを除きつつポリビニルアルコール系樹脂フィルムを搬送するために、ガイドロール33,34及び/又は35にエキスパンダーロール、スパイラルロール、クラウンロールのような拡幅機能を有するロールを用いたり、クロスガイダー、ベンドバー、テンタークリップのような他の拡幅装置を用いたりすることができる。なお、シワの発生を抑制するためには、染色処理時に並行して行う延伸工程も有効である。
図1に示される例において、染色浴15から引き出されたフィルムは、ガイドロール35、ニップロール52を順に通過して第1架橋浴16へ導入される。
(第1架橋処理)
第1架橋処理は、架橋による耐水化や色相調整(フィルムが青味がかるのを防止する等)などの目的で行う処理である。図1を参照して、第1架橋処理は、ガイドロール36〜38及びニップロール52によって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送させ、第1架橋浴16(架橋槽に収容された処理液)に染色処理後のフィルムを所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。
第1架橋処理は、架橋による耐水化や色相調整(フィルムが青味がかるのを防止する等)などの目的で行う処理である。図1を参照して、第1架橋処理は、ガイドロール36〜38及びニップロール52によって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送させ、第1架橋浴16(架橋槽に収容された処理液)に染色処理後のフィルムを所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。
第1架橋浴16は、水100重量部に対してホウ酸を例えば約1〜10重量部含有する水溶液であることができる。第1架橋浴16は、染色処理で使用した二色性色素がヨウ素の場合、ホウ酸に加えてヨウ化物を含有することが好ましく、その量は、水100重量部に対して、例えば1〜30重量部とすることができる。ヨウ化物としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化亜鉛等が挙げられる。また、ヨウ化物以外の化合物、例えば、塩化亜鉛、塩化コバルト、塩化ジルコニウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、硫酸ナトリウム等を共存させてもよい。
第1架橋処理においては、その目的によって、ホウ酸及びヨウ化物の濃度、並びに第1架橋浴16の温度を適宜変更することができる。例えば、第1架橋処理の目的が架橋による耐水化であり、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対し、膨潤処理、染色処理及び第1架橋処理をこの順に施す場合、第1架橋浴の架橋剤含有液は、濃度が重量比でホウ酸/ヨウ化物/水=3〜10/1〜20/100の水溶液であることができる。必要に応じ、ホウ酸に代えてグリオキザール又はグルタルアルデヒド等の他の架橋剤を用いてもよく、ホウ酸と他の架橋剤を併用してもよい。フィルムを浸漬するときの第1架橋浴の温度は、通常50〜70℃程度、好ましくは53〜65℃であり、フィルムの浸漬時間は、通常10〜600秒程度、好ましくは20〜300秒、より好ましくは20〜200秒である。また、膨潤処理前に予め延伸したポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して染色処理及び第1架橋処理をこの順に施す場合、架橋浴17の温度は、通常50〜85℃程度、好ましくは55〜80℃である。
色相調整を目的とする第1架橋処理においては、例えば、二色性色素としてヨウ素を用いた場合、濃度が重量比でホウ酸/ヨウ化物/水=1〜5/3〜30/100の架橋剤含有液を使用することができる。フィルムを浸漬するときの第1架橋浴の温度は、通常10〜45℃程度であり、フィルムの浸漬時間は、通常1〜300秒程度、好ましくは2〜100秒である。
第1架橋処理においては、ニップロール(上流側ニップロール)52とニップロール(下流側ニップロール)53との周速差を利用して一軸延伸処理する延伸工程を並行して行うこともできる。かかる延伸工程は、シワの発生を抑制するためにも有効である。
第1架橋処理においては、膨潤処理と同様にフィルムのシワを除きつつポリビニルアルコール系樹脂フィルムを搬送するために、ガイドロール36,37及び/又は38にエキスパンダーロール、スパイラルロール、クラウンロールのような拡幅機能を有するロールを用いたり、クロスガイダー、ベンドバー、テンタークリップのような他の拡幅装置を用いたりすることができる。
図1に示される例において、第1架橋浴16から引き出されたフィルムは、ガイドロール38、ニップロール53を順に通過して第2架橋浴17へ導入される。
(第2架橋処理)
図1を参照して、第2架橋処理は、ガイドロール39〜41及びニップロール53によって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送され、第2架橋浴17(架橋槽に収容された処理液)に第1架橋処理後のフィルムを所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。
図1を参照して、第2架橋処理は、ガイドロール39〜41及びニップロール53によって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送され、第2架橋浴17(架橋槽に収容された処理液)に第1架橋処理後のフィルムを所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。
第2架橋処理については、第1架橋処理での上記説明が適用される。したがって、第2架橋処理では、ニップロール(上流側ニップロール)53とニップロール(下流側ニップロール)54との周速差を利用して一軸延伸処理する延伸工程を並行して行うこともできる。
本発明の製造装置では、二つの架橋浴16,17を有する場合について説明したが、架橋浴は一つ以上であればその数は限定されない。架橋処理は、通常2〜5回行われる。三つ以上の架橋浴を有する場合の搬送方向第3番目以降の架橋浴の組成及び温度は、第1架橋浴に関して説明した上記の範囲内であれば同じであってもよく、異なっていてもよい。架橋による耐水化のための架橋処理及び色相調整のための架橋処理は、それぞれ複数の工程で行ってもよい。
(洗浄処理)
本発明の製造方法は、架橋処理工程後の洗浄処理工程を含むことができる。洗浄処理は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに付着した余分なホウ酸やヨウ素等の薬剤を除去する目的で行われる。洗浄処理は、例えば、架橋処理したポリビニルアルコール系樹脂フィルムを洗浄浴(水)18に浸漬、又は該フィルムに対して水をシャワーとして噴霧、若しくはこれらを併用することによって行うことができる。
本発明の製造方法は、架橋処理工程後の洗浄処理工程を含むことができる。洗浄処理は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに付着した余分なホウ酸やヨウ素等の薬剤を除去する目的で行われる。洗浄処理は、例えば、架橋処理したポリビニルアルコール系樹脂フィルムを洗浄浴(水)18に浸漬、又は該フィルムに対して水をシャワーとして噴霧、若しくはこれらを併用することによって行うことができる。
図1には、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを洗浄浴18に浸漬して洗浄処理を行う場合の例を示している。洗浄処理における洗浄浴18の温度は、通常2〜40℃程度であり、フィルムの浸漬時間は、通常2〜120秒程度である。
なお、洗浄処理においても、シワを除きつつポリビニルアルコール系樹脂フィルムを搬送する目的で、ガイドロール42,43及び/又は44にエキスパンダーロール、スパイラルロール、クラウンロールのような拡幅機能を有するロールを用いたり、クロスガイダー、ベンドバー、テンタークリップのような他の拡幅装置を用いたりすることができる。
洗浄処理では、ニップロール(上流側ニップロール)54とニップロール(下流側ニップロール)55との周速差を利用して一軸延伸処理を行う延伸工程を並行して実施してもよい。延伸工程は、シワの発生を抑制するためにも有効である。
(延伸処理)
本発明の製造方法は、上記一連の処理工程と並行してフィルムを一軸延伸する延伸工程を有する。一軸延伸処理の具体的方法は、上記のとおり、上流側ニップロールと下流側ニップロールの間の周速差を利用して一軸延伸するロール間延伸である。また、ロール間延伸による延伸工程に加えて、特許第2731813号公報に記載されるような熱ロール延伸、テンター延伸等による延伸処理を組み合わせて行ってもよい。延伸処理は、原反フィルム10から偏光フィルム23を得るまでの間に複数回にわたって実施することができる。上述のように延伸処理は、フィルムのシワの発生の抑制にも有利である。
本発明の製造方法は、上記一連の処理工程と並行してフィルムを一軸延伸する延伸工程を有する。一軸延伸処理の具体的方法は、上記のとおり、上流側ニップロールと下流側ニップロールの間の周速差を利用して一軸延伸するロール間延伸である。また、ロール間延伸による延伸工程に加えて、特許第2731813号公報に記載されるような熱ロール延伸、テンター延伸等による延伸処理を組み合わせて行ってもよい。延伸処理は、原反フィルム10から偏光フィルム23を得るまでの間に複数回にわたって実施することができる。上述のように延伸処理は、フィルムのシワの発生の抑制にも有利である。
原反フィルム10を基準とする、偏光フィルム23の最終的な累積延伸倍率は限定されないが、通常4.5〜7倍程度であり、好ましくは5〜6.5倍である。
本発明者らは、鋭意検討の結果、フィルムの累積延伸倍率が4.5倍以上の延伸工程及び架橋が進行したフィルムを延伸する延伸工程においてフィルムの破断が生じやすいことを知見した。そして、フィルムの破断が生じやすいロール間延伸による延伸工程について、幅減少率Rが0.55(%/秒)以下、好ましくは0.50(%/秒)以下、さらに好ましくは0.45(%/秒)以下である低幅減少率延伸工程とすることにより、破断を抑制できることを知見した。これらの知見にさらなる検討を加えて、本発明の製造方法においては、低幅減少率延伸工程として、〔a〕ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの下流側ニップロール通過時の累積延伸倍率が4.5倍以上の延伸を行う工程、及び〔b〕架橋浴に浸漬させながら搬送して一軸延伸を行う工程、の少なくとも一つを有することが好ましく、これによりフィルムの破断の抑制効果をさらに向上させることができる。なお、二つの工程をともに有してもよく、または二つの工程が同一の延伸工程であってもよい。
〔a〕について
下流側ニップロール通過時の累積延伸倍率が4.5倍以上の延伸工程を複数有する場合は、このような延伸工程の少なくとも一つが低幅減少率延伸工程である。なお、下流側ニップロール通過時の累積延伸倍率が4.5倍以上であってかつ幅減少率Rが0.55(%/秒)以下である低幅減少率延伸工程が一つであってもフィルムの破断を抑制する効果があるが、下流側ニップロール通過時の累積延伸倍率が4.5倍以上となる全ての延伸工程が低幅減少率延伸工程であることが好ましい。これにより、フィルムの破断の抑制効果をさらに向上させることができる。
下流側ニップロール通過時の累積延伸倍率が4.5倍以上の延伸工程を複数有する場合は、このような延伸工程の少なくとも一つが低幅減少率延伸工程である。なお、下流側ニップロール通過時の累積延伸倍率が4.5倍以上であってかつ幅減少率Rが0.55(%/秒)以下である低幅減少率延伸工程が一つであってもフィルムの破断を抑制する効果があるが、下流側ニップロール通過時の累積延伸倍率が4.5倍以上となる全ての延伸工程が低幅減少率延伸工程であることが好ましい。これにより、フィルムの破断の抑制効果をさらに向上させることができる。
下流側ニップロール通過時の累積延伸倍率が4.5倍以上となる延伸工程における延伸倍率は、好ましくは1.25倍以下であり、さらに好ましくは1.21倍以下である。このような延伸倍率とすることにより、フィルムの破断をさらに抑制することができる。
〔b〕について
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの架橋浴への浸漬を伴う延伸工程を複数有する場合は、このような延伸工程の少なくとも一つが低幅減少率延伸工程である。また、複数の架橋浴を有する場合には、2番目以降の架橋浴(第2架橋浴以降)への浸漬を伴う延伸工程が、低幅減少率延伸工程であることが好ましい。2番目以降の架橋浴では、1番目の架橋浴よりもフィルムの架橋が進行している状態にあり、したがって2番目以降の架橋浴への浸漬を伴う延伸工程が低幅減少率延伸工程であることにより、フィルムの破断の抑制効果をさらに向上させることができる。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの架橋浴への浸漬を伴う延伸工程を複数有する場合は、このような延伸工程の少なくとも一つが低幅減少率延伸工程である。また、複数の架橋浴を有する場合には、2番目以降の架橋浴(第2架橋浴以降)への浸漬を伴う延伸工程が、低幅減少率延伸工程であることが好ましい。2番目以降の架橋浴では、1番目の架橋浴よりもフィルムの架橋が進行している状態にあり、したがって2番目以降の架橋浴への浸漬を伴う延伸工程が低幅減少率延伸工程であることにより、フィルムの破断の抑制効果をさらに向上させることができる。
〔a〕及び〔b〕について
架橋浴への浸漬を伴う搬送方向最初の延伸工程(「第1架橋時延伸工程」ともいう)については、上流側ニップロール通過時のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの累積延伸倍率が2.5倍以上であることが好ましく、2.7倍以上がより好ましい。これより低いと、総延伸倍率が高い場合は、架橋浴での延伸倍率を高くする必要があり、架橋浴での延伸倍率が高いとフィルムの破断が生じやすい。また、架橋浴への浸漬を伴う搬送方向2段目の延伸工程(「第2架橋時延伸工程」ともいう)については、上流側ニップロール通過時のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの累積延伸倍率が4.0倍以上であることが好ましく、4.2倍以上がより好ましい。架橋が進行するにしたがって、延伸時にフィルムが破断しやすいため、第2架橋時延伸工程に導入される時点で累積延伸倍率が4.0倍以上である方が、総延伸倍率が高い場合であってもフィルムの破断を抑制することができる。
架橋浴への浸漬を伴う搬送方向最初の延伸工程(「第1架橋時延伸工程」ともいう)については、上流側ニップロール通過時のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの累積延伸倍率が2.5倍以上であることが好ましく、2.7倍以上がより好ましい。これより低いと、総延伸倍率が高い場合は、架橋浴での延伸倍率を高くする必要があり、架橋浴での延伸倍率が高いとフィルムの破断が生じやすい。また、架橋浴への浸漬を伴う搬送方向2段目の延伸工程(「第2架橋時延伸工程」ともいう)については、上流側ニップロール通過時のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの累積延伸倍率が4.0倍以上であることが好ましく、4.2倍以上がより好ましい。架橋が進行するにしたがって、延伸時にフィルムが破断しやすいため、第2架橋時延伸工程に導入される時点で累積延伸倍率が4.0倍以上である方が、総延伸倍率が高い場合であってもフィルムの破断を抑制することができる。
延伸工程における幅減少率Rは、例えば、延伸工程における、上流側ニップロールから下流側ニップロールまでの延伸倍率、処理浴の温度、処理浴の組成(例えば、架橋浴におけるホウ酸濃度)、又は、延伸工程前までの累積延伸倍率や温度等によって調整することができる。
(乾燥処理)
洗浄処理の後、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを乾燥させる処理を行うことが好ましい。フィルムの乾燥は特に制限されないが、図1に示される例のように乾燥炉21を用いて行うことができる。乾燥温度は、例えば30〜100℃程度であり、乾燥時間は、例えば30〜600秒程度である。以上のようにして得られる偏光フィルム23の厚みは、例えば約5〜30μm程度である。
洗浄処理の後、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを乾燥させる処理を行うことが好ましい。フィルムの乾燥は特に制限されないが、図1に示される例のように乾燥炉21を用いて行うことができる。乾燥温度は、例えば30〜100℃程度であり、乾燥時間は、例えば30〜600秒程度である。以上のようにして得られる偏光フィルム23の厚みは、例えば約5〜30μm程度である。
(その他の処理工程)
上記した処理以外の処理を付加することもできる。追加されうる処理の例は、架橋処理の後に行われる、ホウ酸を含まないヨウ化物水溶液への浸漬処理(補色処理)、ホウ酸を含まず塩化亜鉛等を含有する水溶液への浸漬処理(亜鉛処理)を含む。
上記した処理以外の処理を付加することもできる。追加されうる処理の例は、架橋処理の後に行われる、ホウ酸を含まないヨウ化物水溶液への浸漬処理(補色処理)、ホウ酸を含まず塩化亜鉛等を含有する水溶液への浸漬処理(亜鉛処理)を含む。
<偏光板>
以上のようにして製造される偏光フィルムの少なくとも片面に、接着剤を介して保護フィルムを貼合することにより偏光板を得ることができる。保護フィルムとしては、例えば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースのようなアセチルセルロース系樹脂からなるフィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂からなるフィルム;ポリカーボネート系樹脂フィルム、シクロオレフィン系樹脂フィルム;アクリル系樹脂フィルム;ポリプロピレン系樹脂の鎖状オレフィン系樹脂からなるフィルムが挙げられる。
以上のようにして製造される偏光フィルムの少なくとも片面に、接着剤を介して保護フィルムを貼合することにより偏光板を得ることができる。保護フィルムとしては、例えば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースのようなアセチルセルロース系樹脂からなるフィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂からなるフィルム;ポリカーボネート系樹脂フィルム、シクロオレフィン系樹脂フィルム;アクリル系樹脂フィルム;ポリプロピレン系樹脂の鎖状オレフィン系樹脂からなるフィルムが挙げられる。
偏光フィルムと保護フィルムとの接着性を向上させるために、偏光フィルム及び/又は保護フィルムの貼合面に、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射、プライマー塗布処理、ケン化処理などの表面処理を施してもよい。偏光フィルムと保護フィルムとの貼合に用いる接着剤としては、紫外線硬化性接着剤のような活性エネルギー線硬化性接着剤や、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液、又はこれに架橋剤が配合された水溶液、ウレタン系エマルジョン接着剤のような水系接着剤を挙げることができる。紫外線硬化型接着剤は、アクリル系化合物と光ラジカル重合開始剤の混合物や、エポキシ化合物と光カチオン重合開始剤の混合物等であることができる。また、カチオン重合性のエポキシ化合物とラジカル重合性のアクリル系化合物とを併用し、開始剤として光カチオン重合開始剤と光ラジカル重合開始剤を併用することもできる。
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお以下の例において、図1に示す偏光フィルムの製造装置と同様の装置を用いて偏光フィルムを製造した。ガイドロール30〜44にはすべてフラットロールを使用した。
<実施例1>
(1)膨潤処理
厚み30μm、幅450mmの未延伸ポリビニルアルコールフィルム〔(株)クラレ製の商品名「クラレポバールフィルムVF−PE#3000」、重合度2400、ケン化度99.9モル%以上〕を原反ロール11より連続的に巻出しながら搬送し、30℃の純水が入った膨潤浴13に、フィルムが弛まないように緊張状態を保ったまま100秒間浸漬した。
(1)膨潤処理
厚み30μm、幅450mmの未延伸ポリビニルアルコールフィルム〔(株)クラレ製の商品名「クラレポバールフィルムVF−PE#3000」、重合度2400、ケン化度99.9モル%以上〕を原反ロール11より連続的に巻出しながら搬送し、30℃の純水が入った膨潤浴13に、フィルムが弛まないように緊張状態を保ったまま100秒間浸漬した。
(2)染色処理
次に、ニップロール51を通過したフィルムを、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水(重量比)が0.05/2/100である30℃の染色浴15に120秒間浸漬した。この染色処理と並行して、ニップロール51,52間に周速差をつけてロール間の縦一軸延伸(「染色時延伸工程」とする)を行った。
次に、ニップロール51を通過したフィルムを、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水(重量比)が0.05/2/100である30℃の染色浴15に120秒間浸漬した。この染色処理と並行して、ニップロール51,52間に周速差をつけてロール間の縦一軸延伸(「染色時延伸工程」とする)を行った。
(3)第1架橋処理
次に、耐水化を目的とする第1架橋処理を施すため、ニップロール52を通過したフィルムを、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水(重量比)が12/4.4/100である56℃の第1架橋浴16に浸漬した。ここでも、第1架橋処理と並行して、ニップロール52,53間に周速差をつけて、ロール間の縦一軸延伸(第1架橋時延伸工程)を行った。第1架橋時延伸工程開始時、すなわち上流側ニップロール52通過時の累積延伸倍率(染色延伸工程終了時の延伸倍率と同じとみなすことができる)とフィルム幅(W1)、第1架橋時延伸工程終了時、すなわ下流側ニップロール53通過時の累積延伸倍率とフィルム幅(W2)を表1に示す。また、第1架橋時延伸工程に要した時間(T)を表1に示す。
次に、耐水化を目的とする第1架橋処理を施すため、ニップロール52を通過したフィルムを、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水(重量比)が12/4.4/100である56℃の第1架橋浴16に浸漬した。ここでも、第1架橋処理と並行して、ニップロール52,53間に周速差をつけて、ロール間の縦一軸延伸(第1架橋時延伸工程)を行った。第1架橋時延伸工程開始時、すなわち上流側ニップロール52通過時の累積延伸倍率(染色延伸工程終了時の延伸倍率と同じとみなすことができる)とフィルム幅(W1)、第1架橋時延伸工程終了時、すなわ下流側ニップロール53通過時の累積延伸倍率とフィルム幅(W2)を表1に示す。また、第1架橋時延伸工程に要した時間(T)を表1に示す。
(4)第2架橋処理
次いで、第1架橋処理後のフィルムを、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水(重量比)が12/4.4/100である40℃の第2架橋浴17に浸漬した。ここでも、第2架橋処理と並行して、ニップロール53,54間に周速差をつけて、ロール間の縦一軸延伸(第2架橋時延伸工程)を行った。第2架橋時延伸工程開始時、すなわち上流側ニップロール53通過時の累積延伸倍率とフィルム幅(W1)、第2架橋時延伸工程終了時、すなわち下流側ニップロール54通過時の累積延伸倍率とフィルム幅(W2)を表1に示す。また、第2架橋時延伸工程に要した時間(T)を表1に示す。
次いで、第1架橋処理後のフィルムを、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水(重量比)が12/4.4/100である40℃の第2架橋浴17に浸漬した。ここでも、第2架橋処理と並行して、ニップロール53,54間に周速差をつけて、ロール間の縦一軸延伸(第2架橋時延伸工程)を行った。第2架橋時延伸工程開始時、すなわち上流側ニップロール53通過時の累積延伸倍率とフィルム幅(W1)、第2架橋時延伸工程終了時、すなわち下流側ニップロール54通過時の累積延伸倍率とフィルム幅(W2)を表1に示す。また、第2架橋時延伸工程に要した時間(T)を表1に示す。
(5)洗浄工程、乾燥工程
その後、第2架橋処理と第3延伸工程を終えた後のフィルムを6℃の純水が入った洗浄浴18に浸漬し、次いで乾燥炉21を通過させることにより70℃で3分間乾燥させて、偏光フィルム23を作製した。
その後、第2架橋処理と第3延伸工程を終えた後のフィルムを6℃の純水が入った洗浄浴18に浸漬し、次いで乾燥炉21を通過させることにより70℃で3分間乾燥させて、偏光フィルム23を作製した。
(6)幅減少率の算出
第1架橋時延伸工程において、上流側ニップロール52の通過時のフィルムの幅をW1(mm)、下流側ニップロール53の通過時のフィルムの幅W2(mm)、上流側ニップロール52から下流側ニップロール53までの搬送に要した時間T(秒)から、上記式(1)で算出される幅減少率Rを算出した。幅減少率R(%/秒)の算出結果を表1に示す。
第1架橋時延伸工程において、上流側ニップロール52の通過時のフィルムの幅をW1(mm)、下流側ニップロール53の通過時のフィルムの幅W2(mm)、上流側ニップロール52から下流側ニップロール53までの搬送に要した時間T(秒)から、上記式(1)で算出される幅減少率Rを算出した。幅減少率R(%/秒)の算出結果を表1に示す。
同じく、第2架橋時延伸工程において、上流側ニップロール53の通過時のフィルムの幅をW1(mm)、下流側ニップロール54の通過時のフィルムの幅W2(mm)、上流側ニップロール53から下流側ニップロール54までの搬送に要した時間T(秒)から、上記式(1)で算出される幅減少率Rを算出した。幅減少率R(%/秒)の算出結果を表1に示す。
(7)破断評価
偏光フィルム製造を連続して実施し、フィルムの破断が生じる連続実施時間又はフィルムの破断が生じることなく続いた連続実施時間を確認した。またフィルムの破断が生じた場合には、フィルムの破断が生じるまでの連続実施時間から1時間当たりのフィルムの破断頻度を算出した。実施例1については、偏光フィルム製造を連続して24時間実施したところ、24時間の稼働中、いずれの処理工程においてもフィルムの破断は起こらなかった。結果を表1に示す。
偏光フィルム製造を連続して実施し、フィルムの破断が生じる連続実施時間又はフィルムの破断が生じることなく続いた連続実施時間を確認した。またフィルムの破断が生じた場合には、フィルムの破断が生じるまでの連続実施時間から1時間当たりのフィルムの破断頻度を算出した。実施例1については、偏光フィルム製造を連続して24時間実施したところ、24時間の稼働中、いずれの処理工程においてもフィルムの破断は起こらなかった。結果を表1に示す。
<実施例2〜5>
実施例2〜5について、実施例1と異なる製造条件については表1に示し、その他の製造条件は実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。得られた偏光フィルムについて、第1架橋時延伸工程及び第2架橋時延伸工程の幅減少率の算出、及び破断評価を行った。結果を表1に示す。
実施例2〜5について、実施例1と異なる製造条件については表1に示し、その他の製造条件は実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。得られた偏光フィルムについて、第1架橋時延伸工程及び第2架橋時延伸工程の幅減少率の算出、及び破断評価を行った。結果を表1に示す。
表1に示すように、実施例2,3については偏光フィルム製造を連続して24時間実施したところ、24時間の稼働中、いずれの処理工程においてもフィルムの破断は起こらなかった。実施例4については偏光フィルム製造を連続して72時間実施したところ、72時間の稼働中、いずれの処理工程においてもフィルムの破断は起こらなかった。実施例5については偏光フィルム製造を連続して60時間実施した時点でフィルムが破断した。
<比較例1〜3>
比較例1〜3について、実施例1と異なる製造条件については表1に示し、その他の製造条件は実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。得られた偏光フィルムについて、第1架橋時延伸工程及び第2架橋時延伸工程の幅減少率の算出、及び破断評価を行った。結果を表1に示す。
比較例1〜3について、実施例1と異なる製造条件については表1に示し、その他の製造条件は実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。得られた偏光フィルムについて、第1架橋時延伸工程及び第2架橋時延伸工程の幅減少率の算出、及び破断評価を行った。結果を表1に示す。
表1に示すように、比較例1については偏光フィルム製造を連続して3.5時間実施した時点でフィルムが破断した。比較例2については偏光フィルム製造を連続して2.5時間実施した時点でフィルムが破断した。比較例3については偏光フィルム製造を連続して4時間実施した時点でフィルムが破断した。
10 ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルム、11 原反ロール、13 膨潤浴、15 染色浴、16 第1架橋浴、17 第2架橋浴、18 洗浄浴、21 乾燥炉、23 偏光フィルム、30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,44,60,61 ガイドロール、50,51,52,53,54,55,56 ニップロール。
Claims (1)
- ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを処理浴に浸漬させながら搬送して上流側ニップロールと下流側ニップロールの間の周速差を利用して一軸延伸を行う延伸工程を有し、
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、未延伸時の厚さが65μm以下であり、
前記処理浴は、複数の架橋浴を含み、
前記延伸工程は、搬送方向1番目の架橋浴への浸漬を伴う第1架橋時延伸工程と、搬送方向2番目の架橋浴への浸漬を伴う第2架橋時延伸工程と、を有し、
前記第1架橋時延伸工程は、上流側ニップロール通過時のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの累積延伸倍率が2.5倍以上であり、
前記第2架橋時延伸工程は、幅減少率Rが0.55(%/秒)以下である低幅減少率延伸工程であり、累積延伸倍率が4.5倍であるポリビニルアルコール系樹脂フィルムの処理を含み、
前記幅減少率Rは、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの、前記上流側ニップロールの通過時の幅をW1(mm)、前記下流側ニップロールの通過時の幅をW2(mm)、前記上流側ニップロールから前記下流側ニップロールまでの搬送に要する時間をT(秒)とした場合に、下記式(1)で算出され、
前記低幅減少率延伸工程は、前記上流側ニップロール通過時の前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの累積延伸倍率が4.0倍以上、前記時間Tが21秒以上、延伸倍率が1.25倍以下である、偏光フィルムの製造方法。
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