[go: up one dir, main page]
More Web Proxy on the site http://driver.im/

JP5923023B2 - 粉末冶金用混合粉末、および焼結材料の製造方法 - Google Patents

粉末冶金用混合粉末、および焼結材料の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5923023B2
JP5923023B2 JP2012226754A JP2012226754A JP5923023B2 JP 5923023 B2 JP5923023 B2 JP 5923023B2 JP 2012226754 A JP2012226754 A JP 2012226754A JP 2012226754 A JP2012226754 A JP 2012226754A JP 5923023 B2 JP5923023 B2 JP 5923023B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
powder
mass
sintered material
impact value
particle size
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012226754A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014077183A (ja
Inventor
眞規 吉田
眞規 吉田
慎弥 有馬
慎弥 有馬
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP2012226754A priority Critical patent/JP5923023B2/ja
Publication of JP2014077183A publication Critical patent/JP2014077183A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5923023B2 publication Critical patent/JP5923023B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Powder Metallurgy (AREA)

Description

本発明は、粉末冶金によって焼結材料を得るため粉末冶金用混合粉末、およびこうした粉末冶金用混合粉末から得られる焼結材料に関するものであり、特に通常の焼結条件によっても高強度且つ高靭性を発揮する焼結材料を得るための粉末冶金用混合粉末、およびそのような焼結材料に関するものである。
鉄粉を主原料として用いて焼結材料を製造する粉末冶金においては、通常、前記主原料の粉末と、焼結材料の物性を向上させるための副原料粉末(黒鉛粉末、合金成分粉末など)と、潤滑剤などを含む混合粉末が用いられる。こうした粉末冶金による焼結材料は、材料歩留まりがよいこと、低コストで部品を製造できることから広く利用されている。また、焼結材料中には空孔が存在するため、部品の軽量化が可能であるという利点もある。しかしながら、焼結材料中に存在する空孔は、上記した特性を発揮させる反面、通常の鋼材と比較して焼結材料の衝撃値(靭性)や引張強度が低下する原因になる。
焼結材料の衝撃値や引張強度を向上させるためには、(1)焼結材料の密度を高くすること、(2)焼結時の温度を高くすること、(3)焼結材料を合金化させること、(4)光揮焼入れ処理や、浸炭焼入れ焼戻し等の熱処理を施すこと、等の手段が有効であることが知られている。しかしながら、これらの処理にはそれぞれ一長一短があり、更なる改善が望まれているのが実状である。
上記した各手段のうち、焼結材料の密度を高くすることは、空孔が少なくなる方向に作用するので、衝撃値と引張強度が向上することが期待できる。しかしながら、焼結材料の密度を高くするには、特殊な成形方法を採用する必要がある。
高密度化する方法の一つとして、粉末成形と熱間鍛造を組み合わせた粉末鍛造法が知られている。しかしながらこの方法では、特殊な設備が必要となり、生産コストが高くなるという欠点がある。高密度化する方法として、例えば特許文献1には、圧粉体を一旦成形した後、仮焼結し、その後もう一度成形(再圧縮)してから焼結(本焼結)する方法が開示されている。この方法においても、焼結材料を製造する工程がほぼ2倍となって、コストアップは避けられない。
高密度化する方法として上記の他、加熱した状態で粉末を成形する温間成形や、金型に潤滑剤を塗布した状態で成形する型潤滑成形法も提案されているが、粉末や金型を加熱する装置が必要になり、或いは潤滑剤を金型に塗布する装置が必要となり(潤滑剤を金型に均一に塗布する技術も必要)、いずれもコストアップとなる。また、成形圧力を上げることによって、高密度化することも考えられるが、成形機(プレス)の能力の面から限界がある。
粉末(鉄粉)粒子同士の結合を高めて高密度化を図るためには、焼結温度が高い方が良いことは容易に予想できる。焼結温度を高くすること(高温焼結)は、粉末間同士の元素が相互に拡散して、一体化が図れやすくなるからである。その結果として、焼結材料の衝撃値(靭性)や強度が向上することになる。こうした観点から、1180℃以上の高温で焼結する技術も提案されている(例えば特許文献2)。
高温焼結を実施するためには、通常1140℃以上の高温雰囲気を形成する設備が必要となるが、こうした設備としては、プッシャー式焼結炉や真空焼結炉などの特殊な設備が知られている。しかしながら、これらの設備は、設備コストが極めて高くなるという欠点がある。また、通常の焼結設備を採用する場合と比べて、生産性が低くなるという問題がある。
こうしたことから、上記のような特殊な設備を用いることなく、メッシュベルト焼結炉のような通常の焼結設備を用い、1130℃以下の通常の焼結温度であっても優れた特性(衝撃値、強度)が発揮できる焼結材料の実現が望まれている。
一方、焼結材料を合金化させる方法は、原料粉末の形態によって2通りに大別される。その一つは、鉄粉の製造段階(溶製工程)で強化元素を合金化させる方法(プレアロイ型鋼粉)である。また他の方法としては、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)などの金属粉末を鉄粉に混合し、この混合粉末を焼結することによって、焼結材料を合金化させる方法(プレミックス法)である。後者の方法において、混合する金属粉末は純鉄粉に混合されるのが一般的であるが、予め合金化したプレアロイ型鋼粉に対して金属粉末を添加して原料粉末とされるようになっている。或は、これらの金属粉末の偏析を防止するという観点から、金属粉末に熱を加えることや、有機バインダーによって鉄粉表面に金属粉末を付着させた鉄粉も提案されている。
プレアロイ型鋼粉を用いて焼結材料を製造した場合には、焼結材料の強度は基本的に向上する傾向を示す。しかしながら、強度を向上させることはそれに反比例して衝撃値は却って低下するのが一般的である。またニッケル、モリブデン、銅などの金属粉末を鉄粉に混合した混合粉末を用いた場合には、焼結時にこれらの合金元素が鉄粉に拡散し、合金強化されて焼結材料の強度は向上することになる。しかしながら、この場合にも衝撃値が低下する傾向を示す。
合金化による特性改善の傾向は、合金化される元素の種類によっても若干異なり、4質量%の割合でNi粉末を混合した原料粉末(混合粉末)を用いたものでは、強度および衝撃値の両特性が優れたものとなる。こうした混合粉末の組成として、4%Ni拡散型混合粉末(化学成分組成:4%Ni−1.5%Cu−0.5%Mo)が知られている。こうした混合粉末では、Niが均一にならず、Ni濃度の高い部分が残留オーステナイトとなるため、衝撃値も優れたものとなる。この混合粉末を用いて得られる焼結材料では、衝撃値(シャルピー衝撃値):17J/cm2以上、引張強度:1100MPa以上の特性を発揮することになる。しかしながら、良好な特性を発揮させるためには、高純度で高価格のNi粉末を多量に使用する必要があり、Ni粉末の配合量を低減することは難しく、Ni粉末の配合量をできるだけ低減することが望まれている。
強度を高める方法としては、光揮焼入れ処理や、浸炭焼入れ焼戻し処理等の熱処理を施すことも有効である。こうした熱処理を施すことによって、金属組織はマルテンサイトとなり、引張強度は向上することになる。しかしながら、熱処理を施すことは強度向上に有効であるものの、焼結材料の衝撃値(靭性)を低下させることになる。特に浸炭焼入れ焼戻し処理を施した場合には、衝撃値の低下が顕著に現われる。浸炭焼入れ焼き戻し処理による衝撃値の低下を防止する方法としては、上記のような4質量%Ni拡散型混合粉末を原料粉末として用いる他はなく、それ以外で有効な方法は確立されていないのが実情である。
特開平2−97602号公報 特開2001−295915号公報
本発明はこうした状況の下でなされたものであって、その目的は、密度を高めるための特別な成形方法や装置を用いることなく、焼結温度が高くなる特殊な焼結を必要とせず、従来から使用されている一般的な設備を使用し、且つ高価なNi粉末の混合量を抑えることが可能であり、安価で高強度・高靭性の焼結材料を得ることができる粉末冶金用混合粉末、およびこうした混合粉末を用い、浸炭焼入れ焼戻し後であっても良好な強度および靭性を発揮できる焼結材料を提供することにある。
上記課題を解決した本発明の粉末冶金用混合粉末は、Moを0.6〜1.0質量%で含有し且つ粒径が200μm以下であるプレアロイ型鋼粉と、Ni粉と、黒鉛粉とを含み、これらプレアロイ型鋼粉、Ni粉および黒鉛粉の合計100質量%に対して、Ni粉の割合が2.3〜3.0質量%、黒鉛粉の割合が0.2〜0.4質量%であることを特徴とする。
一方、上記目的を達成した本発明の焼結材料は、Moを0.6〜1.0質量%で含有し且つ粒径が200μm以下であるプレアロイ型鋼粉と、Ni粉と、黒鉛粉とを含み、これらプレアロイ型鋼粉、Ni粉および黒鉛粉の合計100質量%に対して、Ni粉の割合が2.3〜3.0質量%、黒鉛粉の割合が0.2質量%以上である粉末冶金用混合粉末を、焼結および浸炭焼入れ焼戻しした焼結材料であり、前記プレアロイ型鋼粉の最大粒径D(μm)と黒鉛粉量(質量%)が下記(1)式の関係を満足することを特徴とする。
黒鉛粉量(質量%)≦−2.0×10-3×D(μm)+0.85 …(1)
本発明によれば、所定量のMoをプレアロイ型として鉄粉に含有させると共に、これにNi粉末の混合量を低減した粉末冶金用混合粉末とすることによって、安価で高強度・高靭性の焼結材料を得ることができる粉末冶金用混合粉末が実現でき、こうした混合粉末を用いて焼結材料を製造することによって、浸炭焼入れ焼戻し後であっても良好な強度および靭性を発揮できる焼結材料が得られる。
図1は、プレアロイ型鋼粉中のMo含有量と焼結材料のシャルピー衝撃値との関係を示すグラフである。 図2は、プレアロイ型鋼粉中のMo含有量と焼結材料の引張強さとの関係を示すグラフである。 図3は、混合粉末のNi粉添加量と焼結材料のシャルピー衝撃値との関係を示すグラフである。 図4は、混合粉末のNi粉添加量と焼結材料の引張強さとの関係を示すグラフである。 図5は、混合粉末の黒鉛粉添加量と焼結材料のシャルピー衝撃値との関係を示すグラフである。 図6は、混合粉末の黒鉛粉添加量と焼結材料の引張強さとの関係を示すグラフである。 図7は、プレアロイ型鋼粉の粒径(篩い目)と黒鉛粉添加量が焼結材料のシャルピー衝撃値に与える影響を示すグラフである。
本発明者らは、上記目的を達成できるような原料粉末(粉末冶金用混合粉末)について、様々な角度から検討した。その結果、所定量のMoを鉄粉に予め合金化させてプレアロイ型鋼粉とし、これにNi粉添加量を低減した混合粉末とすれば、所望の特性を発揮する焼結材料を得ることのできる粉末冶金用混合粉末となり得ることを見出し、本発明を完成した。また、本発明の混合粉末では、基本的にエンドサーミックガス中でも酸化しない化学成分組成が選択されることになり、通常使用される焼結ガスや浸炭用ガスが利用できるという利点もある。以下、本発明で規定する各要件について説明する。
本発明の混合粉末は、合金成分としてMoを0.6〜1.0質量%含有する(鋼粉中の割合)プレアロイ型鋼粉を含むものである。Moは強化元素の中で、鉄粉の圧縮性を比較的悪化させない元素であり、プレアロイ型鋼粉の強化元素として適している。こうしたMoは、焼結材料の強度向上に効果がある。特に、浸炭焼入れ焼戻し等の熱処理を施す場合には、その効果が顕著になる。
本発明者らがMoについてその効果を確認したところ、プレアロイ型鋼粉にMoを0.6質量%以上の含有量で合金化したものでは、添加するNi粉の添加量が少なくなっても、優れた衝撃値を示す焼結材料が得られることを見出した。但し、Moの含有量が1.0質量%を超えると、衝撃値を却って低下させることや、コストアップにもなる。尚、Mo含有量の好ましい下限は0.7質量%以上であり、好ましい上限は0.9質量%以下である。
本発明で用いるプレアロイ型鋼粉は、その粒径が200μm以下であることも重要な要件である。この粒径が細かい方が、得られた焼結材料の衝撃値が大きい値を示すものとなる。これまでの焼結材料の衝撃値(シャルピー衝撃値)は、17J/cm2以上となっているので、こうした特性を凌駕するためには、その粒径は200μm以下であることが必要である。この粒径は好ましくは180μm以下であり、より好ましくは150μm以下である。尚、「プレアロイ型鋼粉の粒径」とは、篩い目の大きさを意味し、例えば「粒径が200μm以下」とは、篩い目が200μmのメッシュを通過する粒径であることを意味する。また、「最大粒径」とは、粉末を通過させたメッシュの篩い目の大きさを意味する。
本発明で用いるプレアロイ型鋼粉は、合金成分としてMoを含み、残部は基本的に鉄および不可避不純物(例えば、0.3質量%以下のMn,Ni,Cu等)である。本発明でプレアロイ型鋼粉とは、Moを合金成分として含有する溶鋼から得られるプレアロイ型の鋼粉である。このプレアロイ型鋼粉は、通常、溶融した鋼をアトマイズ処理することによって製造される。
本発明の粉末冶金用混合粉末は、上記のようなプレアロイ型鋼粉と、Ni粉と、黒鉛粉とを含むものである。Ni粉は、焼結材料の引張強度および衝撃値を向上させる作用を発揮する。こうした効果は、Ni粉の割合が、プレアロイ型鋼粉、Ni粉および黒鉛粉の合計100質量%に対して2.3質量%以上で有効に発揮させる。しかしながら、Ni粉の割合が3.0質量%を超えると、コストアップとなる。換言すれば、Ni粉の割合(最終的に焼結材料中のNi含有量)が3.0質量%以下であってもNiによる特性向上効果が有効に達成されることになる。Ni粉の割合の好ましい下限は2.5質量%以上であり、好ましい上限は2.8質量%以下である。Ni粉の平均粒径については、通常2〜5μm程度(好ましくは2.5〜4.5μm程度)である。
一方、黒鉛粉は、鋼粉(母粉)中に拡散し、炭素となる。この炭素は焼結材料の強度を高める作用を発揮するが、衝撃値を低下させる傾向を示す。浸炭焼入れ処理を施した焼結材料では、材料表面の炭素量が高く、材料中心部とは異なり、濃度勾配を有することになる。本発明者らが、焼結材料の衝撃値と黒鉛粉の割合との関係について検討したところ、焼結材料において17J/cm2以上の衝撃値を確保するためには、黒鉛粉の割合は、プレアロイ型鋼粉、Ni粉および黒鉛粉の合計100質量%に対して0.4質量%以下とすればよいことが判明した。但し、黒鉛粉の割合が低くなりすぎると、強度向上効果が発揮されなくなるので(引張強さで1200MPa以上が好ましい)、0.2質量%以上とする必要がある。尚、黒鉛粉は、焼結材料中の炭素成分となるが、焼結時に鉄粉中の酸素と反応しCOガスとなるなど鉄粉中に全てが拡散されず、上記範囲(0.2〜0.4質量%)は、焼結材料中の炭素量では0.15〜0.37質量%程度となる。黒鉛粉の平均粒径については、通常2〜10μm程度(好ましくは2.5〜7.5μm程度)である。
本発明の粉末冶金用混合粉末には、必要によって潤滑剤も配合される。この潤滑剤は圧粉体と金型との摩擦係数を低減することによって、型かじりや金型の損傷の発生を抑制する作用を発揮するものである。こうした潤滑剤としては、例えばエチレンビスステアリルアミド、ステアリン酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム等が挙げられる。潤滑剤を含有するときの配合量は、混合粉末全体に対して0.2〜2.0質量%程度が好ましい。その配合量が0.2質量%未満では、潤滑剤による効果が発揮されなくなり、2.0質量%を超えると、焼結材料の強度が低下する虞がある。
本発明者らは、プレアロイ型鋼粉の粒径と黒鉛粉の割合(黒鉛粉量)が、焼結材料の衝撃値にあたえる影響について検討した。その結果、焼結材料において、17J/cm2以上の衝撃値(シャルピー衝撃値)を確保するためには、プレアロイ型鋼粉の最大粒径D(μm:但し200μm以下)と黒鉛粉量(質量%)が下記(1)式の関係を満足するが良いことが判明した(後記図7参照)。この場合には、黒鉛粉量は0.4質量%よりも高くなっても良い(好ましくは0.6質量%以下)。
黒鉛粉量(質量%)≦−2.0×10-3×D(μm)+0.85 …(1)
本発明の焼結材料は、上記のような粉末冶金用混合粉末を用いて、成形(圧粉体成形)、焼結および浸炭焼入れ焼戻しされて焼結材料とされるが、各工程における条件については、現状行われている通常の条件に従えばよく、特別な装置を必要としない。
例えば、圧粉体成形における圧力については、588〜686MPa程度である。焼結温度については、1050℃以上、1130℃以下であればよい。また、焼結・浸炭時における炉内雰囲気については、真空雰囲気や特殊なガス雰囲気に制御する必要はなく、通常使用される焼結ガスや浸炭用ガス(例えばRXガス)が適用できる。
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
[実験1]
下記表1〜3の成分組成となるように、原料粉末をミキサーで混合して(30分)調製した混合粉末に対し、下記の条件で成形(圧粉体成形)、焼結、加工、浸炭焼き入れ焼戻し処理を行い、焼結材料(浸炭材)とした。得られた焼結材料の機械的特性(密度、シャルピー衝撃値、引張強さ、硬さ)を評価した。下記表1〜3においてプレアロイ型鋼粉中の合金成分(Mn,Ni,Mo)の含有量は、鋼粉中の含有量であり、添加材の割合は混合粉末全体に対する割合である(下記表4、6、8においても同じ)。また、混合粉末を調製するに際しては、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛(Zn−St)を0.75質量%(混合粉末全体に対する割合)となるように配合した。
尚、このとき用いたプレアロイ型鋼粉は、粒径(通過させた篩い目の大きさ)が250μmのものである。また、添加材として用いる場合の各粉末は、Ni粉:カーボニルNi粉(平均粒径が2.5μmのもの)、Cu粉:アトマイズCu粉(100メッシュアンダーのもの)であり、添加したMo粉および黒鉛粉の粒径(平均粒径)は、夫々3μm、5μmである。
〈成形工程〉
成形圧力:588MPa(6t/cm2
形状:10×10×60(mm)
〈焼結工程〉
焼結温度:1120℃(30分)
焼結雰囲気:(10質量%の水素を含む窒素雰囲気)
〈加工〉
引張試験片:機械加工してJIS4号(φ5mm)の引張試験片を作製
衝撃試験片:未加工の状態(10×10×60(mm)のまま)
〈浸炭焼入れ焼戻し〉
浸炭焼入れ:920℃×90分(RXガス雰囲気:カーボンポテンシャル0.8%)
→850℃×60分(油焼入れ)
焼戻し処理:200℃×60分(大気中)
上記のようにして得られた焼結材料(浸炭材)について、常温で引張速度:0.5mm/分の条件で引張強さを測定する(試験片形状に加工したもの)と共に、常温でシャルピー衝撃試験を行って衝撃値(シャルピー衝撃値)を測定した[形状が10×10×60(mm)のもの]。また、衝撃試験に用いた試験片表面の硬さをロックウエルAスケール(HRA)で測定した。その結果を、下記表1〜3に併記する。
表1から明らかなように、Moをプレアロイ型鋼粉の合金成分として含有させることは、衝撃値(靭性)を低下させることなく、強度向上に有効であることが分かる(試験No.1、2)。これに対し、Niをプレアロイ型鋼粉の合金成分として含有させたものでは衝撃値や強度を却って低下させる傾向を示すことが分かる(試験No.3、4)。
表2から明らかなように、Moをプレアロイ型鋼粉の合金成分として含有させると共に、所定量のNi粉を添加したものでは、焼結材料の密度を高めて、衝撃値と強度の向上に有効であることが分かる。特に、プレアロイ型鋼粉中にMoを0.85質量%含有させたものでは(試験No.9)、衝撃値と強度の向上に最も有効であると期待できる。但し、これらのデータは、いずれもプレアロイ型鋼粉の粒径(篩い目)が250μmであり、シャルピー衝撃値は17J/cm2以上を達成していないものである。またプレアロイ型鋼粉中のMo含有量を0.5質量%や1.5質量%としたものでは(試験No.8、10)では、衝撃値の向上が達成されず、或は却って低下しており、プレアロイ型鋼粉の粒径(篩い目)の微細化を図っても期待する衝撃値が達成されないことが予想される。
表3から明らかなように、Moをプレアロイ型鋼粉の合金成分として含有させずに(表3に示した「プレアロイ型鋼粉」は、実質的に「純鉄粉」に相当する)、粉末(添加材)として添加した場合には、衝撃値の向上が達成されないことが分かる。
[実験2]
下記表4の成分組成(および粒径)となるように、原料粉末をミキサーで混合して(30分)調製した混合粉末に対し、実験1と同様にして成形(圧粉体成形)、焼結、加工、浸炭焼き入れ焼戻し処理を行い、焼結材料(浸炭材)とした。得られた焼結材料の機械的特性(密度、シャルピー衝撃値、引張強さ、硬さ)を、実験1と同様にして評価した。
その結果を、下記表5に示す。表5の結果に基づき、プレアロイ型鋼粉中のMo含有量と焼結材料のシャルピー衝撃値との関係を図1に、プレアロイ型鋼粉中のMo含有量と焼結材料の引張強さとの関係を図2に、夫々示す。尚、図1、2においては、プレアロイ型鋼粉中のNi含有量が0質量%、0.5質量%、2質量%のものを、夫々○、□、△で示した。
これらの結果から、次のように考察できる。プレアロイ型鋼粉中のMo含有量を0.6〜1.0質量%とした場合には、シャルピー衝撃値を大きくできることが分かる(図1)。しかしながら、Mo含有量が1.0質量%を超えると、シャルピー衝撃値は却って低下している。これに対して、Niをプレアロイ型鋼粉の合金成分として含有させても、シャルピー衝撃値を改善できず、却って低下させる傾向を示している。
また、引張強さに関しては、Mo含有量の如何に関わらず、高い強度が確保できることが分かる(図2)。しかしながら、プレアロイ型鋼粉中にNiを含有させると、その含有量が増加するにつれて、引張強さは低下する傾向を示す。
[実験3]
下記表6の成分組成(および粒径)となるように、原料粉末をミキサーで混合して(30分)調製した混合粉末に対し、実験1と同様にして成形(圧粉体成形)、焼結、加工、浸炭焼き入れ焼戻し処理を行い、焼結材料(浸炭材)とした。得られた焼結材料の機械的特性(密度、シャルピー衝撃値、引張強さ、硬さ)を、実験1と同様にして評価した。
その結果を、下記表7に示す。表7の結果に基づき、混合粉末のNi粉添加量と焼結材料のシャルピー衝撃値との関係を図3に、混合粉末のNi粉添加量と焼結材料の引張強さとの関係を図4に、夫々示す。尚、図3、4においては、Cu粉添加量が0質量%、1質量%、2質量%、3質量%のものを、夫々○、□、△、◇で示した。
これらの結果から、次のように考察できる。即ち、Cu粉添加量に係わらず、Ni粉添加量が増加するにつれて、シャルピー衝撃値が高くなっていることが分かる(図3)。これに対し、混合粉末にNi粉を添加した場合には、その添加量が増加するにつれて引張強さは向上する方向に作用するものの、Cu粉を添加した場合には引張強さは却って低下する傾向を示すことになる(図4)。また、Ni粉の添加によって、シャルピー衝撃値と引張強さの両特性を確保するためには、その添加は2.3〜3.0質量%程度でよいことが確認できた。
尚、表7に示したデータは、いずれもプレアロイ型鋼粉の粒径(篩い目)が250μmであるが、なかにはシャルピー衝撃値が17J/cm2以上を達成している(試験No.28、34)。特に、試験No.28では、シャルピー衝撃値と引張強さ(1200MPa以上)の両特性を満足するものとなっている。プレアロイ型鋼粉の粒径(篩い目)が250μmのものを用いた場合には、原料粉末の粒径差が大きくなることによる混合粉末の不均一に起因して、焼結材料の特性のばらつきが生じやすくなる(試験No.34で引張強さが低下)。黒鉛粉の添加量が0.2質量%以上で安定した特性を発揮させる上からしても、プレアロイ型鋼粉の粒径(篩い目)が200μm以下とする必要がある。
また粒径が大きい方が、大きい(粗い)粒子が含まれることになり、粉末の不均一、また空孔の大きさも不均一となる。そのため浸炭時(浸炭ガスの侵入)のバラツキも生じやすくなると考えられる。尚、試験No.34は、Ni粉とCu粉の合計が4.5質量%となり、プレアロイ型鋼粉に含まれるMo量とあわせると、所期の目的である合金量の低減にはならないものとなる。
[実験4]
下記表8の成分組成(および粒径)となるように、原料粉末をミキサーで混合して(30分)調製した混合粉末に対し、実験1と同様にして成形(圧粉体成形)、焼結、加工、浸炭焼き入れ焼戻し処理を行い、焼結材料(浸炭材)とした。得られた焼結材料の機械的特性(密度、シャルピー衝撃値、引張強さ、硬さ)を、実験1と同様にして評価した。
その結果を、下記表9に示す。表9の結果に基づき、混合粉末の黒鉛粉添加量と焼結材料のシャルピー衝撃値との関係を図5に、混合粉末の黒鉛粉添加量と焼結材料の引張強さとの関係を図6に、夫々示す。尚、図5、6においては、プレアロイ型鋼粉の粒径(篩い目)が250μm、180μm、150μmのものを、夫々○、□、△で示した。
この結果から次のように考察できる。即ち、プレアロイ型鋼粉の粒径(篩い目)を200μm以下としつつ、黒鉛粉添加量を0.2〜0.4質量%とすることによって、シャルピー衝撃値と引張強さの両特性を満足できることが分かる。尚、表7に示したデータでは、プレアロイ型鋼粉の粒径(篩い目)が250μmで、シャルピー衝撃値が17J/cm2以上を達成しているものも見られる(試験No.49〜51)。特に、試験No.50、51では、シャルピー衝撃値と引張強さの両特性を満足するものとなっている。上述したように、これらのものは、焼結材料の特性のばらつきが生じやすくなったものである(試験No.49で引張強さが低下)。また粒径が大きい方が、大きい(粗い)粒子が含まれることになり、粉末の不均一、また空孔の大きさも不均一となる。そのため浸炭時(浸炭ガスの侵入)のバラツキも生じやすくなると考えられる。
上記表9の結果に基づき、プレアロイ型鋼粉の粒径(篩い目)と黒鉛粉添加量が焼結材料のシャルピー衝撃値に与える影響を、図7に示す。尚、図7においては、焼結材料の衝撃値が17J/cm2以上を満足するものを○、満足しないものを□で示した。この結果から明らかなように、黒鉛粉添加量が0.2質量%以上においては、プレアロイ型鋼粉の粒径(篩い目)が小さくなるほど、良好な特性を発揮させるための黒鉛粉添加量が増加できることが分かる。
この結果に基づいて、前記(1)式が求められた。即ち、プレアロイ型鋼粉の粒径(篩い目)が150μmと250μmの夫々において、焼結材料の衝撃値が17J/cm2以上を満足するものと、満足しないものの黒鉛粉添加量の中間値として、0.55質量%および0.35質量%を選び、これらの2点(粒径が150μmで黒鉛粉添加量が0.55質量%の点と、粒径が250μmで黒鉛粉添加量が0.35質量%の点)を結ぶ直線に基づいて、前記(1)式が求められた。

Claims (2)

  1. プレアロイ型鋼粉が通過する篩い目の大きさを粒径としたとき、Moを0.6〜1.0質量%で含有し且つ前記粒径が200μm以下であるプレアロイ型鋼粉と、Ni粉と、黒鉛粉とを含み、これらプレアロイ型鋼粉、Ni粉および黒鉛粉の合計100質量%に対して、Ni粉の割合が2.3〜3.0質量%、黒鉛粉の割合が0.2〜0.4質量%であることを特徴とする粉末冶金用混合粉末。
  2. プレアロイ型鋼粉が通過する篩い目の大きさを粒径としたとき、Moを0.6〜1.0質量%で含有し且つ前記粒径が200μm以下であるプレアロイ型鋼粉と、Ni粉と、黒鉛粉とを含み、これらプレアロイ型鋼粉、Ni粉および黒鉛粉の合計100質量%に対して、Ni粉の割合が2.3〜3.0質量%、黒鉛粉の割合が0.2質量%以上であって、前記プレアロイ型鋼粉の最大粒径D(μm)と黒鉛粉量(質量%)が下記(1)式の関係を満足する粉末冶金用混合粉末を、焼結および浸炭焼入れ焼戻しすることを特徴とする焼結材料の製造方法
    黒鉛粉量(質量%)≦−2.0×10-3×D(μm)+0.85 …(1)
JP2012226754A 2012-10-12 2012-10-12 粉末冶金用混合粉末、および焼結材料の製造方法 Active JP5923023B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012226754A JP5923023B2 (ja) 2012-10-12 2012-10-12 粉末冶金用混合粉末、および焼結材料の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012226754A JP5923023B2 (ja) 2012-10-12 2012-10-12 粉末冶金用混合粉末、および焼結材料の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014077183A JP2014077183A (ja) 2014-05-01
JP5923023B2 true JP5923023B2 (ja) 2016-05-24

Family

ID=50782727

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012226754A Active JP5923023B2 (ja) 2012-10-12 2012-10-12 粉末冶金用混合粉末、および焼結材料の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5923023B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN105364064A (zh) * 2015-10-28 2016-03-02 武汉万邦激光金刚石工具股份有限公司 金属结合剂金刚石节块钢模加热成型方法

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS61163239A (ja) * 1985-01-15 1986-07-23 Toyota Motor Corp 高強度焼結合金の製造方法
TW201129433A (en) * 2009-10-26 2011-09-01 Hoganas Ab Publ Iron based powder composition
KR101867843B1 (ko) * 2010-12-30 2018-06-18 회가내스 아베 (피유비엘) 분말 사출 성형용 철계 분말

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014077183A (ja) 2014-05-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6227903B2 (ja) 粉末冶金用合金鋼粉および鉄基焼結体の製造方法
JP5958144B2 (ja) 粉末冶金用鉄基混合粉および高強度鉄基焼結体ならびに高強度鉄基焼結体の製造方法
JP5949952B2 (ja) 鉄基焼結体の製造方法
JP6227871B2 (ja) 焼結硬化鋼製部品を製造するための母合金、および焼結硬化部品を製造するためのプロセス
JP2010090470A (ja) 鉄系焼結合金およびその製造方法
JP5929967B2 (ja) 粉末冶金用合金鋼粉
US10661344B2 (en) Fe-based sintered alloy and manufacturing method thereof
JP2011094187A (ja) 高強度鉄基焼結体の製造方法
JP6515955B2 (ja) 粉末冶金用混合粉末および鉄基焼結体の製造方法
JP4371003B2 (ja) 粉末冶金用合金鋼粉
JP5923023B2 (ja) 粉末冶金用混合粉末、および焼結材料の製造方法
JP6528899B2 (ja) 粉末冶金用混合粉および焼結体の製造方法
JP5929084B2 (ja) 粉末冶金用合金鋼粉ならびに鉄基焼結材料およびその製造方法
KR100978901B1 (ko) 고인장강도 및 고경도를 가지는 철계 소결체 제조 방법
JP6645631B1 (ja) 粉末冶金用合金鋼粉および粉末冶金用鉄基混合粉末
JP2016145418A (ja) 鉄基焼結合金およびその製造方法
JP4715358B2 (ja) 粉末冶金用合金鋼粉
CN113677459A (zh) 粉末冶金用铁基混合粉末和铁基烧结体
JPWO2019189012A1 (ja) 粉末冶金用合金鋼粉および粉末冶金用鉄基混合粉末
JP2012126972A (ja) 粉末冶金用合金鋼粉ならびに鉄基焼結材料およびその製造方法
WO2023157386A1 (ja) 粉末冶金用鉄基混合粉および鉄基焼結体
JP2007100115A (ja) 粉末冶金用合金鋼粉
JP2010255082A (ja) 鉄系焼結合金およびその製造方法
JP2007126695A (ja) 粉末冶金用合金鋼

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20140901

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20150624

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150707

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150907

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160105

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160226

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160412

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160415

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5923023

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150