以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
図1に、本発明に係る車両用空調装置1の第1実施形態の概略構成を示す。
車両用空調装置1は、電気自動車やハイブリット自動車に適用されるもので、車室内前席側を空調するための前席側空調ユニット10を備える。前席側空調ユニット10は空調ケーシング11を有し、この空調ケーシング11内に車室内前席側へ向かって空気が送風される空気通路を構成する。
この空調ケーシング11の空気通路の最上流部に内外気切替箱12を配置し、内気導入口13および外気導入口14を内外気切替ドア15により切替開閉するようになっている。この内外気切替ドア15はサーボモータ16によって駆動される。
内外気切替箱12の下流側には車室内に向かって空気を送風する電動式の送風機17を配置している。この送風機17は、遠心式の送風ファン17aをモータ17bにより駆動するようになっている。送風機17の下流側には送風空気を冷却する第1の冷房用熱交換器をなす蒸発器18を配置している。
蒸発器18は、冷凍サイクル装置19を構成するものであり、低温低圧の冷媒が送風空気から吸熱して蒸発することにより送風空気を冷却する。冷凍サイクル装置19は周知のものであり、電動圧縮機20の冷媒出口側から、凝縮器21、受液器22および減圧手段をなす膨張弁23を介して蒸発器18に冷媒が循環するように構成されている。電動圧縮機20の構造について後述する。
一方、室内空調ユニット10において、蒸発器18の下流側には空調ケーシング11内を流れる空気を加熱するヒータユニット24を配置している。このヒータユニット24として、PCTヒータ等の電気ヒータが用いられる。ヒータユニット24の上側にはバイパス通路25が形成され、このバイパス通路25をヒータユニット24のバイパス空気が流れる。
蒸発器18とヒータユニット24との間に温度調整手段をなすエアミックスドア26を回転自在に配置してある。このエアミックスドア26はサーボモータ27により駆動されて、その回転位置(開度)が連続的に調整可能になっている。
エアミックスドア26の開度によりヒータユニット24を通る空気量(温風量)と、バイパス通路25を通過してヒータユニット24をバイパスする空気量(冷風量)との割合を調節して、車室内に吹き出す空気の温度を調整するようになっている。
空調ケーシング11の空気通路の最下流部には、車両の前面窓ガラス2の内表面に向けて空調風を吹き出すためのデフロスタ吹出口28、乗員顔部(乗員上半身)に向けて空調風を吹き出すためのフェイス吹出口29、および乗員足元部(乗員下半身)に向けて空調風を吹き出すためのフット吹出口30の計3種類の吹出口が設けられている。空調ケーシング11内においてバイパス通路25を通過する冷風とヒータユニット24を通過する温風とが混合されて吹出口28、29、30から車室内に吹き出される。
これら吹出口28、29、30の上流部にはデフロスタドア31、フェイスドア32、フットドア33が回転自在に配置されている。これらのドア31〜33は、図示しないリンク機構を介して共通のサーボモータ34によって開閉操作される。
デフロスタドア31は、デフロスタ吹出口28を開閉するドアである。フェイスドア32は、フェイス吹出口29を開閉するドアである。フットドア33は、フット吹出口30を開閉するドアである。
また、車両用空調装置1は、車室内後席側を空調するための後席側空調ユニット40を備える。後席側空調ユニット40は空調ケーシング41を有している。空調ケーシング41は、車室内後席側へ向かって空気が送風される空気通路を構成する。
この空調ケーシング41の空気通路の最上流部には、車室内後席側に向かって空気を送風する電動式の送風機42を配置している。この送風機42は、遠心式の送風ファン42aをモータ42bにより駆動するようになっている。送風機42の下流側には送風空気を冷却する第2の冷房用熱交換器をなす蒸発器43を配置している。
蒸発器43は、冷凍サイクル装置19を構成するものであり、低温低圧の冷媒が送風機42からの送風空気から吸熱して蒸発することにより送風空気を冷却する。蒸発器43と蒸発器18とは、電動圧縮機20の冷媒出口(具体的には、受液器22の冷媒出口)と電動圧縮機20の冷媒入口との間で並列に配置されている。受液器22の冷媒出口と蒸発器43の冷媒入口との間には膨張弁45が配置されている。
膨張弁45は、受液器22の冷媒出口から流れる冷媒を膨張させる弁である。電動圧縮機20の冷媒出口と冷媒入口との間において、膨張弁23、45、凝縮器21、受液器22、蒸発器18、43のそれぞれの間が冷媒配管46によって接続されている。本実施形態の冷媒には、潤滑オイルが含まれている。
次に、本実施形態の電動圧縮機20の構造について図2を参照して説明する。
電動圧縮機20は、圧縮機構20a、モータ20b、および駆動装置20cから構成されている。
モータ20bは、三相交流同期モータを構成するもので、ハウジング50内に収納されている回転軸52、ロータ53、ステータコア54、およびステータコイル55を備える。
ハウジング50は、アルミニウム等の金属からなるもので、冷媒入口51aおよび冷媒出口51bを有する略円筒状に形成されている。ハウジング50の外壁の上側には、装着面51dが設けられている。装着面51dには駆動装置20cが配置される
回転軸52は、ハウジング50内に配置され、軸受け52a、52bにより回転自在に支持されている。回転軸52は、ロータ53から受ける回転駆動力を圧縮機構20aに伝える。軸受け52aは、支持部59を介してハウジング50により支持されている。軸受け52bは、ハウジング50の底壁により支持されている。
ロータ53は、筒状に形成され、かつ永久磁石が埋め込まれているものであって、回転軸52に対して固定されている。ロータ53は、ステータコイル55から発生される回転磁界に基づいて、回転軸52とともに回転する。
ステータコア54は、ロータ53に対して径方向外周側に配置され、ハウジング50内において環状に形成されている。ステータコア54は、フェライト等の磁性体からなるもので、ハウジング50の内周面から支持されている。ハウジング50の内周面のうち装着面51d側とステータコア54との間には、軸線方向に冷媒を流す冷媒流路57が設けられている。
ステータコイル55は、U相コイル55a、V相コイル55b、およびW相コイル55c(図3参照)がスター結線されたもので、ステータコア54に回巻されている。U相コイル55a、V相コイル55b、W相コイル55cは、それぞれ駆動装置20cに接続されている。駆動装置20cは、モータ20bに三相交流電流を出力する電動圧縮機用の電子制御装置である。
圧縮機構20aは、スクロール型圧縮機構であって、モータ20bの回転軸52からの回転駆動力によって旋回して冷媒を吸入・圧縮・吐出する。
このように構成される電動圧縮機20では、圧縮機構20aがモータ20bによって駆動されて旋回すると、蒸発器18、43からの冷媒(低圧側冷媒)が冷媒入口51aを通して吸入される。この吸入される吸入冷媒は、ステータコア54(或いは、ステータコイル55)およびロータ53の間の隙間や冷媒流路57を通して圧縮機構20a側に流れる。これにより、吸入冷媒によって、モータ20bのステータコア54、ステータコイル55、およびロータ53を冷却することができる。このように圧縮機構20a側に流れる冷媒は、圧縮機構20aによって圧縮されて吐出される。この吐出される冷媒は、高圧側冷媒として冷媒出口51bから凝縮器21の入口側に流れる。
次に、本実施形態の車両用空調装置1の電気的構成について図3を参照して説明する。
車両用空調装置1は、空調装置用電子制御装置60(以下、単に電子制御装置60という)を備える。電子制御装置60は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成される。この電子制御装置60は、そのROM内に空調制御のためのコンピュータプログラムを記憶しており、そのコンピュータプログラムに基づいて各種演算、処理を行う。
電子制御装置60には、駆動装置20cからの通信信号、電力管理用電子制御装置80からの通信信号、周知の空調用センサ群61〜65からの検出信号、および空調操作パネル66からの各種操作信号が入力される。電力管理用電子制御装置80は、バッテリ(二次電池)の電力残量や走行用電動機の消費電力に応じて電動圧縮機20に供給可能である電力を目標消費電力として算出する。
空調用センサ群としては、具体的には、外気温(車室外温度)Tamを検出する外気センサ61、内気温(車室内温度)Trを検出する内気センサ62、車室内に入射する日射量Tsを検出する日射センサ63、蒸発器18の空気吹出部に配置されて蒸発器吹出空気温度Teを検出する蒸発器温度センサ64、ヒータユニット24のヒータ温度Thを検出する温度センサ65等が設けられる。
また、空調操作パネル66には、車室内の設定温度Tsetを設定する温度設定スイッチ、ドア31〜33により切り替わる吹出モードをマニュアル設定する吹出モードスイッチ、内外気切替ドア15による内外気吸込モードをマニュアル設定する内外気切替スイッチ、電動圧縮機20の作動指示信号を出すエアコンスイッチ、送風機17、42の風量をマニュアル設定する送風機作動スイッチ、後席用空調制御の実行を開始・停止させる後席空調スイッチ等が設けられる。
電子制御装置60の出力側には、サーボモータ16、27、34、送風機17のモータ17b、送風機42のモータ42b等が接続され、これらの機器の作動が電子制御装置60の出力信号により制御される。
電動圧縮機20の駆動装置20cは、制御回路70、インバータ回路71、および電流センサ73を備える。
制御回路70は、CPUなどから構成され、コンピュータプログラムを実行する。制御回路70は、このコンピュータプログラムの実行に伴って、電子制御装置60から指示される指示回転数と電力管理用電子制御装置80から指示される目標消費電力、電流センサ73の検出電流、電圧センサ75の検出電圧に基づいてインバータ回路71のトランジスタSW1、SW2、SW3、SW4、SW5、SW6を制御する。
電流センサ73は、負極側母線72bに流れる電流を検出する。負極側母線72bに流れる電流は、W相電流、V相電流、およびU相電流が重畳されたものである。W相電流は共通接続点T1からW相コイル55aに流れる電流である。V相電流は共通接続点T2からV相コイル55bに流れる電流である。U相電流は共通接続点T3からU相コイル55cに流れる電流である。電圧センサ75は、バッテリ76の正極電極および負極電極の間の電圧を検出する。
制御回路70は、電子制御装置60、および電力管理用電子制御装置80は、車載LAN91で接続されている(図4参照)。なお、車載LAN91の通信プロトコルとしては、CAN、或いはLINが用いられている。
インバータ回路71は、モータ10bに三相交流電流を出力する電流出力回路を構成するもので、トランジスタSW1、SW2、SW3、SW4、SW5、SW6を備える。
トランジスタSW1、SW4は負極側母線72bと正極側母線72aとの間に直列接続され、トランジスタSW2、SW5は負極側母線72bと正極側母線72aとの間で直列接続され、トランジスタSW3、SW6は負極側母線72bと正極側母線72aとの間で直列接続されている。
トランジスタSW1、SW4の共通接続点T1は、W相コイル55aに接続され、トランジスタSW2、SW5の共通接続点T2は、V相コイル55bに接続され、トランジスタSW3、SW6の共通接続点T3は、U相コイル55cに接続されている。
トランジスタSW1、SW2、SW3、SW4、SW5、SW6がスイッチングすることにより、バッテリ76の出力電圧に基づき、共通接続点T1、T2、T3から三相交流電流がステータコイル55に出力される。
なお、トランジスタSW1、SW2…SW6としては、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタや電界効果型トランジスタ等の半導体トランジスタが用いられている。
正極側母線72aと負極側母線72bとの間には、バッテリ76とコンデンサ74とが並列に接続されている。バッテリ76は、正極側母線72a側に電源電圧を出力する。コンデンサ74はバッテリ76から正極側母線72aに出力される電圧を安定化させる。
次に、本実施形態の車両用空調装置1の作動の概略について説明する。
電子制御装置60は、空調制御処理と指示制御処理と時分割で交互に繰り返し実行する。電動圧縮機20の駆動装置20cの制御回路70は、モータ制御処理を繰り返し実行する。
以下、制御回路70の制御処理に先だって電子制御装置60の制御処理について説明する。
電子制御装置60における空調制御処理および指示制御処理の実行は、車両イグニッションスイッチが投入され電源が供給されると、開始される。以下、空調制御処理を指示制御処理に先だって説明する。
(空調制御処理)
電子制御装置60は、メモリに記憶されたコンピュータプログラムの実行をスタートして、図5に示すフローチャートにしたがって空調制御処理を実行する。
まず、ステップS100において、温度設定スイッチにより設定される設定温度Tsetを読み込む。
次に、ステップS110において、外気センサ61、内気センサ62、日射センサ63、蒸発器温度センサ64、温度センサ65の検出値、および空調操作パネル66の各スイッチの出力信号を読み込む。
次に、ステップS120において、設定温度Tset、外気温Tam、内気温Tr、日射量Ts、蒸発器吹出空気温度Te、ヒータ温度Thに基づいて目標吹出温度TAOを算出する。目標吹出温度TAOは、車両環境条件(空調熱負荷条件)の変動にかかわらず、車室内の温度を設定温度Tsetに維持するために必要な目標温度である。
次に、ステップS130において、内外気モードを目標吹出温度TAOに基づいて決定する。例えば、目標吹出温度TAOが低温側領域にあるときは内外気モードとして内気循環モードとし、目標吹出温度TAOが高温側領域にあるときは内外気モードとして外気導入モードとする。そして、目標吹出温度TAOがこの低温側領域と高温側領域との間の中間温度領域にあるときは内外気モードを内気と外気の両方が同時に導入される内外気混入モードとする。
ここで、内気循環モードは、内外気切替ドア15によって内気導入口13を開けて外気導入口14を閉じるモードである。外気導入モードは、内外気切替ドア15によって内気導入口13を閉じて外気導入口14を開けるモードである。内外気混入モードは、内外気切替ドア15によって内気導入口13および外気導入口14をそれぞれ開けるモードである。
次に、ステップS140において、吹出モードを目標吹出温度TAOや吹出モードスイッチの設定に基づいて決定する。
例えば、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード、およびデフロスタモードのうちいずれか1つモードが吹出モードスイッチによって設定されているときには、この設定される1つモードを吹出モードとして決定する。一方、吹出モードスイッチによってモードが設定されていないときには、吹出モードを目標吹出温度TAOに基づいて決定する。例えば、目標吹出温度TAOが低温側から上昇するにつれて、吹出モードをフェイスモード→バイレベルモード→フットモードの順に自動的に切り替える。
ここで、デフロスタモードは、デフロスタ吹出口28から前面窓ガラス2の内表面に向けて空調風を吹き出すためのモードである。フェイスモードは、フェイス吹出口29から乗員上半身に空調風を吹き出すモードであり、フットモードは、フット吹出口30から乗員下半身に空調風を吹き出すモードである。バイレベルモードは、フェイス吹出口29及びフット吹出口30からそれぞれ乗員上半身及び乗員下半身に空調風を吹き出すモードである。
次に、ステップS150において、目標吹出温度TAOに基づいて、送風機17のモータ17bおよび送風機42のモータ42bに印加するブロワ電圧を決定する。このブロワ電圧によりモータ17b、42bの回転数を変化させ、それにより、送風機17、42の風量をそれぞれ制御することができる。
例えば、目標吹出温度TAOが所定の低温側領域および高温側領域にあるときはブロワ電圧を高くして風量を大きくし、目標吹出温度TAOがこの低温側領域と高温側領域との間の中間温度領域にあるときはブロワ電圧を低くするようにブロワ電圧を決定する。
次に、ステップS160において、蒸発器吹出空気温度Teおよび目標吹出温度TAOに基づいて、電動圧縮機20のモータ20bの指示回転数を算出する。この指示回転数は、蒸発器吹出空気温度Teを所定目標温度に近づけるための回転数である。
次に、ステップS170において、エアミックスドア26の目標開度を設定温度Tset、蒸発器吹出空気温度Te、ヒータ温度Th、目標吹出温度TAOに基づいて、算出する。
以上のように決定した内外気切替モード、吹出モード、ブロワ電圧、目標開度などを示す各制御信号を、サーボモータ16、27、34、モータ17b、42b等に出力して、送風機17、42、内外気切替ドア15、ドア31〜33、エアミックスドア26等の作動を制御する(ステップS180)。これに加えて、電動圧縮機20のモータ20bの指示回転数を電動圧縮機20の制御回路70に出力する。このため、後述するように指示回転数に応じて電動圧縮機20の回転数が制御される。
その後、ステップS190において、一定時間τ経過したか否かを判定する。
一定時間τは、ステップS100の処理を実行開始後に経過した時間である。そこで、ステップS100の処理を実行開始後に一定時間τ経過した判定すると、ステップS190でYESとする。すると、ステップS100の処理に戻り、上述の空調制御処理(ステップS110〜S1190)が繰り返される。このような算出・処理の繰り返しによって車室内の通常空調制御が実行されることになる。
これに伴い、サーボモータ16の駆動により内外気切替ドア15を駆動して内気導入口13および外気導入口14のうち少なくとも一方を開けられる。したがって、送風ファン17aの回転に伴って内気導入口13或いは外気導入口14から空気を空調ケーシング11内に導入する。この導入される空気は、蒸発器18に流れる。この導入空気は蒸発器18によって冷却される。このため、蒸発器18から冷風が吹き出される。この吹き出される冷風は、エアミックスドア26によってヒータユニット24側とバイパス通路25側とに分流される。
ヒータユニット24は、蒸発器18から吹き出される冷風を加熱する。この加熱された温風とバイパス通路25を通過した冷風は混合されて空調風として吹出口28、29、30側に流れる。
このとき、ドア31〜33は、サーボモータ34によって制御される。このため、デフロスタ吹出口28、フェイス吹出口29、およびフット吹出口30の少なくとも1つ吹出口が開けられる。この開けられた吹出口から空調風が吹き出される。
ここで、エアミックスドア26の開度は、サーボモータ27によって設定される。このため、ヒータユニット24を通る空気量(温風量)と、バイパス通路25を通過してヒータユニット24をバイパスする空気量(冷風量)との割合が調節されて、車室内に吹き出す空調風の温度が調整される。
また、空調操作パネル66の後席空調スイッチによって後席空調モードが設定されているときには、送風機42のモータ42bに対して電圧を印加させる。このとき、受液器22側から膨張弁45を通して蒸発器43に冷媒が流れる。送風機42は、車室内後席側の空気を空調ケーシング41内に吸い込んで蒸発器43側に吹き出す。この吹き出される空気は蒸発器43によって冷却される。このため、蒸発器43から冷風が空調ケーシング41の吹出口から車室内後席側に吹き出される。
なお、空調操作パネル66の後席空調スイッチによって後席空調モードが設定されていないときには、送風機42のモータ42bに対する電圧の印加を停止する。
ここで、後席空調スイッチによって後席空調モードが設定されていないときには、冷媒配管46のうち蒸発器43側の冷媒配管に潤滑オイルが滞留する場合がある。特に、冷媒配管46のうち蒸発器43側の冷媒配管が他の冷媒配管よりも低い位置に配置されている場合に、蒸発器43側の冷媒配管に潤滑オイルが滞留する。蒸発器43側の冷媒配管とは、蒸発器43を介して受液器22の冷媒出口と電動圧縮機20の冷媒入口との間を接続する冷媒配管のことである。
このように蒸発器43側の冷媒配管に潤滑オイルが滞留すると、圧縮機構20aにて潤滑オイルが不足して圧縮機構20aの使用可能期間(すなわち、寿命)が短くなる恐れがある。
そこで、電子制御装置60は、後席空調スイッチによって後席空調モードが設定されていない期間が継続して一定期間以上になると、潤滑オイル戻し制御を実行して、圧縮機構20aの潤滑オイルの不足を解消する。
具体的には、潤滑オイル戻し制御では、送風機42のモータ42bに対して電圧を印加して送風機42の送風を開始させる。これに加えて、駆動装置20cの制御回路70に対して例えば目標回転数として最大値回転数を指示する。このため、通常空調制御を実施する場合に比べて、電動圧縮機20の吐出される冷媒流量を増加させつつ、吐出冷媒圧力を高くすることができる。したがって、受液器22側から膨張弁45を通して蒸発器43に流れる冷媒を増加させることができる。このため、冷媒配管46のうち蒸発器43側に滞留した潤滑オイルを電動圧縮機20側に戻すことができる。
(指示制御処理)
電子制御装置60は、図6に示すフローチャートにしたがって指示制御処理を実行する。指示制御処理は、一定期間毎に繰り返し実行される。
まず、ステップS200において、空調モードとしてデフロスタモード以外の他の吹出口モードを設定しているか否かを判定する。
ここで、デフロスタモード以外の他の吹出口モード(具体的にはフェイスモード、バイレベルモード、フットモード)を設定しているときには、ステップS200でYESと判定する。
次のステップS210において、オイル戻し制御判定手段として、潤滑オイル戻し制御以外の通常空調制御を空調モードとして実施しているか否かを判定する。通常空調制御は、図5のステップS100〜S190の制御処理や後席空調モードによる空調制御を含む制御である。
ここで、通常空調制御を実施しているときには、ステップS210でYESと判定する。
このように、デフロスタモード以外の他の吹出口モードを実施し、かつ潤滑オイル戻し制御以外の通常空調制御を空調モードとして実施している場合には、ステップS220において、後述する過負荷防止制御の実行を不許可とする。
また、上記ステップS200において、デフロスタモードを実施しているときには、NOと判定して、次のステップS230において、過負荷防止制御の実行を許可する。
上記ステップS210において、潤滑オイル戻し制御を実施しているには、NOと判定して、次のステップS230において、過負荷防止制御の実行を許可する。
このように過負荷防止制御の実行の許可、或いは不許可が設定されることになる。これに伴い、過負荷防止制御の実行の許可/不許可を示す制御情報を車載LAN91を通して電動圧縮機20の駆動装置20cの制御回路7に通知する(ステップS240)。
(モータ制御処理)
電動圧縮機20の駆動装置20cの制御回路70は、図7のフローチャートにしたがって、モータ制御処理を実行する。
まず、ステップS300において、電流検出手段として、電流センサ73の検出値に基づいて、W相電流、V相電流、およびU相電流を推定する。すなわち、共通接続点T1、T2、T3からステータコイル55に出力される三相交流電流を推定することになる。さらに、三相交流電流に基づいてステータコイル55に出力される出力電流Imを求める。出力電流Imは、インバータ回路71からステータコイル55に出力される三相交流電流の実効値である。
これに加えて、三相交流電流(すなわち、W相電流、V相電流、およびU相電流)に基づいて、モータ20bの実際の回転数(以下、実回転数Ncという)を推定する(回転数検出手段)。この実回転数Ncの推定は、周知に如く、三相交流電流からモータ20bの回転位置を算出することともに、この算出された回転位置を時間で微分することにより算出される。
さらに、電圧センサ75の検出電圧に基づいてインバータ回路71からステータコイル55に出力される電圧Vmを求める。電圧Vmは、インバータ回路71からステータコイル55に出力される三相交流電圧の実効値である。これに加えて、電流Imおよび電圧Vmによってモータ20bで実際に消費されている実際の消費電力を算出する(消費電力検出手段)。
次に、ステップS310において、消費電力判定手段として、電力管理用電子制御装置80から指示される目標消費電力よりもモータ20bの実際の消費電力の方が大きいか否かを判定する。
ここで、目標消費電力は、電力管理用電子制御装置80から指示されるモータ20bが消費できる最大電力である。
例えば、目標消費電力よりもモータ20bの実際の消費電力が大きいときには、ステップS310においてYESと判定する。これに伴い、次のステップS320において、目標回転数算出手段として、実際の消費電力、目標消費電力、および実回転数Ncに基づいてモータ20bの目標回転数を算出する。
上記目標回転数は、上記ステップS160で算出される指示回転数よりも低い回転数であって、電力管理用電子制御装置80から指示される目標消費電力にモータ20bの実際の消費電力を合わせるのに必要となる回転数である。つまり、上記目標回転数とは、モータ20bの消費電力を制限するために、必要となるモータ20bの回転数のことである。
本実施形態では、次の数式1に示すように、実際の消費電力と目標消費電力との間の比と、実回転数Ncと目標回転数と間の比とが等しいとして目標回転数を算出する。
実際の消費電力:目標消費電力=実回転数Nc:目標回転数・・・(数式1)
一方、目標消費電力よりもモータ20bの実際の消費電力が小さいときには、ステップS310においてNOと判定する。これに伴い、次のステップS330において、電子制御装置60から指示される指示回転数を目標回転数として決める。
このようにステップS320、S330において目標消費電力、実際の消費電力に応じてモータ20bの目標回転数が決められることになる。
次に、ステップS340において、状態判定手段として、出力電流Imおよび実回転数Ncに基づいてモータ20bの運転領域が過負荷領域に入っているか否かを判定する。
モータ20bの運転領域は、図8に示すように、縦軸を出力電流Im(A)、横軸を実回転数Nc(rpm)としたときのグラフによって規定される。
モータ20bの運転領域は、過負荷領域SA、過負荷境界領域SB、および通常領域SCといった3つの領域に分けられる。過負荷領域SA、過負荷境界領域SB、および通常領域SCは、それぞれ、出力電流、および実回転数によって設定されている。
過負荷領域SAは、モータ20bが高温異常になることが懸念される領域である。通常領域SCは、モータ20bを支障なく、回転させることができる領域である。過負荷境界領域SBは、過負荷領域SAおよび通常領域SCの間に設定される領域である。
図8のグラフにおいて、過負荷領域SAは、点d1、点d2、および点d3を結ぶ三角形の領域である。過負荷境界領域SBは、点d2および点d3を結ぶ線分Kaと点d4および点d5を結ぶ線分Kbとの間の台形の領域である。通常領域SCは、線分Kbよりも実回転数Ncが大きい六角形の領域である。
なお、本実施形態の点d1は、Im=16A、Nc=500rpmとする点であり、点d2は、Im=12A、Nc=500rpmとする点である。点d3は、Im=16A、Nc=2000rpmとする点であり、点d4は、Im=13A、Nc=3000rpmとする点である。点d5は、Im=10A、Nc=500rpmとする点である。
このように設定されるモータ20bの運転領域が通常領域に入ると、ステップS340でNOと判定する。その後、次のステップS420において、カウンタのカウント値Kをリセットする。すなわち、カウンタのカウント値Kを零にする。カウンタは、運転領域が継続して過負荷領域に入っている時間(以下、過負荷継続時間という)をカウントするためのカウンタである。
その後、ステップS430において、モータ20bの運転領域が通常領域に入るとして、NOと判定する。すると、次のステップS470において、モータ20bの回転数を上記ステップS320、S330で設定される目標回転数に近づけるように、インバータ回路71のトランジスタSW1・・・SW5、SW6を制御する。このため、モータ20bの回転がインバータ回路71から出力される出力電圧によって目標回転数に近づけるようになる。これに伴い、次のステップS480において、過負荷防止制御の実行を終了した旨を、電子制御装置60および電力管理用電子制御装置80のそれぞれに対して通知する。
次に、モータ20bの運転領域が通常領域に入った状態が維持されると、ステップS300、ステップS310のYES判定(或いは、NO判定)、ステップS320(或いは、ステップS330)、ステップS340のNO判定、ステップS420、ステップS430のNO判定、ステップS470、S480のそれぞれの処理を繰り返すことになる。
その後、モータ20bの運転領域が過負荷領域に入ると、上記ステップS340においてYESと判定する。これに伴い、次のステップS350において、カウンタのカウント値Kに一定期間Tを加算する(K=K+T)。カウンタのカウント値Kがカウントアップすることになる。一定期間Tは、上記指示制御処理を繰り返し実行する周期に相当する時間である。
次に、ステップS360において、電子制御装置60から通知される制御情報に基づいて、電子制御装置60によって過負荷防止制御の実行が許可されているか否かについて判定する(許可判定手段)。
電子制御装置60によって過負荷防止制御の実行が許可されているときには、
上記ステップS360においてYESとする。
つまり、回転数上昇制御(ステップS380)の実行が不許可とされていると判定することになる。この場合、電動圧縮機20の停止により前面窓ガラス2を介する視界が悪化して車室内の快適性を損なう恐れ、或いは、電動圧縮機20の停止により圧縮機構20aの潤滑オイルの不足が生じる恐れがあると判定することになる。
これに伴い、次のステップS370において、過負荷継続時間が停止判定時間よりも短いか否かを判定する。停止判定時間は、予め決められた一定時間である。
ここで、過負荷継続時間が停止判定時間よりも短いときには、上記ステップS370において、YESと判定する。このとき、ステップS380において、過負荷防止制御としての回転数上昇制御を実行する。回転数上昇制御は、モータ20bの回転数を上昇させて、モータ20bの運転領域が過負荷領域から外れるようにするための制御である。
具体的には、回転数上昇制御では、モータ20bの回転数を一定回転数分上昇させるように、インバータ回路71のトランジスタSW1・・・SW5、SW6を制御する。これに伴い、モータ20bの回転数がインバータ回路71から出力される出力電圧によって上昇することになる。
これに伴い、次のステップS390において、過負荷防止制御(具体的には、回転数上昇制御)を実行中である旨を、電子制御装置60および電力管理用電子制御装置80のそれぞれに対して通知する。
その後、モータ20bの運転領域が過負荷領域に入っており、過負荷防止制御の実行が許可され、かつ過負荷継続時間が停止判定時間よりも短い状態が継続すると、制御回路70は、次のように処理する。
すなわち、ステップS300、ステップS310のYES判定(或いは、NO判定)、ステップS320(或いは、ステップS330)、ステップS340のYES判定、ステップS350、ステップS360、S370のYES判定、ステップS380、S390のそれぞれの処理を繰り返すことになる。このため、ステップS380の制御処理を実行する毎にモータ20bの回転数が一定回転数分ずつ上昇する。
その結果、モータ20bの運転領域が過負荷領域から外れたときには、ステップS340でNOになる。これに伴い、ステップS420において、カウンタのカウント値Kを零にリセットする。これにより、過負荷継続時間が零に設定されることになる。
次のステップS430において、出力電流Imおよび実回転数Ncに基づいてモータ20bの運転領域が過負荷境界領域に入っているか否かを判定する。
モータ20bの運転領域が過負荷境界領域に入っているときには、YESと判定する。すると、次のステップS440において、電子制御装置60から通知される制御情報に基づいて、電子制御装置60によって過負荷防止制御の実行が許可されているか否かを判定する。
過負荷防止制御の実行が許可されているときにはステップS440においてYESと判定する。これに伴い、ステップS450において、過負荷防止制御として、回転数維持制御を実行する。具体的には、モータ20bの回転数を現状の回転数のまま維持させるように、インバータ回路71のトランジスタSW1・・・SW5、SW6を制御する。よって、モータ20bの回転がインバータ回路71から出力される出力電圧によって現状の回転数のまま維持される。
これに伴い、次のステップS460において、過負荷防止制御(具体的には、回転数維持制御)を実行中である旨を、電子制御装置60および電力管理用電子制御装置80のそれぞれに対して通知する。
また、ステップS440において、電子制御装置60によって過負荷防止制御の実行が不許可とされているときには、NOと判定する。これに伴い、ステップS470において、モータ20bの回転数を上記ステップS320、S330で設定される目標回転数に近づけるように、インバータ回路71のトランジスタSW1・・・SW5、SW6を制御する。
さらに、モータ20bの運転領域が過負荷領域(或いは、過負荷境界領域)から通常領域に移ると、上記ステップS430において、NOと判定する。このとき、過負荷防止制御を実行する必要がなくなる。そこで、過負荷防止制御の実行を終了して、次のステップS470において、モータ20bの回転数を上記ステップS320、S330で設定される目標回転数に近づけるように、インバータ回路71のトランジスタSW1・・・SW5、SW6を制御する。すると、モータ20bの回転がインバータ回路71から出力される出力電圧によって目標回転数に近づけるようになる。これに伴い、次のステップS480において、過負荷防止制御の実行を終了した旨を、電子制御装置60および電力管理用電子制御装置80のそれぞれに対して通知する。
また、上記ステップS360において、電子制御装置60から通知される制御情報に基づいて、電子制御装置60によって過負荷防止制御の実行が不許可とされていると判定したときには、NOとする。
つまり、回転数上昇制御(ステップS380)の実行が不許可とされていると判定することになる。この場合、電動圧縮機20の停止により前面窓ガラス2を介する視界が悪化する恐れもなく、また電動圧縮機20の停止により圧縮機構20aの潤滑オイルの不足が生じる恐れもないと判定することになる。
これに伴い、ステップS400において、モータ20bを停止してモータ20bの過負荷を防止するために、インバータ回路71のトランジスタSW1・・・SW5、SW6を制御する(モータ停止手段)。これに伴い、モータ20bが停止する。次に、ステップS410において、モータ20bの過負荷防止のためにモータ20bを停止した旨を、電子制御装置60および電力管理用電子制御装置80のそれぞれに対して通知する。
また、モータ20bの運転領域が過負荷領域に入っている状態が長期間に亘って継続した場合には、過負荷継続時間が停止判定時間よりも長くなる。このとき、
ステップS370においてNOと判定する。すると、次のステップS400において、過負荷防止制御として、モータ20bを停止させるように、インバータ回路71のトランジスタSW1・・・SW5、SW6を制御する。これに伴い、次のステップS410において、過負荷防止制御によりモータ20bを停止した旨を、電子制御装置60および電力管理用電子制御装置80のそれぞれに対して通知する。
以上説明した本実施形態によれば、電動圧縮機20は、圧縮機構20aと圧縮機構20aを駆動するモータ20bとがハウジング50内に収納されている。電動圧縮機20は、圧縮機構20aの圧縮作動によってハウジング50内に吸入される冷媒によってモータ20bが冷却される。
このように構成される電動圧縮機20の駆動装置20cの制御回路70は、ステップS320にて電力制限制御により目標回転数を算出した後に、モータ20bの運転状態が通常状態に入っていると、ステップS340、S430でそれぞれNOと判定する。すると、次のステップS470において上記目標回転数にモータ20bの回転数を近づけるようにモータ20bを制御する。このような電力制限制御により算出される目標回転数にモータ20bの回転数を近づけるようにモータ20bを制御する処理(ステップS470)を繰り返し実施する。このとき、モータ20bの運転状態が通常状態から過負荷領域に移行すると、ステップS340でYESと判定する。ここで、デフロスタモードが吹出モードとして設定されて電子制御装置60によって過負荷防止制御の実行が許可されて(ステップS360のYES)、かつ過負荷継続時間が停止判定時間よりも短い場合には(ステップS370のYES)、ステップS380において、過負荷防止制御としての回転数上昇制御を実行する。これにより、モータ20bの回転数を上昇させることができる。
以上により、過負荷領域にモータ20bの運転状態が入っている場合において、電動圧縮機20の停止によりデフロスタモードが実施されず車室内の快適性を損なう恐れがある場合に、回転数上昇制御を実施して、モータ20bの運転状態が過負荷領域から外れるようにモータ20bの回転数を上昇させる。これにより、デフロスタモードが実施されて、車室内の快適性を保つことができる。したがって、電動圧縮機20のモータ20bの保護と車室内の快適性(つまり、前面窓ガラス2を介する視界の確保)とを両立することが可能になる。
本実施形態では、電子制御装置60は、空調モードとして潤滑オイル戻し制御を実行中であると判定したときには、電動圧縮機20の駆動装置20cの制御回路70に対して過負荷防止制御の実行を許可する。このため、制御回路70は、
圧縮機構20aにて潤滑オイルが不足して圧縮機構20aの寿命が短くなる恐れがあるときには、過負荷防止制御を実施することになる。したがって、電動圧縮機20の圧縮機構20aの保護と車室内の快適性とも両立することが可能になる。
本実施形態では、過負荷継続時間が停止判定時間よりも短いときには、ステップS370においてYESと判定して、回転数上昇制御(ステップS370)を実行する。このため、回転数上昇制御(ステップS370)を継続して実行する時間を制限することができる。このため、モータ20bが故障することを抑制することができる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、電動圧縮機20の駆動装置20cの制御回路70が過負荷防止制御を実施するか否かを決める例について説明したが、これに代えて、本第2実施形態では、空調装置用電子制御装置60が電動圧縮機20に対して過負荷防止制御を継続させるか否かを決める例について説明する。
次に、本実施形態の作動について図9、図10を参照して説明する。
図9は、本実施形態の空調装置用電子制御装置60の指示制御処理を示すフローチャートである。図10は、電動圧縮機20の駆動装置20cの制御回路70のモータ制御処理を示すフローチャートである。
なお、図9において、図6と同一符号は同一ステップを示し、その説明を省略する。図10において、図7と同一符号は同一ステップを示し、その説明を省略する。
以下、制御回路70のモータ制御処理に先だって、空調装置用電子制御装置60の指示制御処理について説明する。
(指示制御処理)
電子制御装置60は、図6に代わる図9のフローチャートにしたがって、指示制御処理を実行する。指示制御処理の実行は、繰り返し行われる。
図9のステップS201において、制御回路70から過負荷防止制御を実行中か否かを示す通知を受信する。このとき、通知判定手段として、この受信される制御回路70からの通知に基づいて、制御回路70が過負荷防止制御を実行である否かを判定する(ステップS202)。
このとき、制御回路70が過負荷防止制御を実行であるとしてステップS202においてYESと判定すると、ステップS200に進む。ステップS200において、空調モードとしてデフロスタモード以外の他の吹出口モードを実施しているか否かを判定する(吹出モード判定手段)。
ここで、デフロスタモード以外の他の吹出口モードを実施しているときには、ステップS200でYESと判定する。これに伴い、ステップS210において、空調モードとして潤滑オイル戻し制御以外の通常空調制御を実施しているか否かを判定する。
ここで、通常空調制御を実施しているときには、ステップS210でYESと判定する。
このように、デフロスタモード以外の他の吹出口モードを実施し、かつ潤滑オイル戻し制御以外の通常空調制御を空調モードとして実施している場合には、ステップS220aにおいて、電動圧縮機20を停止させるように制御回路70に対して指示する(停止指示手段)。
つまり、電動圧縮機20の動作よりも電動圧縮機20の消費電力の低下を優先して制御回路70に対して電動圧縮機20を停止させるように指示することになる。
また、上記ステップS200において、デフロスタモードを実施しているときには、NOと判定して、次のステップS230aにおいて、制御回路70に対して車載LAN91を通して電動圧縮機20の動作として現状の動作を継続させるように指示する(第1の継続指示手段)。
上記ステップS210において、潤滑オイル戻し制御を実施しているには、NOと判定して、次のステップS230aにおいて、制御回路70に対して車載LAN91を通して電動圧縮機20の動作として現状の動作を継続させるように指示する(第2の継続指示手段)。
つまり、デフロスタモード、或いは潤滑オイル戻し制御を実施しているには、電動圧縮機20の消費電力の低下よりも電動圧縮機20の動作を優先して、制御回路70に対して車載LAN91を通して電動圧縮機20の動作を継続させるように指示する。
このように過負荷防止制御の継続/停止が車載LAN91を通して指示されることになる。
また、ステップS202において、制御回路70が過負荷防止制御を実行していないとしてNOと判定すると、次のステップS203において、電動圧縮機20の動作を継続させるように制御回路70に対して指示する。
(モータ制御処理)
制御回路70は、図7に代わる図10のフローチャートにしたがって、モータ制御処理を実行する。モータ制御処理の実行は、繰り返し行われる。
まず、ステップS301において、電子制御装置60から指示を受信する。空調装置用電子制御装置60からの指示とは、図9のステップ220a、或いはステップ230aにおいて、過負荷防止制御の継続/停止を示す通知のことである。
次に、ステップS300において、電流センサ73の検出値に基づいてステータコイル55に出力される出力電流Imを算出する。これに加えて、電圧センサ75の検出電圧Vmと電流Imとに基づいてモータ20bで実際に消費されている実際の消費電力を算出する。
例えば、目標消費電力よりもモータ20bの実際の消費電力が大きいときには、ステップS310においてYESと判定する。これに伴い、次のステップS320において、実際の消費電力、目標消費電力、および実回転数Ncに基づいてモータ20bの目標回転数を算出する。
一方、目標消費電力よりもモータ20bの実際の消費電力が小さいときには、ステップS310においてNOと判定する。これに伴い、次のステップS330において、電子制御装置60から指示される指示回転数を目標回転数として決める。
このように目標消費電力、実際の消費電力に応じてモータ20bの目標回転数が決められることになる。
次に、ステップS340において、出力電流Imおよび実回転数Ncに基づいてモータ20bの運転領域が過負荷領域に入っているか否かを判別する。
このとき、モータ20bの運転領域が過負荷領域に入っているときに、上記ステップS340においてYESと判定する。これに伴い、次のステップS350において、カウンタのカウント値Kに一定期間Tを加算する。つまり、過負荷継続時間をカウントアップすることになる。
次に、ステップS360aにおいて、上記ステップS301で受信される電子制御装置60からの指示に基づいて、電子制御装置60によって過負荷防止制御の実行の継続を指示されているか否かについて判定する。
電子制御装置60によって過負荷防止制御の継続を指示されているときには、上記ステップS360aにおいてYESと判定する。すると、次のステップS370において、過負荷継続時間が停止判定時間よりも短いか否かを判定する。
ここで、過負荷継続時間が停止判定時間よりも短いときには、上記ステップS370において、YESと判定する。このとき、ステップS380において、過負荷防止制御として回転数上昇制御を実行する(ステップS380)。これに伴い、次のステップS390において、過負荷防止制御(具体的には、回転数上昇制御)を実行中である旨を、電子制御装置60および電力管理用電子制御装置80のそれぞれに対して通知する(第1、第2の通知手段)。
その後、モータ20bの運転領域が過負荷領域に入っており、電子制御装置60によって過負荷防止制御の継続が指示され、かつ過負荷継続時間が停止判定時間よりも短い状態が継続すると、制御回路70は、次のように処理する。
すなわち、ステップS300、ステップS310のYES判定(或いは、NO判定)、ステップS320(或いは、ステップS330)、ステップS340のYES判定、ステップS350、ステップS360a、S370のYES判定、ステップS380、S390のそれぞれの処理を繰り返すことになる。このため、ステップS380の制御処理を実行する毎にモータ20bの回転数が一定回転数分上昇する。
その後、モータ20bの運転領域が過負荷領域から外れると、上記ステップS340においてNOと判定して、次のステップS420において、カウンタのカウント値Kを零にリセットする。
次のステップS430において、モータ20bの運転領域が過負荷境界領域に入っているときには、YESと判定する。これに伴い、ステップS450において、過負荷防止制御として、モータ20bの回転数を現状の回転数のまま維持させるように、インバータ回路71のトランジスタSW1・・・SW5、SW6を制御する。これに伴い、次のステップS460において、過負荷防止制御を実行中である旨を、電子制御装置60および電力管理用電子制御装置80のそれぞれに対して通知する。
また、上記ステップS430において、モータ20bの運転領域が通常領域に入っているときにはNOと判定する。このとき、過負荷防止制御を実行する必要がなくなる。そこで、過負荷防止制御の実行を終了して、次のステップS470において、モータ20bの回転数を上記ステップS320、S330で設定される目標回転数に近づけるように、インバータ回路71のトランジスタSW1・・・SW5、SW6を制御する。
これに伴い、次のステップS480において、過負荷防止制御の実行を終了した旨を、電子制御装置60および電力管理用電子制御装置80のそれぞれに対して通知する。
また、ステップS360aにおいて、電子制御装置60によって電動圧縮機20を停止させる指示を受けているとしてNOと判定したときには、ステップS400において、過負荷防止制御として、モータ20bを停止させるように、インバータ回路71のトランジスタSW1・・・SW5、SW6を制御する。つまり、電子制御装置60が上記ステップ220aで制御回路70に対して電動圧縮機20を停止させるように指示したときには、モータ20bを停止させる(ステップS400)。これに伴い、次のステップS410において、過負荷防止制御によりモータ20bを停止した旨を、電子制御装置60および電力管理用電子制御装置80のそれぞれに対して通知する。
以上説明した本実施形態によれば、電子制御装置60では、制御回路70における回転数上昇制御(ステップS380)を実行中であることを判定し、かつ空調モードとしてデフロスタモードを実行中であると判定したときには、制御回路70に対して電動圧縮機20の動作として現状の動作を継続させるように指示する。このとき、過負荷領域にモータ20bの運転状態が入っており、かつ過負荷継続時間が停止判定時間よりも短い場合には、制御回路70は、回転数上昇制御を実施する。これにより、モータ20bの運転状態が過負荷領域から外れることができる。これに伴い、デフロスタモードを継続することができるので、車室内の快適性を保つことができる。したがって、上記第1実施形態と同様に、電動圧縮機20のモータ20bの保護と車室内の快適性とを両立することが可能になる。
本実施形態では、電子制御装置60では、制御回路70における回転数上昇制御(ステップS380)を実行中であることを判定し、かつ空調モードとして潤滑オイル戻し制御を実行中であると判定したときには、制御回路70に対して電動圧縮機20の動作として現状の動作を継続させるように指示する。このとき、過負荷領域にモータ20bの運転状態が入っており、かつ過負荷継続時間が停止判定時間よりも短い場合には、制御回路70は、回転数上昇制御(ステップS380)を実行する。このため、潤滑オイル戻し制御の実行を継続することができる。したがって、上記第1実施形態と同様に、電動圧縮機20の圧縮機構20aの保護と車室内の快適性とも両立することが可能になる。
(他の実施形態)
上記第1、第2の実施形態では、本発明の電動圧縮機用電子制御装置を車両用空調装置に適用した例について説明したが、これ限らず、本発明の電動圧縮機用電子制御装置を車両用空調装置以外の空調装置に適用してもよい。
上記第1、第2の実施形態では、制御回路70が、ステップS320、S330において、目標回転数を算出した例について説明したが、これに代えて、上記目標回転数を算出する処理を空調装置用電子制御装置60によって実施するようにしてもよい。
つまり、電子制御装置60において、目標消費電力よりも実際の消費電力が大きいときには、上記ステップS320と同様に、実際の消費電力、目標消費電力、および実回転数Ncに基づいてモータ20bの目標回転数を算出する。一方、目標消費電力よりもモータ20bの実際の消費電力が小さいときには、上記ステップS330と同様に、上記ステップS160で算出される指示回転数を目標回転数とする。
ここで、モータ20bの実際の回転数と上記ステップS160で算出される指示回転数とがほぼ一致しているにも関わらず、過負荷防止制御としての回転数上昇制御(ステップS380)が実施される場合には、凝縮器21に送風するコンデンサファン等が故障して異常が生じていると判定する。
上記第1、第2の実施形態では、過負荷防止制御の許可或いは不許可を決めるために、ステップS200、S210を用いた例について説明したが、これに代えて、ステップS210を削除してステップS200だけで、過負荷防止制御の実行の許可或いは不許可を決めてもよい。
すなわち、ステップS200において、空調モードとしてデフロスタモードを実施しているときにはNOと判定して、過負荷防止制御の実行を許可する。ステップS200において、空調モードとしてデフロスタモード以外の他の吹出口モードを実施しているときにはYESと判定して、過負荷防止制御の実行を不許可とする。
上記第1、第2の実施形態では、過負荷領域、通常領域、および過負荷境界領域のうち1つをモータ20bの運転領域として設定した例について説明したが、これに限らず、過負荷境界領域以外の、過負荷領域および通常領域のうちいずれか一方をモータ20bの運転領域として設定してもよい。
上記第1、第2の実施形態では、インバータ回路71の負極側母線72bに流れる電流を検出する電流センサ73の検出電流を用いて、インバータ回路71からステータコイル55に出力される出力電流Imを求める例について説明したが、これに代えて、次のようにしてもよい。
すなわち、W相電流、V相電流、およびU相電流をそれぞれ直接検出する電流センサを採用し、この電流センサの検出値を用いてインバータ回路71からステータコイル55に出力される出力電流Imを求めてもよい。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記第1、第2の実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記第1、第2の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。