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JP5996137B1 - セル間接続部材および固体酸化物形燃料電池用セル - Google Patents

セル間接続部材および固体酸化物形燃料電池用セル Download PDF

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Abstract

【課題】電気抵抗の増加の原因となる合金表面の酸化被膜の成長を抑制し、発電性能の高いSOFC用セルを提供する。【解決手段】基材11と、基材11の表面に形成された保護膜12とを有するセル間接続部材1において、基材11は、Crを含有し、Siの含有率が0.39質量%未満である合金を主材料とし、保護膜12がスピネル型金属酸化物を主材料とする。【選択図】図3

Description

本発明は、セル間接続部材および固体酸化物形燃料電池用セルに関する。
かかる固体酸化物形燃料電池(以下、適宜「SOFC」と記載する。)用セルは、電解質膜の一方面側に空気極を接合すると共に、同電解質膜の他方面側に燃料極を接合してなる単セルを、空気極又は燃料極に対して電子の授受を行う一対の電子伝導性の合金等により挟み込んだ構造を有する。
そして、このようなSOFC用セルでは、例えば700〜900℃程度の作動温度で作動し、空気極側から燃料極側への電解質膜を介した酸化物イオンの移動に伴って、一対の電極の間に起電力が発生し、その起電力を外部に取り出し利用することができる。
このようなSOFC用セルで利用される合金は、電子伝導性及び耐熱性に優れたCrを含有する材料で製作される。また、このような合金の耐熱性は、この合金の表面に形成されるクロミア(Cr23)の緻密な被膜に由来する。
また、SOFC用セルは、その製造工程において、合金等と空気極及び燃料極との間の接触抵抗をできるだけ小さくするなどの目的で、それらを積層した状態で、作動温度よりも高い1000℃〜1250℃程度の焼成温度で焼成する焼成処理を行う場合がある(例えば、特許文献1を参照。)。
一方、SOFC用セルで利用される合金の表面に、単一系酸化物に不純物をドープしてなるn型半導体被膜を形成し、このような被膜形成処理を行うことによって、合金中に含まれるCrが飛散し易い6価の酸化物へと酸化されることを抑制しようとする技術もあった(例えば、特許文献2を参照。)。
上述したようにCrを含有する合金等と空気極とを接合してなるSOFC用セルでは、作動時等において合金等が高温にさらされることで、その合金等に含まれるCrが空気極側に飛散して、空気極のCr被毒が発生するという問題がある。
このような空気極のCr被毒は、空気極における酸化物イオンの生成のための酸素の還元反応を阻害し、空気極の電気抵抗を増加させ、更には合金等のCr濃度を減少させることにより合金等自体の耐熱性の低下などの問題を引き起こし、結果、SOFCの性能低下を招く場合がある。
また、特許文献1のように、合金等と空気極とを接合した状態で焼成する焼成処理を行う場合には、作動温度よりも高い焼成温度にさらされることにより、Cr(VI)の酸化物が生成され、蒸発して空気極と反応して、Cr化合物が生成され、空気極のCr被毒が発生する。
特開2004−259643号公報 国際公開第2007/083627号
上述した空気極におけるCr被毒の問題を幾分でも回避するために、合金等の表面を金属酸化物からなる保護膜で覆うことが考えられている。その場合、SOFC用セルの製造の段階で運転温度(例えば650℃〜900℃)よりも高温(1000℃以上)の酸化雰囲気(空気雰囲気)に曝される。そうすると、表面に保護膜を設けている場合でも、多少なりとも合金表面の酸化が生じ、すなわち酸化被膜が形成され、電気抵抗が増加する。この電気抵抗が大きいと、燃料電池の発電性能が低いものとなる。
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電気抵抗の増加の原因となる合金表面の酸化被膜の成長を抑制し、発電性能の高いSOFC用セルを提供することにある。
上記目的を達成するための本発明に係るセル間接続部材の特徴構成は、基材と、前記基材の表面に形成された保護膜とを有するセル間接続部材であって、前記基材は、Crを含有し、Siの含有率が0.39質量%未満である合金を主材料とし、前記保護膜がZnCoMnO 4 を主材料とする点にある。
発明者らは鋭意検討の末、セル間接続部材の基材に含まれるSiの量が、保護膜が形成された状態でのセル間接続部材の電気抵抗に大きく影響することを見いだした。そして実験により、Siの含有率が0.39質量%未満である合金を主材料とすることで、電気抵抗を大きく低減できることを確認した。これは、Siに由来する酸化被膜(SiO2)の成長が抑制されたことによると考えられる。
すなわち上記の特徴構成によれば、基材と、基材の表面に形成された保護膜とを有するセル間接続部材において、基材は、Crを含有し、Siの含有率が0.39質量%未満である合金を主材料とし、保護膜がZnCoMnO 4 を主材料とすることにより、セル間接続部材の電気抵抗を大きく低減して、発電性能の高いSOFC用セルを実現することが可能となる。なお保護膜がZnCoMnO 4 を主材料とすると、Siの含有率を0.39質量%未満とした基材と組合せて構成したセル間接続部材にてSi含有率に応じて抵抗値を低減できることが実験で確かめられている。
前記合金のSiの含有率を0.30質量%以下とすると、セル間接続部材の電気抵抗をより低減することができ好適である。
本発明に係るセル間接続部材の別の特徴構成は、前記合金のSiの含有率が0.15質量%より大きい点にある。
合金のSi含有率を低減するには、合金の製造工程にて高いコストを必要とする。合金のSiの含有率を0.15質量%より大きくすることで、コストの上昇を抑制した上で、電気抵抗の低減も可能となる。すなわち上記の特徴構成によれば、コストと性能とを両立したセル間接続部材を提供することができる。
本発明に係るセル間接続部材の別の特徴構成は、前記保護膜が電着塗装により形成されている点にある。
上記特徴構成によれば、緻密で強固な保護膜を実現することができ、好適である。
上記目的を達成するための本発明に係る固体酸化物形燃料電池用セルの特徴構成は、上述のセル間接続部材と空気極とを接合してなる点にある。
上記の特徴構成によれば、上述のセル間接続部材と空気極とを接合して固体酸化物形燃料電池用セルが構成されるので、セル間接続部材の電気抵抗を大きく低減して、発電性能の高いSOFC用セルを実現することが可能となる。
固体酸化物形燃料電池用セルの概略図 固体酸化物形燃料電池の作動時の反応の説明図 セル間接続部材接合構造の断面図 電圧降下の温度変化を示すグラフ
以下、本実施形態に係るセル間接続部材および固体酸化物形燃料電池セルについて説明する。なお以下、好適な実施例を記すが、これら実施例は、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
<固体酸化物形燃料電池>
本発明にかかるSOFC用セル間接続部材およびその製造方法の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1および図2に示すSOFC用セルCは、酸化物イオン伝導性の固体酸化物の緻密体からなる電解質膜30の一方面側に、酸化物イオンおよび電子伝導性の多孔体からなる空気極31を接合するとともに、同電解質膜30の他方面側に電子伝導性の多孔体からなる燃料極32を接合してなる単セル3を備える。
さらに、SOFC用セルCは、この単セル3を、空気極31または燃料極32に対して電子の授受を行うとともに空気および水素を供給するための溝2が形成された一対の電子伝導性の合金または酸化物からなる基材11に保護膜12を形成してあるセル間接続部材1により、適宜外周縁部においてガスシール体を挟持した状態で挟み込んだ構造を有する。そして、空気極31側の上記溝2が、空気極31とセル間接続部材1とが密着配置されることで、空気極31に空気を供給するための空気流路2aとして機能し、一方、燃料極32側の上記溝2が、燃料極32とセル間接続部材1とが密着配置されることで、燃料極32に水素を供給するための燃料流路2bとして機能する。
なお、上記SOFC用セルCを構成する各要素で利用される一般的な材料について説明を加えると、たとえば、上記空気極31の材料としては、LaMO3(たとえばM=Mn,Fe,Co)中のLaの一部をアルカリ土類金属AE(AE=Sr,Ca)で置換した(La,AE)MO3のペロブスカイト型酸化物を利用することができ、上記燃料極32の材料としては、Niとイットリア安定化ジルコニア(YSZ)とのサーメットを利用することができ、さらに、電解質膜30の材料としては、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を利用することができる。
セル間接続部材1の材料としては、フェライト系ステンレス鋼であるFe−Cr合金や、オーステナイト系ステンレス鋼であるFe−Cr−Ni合金や、ニッケル基合金であるNi−Cr合金などのように、Crを含有する合金が利用される。本実施形態では特に、Siの含有率が0.39質量%未満である合金を主材料とするセル間接続部材が用いられる。
そして、複数のSOFC用セルCが積層配置された状態で、複数のボルトおよびナットにより積層方向に押圧力を与えて挟持され、セルスタックとなる。
このセルスタックにおいて、積層方向の両端部に配置されたセル間接続部材1は、燃料流路2bまたは空気流路2aの一方のみが形成されるものであればよく、その他の中間に配置されたセル間接続部材1は、一方の面に燃料流路2bが形成され他方の面に空気流路2aが形成されるものを利用することができる。なお、かかる積層構造のセルスタックでは、上記セル間接続部材1をセパレータと呼ぶ場合がある。
このようなセルスタックの構造を有するSOFCを一般的に平板型SOFCと呼ぶ。本実施形態では、一例として平板型SOFCについて説明するが、本願発明は、その他の構造のSOFCについても適用可能である。
そして、このようなSOFC用セルCを備えたSOFCの作動時には、図2に示すように、空気極31に対して隣接するセル間接続部材1に形成された空気流路2aを介して空気を供給するとともに、燃料極32に対して隣接するセル間接続部材1に形成された燃料流路2bを介して水素を供給し、たとえば800℃程度の作動温度で作動する。すると、空気極31においてO2が電子e-と反応してO2-が生成され、そのO2-が電解質膜30を通って燃料極32に移動し、燃料極32において供給されたH2がそのO2-と反応してH2Oとe-とが生成されることで、一対のセル間接続部材1の間に起電力Eが発生し、その起電力Eを外部に取り出し利用することができる。
<セル間接続部材>
セル間接続部材1は、図1、図3に示すように、例えば、フェライト系ステンレス合金製の基材11の表面に保護膜12を設けて構成してある。そして、各単セル3の間に空気流路2a、燃料流路2bを形成しつつ単セル間を接続可能にする、溝板状に形成してある。
前記保護膜12は、導電性セラミックス材料を含有する塗膜形成用材料を、前記基材11に電着塗装することにより保護膜12を厚膜として形成してある。
<保護膜>
前記保護膜12は、基材11の表面に、例えばZnCoMnO4等の金属酸化物微粒子とポリアクリル酸等のアニオン型樹脂とを質量比で(金属酸化物微粒子:アニオン型樹脂)=(0.5:1)〜(1.7:1)の割合で含有している混合液を用いて、アニオン電着塗装法により電着塗膜を形成する電着工程を行い、前記電着塗膜を焼成して前記電着塗膜中の樹脂成分を焼失させた焼成被膜を形成する焼成工程を行い、さらに前記焼成被膜を焼結させて金属酸化物からなる保護膜12を形成する焼結工程を行うことにより形成されている。なお、前記の混合液が、アニオン電着塗装法により電着塗膜を形成するために使用される電着塗料である。以下の説明では「混合液」に記載を統一するが、保護膜12の形成には前記の混合液、すなわち当該混合液からなる電着塗料を用いることとなる。
ここで熱膨張率を検証すると、ZnCoMnO4は、11×10-6-1であり、ZnCo24の9.3×10-6-1に比べて、主に基材として使用されるフェライト系ステンレス鋼(熱膨張率:11×10-6-1)や、接合して使用される空気極材料である(La,Sr)(Co,Fe)O3(熱膨張率:15〜21×10-6-1)、(La,Sr)MnO3(熱膨張率:11×10-6-1)に比較的近いものである。
以下に前記保護膜12の具体的な製造方法を詳述するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
(1)アニオン型樹脂の合成
1,4ジオキサン50部を、還流冷却器と温度計と撹拌機と滴下ロートとを付けた4つ口フラスコ中で約82℃に加熱し、撹拌しながら滴下ロートから下記表1に示す混合物と1,4ジオキサン50部を3時間かけて連続滴下する。
滴下完了後同温度でさらに3時間反応を続行して、アニオン性をもつアクリル樹脂(固形分50質量%)を合成する。得られたアニオン型樹脂のTgは、−27℃(計算上の推定値)、分子量MW12万〜15万であった。
Figure 0005996137
表1中のAIBNは、重合開始剤である。L−SHは、連鎖移動剤である。
アニオン型樹脂の化学的性状については、Tg:−50℃〜+25℃および分子量(MW質量平均分子量):5万〜20万の範囲内が好適である。一般にアニオン型樹脂のTgは+20℃前後、MWは3万〜7万程度である。なお、多量の無機微粒子を電気泳動共析させて、電解ガスを局所発生させて共析率を向上するためには、低Tgで高分子量のアニオン型樹脂とすることが好ましい。Tgが−50℃以下の場合、析出塗膜の粘性が強すぎ焼付硬化後に流動が大きく、+25℃以上になると流動性が低下しZnCoMnO4微粒子共析時に発生したガス跡を消すことができずピンホール状となる。MWが5万以下ではZnCoMnO4微粒子の分散性が低下する。また20万以上になると流動性が低下し塗膜中のZnCoMnO4微粒子の均一な分散が悪くなり、見た目も不均一な外観となる。
また後述のシラン系カップリング剤を用いて、アニオン型樹脂と金属酸化物微粒子とをカップリング反応させると、ZnCoMnO4微粒子に代表される金属酸化物微粒子の析出効率を飛躍的に向上させることができる。
(2)混合液の作成
シラン系カップリング剤として、イソシアネート官能性シラン(OCN−C36−Si(OC253)を用い、この溶剤nMP(nメチルピロリドン)3質量部と(1)で作成したアニオン型樹脂120質量部と溶剤nMP(nメチルピロリドン)60部を混ぜた後、スズ系触媒(DBTDL0.2部)を添加し60℃で1時間反応させることにより、シラン系カップリング剤のイソシアネート基とアニオン型樹脂のOH基が反応しシラン系カップリング剤がアニオン型樹脂に付加する。(表2第一成分)
Figure 0005996137
ZnCoMnO4微粒子(平均粒径0.5μm)100質量部と溶剤nMP(nメチルピロリドン)200部と3ミリ径のジルコニアビーズ750質量部を混合し、撹拌機で湿式分散を行いスラリー状のZnCoMnO4微粒子を得る。(表3第二成分)
Figure 0005996137
前記第二成分の中に前記第一成分を添加し均一混合する。
さらに、トリエチルアミン1.4質量部と溶剤nMP(nメチルピロリドン)10質量部と消泡剤(サーフィノール104)10質量部を添加し攪拌する。
均一混合した後、イオン交換水500質量部を少しずつ加えて、ZnCoMnO4微粒子とアニオン型樹脂との混合液を作成する。24時間攪拌し、シラン系カップリング剤の加水分解反応を促したのち、イオン交換処理で不純物を除去し、pH9.0±0.2浴電導度200±50μS/cmの混合液が得られる。得られた分散液は、ZnCoMnO4微粒子:樹脂=1:1(質量比)の混合液として用いられる。
なお、下記の配合物第一成分および第二成分の混合割合を変えることでZnCoMnO4微粒子:樹脂=0.5:1(質量比)〜1.7:1(質量比)の作成ができる。
(3) 電着塗装
上記(2)で作成したアニオン型分散剤組成物をその中の分散剤粒子が、電着液1リットル当り100gになるように分散させ、25℃の溶液において、直流電圧40Vで30秒間、スターラ撹拌(20rpm)下で電着塗装を行った。
なお、電着塗装は下記のようにして行った。
形状が断面長方形の単純形状である基材11の試験片に、必要に応じて脱脂処理、酸洗処理などを施した後、前記混合液に被処理品を浸漬し、通電を行うことによって、基材11表面に未硬化の電着塗膜が形成される。
(3−1) 前処理
なお、各電極には以下の1〜7を順に行う前処理を行った。
1. 電解洗浄剤による陰極電解
(アクチベータS(シミズ社製)100g/L、40℃、10A/dm2、30秒)
2. 水洗
3. 電解洗浄剤による陽極極電解
(アクチベータS(シミズ社製)100g/L、40℃、10A/dm2、30秒)
4. 水洗
5. 酸中和(硝酸200mL/L)
6. 水洗
7. 純水洗
また、陽極とする基材11の試験片には、別途、脱脂処理、酸洗処理などを施してもよい。
脱脂処理は、たとえば、基材11の表面にアルカリ水溶液を供給することにより行われる。アルカリ水溶液の供給は、たとえば、基材11にアルカリ水溶液を噴霧するかまたは基材11をアルカリ水溶液に浸漬させることにより行われる。アルカリとしては金属の脱脂に常用されるものを使用でき、たとえば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなどのアルカリ金属のリン酸塩などが挙げられる。アルカリ水溶液中のアルカリ濃度は、たとえば、処理する金属の種類、基材11の汚れの度合いなどに応じて適宜決定される。さらにアルカリ水溶液には、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などの界面活性剤の適量が含まれていてもよい。脱脂は、20〜50℃程度の温度下(アルカリ水溶液の液温)に行われ、1〜5分程度で終了する。
脱脂後、基材11を水洗され、次の酸洗処理に供される。その他、酸性浴に浸漬する脱脂、気泡性浸漬脱脂、電解脱脂などを適宜組み合わせて実施することもできる。酸洗処理は、たとえば、基材11の表面に酸水溶液を供給することにより行われる。酸水溶液の供給は、脱脂処理におけるアルカリ水溶液の供給と同様に、基材11への酸水溶液の噴霧、基材11の酸水溶液への浸漬などにより行われる。酸としては金属の酸洗に常用されるものを使用でき、たとえば、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。酸水溶液中の酸濃度は、たとえば、基材11の種類などに応じて適宜決定される。酸洗処理は、20〜30℃程度の温度下(酸水溶液の液温)に行われ、15〜60秒程度で終了する。脱脂処理および酸洗処理のほかに、スケール除去処理、下地処理、防錆処理などを施してもよい。これらの処理の後、基材11を70〜120℃程度の温度下に乾燥させて次の電着塗装に供する。
(3−2)電着工程
このようにして、前処理を行った基材11の試験片を、25℃の溶液において、基材11をプラス、対極としてSUS304の極板をマイナスの極性とし、直流電圧40Vで30秒間、スターラ撹拌(20rpm)して通電を行うことによって、基材11表面に未硬化の電着塗膜が形成される。
なお、電着電圧、電着時間を変更することにより電着塗膜の膜厚をコントロールできる。
電着工程後の基材11は、通電槽から取り出され、加熱処理が施される。この未硬化の電着塗膜が形成された基材11に加熱処理することによって、基材11表面に硬化した電着塗膜が形成されたセル接続部材1が得られる。
電着塗装は、公知の方法に従い、たとえば、前記混合液を満たした通電槽中に基材11を完全にまたは部分的に浸漬して陽極とし、通電することにより実施される。
電着塗装条件も特に制限されず、基材11である金属の種類、前記混合液の種類、通電槽の大きさおよび形状、得られるセル接続部材1の用途などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択できるが、通常は、浴温度(前記混合液温度)10〜50℃程度、印加電圧10〜450V程度、電圧印加時間1〜10分程度、前記混合液の液温10〜45℃とすればよい。
加熱処理は、電着塗膜を乾燥させる予備乾燥と、電着塗膜を硬化させる硬化加熱とを含み、予備乾燥後に硬化加熱が行われる。予備乾燥は、60〜140℃程度の加熱下に行われ、3〜30分程度で終了する。硬化加熱は、150〜220℃程度の加熱下に行われ、10〜60分程度で終了する。このようにして、前記混合液による電着塗膜が得られる。
(3−3)(焼成工程および焼結工程)
前記混合液としてZnCoMnO4微粒子:樹脂=1:1(質量比)のものを用いて形成した電着塗膜を、500℃で2hr保持してアクリル樹脂を焼き飛ばす焼成工程を行った後、1000℃まで昇温して2hr保持することでZnCoMnO4粒子の焼結および基材11の試験片の表面との反応を起こさせる焼結工程を行い、基材11に対して密着力があり、かつ緻密な保護膜12を形成した。
<Si含有率と電気抵抗の関係>
Si含有率の異なる5種のフェライト系ステンレス合金(SUS445J1)を用いて、基材11を作成した。そして上述の方法により基材11の表面にZnCoMnO4を主材料とする保護膜12を形成し、実施例1〜4および比較例1に係るセル間接続部材のサンプルを作成した。各サンプルのSi含有率を表4に示す。
Figure 0005996137
上述のサンプルを、固体酸化物形燃料電池の運転温度を模した600℃〜850℃の6種類の温度環境に置き、0.32A/cm-2の直流電流を流した際の電圧降下を測定した。6種類の温度環境は、600℃、650℃、700℃、750℃、800℃、850℃である。結果を図4に示す。
図4のグラフは、横軸に温度、縦軸に電圧降下をとって、各サンプルの電圧降下をプロットしたものである。電流を一定として電圧降下を測定しているので、電圧降下が大きいサンプルは抵抗値が高いといえる。比較例1は、他の実施例1〜4に比べ、電圧降下が大きくなった。例えば650℃では、他の実施例1〜4に比べて、50mV以上電圧降下が大きくなっている。実施例1〜4については、電圧降下の値に大きな差は生じなかったが、Si含有率が小さくなるにつれて電圧降下が小さくなる傾向が見られる。なお各サンプルは、温度が上昇するにつれて電圧降下が減少(すなわち抵抗値が増加)している。このことから図4に示される電圧降下は、半導体を主要因とするものであり、SiO2等の金属酸化物によるものと考えられる。以上の結果から、Siの含有率が0.39質量%未満である合金を主材料とする基材を用いることで、電気抵抗の増加の原因となる合金表面の酸化被膜の成長を抑制し、もってセル間接続部材の電気抵抗を低減して、発電性能の高いSOFC用セルを提供できることが示された。なお合金のSi含有率は、0.30質量%以下が好ましく、0.25質量%以下がより好ましく、0.20質量%以下であると更に好ましい。
1 :セル接続部材
2 :溝
2a :空気流路
2b :燃料流路
3 :単セル
11 :基材
12 :保護膜
30 :電解質膜
31 :空気極
32 :燃料極
C :SOFC用セル

Claims (5)

  1. 基材と、前記基材の表面に形成された保護膜とを有するセル間接続部材であって、前記基材は、Crを含有し、Siの含有率が0.39質量%未満である合金を主材料とし、前記保護膜がZnCoMnO 4 を主材料とするセル間接続部材。
  2. 前記合金のSiの含有率が0.30質量%以下である請求項1に記載のセル間接続部材。
  3. 前記合金のSiの含有率が0.15質量%より大きい請求項1または2に記載のセル間接続部材。
  4. 前記保護膜が電着塗装により形成されている請求項1〜のいずれか1項に記載のセル間接続部材。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載のセル間接続部材と空気極とを接合してなる固体酸化物形燃料電池用セル。
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