JP6906310B2 - 固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法 - Google Patents
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Description
そして、このようなSOFC用セルでは、例えば700〜900℃程度の作動温度で作動し、空気極側から燃料極側への電解質膜を介した酸化物イオンの移動に伴って、一対の電極の間に起電力が発生し、その起電力を外部に取り出し利用することができる。
前記セル間接続部材の基材の表面に保護膜を形成する保護膜形成ステップと、
前記セル間接続部材と空気極とを接合層を介して接合する接合ステップとを有し、
前記基材は、Mnを含有するステンレス合金を主材料とし、
前記保護膜は、MnとCoとを含有するスピネル型金属酸化物を主材料とし、
前記接合ステップにおける前記接合層の焼き付けが1050℃以上1075℃以下の温度で行われる点にある。
前記セル間接続部材の基材の表面に保護膜を形成する保護膜形成ステップと、
前記セル間接続部材と空気極とを接合層を介して接合する接合ステップとを有し、
前記基材は、Mnを含有するステンレス合金を主材料とし、
前記保護膜は、MnとCoとを含有するスピネル型金属酸化物を主材料とし、
前記接合ステップにおける前記接合層の焼き付けが1050℃以上1075℃未満の温度で行われる点にある。
発明者らは、セル間接続部材と空気極とを接合する接合層の焼き付け温度により、セル間接続部材および接合層の電気抵抗の大きさが変化する現象を見出した。そして、接合層の焼き付け温度が1000℃の場合には、基材の内部にMnCr 2 O 4 が生成しており、1050℃以上の場合には、MnCr 2 O 4 の生成が抑制されていることを確認して、本発明の完成に至った。すなわち上記の特徴構成によれば、電気抵抗の大きなMnCr 2 O 4 がセル間接続部材の基材の内部に生成することを抑制して、発電性能の高いSOFC用セルを提供することができる。
さらに前記接合ステップにおける前記接合層の焼き付けが1075℃未満の温度で行われると、固体酸化物型燃料電池の実際の作動環境である700℃〜800℃における抵抗値を低く抑えることができ好ましい。
図1および図2に示すSOFC用セルCは、酸素イオン伝導性の固体酸化物の緻密体からなる電解質膜30の一方面側に、酸素イオンおよび電子伝導性の多孔体からなる空気極31を接合するとともに、同電解質膜30の他方面側に電子伝導性の多孔体からなる燃料極32を接合してなる単セル3を備える。
さらに、SOFC用セルCは、この単セル3を、空気極31または燃料極32に対して電子の授受を行うとともに空気および水素を供給するための溝2が形成された一対の電子伝導性の合金または酸化物からなるセル間接続部材1により、適宜外周縁部においてガスシール体を挟持した状態で挟み込んだ構造を有する。空気極31とセル間接続部材1とが密着配置されることで、空気極31側の溝2が空気極31に空気を供給するための空気流路2aとして機能する。燃料極32とセル間接続部材1が密着配置されることで、燃料極32側の上記溝2が燃料極32に水素を供給するための燃料流路2bとして機能する。セル間接続部材1はインターコネクタとセルC間を電気的に接続する部材が接続された構成となることもある。
このセルスタックにおいて、積層方向の両端部に配置されたセル間接続部材1は、燃料流路2bまたは空気流路2aの一方のみが形成されるものであればよく、その他の中間に配置されたセル間接続部材1は、一方の面に燃料流路2bが形成され他方の面に空気流路2aが形成されるものを利用することができる。なお、このような積層構造のセルスタックでは、上記セル間接続部材1をセパレータと呼ぶ場合がある。
セルスタックは、燃料ガス(水素)を供給するマニホールドに、ガラスシール材等の接着材により取り付けられる。ガラスシール材としては、例えば結晶化ガラスが用いられる。ガラスシール材は、マニホールドの接着の他、単セル3とセル間接続部材1の間など、封止(シール)が必要な箇所に用いられる。
このようなセルスタックの構造を有するSOFCを一般的に平板型SOFCと呼ぶ。本実施形態では、一例として平板型SOFCについて説明するが、本発明はその他の構造のSOFCについても適用可能である。
セル間接続部材1は、図1および図3に示すように、単セル3との間で空気流路2a、燃料流路2bを形成しつつ接続可能にする溝板状に形成されている。基材11の表面に、後に述べる保護膜12を設けることでCr被毒を抑制することができ、固体酸化物形燃料電池用セルとして好適である。
基材11の表面には、酸化被膜13が形成される。酸化被膜13は、周囲雰囲気中の酸素によって基板11の合金の表面が酸化されて生じる。本実施形態のようにCrを含有するステンレス合金の場合は、酸化被膜13は主にクロミア(Cr2O3)であり、緻密な被膜として形成される。酸化被膜13は、保護膜12の焼結や、接合層の焼き付け等、SOFC用セルの製造工程における熱処理にて形成される。
基材11の表面には、Cr被毒を抑制するため、保護膜12が形成されている。保護膜12は、MnとCoとを含有するスピネル型金属酸化物を主材料とする。保護膜12の主材料は、コバルトマンガン系酸化物CoxMnyO4(0<x、y<3、x+y=3)または、亜鉛コバルトマンガン系酸化物ZnzCoxMnyO4(0<x、y、z<3、x+y+z=3)であってもよい。Co1.5Mn1.5O4またはCo2MnO4であってもよい。なお「主材料」とは主たる材料であることを意味し、複数の種類の金属酸化物を混合して用いたり、他の成分を混合して用いることも可能である。
また、ドライコーティング法としては、たとえば蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相成長(CVD)法、電気化学気相成長(EVD)法、イオンビーム法、レーザーアブレーション法、大気圧プラズマ成膜法、減圧プラズマ成膜法、溶射法等が例示できる。
金属酸化物微粒子を電着液1リットル当り100gになるように分散し、ポリアクリル酸等のアニオン型樹脂とを含有している混合液を用いて電着塗装を行う。ここでは、(金属酸化物微粒子:アニオン型樹脂)=(1:1)(質量比)とした。
前記混合液を用い、基材11をプラス、対極としてSUS304の極板にマイナスの極性として通電を行うことによって、基材11表面に未硬化の電着塗膜が形成される。
電着塗装は、たとえば、前記混合液を満たした通電槽中に基材11を完全にまたは部分的に浸漬して陽極とし、通電することにより実施される。
電着塗装条件も特に制限されず、基材11である金属の種類、前記混合液の種類、通電槽の大きさおよび形状、得られるセル間接続部材1の用途などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択できるが、通常は、浴温度(前記混合液温度)10〜40℃程度、印加電圧10〜450V程度、電圧印加時間1〜10分程度、前記混合液の液温10〜40℃とすればよい。
なお、電着電圧、電着時間を変更することにより電着塗膜の膜厚をコントロールできる。また、基材に対して、種々前処理を行うこともできる。
この未硬化の電着塗膜が形成された基材11に加熱処理することによって、基材11表面に硬化した電着塗膜が形成される。
加熱処理は、電着塗膜を乾燥させる予備乾燥と、電着塗膜を硬化させる硬化加熱とを含み、予備乾燥後に硬化加熱が行われる。その後、電気炉を使用して例えば1000℃で2時間焼成し、その後徐冷する。
接合層により、セル間接続部材1と単セル3の空気極31とが接合される。詳しくは、セル間接続部材1の基材11の表面に形成された保護膜11と、単セル3の空気極31とが、接合層により接着・接合されている。接合層の主材料としては、空気極31と類似のペロブスカイト型酸化物や、スピネル型酸化物が用いられる。たとえばLSCF6428(La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δ)が用いられる。
次に固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法について説明する。固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法は、保護膜形成ステップと、接合ステップとを有する。
保護膜形成ステップでは、セル間接続部材1の基材11の表面に保護膜12を形成する。保護膜12の形成は、例示した各種の方法により行われる。例えばウエットコーティング法によれば、成膜ステップと焼結ステップとにより行われる。
接合ステップでは、セル間接続部材1と空気極31とを接合層を介して接合する。詳しくは、上述の接合層の材料を含有するペーストをセル間接続部材1に塗布して単セル3と接合し、熱処理を施して焼き付けにより接合層を形成する。熱処理は通常であれば、燃料電池の作動温度〜950℃の低温で行うが、本実施形態では1050℃以上の高温で行う。1075℃以下の温度で行うと更に好適であり、1075℃未満の温度で行うとより好適であり、1050℃で行うと尚好適である。
以上述べたSOFC用セルの製造方法に沿って実験サンプルを作成し、電気抵抗の経時変化、断面のSEM観察およびEPMA元素分析を行った。
〔実験例1(1000℃):比較例〕
1mm厚の22wt%Crの高純度フェライト系ステンレス鋼の板の表面に、Co2MnO4の微粉末を含有するスラリーを用いてアニオン電着塗装法にて塗膜を成膜した。その板を1000℃の大気雰囲気下にて2時間加熱し、Co2MnO4を主材料とする保護膜を形成した。板の両面にLSCF6428を塗布し、乾燥させ、1000℃で2時間焼き付けを行い、接合層(を模擬した層)を形成した。以上の様にして、固体酸化物形燃料電池用セルのセル間接続部材1を模した実験例1のサンプルを作成した。
接合層の焼き付け温度を1025℃に変更し、その他の条件は実験例1と同様にして、実験例2のサンプルを作成した。
接合層の焼き付け温度を1050℃に変更し、その他の条件は実験例1と同様にして、実験例3のサンプルを作成した。
接合層の焼き付け温度を1075℃に変更し、その他の条件は実験例1と同様にして、実験例4のサンプルを作成した。
実験例1〜4のサンプルについて、電気抵抗の経時変化を測定した。800時間までの結果を図5のグラフに示す。測定は、図4に示す通電試験治具5に各サンプルをセットし、900℃の環境下、定電流状態にて経時的に電気抵抗を測定して行った。通電試験治具5は、一対の金属板51の間にサンプルを挟んで、ネジ52で固定した構造である。接合層にPtメッシュ53が接した状態とされ、この一対のPtメッシュ53の間の抵抗値を測定することで、サンプルの抵抗値を測定した。
実験例1〜4のサンプルについて、上述した電気抵抗の経時変化を測定する前に、電気抵抗の初期温度特性を測定した。結果を図9のグラフに示す。測定は、上述の経時変化測定と同様の状態にサンプルをセットし、600℃から900℃まで50℃刻みの温度で電気抵抗を測定して行った。
作成した実験例1、3および4のサンプルについて、断面のSEM観察およびEPMA元素分析を行った。観察・分析は、サンプル作成後(接合層の焼き付け後)の状態(図6)と、900℃での400時間の熱処理を施した状態(図7)とで行った。観察・分析は、実験例1(1000℃、各図の上段)、実験例3(1050℃、各図の中段)および実験例4(1075℃、各図の下段)に対して行っている。
次にMnの分布に着目すると、図6に示されるサンプル作成後の状態では、実験例1、3および4のいずれも、Mn分布領域7は保護膜12の領域に形成されている。基材11の領域にはMn分布領域7は存在しない。これを図7に示される900℃での400時間の熱処理を施した状態と比較すると、実験例1(1000℃)では、Mn分布領域7に加え、その上側に島状の領域7aが形成されていると認められる。この島状のMn分布領域7aの位置は、CrのEPMA図およびSEM画像との比較から、基材11の内部であると認められる。つまり実験例1(1000℃)では、900℃での400時間の熱処理により、保護膜12からMnが移動して、基材11の内部にMn分布領域7aが形成されたと認められる。
次にSiの分布に着目すると、図6に示されるサンプル作成後の状態では、実験例1、3および4のいずれも、Si分布領域8は基材11の内部に、基材11と酸化被膜13との界面に沿って帯状に形成されている。すなわち、基材11のステンレス合金の含有するSiが、基材11の表面近傍にSiO2の層を形成していると考えられる。実験例1、3および4を比較すると、実験例1のSi分布領域8の厚さに比べ、実験例3および4のSi分布領域8の厚さは大きいと認められる。従って、接合層の焼き付け温度が高いほど、Si分布領域8の厚さ、すなわちSiO2層の厚さが大きくなると認められる。このSiO2層は、保護膜12から基材11内部へのMnの拡散を阻害して、実験例1のような基材11の内部でのMnCr2O4の生成を抑制する効果があると考えられる。なお図6と図7との比較から、900℃での400時間の熱処理によっても、SiO2層の厚さは大きくなると認められる。
最後にTiの分布に着目すると、図6に示されるサンプル作成後の状態では、実験例1、3および4のいずれも、Ti分布領域9は基材11の内部に、基材11と酸化被膜13との界面に沿って帯状に形成されている。すなわち、基材11のステンレス合金の含有するTiが、基材11の表面近傍にTiO2の層を形成していると考えられる。実験例1、3および4を比較すると、実験例1のTi分布領域9の厚さに比べ、実験例3および4のTi分布領域9の厚さは大きいと認められる。従って、接合層の焼き付け温度が高いほど、Ti分布領域9の厚さ、すなわちTiO2層の厚さが大きくなると認められる。このTiO2層は、保護膜12から基材11内部へのMnの拡散を阻害して、実験例1のような基材11の内部でのMnCr2O4の生成を抑制する効果があると考えられる。なお図6と図7との比較から、900℃での400時間の熱処理によっても、TiO2層の厚さは大きくなると認められる。
11 :基材
12 :保護膜
13 :酸化被膜
2 :溝
2a :空気流路
2b :燃料流路
3 :単セル
30 :電解質膜
31 :空気極
32 :燃料極
4 :接合材
C :固体酸化物形燃料電池用セル
Claims (7)
- セル間接続部材と空気極とを接合してなる固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法であって、
前記セル間接続部材の基材の表面に保護膜を形成する保護膜形成ステップと、
前記セル間接続部材と空気極とを接合層を介して接合する接合ステップとを有し、
前記基材は、Mnを含有するステンレス合金を主材料とし、
前記保護膜は、MnとCoとを含有するスピネル型金属酸化物を主材料とし、
前記接合ステップにおける前記接合層の焼き付けが1050℃以上1075℃以下の温度で行われる、
固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法。 - セル間接続部材と空気極とを接合してなる固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法であって、
前記セル間接続部材の基材の表面に保護膜を形成する保護膜形成ステップと、
前記セル間接続部材と空気極とを接合層を介して接合する接合ステップとを有し、
前記基材は、Mnを含有するステンレス合金を主材料とし、
前記保護膜は、MnとCoとを含有するスピネル型金属酸化物を主材料とし、
前記接合ステップにおける前記接合層の焼き付けが1050℃以上1075℃未満の温度で行われる、
固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法。 - 前記基材の主材料のステンレス合金がSiを含有する請求項1又は2に記載の固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法。
- 前記基材の主材料のステンレス合金がTiを含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法。
- 前記保護膜の主材料が、コバルトマンガン系酸化物CoxMnyO4(0<x、y<3、x+y=3)または、亜鉛コバルトマンガン系酸化物ZnzCoxMnyO4(0<x、y、z<3、x+y+z=3)である請求項1〜4のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法。
- 前記保護膜の主材料が、Co1.5Mn1.5O4またはCo2MnO4である請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法。
- 前記保護膜形成ステップにおいて、前記保護膜が電着塗装により形成される請求項1〜6のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用セルの製造方法。
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