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JP5979932B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子 Download PDF

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Description

本発明は、金属系粒子集合体のプラズモン共鳴を利用して発光増強が図られた有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ともいう)に関する。
金属粒子をナノサイズにまで微細化すると、バルク状態では見られなかった機能を発現するようになることが従来知られており、なかでも応用が期待されているのが「局在プラズモン共鳴」である。プラズモンとは、金属ナノ構造体中の自由電子の集団的な振動によって生起する自由電子の粗密波のことである。
近年、上記プラズモンを扱う技術分野は、「プラズモニクス」と呼ばれ大きな注目を集めているとともに活発な研究が行なわれており、かかる研究は金属ナノ粒子の局在プラズモン共鳴現象を利用した発光素子の発光効率向上を目的とするものを含む。
たとえば特許文献1〜3には、局在プラズモン共鳴現象を利用して蛍光を増強させる技術が開示されている。また非特許文献1には、銀ナノ粒子による局在プラズモン共鳴に関する研究が示されている。
特開2007−139540号公報 特開平08−271431号公報 国際公開第2005/033335号
T. Fukuura and M. Kawasaki, "Long Range Enhancement of Molecular Fluorescence by Closely Packed Submicro-scale Ag Islands", e-Journal of Surface Science and Nanotechnology, 2009, 7, 653
近年、有機EL素子を表示装置や照明装置に適用するための研究開発が活発に進められており、一部実用化もなされている。しかし、現状において有機EL素子の発光効率は、次のような理由から低い値にとどまっており、その向上が強く望まれている。
(a)発光効率および耐久性が高く、量産に適した有機発光材料の開発が困難であること。有機発光材料のなかでは、ウェットプロセスで成膜可能な発光性高分子が量産性の面で有力視されており、なかでも発光効率の面で燐光発光性の高分子が有力視されているが、耐久性の高い分子構造を有しつつ、十分に高い発光効率を示す発光性高分子の分子設計およびその実現は容易でないのが現状である。なかでも、青色(またはその近傍波長領域)有機発光材料(とりわけ、青色有機燐光発光材料)の開発は困難を極めている。これは、実用に耐えるような強靭な分子構造が必要でありながら、深い青色、つまり400nm前後の短波長での発光を実現するために、たとえば分子の安定性を犠牲にし、分子構造内のπ共役系を小さくしてバンドギャップを広げる必要があるからである。
(b)光取り出し効率が低いこと。有機EL素子は、発光層、電極層を含む薄膜積層体からなるため、発光層から発せられた光は、素子外部へ放射される過程で単層または複数
層を通過することになる。一般に、発光層とそれ以外の層とは屈折率が互いに異なるため、層界面において光の反射が生じ、特に層界面で全反射された光は素子外部に放射されることなく内部に閉じ込められ、ジュール熱として散逸してしまう。したがって現状、有機EL素子において利用できる光(素子外部に放射される光)の強度は、発光層で生じる光の強度のせいぜい数十%にとどまっている。
このような有機EL素子の課題を解決し、その発光効率を向上させることを目的として、前述のような金属ナノ粒子に代表されるプラズモン材料の有機EL素子への適用が検討されてきた。しかしながら、金属ナノ粒子の局在プラズモン共鳴現象を利用した従来の発光増強には次のような課題があった。
すなわち、金属ナノ粒子による発光増強作用の要因には、1)金属ナノ粒子中に局在プラズモンが生起されることによって粒子近傍の電場が増強される(第1の因子)、および、2)励起された分子(有機発光材料分子など)からのエネルギー移動により金属ナノ粒子中の自由電子の振動モードが励起されることによって、励起された分子の発光性双極子よりも大きい発光性の誘起双極子が金属ナノ粒子中に生起し、これにより発光量子効率自体が増加する(第2の因子)、という2つの因子があるところ、より大きな要因である第2の因子における発光性誘起双極子を金属ナノ粒子に有効に生じさせるためには、金属ナノ粒子と励起される分子との距離を、電子の直接移動であるデクスター機構によるエネルギー移動が起こらない範囲であって、フェルスター機構のエネルギー移動が発現する範囲内(1nm〜10nm)にすることが求められる。これは、発光性誘起双極子の生起がフェルスターのエネルギー移動の理論に基づくためである(上記非特許文献1参照)。
一般に、上記1nm〜10nmの範囲内において、金属ナノ粒子と励起される分子との距離を近づけるほど、発光性誘起双極子が生起しやすくなり、発光増強効果が高まる一方、上記距離を大きくしていくと、局在プラズモン共鳴が有効に影響しなくなることによって発光増強効果は徐々に弱まり、フェルスター機構のエネルギー移動が発現する範囲を超えると(一般に10nm程度以上の距離になると)、発光増強効果をほとんど得ることはできなかった。上記特許文献1〜3に記載の発光増強方法においても、効果的な発光増強効果を得るために有効な金属ナノ粒子と励起される分子との間の距離は10nm以下とされている。
このように従来の金属ナノ粒子を用いた局在プラズモン共鳴においては、その作用範囲が金属ナノ粒子表面から10nm以下と極めて狭い範囲内に限定されるという本質的な課題があった。この課題は必然的に、金属ナノ粒子による局在プラズモン共鳴を有機EL素子に利用して発光効率向上を図る試みにおいて、ほとんど向上効果が認められないという課題を招来する。すなわち、有機EL素子は通常、厚みが数十nmまたはそれ以上の発光層を有しているが、仮に金属ナノ粒子を活性層に近接、あるいは内在させて配置することができたとしても、局在プラズモン共鳴による直接的な増強効果は、発光層のごく一部でしか得ることができない。このため、金属ナノ粒子等のプラズモン材料による有機EL素子の発光効率の向上は困難であるとされてきた。
そこで本発明は、発光効率の低い有機発光材料を用いる場合であっても、新規なプラズモン材料による発光増強および光取り出し効率の改善により、高い発光効率を示す有機EL素子を提供することを目的とする。
上記特許文献1(段落0010〜0011)では、局在プラズモン共鳴による発光増強と金属ナノ粒子の粒径との関係についての理論的な説明がなされており、これによれば、粒径が約500nmの真球状の銀粒子を用いる場合、理論上、発光効率φはおよそ1とな
るものの、実際にはこのような銀粒子は発光増強作用をほとんど示さない。このような大型銀粒子が発光増強作用をほとんど示さないのは、銀粒子中の表面自由電子があまりにも多いために、一般的なナノ粒子(比較的小粒径のナノ粒子)で見られる双極子型の局在プラズモンが生起し難いためであると推測される。しかしながら、大型ナノ粒子が内包する極めて多数の表面自由電子を有効にプラズモンとして励起することができれば、プラズモンによる増強効果を飛躍的に向上できると考えられる。
本発明者は、鋭意研究の結果、上記のように一般に発光増強効果が小さくなると考えられている大型の金属系粒子を特定の形状とし、その特定数以上を二次元的に離間して配置した金属系粒子集合体によれば、意外にも、極めて強いプラズモン共鳴を示すだけでなく、プラズモン共鳴の作用範囲(プラズモンによる増強効果の及ぶ範囲)を著しく伸長でき、このような金属系粒子集合体からなる層(膜)を有機EL素子内に配置することにより、発光効率を飛躍的に向上させ得ることを見出した。
すなわち本発明は以下のものを含む。
[1] 第1電極層および第2電極層と、
前記第1電極層と前記第2電極層との間に配置される有機発光材料を含有する発光層と、
30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層であって、前記金属系粒子は、その平均粒径が200〜1600nmの範囲内、平均高さが55〜500nmの範囲内、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が1〜8の範囲内にある金属系粒子集合体層と、
を備え、
前記金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、その隣り合う金属系粒子との平均距離が1〜150nmの範囲内となるように配置されている有機エレクトロルミネッセンス素子。
[2] 第1電極層および第2電極層と、
前記第1電極層と前記第2電極層との間に配置される有機発光材料を含有する発光層と、
30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層であって、前記金属系粒子は、その平均粒径が200〜1600nmの範囲内、平均高さが55〜500nmの範囲内、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が1〜8の範囲内にある金属系粒子集合体層と、
を備え、
前記金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、前記平均粒径と同じ粒径、前記平均高さと同じ高さおよび同じ材質からなる金属系粒子を、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した参照金属系粒子集合体(X)と比べて、最も長波長側にあるピークの極大波長が30〜500nmの範囲で短波長側にシフトしている有機エレクトロルミネッセンス素子。
[3] 第1電極層および第2電極層と、
前記第1電極層と前記第2電極層との間に配置される有機発光材料を含有する発光層と、
30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層であって、前記金属系粒子は、その平均粒径が200〜1600nmの範囲内、平均高さが55〜500nmの範囲内、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が1〜8の範囲内にある金属系粒子集合体層と、
を備え、
前記金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、前記平均粒
径と同じ粒径、前記平均高さと同じ高さおよび同じ材質からなる金属系粒子を、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した参照金属系粒子集合体(Y)よりも、同じ金属系粒子数での比較において、最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が高い有機エレクトロルミネッセンス素子。
[4] 前記金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、前記アスペクト比が1を超える扁平状の粒子である[1]〜[3]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[5] 前記金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、銀からなる[1]〜[4]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[6] 前記金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、その隣り合う金属系粒子との間に関して非導電性である[1]〜[5]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[7] 前記金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、最も長波長側にあるピークが350〜550nmの範囲内に極大波長を有する[1]〜[6]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[8] 前記金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が1以上である[1]〜[7]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[9] 前記金属系粒子集合体層は、前記発光層よりも光取り出し面により近く配置されている[1]〜[8]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[10] 基板と、前記金属系粒子集合体層と、前記第1電極層と、前記発光層と、前記第2電極層とをこの順で含む[1]〜[9]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[11] 前記金属系粒子集合体層は、前記基板上に直接積層される[10]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[12] 前記金属系粒子集合体層を構成するそれぞれの金属系粒子の表面を覆う絶縁層をさらに含む[11]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[13] 前記基板は透明基板であり、前記基板における前記金属系粒子集合体層側とは反対側に光取り出し面を有する[10]〜[12]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[14] 前記発光層の厚みが10nm以上である[1]〜[13]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[15] 前記金属系粒子集合体層の発光層側表面から前記発光層までの距離が10nm以上である[1]〜[14]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[16] 前記金属系粒子集合体層の発光層側表面から前記発光層までの距離が20nm以上であり、前記発光層に含有される前記有機発光材料のフォトルミネッセンス量子収率が、前記金属系粒子集合体層を有しない参照有機エレクトロルミネッセンス素子と比べ
て、1.5倍以上である[1]〜[15]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
[17] 30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層であって、前記金属系粒子は、その平均粒径が200〜1600nmの範囲内、平均高さが55〜500nmの範囲内、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が1〜8の範囲内にあり、かつ金属系粒子は、その隣り合う金属系粒子との平均距離が1〜150nmの範囲内となるように配置されている金属系粒子集合体層を、有機エレクトロルミネッセンス素子内に配置することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の発光増強方法。
[18] 30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層であって、前記金属系粒子は、その平均粒径が200〜1600nmの範囲内、平均高さが55〜500nmの範囲内、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が1〜8の範囲内にあり、かつ可視光領域における吸光スペクトルにおいて、前記平均粒径と同じ粒径、前記平均高さと同じ高さおよび同じ材質からなる金属系粒子を、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した参照金属系粒子集合体(X)と比べて、最も長波長側にあるピークの極大波長が30〜500nmの範囲で短波長側にシフトしている金属系粒子集合体層を、有機エレクトロルミネッセンス素子内に配置することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の発光増強方法。
[19] 30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層であって、前記金属系粒子は、その平均粒径が200〜1600nmの範囲内、平均高さが55〜500nmの範囲内、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が1〜8の範囲内にあり、かつ可視光領域における吸光スペクトルにおいて、前記平均粒径と同じ粒径、前記平均高さと同じ高さおよび同じ材質からなる金属系粒子を、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した参照金属系粒子集合体(Y)よりも、同じ金属系粒子数での比較において、最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が高い金属系粒子集合体層を、有機エレクトロルミネッセンス素子内に配置することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の発光増強方法。
本発明によれば、発光効率の低い有機発光材料を用いる場合であっても、従来のプラズモン材料にはないプラズモン特性を有する金属系粒子集合体層を備えていることにより、極めて強い発光増強と光取り出し効率の改善が図られた、発光効率の高い有機EL素子を提供することができる。
本発明の有機EL素子の一例を示す断面模式図である。 製造例1で得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を直上から見たときのSEM画像(10000倍および50000倍スケール)である。 製造例1で得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層のAFM画像である。 製造例2で得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を直上から見たときのSEM画像(10000倍および50000倍スケール)である。 製造例2で得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層のAFM画像である。 製造例1および比較製造例1〜2で得られた金属系粒子集合体層積層基板の吸光スペクトルである。 製造例2で得られた金属系粒子集合体層積層基板の吸光スペクトルである。 参照金属系粒子集合体の製造方法を示す概略フロー図である。 参照金属系粒子集合体層積層基板における参照金属系粒子集合体層を直上から見たときのSEM画像(20000倍および50000倍スケール)である。 顕微鏡の対物レンズ(100倍)を用いた吸光スペクトル測定方法を説明する図である。 顕微鏡の対物レンズ(100倍)を用いた方法により測定された製造例1で得られた金属系粒子集合体層積層基板の吸光スペクトルである。 顕微鏡の対物レンズ(100倍)を用いた方法により測定された製造例2で得られた金属系粒子集合体膜積層基板の吸光スペクトルである。 比較参考例1−1で得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を直上から見たときのSEM画像(10000倍スケール)である。 比較参考例1−1で得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層のAFM画像である。 参考例1−1および比較参考例1−1で得られた金属系粒子集合体層積層基板の、積分球分光光度計を用いた測定法による吸光スペクトルである。 比較参考例1−1で得られた金属系粒子集合体層積層基板の、顕微鏡の対物レンズ(100倍)を用いた測定法による吸光スペクトルである。 比較参考例7−1で得られた金属系粒子集合体膜積層基板における金属系粒子集合体膜を直上から見たときのSEM画像(10000倍および50000倍スケール)である。 比較参考例7−1で得られた金属系粒子集合体膜積層基板における金属系粒子集合体膜のAFM画像である。 比較参考例7−1で得られた金属系粒子集合体膜積層基板の吸光スペクトルである。 図20(a)は光励起発光素子の発光スペクトルの測定系を示す模式図であり、図20(b)は金属系粒子集合体層および絶縁層を有する光励起発光素子を示す断面模式図である。 参考例1−1〜1−6の光励起発光素子における発光増強効果と、比較参考例1−1〜1−6の光励起発光素子における発光増強効果とを比較する図である。 参考例2−1〜2−5の光励起発光素子における発光増強効果と、比較参考例3−1〜3−5および比較参考例7−1〜7−5の光励起発光素子における発光増強効果とを比較する図である。 参考例3−1〜3−3の光励起発光素子における発光増強効果と、比較参考例5−1〜5−3の光励起発光素子における発光増強効果とを比較する図である。
本発明の有機EL素子は、第1電極層および第2電極層の一対の電極層;第1電極層と第2電極層との間に配置される、有機発光材料を含有する発光層;ならびに、30個以上の金属系粒子を互いに離間して二次元的に配置してなる、有機EL素子内に配置される粒子集合体からなる層(膜)である金属系粒子集合体層を少なくとも含んで構成される。
本発明において、金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、その平均粒径が200〜1600nmの範囲内、平均高さが55〜500nmの範囲内、平均高さに対する平均粒径の比で定義されるアスペクト比が1〜8の範囲内とされる。
<金属系粒子集合体層>
本発明の有機EL素子の好ましい実施形態において、金属系粒子集合体層は下記のいずれかの特徴を有する。
〔i〕金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子が、その隣り合う金属系粒子との平均距離が1〜150nmの範囲内となるように配置されている(第1の実施形態)、
〔ii〕金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、上記平均粒径と同じ粒径、上記平均高さと同じ高さおよび同じ材質からなる金属系粒子を、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した参照金属系粒子集合体(X)と比べて、最も長波長側にあるピークの極大波長が30〜500nmの範囲で短波長側にシフトしている(第2の実施形態)、
〔iii〕金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、上記平均粒径と同じ粒径、上記平均高さと同じ高さおよび同じ材質からなる金属系粒子を、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した参照金属系粒子集合体(Y)よりも、同じ金属系粒子数での比較において、最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が高い(第3の実施形態)。
本明細書において、金属系粒子集合体の平均粒径および平均高さが参照金属系粒子集合体(X)または(Y)と「同じ」であるとは、平均粒径の差が±5nmの範囲内であり、平均高さの差が±10nmの範囲内であることをいう。
(第1の実施形態)
上記〔i〕の特徴を有する金属系粒子集合体層を備える本実施形態の有機EL素子は、次の点において極めて有利である。
(1)本実施形態に係る金属系粒子集合体層が極めて強いプラズモン共鳴を示すため、従来のプラズモン材料を用いる場合と比較して、より強い発光増強効果を得ることができ、これにより発光効率を飛躍的に高めることができる。本実施形態に係る金属系粒子集合体層が示すプラズモン共鳴の強さは、特定波長における個々の金属系粒子が示す局在プラズモン共鳴の単なる総和ではなく、それ以上の強さである。すなわち、30個以上の所定形状の金属系粒子が上記の所定間隔で密に配置されることにより、個々の金属系粒子が相互作用して、極めて強いプラズモン共鳴が発現する。これは、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用により発現したものと考えられる。
一般にプラズモン材料は、吸光光度法で吸光スペクトルを測定したとき、紫外〜可視領域におけるピークとしてプラズモン共鳴ピーク(以下、プラズモンピークともいう)が観測され、このプラズモンピークの極大波長における吸光度値の大小から、そのプラズモン材料のプラズモン共鳴の強さを略式に評価することができるが、本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、これをガラス基板上に積層した状態で吸光スペクトルを測定したとき、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長における吸光度が1以上、さらには1.5以上、なおさらには2程度となり得る。
金属系粒子集合体層の吸光スペクトルは、吸光光度法によって、ガラス基板に積層した状態で測定される。具体的には、吸光スペクトルは、金属系粒子集合体層が積層されたガラス基板の裏面側(金属系粒子集合体層とは反対側)であって、基板面に垂直な方向から紫外〜可視光領域の入射光を照射し、金属系粒子集合体層側に透過した全方向における透過光の強度Iと、前記金属系粒子集合体膜積層基板の基板と同じ厚み、材質の基板であって、金属系粒子集合体膜が積層されていない基板の面に垂直な方向から先と同じ入射光を照射し、入射面の反対側から透過した全方向における透過光の強度I0を、それぞれ積分球分光光度計を用いて測定することにより得られる。このとき、吸光スペクトルの縦軸である吸光度は、下記式:
吸光度=−log10(I/I0
で表される。
(2)金属系粒子集合体層によるプラズモン共鳴の作用範囲(プラズモンによる増強効果の及ぶ範囲)が著しく伸長されているため、従来のプラズモン材料を用いる場合と比較して、より強い発光増強効果を得ることができ、このことは上記と同様、発光効率の飛躍的な向上に寄与する。すなわち、この作用範囲の大幅な伸長によって、通常数十nmまたはそれ以上の厚みを有する発光層の全体を増強させることが可能になり、これにより有機EL素子の発光効率を著しく向上させることができる。
このような伸長作用もまた、30個以上の所定形状の金属系粒子を所定間隔で密に配置したことによって生じた金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用により発現したものと考えられる。本実施形態に係る金属系粒子集合体層によれば、従来では概ねフェルスター距離の範囲内(約10nm以下)に限定されていたプラズモン共鳴の作用範囲を、たとえば数百nm程度まで伸長することができる。
また、従来のプラズモン材料においては、プラズモン材料を発光層との距離がフェルスター距離の範囲内となるように配置する必要があったが、本実施形態の有機EL素子によれば、発光層から、たとえば10nm、さらには数十nm(たとえば20nm)、なおさらには数百nm離れた位置に金属系粒子集合体層を配置してもプラズモン共鳴による増強効果を得ることができる。このことは、プラズモン材料である金属系粒子集合体層を発光層よりも光取り出し面により近く、さらには金属系粒子集合体層を発光層からかなり離れた光取り出し面近傍に配置することが可能になることを意味しており、これにより光取り出し効率を大幅に向上させることができる。従来のプラズモン材料を利用した有機EL素子では、プラズモン材料を発光層の極めて近傍に配置せざるを得ず、プラズモン材料と光取り出し面との距離が大きく離れていたため、上述のように、発光層から発せられた光が光取り出し面に到達するまでの間に、その多くが、通過する素子構成層の界面で全反射されてしまい、光取り出し効率が極めて小さくなることがあった。
このように本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、それ単独では双極子型の局在プラズモンが可視光領域で生起し難い比較的大型の金属系粒子を用いるにもかかわらず、このような大型の金属系粒子(所定の形状を有していることが必要であるが)の特定数以上を、特定の間隔を置いて密に配置することにより、当該大型の金属系粒子が内包する極めて多数の表面自由電子を有効にプラズモンとして励起することができ、著しく強いプラズモン共鳴およびプラズモン共鳴の作用範囲の著しい伸長の実現を可能にしたものである。
また、本実施形態の有機EL素子は、その金属系粒子集合体層が特定の形状を有する比較的大型な金属系粒子の特定数以上を二次元的に特定の間隔で離間して配置した構造を有していることに起因して、次のような有利な効果を奏し得る。
(3)本実施形態に係る金属系粒子集合体層では、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、金属系粒子の平均粒径および粒子間の平均距離に依存して、プラズモンピークの極大波長が特異なシフトを示し得るため、特定の(所望の)波長領域の発光を、特に増強させることが可能になる。具体的には、粒子間の平均距離を一定にして金属系粒子の平均粒径を大きくするに従い、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長が短波長側にシフト(ブルーシフト)する。同様に、大型の金属系粒子の平均粒径を一定にして粒子間の平均距離を小さくするに従い(金属系粒子をより密に配置すると)、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長が短波長側にシフトする。この特異な現象は、プラズモン材料に関して一般的に認められているミー散乱理論(この理論に従えば、粒径が大きくなるとプラズモンピークの極大波長は長波長側に
シフト(レッドシフト)する。)に反するものである。
上記のような特異なブルーシフトもまた、金属系粒子集合体層が大型の金属系粒子を特定の間隔を置いて密に配置した構造を有しており、これに伴い、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が生じていることによるものと考えられる。本実施形態に係る金属系粒子集合体層(ガラス基板上に積層した状態)は、金属系粒子の形状や粒子間の距離に応じて、吸光光度法によって測定される可視光領域における吸光スペクトルにおいて、最も長波長側にあるプラズモンピークが、たとえば350〜550nmの波長領域に極大波長を示し得る。また、本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、金属系粒子が十分に長い粒子間距離(たとえば1μm)を置いて配置される場合と比較して、典型的には30〜500nm程度(たとえば30〜250nm)のブルーシフトを生じ得る。
このようなプラズモンピークの極大波長がブルーシフトした金属系粒子集合体層を備える有機EL素子は、たとえば次の点で極めて有利である。すなわち、高い発光効率を示す青色(もしくはその近傍波長領域、以下同様)有機発光材料(特に青色燐光材料)の実現が強く望まれている一方で、十分実用に耐えるこのような材料の開発が現状では困難であるところ、たとえば青色の波長領域にプラズモンピークを有する金属系粒子集合体層を増強要素として有機EL素子に適用することにより、比較的発光効率の低い青色有機発光材料を用いる場合であっても、その発光効率を十分な程度にまで増強させることができる。
次に、本実施形態に係る金属系粒子集合体層の具体的構成について説明する。
金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、ナノ粒子またはその集合体としたときに、吸光光度法による吸光スペクトル測定において、紫外〜可視領域にプラズモンピークを有する材料からなる限り特に限定されず、たとえば、金、銀、銅、白金、パラジウム等の貴金属や、アルミニウム、タンタル等の金属;該貴金属または金属を含有する合金;該貴金属または金属を含む金属化合物(金属酸化物や金属塩など)を挙げることができる。これらのなかでも、金、銀、銅、白金、パラジウム等の貴金属が好ましく、安価で、吸収が小さい(可視光波長において誘電関数の虚部が小さい)ことから銀であることがより好ましい。
金属系粒子の平均粒径は200〜1600nmの範囲内であり、上記(1)〜(3)の効果を効果的に得るために、好ましくは200〜1200nm、より好ましくは250〜500nm、さらに好ましくは300〜500nmの範囲内である。ここで特筆すべき点は、たとえば平均粒径500nmという大型の金属系粒子は、上述のように、それ単独では局在プラズモンによる増強効果がほとんど認められないということである。これに対し本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、このような大型の金属系粒子の所定数(30個)以上を所定の間隔で密に配置することにより、著しく強いプラズモン共鳴およびプラズモン共鳴の作用範囲の著しい伸長、さらには上記(3)の効果を実現するものである。
ここでいう金属系粒子の平均粒径とは、二次元的に金属系粒子が配置された金属系粒子集合体(膜)の直上からのSEM観察画像において、無作為に粒子を10個選択し、各粒子像内に無作為に接線径を5本引き(ただし、接線径となる直線はいずれも粒子像内部のみを通ることができ、このうち1本は粒子内部のみ通り、最も長く引ける直線であるものとする)、その平均値を各粒子の粒径としたときの、選択した10個の粒径の平均値である。接線径とは、粒子の輪郭(投影像)をこれに接する2本の平行線で挟んだときの間隔(日刊工業新聞社 「粒子計測技術」,1994,第5頁)を結ぶ垂線と定義する。
金属系粒子の平均高さは55〜500nmの範囲内であり、上記(1)〜(3)の効果を効果的に得るために、好ましくは55〜300nm、より好ましくは70〜150nmの範囲内である。金属系粒子の平均高さとは、金属系粒子集合体層(膜)のAFM観察画
像において、無作為に粒子を10個選択し、これら10個の粒子の高さを測定したときの、10個の測定値の平均値である。
金属系粒子のアスペクト比は1〜8の範囲内であり、上記(1)〜(3)の効果を効果的に得るために、好ましくは2〜8、より好ましくは2.5〜8の範囲内である。金属系粒子のアスペクト比は、上記平均高さに対する上記平均粒径の比(平均粒径/平均高さ)で定義される。金属系粒子は真球状であってもよいが、アスペクト比が1を超える扁平形状を有していることが好ましい。
金属系粒子は、効果の高いプラズモンを励起する観点から、その表面が滑らかな曲面からなることが好ましく、とりわけ表面が滑らかな曲面からなる扁平形状を有していることがより好ましいが、表面に微小な凹凸(粗さ)を幾分含んでいてもよく、このような意味において金属系粒子は不定形であってもよい。
金属系粒子集合体層面内におけるプラズモン共鳴の強さの均一性に鑑み、金属系粒子間のサイズのバラツキはできるだけ小さいことが好ましい。ただし、粒径に多少バラツキが生じたとしても、大型粒子間の距離が大きくなることは好ましくなく、その間を小型の粒子が埋めることで大型粒子間の相互作用を発現しやすくすることが好ましい。
本実施形態に係る金属系粒子集合体層において金属系粒子は、その隣り合う金属系粒子との平均距離(以下、平均粒子間距離ともいう。)が1〜150nmの範囲内となるように配置される。このように金属系粒子を密に配置することにより、著しく強いプラズモン共鳴およびプラズモン共鳴の作用範囲の著しい伸長、さらには上記(3)の効果を実現することができる。当該平均距離は、上記(1)〜(3)の効果を効果的に得るために、好ましくは1〜100nm、より好ましくは1〜50nm、さらに好ましくは1〜20nmの範囲内である。平均粒子間距離が1nm未満であると、粒子間でデクスター機構に基づく電子移動が生じ、局在プラズモンの失活の点で不利となる。
ここでいう平均粒子間距離とは、二次元的に金属系粒子が配置された金属系粒子集合体層の直上からのSEM観察画像において、無作為に粒子を30個選択し、選択したそれぞれの粒子について、隣り合う粒子との粒子間距離を求めたときの、これら30個の粒子の粒子間距離の平均値である。隣り合う粒子との粒子間距離とは、すべての隣り合う粒子との距離(表面同士間の距離である)をそれぞれ測定し、これらを平均した値である。
金属系粒子集合体層に含まれる金属系粒子の数は30個以上であり、好ましくは50個以上である。金属系粒子を30個以上含む集合体を形成することにより、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用によって極めて強いプラズモン共鳴およびプラズモン共鳴の作用範囲の伸長が発現する。
有機EL素子の一般的な素子面積に照らせば、金属系粒子集合体に含まれる金属系粒子の数は、たとえば300個以上、さらには17500個以上となり得る。
金属系粒子集合体層における金属系粒子の数密度は、7個/μm2以上であることが好ましく、15個/μm2以上であることがより好ましい。
金属系粒子集合体層において、金属系粒子間は互いに絶縁されている、換言すれば、隣り合う金属系粒子との間に関して非導電性(金属系粒子集合体層として非導電性)であることが好ましい。一部もしくは全ての金属系粒子間で電子の授受が可能であると、プラズモンピークは先鋭さを失い、バルク金属の吸光スペクトルに近づき、また高いプラズモン共鳴が得られない。したがって、金属系粒子間は確実に離間されており、金属系粒子間に
は導電性物質が介在されないことが好ましい。
(第2の実施形態)
本実施形態の有機EL素子は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、上記参照金属系粒子集合体(X)と比べて、最も長波長側にあるピークの極大波長が30〜500nmの範囲で短波長側にシフトしている(上記〔ii〕の特徴を有する)金属系粒子集合体層を備えるものである。このような特徴を有する金属系粒子集合体層を備える本実施形態の有機EL素子は、次の点において極めて有利である。
(I)本実施形態に係る金属系粒子集合体層では、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長が特異的な波長領域に存在するため、特定の(所望の)波長領域の発光を、特に増強させることが可能になる。具体的には、本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、吸光スペクトルを測定したとき、上記プラズモンピークの極大波長が、後述する参照金属系粒子集合体(X)の極大波長に比べて、30〜500nmの範囲(たとえば30〜250nmの範囲)で短波長側にシフト(ブルーシフト)しており、典型的には、上記プラズモンピークの極大波長は350〜550nmの範囲内にある。
上記ブルーシフトは、金属系粒子集合体層が特定の形状を有する大型な金属系粒子の特定数以上を二次元的に離間して配置した構造を有しており、これに伴い、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が生じていることによるものと考えられる。
青色またはその近傍波長領域にプラズモンピークを有する本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、青色またはその近傍波長領域の有機発光材料を用いた有機EL素子の発光増強に極めて有用であり、かかる金属系粒子集合体層を備える有機EL素子では、比較的発光効率の低い青色発光材料を用いる場合であっても、その発光効率を十分な程度にまで増強させることができる。
ここで、ある金属系粒子集合体と参照金属系粒子集合体(X)との間で最も長波長側にあるピークの極大波長や該極大波長における吸光度を比較する場合には、両者について、顕微鏡(Nikon社製「OPTIPHOT−88」と分光光度計(大塚電子社製「MCPD−3000」)とを用い、測定視野を絞って吸光スペクトル測定を行う。
参照金属系粒子集合体(X)は、吸光スペクトル測定の対象となる金属系粒子集合体層が有する平均粒径、平均高さと同じ粒径、高さおよび同じ材質を有する金属系粒子Aを、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した金属系粒子集合体であって、ガラス基板に積層した状態で、上記の顕微鏡を利用した吸光スペクトル測定を行い得る程度の大きさを有するものである。
参照金属系粒子集合体(X)の吸光スペクトル波形は、金属系粒子Aの粒径および高さ、金属系粒子Aの材質の誘電関数、金属系粒子A周辺の媒体(たとえば空気)の誘電関数、基板(たとえばガラス基板)の誘電関数を用いて、3D−FDTD法によって理論上計算することも可能である。
また、本実施形態の有機EL素子は、その金属系粒子集合体層が特定の形状を有する比較的大型な金属系粒子の特定数以上を二次元的に離間して配置した構造を有していることに起因して、(II)金属系粒子集合体層が極めて強いプラズモン共鳴を示し得るため、従来のプラズモン材料を用いる場合と比較して、より強い発光増強効果を得ることができ、これにより発光効率を飛躍的に高めることが可能となる(上記第1の実施形態の効果(1)と同様)、および(III)金属系粒子集合体層によるプラズモン共鳴の作用範囲(
プラズモンによる増強効果の及ぶ範囲)が著しく伸長され得るため、従来のプラズモン材料を用いる場合と比較して、より強い発光増強効果を得ることができ、同様に発光効率を飛躍的に高めることが可能となる(上記第1の実施形態の効果(2)と同様)、などの効果を奏し得る。本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、これをガラス基板上に積層した状態で吸光スペクトルを測定したとき、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長における吸光度が1以上、さらには1.5以上、なおさらには2程度となり得る。
次に、本実施形態に係る金属系粒子集合体層の具体的構成について説明する。本実施形態に係る金属系粒子集合体層の具体的構成は、第1の実施形態に係る金属系粒子集合体層の具体的構成(金属系粒子の材質、平均粒径、平均高さ、アスペクト比、平均粒子間距離、金属系粒子の数、金属系粒子集合体層の非導電性など)と基本的には同様であることができる。平均粒径、平均高さ、アスペクト比、平均粒子間距離などの用語の定義も第1の実施形態と同じである。
金属系粒子の平均粒径は200〜1600nmの範囲内であり、上記(I)〜(III)の効果を効果的に得るために、好ましくは200〜1200nm、より好ましくは250〜500nm、さらに好ましくは300〜500nmの範囲内である。本実施形態に係る金属系粒子集合体層では、このような大型の金属系粒子の所定数(30個)以上を二次元的に配置した集合体とすることにより、著しく強いプラズモン共鳴およびプラズモン共鳴の作用範囲の著しい伸長の実現を可能とする。また、上記〔ii〕の特徴(短波長側へのプラズモンピークのシフト)を発現させるうえでも、金属系粒子は、平均粒径が200nm以上の大型であることが必須であり、好ましくは250nm以上である。
本実施形態に係る金属系粒子集合体層では、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長は、金属系粒子の平均粒径に依存する。すなわち、金属系粒子の平均粒径が一定の値を超えると、当該プラズモンピークの極大波長は短波長側にシフト(ブルーシフト)する。
金属系粒子の平均高さは55〜500nmの範囲内であり、上記(I)〜(III)の効果を効果的に得るために、好ましくは55〜300nm、より好ましくは70〜150nmの範囲内である。金属系粒子のアスペクト比は1〜8の範囲内であり、上記(I)〜(III)の効果を効果的に得るために、好ましくは2〜8、より好ましくは2.5〜8の範囲内である。金属系粒子は真球状であってもよいが、アスペクト比が1を超える扁平形状を有していることが好ましい。
金属系粒子は、効果の高いプラズモンを励起する観点から、その表面が滑らかな曲面からなることが好ましく、とりわけ表面が滑らかな曲面からなる扁平形状を有していることがより好ましいが、表面に微小な凹凸(粗さ)を幾分含んでいてもよく、このような意味において金属系粒子は不定形であってもよい。また、金属系粒子集合体層面内におけるプラズモン共鳴の強さの均一性に鑑み、金属系粒子間のサイズのバラツキはできるだけ小さいことが好ましい。ただし上述のように、粒径に多少バラツキが生じたとしても、大型粒子間の距離が大きくなることは好ましくなく、その間を小型の粒子が埋めることで大型粒子間の相互作用を発現しやすくすることが好ましい。
本実施形態に係る金属系粒子集合体層において金属系粒子は、その隣り合う金属系粒子との平均距離(平均粒子間距離)が1〜150nmの範囲内となるように配置されることが好ましい。より好ましくは1〜100nm、さらに好ましくは1〜50nm、特に好ましくは1〜20nmの範囲内である。このように金属系粒子を密に配置することにより、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が効果的に生じ、上記(I)〜(III)の効
果が発現されやすくなる。プラズモンピークの極大波長は、金属系粒子の平均粒子間距離に依存するので、平均粒子間距離の調整により、最も長波長側にあるプラズモンピークのブルーシフトの程度や当該プラズモンピークの極大波長を制御することが可能である。平均粒子間距離が1nm未満であると、粒子間でデクスター機構に基づく電子移動が生じ、局在プラズモンの失活の点で不利となる。
上記〔ii〕の特徴(短波長側へのプラズモンピークのシフト)を発現させる上記以外の他の手段としては、たとえば、金属系粒子間に、空気とは誘電率の異なる誘電体物質(後述するように非導電性物質であることが好ましい)を介在させる方法を挙げることができる。
金属系粒子集合体層に含まれる金属系粒子の数は30個以上であり、好ましくは50個以上である。金属系粒子を30個以上含む集合体を形成することにより、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が効果的に生じ、上記〔ii〕の特徴および上記(I)〜(III)の効果の発現が可能となる。
有機EL素子の一般的な素子面積に照らせば、金属系粒子集合体に含まれる金属系粒子の数は、たとえば300個以上、さらには17500個以上となり得る。
金属系粒子集合体層における金属系粒子の数密度は、7個/μm2以上であることが好ましく、15個/μm2以上であることがより好ましい。
本実施形態の金属系粒子集合体層においても、第1の実施形態と同様、金属系粒子間は互いに絶縁されている、換言すれば、隣り合う金属系粒子との間に関して非導電性(金属系粒子集合体層として非導電性)であることが好ましい。
(第3の実施形態)
本実施形態の有機EL素子は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、上記参照金属系粒子集合体(Y)よりも、同じ金属系粒子数での比較において、最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が高い(上記〔iii〕の特徴を有する)金属系粒子集合体層を備えるものである。このような特徴を有する金属系粒子集合体層を備える本実施形態の有機EL素子は、次の点において極めて有利である。
(A)本実施形態に係る金属系粒子集合体層では、プラズモンピークである可視光領域において最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が、金属系粒子が何らの粒子間相互作用もなく単に集合した集合体とみなすことができる上記参照金属系粒子集合体(Y)よりも大きく、したがって、極めて強いプラズモン共鳴を示すため、従来のプラズモン材料を用いる場合と比較して、より強い発光増強効果を得ることができ、これにより発光効率を飛躍的に高めることができる。このような強いプラズモン共鳴は、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用により発現したものと考えられる。
上記のように、プラズモンピークの極大波長における吸光度値の大小から、そのプラズモン材料のプラズモン共鳴の強さを略式に評価することが可能であるが、本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、これをガラス基板上に積層した状態で吸光スペクトルを測定したとき、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長における吸光度が1以上、さらには1.5以上、なおさらには2程度となり得る。
上述のように、ある金属系粒子集合体と参照金属系粒子集合体(Y)との間で最も長波長側にあるピークの極大波長や該極大波長における吸光度を比較する場合には、両者について、顕微鏡(Nikon社製「OPTIPHOT−88」と分光光度計(大塚電子社製
「MCPD−3000」)とを用い、測定視野を絞って吸光スペクトル測定を行う。
参照金属系粒子集合体(Y)は、吸光スペクトル測定の対象となる金属系粒子集合体層が有する平均粒径、平均高さと同じ粒径、高さおよび同じ材質を有する金属系粒子Bを、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した金属系粒子集合体であって、ガラス基板に積層した状態で、上記の顕微鏡を利用した吸光スペクトル測定を行い得る程度の大きさを有するものである。
吸光スペクトル測定の対象となる金属系粒子集合体層と参照金属系粒子集合体(Y)との間で、最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度を比較する際には、以下に述べるように、同じ金属系粒子数になるように換算した参照金属系粒子集合体(Y)の吸光スペクトルを求め、当該吸光スペクトルにおける最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度を比較の対象とする。具体的には、金属系粒子集合体と参照金属系粒子集合体(Y)の吸光スペクトルをそれぞれ求め、それぞれの吸光スペクトルにおける最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度を、それぞれの被覆率(金属系粒子による基板表面の被覆率)で除した値を算出し、これらを比較する。
また、本実施形態の有機EL素子は、その金属系粒子集合体層が特定の形状を有する比較的大型な金属系粒子の特定数以上を二次元的に離間して配置した構造を有していることに起因して、(B)金属系粒子集合体層によるプラズモン共鳴の作用範囲(プラズモンによる増強効果の及ぶ範囲)が著しく伸長され得るため、従来のプラズモン材料を用いる場合と比較して、より強い発光増強効果を得ることができ、これにより発光効率を飛躍的に高めることが可能となる(上記第1の実施形態の効果(2)と同様)、および(C)金属系粒子集合体層のプラズモンピークの極大波長が特異なシフトを示し得るため、特定の(所望の)波長領域の発光を増強させることが可能になる(上記第1の実施形態の効果(3)と同様)、などの効果を奏し得る。
本実施形態の金属系粒子集合体層(ガラス基板上に積層した状態)は、金属系粒子の形状や粒子間の距離に応じて、吸光光度法によって測定される可視光領域における吸光スペクトルにおいて、最も長波長側にあるプラズモンピークが、たとえば350〜550nmの波長領域に極大波長を示し得る。また、本実施形態の金属系粒子集合体層は、金属系粒子が十分に長い粒子間距離(たとえば1μm)を置いて配置される場合と比較して、典型的には30〜500nm程度(たとえば30〜250nm)のブルーシフトを生じ得る。
次に、本実施形態に係る金属系粒子集合体層の具体的構成について説明する。本実施形態に係る金属系粒子集合体層の具体的構成は、第1の実施形態に係る金属系粒子集合体層の具体的構成(金属系粒子の材質、平均粒径、平均高さ、アスペクト比、平均粒子間距離、金属系粒子の数、金属系粒子集合体層の非導電性など)と基本的には同様であることができる。平均粒径、平均高さ、アスペクト比、平均粒子間距離などの用語の定義も第1の実施形態と同じである。
金属系粒子の平均粒径は200〜1600nmの範囲内であり、上記〔iii〕の特徴(最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長における吸光度が参照金属系粒子集合体(Y)のそれよりも高いという特徴)、さらには上記(A)〜(C)の効果を効果的に得るために、好ましくは200〜1200nm、より好ましくは250〜500nm、さらに好ましくは300〜500nmの範囲内である。このように、比較的大型の金属系粒子を用いることが肝要であり、大型の金属系粒子の所定数(30個)以上を二次元的に配置した集合体とすることにより、著しく強いプラズモン共鳴、さらにはプラズモン共鳴の作用範囲の著しい伸長、短波長側へのプラズモンピークのシフトの実現を可能となる。
金属系粒子の平均高さは55〜500nmの範囲内であり、上記〔iii〕の特徴、さらには上記(A)〜(C)の効果を効果的に得るために、好ましくは55〜300nm、より好ましくは70〜150nmの範囲内である。金属系粒子のアスペクト比は1〜8の範囲内であり、上記〔iii〕の特徴、さらには上記(A)〜(C)の効果を効果的に得るために、好ましくは2〜8、より好ましくは2.5〜8の範囲内である。金属系粒子は真球状であってもよいが、アスペクト比が1を超える扁平形状を有していることが好ましい。
金属系粒子は、効果の高いプラズモンを励起する観点から、その表面が滑らかな曲面からなることが好ましく、とりわけ表面が滑らかな曲面からなる扁平形状を有していることがより好ましいが、表面に微小な凹凸(粗さ)を幾分含んでいてもよく、このような意味において金属系粒子は不定形であってもよい。
上記〔iii〕の特徴が効果的に得られることから、金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、それらのサイズおよび形状(平均粒径、平均高さ、アスペクト比)ができるだけ均一であることが好ましい。すなわち、金属系粒子のサイズおよび形状を均一にすることにより、プラズモンピークが先鋭化し、これに伴い、最も長波長側にあるプラズモンピークの吸光度が参照金属系粒子集合体(Y)のそれよりも高くなりやすくなる。金属系粒子間のサイズおよび形状のバラツキの低減は、金属系粒子集合体層面内におけるプラズモン共鳴の強さの均一性の観点からも有利である。ただし上述のように、粒径に多少バラツキが生じたとしても、大型粒子間の距離が大きくなることは好ましくなく、その間を小型の粒子が埋めることで大型粒子間の相互作用を発現しやすくすることが好ましい。
本実施形態に係る金属系粒子集合体層において金属系粒子は、その隣り合う金属系粒子との平均距離(平均粒子間距離)が1〜150nmの範囲内となるように配置されることが好ましい。より好ましくは1〜100nm、さらに好ましくは1〜50nm、特に好ましくは1〜20nmの範囲内である。このように金属系粒子を密に配置することにより、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が効果的に生じ、上記〔iii〕の特徴、さらには上記(A)〜(C)の効果を効果的に発現させることができる。平均粒子間距離が1nm未満であると、粒子間でデクスター機構に基づく電子移動が生じ、局在プラズモンの失活の点で不利となる。
金属系粒子集合体層に含まれる金属系粒子の数は30個以上であり、好ましくは50個以上である。金属系粒子を30個以上含む集合体を形成することにより、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が効果的に生じ、上記〔iii〕の特徴、さらには上記(A)〜(C)の効果を効果的に発現させることができる。
有機EL素子の一般的な素子面積に照らせば、金属系粒子集合体に含まれる金属系粒子の数は、たとえば300個以上、さらには17500個以上となり得る。
金属系粒子集合体層における金属系粒子の数密度は、7個/μm2以上であることが好ましく、15個/μm2以上であることがより好ましい。
本実施形態の金属系粒子集合体層においても、第1の実施形態と同様、金属系粒子間は互いに絶縁されている、換言すれば、隣り合う金属系粒子との間に関して非導電性(金属系粒子集合体層として非導電性)であることが好ましい。
以上のように、上記〔iii〕の特徴を有する本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、これを構成する金属系粒子の金属種、サイズ、形状、金属系粒子間の平均距離などの制御により得ることができる。
本発明の有機EL素子が備える金属系粒子集合体層は、上記〔i〕〜〔iii〕のいずれか1つの特徴を有することが好ましく、〔i〕〜〔iii〕のいずれか2つ以上の特徴を有することがより好ましく、〔i〕〜〔iii〕のすべての特徴を有することがさらに好ましい。
<金属系粒子集合体層の製造方法>
上記第1〜第3の実施形態に係る金属系粒子集合体層を含む本発明に係る金属系粒子集合体層は、次のような方法によって作製することができる。
(1)基板上において微小な種(seed)から金属系粒子を成長させていくボトムアップ法、
(2)所定の形状を有する金属系粒子を所定の厚みを有する両親媒性材料からなる保護層で被覆した後、LB(Langmuir Blodgett)膜法により、これを基板上にフィルム化する方法、
(3)その他、蒸着またはスパッタリングにより作製した薄膜を後処理する方法、レジスト加工、エッチング加工、金属系粒子が分散された分散液を用いたキャスト法など。
上記方法(1)においては、所定温度に調整された基板上に、極めて低速で金属系粒子を成長させる工程(以下、粒子成長工程ともいう。)を含むことが肝要である。かかる粒子成長工程を含む製造方法によれば、30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されており、該金属系粒子が、所定範囲内の形状(平均粒径200〜1600nm、平均高さ55〜500nmおよびアスペクト比1〜8)、さらに好ましくは所定範囲内の平均粒子間距離(1〜150nm)を有する金属系粒子集合体の層(薄膜)を制御良く得ることができる。
粒子成長工程において、基板上に金属系粒子を成長させる速度は、平均高さ成長速度で1nm/分未満であることが好ましく、0.5nm/分以下であることがより好ましい。ここでいう平均高さ成長速度とは、平均堆積速度または金属系粒子の平均厚み成長速度とも呼ぶことができ、下記式:
金属系粒子の平均高さ/金属系粒子成長時間(金属系材料の供給時間)
で定義される。「金属系粒子の平均高さ」の定義は上述のとおりである。
粒子成長工程における基板の温度は、好ましくは100〜450℃の範囲内、より好ましくは200〜450℃、さらに好ましくは250〜350℃、特に好ましくは300℃またはその近傍(300℃±10℃程度)である。
100〜450℃の範囲内に温度調整された基板上に、1nm/分未満の平均高さ成長速度で金属系粒子を成長させる粒子成長工程を含む製造方法では、粒子成長初期において、供給された金属系材料からなる島状構造物が複数形成され、この島状構造物が、さらなる金属系材料の供給を受けて大きく成長しながら、周囲の島状構造物と合体していき、その結果、個々の金属系粒子が互いに完全に分離されていながらも、比較的平均粒径の大きい粒子が密に配置された金属系粒子集合体層が形成される。したがって、所定範囲内の形状(平均粒径、平均高さおよびアスペクト比)、さらに好ましくは所定範囲内の平均粒子間距離を有するように制御された金属系粒子からなる金属系粒子集合体層を製造することが可能となる。
また、平均高さ成長速度、基板温度および/または金属系粒子の成長時間(金属系材料の供給時間)の調整によって、基板上に成長される金属系粒子の平均粒径、平均高さ、アスペクト比および/または平均粒子間距離を所定の範囲内で制御することも可能である。
さらに、上記粒子成長工程を含む製造方法によれば、粒子成長工程における基板温度および平均高さ成長速度以外の諸条件を比較的自由に選択できることから、所望のサイズの基板上に所望のサイズの金属系粒子集合体層を効率的に形成できるという利点もある。
平均高さ成長速度が1nm/分以上である場合や、基板温度が100℃未満または450℃を超える場合には、島状構造物が大きく成長する前に周囲の島状構造物と連続体を形成し、互いに完全に分離された大粒径の金属系粒子からなる金属系集合体を得ることができないか、または、所望の形状を有する金属系粒子からなる金属系集合体を得ることができない(たとえば平均高さや平均粒子間距離、アスペクト比が所望の範囲から外れてしまう)。
金属系粒子を成長させる際の圧力(装置チャンバ内の圧力)は、粒子成長可能な圧力である限り特に制限されないが、通常、大気圧未満である。圧力の下限は特に制限されないが、平均高さ成長速度を上記範囲内に調整し易いことから、好ましくは6Pa以上、より好ましくは10Pa以上、さらに好ましくは30Pa以上である。
基板上に金属系粒子を成長させる具体的方法は、1nm/分未満の平均高さ成長速度で粒子成長できる方法である限り特に制限されないが、スパッタリング法、真空蒸着等の蒸着法を挙げることができる。スパッタリング法のなかでも、比較的簡便に金属系粒子集合体層を成長させることができ、かつ、1nm/分未満の平均高さ成長速度を維持しやすいことから、直流(DC)スパッタリング法を用いることが好ましい。スパッタンリング方式は特に制限されず、イオンガンやプラズマ放電で発生したアルゴンイオンを電界で加速してターゲットに照射する直流アルゴンイオンスパッタリング法などを用いることができる。スパッタリング法における電流値、電圧値、基板・ターゲット間距離等の他の諸条件は、1nm/分未満の平均高さ成長速度で粒子成長がなされるよう適宜調整される。
なお、所定範囲内の形状(平均粒径、平均高さおよびアスペクト比)、さらに好ましくは所定範囲内の平均粒子間距離を有する金属系粒子からなる金属系粒子集合体層を制御良く得るためには、粒子成長工程において平均高さ成長速度を1nm/分未満とすることに加えて、平均粒径成長速度を5nm未満とすることが好ましいが、平均高さ成長速度が1nm/分未満である場合、通常、平均粒径成長速度は5nm未満となる。平均粒径成長速度は、より好ましくは1nm/分以下である。平均粒径成長速度とは、下記式:
金属系粒子の平均粒径/金属系粒子成長時間(金属系材料の供給時間)
で定義される。「金属系粒子の平均粒径」の定義は上述のとおりである。
粒子成長工程における金属系粒子の成長時間(金属系材料の供給時間)は、少なくとも、基板上に担持された金属系粒子が所定範囲内の形状、さらに好ましくは所定範囲内の平均粒子間距離に達する時間であり、かつ、当該所定範囲内の形状、平均粒子間距離から逸脱し始める時間未満である。たとえば、上記所定範囲内の平均高さ成長速度および基板温度で粒子成長を行なっても、成長時間が極端に長すぎる場合には、金属系材料の担持量が多くなり過ぎて、互いに離間して配置された金属系粒子の集合体とはならずに連続膜となったり、金属系粒子の平均粒径や平均高さが大きくなり過ぎたりする。
したがって、金属系粒子の成長時間を適切な時間に設定する(粒子成長工程を適切な時間で停止する)必要があるが、このような時間の設定は、たとえば、あらかじめ予備実験を行なうことにより得られる、平均高さ成長速度および基板温度と、得られる金属系粒子集合体における金属系粒子の形状および平均粒子間距離との関係に基づいて行なうことができる。あるいは、基板上に成長された金属系材料からなる薄膜が導電性を示すまでの時間(すなわち、薄膜が金属系粒子集合体膜ではなく、連続膜となってしまう時間)をあら
かじめ予備実験により求めておき、この時間に達するまでに粒子成長工程を停止するようにしてもよい。
金属系粒子を成長させる基板表面は、できるだけ平滑であることが好ましく、とりわけ、原子レベルで平滑であることがより好ましい。基板表面が平滑であるほど、基板から受け取った熱エネルギーにより、成長中の金属系粒子が別の周囲の隣接金属系粒子と合体成長しやすくなるため、より大きなサイズの金属系粒子からなる膜が得られやすい傾向にある。
金属系粒子を成長させる基板は、有機EL素子の基板としてそのまま用いることが可能である。すなわち、上記した方法で作製された、金属系粒子集合体層が積層、担持された基板(金属系粒子集合体層積層基板)を有機EL素子の構成部材として用いることができる。
<有機EL素子の構成>
図1は、本発明の有機EL素子の一例を示す断面模式図である。図1に示されるように、本発明の有機EL素子は、第1電極層40(たとえば陽極)および第2電極層60(たとえば陰極)の一対の電極層;第1電極層40と第2電極層60との間に配置される、有機発光材料を含有する発光層50;ならびに、30個以上の金属系粒子20を互いに離間して二次元的に配置してなる、有機EL素子内に配置される粒子集合体からなる層(膜)である金属系粒子集合体層を少なくとも含む。通常の有機EL素子と同様、本発明の有機EL素子は、上記のような構成層を基板10上に積層したものであることができる。
金属系粒子集合体層は、有機EL素子内のいずれの位置に配置することもできるが、発光層よりも光取り出し面により近く配置されることが好ましく、光取り出し面近傍に配置することがより好ましい。上述のとおり本発明においては、金属系粒子集合体層によるプラズモン共鳴の作用範囲を著しく伸長できるため、高い発光増強効果を確保しつつ、このような位置に金属系粒子集合体層を配置することが可能である。そして、光取り出し面により近く金属系粒子集合体層を配置するほど、光取り出し効率、ひいては発光効率をより向上させることができる。プラズモン材料である金属系粒子集合体層を有機EL素子内に配置することは、発光層の有機発光材料からのエネルギー移動を受けた金属系粒子集合体層が発光を担うことになるので、発光層の有機発光材料の寿命を向上させるうえでも有利である。
たとえば好ましい有機EL素子の構成の1つとして、図1に示されるような、基板10と、金属系粒子集合体層と、第1電極層40と、発光層50と、第2電極層60とをこの順で含む構成が挙げられる。このような構成によれば、基板10を透明基板(光学的に透明な基板)とすることにより、該基板における金属系粒子集合体層側とは反対側に光取り出し面を形成することができる(たとえば基板裏面(金属系粒子集合体層側とは反対側の面)を光取り出し面とすることができる)ため、光取り出し面近傍に金属系粒子集合体層を配置した構成を実現できる。
図1に示される有機EL素子において、金属系粒子集合体層は基板10に直接積層(担持)されることができ、このような金属系粒子集合体層と基板10との積層体として、上述の方法によって作製できる金属系粒子集合体層積層基板を好ましく用いることができる。
基板10はいずれの材料で構成されてもよいが、特に金属系粒子集合体層が基板10に直接積層される場合には、金属系粒子集合体層の非導電性を確保する観点から、非導電性基板を用いることが好ましい。非導電性基板としては、ガラス、各種無機絶縁材料(Si
2、ZrO2、マイカ等)、各種プラスチック材料を用いることができる。上述のとおり、基板10は光学的に透明であることが好ましい。
図1に示されるように、本発明の有機EL素子は、金属系粒子集合体層を構成するそれぞれの金属系粒子20の表面を覆う絶縁層30をさらに含むことが好ましい。このような絶縁層30により、上述した金属系粒子集合体層の非導電性(金属系粒子間の非導電性)を担保できるとともに、金属系粒子集合体層とこれに隣り合う他の層との間の電気的絶縁を図ることができる。有機EL素子では、これを構成する各層に電流が流れるが、金属系粒子集合体層に電流が流れてしまうと、プラズモン共鳴による発光増強効果が十分に得られないおそれがある。金属系粒子集合体層をキャップする絶縁層30を設けることにより、金属系粒子集合体膜とこれに隣り合う他の層との間の電気的絶縁を図ることができるため、金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子に電流が注入されることを防止することができる。
絶縁層30を構成する材料としては、良好な絶縁性を有するものであれば特に制限されず、たとえば、スピンオングラス(SOG;たとえば有機シロキサン材料を含有するもの)のほか、SiO2やSi34などを用いることができる。絶縁層30の厚みは、所望の絶縁性が確保される限り特に制限はないが、後述するように発光層50と金属系粒子集合体層との距離は近いほど好ましいことから、所望の絶縁性が確保される範囲で薄いほどよい。
発光層50、第1電極層40および第2電極層60は、当該分野において従来公知の材料で構成することができ、またそれらの厚みも有機EL素子が通常有する厚みであってよい。発光層50に含有される有機発光材料は、たとえば従来公知の有機燐光発光材料(燐光発光性高分子等)や有機蛍光発光材料(蛍光発光性高分子等)などであることができる。
発光層50は、より具体的にはたとえば、1)発光性低分子からなるもの、2)発光性高分子からなるもの、などであることができる。
1)の発光層は、スピンコート法、蒸着法をはじめとするドライまたはウェット成膜法によって得ることができる。発光性低分子の具体例は、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体〔トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体;Alq3〕、ビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体〔BeBq〕などを含む。
2)の発光層は、スピンコート法など、発光性高分子含有液を用いたウェット成膜法によって得ることができる。発光性高分子の具体例は、F8BT〔ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−alt−ベンゾチアジアゾール)〕、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリアルキルチオフェンのようなπ共役系高分子などを含む。
本発明によれば、強いプラズモン共鳴を示すとともに、プラズモン共鳴の作用範囲(プラズモンによる増強効果の及ぶ範囲)が著しく伸長された金属系粒子集合体層を備えるため、発光層がたとえば10nm以上、さらには20nm以上、なおさらにはそれ以上の厚みを有する場合であっても、発光層全体の発光増強、ひいては発光効率の向上が可能である。
また、本発明の有機EL素子によれば、比較的発光効率の低い従来の青色(もしくはその近傍波長領域)有機発光材料を用いる場合であっても、プラズモンピークの極大波長が短波長側にシフトした金属系粒子集合体層を備えることにより、その有機発光材料の寿命を伸長しつつ、その発光効率を十分な程度にまで増強させることができる。
本発明の有機EL素子においては、発光層50と金属系粒子集合体層との間の距離(金属系粒子集合体層の発光層50側表面から発光層50までの距離)は特に制限されず、上述のように発光層50から、たとえば10nm、さらには数十nm(たとえば20nm)、なおさらには数百nm離れた位置に金属系粒子集合体層を配置してもプラズモン共鳴による発光増強効果を得ることができる。
たとえば本発明の有機EL素子は、発光層50と金属系粒子集合体層との間の距離が20nm以上であっても、発光層50に含有される有機発光材料のフォトルミネッセンス量子収率(放出されたフォトン数/吸収されたフォトン数)が、金属系粒子集合体層を有しない参照有機EL素子と比べて、1.5倍以上、さらには3倍以上となり得る。
なお、プラズモンによる発光増強効果は、その性質上、発光層50と金属系粒子集合体層との間の距離が大きくなるほど小さくなる傾向にあることから、当該距離は小さいほど好ましい。発光層50と金属系粒子集合体層との間の距離は、好ましくは100nm以下であり、より好ましくは20nm以下であり、さらに好ましくは10nm以下である。
本発明の有機EL素子は、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層など図示されない他の層をさらに含むことができる。
金属系粒子集合体層のプラズモンピークの極大波長は、発光層50の有機発光材料の発光波長と一致するかまたは近いことが好ましい。これにより、プラズモン共鳴による発光増強効果をより効果的に高めることができる。金属系粒子集合体層のプラズモンピークの極大波長は、これを構成する金属系粒子の金属種、平均粒径、平均高さ、アスペクト比および/または平均粒子間距離の調整により制御可能である。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔金属系粒子集合体層積層基板の作製〕
<製造例1>
直流マグネトロンスパッタリング装置を用いて、下記の条件で、ソーダガラス基板上に、銀粒子を極めてゆっくりと成長させ、基板表面の全面に金属系粒子集合体の薄膜を形成して、金属系粒子集合体層積層基板を得た。
使用ガス:アルゴン、
チャンバ内圧力(スパッタガス圧):10Pa、
基板・ターゲット間距離:100mm、
スパッタ電力:4W、
平均粒径成長速度(平均粒径/スパッタ時間):0.9nm/分、
平均高さ成長速度(=平均堆積速度=平均高さ/スパッタ時間):0.25nm/分、
基板温度:300℃、
基板サイズおよび形状:一辺が5cmの正方形。
図2は、得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を直上から見たときのSEM画像である。図2(a)は10000倍スケールの拡大像であり、図2(b)は50000倍スケールの拡大像である。また図3は、得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を示すAFM画像である。AFM像撮影にはキーエンス社製「VN−8010」を用いた(以下同様)。図3に示される画像のサイズは5
μm×5μmである。
図2に示されるSEM画像より、本製造例の金属系粒子集合体層を構成する銀粒子の上記定義に基づく平均粒径は335nm、平均粒子間距離は16.7nmと求められた。また図3に示されるAFM画像より、平均高さは96.2nmと求められた。これらより銀粒子のアスペクト比(平均粒径/平均高さ)は3.48と算出され、また、取得した画像からも銀粒子は扁平形状を有していることがわかる。さらにSEM画像より、本製造例の金属系粒子集合体層は、約6.25×1010個(約25個/μm2)の銀粒子を有することがわかる。
また、得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層の表面にテスター〔マルチメーター(ヒューレット・パッカード社製「E2378A」〕を接続して導電性を確認したところ、導電性を有しないことが確認された。
<製造例2>
銀ナノ粒子水分散物(三菱製紙社製、銀ナノ粒子濃度:25重量%)を純水で、銀ナノ粒子濃度が2重量%となるように希釈した。次いで、この銀ナノ粒子水分散物に対して1体積%の界面活性剤を添加して良く攪拌した後、得られた銀ナノ粒子水分散物に対して80体積%のアセトンを添加して常温で十分撹拌し、銀ナノ粒子塗工液を調製した。
次に、表面をアセトン拭きした1mm厚のソーダガラス基板上に上記銀ナノ粒子塗工液を1000rpmでスピンコートした後、そのまま大気中で1分間放置し、その後550℃の電気炉内で40秒間焼成した。次いで、形成された銀ナノ粒子層上に再度、上記銀ナノ粒子塗工液を1000rpmでスピンコートした後、そのまま大気中で1分間放置し、その後550℃の電気炉内で40秒間焼成して、金属系粒子集合体層積層基板を得た。
図4は、得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を直上から見たときのSEM画像である。図4(a)は10000倍スケールの拡大像であり、図4(b)は50000倍スケールの拡大像である。また図5は、得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を示すAFM画像である。図5に示される画像のサイズは5μm×5μmである。
図4に示されるSEM画像より、本製造例の金属系粒子集合体層を構成する銀粒子の上記定義に基づく平均粒径は293nm、平均粒子間距離は107.8nmと求められた。また図5に示されるAFM画像より、平均高さは93.0nmと求められた。これらより銀粒子のアスペクト比(平均粒径/平均高さ)は3.15と算出され、また、取得した画像からも銀粒子は扁平形状を有していることがわかる。さらにSEM画像より、本製造例の金属系粒子集合体層は、約3.13×1010個(約12.5個/μm2)の銀粒子を有することがわかる。
また、得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層の表面にテスター〔マルチメーター(ヒューレット・パッカード社製「E2378A」〕を接続して導電性を確認したところ、導電性を有しないことが確認された。
<比較製造例1および2>
直流マグネトロンスパッタリング法における堆積時間を変更することにより、比較製造例1および2の金属系粒子集合体層積層基板を得た。比較製造例1の金属系粒子集合体層積層基板は、金属系粒子の平均高さが約10nmであること以外は製造例1と略同じ粒子形状、アスペクト比および平均粒子間距離を有し、比較製造例2の金属系粒子集合体層積層基板は、金属系粒子の平均高さが約30nmであること以外は製造例1と略同じ粒子形
状、アスペクト比および平均粒子間距離を有するものであった。
〔金属系粒子集合体層積層基板の吸光スペクトル測定〕
図6は、製造例1および比較製造例1〜2で得られた金属系粒子集合体層積層基板の吸光光度法により測定された吸光スペクトルである。非特許文献(K. Lance Kelly, et al., "The Optical Properties of Metal Nanoparticles: The Influence of Size, Shape, and Dielectric Environment", The Journal of Physical Chemistry B, 2003, 107, 668)に示されているように、製造例1のような扁平形状の銀粒子は、平均粒径が200nmのとき約550nm付近に、平均粒径が300nmのときは650nm付近にプラズモンピークを持つことが一般的である(いずれも銀粒子単独の場合である)。
一方、製造例1の金属系粒子集合体層積層基板は、これを構成する銀粒子の平均粒径が約300nm(335nm)であるにもかかわらず、図6に示されるように、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長は約450nm付近と、短波長側にシフトしていることがわかる。この現象は、製造例1のように、銀粒子が、上記所定の形状を有する大型の粒子であり、かつ上記所定の平均粒子間距離で極めて密に配置されている場合に発現し得る。このような現象は、粒子間が近接することにより、それぞれの粒子中に生起したプラズモンによる相互作用の存在によってしか合理的に解釈することは困難である。
また、プラズモンピークの極大波長は金属系粒子の平均粒径にも依存する。たとえば、比較製造例1および2では、平均粒径が小さいために製造例1と比較してかなり長波長側にプラズモンピークを有しており、その極大波長は、それぞれ約510nm、約470nmである。
また製造例1では、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長における吸光度が約1.9と、比較製造例1および2に比べて極めて高く、これより製造例1の金属系粒子集合体層は、極めて強いプラズモン共鳴を示すことがわかる。
図7に、製造例2で得られた金属系粒子集合体層積層基板の吸光光度法により測定された吸光スペクトルを示した。可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長は488nmであった。
なお、図6および図7に示される吸光スペクトルは、金属系粒子集合体層積層基板の裏面(金属系粒子集合体層とは反対側)側であって、基板面に垂直な方向から紫外〜可視光領域の入射光を照射し、金属系粒子集合体層側に透過した全方向における透過光の強度Iと、前記金属系粒子集合体膜積層基板の基板と同じ厚み、材質の基板であって、金属系粒子集合体膜が積層されていない基板の面に垂直な方向から先と同じ入射光を照射し、入射面の反対側から透過した全方向における透過光の強度I0を、それぞれ積分球分光光度計を用いて測定することによって得られたものである。縦軸の吸光度は、下記式:
吸光度=−log10(I/I0
で表される。
〔参照金属系粒子集合体の作製および吸光スペクトル測定〕
図8に示される方法に従って、参照金属系粒子集合体が積層された基板を作製した。まず、縦5cm、横5cmのソーダガラス基板100のおよそ全面にレジスト(日本ゼオン株式会社製 ZEP520A)をスピンコートした(図8(a))。レジスト400の厚みは約120nmとした。次に、電子ビームリソグラフィーによってレジスト400に円形開口401を形成した(図8(b))。円形開口401の直径は約350nmとした。また、隣り合う円形開口401の中心間距離は約1500nmとした。
ついで、円形開口401を有するレジスト400に、真空蒸着法により銀膜201を蒸着した(図8(c))。銀膜201の膜厚は約100nmとした。最後に、銀膜201を有する基板をNMP(東京化成工業製 N−メチル−2−ピロリドン)に浸漬し、超音波装置内で1分間常温静置することによりレジスト400およびレジスト400上に成膜された銀膜201を剥離して、円形開口401内の銀膜201(銀粒子)のみがソーダガラス基板100上に残存、積層された参照金属系粒子集合体層積層基板を得た(図8(d))。
図9は、得られた参照金属系粒子集合体層積層基板における参照金属系粒子集合体層を直上から見たときのSEM画像である。図9(a)は20000倍スケールの拡大像であり、図9(b)は50000倍スケールの拡大像である。図9に示されるSEM画像より、参照金属系粒子集合体層を構成する銀粒子の上記定義に基づく平均粒径は333nm、平均粒子間距離は1264nmと求められた。また別途取得したAFM画像より、平均高さは105.9nmと求められた。またSEM画像より、参照金属系粒子集合体は、約62500個の銀粒子を有することがわかった。
上述した顕微鏡の対物レンズ(100倍)を用いた測定法により、製造例1の金属系粒子集合体層積層基板の吸光スペクトル測定を行った。具体的には、図10を参照して、金属系粒子集合体膜積層基板500の基板501側(金属系粒子集合体膜502とは反対側)であって、基板面に垂直な方向から可視光領域の入射光を照射した。そして、金属系粒子集合体膜502側に透過し、かつ100倍の対物レンズ600に到達した透過光を対物レンズ600で集光し、この集光光を分光光度計700によって検出して吸光スペクトルを得た。
分光光度計700には大塚電子社製の紫外可視分光光度計「MCPD−3000」を、対物レンズ600にはNikon社製の「BD Plan 100/0.80 ELWD」を用いた。結果を図11に示す。可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長は、図6の吸光スペクトルと同様、約450nmであった。一方、同じく顕微鏡の対物レンズを用いた測定法により参照金属系粒子集合体層積層基板の吸光スペクトル測定を行ったところ、可視光領域において最も長波長側にあるピークの極大波長は、654nmであった。製造例1の金属系粒子集合体層積層基板は、参照金属系粒子集合体層積層基板と比べて、可視光領域において最も長波長側にあるピークの極大波長が約200nmブルーシフトしている。
図12は、顕微鏡の対物レンズ(100倍)を用いた測定法による製造例2の金属系粒子集合体膜積層基板の吸光スペクトルである。製造例2の金属系粒子集合体は、比較参考例1−1の金属系粒子集合体に比べ、金属系粒子の平均粒径が大きいため、製造例2の金属系粒子集合体のプラズモンピークは、比較参考例1−1に比べて、より長波長側に現れることがミー散乱理論から合理的に推測される。しかし実際には、製造例2の金属系粒子集合体のプラズモンピークは、比較参考例1−1に比べて、100nm以上も短波長側に現れた。このことから、製造例2の金属系粒子集合体は、プラズモンピークの極大波長がその参照金属系粒子集合体に比べて、30〜500nmの範囲で短波長側にシフトしていることが合理的に示唆される。
製造例1の金属系粒子集合体層積層基板は、可視光領域において最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が1.744であり(図11)、参照金属系粒子集合体層積層基板は0.033であった。製造例1の金属系粒子集合体層積層基板と参照金属系粒子集合体層積層基板との間で最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度を比較するにあたって同じ金属系粒子数での比較となるようにするために、吸光スペクトルから
得られる吸光度を、金属系粒子数に相当するパラメータである、金属系粒子による基板表面の被覆率で除して、吸光度/被覆率を算出した。製造例1の金属系粒子集合体層積層基板の吸光度/被覆率は2.04であり(被覆率85.3%)、参照金属系粒子集合体層積層基板の吸光度/被覆率は0.84であった(被覆率3.9%)。
〔有機EL素子の作製および発光強度の評価〕
<実施例1>
製造例1と同条件で銀粒子を成長させることにより、0.5mm厚のソーダガラス基板上に製造例1に記載の金属系粒子集合体層を形成した。その後直ちに、スピンオングラス(SOG)溶液を金属系粒子集合体層上にスピンコートして、平均厚み80nmの絶縁層を積層した。SOG溶液には、有機系SOG材料である東京応化工業株式会社製「OCD
T−7 5500T」をエタノールで希釈したものを用いた。
次に、イオンスパッタリング法により、アノード極としてのIZO層(厚み22nm)を絶縁層上に積層した後、正孔注入層形成用溶液をアノード極上にスピンコートして、平均厚み20nmの正孔注入層を積層した。正孔注入層形成用溶液には、PLEXTRONICS社製、商品名「Plexcore AQ 1200」を、エタノールを用いて所定濃度に希釈したものを用いた。絶縁層、アノード極および正孔注入層の合計平均厚み(すなわち、金属系粒子集合体膜表面から発光層までの平均距離)は122nmである。
ついで、有機溶媒に溶解可能な高分子発光体を、所定濃度で有機溶媒に溶解し、これを正孔注入層上にスピンコートして、100nm厚の発光層を形成した。その後、真空蒸着法により、電子注入層としてのNaF層(2nm厚)、カソード極としてのMg層(2nm厚)およびAg層(10nm厚)をこの順で発光層上に積層した。得られた素子を表面側から封止剤(ナガセケムテックス社製 紫外線硬化性樹脂「XNR5516ZLV」)を用いて封止し、有機EL素子を得た。
<比較例1>
金属系粒子集合体層を形成しないこと以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
実施例1の有機EL素子に、ソースメーター(ケースレーインスツルメンツ株式会社製
ソースメーター 2602A 型)により15Vの一定電圧を印加し、電極間に流れる電流値を2.3mAとして素子を発光させた。発光スペクトルをコニカミノルタ社製 分光測定装置「CS−2000」を用いて測定し、得られた発光スペクトルを可視光波長域で積分して、発光強度を求めた。電極間に流れる電流値を2.7mAとしたこと以外は実施例1の有機EL素子と同様にして(印加電圧は、実施例1の有機EL素子と同じく15Vである)、比較例1の有機EL素子についても発光強度を求めた。その結果、実施例1の有機EL素子は、比較例1の有機EL素子と比較して約3.8倍の発光強度を示すことが確認された。
<実施例2>
実施例1と同条件で銀粒子を成長させることにより、0.5mm厚のソーダガラス基板上に実施例1に記載の金属系粒子集合体膜を形成した。その後直ちに、スピンオングラス(SOG)溶液を金属系粒子集合体膜上にスピンコートして、平均厚み30nmの絶縁層を積層した。SOG溶液には、有機系SOG材料である東京応化工業株式会社製「OCD
T−7 5500T」をエタノールで希釈したものを用いた。
次に、イオンスパッタリング法により、アノード極としてのIZO層(厚み22nm)を絶縁層上に積層した後、正孔注入層形成用溶液をアノード極上にスピンコートして、平
均厚み20nmの正孔注入層を積層した。正孔注入層形成用溶液には、PLEXTRONICS社製、商品名「Plexcore AQ 1200」を、エタノールを用いて所定濃度に希釈したものを用いた。絶縁層、アノード極および正孔注入層の合計平均厚み(すなわち、金属系粒子集合体膜表面から発光層までの平均距離)は72nmである。
ついで、真空蒸着法によって正孔注入層上に発光層としてAlq3を80nm成膜した。その後、真空蒸着法により、電子注入層としてのNaF層(2nm厚)、カソード極としてのMg層(2nm厚)およびAg層(10nm厚)をこの順で発光層上に積層した。得られた素子を表面側から封止剤(ナガセケムテックス社製 紫外線硬化性樹脂「XNR5516ZLV」)を用いて封止し、有機EL素子を得た。
<比較例2>
金属系粒子集合体膜を形成しないこと以外は実施例2と同様にして有機EL素子を作製した。
実施例2の有機EL素子に、ソースメーター(ケースレーインスツルメンツ株式会社製
ソースメーター 2602A 型)により11Vの一定電圧を印加し、電極間に流れる電流値を0.7mAとして素子を発光させた。発光スペクトルをコニカミノルタ社製 分光測定装置「CS−2000」を用いて測定し、得られた発光スペクトルを可視光波長域で積分して、発光強度を求めた。電極間に流れる電流値を1.1mAに調節したこと以外は実施例2の有機EL素子と同様にして(印加電圧は、実施例2の有機EL素子と同じく11Vである)、比較例2の有機EL素子についても発光強度を求めた。その結果、実施例2の有機EL素子は、比較例2の有機EL素子と比較して約2.6倍の発光強度を示すことが確認された。
〔光励起発光素子の作製および発光増強の評価〕
<参考例1−1>
製造例1とほぼ同じ条件で銀粒子を成長させることにより、0.5mm厚のソーダガラス基板上に製造例1と同様の金属系粒子集合体層を形成した。この金属系粒子集合体層は、金属系粒子の平均高さが66.1nmであること以外は製造例1と同じ粒子形状および平均粒子間距離を有するものであった。
次に、金属系粒子集合体層上にクマリン系発光層用溶液を3000rpmでスピンコートし、極薄い(単分子膜スケールの)クマリン系発光層を形成して、発光素子を得た。クマリン系発光層用溶液は次のように調製した。まずクマリン色素(Exciton社 Coumarin503)をエタノールに溶解し5mMクマリン溶液とした。また別途、有機系スピンオングラス(SOG)材料(東京応化工業株式会社製「OCD T−7 5500T」)をエタノールで33体積%に希釈した。この33体積%有機系SOG材料希釈液、5mMクマリン溶液、エタノールを、体積比が1:5:5となるように混合し、クマリン系発光層用溶液を得た。
<参考例1−2>
参考例1−1と同条件で銀粒子を成長させることにより、0.5mm厚のソーダガラス基板上に参考例1−1に記載の金属系粒子集合体層を形成した。その後直ちに、SOG溶液を金属系粒子集合体層上にスピンコートして、平均厚み10nmの絶縁層を積層した。SOG溶液には、有機系SOG材料である東京応化工業株式会社製「OCD T−7 5500T」をエタノールで希釈したものを用いた。「平均厚み」とは、表面凹凸を有する金属系粒子集合体層上に形成されたときの平均厚みを意味しており、SOG溶液をソーダガラス基板上に直接スピンコートしたときの厚みとして測定した(以下の参考例、比較参考例についても同様)。平均厚みが比較的小さい値のときは金属系粒子集合体層の谷部分
にのみ絶縁層が形成され、金属系粒子集合体層の最表面全体を被覆できないことがある。
次に、上記の絶縁層を有する金属系粒子集合体層の最表面に、参考例1−1で用いたものと同じクマリン系発光層用溶液を3000rpmでスピンコートし、極薄い(単分子膜スケールの)クマリン系発光層を形成して、発光素子を得た。
<参考例1−3>
絶縁層の平均厚みを30nmとしたこと以外は参考例1−2と同様にして、発光素子を得た。
<参考例1−4>
絶縁層の平均厚みを80nmとしたこと以外は参考例1−2と同様にして、発光素子を得た。
<参考例1−5>
絶縁層の平均厚みを150nmとしたこと以外は参考例1−2と同様にして、発光素子を得た。
<参考例1−6>
絶縁層の平均厚みを350nmとしたこと以外は参考例1−2と同様にして、発光素子を得た。
<比較参考例1−1>
銀ナノ粒子水分散物(三菱製紙社製、銀ナノ粒子濃度:25重量%)を純水で、銀ナノ粒子濃度が6重量%となるように希釈した。次いで、この銀ナノ粒子水分散物に対して1体積%の界面活性剤を添加して良く攪拌した後、得られた銀ナノ粒子水分散物に対して80体積%のアセトンを添加して常温で十分振り混ぜ、銀ナノ粒子塗工液を調製した。
次に、表面をアセトン拭きした1mm厚のソーダガラス基板上に上記銀ナノ粒子塗工液を1500rpmでスピンコートした後、そのまま大気中で1分間放置し、その後550℃の電気炉内で5分間焼成して、金属系粒子集合体層積層基板を得た。
図13は、本比較参考例1−1で得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を直上から見たときのSEM画像であり、10000倍スケールの拡大像である。また図14は、本比較参考例1−1で得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を示すAFM画像である。図14に示される画像のサイズは5μm×5μmである。
図13に示されるSEM画像より、本比較参考例1−1の金属系粒子集合体層を構成する銀粒子の上記定義に基づく平均粒径は278nm、平均粒子間距離は195.5nmと求められた。また図14に示されるAFM画像より、平均高さは99.5nmと求められた。これらより銀粒子のアスペクト比(平均粒径/平均高さ)は2.79と算出され、また、取得した画像からも銀粒子は扁平形状を有していることがわかる。さらにSEM画像より、本比較参考例1−1の金属系粒子集合体層は、約2.18×1010個(約8.72個/μm2)の銀粒子を有することがわかる。
上記参考例1−1および本比較参考例1−1で得られた金属系粒子集合体層積層基板の、上述した積分球分光光度計を用いた測定法による吸光スペクトルを図15に示す。また、本比較参考例1−1で得られた金属系粒子集合体層積層基板の、顕微鏡の対物レンズ(100倍)を用いた測定法による吸光スペクトルを図16に示す。いずれの測定法におい
ても本比較参考例1−1で得られた金属系粒子集合体層積層基板は、可視光領域において最も長波長側にあるピークの極大波長が611nmであった。この極大波長は、本比較参考例1−1の金属系粒子集合体膜積層基板に対応する参照金属系粒子集合体膜積層基板の極大波長とほぼ同じであり、本比較参考例1−1の金属系粒子集合体膜はほとんどブルーシフトを示さない。また図15から、参考例1−1の吸光スペクトルのピーク波長(最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長)は、比較参考例1−1の吸光スペクトルのピーク波長に比べブルーシフトの程度が大きく、かつ、最も長波長側にあるプラズモンピークが先鋭化し、その極大波長における吸光度が高くなっていることがわかる。
図16の吸光スペクトルから得られる可視光領域において最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度は0.444であり、金属系粒子による基板表面の被覆率が53.2%であることから、吸光度/被覆率は0.83と算出される。この吸光度/被覆率は、参照金属系粒子集合体層積層基板より小さい。
次に、参考例1−1と同様にして、金属系粒子集合体層上にクマリン系発光層を形成して、発光素子を得た。
<比較参考例1−2>
比較参考例1−1と同じ方法で、1mm厚のソーダガラス基板上に比較参考例1−1に記載の金属系粒子集合体層を形成した。その後直ちに、SOG溶液を金属系粒子集合体層上にスピンコートして、平均厚み10nmの絶縁層を積層した。SOG溶液には、有機系SOG材料である東京応化工業株式会社製「OCD T−7 5500T」をエタノールで希釈したものを用いた。
次に、参考例1−2と同様にして、上記の絶縁層を有する金属系粒子集合体層の最表面にクマリン系発光層を形成して、発光素子を得た。
<比較参考例1−3>
絶縁層の平均厚みを30nmとしたこと以外は比較参考例1−2と同様にして、発光素子を得た。
<比較参考例1−4>
絶縁層の平均厚みを80nmとしたこと以外は比較参考例1−2と同様にして、発光素子を得た。
<比較参考例1−5>
絶縁層の平均厚みを150nmとしたこと以外は比較参考例1−2と同様にして、発光素子を得た。
<比較参考例1−6>
絶縁層の平均厚みを350nmとしたこと以外は比較参考例1−2と同様にして、発光素子を得た。
<比較参考例2>
金属系粒子集合体層を形成しないこと以外は参考例1−1と同様にして発光素子を得た。
<参考例2−1>
参考例1−1と同じ方法で、0.5mm厚のソーダガラス基板上に参考例1−1に記載の金属系粒子集合体層を形成した。
次に、金属系粒子集合体層上にAlq3発光層用溶液をスピンコートして、平均厚み30nmのAlq3発光層を形成した。Alq3発光層用溶液は、Alq3(シグマアルドリッチ社 Tris−(8−hydroxyquinoline)aluminum)を、濃度が0.5重量%となるようにクロロホルムに溶解して調製した。
<参考例2−2>
参考例1−2と同じ方法で、平均厚み10nmの絶縁層を有する金属系粒子集合体層を形成した後、参考例2−1と同じ方法で平均厚み30nmのAlq3発光層を形成して、発光素子を得た。
<参考例2−3>
絶縁層の平均厚みを30nmとしたこと以外は参考例2−2と同様にして、発光素子を得た。
<参考例2−4>
絶縁層の平均厚みを80nmとしたこと以外は参考例2−2と同様にして、発光素子を得た。
<参考例2−5>
絶縁層の平均厚みを150nmとしたこと以外は参考例2−2と同様にして、発光素子を得た。
<比較参考例3−1>
比較参考例1−1と同じ方法で、1mm厚のソーダガラス基板上に比較参考例1−1に記載の金属系粒子集合体層を形成した後、参考例2−1と同じ方法で平均厚み30nmのAlq3発光層を形成して、発光素子を得た。
<比較参考例3−2>
比較参考例1−2と同じ方法で、平均厚み10nmの絶縁層を有する金属系粒子集合体層を形成した後、参考例2−1と同じ方法で平均厚み30nmのAlq3発光層を形成して、発光素子を得た。
<比較参考例3−3>
絶縁層の平均厚みを30nmとしたこと以外は比較参考例3−2と同様にして、発光素子を得た。
<比較参考例3−4>
絶縁層の平均厚みを80nmとしたこと以外は比較参考例3−2と同様にして、発光素子を得た。
<比較参考例3−5>
絶縁層の平均厚みを150nmとしたこと以外は比較参考例3−2と同様にして、発光素子を得た。
<比較参考例4>
金属系粒子集合体層を形成しないこと以外は参考例2−1と同様にして発光素子を得た。
<参考例3−1>
参考例1−1と同じ方法で、0.5mm厚のソーダガラス基板上に参考例1−1に記載の金属系粒子集合体層を形成した。
次に、金属系粒子集合体層上にF8BT発光層用溶液をスピンコートした後、ホットプレートで170℃、30分間焼成して、平均厚み30nmのF8BT発光層を形成した。F8BT発光層用溶液は、F8BT(Luminescence Technology社)を、濃度が1重量%となるようにクロロベンゼンに溶解して調製した。
<参考例3−2>
参考例1−2と同じ方法で、平均厚み10nmの絶縁層を有する金属系粒子集合体層を形成した後、参考例3−1と同じ方法で平均厚み30nmのF8BT発光層を形成して、発光素子を得た。
<参考例3−3>
絶縁層の平均厚みを30nmとしたこと以外は参考例3−2と同様にして、発光素子を得た。
<比較参考例5−1>
比較参考例1−1と同じ方法で、1mm厚のソーダガラス基板上に比較参考例1−1に記載の金属系粒子集合体層を形成した後、参考例3−1と同じ方法で平均厚み30nmのF8BT発光層を形成して、発光素子を得た。
<比較参考例5−2>
比較参考例1−2と同じ方法で、平均厚み10nmの絶縁層を有する金属系粒子集合体層積層基板を形成した後、参考例3−1と同じ方法で平均厚み30nmのF8BT発光層を形成して、発光素子を得た。
<比較参考例5−3>
絶縁層の平均厚みを30nmとしたこと以外は比較参考例5−2と同様にして、発光素子を得た。
<比較参考例6>
金属系粒子集合体層を形成しないこと以外は参考例3−1と同様にして発光素子を得た。
<比較参考例7−1>
1mm厚のソーダガラス基板上に、真空蒸着法によって膜厚13nmの導電性銀薄膜を成膜した。成膜の際のチャンバ内圧力は3×10-3Paとした。次に、導電性銀薄膜が成膜された基板を400℃の電気炉内で10分間焼成し、金属系粒子集合体膜積層基板を得た。
図17は、得られた金属系粒子集合体膜積層基板における金属系粒子集合体膜を直上から見たときのSEM画像である。図17(a)は10000倍スケールの拡大像であり、図17(b)は50000倍スケールの拡大像である。また図18は、本比較参考例7−1で得られた金属系粒子集合体膜積層基板における金属系粒子集合体膜を示すAFM画像である。図18に示される画像のサイズは5μm×5μmである。
図17に示されるSEM画像より、本比較参考例7−1の金属系粒子集合体を構成する銀粒子の上記定義に基づく平均粒径は95nm、平均粒子間距離は35.2nmと求められた。また図18に示されるAFM画像より、平均高さは29.6nmと求められた。こ
れらより銀粒子のアスペクト比(平均粒径/平均高さ)は3.20と算出される。
本比較参考例7−1で得られた金属系粒子集合体膜積層基板の吸光スペクトルを図19に示す(吸光スペクトルの測定方法は上記のとおりである)。比較参考例7−1の吸光スペクトルのピーク波長(最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長)は、図15に示される参考例1−1の吸光スペクトルのピーク波長に比べてより長波長側にあり、また、そのピーク波長における吸光度も低い。
次に、参考例2−1と同じ方法で平均厚み30nmのAlq3発光層を形成して、発光素子を得た。
<比較参考例7−2>
比較参考例7−1と同じ方法で、1mm厚のソーダガラス基板上に比較参考例7−1に記載の金属系粒子集合体膜を形成した。その後直ちに、SOG溶液を金属系粒子集合体膜上にスピンコートして、平均厚み10nmの絶縁層を積層した。SOG溶液には、有機系SOG材料である東京応化工業株式会社製「OCD T−7 5500T」をエタノールで希釈したものを用いた。その後、参考例2−1と同じ方法で平均厚み30nmのAlq3発光層を形成して、発光素子を得た。
<比較参考例7−3>
絶縁層の平均厚みを30nmとしたこと以外は比較参考例7−2と同様にして、発光素子を得た。
<比較参考例7−4>
絶縁層の平均厚みを80nmとしたこと以外は比較参考例7−2と同様にして、発光素子を得た。
<比較参考例7−5>
絶縁層の平均厚みを150nmとしたこと以外は比較参考例7−2と同様にして、発光素子を得た。
参考例1−1、1−2、1−3、1−4、1−5、1−6、参考例2−1、2−2、2−3、2−4、2−5、参考例3−1、3−2、3−3、比較参考例1−1、1−2、1−3、1−4、1−5、1−6、比較参考例2、比較参考例3−1、3−2、3−3、3−4、3−5、比較参考例4、比較参考例5−1、5−2、5−3、比較例6、比較参考例7−1、7−2、7−3、7−4、7−5のそれぞれの光励起発光素子について、次のようにして発光増強の程度を評価した。光励起発光素子の発光スペクトルの測定系を示す図20(a)および光励起発光素子の断面模式図である図20(b)を参照して、光励起発光素子1の発光層2側に、発光層2の表面に対して垂直な方向から励起光3を照射することにより光励起発光素子1を発光させた。励起光源4にはUV−LED(サウスウォーカー社製 UV−LED375−nano、励起光波長375nm)を用い、励起光源4からの発光をレンズ5で集光して励起光3とし、これを照射した。励起光3の光軸に対して40°の方向に放射される光励起発光素子1からの発光6をレンズ7で集光し、励起光の波長の光をカットする波長カットフィルタ8(シグマ光機社製 SCF−50S−44Y)を通して、分光測定器(大塚電子社製 MCPD−3000)により検出した。図20(b)は参考例および比較参考例で作製したソーダガラス基板100上に、金属系粒子集合体層200、絶縁層300、発光層2をこの順に備える光励起発光素子1を示す断面模式図である。
検出された発光のスペクトルについて発光波長領域における積分値を求めた。参考例1
−1、1−2、1−3、1−4、1−5、1−6、および、比較参考例1−1、1−2、1−3、1−4、1−5、1−6の光励起発光素子について測定した発光スペクトルから求めた積分値を、比較参考例2の光励起発光素子について測定した発光スペクトルから求めた積分値で除した値を「発光増強倍率」とし、これを縦軸としたグラフを図21に示した。
参考例2−1、2−2、2−3、2−4、2−5、比較参考例3−1、3−2、3−3、3−4、3−5および比較参考例7−1、7−2、7−3、7−4、7−5の光励起発光素子について測定した発光スペクトルから求めた積分値を、比較参考例4の光励起発光素子について測定した発光スペクトルから求めた積分値で除した値を「発光増強倍率」とし、これを縦軸としたグラフを図22に示した。
参考例3−1、3−2、3−3、および、比較参考例5−1、5−2、5−3の光励起発光素子について測定した発光スペクトルから求めた積分値を、比較参考例6の光励起発光素子について測定した発光スペクトルから求めた積分値で除した値を「発光増強倍率」とし、これを縦軸としたグラフを図23に示した。
1 光励起発光素子、2 発光層、3 励起光、4 励起光源、5,7 レンズ、 光励起発光素子からの発光、8 波長カットフィルタ、9 分光測定器、10 基板、20 金属系粒子、30 絶縁層、40 第1電極層、50 発光層、60 第2電極層、100 ソーダガラス基板、200 金属系粒子集合体層、201 銀膜、300 絶縁層、400 レジスト、401 円形開口、500 金属系粒子集合体膜積層基板、501 基板、502 金属系粒子集合体膜、600 対物レンズ、700 分光光度計。

Claims (18)

  1. 第1電極層および第2電極層と、
    前記第1電極層と前記第2電極層との間に配置される有機発光材料を含有する発光層と、
    金属系粒子集合体層積層基板と、
    を含み、
    前記金属系粒子集合体層積層基板は、
    非導電性基板と、
    30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層であって、前記金属系粒子は、その平均粒径が200〜1600nmの範囲内、平均高さが55〜500nmの範囲内、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が1〜8の範囲内にある金属系粒子集合体層と、
    を備え、
    前記金属系粒子集合体層は、前記非導電性基板上に直接積層されており、
    前記金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、その隣り合う金属系粒子との平均距離が1〜150nmの範囲内となるように配置されている有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 第1電極層および第2電極層と、
    前記第1電極層と前記第2電極層との間に配置される有機発光材料を含有する発光層と、
    金属系粒子集合体層積層基板と、
    を含み、
    前記金属系粒子集合体層積層基板は、
    非導電性基板と、
    30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層であって、前記金属系粒子は、その平均粒径が200〜1600nmの範囲内、平均高さが55〜500nmの範囲内、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が1〜8の範囲内にある金属系粒子集合体層と、
    を備え、
    前記金属系粒子集合体層は、前記非導電性基板上に直接積層されており、
    前記金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、その隣り合う金属系粒子との平均距離が1〜150nmの範囲内となるように配置されているか、または、前記金属系粒子間に空気とは誘電率の異なる誘電体物質が介在されており、
    前記金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、前記平均粒径と同じ粒径、前記平均高さと同じ高さおよび同じ材質からなる金属系粒子を、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した参照金属系粒子集合体(X)と比べて、最も長波長側にあるピークの極大波長が30〜500nmの範囲で短波長側にシフトしている有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 第1電極層および第2電極層と、
    前記第1電極層と前記第2電極層との間に配置される有機発光材料を含有する発光層と、
    金属系粒子集合体層積層基板と、
    を含み、
    前記金属系粒子集合体層積層基板は、
    非導電性基板と、
    30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層であって、前記金属系粒子は、その平均粒径が200〜1600nmの範囲内、平均高さが55〜500nmの範囲内、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が1〜8の範囲内にある金属系粒子集合体層と、
    を備え、
    前記金属系粒子集合体層は、前記非導電性基板上に直接積層されており、
    前記金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、その隣り合う金属系粒子との平均距離が1〜150nmの範囲内となるように配置されているか、または、前記金属系粒子間に空気とは誘電率の異なる誘電体物質が介在されており、
    前記金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、前記平均粒径と同じ粒径、前記平均高さと同じ高さおよび同じ材質からなる金属系粒子を、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した参照金属系粒子集合体(Y)よりも、同じ金属系粒子数での比較において、最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が高い有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 前記金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、前記アスペクト比が1を超える扁平状の粒子である請求項1〜3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 前記金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、銀からなる請求項1〜4のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. 前記金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、その隣り合う金属系粒子との間に関して非導電性である請求項1〜5のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  7. 前記金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、最も長波長側にあるピークが350〜550nmの範囲内に極大波長を有する請求項1〜6のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  8. 前記金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が1以上である請求項1〜7のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  9. 前記金属系粒子集合体層は、前記発光層よりも光取り出し面により近く配置されている請求項1〜8のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  10. 前記非導電性基板と、前記金属系粒子集合体層と、前記第1電極層と、前記発光層と、前記第2電極層とをこの順で含む請求項1〜9のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  11. 前記金属系粒子集合体層を構成するそれぞれの金属系粒子の表面を覆う絶縁層をさらに含む請求項1〜10のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  12. 前記非導電性基板は透明基板であり、前記非導電性基板における前記金属系粒子集合体層側とは反対側に光取り出し面を有する請求項11のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  13. 前記発光層の厚みが10nm以上である請求項1〜12のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  14. 前記金属系粒子集合体層の発光層側表面から前記発光層までの距離が10nm以上である請求項1〜13のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  15. 前記金属系粒子集合体層の発光層側表面から前記発光層までの距離が20nm以上であり、前記発光層に含有される前記有機発光材料のフォトルミネッセンス量子収率が、前記金属系粒子集合体層を有しない参照有機エレクトロルミネッセンス素子と比べて、1.5倍以上である請求項1〜14のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  16. 金属系粒子集合体層積層基板を有機エレクトロルミネッセンス素子内に配置することを含む有機エレクトロルミネッセンス素子の発光増強方法であって、
    前記金属系粒子集合体層積層基板は、
    非導電性基板と、
    30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層であって、前記金属系粒子は、その平均粒径が200〜1600nmの範囲内、平均高さが55〜500nmの範囲内、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が1〜8の範囲内にあり、かつ金属系粒子は、その隣り合う金属系粒子との平均距離が1〜150nmの範囲内となるように配置されている金属系粒子集合体層と、
    を備え、
    前記金属系粒子集合体層は、前記非導電性基板上に直接積層されている、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光増強方法。
  17. 金属系粒子集合体層積層基板を有機エレクトロルミネッセンス素子内に配置することを含む有機エレクトロルミネッセンス素子の発光増強方法であって、
    前記金属系粒子集合体層積層基板は、
    非導電性基板と、
    30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層であって、前記金属系粒子は、その平均粒径が200〜1600nmの範囲内、平均高さが55〜500nmの範囲内、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が1〜8の範囲内にあり、かつ可視光領域における吸光スペクトルにおいて、前記平均粒径と同じ粒径、前記平均高さと同じ高さおよび同じ材質からなる金属系粒子を、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した参照金属系粒子集合体(X)と比べて、最も長波長側にあるピークの極大波長が30〜500nmの範囲で短波長側にシフトしている金属系粒子集合体層と、
    を備え、
    前記金属系粒子集合体層は、前記非導電性基板上に直接積層されており、
    前記金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、その隣り合う金属系粒子との平均距離が1〜150nmの範囲内となるように配置されているか、または、前記金属系粒子間に空気とは誘電率の異なる誘電体物質が介在されている、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光増強方法。
  18. 金属系粒子集合体層積層基板を有機エレクトロルミネッセンス素子内に配置することを含む有機エレクトロルミネッセンス素子の発光増強方法であって、
    前記金属系粒子集合体層積層基板は、
    非導電性基板と、
    30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層であって、前記金属系粒子は、その平均粒径が200〜1600nmの範囲内、平均高さが55〜500nmの範囲内、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が1〜8の範囲内にあり、かつ可視光領域における吸光スペクトルにおいて、前記平均粒径と同じ粒径、前記平均高さと同じ高さおよび同じ材質からなる金属系粒子を、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した参照金属系粒子集合体(Y)よりも、同じ金属系粒子数での比較において、最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が高い金属系粒子集合体層と、
    を備え、
    前記金属系粒子集合体層は、前記非導電性基板上に直接積層されており、
    前記金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、その隣り合う金属系粒子との平均距離が1〜150nmの範囲内となるように配置されているか、または、前記金属系粒子間に空気とは誘電率の異なる誘電体物質が介在されており、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光増強方法。
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