ところで、例えばスマートフォンの表示ユニットと筐体とを接着した状態で落下させた場合、そのときの衝撃によって分離しないように粘着テープに衝撃吸収性を確保しなければならず、従来以上に接着力に優れた粘着テープが求められている。
また、スマートフォンには、表示ユニットの周縁部にある端子等が表側から見えないようにするために、額縁部と呼ばれる遮光性を有する部分がガラスパネルの裏面に設けられている。そして、スマートフォンでは、外形を小さくしながら、表示ユニットの有効表示領域を拡大したいという要求があるので、額縁部を狭くするいわゆる狭額縁化が進められている。
スマートフォンに限らず、デジタルカメラやタブレット端末等にも額縁部はあり、これらにおいても狭額縁化が進められている。狭額縁化が進むと、粘着テープの接着幅も狭くなっていき、部材間に挟み込まれている粘着テープの有効接着面積が小さくなっていく。この粘着テープに対して要求される機能としては、部材を固定したり、ゴミの侵入を防止したりする機能の他、衝撃を受けても部材が分離しないようにする機能があるが、有効接着面積が狭くなっている状況を考慮すると、それら機能を満足するのが困難である。
また、額縁部の形成手法として一般的なのは、ガラスパネルにスクリーン印刷する方法である。この場合、印刷工程が必要な分、工数増加につながるので、印刷工程を省略したいという要求がある。このことに対し、例えば、特許文献1等に開示されている着色された粘着テープをガラスパネルの周縁部に貼り付け、この着色粘着テープによって額縁部を形成することで、スクリーン印刷を省略することが考えられる。
そのようにする場合、額縁部から光が透過しないようにすることが製品見栄えの観点から重要であり、より一層遮光性の高い両面粘着テープが必要になってくる。
また、表示ユニットのバックライトから漏れる光を額縁部で漏れないように遮光したいという要求もあり、このことからも遮光性の高い粘着テープが望まれている。
また、タッチパネル、LCDパネル、バックライトが一体化した表示ユニットは高価なため、その表示ユニットと他の電子部品とのどちらか一方に不良が発生した場合には、粘着テープをうまく剥離して、正常に動作する部品のみを再利用したいという、いわゆるリワークの要求も強い。リワークとしては、他にも、バックライトが不良で、これをLCDパネルから剥離してLCDパネルを再利用したい場合もある。
また、表示ユニットにおいては軽薄短小化や情報量の増加に伴って大画面化が進みつつある。このような状況では、バックライトの光源とLCDパネルとが接近して、光源からの光が粘着テープを通過して漏れ、LCDパネルの表示面の見栄えが悪化するといった問題が生じるおそれがある。従って、LCDパネルとバックライトとの間に挟み込まれる粘着テープには、従来よりも高い遮光性が要求されるようになってきている。
また、上記したLCDパネルの表示面の見栄えを向上させること、及び、LCDパネルを駆動するためのドライバーへの光の進入を遮蔽してドライバーの誤作動を防止することも求められているので、粘着テープの遮光性は重要な性能となっている。
上記したように粘着テープに対する遮光性、接着性、リワーク時の剥離性の要求は大変厳しいものである。例えば、特許文献1の粘着テープでは、十分な遮光性が得られたとしても、一般に用いられている組成の両面粘着テープなので、接着力とリワーク時の剥離性とは相反する性質であり、両性能のバランスの良い点を取ることのみが接着力と剥離性とを両立させる唯一の解決策であり、従来に無い強力な接着力と容易な剥離性の両立を十分に実現することは困難である。
また、特許文献2の粘着テープでは、遮光性、接着性と打ち抜き加工性を両立できるとあるが、リワーク時の剥離性は容易でない。
また、特許文献3では、遮光性に優れる遮光用粘着テープを実現する方法が記載されているが、接着性に関する記載は無く、特にリワーク時の容易な剥離性は実現できない。
また、特許文献4の発明では、レーザーを意匠層に照射することにより、粘着層が軟化または溶融して強力な接着力が得られるが、遮光性については満足できないことが考えられる。
また、特許文献5の発明では、強力に接着した部分に隣接する意匠層に再度レーザーを照射することにより、第1部材を容易に剥離することができるとあるが、遮光性については満足できないことが考えられる。この特許文献5の場合、溶融が進みすぎると、額縁から粘着層がはみ出て見栄えが低下してしまう恐れがある。さらに、例えば狭額縁化が進んで意匠層をスクリーン印刷しなくなった場合、従来の粘着テープでは、粘着テープを透過して裏側の部品が見えることになり、粘着テープとガラスとの接着面の見栄えも悪く、また過剰な出力でレーザーが照射されて粘着層が発泡した場合は、その粘着層の発泡が目視できる状態となってより一層見栄えが悪くなる。
また、仮に、ある程度の遮光性を有する粘着テープを使用した場合でも、レーザー光を照射しない場合は、ガラスパネルと粘着テープとが完全には密着しないため、密着している部分としていない部分とがガラスパネル表面から確認できる状態となって見栄えが非常に悪くなる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、強力な接着力を得ながらも剥離時の容易性を確保し、しかも、遮光性が高く、部材を見栄えよく接着できる粘着テープを提供することにある。
第1の発明は、レーザー光の照射で発生する熱によって軟化または溶融する粘着層を有するレーザー接合用粘着テープにおいて、
上記粘着層は、波長400nmから750nmの範囲の可視光透過率が10%以下であり、かつ、波長750nmから2000nmの範囲の赤外光吸収率が20%以上であることを特徴とするレーザー接合用粘着テープである。
この構成によれば、粘着層の赤外光吸収率が20%以上あるので、赤外域に波長を持つレーザー光を粘着層が十分に吸収する。よって、粘着層が軟化または溶融して部材に確実に密着するようになり、強力な接着力が得られる。また、粘着層が軟化または溶融することで、濡れ性が向上し、部材に均一に密着する。これにより、例えば透明な部材を接着する際、その裏側に位置することになる粘着テープの全体が表側から見て均一な色目となり、見栄えが向上する。さらに、粘着テープの可視光透過率が10%以下で、粘着テープの遮光性が高いため、額縁部として用いた場合に額縁として十分に機能する。
しかも、そのように遮光性が高いため、例えばスマートフォンのLCDパネルやバックライトの接着に用いた場合に、光源からの光を十分に遮光することができる。
また、レーザー光を過剰照射した場合のように粘着層が多少発泡しても、その粘着層の遮光性が高いために泡の視認ができず、ひいては見栄えが非常によくなる。
また、接着後、同一部分に再度レーザー光を照射することにより、粘着層が軟化または溶融するので、部材を容易に剥離することが可能になり、リワークが容易に行える。
第2の発明は、第1の発明において、
上記粘着層がエラストマーを主成分としており、
上記粘着層の厚みが100μm以上であることを特徴とするものである。
この構成によれば、粘着層はエラストマーなので引っ張り強度が高く、容易に破断することが無いので、レーザーを再照射して剥離する場合でも、途中で破断することなく容易に被着体から剥がすことができる。
この構成によれば、粘着層の厚みが100μm以上なので、粘着層自体の粘弾性を十分に発揮して、接着によって得られた製品が落下した場合、粘着層で衝撃を十分吸収して、部材の剥離を防止することが可能になる。さらに、粘着層厚みが厚くなることにより、部材の接着面に形成された多少の段差を粘着層の変形によって吸収することが可能になり、密着度が向上する。
また、エラストマーはレーザー光による熱で軟化または溶融して部材と十分に馴染みやすく、その結果、非常に強い接着力を得られる。
第3の発明は、第1の発明において、
上記粘着層が設けられる基材フィルムを有しており、
上記基材フィルムは、波長400nmから750nmの範囲の可視光透過率が10%以下で、かつ、波長750nmから2000nmの範囲の赤外光吸収率が20%以上であることを特徴とする。
この構成によれば、基材フィルムの可視光透過率が10%以下なので十分な遮光性が得られる。
また、赤外光吸収率は20%以上あるので、基材フィルム自身がレーザー光の吸収により十分に発熱する。その基材フィルムには粘着層が設けられているので、基材フィルムの熱が粘着層に確実に伝達し、粘着層を軟化または溶融させることができる。これにより、部材に対して十分な接着力が得られる。
また、基材フィルムは十分な強度を有するものとすることが可能なので、粘着層の強度とあいまって、剥離する時に破断することなく部材から容易に剥離することが可能になる。
第1の発明によれば、レーザー光の照射で発生する熱によって軟化または溶融する粘着層を有しており、その粘着層は、波長400nmから750nmの範囲の可視光透過率が10%以下であり、かつ、波長750nmから2000nmの範囲の赤外光吸収率が20%以上である。これにより、レーザー光を用いて強力な接着力を得ることができ、また、剥離時にはレーザー光の照射によって容易に行うことができ、しかも、遮光性が高く、部材を見栄えよく接着することができる。
第2の発明によれば、エラストマーを主成分とする粘着層の厚みが100μm以上であるため、衝撃吸収性及び部材への密着度を高めてより一層強力な接着力を得ることができる。
第3の発明によれば、基材フィルムは、波長400nmから750nmの範囲の可視光透過率が10%以下であるので、粘着テープ全体としての遮光性を高めることができる。また、基材フィルムは、波長750nmから2000nmの範囲の赤外光吸収率が20%以上であるので、レーザー光の照射によって粘着層を確実に軟化または溶融させて強力な接着力を得ることができるとともに、剥離を容易に行うことができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は、スマートフォンAのガラスパネル(第1部材)10と筐体(第2部材)20とを本発明の実施形態に係るレーザー接合用粘着テープ1により接着した場合を示すものである。詳細は後述するが、ガラスパネル10と筐体20とを接合する際、及び分離する際の両方でレーザー光Lを用いる。
ガラスパネル10の代わりに、例えば、透明な樹脂製フィルム、樹脂製シート等であってもよい。ガラスパネル10は無色透明であってもよいが、レーザー光Lの大部分を透過させることができるように薄く着色してもよい。
一方、筐体20は、電子部品等を収容するものであり、レーザー光Lを通さないものである。
この実施形態では、スマートフォンAの表示部におけるガラスパネル10を第1部材とし、電子部品等を収容する筐体20を第2部品としているが、本発明はスマートフォンAの製造以外にも、例えばデジタルカメラやタブレット端末等の製造に用いることができる。
図2に示すようにレーザー接合用粘着テープ1は、ガラスパネル10と筐体20との間に配置される。図3に示すように、レーザー接合用粘着テープ1は、基材フィルム2と、基材フィルム2の表側及び裏側にそれぞれ設けられた表側粘着層3及び裏側粘着層4とを備えている。
表側粘着層3及び裏側粘着層4の厚みは、例えば100μm以上に設定されている。表側粘着層3及び裏側粘着層4の厚みが100μmよりも薄いと、ガラスパネル10の接着面10aや筐体20の接着面20aに小さな段差等があった場合に、その段差を表側粘着層3及び裏側粘着層4で吸収することができず、ひいては接着力が低下するので好ましくない。接着面10a,20aが平らであれば表側粘着層3及び裏側粘着層4の厚みが100μmよりも薄くてもよい。表側粘着層3及び裏側粘着層4の厚みとしては、200μm以上がより好ましい。基材フィルム2の厚みは、表側粘着層3及び裏側粘着層4の厚みよりも薄く設定されている。
表側粘着層3及び裏側粘着層4は同じであるので、以下、表側粘着層3について詳細に説明する。表側粘着層3の主成分はエラストマーである。表側粘着層3の主成分として使用できるエラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、塩ビ系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリブタジェン系エラストマー、イソプレン系エラストマー、イオンクラスターと非晶性PEエラストマー、フッ素系エラストマー、ウレタン系エラストマー、アクリル系エラストマー等を挙げることができ、これらを単独または混合して使用することができる。
また、表側粘着層3に粘着性を付与するために粘着付与剤、いわゆるタッキファイアやオイル、液状オリゴマー等を添加することができる。タッキファイアとしては、例えば、ロジン系粘着付与剤やテルペン系粘着付与剤、炭化水素系粘着付与剤を単独または混合して使用することができ、液状オリゴマーとしてはアクリル系、スチレン系、ゴム系、ポリエステル系の分子量数百から数千程度の高粘度の重合体を使用することができる。
表側粘着層3は、波長400nmから750nmの範囲の可視光透過率が10%以下であり、かつ、波長750nmから2000nmの範囲の赤外光吸収率が20%以上である。具体的には、表側粘着層3には、波長400nmから750nmの範囲の可視光を吸収する物質と、波長750nmから2000nmの赤外光を吸収する物質とが混合されている。
波長400nmから750nmの範囲の可視光を吸収する物質(可視光吸収物質)としては、例えば、無機物ではカーボンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、グラファイト等があり、金属酸化物ではチタンブラック、二酸化マンガン、二酸化チタン等がある。その他、波長400nmから750nmの範囲の可視光を吸収する物質としては、有機顔料を混合して黒色化したものや、適当な色を選択して意匠性を高めることができるもの、また波長400nmから750nmの可視光を吸収する染料や金属を挙げることができる。
波長750nmから2000nmの赤外光を吸収する物質(赤外光吸収物質)としては、例えば、無機物のカーボンブラック、チタンブラック、波長750nmから2000nmの赤外光を吸収する染料や赤外線吸収剤であるミアニン色素、チオニールニッケル錯体、スクアリリニウム色素、ポリメチン系色素、インモニウム系色素、フタロシアン系色素、トリアリルメタン系色素、ナフトキノシ系色素等を挙げることができる。
表側粘着層3の可視光透過率と赤外光吸収率とは、それぞれ、可視光吸収物質及び赤外光吸収物質の添加量によって変更することができる。可視光吸収物質及び赤外光吸収物質の添加量は、その成分により異なるが、0.01重量%以上10重量%以下の範囲とし、可視光透過率と赤外光吸収率が上述した発明の範囲に入ればよい。
また、可視光透過率と赤外光吸収率を上述した発明の範囲内に入るように調整するため、上記の成分を適当に混合することができる。
カーボンブラックや二酸化チタンのように溶解しない成分をエラストマー中に分散させるためには、ボールミル、ビーズミルや3本ロールなどを用いて分散させる必要がある。
表側粘着層3の可視光透過率は、10%以下、好ましくは5%以下である。表側粘着層3の可視光透過率が10%よりも高いの場合、LCDパネルとバックライトとの間、ガラスパネルと額縁部との間、粘着テープ1等から光が漏れて好ましくない。
また、表側粘着層3の赤外光吸収率は、20%以上、好ましくは30%以上である。20%以上とすることで、仮にガラスパネル10に額縁部が無い場合、レーザー光を効率よく吸収して表側粘着層3が発熱し、それによって軟化または溶融してガラスパネル10と確実に密着して綺麗な接着面が得られるので意匠性が高くなる。
表側粘着層3の赤外光吸収率が20%未満では、レーザー光を照射しても、表側粘着層3はレーザー光の吸収量が低くて十分に発熱せず、エネルギーのロスが大きくなる。また、表側粘着層3は十分に軟化または溶融せず、ガラスパネル10との接着界面が不均一になり、表側から見たときにムラが見えて意匠性が低下し、好ましくない。
基材フィルム2としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム等の樹脂製フィルムを使用することができる。基材フィルム2としてふさわしいのは、破断強度の高いフィルムである。
基材フィルム2は、基材フィルム2を構成する樹脂に着色剤を練り込んだ着色フィルムとしてもよい。また、片面または両面に遮光性の高い印刷層やコーティング層を設けた樹脂製フィルムや、片面または両面に遮光性の高い塗料を塗布した樹脂製フィルムによって基材フィルム2を構成してもよい。基材フィルム2に塗料を塗布する方法としては、一般的なオフセット印刷、フレキソ印刷、グラビアコーター、コンマコーター、ダイコーター、リバースコーター等を使用することができる。
基材フィルム2に遮光性を持たせた場合、光の大半は基材フィルム2で遮光されることになるため、表側粘着層3及び裏側粘着層4の可視光透過性は50%以下で十分である。
表側粘着層3や裏側粘着層4の成型方法は、まず、有機溶剤にエラストマーやタッキファイアを溶解して粘着組成物を得る。その後、無機や有機の顔料によって着色する場合は、顔料を粘着組成物に均一に分散させて粘着剤の塗料のようにする。尚、染料の場合は粘着剤組成物に溶解することができる。
その他、1軸あるいは2軸の押出し機を用いて、エラストマーその他の成分を十分に混練してペレットに成型し、Tダイなどで押出し成形したり、ホットメルト塗工してもよい。
着色したフィルムを基材フィルム2として使用する場合は、基材フィルム2の両面に粘着剤組成物を塗布してレーザー接合用両面粘着テープ1とする。
着色したフィルム基材を使用しない場合は、離型処理したセパレーター上に一般的なコンマコーター、ダイコーター、リバースコーター等で粘着剤組成物を塗布するか、離型処理したセパレーター上にホットメルトコーターやTダイからの押出しで成型することができる。
次に、上記レーザー接合用粘着テープ1を用いてガラスパネル10と筐体20とを接着する場合について説明する。レーザー接合用粘着テープ1は、ガラスパネル10の周縁部に黒色等の着色部分(額縁部)がある場合と、額縁部が無い場合の両方で用いることができる。
レーザー接合用粘着テープ1は、図4に示すようにガラスパネル10の周縁部に沿う枠型に切り抜いた形状となっている。ガラスパネル10に額縁部がある場合には、レーザー接合用粘着テープ1は額縁部にちょうど重なる形状とする。ガラスパネル10に額縁部が無い場合には、レーザー接合用粘着テープ1が額縁部となるような形状とする。
レーザー接合用粘着テープ1をガラスパネル10と筐体20との間に配置し、ガラスパネル10の接着面10aと、筐体20の接着面20aとで挟持する。
その後、図1に示すように、レーザー光Lをガラスパネル10側からレーザー接合用粘着テープ1に向けて照射する。
レーザー光Lは、ガラスパネル10に額縁部がある場合には、額縁部で吸収されて額縁部が発熱する。額縁部の熱は隣接するレーザー接合用粘着テープ1の表側粘着層3及び裏側粘着層4に伝わり、両粘着層3、4が軟化又は溶融する。レーザー光Lの全てがガラスパネル10の額縁部で吸収されなかった場合には、残りのレーザー光Lは、表側粘着層3、裏側粘着層4や吸収されるとともに、基材フィルム2が赤外光吸収性を有する場合には、基材フィルム2にも吸収される。レーザー光Lを吸収した表側粘着層3及び裏側粘着層4は発熱する。また、レーザー光Lを吸収した基材フィルム2も発熱する。基材フィルム2の熱は表側粘着層3及び裏側粘着層4にも伝達する。よって、表側粘着層3及び裏側粘着層4が確実に軟化又は溶融する。
照射するレーザー光Lは、波長750nm以上の赤外域のレーザー光であればよく、半導体レーザー・ファイバーレーザーや固体レーザー・ガスレーザーなどを使用できるが、取り扱いの点から半導体レーザーが好ましい。
レーザー光Lの出力としては、ガラスパネル10に額縁部がある場合には、額縁部が破損せずに、かつ、レーザー接合用粘着テープ1の表側及び裏側粘着層3、4がレーザー光Lの照射によって発生した熱で軟化または溶融する程度が好ましい。ガラスパネル10に額縁部が無い場合は、表側及び裏側粘着層3、4が発泡しない程度で、表側及び裏側粘着層3、4が軟化または溶融する程度が適当である。
表側粘着層3及び裏側粘着層4が確実に軟化または溶融することで、濡れ性が向上し、ガラスパネル10の接着面10aや筐体20の接着面20aに均一に、かつ、確実に密着する。これにより、例えばガラスパネル10に額縁部が無い場合、ガラスパネル10の裏側に位置することになるレーザー接合用粘着テープ1の全体が表側から見て均一な色目となり、見栄えが向上する。また、表側粘着層3及び裏側粘着層4が軟化または溶融し、ガラスパネル10及び筐体20に確実に密着するようになり、その結果、強力な接着力が得られる。
接着後、レーザー接合用粘着テープ1の温度が常温まで低下すると強力な接着力を発現する。例えば、スマートフォンAを落下させた場合、従来の粘着テープではガラスパネル10と筐体20とが分離するような状況であったものが、本実施形態では、ガラスパネル10と筐体20とが分離することはなくなる。これは、表側粘着層3及び裏側粘着層4がガラスパネル10及び筐体20に確実に密着していることと、表側粘着層3及び裏側粘着層4の厚みを100μm以上にして両粘着層3、4の弾性変形量を大きくして衝撃吸収性を向上させていることによるものである。
また、ガラスパネル10に額縁部が無い場合には、レーザー接合用粘着テープ1の可視光透過率が低いので、レーザー接合用粘着テープ1をガラスパネル10に貼ることでレーザー接合用粘着テープ1が額縁部となる。
ガラスパネル10と筐体20とを接着した後、バックライトを点灯させると、レーザー接合用粘着テープ1の可視光透過率が低いので、レーザー接合用粘着テープ1を額縁部として用いた場合に額縁として十分に機能する。しかも、そのように遮光性が高いため、光源からの光を十分に遮光することができ、見栄えが良好になる。
また、接着後、例えばスマートフォンAの一部の部品にのみ不良が発生した場合には、接着時と同一部分に再度レーザー光を照射する。これにより、表側粘着層3及び裏側粘着層4が軟化または溶融するので、ガラスパネル10を筐体20から容易に剥離することが可能になる。ガラスパネル10と筐体20とを分離させることで、不良部品のみ廃棄して使用可能な部品は再利用できる。つまり、本実施形態のレーザー接合用粘着テープ1を用いることでリワークが容易に行える。
以上説明したように、この実施形態に係るレーザー接合用粘着テープ1によれば、レーザー光の照射で発生する熱によって軟化または溶融する粘着層3、4を有しており、その粘着層3、4は、波長400nmから750nmの範囲の可視光透過率が10%以下であり、かつ、波長750nmから2000nmの範囲の赤外光吸収率が20%以上である。これにより、レーザー光Lを用いて強力な接着力を得ることができ、また、剥離時にはレーザー光Lの照射によって容易に剥離することができる。しかも、レーザー接合用粘着テープ1の遮光性が高く、製品の見栄えを良好にすることができる。
また、表側粘着層3及び裏側粘着層4はエラストマーを主成分としており、しかも、厚みが100μm以上であるため、衝撃吸収性を高めることができるとともに、ガラスパネル10や筐体20への密着性を高めることができる。これにより、一層強力な接着力を得ることができる。
また、基材フィルム2は、波長400nmから750nmの範囲の可視光透過率が10%以下であり、粘着層3、4は、波長400nmから750nmの範囲の総可視光透過率が50%以下であるので、レーザー接合用粘着テープ1全体としての遮光性を高めることができる。
また、基材フィルム2は、波長750nmから2000nmの範囲の赤外光吸収率が20%以上であるので、レーザー光Lの照射によって基材フィルム2を発熱させて粘着層3、4を確実に軟化または溶融させることができる。このことによっても強力な接着力を得るとができ、また、剥離時には剥離を容易に行うことができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限られるものではない。
(実施例1)
オイル(株式会社クラレ製LBR−305)80重量部にチタンブラック(三菱マテリアル電子化成株式会社製 13M−C)20重量部を添加し、ビーズミルを用いてチタンブラックをオイル中に十分に分散させた。
上記チタンブラックが分散した分散液を10重量部とり、この分散液と、スチレン・ブタジェン・スチレン共重合物(Kraton製D−1118)56重量部と、スチレン・ブタジェン・スチレン共重合物(JSR株式会社製TR2601)44重量部と、タッキファイアーとしてテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製 YSポリスターT−115)50重量部とをトルエンに溶解して、固形分45%の粘着組成物を得た。
厚さ38μmの離型処理を施したPETフィルム(株式会社フジコー製 PET−38−SBK1)の離型面にアプリケーターを用いて上記粘着組成物を塗布した後、乾燥させて厚さ120μmのレーザー接合用粘着テープ1を作製した。
分光光度計で測定したところ、このレーザー接合用粘着テープ1の波長400nmから750nmの可視光透過率は8%であり、波長750nmから2000nmの赤外光吸収率は50%であった。
このレーザー接合用粘着テープ1を0.5mm幅の額縁形状に打抜きし、ガラスパネル10に貼り付け、さらに筐体20にレーザー接合用粘着テープ1を貼り合わせてスマートフォンAの形状に組上げた。
ガラスパネル10の表面を、押さえ用ガラスで筐体20に向けて押さえ付けて30kgのクランプ力をかけながら、レーザー接合用粘着テープ1を狙ってレーザー光Lを照射した。
レーザー光Lは波長940nmの半導体レーザーである。レーザー光Lの出力は2Wで、走査速度は500mm/minである。
レーザー接合用粘着テープ1においてレーザー光Lを照射した部分はガラスパネル10と十分に密着しており、表面から見た場合にレーザー接合用粘着テープ1が黒い額縁に見え、十分な意匠性を有していた。
次に、レーザー光Lを照射した部分と同じ位置に再度20Wの出力でレーザー光Lを照射した。このときの走査速度は、1000mm/minであり、照射回数は10回である。
レーザー光Lの照射後、直ちに、ガラスパネル10に吸盤を貼り付けて筐体20からゆっくりと引き剥がしていくと、ガラスパネル10を筐体20から容易に剥がすことができた。
また、ガラスパネル10に接着したレーザー接合用粘着テープ1は、破断することなく容易に指で剥離することができた。
実施例1の接着強度について説明する。
接着強度試験について、図5〜図7に基づいて説明する。図5及び図6に示すような形状のガラスパネル10及び筐体20を用意する。筐体20の中央部には、貫通孔21が形成されている。図4に示す形状のレーザー接合用粘着テープ1を、図7に示すようにガラスパネル10と筐体20との間に配置して上記条件にてレーザー光Lを用いて接合する。その後、筐体20を固定した状態で、筐体20の貫通孔21に押し棒を挿入してガラスパネル10を筐体20から離脱させる方向(図7の下側)に押す。押し棒は直径12mmであり、先端面をガラスパネル10の中央部に当てた。押し棒は、ガラスパネル10を筐体20から離脱させる方向に、5mm/分の速度で移動させ、ガラスパネル10を筐体20から離脱させるのに要する力を測定した。これを接着強度とする。実施例1では、接着強度が175Nであり、十分な接着強度を持っていた。
また、暗室でスマートフォンAのバックライトを点灯させて各部を観察した結果、ガラスパネル10と筐体20との接合部や額縁部の横からの光の漏洩は目視で確認できなかった。
(実施例2)
実施例1と同様に粘着組成物を作成した。
ただし、オイル90重量部、チタンブラック10重量部とした。
実施例1と同様に実施例2の粘着組成物を離型フィルムに塗布し、乾燥させて70μmの粘着層を得た。
この粘着層を2枚重ね合わせて粘着層総厚みが140μmの粘着層とした。
分光光度計で測定し、400nmから750nmの可視光透過率は45%であった。
次に20μmの両面黒印刷PET基材フィルム(フタムラ化学株式会社製)の両面に70μmの粘着層をラミネートしてレーザー接合用両面粘着テープ1を作製した。
このとき、両面黒印刷PET基材フィルムの400nmから750nmの可視光透過率は3%であり、波長750nmから2000nmの赤外光吸収率は80%であった。
このレーザー接合用両面粘着テープ1を0.5mm幅の額縁形状に打抜き、額縁部が印刷されたガラスパネル10の額縁部に貼り付け、さらに筐体20にレーザー接合用両面粘着テープ1を貼り合わせてスマートフォンAの形状に組上げた。
実施例1と同様にクランプ力をかけながらレーザー光Lを照射した。レーザー光Lは波長940nmの半導体レーザーである。レーザー光Lの出力は4Wの出力で、走査速度は500mm/minである。
次に、レーザー光Lを照射した部分と同じ位置に再度20Wの出力でレーザー光Lを照射した。このときの走査速度は、1000mm/minであり、照射回数は10回である。
レーザー光Lの照射後、直ちに、ガラスパネル10に吸盤を貼り付けて筐体20からゆっくりと引き剥がしていくと、ガラスパネル10を筐体20から容易に剥がすことができた。
また、ガラスパネル10に接着したレーザー接合用粘着テープ1は、破断することなく容易に指で剥離することができた。
実施例1と同様に接着強度を測定したところ、160Nと十分な強度であった。
また、暗室でスマートフォンAのバックライトを点灯させたが、額縁部の横からの光の漏洩は目視で確認できなかった。
(比較例1).
実施例1と同様に粘着組成物を作成した。
ただし、オイル99.5重量部、チタンブラック0.5重量部とした。
分光光度計で測定したところ、この粘着テープの波長400nmから750nmの可視光透過率は25%であり、波長750nmから2000nmの赤外光吸収率は15%であった。
この粘着テープを0.5mm幅の額縁形状に打抜き、ガラスパネル10に貼り付け、さらに筐体20に粘着テープを貼り合わせてスマートフォンAの形状に組上げた。
実施例1と同様にクランプ力をかけながらレーザー光Lを照射した。レーザー光Lは波長940nmの半導体レーザーである。レーザー光Lの出力は4Wの出力で、走査速度は500mm/minである。
粘着テープの発熱量は少なく、十分軟化しておらず、ガラスパネル10の表面から観察すると、ガラスパネル10との接着にはムラがあり、接着しているところと接着していないところが存在し、意匠性は低いものであった。
次に、レーザー光を照射した部分と同じ位置に再度20Wの出力でレーザー光Lを照射した。このときの走査速度は、1000mm/minであり、照射回数は10回である。その後、直ちにガラスパネル10に吸盤を貼り付けてガラスパネル10を筐体20から剥がす方向に力を加えたが、剥がれなかった。これは、粘着層の発熱量が不足しており十分に軟化していないことが原因である。
実施例1と同様に接着強度を測定したところ、80Nと強度が不足していた。これも、粘着層の発熱量が不足して粘着層が十分に軟化せずに密着性が不足したことが原因である。
また、暗室でスマートフォンAのバックライトを点灯させた際、額縁部から光が漏洩した。
(比較例2)
実施例2と同様にして粘着テープを作製した。
ただし、基材のPETフィルムは透明なものとした。
この粘着テープを0.5mm幅の額縁形状に打抜き、額縁印刷したガラスパネル10の額縁部に貼り付け、さらに筐体20に粘着テープを貼り合わせてスマートフォンAの形状に組上げた。
実施例1と同様にクランプ力をかけながらレーザー光Lを照射した。レーザー光Lは波長940nmの半導体レーザーである。レーザー光Lの出力は4Wの出力で、走査速度は500mm/minである。
次に、レーザー光Lを照射した部分と同じ位置に再度20Wの出力でレーザー光Lを照射した。このときの走査速度は、1000mm/minであり、照射回数は10回である。その後、直ちにガラスパネル10に吸盤を貼り付けてガラスパネル10を筐体20から剥がそうとすると、ガラスパネル10を容易に剥がすことができた。
実施例1と同様に接着強度を測定したところ、160Nと十分な強度を有していた。
しかし、暗室でスマートフォンAのバックライトを点灯させたところ、額縁部から光が漏洩してスマートフォンAの性能としては不十分であった。