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JP5824922B2 - 光学ガラス - Google Patents

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本発明は光学ガラスに関するものである。より詳細には、CD、MD、DVD、その他各種光ディスクシステムの光ピックアップレンズ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、カメラ付き携帯電話機等の撮像用レンズ、光通信に使用される送受信用レンズ等に好適な光学ガラスに関する。
CD、MD、DVD、その他各種光ディスクシステムの光ピックアップレンズ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、カメラ付き携帯電話機等の撮像用レンズ、光通信に使用される送受信用レンズ等の用途では、屈折率(nd)が例えば1.48〜1.65の光学定数を有するガラスが使用されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
上記ガラスは、例えば以下のような方法により作製される。まず、溶融ガラスをノズルの先端から滴下して一旦液滴状ガラスを作製し、研削、研磨、洗浄してプリフォームガラスを作製する。または、溶融ガラスを急冷鋳造して一旦ガラスインゴットを作製し、研削、研磨、洗浄してプリフォームガラスを作製する。続いて、プリフォームガラスを加熱して軟化し、高精度な成形表面を有する金型によって加圧成形し、金型の表面形状をガラスに転写してレンズを作製する。このような成形方法は一般にモールドプレス成形法と呼ばれており、大量生産に適した方法として近年広く採用されている。
モールドプレス成形法では、白金やイリジウム等の非常に高価な材質からなる高精度な形状を有する金型が使用される。プレス成形温度が高い場合、金型の劣化が早くなるため、より低温でモールドプレス成形可能なガラス材質が求められている。
特開平7−149536号公報 特開平5−193979号公報 特開2002−201037号公報 特開2006−306635号公報 特開2008−169076号公報 特開2007−145615号公報 特開2009−107892号公報 特開平5−5341号公報 特開2008−254975号公報
特許文献1〜7には、屈折率が1.48〜1.65であり、かつ、520℃以下という低いガラス転移点を有するアルカリ硼珪酸ガラスが開示されている。しかしながら、これらのガラスはBを15%以上と多く含有しているため、切削、研磨、洗浄工程において、研磨洗浄水等の各種洗浄溶液中へガラス成分が溶出してガラス表面が変質しやすい。また、最終製品についても、高温多湿環境下に長時間晒されると、ガラス表面が変質してレンズとしての信頼性を損ないやすいという問題がある。
特許文献8および9には、屈折率が1.48〜1.65でB含有量が少ないガラスが開示されている。しかしながら、当該ガラスはガラス転移点または屈伏点が高すぎるため、プレス成形温度が高くなり、金型の寿命が短くなる傾向にある。
以上に鑑み、本発明は、所望の屈折率およびガラス転移点を達成しやすく、しかも高い耐候性を兼ね備えた光学ガラスを提供することを目的とする。
本発明は、ガラス組成として、質量%で、SiO 10〜48%、B 3〜15%(ただし、15%は含まない)、Al 2〜15%、LiO 0〜20%、NaO 0.1〜20%、KO 0〜15%、CaO 0.1〜25%、SrO 0〜25%、BaO 0.1〜25%(ただし、25%は含まない)、La 0〜4.5%、Nb 0〜4.9%、ZrO 0〜7%およびTiO 0〜5%を含有し、かつ、Pb成分、P成分およびF成分を実質的に含有しないことを特徴とする光学ガラスに関する。
上記組成を有するガラスであれば、後述するような所望の屈折率を達成しつつ、低ガラス転移点化を図ることが可能となる。これにより、プレス成形温度を低下させることができるため、モールドプレス成形時にガラス成分が揮発しにくく、金型精度の低下や、金型の劣化または汚染等の問題が生じにくい。さらに、耐候性が良好であるため、製造工程あるいは最終製品の使用中に物性の劣化や表面変質が生じにくい。よって、本発明の光学ガラスは、一般のデジタルカメラやビデオカメラの撮影用レンズや、各種光ディスクシステムの光ピックアップレンズ用の光学レンズとして好適である。
なお本発明において、「Pb成分、P成分およびF成分を実質的に含有しない」とは、これらの成分を意図的にガラス中に添加しないという意味であり、不可避的不純物まで完全に排除することを意味するものではない。より客観的には、不純物を含めたPb成分、P成分およびF成分の含有量が、各々0.01%未満であるということを意味する。
第二に、本発明の光学ガラスは、質量%で、LiO+NaO+KOを0.1〜20%含有することが好ましい。
第三に、本発明の光学ガラスは、質量%で、CaO+SrO+BaO+MgOを0.1〜45%含有することが好ましい。
第四に、本発明の光学ガラスは、質量%で、ZnOを0〜15%(ただし、15%は含まない)含有することが好ましい。
第五に、本発明の光学ガラスは、屈折率が1.48〜1.65であることが好ましい。
第六に、本発明の光学ガラスは、ガラス転移点が490℃以下であり、かつ、屈伏点が520℃以下であることが好ましい。
第七に、本発明の光学ガラスは、モールドプレス成形用途であることが好ましい。
以下に、本発明において、各成分の含有量を上記のように規制した理由を説明する。なお、特に断りがない限り、以下の説明において「%」は「質量%」を意味する。
SiOはガラス骨格を形成する成分である。SiOの含有量は10〜48%、12〜45%、特に18〜42%であることが好ましい。SiOの含有量が少なすぎると、ガラス化が不安定になる。また、耐候性(高温多湿環境下での耐久性)が低下する傾向がある。一方、SiOの含有量が多すぎると、ガラス転移点が高くなり、プレス成形温度が上昇して金型が劣化しやすくなる。
は低ガラス転移点化を達成するために有効な成分である。Bの含有量は3〜15%(ただし、15%は含まない)、4〜14%、7〜13%、特に8〜12%であることが好ましい。Bの含有量が少なすぎると、前記効果が得られにくくなる。一方、Bの含有量が多すぎると、耐水性が低下したり、耐候性が著しく低下する傾向がある。また、モールドプレス成形時のガラス成分の揮発も多くなり、金型が劣化しやすくなる。
Alは耐水性や耐候性を向上させる成分である。Alの含有量は2〜15%、2.5〜14%、特に3〜12%であることが好ましい。Alの含有量が少なすぎると、前記効果が得られにくくなる。一方、Alの含有量が多すぎると、ガラス転移点が著しく上昇し、モールドプレス成形が困難になる傾向がある。
LiOはガラス転移点を効果的に低下させることができる成分である。ただし、その含有量が多すぎると、分相を顕著に引き起こす傾向がある。また、耐候性が低下しやすくなる。したがって、LiOの含有量は0〜20%、1〜18%、3〜15%、特に5〜13%であることが好ましい。
NaOもガラス転移点を低下させることができる成分である。NaOの含有量は0.1〜20%、0.5〜12%、特に1〜10%であることが好ましい。NaOの含有量が少なすぎると、前記効果が得られにくくなる。一方、NaOの含有量が多すぎると、耐候性が低下したり、モールドプレス成形時にガラス成分が揮発して金型を汚染するおそれがある。
OもNaOやLiOと同様に、ガラス転移点を低下させるために有効である。また、KOはNaOやLiOと比較して、分相傾向が小さい。ただし、KOの含有量が多すぎると、耐候性が低下したり、モールドプレス成形時にガラス成分が揮発して金型を汚染するおそれがある。したがって、KOの含有量は0〜15%、0〜10%、0〜8%、特に0.1〜5%であることが好ましい。
なお、ガラス転移点を十分に低下させるためには、LiO+NaO+KOを0.1%以上、5%以上、10%以上、特に12%以上含有することが好ましい。ただし、LiO+NaO+KOが多すぎると、モールドプレス成形時の揮発成分が多くなり、金型が劣化しやすくなる。また、溶融時の揮発も多くなり、溶融窯や溶融器具が劣化するおそれがある。したがって、LiO+NaO+KOは20%以下、18%以下、特に16%以下であることが好ましい。
CaOはガラス転移点を低下させる効果を有する成分である。また、イオン半径の大きなBa成分と共存させておくと、耐候性が向上する効果も得られる。CaOの含有量は0.1〜25%、含有量は1〜20%、特に2〜18%であることが好ましい。CaOの含有量が少なすぎると、前記効果が得られにくくなる。一方、CaOの含有量が多すぎると、ガラス化が不安定になる傾向がある。
SrOもガラス転移点を低下させるために有効である。また、耐候性を向上させる効果がある。しかし、その含有量が多すぎると、ガラス化が不安定になる傾向がある。したがって、SrOの含有量は0〜25%、0.1〜20%、特に1〜18%であることが好ましい。
BaOもガラス転移点を低下させるために有効である。また、耐候性を向上させる効果があり、特にCaと共存させるとその効果が大きくなる。BaOの含有量は0.1〜25%(ただし、25%は含まない)、1〜24%、特に2〜23%であることが好ましい。BaOの含有量が少なすぎると、前記効果が得られにくくなる。一方、BaO含有量が多すぎると、ガラス化が不安定になる傾向がある。
なお、CaO、SrOおよびBaO以外のアルカリ土類金属酸化物として、屈折率を高めるためにMgOを含有しても構わない。MgOの含有量は0〜5%、0〜3%、特に0〜1%であることが好ましい。
ガラス転移点の低下および耐候性の向上の効果を十分に得るためには、アルカリ土類金属酸化物の合量CaO+SrO+BaO+MgOが0.1%以上、10%以上、25%以上、特に30%以上であることが好ましい。ただし、CaO+SrO+BaO+MgOの含有量が多すぎると、ガラス化が不安定になり、耐候性が低下しやすくなるため、45%以下、44%以下、特に43%以下であることが好ましい。
Laは屈折率の調整のために含有することができる。また、ガラス転移点を低下させる効果もある。なお、Laはレアアース酸化物の一つであり稀少かつ高価な原料であるため、コスト削減の観点からその含有量は少ないほうが好ましい。以上に鑑み、Laの含有量は0〜4.5%、0〜3%、特に0〜1%であることが好ましく、含有しないことが最も好ましい。
NbもLaと同様に、光学定数の調整に使用することができる。なお、Nbは稀少かつ高価な原料であるため、コスト削減の観点からその含有量は少ないほうが好ましい。以上に鑑み、Nbの含有量は0〜4.9%、0〜3%、特に0〜1%であることが好ましく、含有しないことが最も好ましい。
ZrOは耐候性を高める効果がある。また、屈折率を調整するためにも含有することができる。ただし、その含有量が多すぎると、屈折率やガラス転移点が高くなりすぎる傾向がある。したがって、ZrOの含有量は0〜7%、特に0〜6%であることが好ましい。
TiOもZrOと同様に、耐候性を高める効果がある。しかし、少量の含有でガラス転移点が顕著に高くなり、モールドプレス成形が困難になる傾向がある。また、顕著に着色する傾向がある。したがって、TiOの含有量は0〜5%、0〜3%、特に0〜0.1%未満であることが好ましく、含有しないことが最も好ましい。
Pb成分(例えばPbO)およびF成分(例えばF)は環境上好ましくない成分であり、また、P成分(例えばP)は化学的耐久性を顕著に低下させる成分である。したがって、本発明の光学ガラスはこれらの成分を実質的に含有しない。
本発明においては上記成分以外にも種々の成分を含有することができる。例えばZnO、Gd、Y、Yb、TaおよびGeO等を含有することができる。
ZnOは屈折率を高める成分であり、光学定数の調整として使用することができる。ただし、その含有量が多すぎると、耐候性が低下する傾向がある。したがって、ZnOの含有量は0〜15%(ただし、15%は含まない)、特に0.1〜10%であることが好ましい。
Gd、Y、YbおよびTaは屈折率を高める成分であり、光学定数の調整のために含有することができる。ただし、各成分の含有量が多すぎると、屈折率が高くなりすぎる傾向がある。各成分の含有量は各々1%未満であることが好ましい。
GeOはガラスの安定性を向上させたり、屈折率を高める目的で含有することができる。しかし、GeOは稀少かつ高価な原料であるため、その含有量が多すぎると、原料コストの高騰に繋がる。したがって、GeOを使用するとしても、その含有量は少ない方が好ましく、具体的には0〜3%、0〜1%、特に0〜0.001%であることが好ましい。
なお、Bi、TeOおよびClはモールドプレス成形時にガラスから揮発しやすく、金型の劣化を著しく促進するため、実質的に含有しない(具体的には各々0.01%未満)ことが好ましい。
本発明の光学ガラスは上記ガラス組成を有することにより、1.48〜1.65、特に1.50〜1.62の屈折率(nd)、および、45〜70、特に49〜65のアッベ数(νd)を容易に達成することができる。
本発明の光学ガラスのガラス転移点は490℃以下、480℃以下、470℃以下、特に450℃以下であることが好ましい。また、本発明の光学ガラスの屈伏点は520℃以下、510℃以下、特に490℃以下であることが好ましい。ガラス転移点または屈伏点が高すぎると、プレス成形温度が高くなって金型が劣化しやすくなる。
次に、本発明の光学ガラスを用いて光ピックアップレンズや撮影用レンズ等を製造する方法を述べる。
まず、所望の組成になるようにガラス原料を調合した後、ガラス溶融炉で溶融する。
次に、溶融ガラスをノズルの先端から滴下して一旦液滴状ガラスを作製し、プリフォームガラスを得る。または、溶融ガラスを急冷鋳造して一旦ガラスブロックを作製し、研削、研磨、洗浄してプリフォームガラスを得る。
続いて、精密加工を施した金型中にプリフォームガラスを投入して軟化状態となるまで加熱しながら加圧成形し、金型の表面形状をガラスに転写させる(モールドプレス成形)。このようにして光ピックアップレンズや撮影用レンズを得ることができる。
以下、本発明の光学ガラスを実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1〜3は本発明の実施例(試料No.1〜10)および比較例(試料No.11〜15)を示す。
各ガラス試料は、以下のようにして作製した。
まず、表1〜3に記載の各組成となるように調合したガラス原料を白金ルツボに投入し、1250〜1300℃で2時間溶融した。次に、溶融ガラスをカーボン板上に流し出し、冷却固化した後、アニールを行ってガラス試料を作製した。このようにして得られたガラス試料について、各種特性を評価した。結果を表1〜3に示す。
表から明らかなように、実施例であるNo.1〜10の試料は、1.587〜1.650という、光ピックアップレンズ、撮像用レンズ、光通信に使用できる送受信用レンズ等に好適な屈折率を有していた。また、ガラス転移点も490℃以下であり、モールドプレス成形時の金型の劣化や汚染を抑制することができる。さらに、耐候性にも優れているため、製造工程や製品の使用中における表面変質を抑制することができる。
これに対し、No.11および15の試料はガラス転移点が550℃と高いものであった。また、No.12〜14の試料は耐候性に劣っていた。
屈折率(nd)は、屈折率計(カルニュー製 KPR−2000)を用いて水素ランプのd線(波長587.6nm)において測定した値である。
アッベ数(νd)は、上記したd線の屈折率と水素ランプのF線(486.1nm)、同じく水素ランプのC線(656.3nm)の屈折率の値を用い、アッベ数(νd)=[(nd−1)/(nF−nC)]式から算出した。
ガラス転移点(Tg)は熱膨張測定装置(dilato meter)を用いて得られた熱膨張曲線において、低温度域の直線と高温度域の直線の交点より求めた。また、屈伏点(At)は上記熱膨張曲線において、ガラスが屈伏したと認められる点より求めた。
耐候性は、ガラス試料を温度121℃および湿度95%の環境下に24時間保持し、その後ガラス表面を顕微鏡(×500)で観察を行い、ガラス表面における析出ブツの有無により判定を行った。ガラス表面を占める析出ブツの面積が1%未満である場合を「◎」、1〜5%未満である場合を「○」、5〜30%未満である場合を「△」、30%以上である場合を「×」として判定を行った。
本発明の光学ガラスは、CD、MD、DVDその他各種光ディスクシステムの光ピックアップレンズ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、カメラ付き携帯電話機等の撮像用レンズ、光通信に使用される送受信用レンズ等といった光学レンズの硝材として好適である。特にモールドプレス成形を利用して作製される光学レンズの硝材として好適である。また、モールドプレス成形以外の方法で成形される硝材として使用することも可能である。

Claims (6)

  1. ガラス組成として、質量%で、SiO 10〜48%、B 5〜15%(ただし、15%は含まない)、Al 2〜15%、LiO 1〜20%、NaO 0.1〜20%、KO 0〜15%、CaO 0.1〜25%、SrO 0.1〜25%、BaO 0.1〜25%(ただし、25%は含まない)、MgO 0〜5%、CaO+SrO+BaO+MgO 30〜45%、La 0〜4.5%、Nb 0〜4.9%、ZrO 0〜7%およびTiO 0〜5%を含有し、かつ、Pb成分、P成分およびF成分を実質的に含有しないことを特徴とする光学ガラス。
  2. 質量%で、LiO+NaO+KOを〜20%含有することを特徴とする請求項1に記載の光学ガラス。
  3. 質量%で、ZnOを0〜15%(ただし、15%は含まない)含有することを特徴とする請求項1または2に記載の光学ガラス。
  4. 屈折率が1.48〜1.65であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学ガラス。
  5. ガラス転移点が490℃以下であり、かつ、屈伏点が520℃以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光学ガラス。
  6. モールドプレス成形用途であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光学ガラス。
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