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JP5810798B2 - 水圧転写フィルム及びそれを用いた加飾成形品の製造方法 - Google Patents

水圧転写フィルム及びそれを用いた加飾成形品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、凹凸による立体面や曲面を有する成型体の表面に転写層を形成するのに好適な水圧転写フィルム、及びこれを用いた加飾成形品の製造方法に関する。
自動車内装品、家電製品又はOA機器等には表面に木目調や金属調(金属光沢)などの装飾が施された成型品が利用されている。これらの成型品は複雑な三次元形状を有するものが多く、従来その複雑な形状からなる成型品に意匠性の高い装飾を簡便に施す方法が検討されている。
こうした装飾方法として、水圧を利用した水圧転写法が知られている。水圧転写法は、水溶性あるいは水膨潤性の水溶性フィルムに、所望の装飾層を印刷した転写フィルムを用意し、該転写フィルムの装飾層に、有機溶剤からなる活性剤組成物を塗布して、該装飾層を膨潤、粘着化させる(これを活性化という)。その前又は後に、前記転写フィルムを転写用の装飾層(印刷層)面を上面にして、水面上に浮遊させ、次いで、該転写フィルム上に被転写体となる物品を押圧して、水圧によって転写フィルムを被転写体の装飾処理をすべき被転写面に密着させた後、水溶性フィルムを除去して装飾層を転写する(例えば、特許文献1参照)。
水圧転写法は、クリア塗装感等の「深み」や、立体面への適応性及び高品質な柄表現ができる等の点で優れた曲面加飾法であるが、さらに「照り」等の光輝性を加えて、より優れた高級感を付与しようとする試みがなされている。例えば、特許文献2においては、パール感を呈する印刷模様層を形成するため、被転写体である合成樹脂成形体に予めガラス繊維を添加し、その合成樹脂成形体の表面に水圧転写法により印刷模様層を転写することが提案されている。しかし、この方法では、合成樹脂成形体の材質が制限され、合成樹脂成形体作製が煩雑であった。
上記の問題を解決するため、特許文献3は水圧転写シートにおける改良を試み、水溶性フィルム上の硝化綿・アルキッド系の透明樹脂層と、該透明樹脂層上の蒸着金属層とからなり、該蒸着金属層と前記透明樹脂層との間で該透明樹脂層にエンボスが施されている水圧転写シートが提案されている。
しかしながら、蒸着金属層は高い光輝性を有する金属調の意匠性が得られるという優れた性質を有するが、水圧転写シートの透明樹脂層を膨潤させる際に、透明樹脂層と同じように延びないため、不均一な割れ(クラック)が生じ、かえって美感を損ねるという問題があった。また、蒸着金属層を設けることで高い金属調の意匠性は得られるものの、その金属調を調整して落ち着いた金属調、すなわち適度なグロス感のある意匠性を表現することは困難であり、多様化する消費者の嗜好に十分応えられないという問題もあった。
特開昭54−33115号公報 特開平4−107182号公報 特開2001−328398号公報
本発明は、このような状況下で、金属薄膜層を有し、被転写体に適度なグロス感を付与し、かつ良好なブロッキング性を有する水圧転写フィルム、及び該フィルムを用いた加飾成形品を生産性よく提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記の知見を得た。
水溶性フィルムと、該水溶性フィルム上の転写調整層と、該転写調整層上の金属薄膜層とを有し、かつ該転写調整層が、当該層を構成する樹脂、好ましくはポリビニルピロリドン樹脂に対して微粒子を特定の割合で含む水圧転写フィルムにより、前記課題を解決し得ること、そして、上記水圧転写フィルムがブロッキングを発生しにくい、すなわちブロッキング性が良好であることから、該水圧転写フィルムを用いて、特定の工程を経ることにより、生産性よく、落ち着いた金属調、すなわち適度なグロス感を有する加飾成形品が得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
[1]水溶性フィルムと、該水溶性フィルム上の転写調整層と、該転写調整層上の金属薄膜層とを有する水圧転写フィルムであって、該転写調整層が微粒子を、該転写調整層を構成する樹脂に対して0%より多く、2.0質量%未満の割合で含むことを特徴とする水圧転写フィルム、ならびに
[2]上記[1]に記載の水圧転写フィルムを用いた加飾成形品の製造方法であって、
工程(a):前記水圧転写フィルムにおける水溶性フィルム側が、下向きで水面側に向くように水面に浮遊させる前又は後に、金属薄膜層に活性剤組成物を塗布する活性剤組成物塗布工程、
工程(b):上記工程(a)を経た水圧転写フィルムに被転写体を押圧し、水圧によって上記金属薄膜層を被転写体の被転写面に密着させる工程、及び
工程(c):該被転写体の被転写面に密着した水溶性フィルム及び転写調整層を除去する脱膜工程、
を順次有することを特徴とする加飾成形品の製造方法、
を提供するものである。
本発明によれば、金属薄膜層を有し、被転写体に適度なグロス感を付与し、かつ良好なブロッキング性を有する水圧転写フィルム、及び該フィルムを用いた加飾成形品を生産性よく提供することができる。
本発明の水圧転写フィルムの構成の一例を示す概略断面図である。
以下、本発明を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の水圧転写フィルムの構成の一例を示す概略断面図である。
本発明の水圧転写フィルム1は、水溶性フィルム2と、水溶性フィルム2上の転写調整層3と、転写調整層3上の金属薄膜層4とを有する水圧転写フィルムであって、該転写調整層を構成する樹脂に対して、微粒子を0%より多く、2.0質量%未満の割合で含むことを特徴とする。
[水溶性フィルム]
本発明に係る水溶性フィルムとしては、水溶性又は水膨潤性を有するものであれば良く、従来水圧転写フィルムとして一般に使用されている水溶性フィルムの中から、適宜選択して用いることができる。
水溶性フィルムを構成する樹脂としては、例えばポリビニルアルコール系樹脂、デキストリン、ゼラチン、にかわ、カゼイン、セラック、アラビアゴム、澱粉、蛋白質、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルメチルエーテル、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、酢酸ビニルとイタコン酸との共重合体、ポリビニルピロリドン、アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等の各種水溶性ポリマーが挙げられる。
これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、水溶性フィルムには、マンナン、キサンタンガム、グアーガム等のゴム成分が添加されていてもよい。
上記の水溶性フィルムのうち、特に生産安定性と水に対する溶解性及び経済性の点から、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルムが好ましい。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、PVA以外に、澱粉やゴム等の添加剤を含有していてもよい。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、ポリビニルアルコールの重合度、ケン化度、及び澱粉やゴム等の添加剤の配合量等を変えることにより、水溶性フィルムに対して転写用の印刷層を形成する際に必要な機械的強度、取り扱い中の耐湿性、水面に浮かべてからの吸水による柔軟化の速度、水中での延展又は拡散に要する時間、転写工程での変形のし易さ等を適宜調節することができる。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる水溶性フィルムとして好適なものは、特開昭54−92406号公報に説明されているようなものであり、例えば、PVA樹脂80質量%、高分子水溶性樹脂15質量%、澱粉5質量%の混合組成からなり、平衡水分3質量%程度のものが好適である。
また、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは水溶性ではあるが、水に溶解する前段階では水に膨潤して軟化しつつもフィルムとして存続することが好ましい。フィルムとして存続している状態にあるときに水圧転写を行なうことにより、水圧転写時の転写用の印刷層の過度の流動、変形を防止することができるからである。
水溶性フィルム2の厚さとしては、10〜100μmが好ましい。10μm以上であると、膜の均一性が良好で、かつ生産安定性が高い。一方、100μm以下であると、水に対する溶解性が適度であり、かつ印刷適性に優れる。以上の観点から、水溶性フィルムの厚さは、20〜60μmの範囲がより好ましい。
なお、上記の水溶性フィルムは、例えば紙、不織布、布等の水浸透性を有する基材と積層して使用することもできるが、このような水浸透性を有する基材と水溶性又は水膨潤性を有する水溶性フィルムとを積層したときには、水圧転写フィルムを水面に浮かべる前に前記水浸透性を有する基材を水溶性又は水膨潤性を有する水溶性フィルムから分離させるか、又は水面に浮かべた後の水の作用によって水溶性又は水膨潤性を有する水溶性フィルムから前記水浸透性を有する基材が分離するように構成しておくことが好ましい。
[転写調整層]
本発明に係る転写調整層3は、水圧転写時に適度な速度で、かつ適度な範囲に膨潤し、金属薄膜層4に不均一な割れ(クラック)を生じさせることなく、均一で微細な割れ(クラック)を生じさせるために設けられる必須の層である。該転写調整層3を構成する樹脂としては、上記したような転写調整層の機能を発揮しうるような樹脂であれば特に制限なく採用することができ、なかでもポリビニルピロリドン樹脂であることが好ましい。転写調整層3を構成する樹脂は、ポリビニルピロリドン樹脂単独からなるものであってもよいし、ポリビニルピロリドン樹脂を含む樹脂混合物であってもよく、該樹脂混合物においては、ポリビニルピロリドン樹脂を用いる効果、すなわち上記の転写調整層の機能を発揮しうる量が含まれていることが好ましく、主成分として含有していることが好ましい。
ポリビニルピロリドン樹脂は、N−ビニル−2−ピロリドンの重合した高分子化合物であり、水に溶解し、良好な水膨潤性を有する。このポリビニルピロリドン樹脂を用いることにより、水圧転写時に転写調整層3が適度な速度で、かつ適度な範囲に膨潤するので、金属薄膜層4は不均一に割れ(クラック)が生じにくく、均一な微細な割れ(クラック)を生じることとなり、転写性が良好となり、また後述する微粒子を添加することで転写性に加えて、適度なグロス感も得られる。
また、ポリビニルピロリドン樹脂は、水膨潤速度が早過ぎないので、水圧転写フィルムを水面上に浮遊させた後、後述する活性剤塗布工程(a)の適度な時間を確保して被転写体に転写することができる。
(微粒子)
本発明の水圧転写フィルムにおいては、当該水圧転写フィルムを用いて形成される加飾成形品に適度なグロス感を付与し、かつブロッキング性を抑制するために、転写調整層には、それを構成する樹脂に対して、微粒子を0%より多く、2.0質量%未満の割合で含有させることを要する。
該微粒子の含有量が0%、すなわち微粒子が含まれない場合は、ブロッキングの抑制効果が発揮されず、加飾成形品の生産性が低下し、また高金属調に過ぎるため、適度なグロス感が得られない。一方、2.0質量%以上の場合は、グロス感が低下して艶消し感が強くなってしまい、意匠性が低下する。このような観点からは、微粒子の好ましい含有量は0.15〜1.5質量%である。
微粒子の平均粒径は、適度なグロス感の付与効果及びブロッキングの抑制効果の観点から、1〜10μm程度のものが好ましく、1〜5μmのものがより好ましい。平均粒径が上記範囲内であれば、適度なグロス感の付与効果及びブロッキング抑制効果が充分に発揮される。ここで、当該転写調整層に含有させる微粒子の平均粒径は、SEM(走査型電子顕微鏡)による観察で測定した値である。
所望のグロス感に応じて、微粒子の含有量及び平均粒径を適宜選択するのがよい。
この微粒子の材質としては、適度なグロス感の付与効果及びブロッキング抑制効果を有するものであればよく、特に制限されず、各種の無機微粒子や有機微粒子を用いることができる。
無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子(湿式法、乾式法による粒子)、チタニア微粒子、ジルコニア微粒子などが挙げられ、有機微粒子としては、例えばシリコーン系微粒子、メラミン樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子(例えば、ポリメチルメタクリレート微粒子など)、ポリカーボネート微粒子、ベンゾグアナミン樹脂微粒子などが挙げられる。
これらの無機微粒子や有機微粒子は一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、効果及び経済性などの観点から、シリカ微粒子が好適である。
これらの微粒子を含む転写調整層3の厚さとしては0.5〜20μm程度であることが好ましく、より好ましくは1〜10μmである。転写調整層の厚さがこの範囲であれば、金属薄膜層4に微細な割れ(クラック)がさらに均一に生じ、活性剤塗布工程(a)のさらに好適な時間を確保して、より好適に被転写体に転写することができる。これらの観点から、特に1〜6μmが好ましい。
また、転写調整層3には、金属薄膜層側に、加飾成形品の意匠性をより高めるために、必要に応じてエンボス加工などの方法により凹凸模様を施すことができる。
[金属薄膜層]
金属薄膜層4は、本発明の水圧転写フィルムにおいて必須の層であり、上記の転写調整層3との組み合わせにより、被転写体にグロス感の意匠性を付与する層である。本発明においては、金属薄膜層4だけでは金属調にすぎるところ、上記の転写調整層3と組み合わせることにより、落ち着いた金属調である、適度なグロス感が得られる。
金属薄膜層4は、金属材料の蒸着により形成する蒸着金属薄膜や、金属粉末を含有するペースト組成物をコーティングして得られる薄膜などにより形成することが好ましい。より適度なグロス感を得るためには、蒸着金属薄膜を採用することが好ましい。
金属薄膜層4を形成する金属としては、例えば、アルミニウム、クロム、ニッケル、コバルト、銅、金、銀、スズ、亜鉛、黄銅、ステンレス等の金属、合金、金属酸化物等を使用することができる。金属酸化物としては酸化アルミニウム、二酸化ケイ素等が挙げられる。これらのうち、アルミニウムが割れ(クラック)を均一に生じさせる観点から好ましい。
金属薄膜層4の厚さは通常10〜80nmであることが好ましく、20〜60nmであることがさらに好ましい。金属薄膜層4の厚さが上記範囲内であると、割れ(クラック)幅として1〜120μmという微細な割れ(クラック)を均一に生じさせることができる。
[絵柄印刷層]
本発明の水圧転写フィルムにおいては、被転写体の意匠性を向上させる目的で、所望により、絵柄印刷層(図示しない)を転写調整層3と金属薄膜層4との間に設けることができる。
絵柄印刷層のバインダー樹脂は転写調整層3と同じ樹脂を用いることが好ましい。着色剤は、従来から通常使用されているものが用いられる。
[水圧転写フィルムの製造方法]
本発明の水圧転写フィルム1の製造方法としては、例えば水溶性フィルム2の上に好ましくはポリビニルピロリドン樹脂を含む転写調整層3を積層する工程(A)と、該転写調整層3表面に金属薄膜層4を形成する工程(B)とを有する方法が好ましく挙げられる。
工程(A)において、転写調整層3は、公知の塗布方法又は印刷方法、水溶性フィルムとの共押出法、あるいは樹脂フィルムを水溶性フィルム2にラミネートすることにより水溶性フィルム2の上に積層される。公知の塗布方法としては、グラビアコート、リバースコート等が挙げられ、公知の印刷方法としては、グラビア印刷等が挙げられる。
また、金属薄膜層4を設ける前に、加飾成形品の意匠性をより高めるために、必要に応じて転写調整層3に凹凸模様を施すことができる。凹凸模様は、エンボス加工などの従来より行われる方法により施せばよい。
工程(B)において、金属薄膜層4は、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の公知の金属蒸着方法により形成することが好ましい。
また、所望により、工程(A)と工程(B)との間に絵柄印刷層を設ける工程(C)を設けても良い。但し、工程(C)を設けた場合は、工程(C)の後、絵柄印刷層表面を熱プレス処理する、平滑ロールに通過させる等により、絵柄印刷層表面を平滑にする平滑化処理をすることが望ましい。
[加飾成形品の製造方法]
次に、本発明の加飾成形品の製造方法について説明する。
本発明の加飾成形品の製造方法は、下記工程(a)、工程(b)、工程(c)を順次有することを特徴とし、必要に応じ工程(d)をさらに有する製造方法である。
(工程(a))
工程(a)は、本発明の水圧転写フィルム1における水溶性フィルム2側が、水面側に向くように水面に浮遊させる前又は後に、金属薄膜層4に活性剤組成物を塗布する活性剤組成物塗布工程である。この工程において、金属薄膜層4に活性剤を塗布することにより、該金属薄膜層4の表面が荒れ、被転写体と密着しやすくなる。水圧転写フィルム1の水溶性フィルム2側が水面側に向くように水面上に浮遊させる。水圧転写フィルム1を水面に浮遊させるには、枚葉の印刷物を1枚ずつ浮遊させてもよく、また水を一方向に流し、その水面上に連続帯状の水圧転写フィルムを、連続的に供給して浮遊させてもよい。
(活性剤組成物)
活性剤組成物は、水圧転写フィルム1における転写用の金属薄膜層4を荒らすことができ、かつ後述する被転写体の表面を溶解させる機能を有する組成物であれば特に制限はなく、また、被転写体の被転写面に金属薄膜層4を転写させるまで蒸発しないような性状を有することが好ましい。このような活性剤組成物としては、例えばエステル類、アセチレングリコール類、エーテル類、及び樹脂を含む組成物が好ましく挙げられる。
エステル類としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチル、シュウ酸ジブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソオクチルなどが好ましく挙げられる。
アセチレングリコール類としては、メトキシブチルアセテート、エトキシブチルアセテート、エチルカルビトールアセテート、プロピルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートなどが好ましく挙げられる。
エーテル類としては、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、イソアミルセロソルブなどが好ましく挙げられる。
また、樹脂としては、アクリレート系単量体の単独又は共重合体などの熱可塑性樹脂や、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、フタル酸アルキッド樹脂、フタル酸ジアリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂などが好ましく挙げられ、なかでも熱硬化性樹脂が好ましい。
本発明で用いられる活性剤組成物の好ましい各組成の含有量は、エステル類は5〜40質量%、アセチレングリコール類は40〜80質量%、エーテル類は5〜30質量%、及び樹脂は1〜20質量%程度である。
活性剤組成物の塗布は、スプレーコート法などにより行えばよく、その塗布量は通常1〜50g/m2であり、好ましくは3〜30g/m2であり、さらに好ましくは10〜20g/m2である。
(工程(b))
工程(b)は、工程(a)を経た水圧転写フィルム1上に被転写体を押圧し、水圧によって該金属薄膜層4を被転写体の被転写面に密着させる工程である。
水圧転写フィルム1を浮かべ水圧を印加するための水は、該水圧転写フィルム1の水溶性フィルム2の種類などに応じ、適宣水温を調整するのがよく、好ましくは25〜50℃程度、より好ましくは25〜35℃である。
また、本発明の水圧転写フィルム1と被転写体との転写時間は、20〜120秒程度が好ましく、より好ましくは30〜60秒程度である。クラック幅を広くするには、塗布量を多めにすればよく、水温は高めにすればよく、また転写時間は長めとすればよい。ここで、転写時間とは、本発明の転写フィルム1を水に浮遊させてから、被転写体への転写が完了するまでの時間のことである。
(被転写体)
本発明で用いられる被転写体としては、例えば、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、繊維系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂、あるいはこれらを混合した樹脂のほか、鉄、アルミニウム、銅などの金属、陶磁器、ガラス、琺瑯などのセラミックス、木材などの材料からなる構造体を使用することができる。
また、被転写面の形状は、平面形状である二次元形状であってもよいし、凹凸形状や曲面形状などの三次元形状であってもよい。これらの中で、通常、樹脂製構造体が多用される。この樹脂製構造体は、成型時において離型剤が付着するとともに、ゴミや脂分なども付着することがあり、水圧転写フィルムの印刷層を密着性よく転写させるために、予め脱脂液により被転写面を清浄化しておくことが好ましい。
工程(b)において、金属薄膜層4上に塗布した活性剤組成物は被転写体と接し、該被転写体の表面を溶解させることで、本発明の転写フィルム1と被転写体との密着性は良好なものとなる。
(脱膜工程(c))
脱膜工程(c)は、被転写体の被転写面に密着した水溶性フィルム2及び転写調整層3を除去する工程である。
水溶性フィルム2及び転写調整層3の除去は、例えば、水を用いてシャワー洗浄することで行うことができる。この工程(c)により、被転写面に付着している水溶性フィルム2及び転写調整層3は除去される。なお、シャワー洗浄の条件は、水溶性フィルム2や転写調整層3を形成する材料などにより異なるが、通常は水温15〜60℃程度、洗浄時間10秒〜5分程度が好ましい。そして、工程(c)の後、被転写体を十分乾燥し水分を蒸発させれば、被転写体の被転写面に転写された金属薄膜層4によって、所望の意匠が付与された加飾成形品が得られる。
(工程(d))
工程(d)は、転写された金属薄膜層4上に、所望により保護膜を形成する工程である。
工程(d)においては、前記工程(c)にて被転写体の被転写面に転写された金属薄膜層4に対し、表面強度向上、表面保護、表面艶調整などのために必要に応じ塗装を施し、保護膜を形成することができる。保護膜としては、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂など、具体的にはウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂などを含む樹脂組成物により形成されるものが好ましく挙げられる。
保護膜は、これらの樹脂組成物を塗装し、硬化させて形成することができる。塗装方法としては、スプレー塗装、静電塗装、刷毛塗り、浸漬塗装など公知の方法を用いることができる。また、硬化させる方法としては、使用する樹脂組成物により適宜選定すればよく、熱可塑性樹脂を用いる場合は数日間養生すればよい。一方、熱硬化性樹脂を用いる場合は熱処理を行えばよく、紫外線硬化性樹脂を用いる場合は適切な紫外線を照射して行えばよい。
このようにして得られた加飾成形品は、その表面、すなわち金属薄膜層上にクラック(割れ)幅として1〜120μmという微細なクラック(割れ)を有するため、転写性が良好となる。
転写の際にクラック(割れ)幅として1〜120μmという微細なクラック(割れ)を均一に生じさせ、かつクラック(割れ)幅を調整するには、転写調整層3を形成する樹脂の選定及びその厚さ、金属薄膜層4の厚さの選定などにより行うことができる。例えば、クラック幅を広めにしたい場合は、金属薄膜層4の厚さをより厚くすればよく、また転写調整層3の厚さを厚くすればよい。
また、クラック幅は、水圧転写方法の諸条件、例えば活性剤組成物の塗布量、水圧転写フィルム1を浮遊させる水の温度、該フィルム1と被転写体との転写時間などによっても調整することができる。例えば、活性剤組成物の塗布量を多くするとクラック幅は広くなる傾向にあり、水の温度を高くするとクラック幅は広くなる傾向にあり、また転写時間を長くするとクラック幅は広くなる傾向にある。
本発明の加飾成形品は、本発明の水圧転写フィルムを用いて得られるため、適度なグロス感を有するものとなり、また、良好なブロッキング性を有する水圧転写フィルムを用いるため、生産性よく製造することができる。さらに、水圧転写フィルムの転写調整層を好ましい態様、すなわち該転写調整層を構成する樹脂としてポリビニルピロリドン樹脂を採用することにより、水圧転写時に金属薄膜層に不均一な割れ(クラック)が生じにくく、転写性が良好となるため、本発明の加飾成形品は、より優れた意匠性を有するものとなる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で得られた水圧転写フィルムを使用した加飾成形品について以下に示す性能評価を行った。
(1)60°鏡面光沢度(グロス感の評価)
加飾成形品について、グロスメーター(BYKガードナー社製,機種名「マイクログロス」)を使用し、JIS K 5400に準拠して60°鏡面光沢度(60°グロス値)を測定し、下記の判定基準でグロス感を評価した。
○:60°グロス値が150以上180未満
△:60°グロス値が100以上150未満、又は180以上200未満
×:60°グロス値が200以上、又は100未満
(2)金属薄膜層の割れ(クラック)状態
加飾成形品の表面状態を顕微鏡により倍率100倍に拡大して観察し、下記の基準で評価した。
<評価基準>
◎:非常に均一な微細なクラックであった。
○:ほぼ均一な微細なクラックであった。
△:微細クラックであったが、大きさが不均一であった。
×:大きなクラックが発生した。
(3)転写性
上記脱膜工程(c)の後に得られた加飾成形品の表面状態を目視により観察し下記の基準で評価した。
○:均一に凹凸模様が転写されており、模様の歪みがない。
△:転写された凹凸模様の一部に模様歪みがあった。
×:転写された凹凸模様の大部分に模様歪みがあった。又は金属薄膜層が延びず、転写できなかった。
(4)加飾成形品のブロッキング性
水溶性フィルム上に転写調整層を設けて得られたフィルムを二枚重ねて、2日間(40℃,4kg/cm2荷重)放置した後、下記の基準で評価した。
◎:フィルムは容易に剥離できた
○:フィルムは剥離するものの、若干のタック感が感じられた
×:著しいタック感が感じられた
(5)転写調整層を形成する樹脂組成物の印刷適性
転写調整層を設ける際の、樹脂組成物を塗布した後の転写調整層の乾燥速度について、目視により下記の基準で評価した。
○:すぐに乾燥し、触ってもタック感は感じられなかった
△:乾燥に若干時間がかかったものの、乾燥後に触ってもタック感はほとんど感じられなかった
×:乾燥に著しい時間がかかり、タック感も残った
実施例1
水溶性フィルムとして、PVAフィルム(厚さ30μm)を用い、その片面に、ポリビニルピロリドン樹脂、及び平均粒径1μmのシリカ微粒子1.5質量%(樹脂に対する含有量として)を微粒子として含む樹脂組成物を塗布量3g/m2でグラビアコートし、厚さ2μmの転写調整層を設けると共に、該転写調整層の金属薄膜層が設けられる側にエンボス加工により凹凸模様を施した。次いで、真空蒸着方法にて、該転写調整層上に、アルミニウム金属からなる厚さ35nmの金属薄膜層を形成し、水圧転写フィルムを作製した。
次に、該水圧転写フィルムの金属薄膜層表面に、下記組成の活性剤組成物を3g/m2塗布し、スムージングロールで該活性剤組成物を均一にし、転写調整層及び金属薄膜層の活性剤塗布工程(a)を経た後、該水圧転写フィルムに被転写体を押圧し、水圧によって金属薄膜層を被転写体の被転写面に密着させる工程(b)、さらに脱膜工程(c)を経て、加飾成形品を作製して、性能評価を行った。
その結果を第1表に示す。
<活性剤組成物の組成>
フタル酸系アルキッド樹脂:6質量部
マイクロシリカ(顔料):2質量部
フタル酸ジブチル:17質量部
溶剤(ブチルカルビトールアセテート):60質量部
溶剤(ブチルセロゾルブ)15質量部
実施例2〜6及び比較例1〜2
実施例1において、微粒子として用いるシリカ微粒子の含有量又は平均粒径を第1表に示されるようにした以外は、実施例1と同様にして各水圧転写フィルムを作製し、さらに各加飾成形品を作製して、その性能評価を行った。その結果を第1表に示す。
Figure 0005810798
[注]転写調整層の金属薄膜層側にエンボス加工により凹凸模様が施されている。
第1表から分かるように、本発明の加飾成形品は、落ち着いた金属調、すなわち適度なグロス感を有するものとなったことから、本発明の水圧転写フィルムは、被転写体である加飾成形品に適度なグロス感を付与することが確認された。また、本発明の水圧転写フィルムはブロッキング性が良好であることから、樹脂成形品を生産性よく得られた。さらに、本発明の水圧転写フィルムは、金属薄膜層が水圧転写時に不均一な割れ(クラック)が生じにくく、転写性が良好であった。
一方、微粒子を全く含まない比較例1では、金属調が高すぎて適度なグロス感が得られず意匠性が優れているとはいえず、また転写調整層の形成の際の印刷適性が極めて悪かった。また、微粒子の含有量が多い比較例2では適度なグロス感が得られず意匠性が悪かった。
本発明の水圧転写フィルムは、金属薄膜層を有し、被転写体に適度なグロス調を付与することができる。また、本発明の水圧転写フィルムが良好なブロッキング性を有することから、この水圧転写フィルムを用いることにより、加飾成形品を生産性よく製造することができる。得られた加飾成形品は三次元形状を有する成形品、例えば自動車内装品、家電製品又はOA機器などに好適に用いることができる。
1 水圧転写フィルム
2 水溶性フィルム
3 転写調整層
4 金属薄膜層

Claims (6)

  1. 水溶性フィルムと、該水溶性フィルム上の転写調整層と、該転写調整層上の金属薄膜層とを有する水圧転写フィルムであって、該転写調整層が微粒子を、該転写調整層を構成する樹脂に対して0%より多く、2.0質量%未満の割合で含むことを特徴とする水圧転写フィルム。
  2. 転写調整層を構成する樹脂が、ポリビニルピロリドン樹脂である請求項1に記載の水圧転写フィルム。
  3. 微粒子が、シリカ微粒子である請求項1又は2に記載の水圧転写フィルム。
  4. 転写調整層の金属薄膜層側が凹凸模様を有する請求項1〜のいずれかに記載の水圧転写フィルム。
  5. 金属薄膜層を形成する金属が、アルミニウムである請求項1〜のいずれかに記載の水圧転写フィルム。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の水圧転写フィルムを用いた加飾成形品の製造方法であって、
    工程(a):前記水圧転写フィルムにおける水溶性フィルム側が、下向きで水面側に向くように水面に浮遊させる前又は後に、金属薄膜層に活性剤組成物を塗布する活性剤組成物塗布工程、
    工程(b):上記工程(a)を経た水圧転写フィルムに被転写体を押圧し、水圧によって上記金属薄膜層を被転写体の被転写面に密着させる工程、及び
    工程(c):該被転写体の被転写面に密着した水溶性フィルム及び転写調整層を除去する脱膜工程、
    を順次有することを特徴とする加飾成形品の製造方法。
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