JP4437245B2 - 水圧転写用フィルムおよび水圧転写体 - Google Patents
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Description
活性化とは、有機溶剤により皮膜化した転写層を再溶解することである。転写層が硬化性樹脂層と装飾層とが積層された複合層からなる場合、装飾柄を崩さずに柔軟化し、更に該積層構造も保持しなければならない。また、転写層が硬化性樹脂層からなる場合は、該硬化性樹脂層を保持しつつ柔軟化させなければならない。
このため、装飾層の高い意匠性や外観を乱すことなく複雑な三次元形状の成形品に水圧転写するには相当の熟練を要し、水圧転写法による成形品の製造は、製造工程が煩雑であることからコスト高であり、水圧転写法で製造される水圧転写品は高級品に限られていた。
しかしながら、特許文献1に記載の水圧転写用フィルムでは、その効果が膨張防止層で囲まれた領域内に限定されるため、製造品目の形状に応じて膨張防止層の設定を変える必要があり、製造工程の煩雑さや汎用性を本質的に解消するには至らなかった。
本発明の水圧転写用フィルムに用いる支持体フィルムは、水溶性もしくは水膨潤性の樹脂から成るフィルムである。
水溶性もしくは水膨潤性の樹脂から成る樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、アセチルセルロース、ポリアクリルアミド、アセチルブチルセルロース、ゼラチン、にかわ、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が使用できる。なかでも一般に水圧転写用フィルムとして用いられているPVAフィルムが水に溶解し易く、入手が容易で、硬化性樹脂層の印刷にも適しており、特に好ましい。これらの樹脂層は単層でも多層でも良く、層厚みは10〜200μm程度が好ましい。
次に、本発明の水圧転写用フィルムの支持体上に設けられる転写層について説明する。転写層は、硬化性樹脂層、あるいは、硬化性樹脂層と装飾層とが積層された複合層からなる。また、本発明の効果をより高めるために、無機微粒子又は有機微粒子を40質量%以上含有する樹脂層である膨潤抑制層を更に有していてもよい。
硬化性樹脂層は、活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも1種で硬化可能な硬化性樹脂と、無機微粒子又は有機微粒子(以下、「無機微粒子又は有機微粒子」を微粒子Aと略称する)を含有する。装飾層が積層されているときは、得られる水圧転写体の装飾層の意匠性が良く発現できることから、硬化性樹脂層は透明であることが好ましい。但し、水圧転写体の要求特性、及び、意匠性によるが、基本的に得られる水圧転写体の装飾層の色や柄が透けて見えれば良く、硬化性樹脂層は完全に透明であることを要せず、透明から半透明なものまでを含む。また、着色されていてもよい。
また、ポリマー微粒子としては、架橋アクリル系微粒子、架橋ポリスチレン系樹脂微粒子、架橋ウレタン微粒子、フェノール樹脂微粒子、シリコーン樹脂微粒子、ポリエチレン微粒子、フッ素微粒子、メラミン微粒子、ポリカーボネート微粒子およびフェノール微粒子などをあげることができる。
つまり、装飾層の図柄が拡大したり色ボケしたりする現象は、装飾層中の印刷インキ又は塗料の樹脂成分が有機溶剤に溶解されることにより、染料や顔料などの着色材粒子が互いに離間したり、混合していくことにより発生する。
微粒子Aを含有する硬化性樹脂層は、これらが樹脂の膨潤に対して抵抗となり、自らの抑制された膨潤状態により隣接する装飾層が過度に膨潤することを抑制する。したがって、微粒子Aは、活性化のための有機溶剤や、硬化性樹脂層に使用する樹脂等に溶解または膨潤しないものが好ましい。また、該微粒子Aは活性化状態の硬化性樹脂層にチキソトロピック性を付与するので、水圧転写用フィルムに被転写物を低速度で押し付けていく時、水圧転写用フィルムに掛かる剪断応力に対して抵抗が生じ、転写工程における転写層の意匠性の低下も抑制し、三次元曲面に対して追従し、密着しやすくなる。
硬化性樹脂層の成分である活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも1種で硬化可能な樹脂は、具体的には下記の(1)〜(6)が挙げられる。
(1)活性エネルギー線硬化性樹脂を含む硬化性樹脂層。
(2)活性エネルギー線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を含む硬化性樹脂層。
(3)熱硬化性樹脂を含む硬化性樹脂層。
(4)熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を含む硬化性樹脂層。
(5)活性エネルギー線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂を含む硬化性樹脂層。
(6)活性エネルギー線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂を含む硬化性樹脂層。
(1)活性エネルギー線硬化性樹脂を含む硬化性樹脂層
活性エネルギー線硬化性樹脂は、1分子中に活性エネルギー線によって硬化可能な重合性基や構造単位を有するオリゴマーとポリマーである。ここでいう活性エネルギー線とは紫外線と電子線であり、これらにより硬化するオリゴマーとポリマーはいずれも使用可能であるが、特に紫外線硬化性樹脂が好適である。
活性エネルギー線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を含む硬化性樹脂層は上述した活性エネルギー線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂を活性エネルギー線硬化性樹脂と併せて用いることは硬化性樹脂層の粘着性低減とガラス転移温度(Tg)の向上および硬化性樹脂層の凝集破壊強度の向上に極めて効果的である。但し、硬化性樹脂層に含ませる熱可塑性樹脂の量が多いと硬化性樹脂の硬化反応を阻害するので、硬化性樹脂層の全樹脂量100質量部に対して熱可塑性樹脂は70質量部を超えない範囲で添加することが好ましい。
熱硬化性樹脂は、熱または触媒の作用により重合する官能基を分子中に有する化合物であるか、または主剤となる熱硬化性化合物に硬化剤となる熱反応性化合物を配合したものである。熱または触媒の作用により重合する官能基としては、例えば、N−メチロール基、N−アルコキシメチル基、エポキシ基、メチロール基、酸無水物、炭素−炭素二重結合などが挙げられる。
ポリオールとしては、アクリルポリオール、ポリ−p−ヒドロキシスチレン、ポリエステルポリオール、ポリエチレンビニルアルコール共重合体などが挙げられるが、特にアクリルポリオールが好ましく、なかでも、質量平均分子量が3,000〜10万のアクリルポリオール、より好ましくは1万〜7万のアクリルポリオールが好適である。
熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を含む硬化性樹脂層としては、(3)に記載した熱硬化性樹脂と、(2)に記載した熱可塑性樹脂を含むものである。
用いる熱硬化性樹脂は(3)で記載した熱硬化性樹脂と同様であり、好ましい熱硬化性樹脂も(3)と同様にブロックイソシアネートとポリオールであり、特にポリオールはアクリルポリオールであり、なかでも質量平均分子量が3,000〜10万、より好ましくは1万〜7万のものである。
活性エネルギー線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂を含む硬化性樹脂層としては、それぞれ(1)に記載した活性エネルギー線硬化性樹脂と、(3)に記載した熱硬化性樹脂を用いることが出来る。例えば、1分子中に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートと、ブロックイソシアネートとポリオールとを含むものである。
活性エネルギー線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂を含む硬化性樹脂層は、(1)に記載した活性エネルギー線硬化性樹脂と、(3)に記載した熱硬化性樹脂、および(2)に記載した活性エネルギー線硬化性樹脂と併用する熱可塑性樹脂を含む硬化性樹脂層である。熱可塑性樹脂は、非重合性であることが好ましい。
本発明の活性化では、活性化剤が転写層に着地し、活性化剤は速やかに浸透し、硬化性樹脂層を溶解(活性化)することができる。また、熱可塑性樹脂を含ませることにより硬化性樹脂層は、活性化剤の浸透に対して、適度の抵抗と、硬化前においてもしっかりした自己保持力を有し、より穏やかに活性化されることが可能になり、急激な活性化による硬化性樹脂層の溶解ムラや装飾層の柄割れなどを抑制することができる。
一方、硬化性樹脂層の形成能、乾燥性、保存安定性をより良く確保するためには、硬化性樹脂層中に含まれる熱可塑性樹脂量が25質量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは30質量%以上である。
したがって、本発明の熱可塑性樹脂に対する活性エネルギー線と加熱の少なくとも一種で硬化可能な樹脂の質量比P:(ラジカル重合性化合物の質量総和)/(熱可塑性樹脂の質量総和)は、45/55以上75/25以下が好ましく、50/50以上70/30以下が更に好ましく、最も好適には60/40である。
使用する熱可塑性樹脂の分子量が上記範囲を上回ると、硬化性樹脂層の有機溶剤による活性化が困難になり易い。一方、分子量が上記範囲を下回ると、未硬化の硬化性樹脂層の流動性や粘着性を抑制しにくく、かつ硬化後の塗膜では高温において熱可塑樹脂が塗膜表面に移行して塗膜性能を低下させる。
また、塗膜形成時の乾燥性を高めるには、熱可塑性樹脂として質量平均分子量15万以上のポリアクリレート、あるいは質量平均分子量3万以上のポリエステルを用いることが好ましい。
一方、熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、25℃〜250℃、更には50℃〜150℃であることが好ましい。熱可塑性樹脂のTgが20℃未満であると、未硬化の硬化性樹脂層の粘着性を抑制しにくく、かつ硬化後の塗膜の耐熱性に悪影響を及ぼし、反対に250℃を超えて大きいと硬化性樹脂との混和が困難になる。
本発明の水圧転写用フィルムの装飾層形成に用いる印刷インキ又は塗料は、有機溶剤によって活性化されて被転写体に転写層を転写する際に十分な柔軟性が得られることが好ましく、特に高画質画像を得やすいという観点からグラビア印刷インキにより形成されることが好ましい。また絵柄のない着色層を塗布によって形成することもできる。
印刷インキ又は塗料中のシリコーン系化合物の含有量は、不揮発分中0.01質量%以上6.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.05質量%以上4.0質量%以下である。0.01質量%未満では剥離剤の効果が不十分であり、6.0質量%を超えると、後述する多層印刷性時にはじきなどが起こり、印刷性が低下しやすくなる、あるいは、本発明の水圧転写用フィルムを使用する際、装飾層と硬化性樹脂層との間で剥離を引き起こしやすくなる。
本発明の水圧転写用フィルムは、転写層に、微粒子Aを含有する樹脂層である膨潤抑制層を有すると、本発明の効果である膨潤抑制効果が高まりより好ましい。膨潤抑制層は、通常、硬化性樹脂層/膨潤抑制層の順か、あるいは硬化性樹脂層/装飾層/膨潤抑制層の順に積層される。
膨潤抑制層に使用する微粒子Aは、中でも無機質微粉末が好ましい。例えば、下地を活かす効果を狙う場合には、半透明になるようにシリカ、タルク、カオリンなどの無機体質顔料を添加したメジウムインキなどが好ましい。
また、酸化チタン系顔料はいわゆる白色の顔料であり、下地を隠蔽する効果も有しているうえ、白インキや白塗料がそのまま利用できる。従って、装飾層の下地となるように膨潤抑制層を設ける場合(硬化性樹脂層/装飾層/膨潤抑制層の順に積層されている場合)は特に好ましい。この場合には、酸化チタン系顔料の含有量が40〜80質量%を含有することが好ましい。
装飾層に対する十分な膨潤抑制効果を得るためには、該膨潤抑制層は装飾層との密着性を十分持つことが好ましい。このため、膨潤抑制層で使用する樹脂は、装飾層で使用している樹脂を用いることが好ましい。活性化の際、活性化剤による相分離などによる層間剥離の誘発を抑制するために、膨潤抑制層は装飾層で使用している樹脂を50質量%以上含有していることが好ましく、80質量%以上含有していることがより好ましい。90質量%以上含有していることが更に好ましい。
印刷インキ又は塗料中のシリコーン系化合物の含有量は、不揮発分中0.01質量%以上6.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.05質量%以上4.0質量%以下である。0.01質量%未満では剥離剤の効果が不十分であり、6.0質量%を超えると、後述する多層印刷性時にはじきなどが起こり、印刷性が低下しやすくなる、あるいは、本発明の水圧転写用フィルムを使用する際、装飾層と硬化性樹脂層との間で剥離を引き起こしやすくなる。
膨潤抑制層に用いる有機溶剤としては、上記装飾層の印刷インキ又は塗料に用いるものと同じものを使用することができる。
このような、硬化性樹脂層/膨潤抑制層a/装飾層/膨潤抑制層bの順に積層した転写層において、膨潤抑制層aは装飾層との密着性を十分持っていなければ、層間剥離が生じやすくなるので、装飾層で使用している樹脂を用いることが好ましい。活性化の際、活性化剤による相分離などによる層間剥離の誘発を抑制するために、装飾層で使用している樹脂を90質量%以上含有していることが好ましく、95質量%以上含有していることがより好ましい。更に好ましくは100質量%含有していること、すなわち、装飾層中の印刷インキ又は塗料から着色材成分のみを除いた樹脂組成物から構成されることが好ましい。
なお、膨潤抑制層aは、転写された後は装飾層の上層にあって装飾層と共に得られる水圧転写体の意匠性を発現する部分でもある。このため膨潤抑制層aは必ずしも透明であることを要せず、水圧転写体の要求特性によっては透明から半透明、更には着色されていても良い。
本発明の水圧転写用フィルムは、剥離性フィルム上に積層にして製造し、水圧転写に際して、該剥離フィルムから剥離して使用する態様を挙げることができる。
剥離フィルムを有する水圧転写用フィルムの製造方法の一例を下記に示す。
a)剥離性フィルム(A)/膨潤抑制層/装飾層
b)剥離性フィルム(A)/装飾層/膨潤抑制層
c)剥離性フィルム(A)/膨潤抑制層a/装飾層/膨潤抑制層b
のいずれかの構成になるように塗工または印刷した剥離性フィルム(A)と、硬化性樹脂層を積層した支持体フィルム(B)とを、ドライラミネーション(乾式積層法)により貼り合わせて製造することができる。その際には、フィルム繰り出し等の作業や取扱で装飾層が剥がれ落ちない剥離力で剥離性フィルム上に固着されている必要がある。
次に、本発明の水圧転写用フィルムの製造方法の一例を下記に示す。
本発明の水圧転写用フィルムの製造方法は、水溶性もしくは水膨潤性の樹脂から成る支持体上に活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種で硬化可能であり、有機溶剤で活性化な硬化性樹脂層を設けたフィルム(A)と、剥離性フィルム上に印刷インキ皮膜または塗料皮膜からなる有機溶剤に溶解可能な疎水性の装飾層と膨潤抑制層とを設けたフィルム(B)とを、フィルム(A)の硬化性樹脂層と、フィルム(B)の装飾層または膨潤抑制層とが相対するように重ねてドライラミネーション(乾式積層法)により貼り合わせることが好ましい。
1.)支持体上の硬化性樹脂層上への塗布または印刷する方法、
あるいは、
2.)支持体フィルム上に硬化性樹脂層が形成されたフィルム(A)と剥離性フィルム(2)上に装飾層および膨潤抑制層を有するフィルム(B)とのドライラミネートする方法
により水圧転写用フィルム中に積層することができる。
本発明の水圧転写体は、本発明の水圧転写用フィルムを、剥離性フィルムを剥離した後に、転写層を上にして、支持体を下にして水に浮かべ、有機溶剤により転写層を活性化し(活性化は水に浮かべる前に行っても良い)、転写層を被転写体に転写し、支持体を除去し、次いで転写層の硬化性樹脂層を活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種で硬化させることにより得られる。
次に、転写層に有機溶剤を塗布または噴霧することにより装飾層と硬化樹脂層からなる転写層を活性化させる。なお、転写層の有機溶剤による活性化は、フィルムを水に浮かべる前に行っても良い。
次に、転写層に被転写体を押し付けながら、被転写体と水圧転写用フィルムを水中に沈めて行き、水圧によって転写層を被転写体に密着させて転写する。
最後に、水から出した被転写体から支持体フィルムを除去し、被転写体に転写された転写層の硬化性樹脂層を活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種により硬化させて、硬化した樹脂層もしくは硬化した樹脂層と装飾層とを有する水圧転写体を得る。
本発明が適用できる水圧転写体の具体例としては、テレビ、ビデオ、エアコン、ラジオカセット、携帯電話、冷蔵庫等の家庭電化製品;パーソナルコンピューター、ファックスやプリンター等のOA機器;ファンヒーターやカメラなどの家庭製品のハウジング部分;テーブル、タンス、柱などの家具部材;バスタブ、システムキッチン、扉、窓枠などの建築部材;電卓、電子手帳などの雑貨;自動車内装パネル、自動車やオートバイの外板、ホイールキャップ、スキーキャリヤ、自動車用キャリアバッグなどの車内外装品;ゴルフクラブ、スキー板、スノーボード、ヘルメット、ゴーグルなどのスポーツ用品;広告用立体像、看板、モニュメントなどが挙げられ、曲面を有しかつ意匠性を必要とする成形品に特に有用に用いられ、極めて広い分野で使用可能である。
(水圧転写用フィルムの剥離力の測定方法)
JIS K6854に準じて、丸菱化学機械製作所製精密力量測定器、PP-650-Dデジタルゲージ、PGDIIを用いて、10mm/分の速度で、水圧転写用フィルム(200mm×25mm)からの剥離性フィルムの剥離力を測定した。
面積S0(例えば、15cm×15cm)の水圧転写用フィルムに実際に水圧転写をするのと同量の活性剤を塗布し、直ちに水槽(例えば、37cm×32cmの面積を有する)に張った水上(25℃)に浮かべ、1分後のフィルムの面積S1から算出される面積膨潤度(S1/S0×100)により評価した。
◎:面積膨潤度200%未満
○:面積膨潤度200%以上300%未満
△:面積膨潤度300%以上400%未満
×:面積膨潤度400%以上
10cm×10cm×2cm(高さ)のABS製の箱蓋に水圧転写した場合の柄再現性について、目視評価した。
◎:箱蓋の上面の柄伸びが120%未満、かつ、側面の柄伸びが140%未満
○:箱蓋の上面の柄伸びが120%未満、または、側面の柄伸びが140%未満
△:箱蓋の上面の柄伸びが120%以上140%未満、
かつ、側面の柄伸びが140%以上170%未満
×:箱蓋の上面の柄伸びが140%以上、かつ、側面の柄伸びが170%以上
ABS樹脂板(平板:100mm×100mm×3mm)に水圧転写したサンプルについて、碁盤目テープ法(JIS K5400) に準じてインキ密着性を10点満点で評価した。
JIS K5401「塗膜用鉛筆引き掻き試験機」に従って、水圧転写体の耐引掻き傷性を測定した。用いた芯の長さは3mm、塗膜面との角度45度、荷重1Kg、引き掻き速度0.5mm/分、引き掻き長さ3mm、使用鉛筆は三菱ユニとした。
水圧転写体の60度鏡面光沢度(JIS K5400)を測定した。なお一般に、光沢値が90±10%を全光沢、70±10%を七分光沢、50±10%を半光沢(半艶消し)、30±10%を三分艶消し、10±10%を全艶消しと称している。
プライマー処理済亜鉛メッキ鋼板(平板:100mm×100mm×0.5mm)に水圧転写した水圧転写体をラビング試験機(荷重500g)により、並綿帆布#10(20mm×20mm)による乾拭き1000往復(30往復/分)後、目視で観察し、ほとんど変化が見られなかったものを○、光沢の変化が見られなかったものを△、素地が露出したものを×とした。また、光沢計で60度鏡面光沢度も測定した。
水圧転写体を熱水(水温98℃)中で30分間加熱保持し、次いで碁盤目テープ法(JIS K5400) に準じて、転写層にカッターで1×1mmの碁盤目を100個作り、その部分に粘着テープを貼った後、この粘着テープを急速に剥離し、塗膜の剥離状態を目視により観察して、インキ密着性を10点満点で評価した。また、光沢計で60度鏡面光沢度も測定した。
硬化性樹脂として、ペンタエリスリトール2モル当量とヘキサメチレンジイソシアネート7モル当量とヒドロキシエチルメタクリレート6モル当量を60℃で反応して得られるウレタンアクリレート「UA−1」(1分子中の平均のアクリロイル基数6、質量平均分子量890)51部と、熱可塑性樹脂としてロームアンドハース社製のアクリル樹脂「パラロイドA−11」(Tg100℃、質量平均分子量125,000)34部と、重合開始剤としてチバ・スペシャリティケミカルス社製の光重合開始剤「イルガキュア184」3部を、酢酸エチルとメチルエチルケトンの混合溶媒(混合比1:1)に溶解した。次に、無機微粒子として、富士シリシア製のシリカ「サイリシア350D」2部と土屋カオリン工業製のカオリン「カタルポ」13部を添加し、攪拌して、樹脂固形分42%の硬化性樹脂組成物A1を得た。表1に、その詳しい組成を記載した。
製造例1と同様にして、硬化性樹脂組成物A2〜A5を得た。詳しい組成は表1に記載した。
硬化性樹脂として、ヒドロキシエチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート及びスチレンをモル比20:30:15:15:20で共重合させたアクリルポリオール「AP−1」(質量平均分子量25,000)69部と、硬化剤として、アクリルポリオール「AP−1」の水酸基価に対して1.1倍当量のイソシアネート価のヘキサメチレンジイソシアネートフェノール付加物とヘキサメチレンジイソシアネートの3量体のフェノール付加物との混合物「PI−1」16部を、トルエンと酢酸エチル(1:1)の混合溶媒に溶解した。次に、無機微粒子として、富士シリシア製のシリカ「サイリシア350D」2部、土屋カオリン工業製のカオリン「カタルポ」13部を添加、攪拌し、樹脂固形分35%の硬化性樹脂組成物A6を得た。
製造例5と同様にして、硬化性樹脂組成物A7〜A8を得た。詳しい組成は表1に記載した。
UA−1 :ペンタエリスリトール2モル当量とヘキサメチレンジイソシアネート7モル当量とヒドロキシエチルメタクリレート6モル当量を60℃で反応して得られるウレタンアクリレート(1分子中の平均のアクリロイル基数6、質量平均分子量890)
AP−1 :ヒドロキシエチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート及びスチレンをモル比20:30:15:15:20で共重合させたアクリルポリオール(質量平均分子量25,000)
パラロイドA−11:ロームアンドハース社製のアクリル樹脂(Tg100℃、質量平均分子量125,000)
I−184:チバ・スペシャリティケミカルス社製の光重合開始剤「イルガキュア184」
PI−1:ヘキサメチレンジイソシアネートフェノール付加物とヘキサメチレンジイソシアネートの3量体のフェノール付加物との混合物
シリカ :富士シリシア製の「サイリシア350D」
カオリン :土屋カオリン工業製の「カタルポ」
ポリ尿素:ビック・ケミー社製の結晶性ポリ尿素「BYK−410」
を表す。
剥離性フィルムとして、東洋紡社製の厚さ50μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(以下、PPフィルムと略す)を用い、該フィルムにウレタンインキ(商品名:ユニビアA)をグラビア4色印刷機にて厚さ3μmの木目柄を印刷して、装飾フィルム(B)B1を製造した。
ポリウレタン(荒川化学社製ポリウレタン2569):20部
顔料(黒、茶、白):10部
酢酸エチル・トルエン(1/1):60部
ワックス等添加剤:10部
剥離性フィルムとして、東洋紡社製の厚さ50μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(以下、PPフィルムと略す)を用い、該フィルムに膨潤抑制層用インキ及びウレタンインキ(商品名:ユニビアA)をグラビア4色印刷機にて厚さ1μmの膨潤抑制層及び3μmの木目柄を連続印刷して、装飾フィルム(B)B2を製造した。
ポリウレタン(大日本インキ社製、バーノックEZL676):23質量部、顔料(酸化チタン):42質量部、酢酸エチル・トルエン(1/1):30質量部、およびワックス等添加剤:5質量部。
支持体フィルムであるアイセロ化学社製の厚さ30μmのPVAフィルムへ硬化性樹脂組成物A1をコンマコーターで所定の乾燥膜厚(20μm)になるように塗布し、次いで60℃で2分間乾燥した後に、硬化性樹脂層と装飾フィルムB1の装飾層とを向き合わせて60℃でラミネートし、気温40℃、18時間エージングすることにより水圧転写用フィルムC1を作製した。この水圧転写用フィルムC1から剥離性フィルムを剥離すると、インキ層がPVAフィルム側に欠陥なく転移した。剥離性フィルムと装飾層(インキ層)との剥離力は1N/cm以下であり、PVAフィルム及び装飾層に水圧転写に影響を与えるようなしわ、筋、欠陥などは発生しなかった。
硬化性樹脂組成物としてA2を用い、実施例1と同様の方法で水圧転写用フィルムC2を作製した。この水圧転写用フィルムC2から剥離性フィルムを剥離すると、インキ層がPVAフィルム側に欠陥なく転移した。剥離性フィルムと装飾層(インキ層)との剥離力は1N/cm以下であり、PVAフィルム及び装飾層に水圧転写に影響を与えるようなしわ、筋、欠陥などは発生しなかった。
支持体フィルムであるアイセロ化学社製の厚さ30μmのPVAフィルムへ硬化性樹脂組成物A2をコンマコーターで所定の乾燥膜厚(20μm)になるように塗布し、次いで60℃で2分間乾燥した後に、硬化性樹脂層と剥離性フィルム(PPフィルム)とを向き合わせて60℃でラミネートし、気温40℃、18時間エージングすることにより水圧転写用フィルムC3を作製した。この水圧転写用フィルムC3から剥離性フィルムを剥離すると、硬化性樹脂層がPPフィルム側に転移することなく剥離した。剥離性フィルムと硬化性樹脂層との剥離力は1N/cm以下であり、PVAフィルム及び硬化性樹脂層に水圧転写に影響を与えるようなしわ、筋、欠陥などは発生しなかった。
硬化性樹脂組成物としてA2を、装飾フィルムとしてB2を用い、実施例1と同様の方法で水圧転写用フィルムC4を作製した。この水圧転写用フィルムC4から剥離性フィルムを剥離すると、装飾層(膨潤抑制層を含む)がPVAフィルム側に欠陥なく転移した。剥離性フィルムと装飾層との剥離力は1N/cm以下であり、PVAフィルム及び装飾層に水圧転写に影響を与えるようなしわ、筋、欠陥などは発生しなかった。
硬化性樹脂組成物としてA3を用い、実施例3と同様の方法でフィルムC5を作製した。続いて、フィルムC5の剥離性フィルムを剥離しながら、フィルムC5の硬化性樹脂A5上にコンマコーターで接着層として、硬化性樹脂A3を固形分膜厚5μmになるように塗工し、次いで60℃で1分間乾燥して、フィルム(A)を製造した。
このフィルム(A)の硬化性樹脂層と装飾フィルム(B)B1のインキ層を向き合わせて60℃でラミネートした。ラミネートしたフィルムをそのまま巻き取り水圧転写用フィルムC5´を製造した。この水圧転写用フィルムC5´から剥離性フィルムを剥離すると、インキ層がPVAフィルム側に欠陥なく転移した。剥離性フィルムと装飾層(インキ層)との剥離力は1N/cm以下であり、PVAフィルム及び装飾層に水圧転写に影響を与えるようなしわ、筋、欠陥などは発生しなかった。
硬化性樹脂組成物としてA4を、装飾フィルムとしてB2を用い、実施例1と同様の方法で水圧転写用フィルムC6を作製した。この水圧転写用フィルムC6から剥離性フィルムを剥離すると、装飾層(膨潤抑制層を含む)がPVAフィルム側に欠陥なく転移した。剥離性フィルムと装飾層との剥離力は1N/cm以下であり、PVAフィルム及び装飾層に水圧転写に影響を与えるようなしわ、筋、欠陥などは発生しなかった。
硬化性樹脂組成物としてA6を用い、実施例1と同様の方法で水圧転写用フィルムC7を作製した。この水圧転写用フィルムC7から剥離性フィルムを剥離すると、インキ層がPVAフィルム側に欠陥なく転移した。剥離性フィルムと装飾層(インキ層)との剥離力は1N/cm以下であり、PVAフィルム及び装飾層に水圧転写に影響を与えるようなしわ、筋、欠陥などは発生しなかった。
硬化性樹脂組成物としてA7を用い、実施例1と同様の方法で水圧転写用フィルムC8を作製した。この水圧転写用フィルムC8から剥離性フィルムを剥離すると、インキ層がPVAフィルム側に欠陥なく転移した。剥離性フィルムと装飾層(インキ層)との剥離力は1N/cm以下であり、PVAフィルム及び装飾層に水圧転写に影響を与えるようなしわ、筋、欠陥などは発生しなかった。
硬化性樹脂組成物としてA5を用い、実施例1と同様の方法で水圧転写用フィルムC9を作製した。この水圧転写用フィルムC9から剥離性フィルムを剥離すると、インキ層がPVAフィルム側に欠陥なく転移した。剥離性フィルムと装飾層(インキ層)との剥離力は1N/cm以下であり、PVAフィルム及び装飾層に水圧転写に影響を与えるようなしわ、筋、欠陥などは発生しなかった。
硬化性樹脂組成物としてA8を用い、実施例1と同様の方法で水圧転写用フィルムC10を作製した。この水圧転写用フィルムC10から剥離性フィルムを剥離すると、インキ層がPVAフィルム側に欠陥なく転移した。剥離性フィルムと装飾層(インキ層)との剥離力は1N/cm以下であり、PVAフィルム及び装飾層に水圧転写に影響を与えるようなしわ、筋、欠陥などは発生しなかった。
水槽に25℃の水を入れ、水圧転写用フィルムC1の剥離性フィルムを剥離後、PVA側を下にして水圧転写用フィルムF1を水面に浮かべた。活性化剤(キシレン/イソブタノール/酢酸ブチル/ソルフィットアセテート/MIBK=50/20/15/10/5)を25g/m2噴霧し、15秒後、10cm×10cm×2cm(高さ)のABS製の箱蓋を水圧転写用フィルムから水中に向かって挿入し水圧転写した。
PVAを水洗除去した後80℃で30分間乾燥させた。次にUV照射装置を用いて、2400mJ/cm2のUV光を照射することにより、硬化性樹脂層を硬化させ、硬化樹脂層を具備し、鮮明な絵柄模様を有する装飾水圧転写体を得た。評価結果を表3に示す。
水圧転写用フィルムC2を用い、実施例8と同様の方法で、硬化樹脂層を具備し、鮮明な絵柄模様を有する装飾水圧転写体を得た。評価結果を表3に示す。
水圧転写用フィルムC3を用い、実施例8と同様の方法で、硬化樹脂層を具備する水圧転写体を得た。評価結果を表3に示す。
水圧転写用フィルムC4を用い、実施例8と同様の方法で、硬化樹脂層を具備する水圧転写体を得た。評価結果を表3に示す。
水圧転写用フィルムC5´を用い、実施例8と同様の方法で、硬化樹脂層を具備し、鮮明な絵柄模様を有する装飾水圧転写体を得た。評価結果を表3に示す。
水圧転写用フィルムC6を用い、実施例8と同様の方法で、硬化樹脂層を具備し、鮮明な絵柄模様を有する装飾水圧転写体を得た。評価結果を表3に示す。
水槽に25℃の温水を入れ、剥離性フィルムを剥離した水圧転写用フィルムC7のPVA側を下にして水面に浮かべた。活性化剤(キシレン/MIBK/酢酸ブチル/イソプロパノール=50/20/20/10)を25g/m2噴霧し、15秒後、10cm×10cm×2cm(高さ)のABS製の箱蓋を水圧転写用フィルムから水中に向かって挿入し水圧転写した。PVAを水洗除去した後90℃で60分加熱し、活性化剤の乾燥と熱硬化性樹脂層の硬化を行い、硬化樹脂層を具備し、鮮明な絵柄模様を有する装飾水圧転写体を得た。評価結果を表3に示す。
水圧転写用フィルムC8を用い、実施例14と同様の方法で、硬化樹脂層を具備し、鮮明な絵柄模様を有する装飾水圧転写体を得た。評価結果を表3に示す。
水圧転写用フィルムC9を用い、実施例8と同様の方法で水圧転写体を得た。評価結果を表3に示す。
水圧転写用フィルムC10を用い、実施例14と同様の方法で水圧転写体を得た。評価結果を表3に示す。
2 支持体
3 微粒子を含有する硬化性樹脂層(トップコート層)
4 接着層
5 装飾層(膨潤抑制層b)
6 装飾層
7 装飾層(膨潤抑制層a)
8 剥離性フィルム
9 積層フィルム(A)
10 積層フィルム(B)
Claims (7)
- 水溶性もしくは水膨潤性の樹脂からなる支持体フィルムと前記支持体フィルム上に設けた有機溶剤に可溶な転写層を有し、前記転写層が、無機微粒子又は有機微粒子からなる艶消し剤を含有する活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種で硬化可能なトップコート用の硬化性樹脂層を有し、該硬化性樹脂層は、水圧転写後艶消し調を呈することを特徴とする水圧転写用フィルム。
- 前記硬化性樹脂層が、前記無機微粒子又は有機微粒子を0.1質量%以上含有する、請求項1に記載の水圧転写用フィルム。
- 前記無機微粒子が無機顔料である請求項1又は2に記載の水圧転写用フィルム。
- 前記硬化性樹脂層が、活性エネルギー線と加熱の少なくとも一種で硬化可能な樹脂、及び熱可塑性樹脂を含有し、且つ、該熱可塑性樹脂に対する活性エネルギー線と加熱の少なくとも一種で硬化可能な樹脂の質量比P:(ラジカル重合性化合物の質量総和)/(熱可塑性樹脂の質量総和)が45/55以上75/25以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の水圧転写用フィルム。
- 前記転写層が、硬化性樹脂層、インキ層または塗料層からなる装飾層の順に支持体フィルム上に積層された請求項1〜4のいずれかに記載の水圧転写用フィルム。
- 前記転写層が、前記硬化性樹脂層、及び膨潤抑制層を有する請求項1〜5のいずれかに記載の水圧転写用フィルム。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の水圧転写用フィルムを、該フィルムから剥離性フィルムを剥離した後に、前記支持体フィルムを下にして水に浮かべ、有機溶剤により前記転写層を活性化し、前記転写層を被転写体に転写し、前記支持体フィルムを除去し、次いで前記転写層を活性エネルギー線照射と加熱の少なくとも一種で硬化させたことを特徴とする水圧転写体。
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