本発明の画像形成方法では、活性光線硬化型インクジェットインクを、インクジェット記録装置の中間転写媒体に吐出し、塗膜を形成する。その後、中間転写媒体から記録媒体に塗膜を転写させ、記録媒体に転写されたインクに活性光線を照射してインクを硬化させる。
1.活性光線硬化型インクジェットインク
活性光線硬化型インクジェットインクには、光重合性化合物と、ゲル化剤と、光重合開始剤とが含まれる。活性光線硬化型インクジェットインクには、必要に応じて、色材や、その他の添加剤が含まれる。
(光重合性化合物)
光重合性化合物は、活性光線を照射されることにより架橋又は重合する化合物である。活性光線は、例えば電子線、紫外線、α線、γ線、およびエックス線等であり、好ましくは紫外線または電子線であり、特に好ましくは紫外線である。光重合性化合物は、ラジカル重合性化合物又はカチオン重合性化合物であり得る。好ましくはラジカル重合性化合物である。
・カチオン重合性化合物
カチオン重合性化合物は、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、およびオキセタン化合物等でありうる。これらは、特開平6−9714号公報、特開2001−31892号公報、特開2001−40068号公報、特開2001−55507号公報、特開2001−310938号公報、特開2001−310937号公報、特開2001−220526号公報等に例示されている化合物等でありうる。カチオン重合性化合物は、活性光線硬化型インクジェットインク中に一種のみが含まれていてもよく、二種以上が含まれていてもよい。
エポキシ化合物は、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド、または脂肪族エポキシド等であり、硬化性を高めるためには、芳香族エポキシドおよび脂環式エポキシドが好ましい。
芳香族エポキシドは、多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体と、エピクロルヒドリンとを反応させて得られるジまたはポリグリシジルエーテルでありうる。反応させる多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体の例には、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体、ノボラック型エポキシ樹脂等が含まれる。アルキレンオキサイド付加体におけるアルキレンオキサイドは、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等でありうる。
脂環式エポキシドは、シクロアルカン含有化合物を、過酸化水素や過酸等の酸化剤でエポキシ化して得られるシクロアルカンオキサイド含有化合物でありうる。シクロアルカンオキサイド含有化合物におけるシクロアルカンは、シクロヘキセンまたはシクロペンテンでありうる。
脂肪族エポキシドは、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体と、エピクロルヒドリンとを反応させて得られるジまたはポリグリシジルエーテルでありうる。脂肪族多価アルコールの例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルキレングリコールやグリセリン等が含まれる。アルキレンオキサイド付加体におけるアルキレンオキサイドの例には、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等が含まれる。
ビニルエーテル化合物の例には、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物;
エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−o−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物;等が含まれる。ビニルエーテル化合物は、硬化性や密着性などを考慮すると、ジまたはトリビニルエーテル化合物であることが好ましい。
オキセタン化合物は、オキセタン環を有する化合物であり、その例には、特開2001−220526号公報、特開2001−310937号公報に記載のオキセタン化合物等が含まれる。オキセタン環を5個以上有するオキセタン化合物が含まれると、活性光線硬化型インクジェットインクの粘度が高くなり、取扱いが困難になりやすい。またオキセタン化合物のガラス転移温度が高くなり、活性光線硬化型インクジェットインクの硬化物の粘着性が十分でなくなることがある。そこで、オキセタン化合物は、オキセタン環を1〜4個有する化合物であることが好ましい。
オキセタン化合物は、特に特開2005−255821号公報の段落番号0089に記載の一般式(1)で表される化合物、同号公報の段落番号0092に記載の一般式(2)で表される化合物、段落番号0107の一般式(7)で表される化合物、段落番号0109の一般式(8)で表される化合物、段落番号0116の一般式(9)で表される化合物等が挙げられる。具体的には、同号公報の段落番号0104〜0119に記載されている例示化合物1〜6、及び同号公報の段落番号0121に記載されている化合物が挙げられる。特開2005−255821号公報に記載された一般式(1)、(2)、(7)〜(9)を以下に示す。
・ラジカル重合性化合物
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物である。分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であれば限定されない。ラジカル重合性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマー等のいずれであってもよい。ラジカル重合性化合物は、例えば特開平7−159983号公報、特公平7−31399号公報、特開平8−224982号公報、特開平10−863号公報に記載されているラジカル重合性化合物等でありうる。活性光線硬化型インクジェットインクには、ラジカル重合性化合物が1種のみ含まれてもよく、2種以上が含まれてもよい。
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例には、不飽和カルボン酸とその塩、不飽和カルボン酸エステル化合物、不飽和カルボン酸ウレタン化合物、不飽和カルボン酸アミド化合物及びその無水物、アクリロニトリル、スチレン、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等が含まれる。不飽和カルボン酸の例には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等が含まれる。
なかでも、ラジカル重合性化合物は、不飽和カルボン酸エステル化合物であることが好ましく、(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。(メタ)アクリレート化合物は、モノマーだけでなく、オリゴマー、モノマーとオリゴマーの混合物、変性物、重合性官能基を有するオリゴマー等であってもよい。ここで、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」、「メタクリレート」の双方又はいずれかをいい、「(メタ)アクリル」は「アクリル」、「メタクリル」の双方又はいずれかをいう。
(メタ)アクリレート化合物の例には、イソアミルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、イソミルスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、ラクトン変性可撓性アクリレート、t−ブチルシクロヘキシルアクリレート等の単官能モノマー;
トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート等の二官能モノマー;
トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の三官能以上のモノマー;が含まれる。
(メタ)アクリレート化合物は、変性物であってもよく、その例には、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート等のエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化合物;カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性(メタ)アクリレート化合物;およびカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のカプロラクタム変性(メタ)アクリレート化合物等が含まれる。
ラジカル重合性化合物は、ビニルエーテルモノマーおよび/またはオリゴマーと(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物であってもよい。ビニルエーテルモノマーの例には、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物;エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−o−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物;等が含まれる。
ビニルエーテルオリゴマーは、分子量が300〜1000で、エステル基を分子内に2〜3個有する2官能の化合物であることが好ましい。ビニルエーテルオリゴマーの例には、ALDRICH社のVEctomerシリーズとして入手可能な化合物(VEctomer4010、VEctomer4020、VEctomer4040、VEctomer4060、VEctomer5015等)が含まれるが、これらに限定されない。
ラジカル重合性化合物は、ビニルエーテルモノマーおよび/またはオリゴマーと、マレイミド化合物との混合物であってもよい。マレイミド化合物の例には、N−メチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N,N’−メチレンビスマレイミド、ポリプロピレングリコール−ビス(3−マレイミドプロピル)エーテル、テトラエチレングリコール−ビス(3−マレイミドプロピル)エーテル、ビス(2−マレイミドエチル)カーボネート、N,N′−(4,4′−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N′−2,4−トリレンビスマレイミド、及び特開平11−124403号公報に記載のマレイミドカルボン酸と種々のポリオール類とのエステル化合物等が含まれるが、これに限定されない。
また、ラジカル重合性化合物は、重合性のオリゴマー類であってもよい。重合性オリゴマーの例には、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、および直鎖(メタ)アクリルオリゴマー等が含まれる。具体的には、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(185年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79ページ、(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品、もしくは公知のラジカル重合性ないし架橋性のオリゴマー及びポリマーが挙げられる。
ラジカル重合性化合物は、特に感光性が高く、硬化収縮が少ないこと等から、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等であることが好ましい。
・光重合性化合物の含有量
光重合性化合物の含有量は、活性光線硬化型インクジェット全質量に対して、1〜97質量%であることが好ましく、より好ましくは30〜95質量%である。光重合性化合物の量が少な過ぎると、インクジェット記録装置からのインクの吐出性が低下する。一方、光重合性化合物の量が過剰であると、相対的にゲル化剤や光重合開始剤の量が少なくなり、ゾルゲル相転移が十分に行われない可能性や、硬化が不十分となる可能性がある。
(ゲル化剤)
活性光線硬化型インクジェットインクには、ゲル化剤が含まれる。ゲル化剤は、活性光線硬化型インクジェットインクを温度により可逆的にゾルゲル相転移させる機能を有する。本発明の活性光線硬化型インクジェットインクは、インクジェット記録ヘッドより吐出された後、中間転写媒体上に着弾すると、ゲル化;すなわち粘度が高まる。液滴の粘度が高まることで、ドット同士の混じり合い・ドットの合一が抑制される。また液滴の粘度が高まることで、液滴中に酸素が入り込みにくくなり、光重合性化合物の重合が、酸素により阻害されることを抑制できる。
本発明でいう「ゲル」とは、ラメラ構造;非共有結合や水素結合により形成される高分子網目構造;物理的な凝集状態によって形成される高分子網目構造;微粒子の凝集構造などの相互作用、もしくは析出した微結晶の相互作用などにより、物質が独立した運動を失って集合した構造;をいう。また、「ゲル化」するとは、急激な粘度上昇や弾性増加を伴って固化したり、半固化したり、または増粘したりすることをいう。
活性光線硬化型インクジェットインクに含まれるゲル化剤は、高分子化合物であっても、低分子化合物であってもよいが、インクジェット記録装置からの射出性から、低分子化合物が好ましい。
高分子化合物からなるゲル化剤の例には、ステアリン酸イヌリンなどの脂肪酸イヌリン;パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリンなどの脂肪酸デキストリン(レオパールシリーズとして千葉製粉より入手可能);ベヘン酸エイコサン二酸グリセリル;ベヘン酸エイコサン二酸ポリグリセリル(ノムコートシリーズとして日清オイリオより入手可能);等が含まれる。
低分子化合物からなるゲル化剤の例には、例えば特開2005−126507号や特開2005−255821号や特開2010−111790号の各公報に記載の低分子オイルゲル化剤;
N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジブチルアミド、N-2エチルヘキサノイル-L-グルタミン酸ジブチルアミドなどのアミド化合物(味の素ファインテクノより入手可能);
1,3:2,4-ビス-O-ベンジリデン-D-グルシトール(ゲルオールD 新日本理化より入手可能)などのジベンジリデンソルビトール類;
パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、ホホバ固体ロウ、ホホバエステル、ミツロウ、ラノリン、鯨ロウ、モンタンワックス、水素化ワックス、硬化ヒマシ油または硬化ヒマシ油誘導体、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体またはポリエチレンワックス(誘導体)、α−オレフィン無水マレイン酸共重合体ワックスなどの各種ワックス(UNILINシリーズ Baker−Petrolite社製、ルナックBA 花王社製、カオーワックスT1 花王社製);
ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、エルカ酸などの高級脂肪酸;
ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどの高級アルコール;
12−ヒドロキシステアリン酸などのヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸誘導体;
ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、12-ヒドロキシステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド(例えば、ニッカアマイドシリーズ 日本化成社製や、ITOHWAXシリーズ 伊藤製油社製や、FATTYAMIDシリーズ 花王社製)、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-オレイルパルミチン酸アミドなどのN-置換脂肪酸アミド、N,N'-エチレンビスステアリルアミド、N,N'-エチレンビス12-ヒドロキシステアリルアミド、N,N'-キシリレンビスステアリルアミドなどの特殊脂肪酸アミド;
ドデシルアミン、テトラデシルアミンまたはオクタデシルアミンなどの高級アミン;
ステアリルステアリン酸、オレイルパルミチン酸、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどの脂肪酸エステル化合物(例えばEMALLEXシリーズ 日本エマルジョン社製、リケマールシリーズ 理研ビタミン社製や、ポエムシリーズ 理研ビタミン社製);
ショ糖ステアリン酸、ショ糖パルミチン酸などのショ糖脂肪酸エステル(例えばリョートーシュガーエステルシリーズ 三菱化学フーズ社製);
ダイマー酸、ダイマージオール(PRIPORシリーズ CRODA社製);
等が含まれる。活性光線硬化型インクジェットインクには、ゲル化剤が1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれてもよい。
ゲル化剤の含有量は、インク全質量に対して0.5質量%以上10質量%未満であり、好ましくは1質量%以上10質量%未満、さらに好ましくは2〜7質量%である。ゲル化剤の含有量を0.5質量%以上とすることで、中間転写媒体に着弾後の液滴の貯蔵弾性率が十分に高まる。また、ゲル化剤の含有量を10質量%未満とすることで、活性光線照射後に未硬化成分が残存し難くなる。さらに、硬化前のインク液滴の柔軟性が比較的高くなる。
(光重合開始剤)
活性光線硬化型インクジェットインクには、光重合開始剤が含まれる。光重合開始剤は、光重合性化合物の種類、インク硬化時に照射する活性光線の種類により、適宜選択される。
ラジカル重合方式の活性光線硬化型インクジェットインクに含まれる光重合開始剤には、分子内結合開裂型と分子内水素引き抜き型とがある。分子内結合開裂型の光重合開始剤の例には、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン系;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン類;2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系;ベンジル及びメチルフェニルグリオキシエステル等が含まれる。
分子内水素引き抜き型の光重合開始剤の例には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル-4-フェニルベンゾフェノン、4,4'-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4'-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3',4,4'-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3'-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系;ミヒラーケトン、4,4'-ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系;10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が含まれる。
また、ラジカル重合方式の活性光線硬化型インクジェットインクに含まれる光重合開始剤の例には、特公昭59−1281号公報、特公昭61−9621号公報、及び特開昭60−60104号公報等に記載のトリアジン誘導体;特開昭59−1504号公報、及び特開昭61−243807号公報等に記載の有機過酸化物;特公昭43−23684号公報、特公昭44−6413号公報、特公昭44−6413号公報、及び特公昭47−1604号公報、並びに米国特許第3,567,453号明細書に記載のジアゾニウム化合物;米国特許第2,848,328号明細書、米国特許第2,852,379号明細書、及び米国特許第2,940,853号明細書等に記載の有機アジド化合物;特公昭36−22062号公報、特公昭37−13109号公報、特公昭38−18015号公報、特公昭45−9610号公報等に記載のオルト−キノンジアジド類;特公昭55−39162号公報、特開昭59−14023号公報、及び「マクロモレキュルス(Macromolecules)」、第10巻、第1307頁(1977年)等に記載の各種オニウム化合物;特開昭59−142205号公報に記載のアゾ化合物;特開平1−54440号公報、欧州特許第109,851号明細書、欧州特許第126,712号明細書、及び「ジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス」(J.Imag.Sci.)」、第30巻、第174頁(1986年)等に記載の金属アレン錯体;特許第2711491号公報、特許第2803454号公報に記載の(オキソ)スルホニウム有機ホウ素錯体;特開昭61−151197号公報に記載のチタノセン類;「コーディネーション・ケミストリー・レビュー(Coordination Chemistry Review)」、第84巻、第85〜第277頁(1988年)、及び特開平2−182701号公報に記載のルテニウム等の遷移金属を含有する遷移金属錯体;特開平3−209477号公報に記載の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;四臭化炭素や特開昭59−107344号公報記載の有機ハロゲン化合物等が含まれる。
ラジカル重合方式の活性光線硬化型インクジェットインクに含まれる光重合性化合物の量は、活性光線や光重合性化合物の種類などにもよるが、インク全質量に対して0.01質量%〜10質量%であることが好ましい。
カチオン重合方式の活性光線硬化型インクジェットインクには、酸発生型の光重合開始剤(光酸発生剤)が含まれる。酸発生型の光重合開始剤の例には、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が挙げられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。
酸発生型の光重合開始剤の例には、芳香族系ジアゾニウム、芳香族系アンモニウム、芳香族系ヨードニウム、芳香族系スルホニウム、芳香族系ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物(カチオン)と、B(C6F5)4 −、PF6 −、AsF6 −、SbF6 −、CF3SO3 −等のアニオンとの塩(オニウム塩)が含まれる。芳香族オニウム化合物は、特開2005−255821号公報の段落番号0134に記載されている化合物であり得る。
また、酸発生型の光重合開始剤は、スルホン酸を発生するスルホン化物;ハロゲン化水素を発生するハロゲン化物;鉄アレン錯体等でありうる。スルホン化物の例には、特開2005−255821号公報の段落番号0136に記載されている化合物等が含まれる。ハロゲン化物の例には、特開2005−255821号公報の段落番号0138に記載されている化合物等が含まれる。鉄アレン錯体の例には、特開2005−255821号公報の段落番号0140に記載されている化合物等が含まれる。
カチオン重合方式の活性光線硬化型インクジェットインクに含まれる酸発生型の光重合開始剤の量は、活性光線や光重合性化合物の種類などにもよるが、インク全質量に対して0.01質量%〜10質量%であることが好ましい。
活性光線硬化型インクジェットインクには、必要に応じて光重合開始剤助剤や増感剤、重合禁止剤などがさらに含まれていてもよい。光重合開始剤助剤は、第3級アミン化合物であってよく、芳香族第3級アミン化合物が好ましい。芳香族第3級アミン化合物の例には、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸イソアミルエチルエステル、N,N-ジヒドロキシエチルアニリン、トリエチルアミンおよびN,N-ジメチルヘキシルアミン等が含まれる。なかでも、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸イソアミルエチルエステルが好ましい。活性光線硬化型インクジェットインクに、これらの化合物が、一種のみ含まれていてもよく、二種類以上が含まれていてもよい。
増感剤は、波長300nmよりも長波長側に紫外線スペクトル吸収を有する化合物であることが好ましい。増感剤の例には、水酸基、置換基を有してもよいアラルキルオキシ基、またはアルコキシ基を少なくとも1つ有する多環芳香族化合物;カルバゾール誘導体;チオキサントン誘導体;アントラセン誘導体等が含まれる。
重合禁止剤の例には、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p-ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-t-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム等が含まれる。
(色材)
活性光線硬化型インクジェットインクには、色材がさらに含まれてもよい。色材は、染料または顔料でありうる。インクの構成成分に対して良好な分散性を有し、かつ耐候性に優れることから、顔料がより好ましい。
染料は、油溶性染料等でありうる。油溶性染料は、以下の各種染料が挙げられる。マゼンタ染料の例には、MS Magenta VP、MS Magenta HM−1450、MS Magenta HSo−147(以上、三井東圧社製)、AIZENSOT Red−1、AIZEN SOT Red−2、AIZEN SOTRed−3、AIZEN SOT Pink−1、SPIRON Red GEH SPECIAL(以上、保土谷化学社製)、RESOLIN Red FB 200%、MACROLEX Red Violet R、MACROLEX ROT5B(以上、バイエルジャパン社製)、KAYASET Red B、KAYASET Red 130、KAYASET Red 802(以上、日本化薬社製)、PHLOXIN、ROSE BENGAL、ACID Red(以上、ダイワ化成社製)、HSR−31、DIARESIN Red K(以上、三菱化成社製)、Oil Red(BASFジャパン社製)が含まれる。
シアン染料の例には、MS Cyan HM−1238、MS Cyan HSo−16、Cyan HSo−144、MS Cyan VPG(以上、三井東圧社製)、AIZEN SOT Blue−4(保土谷化学社製)、RESOLIN BR.Blue BGLN 200%、MACROLEX Blue RR、CERES Blue GN、SIRIUS SUPRATURQ.Blue Z−BGL、SIRIUS SUPRA TURQ.Blue FB−LL 330%(以上、バイエルジャパン社製)、KAYASET Blue FR、KAYASET Blue N、KAYASET Blue 814、Turq.Blue GL−5 200、Light Blue BGL−5 200(以上、日本化薬社製)、DAIWA Blue 7000、Oleosol Fast Blue GL(以上、ダイワ化成社製)、DIARESIN Blue P(三菱化成社製)、SUDAN Blue 670、NEOPEN Blue 808、ZAPON Blue 806(以上、BASFジャパン社製)等が含まれる。
イエロー染料の例には、MS Yellow HSm−41、Yellow KX−7、Yellow EX−27(三井東圧)、AIZEN SOT Yellow−1、AIZEN SOT YelloW−3、AIZEN SOT Yellow−6(以上、保土谷化学社製)、MACROLEX Yellow 6G、MACROLEX FLUOR.Yellow 10GN(以上、バイエルジャパン社製)、KAYASET Yellow SF−G、KAYASET Yellow2G、KAYASET Yellow A−G、KAYASET Yellow E−G(以上、日本化薬社製)、DAIWA Yellow 330HB(ダイワ化成社製)、HSY−68(三菱化成社製)、SUDAN Yellow 146、NEOPEN Yellow 075(以上、BASFジャパン社製)等が含まれる。
ブラック染料の例には、MS Black VPC(三井東圧社製)、AIZEN SOT Black−1、AIZEN SOT Black−5(以上、保土谷化学社製)、RESORIN Black GSN 200%、RESOLIN BlackBS(以上、バイエルジャパン社製)、KAYASET Black A−N(日本化薬社製)、DAIWA Black MSC(ダイワ化成社製)、HSB−202(三菱化成社製)、NEPTUNE Black X60、NEOPEN Black X58(以上、BASFジャパン社製)等が含まれる。
顔料は、特に限定されないが、例えばカラーインデックスに記載される下記番号の有機顔料または無機顔料でありうる。
赤あるいはマゼンタ顔料の例には、Pigment Red 3、5、19、22、31、38、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、208、216、226、257、Pigment Violet 3、19、23、29、30、37、50、88、Pigment Orange 13、16、20、36等が含まれる。青またはシアン顔料の例には、Pigment Blue 1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17−1、22、27、28、29、36、60等が含まれる。緑顔料の例には、Pigment Green 7、26、36、50が含まれる。黄顔料の例には、Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94,95、97、108、109、110、137、138、139、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193等が含まれる。黒顔料の例には、Pigment Black 7、28、26等が含まれる。
顔料の市販品の例には、クロモファインイエロー2080、5900、5930、AF−1300、2700L、クロモファインオレンジ3700L、6730、クロモファインスカーレット6750、クロモファインマゼンタ6880、6886、6891N、6790、6887、クロモファインバイオレット RE、クロモファインレッド6820、6830、クロモファインブルーHS−3、5187、5108、5197、5085N、SR−5020、5026、5050、4920、4927、4937、4824、4933GN−EP、4940、4973、5205、5208、5214、5221、5000P、クロモファイングリーン2GN、2GO、2G−550D、5310、5370、6830、クロモファインブラックA−1103、セイカファストエロー10GH、A−3、2035、2054、2200、2270、2300、2400(B)、2500、2600、ZAY−260、2700(B)、2770、セイカファストレッド8040、C405(F)、CA120、LR−116、1531B、8060R、1547、ZAW−262、1537B、GY、4R−4016、3820、3891、ZA−215、セイカファストカーミン6B1476T−7、1483LT、3840、3870、セイカファストボルドー10B−430、セイカライトローズR40、セイカライトバイオレットB800、7805、セイカファストマルーン460N、セイカファストオレンジ900、2900、セイカライトブルーC718、A612、シアニンブルー4933M、4933GN−EP、4940、4973(大日精化工業製);
KET Yellow 401、402、403、404、405、406、416、424、KET Orange 501、KET Red 301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、336、337、338、346、KET Blue 101、102、103、104、105、106、111、118、124、KET Green 201(大日本インキ化学製);
Colortex Yellow 301、314、315、316、P−624、314、U10GN、U3GN、UNN、UA−414、U263、Finecol Yellow T−13、T−05、Pigment Yellow1705、Colortex Orange 202、Colortex Red101、103、115、116、D3B、P−625、102、H−1024、105C、UFN、UCN、UBN、U3BN、URN、UGN、UG276、U456、U457、105C、USN、Colortex Maroon601、Colortex BrownB610N、Colortex Violet600、Pigment Red 122、Colortex Blue516、517、518、519、A818、P−908、510、Colortex Green402、403、Colortex Black 702、U905(山陽色素製);
Lionol Yellow1405G、Lionol Blue FG7330、FG7350、FG7400G、FG7405G、ES、ESP−S(東洋インキ製)、
Toner Magenta E02、Permanent RubinF6B、Toner Yellow HG、Permanent Yellow GG−02、Hostapeam BlueB2G(ヘキストインダストリ製);
Novoperm P−HG、Hostaperm Pink E、Hostaperm Blue B2G(クラリアント製);
カーボンブラック#2600、#2400、#2350、#2200、#1000、#990、#980、#970、#960、#950、#850、MCF88、#750、#650、MA600、MA7、MA8、MA11、MA100、MA100R、MA77、#52、#50、#47、#45、#45L、#40、#33、#32、#30、#25、#20、#10、#5、#44、CF9(三菱化学製)などが挙げられる。
顔料の平均粒径は0.08〜0.5μmであることが好ましく、顔料の最大粒径は0.3〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.3〜3μmである。顔料の粒径を調整することによって、インクジェット記録ヘッドのノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性及び硬化感度を維持することができる。
顔料または染料の含有量は、活性光線硬化型インクジェットインク全質量に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、0.4〜10質量%であることがより好ましい。顔料または染料の含有量が少なすぎると、得られる画像の発色が十分ではなく、多すぎるとインクの粘度が高くなり、吐出性が低下するからである。
顔料の分散は、例えばボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、およびペイントシェーカー等により行うことができる。顔料の分散は、顔料粒子の平均粒子径が、好ましくは0.08〜0.5μm、最大粒子径が好ましくは0.3〜10μm、より好ましくは0.3〜3μmとなるように行われることが好ましい。顔料の分散は、顔料、分散剤、および分散媒体の選定、分散条件、およびろ過条件等によって、調整される。
活性光線硬化型インクジェットインクには、顔料の分散性を高めるために、分散剤がさらに含まれていてもよい。分散剤の例には、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、およびステアリルアミンアセテート、顔料誘導体等が含まれる。
分散剤の市販品の例には、BYK Chemie社製「Anti−Terra−U(ポリアミノアマイド燐酸塩)」、「Anti−Terra−203/204(高分子量ポリカルボン酸塩)」、「Disperbyk−101(ポリアミノアマイド燐酸塩と酸エステル)、107(水酸基含有カルボン酸エステル)、110(酸基を含む共重合物)、130(ポリアマイド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「400」、「Bykumen」(高分子量不飽和酸エステル)、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸)」、「P104S、240S(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン系)」、「Lactimon(長鎖アミンと不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン)」が含まれる。
分散剤の市販品の例には、Efka CHEMICALS社製「エフカ44、46、47、48、49、54、63、64、65、66、71、701、764、766」、「エフカポリマー100(変性ポリアクリレート)、150(脂肪族系変性ポリマー)、400、401、402、403、450、451、452、453(変性ポリアクリレート)、745(銅フタロシアニン系)」;共栄化学社製「フローレンTG−710(ウレタンオリゴマー)」、「フローノンSH−290、SP−1000」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合物)」;楠本化成社製「ディスパロンKS−860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)」等も含まれる。
さらに、分散剤の市販品の例には、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、EP」、「ホモゲノールL−18(ポリカルボン酸型高分子)」、「エマルゲン920、930、931、935、950、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン24(ココナッツアミンアセテート)、86(ステアリルアミンアセテート)」;ゼネカ社製「ソルスパーズ5000(フタロシアニンアンモニウム塩系)、13240、13940(ポリエステルアミン系)、17000(脂肪酸アミン系)、24000、32000」;日光ケミカル社製「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)、Hexagline4−0(ヘキサグリセリルテトラオレート)」等も含まれる。
活性光線硬化型インクジェットインクには、分散助剤が含まれていてもよい。分散助剤の例には、Avecia社のSolsperseシリーズや、味の素ファインテクノ社のPBシリーズ等が含まれる。
分散剤および分散助剤の合計量は、顔料に対して1〜50質量%であることが好ましい。
活性光線硬化型インクジェットインクには、必要に応じて顔料を分散させるための分散媒体がさらに含まれていてもよい。分散媒体は溶剤であってもよいが、形成された画像における溶剤の残留を抑制するためには、前述のような光重合性化合物(特に粘度の低いモノマー)が分散媒体であることが好ましい。
・その他の成分について
活性光線硬化型インクジェットインクには、必要に応じて他の成分がさらに含まれていてもよい。他の成分は、各種添加剤や他の樹脂等であってよい。添加剤の例には、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗菌剤、インクの保存安定性を高めるための塩基性化合物等も含まれる。塩基性化合物の例には、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミンなどの塩基性有機化合物などが含まれる。他の樹脂の例には、硬化膜の物性を調整するための樹脂などが含まれ、例えばポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、およびワックス類等が含まれる。
・活性光線硬化型インクジェットインクの物性について
活性光線硬化型インクジェットインクは、前述のようにゲル化剤が含まれるため、温度により可逆的にゾルゲル相転移する。ゾルゲル相転移する活性光線硬化型インクは、高温(例えば80℃程度)では液体(ゾル)であるため、インクジェット記録ヘッドからゾル状態で吐出される。一方、インク液滴(ドット)は中間転写媒体に着弾した後、自然冷却されてゲル化する。そのため、インク液滴同士が合一せず、中間転写媒体上に、鮮鋭性の高い画像が形成される。さらに、インクがゲル化しているため、インクを硬化させなくとも、中間転写媒体から記録媒体に転写するまでの間に、インク液滴同士が合一しない。したがって、記録媒体に鮮鋭性の高い画像が転写される。
一般的に、ゾルゲルインク相転移インクは、ゲル化後のインク液滴の粘度や貯蔵弾性率が高いため、液滴同士が合一し難い。一方で、ゲル化後のインク液滴はレベリングし難く、塗膜表面に細かな凹凸が生じやすい。そして、インク液滴の貯蔵弾性率が高いと、塗膜を中間転写媒体から記録媒体に転写しても、この凹凸が平滑化され難く、光沢感にムラが生じやすい。
また、ゾルゲルインク相転移インクからなる塗膜は、画像濃度の高い領域;つまりインク塗布量が多い領域では厚みが厚く、画像濃度の薄い領域;つまりインク塗布量が少ない領域では厚みが薄くなりやすい。そして、インク液滴の貯蔵弾性率が高いと、中間転写媒体から記録媒体に塗膜を転写しても、この厚み差が平滑化され難い。すなわち、画像濃度の異なる領域の境界で、段差(いわゆる、レリーフ感)が生じやすい。
さらに、貯蔵弾性率の高いインク液滴は、転写の際に記録媒体と密着し難く、転写残りが発生しやすい。
これに対し、本発明では、インク着弾時の中間体転写媒体の温度におけるインクの貯蔵弾性率;すなわちゲル化後のインクの貯蔵弾性率が、3×101Pa以上、3×103Pa未満であり、好ましくは3×102Pa以上、1×103Pa未満である。貯蔵弾性率が3×101Pa以上であるため、ゲル化後のインク液滴同士が合一し難い。一方で、貯蔵弾性率が3×103Pa未満であり、ゲル化後のインク液滴が適度な柔軟性を有する。そのため、中間転写媒体から記録媒体へ転写する際、インクが記録媒体と密着しやすい。さらに、転写の際に、インク液滴が適度に変形し、塗膜が平滑化されやすい。したがって、光沢均質性に優れ、かつレリーフ感の少ない印刷画像が得られやすい。活性光線硬化型インクジェットインクの貯蔵弾性率は、ゲル化剤の種類、ゲル化剤の含有量、光重合性化合物の種類等によって、調整可能である。
なお、本発明でいう「光沢均質性が高い」とは、絶対的な光沢値、例えば60度正反射光沢値が高いことを示すものではない。「光沢均質性が高い」とは、画像上の微視的な光沢差に起因する不自然なキラキラ感や不必要な光沢低下、スジ状の光沢ムラといった、画像の一部において光沢が不均質になった状態が見られず、画像全面、特にベタ印字部の光沢が均質であることをいう。
また、本発明では、インク着弾時の中間体転写媒体の温度におけるインクの粘度が1×103mPa・s以上、5×104mPa・s未満であり、好ましくは3×103mPa・s以上、1×104mPa・s未満である。インク着弾時の中間転写媒体の温度における粘度が1×103mPa・s以上であると、中間転写媒体に着弾した液滴が広がり難く、液滴同士が合一し難い。一方で、5×104mPa・s未満であると、インクジェット記録ヘッドからの吐出性が良好となる。
また、インク液滴の吐出性を高めるためには、高温下におけるインクの粘度が一定以下であることが好ましい。具体的には、活性光線硬化型インクジェットインクの、80℃における粘度が3〜20mPa・sであることが好ましい。活性光線硬化型インクジェットインクの粘度は、ゲル化剤の種類、ゲル化剤の含有量、光重合性化合物の種類等によって、調整可能である。
上記粘度及び貯蔵弾性率は、コーンプレートを使用したストレス制御型レオメータ、PhysicaMCRシリーズ、Anton Paar社製)で測定できる。粘度は、ローテションモードで、90℃から温度降下速度0.1℃/で温度変化させながら、剪断速度11.7s−1で測定する。貯蔵弾性率は、オシレーションモードにて90℃にから温度降下速度0.1℃/で温度を変化させながら、歪み5%、角周波数10radian/sで測定する。
活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度は、40℃以上90℃未満であることが好ましく、45℃以上70℃以下であることがより好ましい。夏場の気温を考慮すると、インクの相転移温度が40℃以上であれば、環境温度に影響されることなく安定してインクを吐出できる。またインクの相転移温度が90℃未満であれば、インクを過度の高温に加熱しなくても、安定してインクを吐出できる。したがって、インクジェット記録装置のインクジェット記録ヘッドやインク供給系の部材への熱的負荷を低減することができる。インクのゲル化温度は使用するゲル化剤の種類、ゲル化剤の添加量、光重合性化合物の種類により、適宜調整可能である。
インクのゲル化温度とは、インクが流動性のある溶液状態から急激に粘度が変化してゲル状態になる温度のことをいう。ゲル転移温度、ゲル溶解温度、相転移温度、ゾルゲル相転移温度、ゲル化点と称される用語と同義である。また、「ゾル化」とは、前記ゲル化により形成された相互作用が解消されて、流動性を有する液体状態に変化することをいう。ゾル化温度とは、ゲル化したインクを加温していく際に、ゾル化により流動性が発現する温度である。
インクのゲル化温度は、粘度及び貯蔵弾性率測定と同様のレオメータ(例えばコーンプレートを使用したストレス制御型レオメータ、PhysicaMCRシリーズ、Anton Paar社製)で測定できる。インクの温度を徐々に降下させながら、低剪断速度で粘度を測定し、粘度の温度変化曲線を作成する。そして、この粘度の温度変化曲線から、粘度が急激に高まる温度を求め、これをゲル化温度とする。
また、ガラス管に封じ込めた小鉄片をインクと共に膨張計の中に入れてインク温度を降下させ、小鉄片がインク液中を自然落下しなくなった時点をゲル化温度とする方法(J.Polym.Sci.,21,57(1956))でも求められる。その他、インク上にアルミニウム製シリンダーを置き、インクを加温した時に、アルミニウム製シリンダーが自然落下する温度を、ゲル化温度とする方法(日本レオロジー学会誌 Vol.17,86(1989))でも求められる。さらに簡便な方法の例には、ヒートプレート上にゲル状インクの試験片を置き、ヒートプレートを加熱し、試験片の形状が崩れる温度をゲル化温度とする方法もある。
・インクジェットインクの調製方法について
活性光線硬化型インクジェットインクは、前述の光重合性化合物、ゲル化剤、光重合開始剤、及び色材等を、加熱下、混合して得られる。好ましくは、一部の光重合性化合物に色材(特に顔料)を分散させた顔料分散剤を用意し、顔料分散材と、他のインク成分と混合する。得られたインクは、所定のフィルターで濾過することが好ましい。
2.画像形成方法
本発明の画像形成方法は、少なくとも以下の3工程を含む。
(1)活性光線硬化型インクジェットインクのインク液滴を、インクジェット記録ヘッドから吐出させて、中間転写媒体に付着させるインク付着工程
(2)中間転写媒体に付着させたインク液滴を、記録媒体に転写させる転写工程
(3)前記記録媒体上に着弾した液滴にLED光源からの光を照射して前記インク液滴を硬化させる硬化工程
(1)インク付着工程について
活性光線硬化型インクジェットインクのインク液滴を、インクジェット記録装置のインクジェット記録ヘッド部から中間転写媒体上に吐出する。インクは、上述した活性光線硬化型インクジェットインクである。中間転写媒体に着弾したインク液滴は、ゾルゲル相転移により速やかにゲル化する。インク液滴がゲル化すると、インク液滴同士の合一が抑制される。また、インク液滴がゲル化すると、インク液滴中に酸素が入り込みにくくなり、(3)硬化工程において、光重合性化合物の硬化が酸素によって阻害されにくくなる。
インク液滴の吐出性を高めるためには、インクジェット記録ヘッド内のインクジェットインクの温度を、インクのゲル化温度より10℃以上、40℃未満高い温度に設定することが好ましい。インクジェット記録ヘッド内のインクのゲル化温度+10℃以上にすることで、インクジェット記録ヘッド内もしくはノズル表面でインクがゲル化することがなく、インクを良好に射出できる。また、インクジェット記録ヘッド内のインクの温度をインクのゲル化温度+40℃未満とすることで、インクジェット記録ヘッドの熱的負荷を小さくできる。特にピエゾ素子を用いたインクジェット記録ヘッドで、熱的負荷による性能低下が生じやすいため、インクの温度を上記範囲内とすることが特に好ましい。インクジェット記録ヘッド内の温度において、インクの粘度は3mPa・s以上、20mPa・s未満であることが吐出安定性の観点から好ましい。
インクは、インクジェット記録装置のインクジェット記録ヘッド、インクジェット記録ヘッドに接続したインク流路、またはインク流路に接続したインクタンク等で加熱することが好ましい。また、インクジェット記録ヘッドの各ノズルから吐出される1滴あたりの液滴量は、画像の解像度にもよるが、1〜10plであることが好ましい。
インク着弾時の中間転写媒体の表面温度は、インクのゲル化温度より低い温度であれば、特に制限されないが、画像の鮮鋭性を考慮すると、インクのゲル化温度より5℃以上低い温度であることが好ましい。特に、中間転写媒体の温度が30℃以上、55℃未満であることが好ましく、さらに好ましくは40〜50℃である。
中間転写媒体の調温方法は特に制限がない。例えば中間転写媒体の内部に、冷却装置および加熱装置を配設し、中間転写媒体の内側から調温してもよく、中間転写媒体の外周に、冷媒やヒーター等を配設し、外部から調温してもよい。
中間転写媒体の形状は、インク着弾面が平滑であれば特に制限はなく、例えば図1に示すような無端ベルト状であってもよく、また図2または図3に示すようなドラム状であってもよい。
中間転写媒体は、通常、基材と、その表面に形成された離型層とを有する。
中間転写媒体の基材の材質は、中間転写媒体の形状や強度等を考慮して、適宜選択される。基材の材質の例には、鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属;ポリイミド(PI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミドアミド(PIA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等の樹脂;エチレンプロピレンゴム(EPDM)、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のエラストマー等が含まれる。
基材の表面に形成される離型層は、活性光線硬化型インクジェットインクに対して離型性を有する層であることが好ましい。離型層は、シリコーン樹脂層、またはフッ素樹脂層でありうる。
シリコーン樹脂層は、溶剤付加型シリコーンまたは縮合硬化型のシリコーンを硬化させた層であることが好ましく、溶剤付加型シリコーンを硬化させた層であることが特に好ましい。
溶剤付加型シリコーンの例には、信越シリコーン社製のKS−887、KS−779H、KS−778、KS−835、X−62−2456、X−62−2494、X−62−2461、KS−3650、KS−3655、KS−3600、KS−847、KS−770、KS−770L、KS−776A、KS−856、KS−775、KS−830、KS−830E、KS−839、X−62−2404、X−62−2405、KS−3702、X−62−2232、KS−3503、KS−3502、KS−3703、KS−5508等が含まれる。
縮合硬化型シリコーンの例には、信越シリコーン社製のKS−881、KS−882、KS−883、X−62−9490、X−62−9028等のシリコーンが含まれる。
シリコーン樹脂層(離型層)の厚さは、1〜50μmであることが好ましく、10〜30μmの厚みであることがより好ましい。
フッ素樹脂層(離型層)に含まれるフッ素樹脂の例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)が含まれる。フッ素樹脂層には、フッ素樹脂が1種のみ含まれてよく、2種以上が含まれてもよい。
フッ素樹脂層(離型層)の厚さは、5〜30μmであることが好ましく、10〜20μmの厚みであることがより好ましい。
離型層の純水に対する表面接触角は、100〜120°であることが好ましく、105〜115°であることがより好ましい。上記表面接触角は、純水約15μlを測定面に静かに垂らしてから0.5秒後の測定面と純水との接触角であり、自動接触角計DAC−VZ(協和界面科学社製)により測定可能である。
(2)転写工程について
中間転写媒体に形成されたインク液滴を、記録媒体に転写する。本発明では、前述のように、インク液滴が適度な柔軟性(貯蔵弾性率)を有するため、インクが記録媒体に密着しやすく、転写残りが生じ難い。さらに、インク液滴が適度な柔軟性(貯蔵弾性率)を有するため、転写時に塗膜表面が平滑化されやすい。
インク転写時、中間転写媒体と記録媒体との間に圧力(ニップ圧)を掛けることが好ましい。ニップ圧は0.1MPa以上0.5MPa未満であることが好ましく、0.1MPa以上0.3MPa未満であることがより好ましい。ニップ圧が0.1MPa未満であると、中間転写媒体から記録媒体側に、インクが十分に転写されない場合がある。また、ニップ圧が低いと、記録媒体に転写された画像表面を十分に平滑化できず、光沢均質性が低くなる場合がある。一方、ニップ圧が0.5MPa以上であると、インク液滴がつぶれて画像が滲み、画質鮮鋭性が低下するおそれがある。なお、活性光線硬化型インクジェットインクのインク硬度はホットメルトインクの硬度と比べて十分に小さい。したがって、本発明は従来のホットメルトインク転写時より、低いニップ圧で、画像表面を平滑化できる。
中間転写媒体から記録媒体に画像を転写する際の、記録媒体の温度は、中間転写媒体の温度より低い温度であることが好ましい。具体的には、中間転写媒体の温度より、5℃以上15℃未満低くすることが好ましく、5℃以上10℃未満低くすることがより好ましい。中間転写媒体の温度より記録媒体の温度が低いと、インクが記録媒体側に転写されやすくなり、転写残りが少なくなる。
記録媒体の調温方法は、特に制限はなく、例えば記録媒体の搬送部材に冷却装置や加熱装置を配設し、記録媒体の裏面(インク非転写面)側から調温してもよい。また、記録媒体の搬送路に冷媒やヒーター、IRレーザー等を配設し、記録媒体のインク転写面側から調温してもよい。さらに、インクジェット記録装置に設置前の記録媒体を、所定の温度に調温しておいてもよい。インク転写時にも記録媒体を調温可能であるとの観点から、記録媒体の裏面側からの調温が好ましい。
記録媒体の種類は、特に制限されない。記録媒体の例には、普通紙、上質紙、コート紙、アート紙等の紙製の基材;基紙の両面を樹脂等で被覆した樹脂コート紙;各種貼合紙;合成紙;各種プラスチックフィルム;金属製基材;ガラス製基材等が含まれる。プラスチックフィルムの例には、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、二軸延伸ポリスチレン(OPS)フィルム、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、二軸延伸ナイロン(ONY)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム等が含まれる。
中間転写媒体から記録媒体にインクを転写する際の記録媒体の搬送速度は、500〜3000mm/sであることが好ましい。搬送速度が速いほど画像形成速度が速まるので好ましいが、搬送速度が速すぎると、画像品質が低下したり、インクの硬化が不十分になったりする。
(3)硬化工程について
中間転写媒体から記録媒体に転写されたインクに、活性光線を照射し、インクを硬化;すなわち、インク液滴に含まれる光重合性化合物を架橋又は重合させる。インクを硬化させることにより、硬度が高く、耐擦性に優れた印刷画像が得られる。
活性光線の照射は、全ての画像が記録媒体に転写されてから行うことが好ましい。例えば図1または図2に示すように、1つの中間転写媒体11に、複数色のインクを着弾させて転写する場合、中間転写媒体11の下流側に活性光線照射装置を配置し、画像を全て転写し終えてから活性光線を照射することが好ましい。また図3に示すように、複数の中間転写媒体11から記録媒体12にインクを転写する場合、全ての中間転写媒体からインクを転写した後に、活性光線を照射することが好ましい。
全てのインクを転写する前に活性光線を照射すると、後から転写したインク液滴が、先に硬化した膜に弾かれて、画質が乱れたり、光沢均質感が低下することがある。
インクに照射する活性光線は、特に制限はなく、例えば電子線、または紫外線であることが好ましい。
電子線の照射方式は、特に制限がなく、例えばスキャニング方式、カーテンビーム方式、ブロードビーム方式でありうるが、処理能力の観点からカーテンビーム方式が好ましい。また、電子線照射時の加速電圧は、30〜250kVの範囲に設定することが好ましく、より好ましくは、30〜100kVである。また加速電圧が100〜250kVの通常の電子線照射を行う場合、電子線照射量は30〜100kGyであることが好ましく、30〜60kGyであることがより好ましい。
電子線照射手段の例には、日新ハイボルテージ(株)製の「キュアトロンEBC−200−20−30」、AIT(株)製の「Min−EB」等が含まれる。
紫外線照射用の光源は、特に制限されない。光源の例には、蛍光管(低圧水銀ランプ、殺菌灯)、冷陰極管、紫外レーザー、数100Paから1MPaまでの動作圧力を有する低圧、中圧、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、LED等が含まれる。活性光線硬化型インクを良好に硬化させるとの観点からは、照度が100mW/cm2以上である光源が好ましく、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、LEDが好ましい。中でも消費電力の少ないLEDが好ましい。
硬化後の画像の総膜厚は、2〜25μmであることが好ましい。「画像の総膜厚」とは、記録媒体上に形成された硬化膜の最大膜厚である。単色のみの画像であっても、複数色を重ねた画像であっても、総膜厚が上記範囲であることが好ましい。
インクジェット記録装置について
本発明の画像形成方法は、活性光線硬化型インクジェット方式のインクジェット記録装置を用いて行うことができる。
図1は、インクジェット記録装置の構成の一例を示す図であり、図1(a)は側面図であり、図1(b)は上面図である。図1に示されるように、インクジェット記録装置10は、複数のインクジェット記録ヘッド14を収容するヘッドキャリッジ16と、ヘッドキャリッジ16に接続したインク流路30と、インク流路30を通じて供給するインクを貯留するインクタンク31と、インクジェット記録ヘッド14から吐出されたインクを受け、これを記録媒体12に転写する中間転写媒体11と、記録媒体12を搬送する搬送部材15と、中間転写媒体11の(記録媒体の搬送方向)下流側に配置された光照射部18と、記録媒体12の下面に配置された温度制御部19とを有する。さらに、中間転写媒体11の(記録媒体の搬送方向)下流側には、クリーニング部材13が配置される。
ヘッドキャリッジ16は、中間転写媒体11の全幅を覆うように固定配置されており、複数のインクジェット記録ヘッド14を収容する。インクジェット記録ヘッド14にはインクが供給されるようになっている。たとえば、インクジェット記録装置10に着脱自在に装着された不図示のインクカートリッジ等から、直接又は不図示のインク供給手段によりインクが供給されるようになっていてもよい。
インクジェット記録ヘッド14は、各色ごとに、記録媒体12の搬送方向に複数配置される。記録媒体12の搬送方向に配置されるインクジェット記録ヘッド14の数は、インクジェット記録ヘッド14のノズル密度と、印刷画像の解像度によって設定される。例えば、液滴量2pl、ノズル密度360dpiのインクジェット記録ヘッド14を用いて1440dpiの解像度の画像を形成する場合には、記録媒体12の搬送方向に対して4つのインクジェット記録ヘッド14をずらして配置すればよい。また、液滴量6pl、ノズル密度360dpiのインクジェット記録ヘッド14を用いて720×720dpiの解像度の画像を形成する場合には、2つのインクジェット記録ヘッド14をずらして配置すればよい。dpiとは、2.54cm当たりのインク液滴(ドット)の数を表す。
インクタンク31は、ヘッドキャリッジ16に、インク流路30を介して接続されている。インク流路30は、インクタンク31中のインクをヘッドキャリッジ16に供給する経路である。インク液滴を安定して吐出するため、インクタンク31、インク流路30、ヘッドキャリッジ16及びインクジェット記録ヘッド14のインクを所定の温度に加熱して、ゾル状態を維持する。
中間転写媒体11は、ヘッドキャリッジ16と記録媒体12との間に配置されている。中間転写媒体11はインクジェット記録ヘッド14から吐出されたインクが着弾するインク着弾面を有し、このインク着弾面は、インク着弾後、一定方向(図1中、矢印で示す方向)に搬送されて、記録媒体12と圧着される。このとき、記録媒体12とインク着弾面との間には、所定の圧力(ニップ圧)がかけられる。ニップ圧の調整は、記録媒体12と中間転写媒体11との距離等で調整する。中間転写媒体11の内部、または外部には、インク着弾時の中間転写媒体11の温度を調整するための中間転写媒体用温度制御部(図示せず)が設けられる。中間転写媒体用温度制御部は、例えば各種ヒータ等でありうる。
搬送部材15は、一定速度で記録媒体12を中間転写媒体11及び光照射部18側に搬送するよう、配置されている。搬送部材15の下面には、温度制御部19が配置されている。温度制御部19は、記録媒体12の温度を所定の温度に維持する。温度制御部19は、例えば各種ヒータ等でありうる。
光照射部18は、記録媒体12の全幅を覆い、かつ記録媒体12の搬送方向について中間転写媒体11の下流側に配置されている。光照射部18は、記録媒体12に転写されたインク液滴に光を照射し、液滴を硬化させる。
クリーニング部材13は、中間転写媒体11の(記録媒体の搬送方向)下流側に配置され、中間転写媒体11の表面に付着した転写残留物(活性光線硬化型インクジェットインク等)をブレード等で払拭除去する。クリーニング部材13には、通常、転写残留物を回収する回収部(図示せず)が併設される。転写残留物を払拭除去する部材は、ブレードに限定されず、例えばブラシロール、エアーナイフ、粘着ロール等でありうる。
以下、インクジェット記録装置10を用いた画像形成方法を説明する。記録媒体12を、インクジェット記録装置10の搬送部材15と中間転写媒体11との間に搬送する。このとき、記録媒体12の温度を、温度制御部19により調整する。
一方で、ヘッドキャリッジ16のインクジェット記録ヘッド14から高温のインク液滴を吐出して、中間転写媒体11上に付着(着弾)させる。インク液滴吐出終了後、中間転写媒体11のインク着弾面を一定方向(図1中、矢印で示す方向)に回転させる。そして、記録媒体12と中間転写媒体11とを圧着させて、中間転写媒体11上のインク液滴を、記録媒体12に転写する。この記録媒体12を、光照射部18側に移動させ、記録媒体12上に付着したインク液滴に光を照射して硬化させる。中間転写媒体11に付着している転写残留物は、クリーニング部材13で払拭除去する。
図2は、インクジェット記録装置の要部の構成の他の例を示す図である。図2に示されるように、インクジェット記録装置20は、ベルト状の中間転写媒体11の代わりに、ドラム状の中間転写媒体11を有する以外は、図1と同様に構成される。
図3は、インクジェット記録装置の要部の構成の他の例を示す図である。図3に示されるように、インクジェット記録装置30は、ベルト状の中間転写媒体11の代わりに、複数のドラム状の中間転写媒体11が配設されている。各ヘッドキャリッジ16と、各中間転写媒体11が対応しており、それぞれの中間転写媒体11から記録媒体12にインクを転写する以外は、図1と同様に構成される。
以下において、実施例を参照して本発明をより詳細に説明するが、これらの記載によって本発明の範囲は限定して解釈されない。
以下の成分により、各活性光線硬化型インクジェットインクを調製した。
(光重合性化合物)
モノマー
・NKエステルA−400(新中村化学社製):ポリエチレングリコールジアクリレート(ClogP値:0.47)
・SR499(Sartomer社製):6EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(ClogP値:3.57)
・SR494(Sartomer社製):4EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(ClogP値:2.28)
・OXT221(東亜合成社製):3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン
・セロキサイド2021P(ダイセル社製):3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート
オリゴマー
・ウレタンアクリレートオリゴマー
・エポキシアクリレートオリゴマー
(ゲル化剤)
・ルナックBA(花王社製):ベヘニン酸
・カオーワックスT1(花王社製):ジステアリルケトン
・ステアリン酸アミド
・ITOHWAX J−700(伊藤製油製):N,N’−キシリレン−ビス−12−ヒドロキシステアリルアミド
(光重合開始剤)
・DAROCUR TPO(BASF社製)
・ITX(DKSHジャパン社製)
・DAROCUR EDB(BASF社製)
・CPI−100P(サンアプロ社製)
(界面活性剤)
・KF−352(信越化学社製)
・X−22−4272(信越化学工業社製)
(増感助剤)
・DEA(ジエトキシアントラセン、川崎化成工業社製)
(顔料分散液1の調製)
以下に示す顔料分散剤、光重合性化合物、及び重合禁止剤をステンレスビーカーに入れ、65℃のホットプレートで加熱しながら、1時間加熱攪拌した。
・顔料分散剤:アジスパーPB824(味の素ファインテクノ社製) 9部
・光重合性化合物:APG−200(トリプロピレングリコールジアクリレート、新中村化学社製) 70部
・重合禁止剤:Irgastab UV10(チバ・ジャパン社製) 0.02部
上記混合液を室温まで冷却した後、これにPigment Red 122(大日精化製、クロモファインレッド6112JC)を21質量部加えた。混合液を、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて8時間分散処理した。その後、ジルコニアビーズを除去して顔料分散液1を作製した。
(顔料分散液2の調製)
以下に示す顔料分散剤、及び光重合性化合物をステンレスビーカーに入れ、65℃のホットプレートで加熱しながら、1時間加熱攪拌した。
・顔料分散剤:アジスパーPB824(味の素ファインテクノ社製) 9質量部
・光重合性化合物:OXT221(オキセタン化合物、東亞合成社製) 70質量部
上記混合液を室温まで冷却した後、これにPigment Red 122(大日精化製、クロモファインレッド6112JC)を21質量部加えた。混合液を、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて8時間分散処理した。その後、ジルコニアビーズを除去して顔料分散液2を作製した。
[ラジカル重合型インクジェットインクの調製]
下記表1に記載の組成比で各化合物を混合し、100℃に加熱して攪拌した。その後、得られた液体を加熱下、#3000の金属メッシュフィルターでろ過した。これを冷却して、ラジカル硬化型インクジェットインクを調製した。
上記方法で調製したインクについて、以下の方法でゲル化温度、及びインク粘度を測定した。
温度制御可能なストレス制御型レオメータ(PhysicaMCR300、Anton Paar社製)にインクをセットし、これを100℃に加熱した。その後、降温速度0.1℃/sで25℃まで冷却しながら粘度及び動的粘弾性を測定した。このとき、シェアレートは11.7s−1とした。測定には、直径75mm、コーン角1°のコーンプレート(CP75−1、Anton Paar社製)を用いた。温度は、PhysicaMCR300に付属のペルチェ素子型温度制御装置(TEK150P/MC1)で制御した。測定により得られた粘度曲線から、粘度が急激に増加する温度を読み取り、粘度が500mPa・sを示す温度をゲル化温度とした。また、動的粘弾性測定で得られた温度変化曲線から、温度25℃、47℃、及び60℃における貯蔵弾性率の値を読み取った。上記方法により得られた結果を表1に示す。
[実施例1〜5、7、8、比較例1〜7、及び参考例1〜5]
図1に示すピエゾ型のインクジェット記録ヘッドを備えたラインヘッド方式のインクジェット記録装置のマゼンタ用ヘッドキャリッジに、マゼンタインクを装填し、単色画像を形成した。インク供給系は、インクタンク、供給パイプ、記録ヘッド直前の前室インクタンク、フィルター付き配管、及びピエゾヘッドからなるものとし、インク供給系の前室インクタンクから記録ヘッド部分まで断熱して、80℃に加温した。また、ピエゾヘッドにもヒーターを内蔵させ、記録ヘッド内のインクも加熱した。
また、記録ヘッドには、ノズル径24μm、解像度512dpiのピエゾヘッドを千鳥に配置し、1200dpi×1200dpiの記録解像度とした。ヘッドから吐出するマゼンタインクの液滴量は1滴当たり3.5plとし、液滴の吐出速度は、6m/secとした。中間転写媒体は、ポリイミドフィルムの表面にシリコーン樹脂をコーティングしたベルトとした。
記録媒体は、印刷用コート紙A(OKトップコート 米坪量84.9g/m2 王子製紙社製)、印刷用コート紙B(ニューエイジ 米坪量104.7g/m2 王子製紙社製)、アート紙(SA金藤 米坪量104.7g/m2 王子製紙社製)とした。
まず、記録ヘッドからインク液滴を中間転写媒体に吐出し、所定の画像を形成した。その後、インク液滴を中間転写媒体から記録媒体に転写した。記録媒体にインク液滴を転写後、記録装置の下流部に配置したLEDランプ(浜松ホトニクス社製385nm、記録媒体とランプの距離2mm、最大出力3800mW/cm2(浜松ホトニクス社製 紫外線積算光量計:C9536−02で測定))により紫外線を照射してインク液滴を硬化させた。記録媒体の搬送速度は500mm/sとした。また、前記画像形成は、23℃、55%RHの環境下で行った。
インク液滴を付着させる際の中間転写媒体の温度、中間転写媒体からインク液滴を転写する際の記録媒体の温度、中間転写媒体から記録媒体へインク液滴を転写する際の中間転写媒体と記録媒体とのニップ圧を、下記表2に示す。
各条件で印刷した画像について、以下のように文字品質、光沢均質感、及びレリーフ感を評価した。
(文字品質の評価)
印刷用コート紙A、コート紙B、及びアート紙に、MS明朝体の3ポイント、5ポイントの「優」という文字を印刷した。得られた文字を目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:3ポイント文字でも細部の潰れなく再現できている
△:3ポイント文字では細部が潰れているが、5ポイント文字では潰れなく再現できている
×:5ポイント文字でも細部が潰れている
(光沢均質感の評価)
印刷用コート紙A、コート紙B、及びアート紙に、2cm×2cmの面積でドット率を0%、10%、20%、30%、50%、70%、100%と変化させた濃度階調パッチを作製した。作製した画像を目視で確認し、下記の基準で評価した。なおドット率とは出力データのピクセル濃度の事を指す。
○:全てのドット率において均質感のある光沢が得られ、均質な光沢である
△:一部、キラキラ感やマット感が気になる部分がある
×:キラキラ感やマット感が顕著で光沢が不均質であり、実用に耐えない品質である
(レリーフ感の評価)
印刷用コート紙A、コート紙B、アート紙に自然画(財団法人・日本規格協会発行の高精細カラーデジタル標準画像データ「カフェテリア」)の画像をアドビ社フォトショップ7.0でグレースケールに変換した画像を作製した。作製した画像を目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:レリーフ感がなく滑らかな画像品質である
△:僅かに凹凸感のある部分がある
×:全体に凹凸が大きくレリーフ感が顕著であり、実用に耐えない品質である。
表2に示されるように、中間転写媒体の温度におけるインクの粘度が、1×103mPa・sより低い場合(比較例1、2、4、及び7)は、文字品質が低かった。中間転写媒体上で隣り合う液滴同士が混じり合ったため、文字品質が低下したと推察される。また、中間転写媒体の温度におけるインクの貯蔵弾性率が3×101Paより低い場合(比較例1)、光沢均質感の評価も低かった。ゲル化後の弾性が小さいため、液滴同士が合一して、光沢ムラが生じたと推察される。
一方で、中間転写媒体の温度におけるインクの貯蔵弾性率が3×103Pa以上であった場合(比較例3、5、及び6)には、文字品質は良好であったものの、光沢均質感及びレリーフ感の評価が悪かった。インクの貯蔵弾性率が高すぎたため、インク液滴が変形し難く、インク転写時に塗膜が平滑化されなかったと推察される。
また、インク転写時の中間転写媒体と記録媒体とのニップ圧が0.1MPa未満である場合(実施例1及び実施例4)には、実用上問題がないものの、文字品質や光沢均質感が低下する場合があった。ニップ圧が小さすぎたため、インク転写時に塗膜が平滑化されなかったと推察される。
一方、インク転写時のニップ圧が0.5MPa以上である場合(実施例7及び実施例8)には、文字の鮮鋭性が若干低下した。ニップ圧が高すぎたために、画像が滲んだと推察される。
インク着弾時の中間転写媒体の温度が比較的低い(25℃)場合(参考例2及び4)、文字品質が比較的良好であったが、光沢均質感が少ない場合があり、レリーフ感も多少見られた。インク着弾時の中間転写媒体の温度が低いと、ゾルゲル相転移が素早く行われる。そのため、中間転写媒体上の塗膜が、比較的大きな凹凸や段差を有し、この段差や凹凸が、転写時に十分に平滑化されなかったと推察される。
一方、インク着弾時の中間転写媒体の温度が比較的高い(60℃)場合(参考例5)、光沢均質感が比較的良好となり、レリーフ感も少なかった。一方で、文字品質が若干低下した。インク着弾時の中間転写媒体の温度が高かったため、着弾したインクのピニング性が若干低下した、と推察される。
また、インク転写時に、中間記録媒体の温度より記録媒体の温度が高いと、文字が若干滲みやすかった。また光沢均質感が若干低下し、レリーフ感も多少見られた。中間記録媒体の温度より記録媒体の温度が高かったため、インクの転写性が低下した、と推察される。
[カチオン重合型インクの調製]
下記表3に記載の組成比で各化合物を混合し、100℃に加熱して攪拌した。その後、得られた液体を加熱下、#3000の金属メッシュフィルターでろ過した。これを冷却して、インクを調製した。各インクについて、ラジカル重合型インクと同様の方法で、ゲル化温度、インク粘度、及び貯蔵弾性率を測定した。
[実施例13、14、比較例8〜10、参考例6]
図3に示すインクジェット記録装置のマゼンタ用ヘッドキャリッジに、マゼンタインクを装填し、単色画像を形成した。インク供給系は、インクタンク、供給パイプ、記録ヘッド直前の前室インクタンク、フィルター付き配管、及びピエゾヘッドからなるものとし、インク供給系の前室インクタンクから記録ヘッド部分まで断熱して、80℃に加温した。また、ピエゾヘッドにもヒーターを内蔵させ、記録ヘッド内のインクも加熱した。
また、記録ヘッドには、ノズル径24μm、解像度512dpiのピエゾヘッドを千鳥に配置し、1200dpi×1200dpiの記録解像度とした。ヘッドから吐出するマゼンタインクの液滴量は1滴当たり3.5plとし、液滴の吐出速度は、6m/secとした。中間転写媒体は、ステンレス製のドラムの表面にシリコーン樹脂をコーティングしたものとした。
記録媒体は、印刷用コート紙A(OKトップコート 米坪量84.9g/m2 王子製紙社製)、印刷用コート紙B(ニューエイジ 米坪量104.7g/m2 王子製紙社製)、アート紙(SA金藤 米坪量104.7g/m2 王子製紙社製)とした。
まず、記録ヘッドからインク液滴を中間転写媒体に吐出し、所定の画像を形成した。その後、インク液滴を中間転写媒体から記録媒体に転写した。記録媒体にインク液滴を転写後、記録装置の下流部に配置したLEDランプ(浜松ホトニクス社製385nm、記録媒体とランプの距離2mm、最大出力3800mW/cm2(浜松ホトニクス社製 紫外線積算光量計:C9536−02で測定))により紫外線を照射してインクを硬化した。記録媒体の搬送速度は600mm/sとした。また、前記画像形成は、23℃、55%RHの環境下で行った。
インク液滴を付着させる際の中間転写媒体の温度、中間転写媒体からインク液滴を転写する際の記録媒体の温度、中間転写媒体から記録媒体へインク液滴を転写する際の中間転写媒体と記録媒体とのニップ圧を、下記表4に示す。
得られた印刷画像について、実施例1と同様に、文字品質、光沢均質感、及びレリーフ感を評価した。結果を表4に示す。
表4に示されるように、中間転写媒体の温度におけるインク貯蔵弾性率が3×103Pa以上であった場合(比較例8及び9)には、文字品質は良好であったものの、光沢均質感及びレリーフ感の評価が悪かった。インクの硬度が高く、塗膜が平滑化され難かったと推察される。
一方、中間転写媒体の温度における粘度が1×103mPa・sより低い場合(比較例10)、文字品質が低く、光沢ムラが見られた。中間転写媒体における粘度が低すぎたため、中間転写媒体上で隣り合う液滴同士が混じり合ったと推察される。
また、インク着弾時の中間転写媒体の温度が比較的低い(25℃)場合(参考例6)、文字品質は比較的良好であったが、光沢均質感が少ない場合があり、さらにレリーフ感も多少見られた。インク着弾時の中間転写媒体の温度が低いと、ゾルゲル相転移が素早く行われる。そのため、中間転写媒体上の塗膜が、比較的大きな凹凸や段差を有し、この段差や凹凸が、転写時に十分に平滑化されなかったと推察される。