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JP5725406B2 - インク組成物 - Google Patents

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JP5725406B2
JP5725406B2 JP2011054245A JP2011054245A JP5725406B2 JP 5725406 B2 JP5725406 B2 JP 5725406B2 JP 2011054245 A JP2011054245 A JP 2011054245A JP 2011054245 A JP2011054245 A JP 2011054245A JP 5725406 B2 JP5725406 B2 JP 5725406B2
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Description

発明の背景
発明の分野
本発明は、各種記録媒体、とりわけ合成紙や印刷本紙のような非吸水性または低吸水性記録媒体においても、良好な定着性を有する記録物を得ることができるインク組成物に関する。
背景技術
インクジェット記録方法は、インク小滴を飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて印刷を行う印刷方法である。近年のインクジェット記録技術の革新的な進歩により、これまで銀塩写真やオフセット印刷によって実現されてきた高精細印刷の分野においてもインクジェット記録方法が用いられるようになっている。それに伴い、銀塩写真やオフセット印刷の分野で用いられてきた印画紙やアート紙等に匹敵する高光沢性の記録媒体、いわゆる専用紙をインクジェット記録に使用して、銀塩写真並の光沢感を有する画像を実現できるインクジェット記録用のインクが開発されている。また、普通紙を用いた場合であっても、銀塩写真並の画質を実現できるインクジェット記録用のインクが開発されている。
ところで、近年、デジタルデータからの画像形成技術が普及したことに伴い、特に印刷分野では、デスクトップパブリッシング(DTP)が普及しつつある。DTPにより印刷を行う場合であっても、実際の印刷物との光沢感や色感を確認するために、事前に色校正用プルーフを作製することが行われている。このプルーフの出力に、インクジェット記録方式を適用することが行われており、DTPにおいては印刷物の色再現性の高さ、色の安定性の高さが求められることから、記録媒体として、通常、インクジェット記録用の専用紙が使用されている。
インクジェット記録用の専用紙であるプルーフ用紙は、印刷本紙に実際に印刷した出力物と光沢感や色感が同じになるように作製されている。このように、印刷本紙の種類に応じて専用紙の材質が適宜調整されているが、多種多様の印刷本紙に全て対応した専用紙を作製するのは製造コストの上昇を招く。そこで、色校正用途においては、専用紙よりも印刷本紙にインクジェット記録を行いたいとの技術的観点における要望がある。また、専用紙を用いずに、直接印刷本紙にインクジェット記録を行ったものを最終校正見本とできれば、校正にかかるコストを大幅に低減できるとの経済的観点における要望がある。また、印刷分野で広く使用されている、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂やポリエステル樹脂に無機フィラー等を混合してフィルム化した合成紙は、リサイクル性に優れ、環境に優しい材料として近年注目されている。このような合成紙に記録を行いたいとの環境的観点における要望がある。
印刷本紙は、その表面に油性インクを受容するための塗工層が設けられた塗工紙であるが、吸水性が乏しいという特徴を有する。そのため、インクジェット記録に一般的に用いられている水性の顔料インクを使用すると、記録媒体(印刷本紙)へのインクの浸透性が低く、画像に滲みや凝集斑が生じる場合がある。
上記の問題に対し、例えば、特開2005−194500号公報(特許文献1)には、界面活性剤としてポリシロキサン化合物を用い、溶解助剤として1,2−ヘキサンジオール等のアルカンジオールを添加することにより、滲みが改善され、かつ専用紙に対する光沢性にも優れる顔料系インクが開示されている。また、特開2003−213179号公報(特許文献2)、特開2003−253167号公報(特許文献3)、または特開2006−249429号公報(特許文献4)には、グリセリンや1,3−ブタンジオール等のジオールやペンタントリオール等のトリオールアルコール溶剤をインク中に添加することにより、インクの記録媒体への浸透性を制御し、高品質な画像が得られることが提案されている。しかしながら、未だ、更なる良好な定着性を有する記録物が得られるインク組成物は希求されているといえる。
ところで、レシート、チケット、クーポン、タグ、ラベル等をその場で印刷し、即座に最終顧客に提供するオンデマンドラベル市場における用途には、感熱紙プリンターが使用されている。しかしながら、感熱紙プリンターによる印刷物は、コンテナ等の荷室で高温放置される環境下では使用することができない場合や、常温下においても、長期間の放置では変色する場合がある。インクジェット記録用インク組成物においては、高品質な画像を得るため様々な改良が行われているが、オンデマンドラベル市場における用途に用いるためにはインクの定着性の点で更なる改良が求められている。
また、オンデマンドラベル市場においては、プリンターが設置される場所が臭気に敏感である場合が多い。また、溶剤が揮発し易いことは、速乾性の点で好ましいが、財布等に印刷物がしまい込まれた場合には、紙に残存した溶剤が、財布の接着剤や、財布等に印刷物が接している物質に、好ましくない影響を及ぼす可能性がある。
特開2005−194500号公報 特開2003−213179号公報 特開2003−253167号公報 特開2006−249429号公報
本発明者らは、今般、インク組成物に第1の糖質と、第2の糖質とを含むことにより、各種記録媒体、とりわけ合成紙や印刷本紙のような非吸水性または低吸水性記録媒体においても良好な定着性を有する記録物が実現できるとの知見を得た。
したがって、本発明の目的は、各種記録媒体、とりわけ合成紙や印刷本紙のような非吸水性または低吸水性記録媒体においても、良好な定着性を有する記録物が実現できるインク組成物を提供することにある。
そして、本発明によるインク組成物は、第1の糖質と、第2の糖質とを含んでなるインク組成物である。
本発明のインク組成物によれば、各種記録媒体、とりわけ合成紙や印刷本紙のような非吸水性または低吸水性記録媒体においても、良好な定着性を有する記録物を提供できる。また、本発明のインク組成物は、定着性に優れ、溶剤は必ずしも必要でないことから、インク組成物中の溶剤の量を減少させることが好ましいと考えられるオンデマンドラベル市場においても十分に用いることができるものである。
発明の具体的説明
<定義>
本明細書において、アルカンジオールの炭化水素基部分は、直鎖または分枝鎖のいずれであってもよい。
また、本明細書において、「非吸水性または低吸水性の記録媒体」とは、水性インクの受容層を備えていない、あるいは、水性インクの受容層が乏しい記録媒体をいう。より定量的には、非吸水性または低吸水性の記録媒体とは、記録面が、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である記録媒体を示す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。
<インク組成物>
本発明によるインク組成物は、第1の糖質と、第2の糖質とを含んでなる。各種記録媒体、とりわけ非吸水性または低吸水性の記録媒体においても、第1の糖質と、第2の糖質とを含むインク組成物を用いることにより、良好な定着性を有する記録物が実現できる。
<第1の糖質>
本発明によるインク組成物は、第1の糖質を含んでなるものであり、第1の糖質が、4糖以上の鎖状糖質であり、好ましくは4〜300糖であり、より好ましくは5〜300糖である。第1の糖質の分子量は、720〜54000であることが好ましく、900〜54000であることがより好ましい。本発明のインク組成物に含まれる第1の糖質は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば、ポリデキストロースは好ましい態様として例示できる。4糖以上の鎖状糖質を用いることにより、本発明のインク組成物の曳糸性が担保でき、良好な定着性を有する記録物を実現できる。
ここで、ポリデキストロースとは、クエン酸のようなポリカルボン酸を触媒として、グルコースを溶融状態(高温減圧下)で重合することで得られるグルコース重合体であり、グルコースはランダムに結合していることから、高度に分岐した重合体となっている。好ましいポリデキストロースとしては、その水溶液が低粘度となることから、ソルビトールのようなポリオールと、グルコースとの重合体である。製造方法としては、例えば、85〜95質量%のグルコースと、5〜15重量%のソルビトールと、0.5〜3.0質量%のクエン酸とを溶融状態(高温減圧下)で重合することで得ることが可能である。また、より好ましいポリデキストロースとしては、ソルビトールとグルコースとの重合体の還元ポリデキストロースである。還元ポリデキストロースはポリデキストロースを水素添加することで得られ、水素添加の方法は、ブドウ糖からソルビトールを製造する工業的方法を用いることが可能である。還元ポリデキストロースの製造方法としては、ニッケル触媒を使用した常法(高温高圧下)により、ソルビトールとグルコースとの重合体を水素添加することで得ることが可能である。
また、上記のポリデキストロースは精製されたものが好ましく、活性炭処理(脱色処理)やイオン交換樹脂処理(クエン酸除去)をすることで、インクに好適に用いることができる。
また、上記のポリデキストロースとしては、市販品を用いることも可能であり、米国ファイザー社製のポリデキストロース、ダニスコジャパン社製のライテス、ライテスII、ライテスIII(いずれも商標名)等を用いることができる。とりわけ、ライテスIIIは、脱色およびクエン酸除去を行った還元ポリデキストロースであるため、好適に用いることができる。
本発明の好ましい態様によれば、第1の糖質は、上記の効果を奏する限りにおいて、適宜決定されてよいが、インク組成物全体に対し、3.0〜18.0質量%含有されていることが好ましく、さらに好ましくは、3.0〜9.0質量%であり、一層好ましくは6.0〜9.0質量%である。第1の糖質の量を上記範囲とすることにより定着性に優れた記録物を得ることができる。また、第1の糖質のインク組成物中の含有量を9.0質量%とすることにより、より一層優れた非吸水性または低吸水性記録媒体での乾燥定着性を得ることができる。
<第2の糖質>
本発明によるインク組成物は、第2の糖質を含んでなるものであり、第2の糖質がトレハロース、マルトトリオース、および環状糖質からなる群から選択される1種以上である。
トレハロースは、グルコースの1位同士がグルコシド結合をした非還元性の二糖類である。非還元糖であるため、メイラード反応による褐色変化が起きないことから、インクの保存安定性の観点から好ましい。また、水への溶解度および保水力が高く、吸湿性が極めて低い特性を有する。具体的には、高純度のトレハロース無水物は、水への溶解度(69g/100g(20℃))は非常に高いが、湿度が95%以下では吸湿性を示さない。したがって、トレハロースが水に接触した場合は、水を吸収し、ゲルとなるが、通常の環境(20℃、湿度が45%程度)では吸湿性を示さないために安定に存在することができる。
トレハロースの市販品としては、例えば、トレハ微粉(株式会社林原商事社製)が挙げられる。
また、トレハロースは、発酵法、加水分解法、糖転移反応法、糖縮合反応法、エピメラーゼ(異性化)法、重合法、化学架橋法などの定法により、澱粉糖から製造することが可能である。また、固形化も定法により製造可能である。つまり、糖質を含む溶液であるマスキットを噴霧乾燥する方法や、マスキットの水分を自然乾燥することでブロック状に晶出固化させ粉砕する方法、溶融状態のマスキットから種結晶を用いて再結晶化する方法等を用いることが可能である。
マルトトリオースの市販品としては、例えば、オリゴトース(三和澱粉工業株式会社製)が挙げられる。また、マルトトリオースはトレハロースと同様に定法により製造することが可能である。
環状糖質は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、シクロデキストリン類が好ましい。シクロデキストリン類とは、環状オリゴ糖であり、好ましくは、包接能を有する化合物である。シクロデキストリン類はグルコース分子がα−1,4グルコシド結合で結合することにより基本骨格を形成しており、グルコース分子の個数に応じて、α−シクロデキストリン(6個)、β−シクロデキストリン(7個)、γ−シクロデキストリン(8個)、δ−シクロデキストリン(9個)と呼ばれる(括弧内はそれぞれグルコース分子の個数を表す)。
シクロデキストリン類は、一般に、その環状構造の外部が親水性を示し、その環状構造の内部が疎水性(親油性)を示すという特異的な構造を有している。上記の特異的な構造に由来して、シクロデキストリン類は環状構造の内径より小さい親油性分子を包みこむように取り込み、複合化することができる場合が多い。また前記環状構造の内径より大きい分子であっても、環状構造の内径より小さい親油性部分があれば、その部分がシクロデキストリン類の内部に取り込まれ、複合化する場合が多い。なお、シクロデキストリン類の内径は、例えば、α−シクロデキストリンが4.7〜5.3Å、β−シクロデキストリンが6.0〜6.5Å、γ−シクロデキストリンが7.5〜8.3Åである。
本発明で用いられるシクロデキストリン類としては、特に限定されないが、例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、およびδ−シクロデキストリンからなる群から選択される一種または二種以上を用いることが可能であり、一つ以上の置換基を有することが好ましい。シクロデキストリン類が有する置換基の例としては、アシル基、ヒドロキシルアルキル基、アルキル基、グルコシル基、アミノ基、およびカルボキシメチル基が挙げられる。また、エピクロルヒドリンや多価グリシジルエーテルなどの架橋剤にて架橋したシクロデキストリンポリマー、グルコース、マルノースなどの分岐側鎖を有する分岐シクロデキストリン、高度分岐環状デキストリン等であってもよい。
上述のシクロデキストリン類の一種または二種以上を用いることが可能である。好ましい置換基としては、アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。特に、水に対する高い溶解性(25℃で30質量%以上)の観点から、メチル−β−シクロデキストリンが一層好ましい。
第2の糖質の製造方法としては、特に限定されないが、製造の容易さ、コストなどの観点から適宜選択されるものである。置換基を有さないシクロデキストリン類の製造方法としては、例えば、デンプンにBacillus macerans由来の酵素を作用させる方法を用いることが可能である。置換基を有する第2の糖質を製造する方法としては、例えば、糖質の水酸基の一部が脱プロトン化されている糖質またはその誘導体を反応中間体として反応させる製造方法を用いることが可能である。なお、第2の糖質は市販品を用いても良く、例えば、CAVASOLやCAVAWAX(いずれもワッカー社製)が挙げられる。
本発明の好ましい態様によれば、第2の糖質は、上記の効果を奏する限りにおいて、適宜決定されてよいが、インク組成物全体に対し、3.0〜18.0質量%含有されていることが好ましく、3.0〜9.0質量%含有されていることがより好ましい。特に、第2の糖質の含有量を3.0〜9.0質量%とすることにより、乾燥定着性の観点からより好ましい。さらに好ましくは、第2の糖質が環状糖質であり、その環状糖質が、メチル化βシクロデキストリンであって、かつ環状糖質が、インク組成物に対して、3.0〜9.0質量%含有するインク組成物である。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記第1の糖質と、前記第2の糖質との含有量比は、特に限定されないが、3:1〜1:3であることが好ましく、さらに好ましくは、1:1〜1:3である。前記第1の糖質と、前記第2の糖質との含有量比を1:1〜1:3とすることにより、より定着性に優れた記録物を得ることができる。
その他の糖質
本発明のインク組成物には、上記第1の糖質および第2の糖質以外にも、本発明の効果を奏する限り、糖質を加えることができる。その他の糖質としては、例えば、20℃、相対湿度が60%において、すなわち20℃、相対湿度が60%の環境下で静置しても固体である糖質が挙げられる。
その他の糖質としては、例えば、イソトレハロース、ネオトレハロース、およびマンニトールからなる群から選択される一種または二種以上である。また、例えば、トレハロースと、マルトースとからなるマルトシルトレハロースであってもよい。
また、イソトレハロースおよびネオトレハロースは、グルコシド結合をした非還元性の二糖類である。非還元糖であるため、メイラード反応による褐色変化が起きないことから、インクの保存安定性の観点から好ましい。
別のその他の糖質としては、例えば、マルトトリオース以外のα-1,4結合のみの直鎖型マルトオリゴ糖が挙げられ、マルトース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘブタオース、マルトオクタオース、マルトノナオース、マルトデカオースなどがある。また、その他の糖質としては、アミロペクチンの分岐部分から得られる分子内にα-1,6結合をもつ分岐型マルトオリゴ糖であってもよく、例えば、イソマルトース、パノース(グルコシルーマルトース)、グルコシルーマルトトリオースが挙げられる。また、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、およびスクロースなどがある。これらの中でも、マルトテトラオースおよびマルトペンタオースからなる群から選択される一種以上が、吸湿性に優れることから好ましい。また、これらの還元糖であってもよい。
<水溶性のアルカンジオール>
本発明の好ましい態様によれば、本発明によるインク組成物は、第1の糖質と、第2の糖質とに加えて、水溶性のアルカンジオールを含んでいてもよい。
本発明の好ましい態様によれば、水溶性のアルカンジオールは、両末端または片末端アルカンジオールであり、分岐鎖を有するものがより好ましい。また、本発明の水溶性のアルカンジオールは、炭素数3以上のアルカンジオールが好ましく、より好ましくは炭素数3〜6のアルカンジオールである。本発明によるインク組成物に含まれる水溶性のアルカンジオールは、好ましくは、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、および1,6−ヘキサンジオールが挙げられ、より好ましくは、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の水溶性のヘキサンジオールが挙げられ、その中でも1,2−ヘキサンジオールが好ましい。また、高周波数での吐出安定性が優れる観点から、1,6−ヘキサンジオールであってもよい。1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールは、化粧品などにも使用実績が多いので、オンデマンドラベル市場に用いるインク組成物の成分として適した溶剤といえる。
<着色剤>
本発明によるインク組成物には着色剤を含んでもよい。着色剤としては、染料および顔料のいずれも使用することができるが、耐光性や耐水性の観点から顔料を好適に使用できる。また、着色剤は、前記顔料およびその顔料をインク中に分散させることが可能な下記分散剤を含んでなることが好ましい。
顔料としては、無機顔料および有機顔料を使用することができ、それぞれ単独または複数種を混合して用いることができる。前記無機顔料としては、例えば、酸化チタンおよび酸化鉄の他に、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラックが使用できる。また、前記有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料等)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等が使用できる。
顔料の具体例は、得ようとするインク組成物の種類(色)に応じて適宜挙げられる。例えば、イエローインク組成物用の顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1,2,3,12,14,16,17,73,74,75,83,93,95,97,98,109,110,114,128,129,138,139,147,150,151,154,155,180,185が挙げられ、これらの1種または2種以上が用いられる。これらのうち、特にC.I.ピグメントイエロー74,110,128、および129からなる群から選ばれる1種または2種以上を用いることが好ましい。また、マゼンタインク組成物用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド5,7,12,48(Ca),48(Mn),57(Ca),57:1,112,122,123,168,184,202,209;C.I.ピグメントバイオレット19が挙げられ、これらの1種または2種以上が用いられる。これらのうち、特にC.I.ピグメントレッド122,202,209、およびC.I.ピグメントバイオレット19からなる群から選ばれる一種または二種以上を用いることが好ましく、これらの固溶体であってもよい。また、シアンインク組成物用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1,2,3,15:2,15:3,15:4,15:34,16,22,60;C.I.バットブルー4,60が挙げられ、これらの1種または2種以上が用いられる。これらのうち、特にC.I.ピグメントブルー15:3および/または15:4を用いることが好ましく、とりわけ、C.I.ピグメントブルー15:3を用いることが好ましい。
また、ブラックインク組成物用の顔料としては、例えば、ランプブラック(C.I.ピグメントブラック6)、アセチレンブラック、ファーネスブラック(C.I.ピグメントブラック7)、チャンネルブラック(C.I.ピグメントブラック7)、カーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)等の炭素類、酸化鉄顔料等の無機顔料;アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料等が挙げられるが、本発明においては、カーボンブラックが好ましく用いられる。カーボンブラックとして、具体的には、#2650、#2600、#2300、#2200、#1000、#980、#970、#966、#960、#950、#900、#850、MCF-88、#55、#52、#47、#45、#45L、#44、#33、#32、#30、(以上、三菱化学(株)製)、SpecialBlaek4A、550、Printex95、90、85、80、75、45、40(以上、デグッサ社製)、Regal660、RmogulL、monarch1400、1300、1100、800、900(以上、キャボット社製)、Raven7000、5750、5250、3500、3500、2500ULTRA、2000、1500、1255、1200、1190ULTRA、1170、1100ULTRA、Raven5000UIII、(以上、コロンビアン社製)等が挙げられる。
顔料の濃度は、インク組成物を調製した際に、適宜な顔料濃度(含有量)に調整すればよいため特に限定されない。例えば、顔料濃度を1〜4%とすることで、粒状性が抑制された画像を得ることが可能である。一方、顔料濃度を4〜12質量%とすることで、発色性に優れた画像を得ることが可能である。
前記顔料は、後記する分散剤との混練処理がされた顔料であることが画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点から好ましい。
<分散剤>
本発明によるインク組成物は、着色剤を分散させるための分散剤としては、スチレン−アクリル酸系共重合樹脂(スチレンアクリル酸共重合樹脂)、オキシエチルアクリレート系樹脂(オキシエチル樹脂)、ウレタン系樹脂、およびフルオレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含んでなることが好ましく、より好ましくは、オキシエチルアクリレート系樹脂およびフルオレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含んでなる。これら共重合樹脂は、顔料に吸着して分散性を向上させる。
共重合体樹脂における疎水性モノマーの具体例としては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルアクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルアクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、iso−オクチルアクリレート、iso−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ジメチルアミノエチルアクリレート、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、2−ジエチルアミノエチルアクリレート、2−ジエチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルアクリレート、フエニルメタクリレート、ノニルフェニルアクリレート、ノニルフェニルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ボルニルアクリレート、ボルニルメタクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセロールアクリレート、グリセロールメタクリレート、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシエチル化オルトフェニルフェノールアクリレートなどを挙げることができる。これらは、単独でまたは二種以上を混合して用いてもよい。
親水性モノマーの具体例としては、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などを挙げることができる。
前記疎水性モノマーと親水性モノマーとの共重合樹脂は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、スチレン−メチルスチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、またはスチレン−マレイン酸共重合樹脂、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂、またはスチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂、ヒドロキシエチル化オルトフェニルフェノールアクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合樹脂のいずれかであることが好ましい。
前記共重合樹脂は、スチレンと、アクリル酸またはアクリル酸のエステルとを反応して得られる重合体を含む樹脂(スチレン−アクリル酸樹脂)であってもよい。あるいは、前記共重合樹脂は、アクリル酸系水溶性樹脂であってもよい。またはこれらのナトリウム、カリウム、アンモニウム、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン等の塩であってもよい。
前記共重合樹脂の酸価は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、好ましくは50〜320であり、一層好ましくは100〜250である。
前記共重合樹脂の重量平均分子量(Mw)は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、好ましくは2,000〜3万であり、より好ましくは2,000〜2万である。
前記共重合樹脂のガラス転移温度(Tg;JISK6900に従い測定)は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、好ましくは30℃以上であり、一層好ましくは50〜130℃である。
前記共重合樹脂は、顔料分散液中において顔料に吸着している場合と、遊離している場合とがあり、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、前記共重合樹脂の最大粒径は0.3μm以下であることが好ましく、平均粒径は0.2μm以下(さらに好ましくは0.1μm以下)であることが一層好ましい。なお、平均粒径とは、顔料が実際に分散液中で形成している粒子としての分散径(累積50%径)の平均値であり、例えば、マイクロトラックUPA(MicrotracInc.社)を使用して測定することができる。
前記共重合樹脂の含有量は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、前記顔料100質量部に対して、好ましくは20〜50質量部であり、一層好ましくは20〜40質量部である。
本発明においては、前記共重合樹脂として、オキシエチルアクリレート系樹脂を使用することもできる。使用することにより、インクの初期粘度の低減、高温時の保存安定性、目詰まり回復性に優れるので、より好ましい。
上記オキシエチルアクリレート系樹脂は、オキシエチルアクリレート骨格を有する樹脂であれば特に限定されないが、好ましくは下記式(I)で表される化合物である。下記式(I)で表される化合物は、例えば、モノマーモル比として、CAS No.72009−86−0のオルト-ヒドロキシエチル化フェニルフェノールアクリレートを45〜55%と、CAS No.79−10−7のアクリル酸を20〜30%と、CAS No.79−41−4のメタクリル酸を20〜30%と含む樹脂が挙げられる。これらは、単独でもまたは二種以上を混合して用いてもよい。また、上記モノマー構成比は、特に限定されないが、好ましくはCAS No.72009−86−0のオルト-ヒドロキシエチル化フェニルフェノールアクリレートが70〜85質量%、CAS No.79−10−7のアクリル酸が5〜15質量%、CAS No.79−41−4のメタクリル酸が10〜20質量%である。
Figure 0005725406
(R1および/またはR3は水素原子またはメチル基であって、R2はアルキル基またはアリール基である。nは1以上の整数である。)
上記式(I)で表される化合物は、好ましくはノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレートまたはポリプロピレングリコール#700アクリレート等が挙げられる。
前記オキシエチルアクリレート系樹脂の含有量は、インク組成物の初期粘度およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに、凝集斑を抑制し、埋まり性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、前記顔料100質量部に対して、好ましくは10〜40質量部であり、一層好ましくは15〜25質量部である。
前記オキシエチルアクリレート系樹脂に占めるアクリル酸とメタクリル酸の群から選ばれる水酸基を有するモノマー由来の樹脂構成比の合計は、インク組成物の初期粘度およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに、目詰まり回復性の観点からは、好ましくは30〜70%であり、一層好ましくは40〜60%である。
前記オキシエチルアクリレート系樹脂の架橋前の数平均分子量(Mn)は、インク組成物の初期粘度およびインク組成物の保存安定性を両立する観点からは、好ましくは4000〜9000であり、より好ましくは5000〜8000である。Mnは、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定する。
前記オキシエチルアクリレート系樹脂は、顔料分散液中において顔料に吸着している場合と、遊離している場合とがあり、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、前記共重合樹脂の最大粒径は0.3μm以下であることが好ましく、平均粒径は0.2μm以下(さらに好ましくは0.1μm以下)であることが一層好ましい。なお、平均粒径とは、顔料が実際に分散液中で形成している粒子としての分散径(累積50%径)の平均値であり、例えば、マイクロトラックUPA(MicrotracInc.社)を使用して測定することができる。
前記オキシエチルアクリレート系樹脂の含有量は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、前記顔料100質量部に対して、好ましくは20〜50質量部であり、一層好ましくは20〜40質量部である。
また、本発明においては、定着性顔料分散剤として、ウレタン系樹脂を用いることにより、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる。ウレタン系樹脂とは、ジイソシアネート化合物と、ジオール化合物とを反応して得られる重合体を含む樹脂であるが、本発明においては、ウレタン結合および/またはアミド結合と、酸性基とを有する樹脂であることが好ましい。
ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物、トルイレンジイソシアネート、フェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、これらの変性物が挙げられる。
ジオール化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテル系、ポリエチレンアジベート、ポリブチレンアジベート等のポリエステル系、ポリカーボネート系が挙げられる。
前記ウレタン系樹脂の酸価は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、好ましくは10〜300であり、一層好ましくは20〜100である。なお、酸価は、樹脂1gを中和させるのに必要なKOHのmg量である。
前記ウレタン樹脂の架橋前の重量平均分子量(Mw)は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、好ましくは100〜20万であり、より好ましくは1000〜5万である。Mwは、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定する。
前記ウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg;JISK6900に従い測定)は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、好ましくは−50〜200℃であり、一層好ましくは−50〜100℃である。
前記ウレタン系樹脂は、カルボキシル基を有することが好ましい。
前記ウレタン系樹脂の含有量は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、前記顔料100質量部に対して、好ましくは20〜50質量部であり、一層好ましくは20〜40質量部である。
さらに、本発明においては、定着性顔料分散剤として、フルオレン系樹脂を使用することもできる。使用することにより、インクの初期粘度の低減、高温時の保存安定性、印刷本紙への定着性に優れるので、より好ましい。
また、前記フルオレン系樹脂は、フルオレン骨格を有する樹脂であれば何ら制限されるものではなく、例えば、下記のモノマー単位を共重合することにより得ることができる。
5−イソシアネート−1−(イソシアネートメチル)−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン(CAS No.4098−71−9)
2,2‘−[9H−フルオレン−9−イリデンビス(4,1−フェニレンオキシ)]ビスエタノール(CAS No.117344−32−8)
3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸(CAS No.4767−03−7)
N,N−ジエチル−エタンアミン(CAS No.121−44−8)
上記フルオレン樹脂は、フルオレン骨格を有する樹脂であれば、モノマー構成比は、特に限定されないが、好ましくは、5−イソシアネート−1−(イソシアネートメチル)−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン(CAS No.4098−71−9)が35〜45質量%、2,2‘−[9H−フルオレン−9−イリデンビス(4,1−フェニレンオキシ)]ビスエタノール(CAS No.117344−32−8)が40〜60質量%、3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸(CAS No.4767−03−7)が5〜15質量%、N,N−ジエチル−エタンアミン(CAS No.121−44−8)が5〜15質量%である。
前記フルオレン系樹脂の架橋前の数平均分子量(Mn)は、インク組成物の初期粘度およびインク組成物の保存安定性を両立する観点からは、好ましくは2000〜5000であり、より好ましくは3000〜4000である。Mnは、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定する。
前記フルオレン系樹脂は、顔料分散液中において顔料に吸着している場合と、遊離している場合と、があり、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、前記共重合樹脂の最大粒径は0.3μm以下であることが好ましく、平均粒径は0.2μm以下(さらに好ましくは0.1μm以下)であることが一層好ましい。なお、平均粒径とは、顔料が実際に分散液中で形成している粒子としての分散径(累積50%径)の平均値であり、例えば、マイクロトラックUPA(MicrotracInc.社)を使用して測定することができる。
前記フルオレン系樹脂の含有量は、カラー画像の定着性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層定着性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、前記顔料100質量部に対して、好ましくは20〜50質量部であり、一層好ましくは20〜40質量部である。
前記共重合樹脂および前記定着性顔料分散剤の質量比(前者/後者)は、1/2〜2/1が好ましいが、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、1/1.5〜1.5/1であることが一層好ましい。
前記顔料の固形分と、前記共重合樹脂および前記定着性顔料分散剤の固形分との質量比(前者/後者)は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、100/40〜100/100であることが好ましい。
また、分散剤として、界面活性剤を用いてもよい。このような界面活性剤としては、脂肪酸塩類、高級アルキルジカルボン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩類、高級アルキルスルホン酸塩、高級脂肪酸とアミノ酸の縮合物、スルホ琥珀酸エステル塩、ナフテン酸塩、液体脂肪油硫酸エステル塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類などの陰イオン界面活性剤;脂肪酸アミン塩、第四アンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウムなどの陽イオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類などの非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。上記した界面活性剤はインク組成物に添加されることで、界面活性剤としての機能をも果たすことは言うまでもない。
<界面活性剤>
本発明によるインク組成物は、界面活性剤を含んでもよい。記録媒体として、その表面にインクを受容するための樹脂がコーティングされたものに対して、界面活性剤を用いることにより、光沢感がより重視される写真紙等の記録媒体においても、優れた光沢を有する画像を実現することができる。とりわけ、印刷本紙のように、表面の受容層に油性インクを受容するための塗布層が設けられているような記録媒体を用いた場合であっても、色間の滲み(ブリーディング)を防止できるとともに、インク付着量の増加に伴い発生する光の反射光による白化を防止することができる。
本発明において用いられる界面活性剤としては、ポリオルガノシロキサン系界面活性剤を好適に使用でき、記録画像を形成する際に、記録媒体表面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。ポリオルガノシロキサン系界面活性剤を用いた場合、界面活性剤のインク中への溶解性が向上し、不溶物等の発生を抑制できるため、吐出安定性がより優れるインク組成物を実現できる。
前記ポリオルガノシロキサン系界面活性剤は、特に限定されないが、グリセリンを20質量%、1,2−ヘキサンジオールを10質量%、前記ポリオルガノシロキサン系界面活性剤を0.1質量%、および水を69.9質量%含む水溶液とした場合に、その水溶液の1Hzの動的表面張力が26mN/m以下ものを使用することが好ましい。動的表面張力は、例えば、バブルプレッシャー動的表面張力計BP2(KRUS社製)を用いて測定することができる。
上記のような界面活性剤は市販されているものを用いてもよく、例えば、オルフィンPD−501(日信化学工業株式会社製)、オルフィンPD−570(日信化学工業株式会社製)、BYK−347(ビックケミー株式会社製)、BYK−348(ビックケミー株式会社製)等を用いることができる。
また、ポリオルガノシロキサン系界面活性剤として、下記式(II):
Figure 0005725406
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、aは2〜13の整数を表し、mは2〜70の整数を表し、nは1〜8の整数を表す。)
で表される一種または二種以上の化合物を含んでなるか、または、上記式(II)の化合物において、Rは水素原子またはメチル基を表し、aは2〜11の整数を表し、mは2〜50の整数を表し、nは1〜5の整数である一種または二種以上の化合物を含んでなることが好ましく、または、上記式(II)の化合物において、Rが水素原子またはメチル基であり、aが2〜13の整数であり、mは2〜50の整数であり、nは1〜5の整数である一種または二種以上の化合物を含んでなることがより好ましい。また、上記式(II)の化合物において、Rが水素原子またはメチル基であり、aが2〜13の整数であり、mは2〜50の整数であり、nは1〜8の整数である一種または二種以上の化合物を含んでなることがより好ましい。あるいは、上記式(II)の化合物において、Rがメチル基であり、aが6〜18の整数であり、mが0〜4であり、nが1または2である一種または二種以上の化合物を含んでなることが好ましく、または、Rがメチル基であり、aが6〜18の整数、であり、mが0であり、nが1である一種または二種以上の化合物を含んでなることがより好ましい。このような特定のオルガノポリシロキサン系界面活性剤を使用することにより、記録媒体として印刷本紙に印刷した場合であっても、インクの凝集むらがより改善される。
上記式(II)の化合物においては、aが2〜5の整数であり、mが20〜40の整数であり、nが2〜4の整数である化合物、aが7〜11の整数であり、mが30〜50の整数であり、nが3〜5の整数である化合物、aが9〜13の整数であり、mが2〜4の整数であり、nが1〜2の整数である化合物、または、aが6〜10の整数であり、mが10〜20の整数であり、nが4〜8の整数である化合物を用いることがより好ましい。このような化合物を使用することによって、より一層インクの凝集むらが改善できる。
また、上記式(II)の化合物においては、Rが水素原子であり、aが2〜5の整数であり、mが20〜40の整数であり、nが2〜4の整数である化合物、または、aが7〜11の整数であり、mが30〜50の整数であり、nが3〜5の整数である化合物を用いることがさらに好ましい。このような化合物を使用することにより、さらにインクの凝集むらと滲みを改善することができる。
また、上記式(II)の化合物においては、Rがメチル基であり、aが9〜13の整数であり、mが2〜4の整数であり、nが1〜2の整数である化合物、または、aが6〜10の整数であり、mが10〜20の整数であり、nが4〜8の整数である化合物を用いることがさらに好ましい。このような化合物を使用することにより、さらにインクの凝集むらと滲みを改善することができる。
さらに、上記式(II)の化合物においては、Rがメチル基であり、aが6〜12の整数、であり、mが0であり、nが1である化合物を用いることがさらに好ましい。このような化合物を使用することにより、さらにインクの凝集むらと滲みを改善することができる。
また、上記式(II)の化合物においては、Rが水素原子であり、aが7〜11の整数であり、mが30〜50の整数であり、nが3〜5の整数である化合物と、Rがメチル基であり、aが9〜13の整数であり、mが2〜4の整数であり、nが1〜2の整数である化合物と、Rがメチル基であり、aが6〜10の整数であり、mが10〜20の整数であり、nが4〜8の整数である化合物とを混合したものを用いることが最も好ましい。このような化合物を使用することにより、より一層、インクの凝集むらと滲みを改善することができる。
さらに、上記の式(II)においては、Rが水素原子であり、aが7〜11の整数であり、mが30〜50の整数であり、nが3〜5の整数である化合物と、Rがメチル基であり、aが9〜13の整数であり、mが2〜4の整数であり、nが1〜2の整数である化合物と、Rがメチル基であり、aが6〜18の整数であり、mが0であり、nが1である化合物とを混合したものを用いることが最も好ましい。このような化合物を使用することにより、より一層、インクの凝集むらと滲みを改善することができる。
前記ポリオルガノシロキサン系界面活性剤は、特に限定されないが、グリセリンを20質量%、1,2−ヘキサンジオールを10質量%、前記ポリオルガノシロキサン系界面活性剤を0.1質量%、および水を69.9質量%含むインク組成物とした場合に、そのインク組成物の1Hzの動的表面張力が26mN/m以下のものを使用することが好ましい。動的表面張力は、例えば、バブルプレッシャー動的表面張力計BP2(KRUS社製)を用いて測定することができる。
上記界面活性剤は、本発明によるインク組成物中に、好ましくは0.01〜1.0質量%、より好ましくは0.05〜0.50質量%含有される。特に、Rが水素基である上記界面活性剤を使用する場合は、Rがメチル基である上記界面活性剤を用いた場合よりも、含有量を少なくすることがビーディングの観点から好ましい。Rが水素基である界面活性剤を0.01〜0.1質量%含有させることにより、撥水性が発現し、ブリードを調整できる。
本発明によるインク組成物には、その他の界面活性剤、具体的には、アセチレングリコール系界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤等をさらに添加しても良い。
これらのうち、アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、または3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は市販品も利用することができ、例えば、オルフィンE1010、STG、Y(商品名、日信化学社製)、サーフィノール61、104,82,465,485、あるいはTG(商品名、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。
<水、その他の成分>
本発明によるインク組成物は、上記した第1の糖質と、第2の糖質とを含有するとともに、溶媒として水を含有することが好ましい。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を、紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌処理した水は、長期間に亘ってカビやバクテリアの発生が防止されるので好ましい。
また、本発明によるインク組成物は、上記成分に加えて、浸透剤を含んでも良い。
グリコールエーテル類の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノールなどが挙げられ、これらの一種または二種以上の混合物として用いることができる。
上記グリコールエーテル類のなかでも、多価アルコールのアルキルエーテルが好ましく、特にエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルまたは3−メトキシ−1−ブタノールが好ましい。
より好ましくは、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルまたは3−メトキシ−1−ブタノールであり、とりわけ好ましくは3−メトキシ−1−ブタノールである。3−メトキシ−1−ブタノールは沸点が161℃であることから、速乾性および即時の定着性に優れたインクを得ることができる。
上記浸透剤の添加量は適宜決定されてよいが、0.1〜30質量%程度が好ましく、より好ましくは1〜20質量%程度である。
また、本発明によるインク組成物は、上記成分に加えて、記録媒体溶解剤を含んでも良い。
記録媒体溶解剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、ピロリドンカルボン酸、およびそれらのアルカリ金属塩などの、ピロリドン類を好適に使用できる。上記記録媒体溶解剤の添加量は適宜決定されてよいが、0.1〜30質量%程度が好ましく、より好ましくは1〜20質量%程度である。
また、本発明によるインク組成物においては、グリセリンやその誘導体、例えば、3−(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2−プロパンジオール(CAS14641−24−8)、3−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2−プロパンジオール等の湿潤剤を含むことが好ましい。グリセリンやその誘導体は、インクジェットノズル等において、インクが乾燥して固化するのを防ぐ機能を有するものであるため、目詰まり回復性を向上させる観点で好ましい。本発明においては、これら湿潤剤を0.1〜8質量%以下含ませることもできる。
本発明によるインク組成物は、さらにノズルの目詰まり防止剤、防腐剤、酸化防止剤、導電率調整剤、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、酸素吸収剤などを添加することができる。
防腐剤・防かび剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジンチアゾリン−3−オン(ICI社のプロキセルCRL、プロキセルBND、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルTN)等を挙げることができる。ここで、第2の糖質が環状糖質である場合、包接効果により防腐剤・防かび剤を安定に溶解させることが可能となる。したがって、第2の糖質は、少なくとも環状糖質を含むことが好ましい。
さらに、pH調整剤、溶解助剤、または酸化防止剤の例として、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、モルホリンなどのアミン類およびそれらの変成物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどの無機塩類、水酸化アンモニウム、四級アンモニウム水酸化物(テトラメチルアンモニウムなど)、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどの炭酸塩類その他燐酸塩など、あるいはN−メチル−2−ピロリドン、尿素、チオ尿素、テトラメチル尿素などの尿素類、アロハネート、メチルアロハネートなどのアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類など、L−アスコルビン酸およびその塩を挙げることができる。
また、本発明によるインク組成物は、酸化防止剤および紫外線吸収剤を含んでいてもよく、その例としては、チバ・スペシャリティーケミカルズ社のTinuvin 328、900、1130、384、292、123、144、622、770、292、Irgacor 252 153、Irganox 1010、1076、1035、MD1024、ランタニドの酸化物等を挙げることができる。
本発明によるインク組成物は、上記の各成分を適当な方法で分散・混合することよって製造することができる。好ましくは、まず顔料と高分子分散剤と水とを適当な分散機(例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータミル、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ジェットミル、オングミルなど)で混合し、均一な顔料分散液を調製し、次いで、別途調製した樹脂(樹脂エマルジョン)、水、水溶性有機溶媒、糖、pH調製剤、防腐剤、防かび剤等を加えて十分溶解させてインク溶液を調製する。十分に攪拌した後、目詰まりの原因となる粗大粒径および異物を除去するためにろ過を行って目的のインク組成物を得ることができる。前記ろ過は、ろ材として、好ましくは、グラスファイバーフィルターを用いて行ってもよい。前記グラスファイバーは、樹脂含浸グラスファイバーであることが、静電吸着機能の観点から好ましい。また、グラスファイバーフィルターの孔径は、1〜40ミクロンが好ましく、さらに好ましくは1〜10ミクロンであることが、生産性と帯電遊離樹脂等の吸着除去の観点から好ましい。帯電遊離樹脂等の吸着除去を十分に行うことにより、吐出安定性を向上させることができる。上記のフィルターとして、例えば、日本ポール社製のウルチポアGFプラスを挙げることができる。
本発明によるインク組成物は、インクジェット記録用に用いることが好ましい。
〈インクジェット記録方法〉
本発明によるインク組成物を用いたインクジェット記録方法は、上記のインク組成物の液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて印字を行うものである。本発明による記録方法においては、記録対象となる記録媒体は、特に限定されず、例えば、普通紙や水系インクの受容層を備える記録媒体のほか、非吸水性または低吸水性の記録媒体であっても好適に用いることが可能である。
〈非吸水性または低吸水性の記録媒体〉
非吸水性の記録媒体としては、例えば、インクジェット記録用に表面処理をしていない(すなわち、インク受容層を有していない)プラスチックフィルム、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
低吸水性の記録媒体としては、例えば、塗工紙が挙げられ、微塗工紙、アート紙、コート紙、マット紙、キャスト紙等の記録本紙(印刷本紙)等が挙げられる。
塗工紙は、表面に塗料を塗布し、美感や平滑さを高めた紙である。塗料は、タルク、パイロフィライト、クレー(カオリン)、酸化チタン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどの顔料と、デンプン、ポリビニルアルコールなどの接着剤を混合して作ることができる。塗料は、紙の製造工程の中でコーターという機械を用いて塗布する。コーターには、抄紙機と直結することで抄紙・塗工を1工程とするオンマシン式と、抄紙とは別工程とするオフマシン式がある。主に記録に用いられ、経済産業省の「生産動態統計分類」では印刷用塗工紙に分類される。
微塗工紙とは、塗料の塗工量が12g/m以下の記録用紙のことをいう。アート紙とは、上級記録用紙(上質紙、化学パルプ使用率100%の紙)に40g/m前後の塗料を塗工した記録用紙のことをいう。コート紙とは、20g/m − 40g/m程度の塗料を塗工した記録用紙のことをいう。キャスト紙とは、アート紙やコート紙を、キャストドラムという機械で表面に圧力をかけることで、光沢や記録効果がより高くなるように仕上げた記録用紙のことをいう。
非吸水性または低吸水性の記録媒体として合成紙や印刷本紙(OKT+:王子製紙株式会社製)を用いることが好ましいが、とりわけ、アート紙、POD(プリントオンデマンド)用途に用いられる高画質用紙およびレーザープリンタ用の専用紙において、特に低解像度で印刷した場合でも、良好な定着性を有する記録物を得ることができる。POD用途の高画質用紙としては、例えば、リコービジネスコートグロス100(リコー株式会社製)等が挙げられる。また、レーザープリンタ用の専用紙としては、例えばLPCCTA4(セイコーエプソン株式会社製)等が挙げられる。また、耐水紙としては、カレカ(三菱化学メディア株式会社製)や、レーザーピーチ(日清紡ポスタルケミカル株式会社製)等を挙げられる。
〈ニスコート〉
本発明によるインク組成物を用いた記録物は、商業印刷等に用いられるニスコーターで、オフセットニスまたはグラビアニスをオーバーコートしてもよい。インクジェット記録方法により、良好な画像を有するバリアブル印刷を実現し、多品種少量印刷に対応でき、またオフセットニスまたはグラビアニスをオーバーコートするにより、良好な耐水性や耐溶剤性を実現することが可能である。
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、これら実施例により本発明が限定されるものではない。
<インク組成物の調製>
下記表1の組成に従い各成分を混合し、10μmのメンブランフィルターでろ過することにより、各インクを調製した。下記表1中の数値はインク中の含有量(質量%)を表す。また、樹脂は固形分の含有量(質量%)を表す。なお、下記表1中のトレハロースは、株式会社林原商事社製のトレハ微粉であり、実施例および比較例で用いた界面活性剤は、ポリオルガノシロキサン系界面活性剤であり、上記の式(II)において、Rがメチル基であり、aが6〜18の整数であり、mが0の整数であり、nが1の整数である化合物(Rがメチルの界面活性剤1)と、上記の式(II)において、Rが水素原子であり、aが7〜11の整数であり、mが30〜50の整数であり、nが3〜5の整数である化合物(Rが水素原子の界面活性剤)と、上記の式(II)において、Rがメチル基であり、aが9〜13の整数であり、mが2〜4の整数であり、nが1〜2の整数である化合物(Rがメチルの界面活性剤2)とからなる界面活性剤である。前記界面活性剤は、グリセリンを20質量%、1,2−ヘキサンジオールを10質量%、前記界面活性剤を0.1質量%、および水を69.9質量%含む水溶液とした場合に、その水溶液の1Hzの動的表面張力が26mN/m以下であった。具体的には、バブルプレッシャー動的表面張力計BP2(KRUS社製)を用いて、1Hz(=泡1個/1秒)の動的表面張力を測定したところ、前記水溶液の1Hzの動的表面張力は、24.6mN/mであった。
Figure 0005725406
上記表1中、下記インクセットに含まれる「Y」は、顔料としてC.I.ピグメントイエロー74を含み、「M」は、顔料としてC.I.ピグメントバイオレット19を含み、「C」は、顔料としてC.I.ピグメントブルー15:3を含み、そして「K」は、顔料としてC.I.ピグメントブラック7を含む。
以下で用いられている「Duty」とは、下式で算出される値である。
Duty(%)=実記録ドット数/(縦解像度×横解像度)×100(式中、「実記録ドット数」は単位面積当たりの実記録ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。)
<評価>
印刷本紙での乾燥定着性の評価
上記で得られたY、M、C、およびKの各インクをインクセットとして、インクジェットプリンタ(PXG930、セイコーエプソン社製)のインクカートリッジに充填して装着した。装着順は、キャップから離れた順にYYMMCCKKとした。その後、プリンタードライバーを用いて、プリンタのヘッドにインクを充填し、通常記録できることを確認した。
記録方法は、主走査(ヘッド駆動)方向に720dpiでかつ副走査(記録媒体搬送)方向に360dpiで記録できるようにした。次に、着弾時のドットサイズが3ngになるようにプリンタヘッドのピエゾ素子に与える電圧を調整し、一駆動が720×360dpiで、米坪約73.3g/mのOKT+(王子製紙株式会社製)に、1440×720dpiの画像を単方向で記録した。
また、記録時のメディア温度は約37℃であった。
なお、記録用紙と記録ヘッドとの間の距離は1mmであった。
記録画像は、単色のDuty100%の1次色の画像であり、インク付着量は3.1mg/inchであった。
この記録画像を出力直後に、学振型摩擦堅牢試験機(AB-301 COLOR FASTNESS RUBBING TESTER、TESTER SANGYO.,LTD製)を用いて、荷重500g×10回の試験を行なった。この印刷物についてスキャナで画像を取り込み、PhotoshopCS5で画像を2値化し、定着面積率を算出した。評価基準は以下の通りとした。
得られた画像について、下記の基準により評価を行った。
A:印字面の定着面積率が60%以上80%未満である。
B:印字面の定着面積率が40%以上60%未満である。
C:印字面の定着面積率が40%未満である。
結果は上記表1に記載される通りであった。
フィルムでの乾燥定着性の評価
記録媒体をルミラーS10(100ミクロン厚)(東レ株式会社製)に変更した他は、上記「印刷本紙での乾燥定着性の評価」と同様にして画像を記録した。得られた記録画像を20℃湿度40%の環境に10分間放置した後に、爪で擦って乾燥定着性の評価を行った。評価基準は以下の通りとした。
A:爪で擦った部分の色材が剥離しない。
B:爪で擦った部分の色材が剥離する。
結果は上記表1に記載される通りであった。
分散液製造時に含有される樹脂溶解剤の1,6−ヘキサンジオールを、1,2−ヘキサンジオールに変更した以外は、同様にして、それぞれ実施例のインク組成物およびインクセットを得た。また、これらを上記と同様にして、フィルムおよび印刷本紙の乾燥定着性について評価を実施した。1,6−ヘキサンジオールを、1,2−ヘキサンジオールに変更した場合でも、同じ評価結果であった。
分散液製造時に含有される分散樹脂のスチレンアクリル酸共重合体を、オキシエチル樹脂に変更した以外は、同様にして、それぞれ実施例のインク組成物およびインクセットを得た。また、これらを上記と同様にして、フィルムおよび印刷本紙の乾燥定着性について評価を実施した。スチレンアクリル酸共重合体を、オキシエチル樹脂に変更した場合でも、同じ評価結果であった。

Claims (6)

  1. 第1の糖質と、第2の糖質とを含むインク組成物であって、
    前記第1の糖質が、ポリデキストロースであり、
    前記第2の糖質が、トレハロース、マルトトリオース、およびメチル化βシクロデキストリンからなる群から選択される1種以上である
    ことを特徴とする、インク組成物。
  2. 1,2−ヘキサンジオールまたは1,6−ヘキサンジオールをさらに含む、請求項1に記載のインク組成物。
  3. 前記第1の糖質の分子量が、720〜54000である、請求項1または2に記載のインク組成物。
  4. 第2の糖質を、インク組成物に対して、3.0〜9.0質量%含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインク組成物。
  5. 前記第1の糖質、インク組成物に対して、3.0〜9.0質量%含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインク組成物。
  6. 前記第1の糖質と、前記第2の糖質との含有量比が3:1〜1:3である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインク組成物。
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