JP5721892B1 - 共重合体ラテックス及び該ラテックスを含有する紙塗工用組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】粘度安定性に優れ、塗工紙製造工程での塗工操業性が良好である紙塗工用組成物が得られる、共重合体ラテックスの提供。【解決手段】脂肪族共役ジエン系単量体25〜55重量%、シアン化ビニル系単量体3〜30重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体3〜15重量%およびこれらと共重合可能な他の単量体0〜69重量%を乳化重合して得られる共重合体ラテックスであり、エチレン系不飽和カルボン酸単量体としてフマル酸を3重量%以上含有し、かつ、エチレン系不飽和カルボン酸単量体に占めるフマル酸の割合が77%重量以上であることを特徴とする共重合体ラテックス。【選択図】 なし
Description
本発明は、共重合体ラテックス及び該ラテックスを含有する紙塗工用組成物に関するものである。
近年、塗工紙は、その印刷効果が高い等の理由から、非常に数多くの印刷物に利用されている。季刊、月間紙等の定期刊行物の中にも、全ての頁に塗工紙が使用される場合もかなり増えている。特に、メールオーダービジネスにおけるダイレクトメールや商品カタログ等においては、そのほとんどが全ての頁に塗工紙を使用している。
一般に紙塗工用組成物は、クレーや炭酸カルシウムなどの白色顔料を水に分散した顔料分散液、顔料同士および顔料を原紙に接着固定するためのバインダー、およびその他の添加剤によって構成される水性塗料である。バインダーとしてはスチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスに代表されるような合成エマルションバインダーやデンプン、カゼインに代表されるような天然バインダーが使用される。その中でもスチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスは、品質設計の自由度が大きく、今日では紙塗工用組成物に最も適したバインダーとして広く使用されており、スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスの性能が紙塗工用組成物の性能や塗工紙作成時の操業性あるいは最終的な塗工紙の表面強度、印刷光沢などの品質に影響することが知られている。
一方、近年においては、顔料の低コスト化が行われ、高価なカオリンから安価な炭酸カルシウムへの配合比率が増しており、このような高炭酸カルシウム処方に適した紙塗工用組成物が求められている。とりわけ高炭酸カルシウム配合処方においては、白紙光沢の低下を炭酸カルシウム顔料の粒子径を小さくすることで対策するケースが多いが、高炭酸カルシウム配合紙塗工用組成物や使用する炭酸カルシウムの粒子径が小さい場合には、粘度安定性が劣り、紙塗工用組成物の粘度が経時的に上昇するため、塗工紙製造工程での塗工操業性が劣る傾向が見られる。
上記課題を解決するため、例えば特開2010−070899号公報(特許文献1)では、エチレン系不飽和カルボン酸単量体として使用する1塩基酸と2塩基酸の重量比率(1塩基酸/2塩基酸)と共重合体ラテックスの粒子径を規定することで、炭酸カルシウムの配合比率の高い紙塗工用組成物における塗工紙作成時の塗工操業性を改良する技術が紹介されている。しかし、これらの改良技術は、未だ紙塗工用組成物の粘度安定性に要求される性能を十分に満足するレベルには至っておらず、共重合体ラテックスについて更なる改良が強く求められていた。
本発明は、粘度安定性に優れ、塗工紙製造工程での塗工操業性が良好である紙塗工用組成物が得られる共重合体ラテックスを提供することを目的とするものである。
脂肪族共役ジエン系単量体25〜55重量%、シアン化ビニル系単量体3〜30重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体3〜15重量%およびこれらと共重合可能な他の単量体0〜69重量%を乳化重合して得られる共重合体ラテックスであり、エチレン系不飽和カルボン酸単量体としてフマル酸を3重量%以上含有し、かつ、エチレン系不飽和カルボン酸単量体に占めるフマル酸の割合が77重量%以上であり、乳化重合の系内に全単量体の40重量%を投入するまでに、フマル酸の全使用量を投入することを特徴とする共重合体ラテックスを提供するものである。
本発明によれば、粘度安定性に優れ、塗工紙製造工程での塗工操業性が良好である紙塗工用組成物が得られる共重合体ラテックスを提供することができる。特に、粘度安定性に劣る高濃度の紙塗工用組成物や炭酸カルシウム配合比率が高い紙塗工用組成物において有効である。
本発明の共重合体ラテックスは、脂肪族共役ジエン系単量体、シアン化ビニル系単量体、エチレン系不飽和カルボン酸単量体およびこれらと共重合可能な他の単量体を乳化重合して得られる。
脂肪族共役ジエン系単量体としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換および側鎖共役ヘキサジエン類などが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特に1,3−ブタジエンの使用が好ましい。
シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にアクリロニトリルまたはメタクリロニトリルの使用が好ましい。
エチレン系不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの1塩基酸または2塩基酸(無水物)が挙げられ、これらを上記範囲で使用することができる。
上記脂肪族共役ジエン系単量体、シアン化ビニル系単量体およびエチレン系不飽和カルボン酸単量体と共重合可能な他の単量体としては、アルケニル芳香族単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体、不飽和カルボン酸アミド単量体等が挙げられる。
アルケニル芳香族単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびジビニルベンゼン等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にスチレンの使用が好ましい。
不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にメチルメタクリレートの使用が好ましい。
ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体としては、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジ−(エチレングリコール)マレエート、ジ−(エチレングリコール)イタコネート、2−ヒドロキシエチルマレエート、ビス(2−ヒドロキシエチル)マレエート、2−ヒドロキシエチルメチルフマレートなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にβ−ヒドロキシエチルアクリレートの使用が好ましい。
不飽和カルボン酸アミド単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にアクリルアミドまたはメタクリルアミドの使用が好ましい。
さらに、上記単量体の他に、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等、通常の乳化重合において使用される単量体は何れも使用可能である。
本発明の共重合体ラテックスの単量体組成は、全単量体の合計を100重量%とした場合に、脂肪族共役ジエン系単量体25〜55重量%、シアン化ビニル系単量体3〜30重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体3〜15重量%およびこれらと共重合可能な他の単量体0〜69重量%であり、エチレン系不飽和カルボン酸単量体としてフマル酸を3重量%以上含有し、かつ、エチレン系不飽和カルボン酸単量体に占めるフマル酸の割合が77重量%以上であることが必要である。
脂肪族共役ジエン系単量体が25重量%未満では塗工紙の表面強度が劣り、55重量%を超えるとラテックスフィルムの粘着性が増し、塗工紙作成時の塗工操業性、特にバッキングロール等へ付着しやすくなる。好ましくは35〜50重量%である。
シアン化ビニル系単量体が3重量%未満では共重合体ラテックスの重合安定性が劣り、30重量%を超えると塗工紙のインキ乾燥性が低下する。
エチレン系不飽和カルボン酸単量体が3重量%未満では塗工紙の表面強度が劣り、15重量%を超えると共重合体ラテックス自身の粘度が高くなり、送液ポンプによる共重合体ラテックスの輸送搬送性が劣るなど取り扱い性が悪化する。
エチレン系不飽和カルボン酸単量体として、フマル酸が3重量%未満では紙塗工用組成物の粘度安定性が劣る。好ましくは3.5〜7重量%であり、7重量%を越えると共重合体ラテックス自身の粘度が高くなる傾向にある。より好ましくは4〜5.5重量%である。
エチレン系不飽和カルボン酸単量体に占めるフマル酸の割合が77重量%未満では紙塗工用組成物の粘度安定性が劣る。好ましくは79〜95重量%であり、95重量%を越えると共重合体ラテックスの重合安定性が劣る傾向にある。また、共重合体ラテックス自身の粘度も高くなる傾向にある。より好ましくは81〜90重量%である。
共重合可能な他の単量体が69重量%を超えると塗工紙の表面強度が低下する。好ましくは0〜59重量%である。
本発明の共重合体ラテックスの重合には、公知の乳化剤(界面活性剤)を使用することができる。例えば、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、デヒドロアビエチン酸塩、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、非イオン性界面活性剤の硫酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型、アルキルエーテル型等のノニオン性界面活性剤が挙げられ、これらを1種又は2種以上使用することができる。
本発明の共重合体ラテックスの重合には、公知の連鎖移動剤(分子量調整剤)を制限されることなく使用することができる。例えば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物、アリルアルコール等のアリル化合物、ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物、α−ベンジルオキシスチレン、α−ベンジルオキシアクリロニトリル、α−ベンジルオキシアクリルアミド等のビニルエーテル、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレート、ターピノレン、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。
本発明の共重合体ラテックスの重合には、公知の重合開始剤として、過硫酸リチウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、t−ブチルハイドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等の油溶性重合開始剤を適宜用いることができる。特に過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイドの使用が好ましい。重合開始剤の量は特に制限されないが、単量体組成、重合反応系のpH、他の添加剤などの組み合わせを考慮して適宜調整される。
本発明において好ましく用いられる還元剤の具体例としては、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、亜ニチオン酸塩、ニチオン酸塩、チオ硫酸塩、ホルムアルデヒドスルホン酸塩、ベンズアルデヒドスルホン酸塩、また、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸、酒石酸、クエン酸などのカルボン酸類及びその塩、更にはデキストロース、サッカロースなどの還元糖類、更にはジメチルアニリン、トリエタノールアミンなどのアミン類が挙げられる。特にL−アスコルビン酸、エリソルビン酸、が好ましい。
本発明の共重合体ラテックスの重合には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和炭化水素、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、4−メチルシクロヘキセン、1−メチルシクロヘキセン等の不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などの炭化水素化合物を使用することができる。特に、沸点が適度に低く、重合終了後に水蒸気蒸留などによって回収、再利用しやすいシクロヘキセンやトルエンが、本発明の目的とは異なるものの、環境問題の観点から好適である。
本発明の共重合体ラテックスには、必要に応じて酸素補足剤、キレート剤、分散剤等の公知の添加剤を用いることも差し支えなく、これらは種類、使用量ともに特に限定されず、適宜適量使用することが出来る。更には消泡剤、老化防止剤、防腐剤、抗菌剤、難燃剤、紫外線吸収剤などの公知の添加剤を用いることも差し支えなく、これらも種類、使用量ともに特に限定されず、適宜適量使用することが出来る。また、本発明の共重合体ラテックスは、その使用目的に応じて他のラテックスと適宜適量ブレンドすることもできる。
本発明の共重合体ラテックスの製造にあたって、単量体ならびにその他の成分の添加方法については特に制限されるものではなく、一括添加方法、分割添加方法、連続添加方法、パワーフィード方法の何れでも採用することができる。また、一段重合、二段重合又は多段階重合等何れも採用することができる。
特に、紙塗工用組成物の粘度安定性の観点から、乳化重合の系内に全単量体の40重量%を投入するまでに、フマル酸の全使用量を投入することが好ましい。全単量体の30重量%を投入するまでにフマル酸の全使用量を投入することがより好ましく、全単量体の20重量%を投入するまでにフマル酸の全使用量を投入することがさらに好ましい。また、フマル酸は一括添加することが好ましい。
本発明の紙塗工用組成物は、本発明の共重合体ラテックスと顔料を含有する。
本発明の紙塗工用組成物に含有される顔料は、炭酸カルシウム、カオリンクレーの他にタルク、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、サチンホワイトなどの無機顔料、あるいはポリスチレンラテックスのような有機顔料をそれぞれ単独または混合して使用することができる。
本発明の紙塗工用組成物は、顔料として炭酸カルシウムを含有する場合、顔料に占める炭酸カルシウムの割合が80重量%以上であることが好ましい。一般的に、全顔料に占める炭酸カルシウムの割合を高くすると、塗工紙の表面強度は向上する傾向にあるものの、塗工用組成物の粘度安定性は低下する傾向にある。しかしながら、本発明の紙塗工用組成物においては、全顔料に占める炭酸カルシウムの割合が80重量%以上であっても、優れた紙塗工用組成物の粘度安定性を維持することができ、塗工紙の表面強度を向上させることが可能である。
また、本発明の紙塗工用組成物は、顔料として含有する炭酸カルシウムの80重量%以上が、平均粒子径(体積基準D50)が1.1μm以下であることが好ましい。一般的に、顔料の粒子径を小さくすると、塗工紙の白紙光沢が向上する傾向にあるものの、塗工用組成物の粘度安定性は低下する傾向にある。しかしながら、本発明の紙塗工用組成物においては、顔料として含有する炭酸カルシウムの80重量%以上が、平均粒子径(体積基準D50)が1.1μm以下であっても、優れた紙塗工用組成物の粘度安定性を維持することができ、塗工紙の白紙光沢を向上させることが可能である。
本発明の紙塗工用組成物中の共重合体ラテックスの含有量は、顔料100重量部(固形分)に対して2〜20重量部(固形分)であることが好ましい。共重合体ラテックスの含有量が2重量部より少ないと顔料を充分に接着できない傾向にあり、20重量部を超えると塗工紙の不透明度や白紙光沢が低下する傾向にある。
また、本発明の紙塗工用組成物には、必要に応じて澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉等の変性澱粉、大豆蛋白、カゼインなどの天然バインダー、あるいはポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性合成バインダーなどを使用しても差し支えない。さらに、ポリ酢酸ビニルラテックス、アクリル系ラテックスなどの合成ラテックス等を本発明の共重合体ラテックスと併用してもよい。
本発明の紙塗工用組成物を調整する際には、さらにその他の助剤、例えば分散剤(ピロリン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなど)、消泡剤(ポリグリコール、脂肪酸エステル、リン酸エステル、シリコーンオイルなど)、レベリング剤(ロート油、ジシアンジアミド、尿素など)、防腐剤、離型剤(ステアリン酸カルシウム、パラフィンエマルジョンなど)、蛍光染料、カラー保水性向上剤(アルギン酸ナトリウムなど)を必要に応じて添加しても良い。
さらに、本発明の紙塗工用組成物を塗工用紙へ塗布する方法には、公知の技術、例えばエアナイフコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、ロールコーター、バーコーターなどのいずれの塗工機を使用しても差し支えない。また、塗工後、表面を乾燥し、カレンダーリングなどにより仕上げる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、割合を示す部および%は特に断りのない限り重量基準によるものである。
共重合体ラテックスの製造
(共重合体ラテックスA、B、E、F)
耐圧製の重合反応器に、重合水130部、過硫酸カリウム1.0部を仕込み、十分攪拌した後、表1および表2に示す1段目の各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を開始した。重合転化率が70%を越えた時点で、次いで2段目の各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を行い、重合転化率が75%を越えた時点で、次いで3段目の各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を行い、最終転化率が97%を超えた時点で重合を終了した。
次いで、得られた共重合体ラテックスを、水酸化ナトリウムを用いてpHを7に調整し、水蒸気蒸留により未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、共重合体ラテックスA、B、E、Fを得た。
(共重合体ラテックスA、B、E、F)
耐圧製の重合反応器に、重合水130部、過硫酸カリウム1.0部を仕込み、十分攪拌した後、表1および表2に示す1段目の各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を開始した。重合転化率が70%を越えた時点で、次いで2段目の各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を行い、重合転化率が75%を越えた時点で、次いで3段目の各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を行い、最終転化率が97%を超えた時点で重合を終了した。
次いで、得られた共重合体ラテックスを、水酸化ナトリウムを用いてpHを7に調整し、水蒸気蒸留により未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、共重合体ラテックスA、B、E、Fを得た。
(共重合体ラテックスC)
耐圧製の重合反応器に、重合水120部、過硫酸カリウム0.9部を仕込み、十分攪拌した後、表1および表2に示す1段目の各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を開始した。重合転化率が70%を越えた時点で、次いで2段目の各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を行い、重合転化率が75%を越えた時点で、次いで3段目の各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を行い、重合転化率が87%を越えた時点で4段目の各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を行い、最終転化率が97%を超えた時点で重合を終了した。
次いで、得られた共重合体ラテックスを、水酸化ナトリウムを用いてpHを7に調整し、水蒸気蒸留により未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、共重合体ラテックスCを得た。
耐圧製の重合反応器に、重合水120部、過硫酸カリウム0.9部を仕込み、十分攪拌した後、表1および表2に示す1段目の各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を開始した。重合転化率が70%を越えた時点で、次いで2段目の各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を行い、重合転化率が75%を越えた時点で、次いで3段目の各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を行い、重合転化率が87%を越えた時点で4段目の各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を行い、最終転化率が97%を超えた時点で重合を終了した。
次いで、得られた共重合体ラテックスを、水酸化ナトリウムを用いてpHを7に調整し、水蒸気蒸留により未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、共重合体ラテックスCを得た。
(共重合体ラテックスD、G、H)
耐圧製の重合反応器に、重合水140部、過硫酸カリウム1.4部を仕込み、十分攪拌した後、表1および表2に示す1段目の各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を開始した。重合転化率が70%を越えた時点で、次いで2段目の各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を行い、最終転化率が97%を超えた時点で重合を終了した。
次いで、得られた共重合体ラテックスを、水酸化ナトリウムを用いてpHを7に調整し、水蒸気蒸留により未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、共重合体ラテックスD、G、Hを得た。
耐圧製の重合反応器に、重合水140部、過硫酸カリウム1.4部を仕込み、十分攪拌した後、表1および表2に示す1段目の各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を開始した。重合転化率が70%を越えた時点で、次いで2段目の各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を行い、最終転化率が97%を超えた時点で重合を終了した。
次いで、得られた共重合体ラテックスを、水酸化ナトリウムを用いてpHを7に調整し、水蒸気蒸留により未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、共重合体ラテックスD、G、Hを得た。
共重合体ラテックスの重合安定性の測定
共重合体ラテックス中の凝集物量を測定することで共重合体ラテックスの重合安定性の指標とした。重合が完了した後、水蒸気蒸留する前に、共重合体ラテックス:1kgを試料として採取し、ステンレス製の300メッシュ金網でろ過した。金網上に残った凝集物を乾燥した後、重量を測定し、試料(固形分換算)に対する割合を求め、凝集物発生率とした。その発生率を下記の4段階で評価した。結果を表3に示す。
◎ : 0.01%未満
○ : 0.01%以上 0.02%未満
△ : 0.02%以上 0.05%未満
× : 0.05%以上
共重合体ラテックス中の凝集物量を測定することで共重合体ラテックスの重合安定性の指標とした。重合が完了した後、水蒸気蒸留する前に、共重合体ラテックス:1kgを試料として採取し、ステンレス製の300メッシュ金網でろ過した。金網上に残った凝集物を乾燥した後、重量を測定し、試料(固形分換算)に対する割合を求め、凝集物発生率とした。その発生率を下記の4段階で評価した。結果を表3に示す。
◎ : 0.01%未満
○ : 0.01%以上 0.02%未満
△ : 0.02%以上 0.05%未満
× : 0.05%以上
紙塗工用組成物の粘度安定性の測定
紙塗工用組成物の作成直後の粘度(単一円筒型回転粘度計(ブルックフィールド粘度計、B型粘度計)を用いてJIS Z8803液体の粘度測定方法に準拠して測定)を測定し調整時粘度とする。一日間、静置後の紙塗工用組成物の粘度を同様に測定し静置粘度とする。(静置粘度/調整時粘度)の数値を粘度安定性の指標とした。結果を表3に示す。
◎ ・・・・1.5未満
○ ・・・・1.5以上 2.0未満
○〜△ ・・・・2.0以上 2.5未満
△ ・・・・2.5以上 3.0未満
△〜× ・・・・3.0以上 3.5未満
× ・・・・3.5以上
紙塗工用組成物の作成直後の粘度(単一円筒型回転粘度計(ブルックフィールド粘度計、B型粘度計)を用いてJIS Z8803液体の粘度測定方法に準拠して測定)を測定し調整時粘度とする。一日間、静置後の紙塗工用組成物の粘度を同様に測定し静置粘度とする。(静置粘度/調整時粘度)の数値を粘度安定性の指標とした。結果を表3に示す。
◎ ・・・・1.5未満
○ ・・・・1.5以上 2.0未満
○〜△ ・・・・2.0以上 2.5未満
△ ・・・・2.5以上 3.0未満
△〜× ・・・・3.0以上 3.5未満
× ・・・・3.5以上
紙塗工用組成物の調整
(実施例1)
共重合体ラテックスAをNaOHでpH9.5に調整し、下記に示した配合処方1に従って紙塗工用組成物を調整した。なお、重質炭酸カルシウムは平均粒子径(体積基準D50)が0.9μmのものを使用した。
(実施例1)
共重合体ラテックスAをNaOHでpH9.5に調整し、下記に示した配合処方1に従って紙塗工用組成物を調整した。なお、重質炭酸カルシウムは平均粒子径(体積基準D50)が0.9μmのものを使用した。
(実施例2〜7、比較例1〜4)
共重合体ラテックス、配合処方、重質炭酸カルシウムの平均粒子径(体積基準D50)を表3に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法で紙塗工用組成物を調整した。
共重合体ラテックス、配合処方、重質炭酸カルシウムの平均粒子径(体積基準D50)を表3に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法で紙塗工用組成物を調整した。
紙塗工用組成物の配合処方
(配合処方1)
カオリン 10部
重質炭酸カルシウム 90部
変性デンプン 2部
共重合体ラテックス 7部
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
固形分濃度 67%
(配合処方2)
カオリン 40部
重質炭酸カルシウム 60部
変性デンプン 2部
共重合体ラテックス 7部
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
固形分濃度 66%
(配合処方1)
カオリン 10部
重質炭酸カルシウム 90部
変性デンプン 2部
共重合体ラテックス 7部
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
固形分濃度 67%
(配合処方2)
カオリン 40部
重質炭酸カルシウム 60部
変性デンプン 2部
共重合体ラテックス 7部
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
固形分濃度 66%
炭酸カルシウムの平均粒子径(体積基準D 50 )の測定
マイクロトラック社製レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置により測定した粒子の50%径(Median径)を平均粒子径(体積基準D50)とした。
マイクロトラック社製レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置により測定した粒子の50%径(Median径)を平均粒子径(体積基準D50)とした。
塗工紙の作製
塗工原紙(坪量55g/m2)に、上記の紙塗工用組成物を片面あたりの塗被量が12g/m2となるようにワイヤーバーを用いて塗工し乾燥した後、線圧60kg/cm、温度50℃の条件でカレンダー処理を行って塗工紙を得た。
塗工原紙(坪量55g/m2)に、上記の紙塗工用組成物を片面あたりの塗被量が12g/m2となるようにワイヤーバーを用いて塗工し乾燥した後、線圧60kg/cm、温度50℃の条件でカレンダー処理を行って塗工紙を得た。
塗工紙の白紙光沢の測定
各塗工紙試料の白紙光沢をJISZ8741「75°鏡面光沢度の測定方法」に準拠して測定した。結果を表3に示す。
各塗工紙試料の白紙光沢をJISZ8741「75°鏡面光沢度の測定方法」に準拠して測定した。結果を表3に示す。
塗工紙の表面強度の測定
RI印刷機で各塗工紙試料を同時に印刷した際のピッキングの程度を肉眼で判定し、5(優)から1(劣)まで相対的に目視評価した。結果を表3に示す。
RI印刷機で各塗工紙試料を同時に印刷した際のピッキングの程度を肉眼で判定し、5(優)から1(劣)まで相対的に目視評価した。結果を表3に示す。
表3に示すとおり、本発明による共重合体ラテックスA〜Dはいずれも紙塗工用組成物の粘度安定性が良好で、共重合体ラテックスの重合安定性にも優れ、得られた塗工紙の表面強度も良好である。
比較例1は、エチレン系不飽和カルボン酸単量体に占めるフマル酸の割合が77重量%未満であり、紙塗工用組成物の粘度安定性が劣る。
比較例2は、フマル酸の使用量が3重量%未満であり、紙塗工用組成物の粘度安定性が劣る。
比較例3では、シアン化ビニル系単量体の使用量が3重量%未満であり、共重合体ラテックスの重合安定性が劣る。
比較例4では、シアン化ビニル系単量体およびエチレン系不飽和カルボン酸単量体の使用量が3重量%未満であり、フマル酸の使用量が3重量%未満であるため、共重合体ラテックスの重合安定性と紙塗工用組成物の粘度安定性が劣る。
比較例2は、フマル酸の使用量が3重量%未満であり、紙塗工用組成物の粘度安定性が劣る。
比較例3では、シアン化ビニル系単量体の使用量が3重量%未満であり、共重合体ラテックスの重合安定性が劣る。
比較例4では、シアン化ビニル系単量体およびエチレン系不飽和カルボン酸単量体の使用量が3重量%未満であり、フマル酸の使用量が3重量%未満であるため、共重合体ラテックスの重合安定性と紙塗工用組成物の粘度安定性が劣る。
Claims (5)
- 脂肪族共役ジエン系単量体25〜55重量%、シアン化ビニル系単量体3〜30重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体3〜15重量%およびこれらと共重合可能な他の単量体0〜69重量%を乳化重合して得られる共重合体ラテックスであり、エチレン系不飽和カルボン酸単量体としてフマル酸を3重量%以上含有し、かつ、エチレン系不飽和カルボン酸単量体に占めるフマル酸の割合が77重量%以上であり、乳化重合の系内に全単量体の40重量%を投入するまでに、フマル酸の全使用量を投入することを特徴とする共重合体ラテックス。
- 請求項1に記載の共重合体ラテックスと顔料を含有する紙塗工用組成物
- 顔料に占める炭酸カルシウムの割合が80重量%以上である請求項2に記載の紙塗工用組成物。
- 顔料として含有する炭酸カルシウムの80重量%以上が、平均粒子径(体積基準D50)が1.1μm以下である請求項2に記載の紙塗工用組成物。
- 顔料として含有する炭酸カルシウムの80重量%以上が、平均粒子径(体積基準D50)が1.1μm以下である請求項3に記載の紙塗工用組成物。
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