JP5710178B2 - 硬化性樹脂組成物およびハードコートフィルムまたはシート - Google Patents
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Description
[1]前記加水分解物100質量部に対する前記(C)成分の含有割合が、1〜50質量部であること。
H−(R1)n−Si(OR2)4-n・・・一般式(1)
(式中nは0〜2の整数であり、R1は、炭素数1〜8の有機基を示し、R2は、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基を示す。)
[5]前記(A)成分が、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン及びテトラブトキシシランから選ばれるいずれかのアルコキシシラン化合物の部分縮合物を含み、かつ、(A)成分中における、加水分解物または部分縮合物が占める割合が50〜100質量%の範囲であること。
[6]前記部分縮合物の平均分子量が、500〜50,000であること。
[7]前記基材が、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂およびポリプロピレン樹脂から選ばれる樹脂の単層またはこれらの樹脂の積層物であること。
[8]前記基材と前記ハードコート層との間に、密着性を向上させるための下塗り剤が施されていること。
[9]上記[8]の下塗り剤が、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂およびエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂と、ポリイソシアネート化合物とを含んでなる硬化性樹脂組成物であること。
本発明者らは、前記した従来技術の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のアルコキシシラン化合物或いはアルキルアルコキシシラン化合物の、加水分解物、特に加水分解に続き起こる縮合反応によって加水分解物が部分的に縮合した部分縮合加水分解物(以下、加水分解縮合物とも呼ぶ)である(A)成分に、アジリジン基を有する化合物である(C)成分を、硬化助剤(触媒)として特定の比率で併有した硬化性樹脂組成物は、基材フィルムの表面コート層の形成用材料としての良好なポットライフと低温架橋性を有し、しかも、形成されるハードコート層は、導電性、耐摩耗性、耐汚染性および耐熱性に優れる機能性を有するものとなり、各種用途に有用なハードコートフィルムとできることを見出して本発明に至った。上記硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、アルコール/水可溶性エポキシ樹脂を(B)成分として含有させることが好ましい。
<(A)成分>
まず、本発明で用いるアルコキシシラン化合物またはアルキルアルコキシシラン化合物は、ケイ素原子に直結するアルコキシ基を少なくとも2個有する。このような化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
H−(R1)n−Si(OR2)4-n・・・一般式(1)
(式中nは0〜2の整数であり、R1は、炭素数1〜8の有機基を示し、R2は、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基を示す。)
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記に加えて、硬化助剤としてアジリジン基を有する化合物を含有してなることを特徴とする。本発明で用いるアジリジン基を有する化合物としては、エチレンイミン基を有する2〜3官能の化合物、またはエチレンイミンの重合物であり、その重量平均分子量が300〜10,000のポリエチレンイミンであることが好ましい。例えば、多官能のエチレンイミンである、2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス〔3−(1−アジリジニル)プロピオネート〕[商品名:ケミタイトPZ−33、日本触媒製]や、4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン[商品名:ケミタイトDZ−22E、日本触媒製]などが挙げられる。また、これらエチレンイミンの重合物であるポリエチレンイミン[商品名:エポミンSP−018、日本触媒製]も有用である。
本発明においては、上記した(A)成分であるアルコキシシラン加水分解物や部分縮合物と、(C)成分であるアジリジン基を有する化合物と共に、必要に応じて、(B)成分として、下記に説明するような、アルコール/水可溶性エポキシ樹脂を用いることができる。該(B)成分は、硬化剤として機能する。アルコール/水可溶性エポキシ樹脂は、樹脂構造中にエーテル結合を有することから、アルコール/水と水素結合を形成し、容易に溶解分散するという特徴を有する。また、該(B)成分であるアルコール/水可溶性エポキシ樹脂は、そのエポキシ当量が100〜2,000であり、かつ、分子中にエポキシ基残基を2〜6個含むことが好ましい。例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
次に、本発明のハードコートフィルムに適用される基材としては、金属、セラミックス、紙、プラスチックなどが挙げられるが、好ましくはプラスチックであり、さらに好ましくは、プラスチック製のフィルム、シート状の基材を挙げることができる。プラスチックの例を挙げると、例えば、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン類、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロン4,6、ナイロン6などのポリアミドなどである。また、これら各種基材には、直接、本発明の組成物を塗装印刷できる。しかし、例えば、アクリルウレタン、エポキシ、アクリルシリコンなどを主成分とする各種プライマーを予め塗装した基材やコロナ放電処理を施した基材(以下、単に「コロナ処理」と記載する場合がある)を用いてもよい。
本発明のハードコートフィルムの作製は、本発明の硬化性樹脂組成物を用いることで、以下のようにして容易にできる。例えば、先に説明したアルコキシシラン加水分解物などを含む(A)成分と、アルコール/水可溶性エポキシ樹脂の(B)成分と、(C)成分であるアジリジン基を有する化合物とを主成分とし、これに、必要に応じて、有機溶媒、硬化促進剤、増粘剤、その他の添加剤などを配合して本発明の硬化性樹脂組成物を調製する。調製後に得られた樹脂組成物を、前記したような基材表面に、グラビアコート、スプレー、ディッピング、バーコーター、ロールコーター、フローコーターなどの各種塗工方法により塗工することによってハードコート層の形成を行う。基材としては、より好ましくはプラスチック基材、さらに好ましくはプラスチック製のフィルムやシート、特に好ましくはコロナ処理ポリプロピレン(以下、PPと略記)フィルムやシートを用いるとよい。
<実施例1>
攪拌機、分水器、温度計、窒素吹き込み口を備えた反応装置に、メチルトリメトキシシラン(東レダウコーニング(株)製、Z−6366)10kg、およびポリテトラエトキシシラン(エチルシリケート40、コルコート(株)製)50kg、およびイソプロピルアルコール30kgを室温下で混合した。その後、下記のようにして、加水分解した。まず、上記混合液に、濃塩酸1kgを水9kgで希釈した塩酸水溶液を少しずつ投入し、攪拌した。その結果、温度が徐々に上昇し、30分後に40℃に達した。そのまま攪拌を続けると次第に温度が低下するが、さらに5時間攪拌を続けた。このようにして部分的に縮合したエトキシシラン加水分解物(1)を得た。
攪拌機、分水器、温度計、窒素吹き込み口を備えた反応装置に、ポリテトラメトキシシラン(Mシリケート56、多摩化学工業(株)製)30kgおよびメチルアルコール40kgを室温下で混合した。その後、これに、酢酸1kgを水4kgで希釈した酢酸水溶液を少しずつ投入し、攪拌した。温度が徐々に上昇し、20分後に50℃に達し、その後5時間攪拌を続けた。このようにして部分的に縮合した、メトキシシラン加水分解物(2)を得た。
攪拌機、分水器、温度計、窒素吹き込み口を備えた反応装置に、ポリテトラエトキシシラン(エチルシリケート48、コルコート(株)製)30kgおよびエチルアルコール40kgを室温下で混合した。その後、塩酸0.5kgを水9.5kgで希釈した塩酸水溶液を少しずつ投入し、攪拌した。温度が徐々に上昇して30分後に45℃に達し、その後5時間攪拌を続けた。このようにして部分的に縮合したエトキシシラン加水分解物(3)を得た。
攪拌機、分水器、温度計、窒素吹き込み口を備えた反応装置に、メチルトリメトキシシラン(商品名:Mシリケート51、多摩化学工業(株)製)50kg、およびポリテトラエトキシシラン(商品名:エチルシリケート40、コルコート(株)製)10kg、およびイソプロピルアルコール30kgを室温下で混合した。その後、下記のようにして、加水分解した。
ポリエステル系無黄変ウレタン樹脂(商品名:サンプレンIB−1700D、三洋化成(株)製)10kgに、XDI系イソシアネート(商品名:タケネート D−110N、三井化学(株)製)2kgを混合し、希釈溶剤(酢酸エチル/メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール=3/4/3)で印刷粘度になるように調製した。この調製したコーティング液を、コロナ処理OPP(50μ)にグラビア印刷機を用い、印刷速度50m/分のスピードで印刷を行い、80℃の乾燥炉で10秒程度乾燥した。乾燥後、ただちに巻き取り、これを40℃の熟成室に2日間放置し、エージングを行った。
市販のエトキシシラン加水分解物であるHAS−1(コルコート社製)を10kgと、エポキシ樹脂であるコンポセランE−102(荒川化学工業(株)製)を20kgと、メタノール20kgとを混合攪拌した。そして、調製した混合液をグラビアコーティング機にてコートした。なお、HAS−1は、エチルシリケート40をさらに加水分解縮合反応を進めた市販の液であり、上記エチルシリケート40は、SiO2分を製品中に40質量%含むものである。
市販のエトキシシラン加水分解物であるHAS−1(コルコート社製)を10kgと、JERエポキシレジン1001−B80(ジャパンエポキシレジン(株)製)を10kgと、メチルエチルケトン20kgを混合攪拌した。さらに、ポリアミドアミン系触媒のトーマイドTXA−529(富士化成工業(株)製)1kgを添加し、混合攪拌した。そして、調製した混合液をグラビアコーティング機にてコートした。
(耐ブロッキング性の評価)
○:70℃にて3日間エージングしても巻き取りフィルムが全く付着していない。
△:70℃にて3日間エージングすると巻き取りフィルムにタック感があるが表面状態は全く問題ない。
×:70℃にて3日間エージング後に巻き取りフィルムが付着し表面の劣化やフィルムの破断が起こる。
××:コーティング時にコート剤表面が乾燥していないためにフィルムが付着し巻き取ることができない。
フィルムのコート剤表面をスチールウールにて200gの荷重をかけ10往復ラビングする。ラビングした表面について、目視によって観察し、下記の基準で耐傷性を評価した。
○:表面に全く傷がつかない。
△:表面にわずかな(5本〜10本程度)傷がつく。
×:表面に多数の傷がつき白い条痕が残る。
フィルムのコート剤表面にアルミ箔を載せ、ヒートバーで5秒間、1kg/cm2の荷重で圧着した。なお、ヒートバーの温度は、原反がPPの場合は120℃、PETの場合は200℃とした。その後、アルミ箔を剥がして、剥がした面について目視で観察し、下記の基準で耐熱性を評価した。
○:圧着後、アルミ箔を剥がしても全く付着しない。
△:圧着後、アルミ箔を剥がすとわずかにタックがあるが、表面状態に変化はない。
×:圧着後、アルミ箔を剥がしても強く付着し、表面状態が劣化している。
塗膜の一般的な鉛筆硬度試験方法であるJIS K−5400に準じて、各基材フィルム表面に形成したコーティング面の鉛筆硬度を評価した。
Claims (11)
- ケイ素原子に直結したアルコキシ基を少なくとも2個有する、アルコキシシラン化合物またはアルキルアルコキシシラン化合物の加水分解物を少なくとも含む(A)成分に、
硬化剤として、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルからなる群より選択される少なくとも一種が(B)成分として併用されており、かつ、
硬化助剤として、2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス〔3−(1−アジリジニル)プロピオネート〕及び4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタンのいずれかの化合物である(C)成分が、上記(A)成分と(B)成分との和(A+B)/上記成分(C)の質量比が1〜200となる範囲で含有されてなることを特徴とする硬化性樹脂組成物。 - 前記加水分解物100質量部に対する前記(C)成分の含有割合が、1〜50質量部である請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
- 前記(A)成分に含まれる加水分解物が、(a)下記一般式(1)で表される、アルコキシシラン化合物またはアルキルアルコキシシラン化合物の加水分解物、または加水分解に続き起こる縮合反応によって加水分解物が部分的に縮合した部分縮合物であり、かつ、(b)加水分解性基および/または水酸基と結合したケイ素原子を有する請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
H−(R1)n−Si(OR2)4-n・・・一般式(1)
(式中nは0〜2の整数であり、R1は、炭素数1〜8の有機基を示し、R2は、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基を示す。) - 前記(B)成分の前記(A)成分との含有比率が、質量比で、成分(A)/成分(B)=0.5〜5.0である請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
- 前記アルコキシシラン化合物またはアルキルアルコキシシラン化合物が、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基およびブトキシ基から選ばれる基を含有している請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
- 前記(A)成分が、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン及びテトラブトキシシランから選ばれるいずれかのアルコキシシラン化合物の加水分解物、および部分縮合物を含み、かつ、(A)成分中における、加水分解物または部分縮合物が占める割合が50〜100質量%の範囲である請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
- 前記部分縮合物の平均分子量が、500〜50,000である請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
- 基材の最表面に、請求項1〜7のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物で形成したハードコート層が設けられてなることを特徴とするハードコートフィルムまたはシート。
- 前記基材が、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂およびポリプロピレン樹脂から選ばれる樹脂の単層またはこれらの樹脂の積層物である請求項8に記載のハードコートフィルムまたはシート。
- 前記基材と前記ハードコート層との間に、密着性を向上させるための下塗り剤が施されている請求項8又は9に記載のハードコートフィルムまたはシート。
- 前記下塗り剤が、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂およびエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂と、ポリイソシアネート化合物とを含んでなる硬化性樹脂組成物である請求項10に記載のハードコートフィルムまたはシート。
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