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JP5709035B2 - 人工骨材料 - Google Patents

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Description

本発明は、人工骨材料に関するものである。
従来、リン酸ナトリウムカルシウムとクエン酸塩硬化剤とを含むセメントが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
このセメントによれば高い生体適合性を有し、硬化前に整形可能なペーストが形成され取り扱い容易である。
特表平9−509583号公報
しかしながら、特許文献1のセメントは、体液等の液中にて硬化させる用途においては十分な強度が得られないという不都合がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、液中で硬化させる用途においても高い強度を得ることができる人工骨材料を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、カルシウム/ナトリウム比率が1/1以上3/1以下の範囲内のリン酸ナトリウムカルシウムを含み、質量分率が0.1より大きく0.5以下のαリン酸三カルシウムを含む人工骨材料を提供する。
本発明によれば、適量の蒸留水とともに混練して整形可能なペーストを形成し、整形直後に生理食塩水等の液中に浸漬して養生した後においても、骨として必要とされる最低限の強度である5MPaより大きな強度を得ることができる。すなわち、液中で硬化させる用途に適用しても骨として十分に機能させ得る高い強度を得ることができる。
また、本発明は、質量分率0以上0.3以下のβリン酸三カルシウムをさらに含む人工骨材料を提供する。
本発明においても、適量の蒸留水とともに混練して整形可能なペーストを形成し、整形直後に生理食塩水等の液中に浸漬して養生した後においても、骨として必要とされる最低限の強度である5MPaより大きな強度を得ることができる。
また、本発明は、カルシウム/ナトリウム比率が1/1以上3/1以下のリン酸ナトリウムカルシウムを含む粉末と、液剤とを質量比で1:0.15以上1:0.3以下の割合で混練してなる人工骨材料を提供する。
本発明によれば、粉末と液剤とを質量比で1:0.15以上1:0.3以下として混練して整形可能なペーストを形成し、整形直後に生理食塩水等の液中に浸漬して養生した後においても、骨として必要とされる最低限の強度である5MPaより大きな強度を得ることができる。
また、上記発明においては、前記液剤が、5%以上20%以下の濃度を有するグリセリン水溶液であってもよい。
このようにすることで、グリセリンを含まない場合と比較して、硬化するまでにかかる時間を延長し、整形のための時間を確保して取り扱い容易性を向上することができる。また、グリセリンを20%より多く含めると硬化後の強度を得ることができないが、20%以下とすることにより、骨として必要とされる最低限の強度である5MPaより大きな強度を得ることができる。
本発明によれば、液中で硬化させる用途においても高い強度を得ることができるという効果を奏する。
本発明の第1の実施形態に係る人工骨材料のカルシウム/ナトリウム比率をパラメータとした、含有するα−TCP分率と圧縮強度との関係のグラフを示す図である。 本発明の第2の実施形態に係る人工骨材料の含有するβ−TCP分率と圧縮強度との関係のグラフを示す図である。 本発明の第3の実施形態に係る人工骨材料のカルシウム/ナトリウム比率をパラメータとした、含有する液剤の比率と圧縮強度との関係のグラフを示す図である。 図3の実施形態において、液剤としてグリセリン水溶液を使用した場合の、カルシウム/ナトリウム比率をパラメータとした、グリセリン水溶液の濃度と硬化時間との関係のグラフを示す図である。 図4の実施形態において、カルシウム/ナトリウム比率をパラメータとした、グリセリン水溶液の濃度と圧縮強度との関係のグラフを示す図である。
本発明の第1の実施形態に係る人工骨材料について、図1を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る人工骨材料は、カルシウム/ナトリウム比率が1/1以上3/1以下の範囲内のリン酸ナトリウムカルシウムを含み、質量分率0.1より大きく0.5以下のαリン酸三カルシウム(以下、α−TCP)を含んでいる。
図1は、メカノケミカル法を用いて合成されたリン酸カルシウムナトリウム(CSP)に含有させるα−TCPの分率を変化させたときの圧縮強度を、CSP内のカルシウム/ナトリウム比率(Ca/Na)をパラメータとして棒グラフで表示した図である。
各CSPは、900℃あるいは1100℃で10時間焼成し、開き目300μmの篩で分級された粉末を使用し、粉末1.0gに、予め粉砕して300μmの篩を通過させたクエン酸0.2gと、各分率のα−TCPと、蒸留水0.2gとを加えて混練してペースト状とし、整形した後、直ちに生理食塩水中に浸漬して養生させた。
圧縮強度の測定は、生理食塩水中での養生後に行った。
図1によれば、カルシウム/ナトリウム比率が1/1以上3/1以下の範囲内であれば、α−TCP分率が0.2〜0.5の範囲内にある人工骨材料において、いずれの場合も5MPa以上の圧縮強度を得ることができることがわかる。骨として機能させるためには5MPa以上の圧縮強度が必要であり、本実施形態に係る人工骨材料は、いずれもこの条件を満たしていると言える。
このように構成された本実施形態に係る人工骨材料によれば、液中において硬化させる用途、例えば、体液で満たされている骨欠損部等に補填する場合においても、骨として機能し得る十分な圧縮強度を発揮することができるという利点がある。
次に、本発明の第2の実施形態に係る人工骨材料について、図2を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る人工骨材料は、カルシウム/ナトリウム比率が1/1以上3/1以下の範囲内のリン酸ナトリウムカルシウムを含み、質量分率0.1より大きく0.5以下のαリン酸三カルシウム(以下、α−TCP)を含み、かつ、質量分率0以上0.3以下のβリン酸三カルシウム(以下、β−TCP)を含んでいる。
図2は、メカノケミカル法を用いて合成されたカルシウム/ナトリウム比率が1/1のリン酸カルシウムナトリウム(CSP)0.7gに対して、α−TCP0.3gを混合し、β−TCPを質量分率0〜0.66の範囲で変化させたときの圧縮強度を示したグラフである。
各CSPの製造方法は、β−TCPを含有する以外は第1の実施形態と同様である。
図2によれば、α−TCP分率が0以上0.3以下の範囲内にある人工骨材料において、いずれの場合も5MPa以上の圧縮強度を得ることができることがわかる。骨として機能させるためには5MPa以上の圧縮強度が必要であり、本実施形態に係る人工骨材料は、いずれもこの条件を満たしていると言える。
また、図2では、カルシウム/ナトリウム比率が1/1であるが、他の比率のCSPについても同様の範囲において骨として機能し得る十分な圧縮強度を確保することができると予想される。
このように構成された本実施形態に係る人工骨材料によっても、液中において硬化させる用途においても、骨として機能し得る十分な圧縮強度を発揮することができるという利点がある。
次に、本発明の第3の実施形態に係る人工骨材料について、図3を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る人工骨材料は、第1の実施形態に係る粉末の人工骨材料とともに混練する液剤の量を調整したもので、カルシウム/ナトリウム比率が1/1以上3/1以下の範囲の粉末の人工骨材料に対して質量比で1:0.15以上0.3以下の範囲内の液剤(例えば、蒸留水)を加えて混練したものである。
図3によれば、本実施形態に係る人工骨材料によれば、上記液剤の混合比率の範囲においては、いずれの場合も5MPa以上の圧縮強度を得ることができることがわかる。また、粉末の人工骨材料に対する液剤の質量比が1:0.15以上0.2以下の範囲内では、カルシウム/ナトリウム比率が1/1以上4/1以下の範囲のリン酸カルシウムナトリウムにおいて、いずれの場合も5MPa以上の圧縮強度を得ることができることがわかる。
また、混練する液剤としては、グリセリン水溶液を用いることが好ましい。
図4は、グリセリン水溶液の濃度と硬化時間との関係を示している。この図4によれば、グリセリンが含まれない場合と比較して、グリセリン濃度が高いほど、硬化時間を長くすることができる。すなわち、硬化時間が長くなることで、混練後の整形作業と移植部位への補填作業に要する時間をより長く確保することができ、操作性を向上することができるという利点がある。
一方、図5に示されるように、グリセリン濃度を高くするほど、硬化後に得られる人工骨材料の圧縮強度が低下していく。
したがって、グリセリン濃度は、5質量%以上20質量%以下の場合に、液中において硬化させる用途においても、骨として機能し得る5MPa以上の十分な圧縮強度を発揮することができ、かつ、操作性を向上することができるという利点がある。

Claims (4)

  1. カルシウム/ナトリウム比率が1/1以上3/1以下の範囲内のリン酸ナトリウムカルシウムを含み、質量分率0.1より大きく0.5以下のαリン酸三カルシウムを含む人工骨材料。
  2. 質量分率0以上0.3以下のβリン酸三カルシウムをさらに含む請求項1に記載の人工骨材料。
  3. カルシウム/ナトリウム比率が1/1以上3/1以下のリン酸ナトリウムカルシウムを含む粉末と、液剤とを質量比で1:0.15以上1:0.3以下の割合で混練してなる人工骨材料。
  4. 前記液剤が、5%以上20%以下の濃度を有するグリセリン水溶液である請求項3に記載の人工骨材料。
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