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JP5704379B2 - インクジェット記録用インクセット、インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法 - Google Patents

インクジェット記録用インクセット、インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法 Download PDF

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JP5704379B2
JP5704379B2 JP2009201332A JP2009201332A JP5704379B2 JP 5704379 B2 JP5704379 B2 JP 5704379B2 JP 2009201332 A JP2009201332 A JP 2009201332A JP 2009201332 A JP2009201332 A JP 2009201332A JP 5704379 B2 JP5704379 B2 JP 5704379B2
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Description

本発明は、インクジェット記録用インクセット、インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法に関する。
従来から、インクジェット記録用インクセットとして、水溶性染料および水を含む染料インクと、顔料および水を含む顔料インクとを含むインクセットが汎用されている。しかし、前記インクセットを構成する前記顔料インクには、印刷用紙などの被記録媒体への浸透性が低いという問題、さらに、顔料が凝集しやすく、顔料インク中での顔料の分散安定性に劣るという問題があった。また、顔料インクの分散安定性に関連して次のような問題点もあることに発明者は気が付いている。分散安定性に劣る顔料インクが、例えば、インクジェット記録ヘッドのインク吐出面で染料インクと接触することがある。これは、例えば、インク吐出面をクリーニングするためにワイパーでインクジェットヘッドの吐出面をワイプしたときに起こる。上記のような分散安定性に劣る顔料インクと染料インクとがインク吐出面で接触するとそれらのインクが固化し易くなり、吐出面のノズルホールを詰まらせてしまう。この理由は以下のように考えられる。顔料インクと染料インクが接触すると、顔料インクと染料インクの境界において顔料の凝集が起こる。次いで、インク中の揮発成分が蒸発することにより、さらに顔料の凝集が進行し、その結果、インクの固化が起こると考えられる。この問題は、複数色のインクを単一の吐出面から吐出する構造のインクジェットヘッドでは深刻である。
前記浸透性の問題は、前記顔料インクに、浸透剤や界面活性剤などの界面活性能を有する物質を添加し、前記顔料インクの被記録媒体への浸透性を高めることで解決できる。また、前記顔料インク中の顔料の分散安定性の問題の解決のために、ポリマーを添加した顔料インクが提案されている(特許文献1および2)。
特開2003−96338号公報 特開2003−147241号公報
しかし、前記インクセットを構成する顔料インクにおいて、前記界面活性能を有する物質の添加量を増やすと、前記顔料インクが染料インクとインクジェットヘッドのノズル周辺で接触し蒸発したときに固化しやすくなり、前記ノズルが目詰まりしやすくなることで、不吐出が生じる原因となる。また、顔料インク中の顔料の分散安定性を改善する目的で顔料インクにポリマーを添加すると、分散安定性は向上するものの、印刷物の光学濃度(OD値)が低下するという別の問題が生じる。従って、上記の従来の問題を解決するには、単純にポリマーを顔料インクに加えただけでは、十分な印字品質を保てない。
ところで、染料インクには、一般的に、マイグレーションに劣るという問題がある前記マイグレーションとは、例えば、光沢紙に、イエローインク、マゼンタインクおよびシアンインクの3色の染料インクを用いてトリカラーブラックを印字した後に、前記トリカラーブラック印字部の周縁に前記染料インクの一部が滲み出すことをいう。
そこで、本発明は、顔料インクの浸透性および光学濃度が高く、且つ、顔料インクと染料インクがインクジェットヘッドのノズル周辺で接触しても前記ノズルの目詰まりによる不吐出を生じることがなく、さらに、染料インクのマイグレーションが良好なインクジェット記録用インクセットを提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明の態様に従えば、水溶性染料および水を含む染料インクと、自己分散型顔料および水を含む顔料インクとを含むインクジェット記録用インクセットであって、
前記染料インクが、さらに、ラクタム構造を有するポリマーを含み、
前記水溶性染料が、基の中に負電荷(−)を有する官能基を持つ水溶性染料であり、
前記顔料インクが、さらに、界面活性能を有する物質を含み、且つ、吐出される前記顔料インクの一液滴量を22pL〜28pLの範囲に設定し、普通紙に1ドット線を印字した場合、前記1ドット線の線幅が115μm以上となる条件を満たす割合で、前記界面活性能を有する物質の配合量が設定されており、
前記界面活性能を有する物質が、浸透剤および界面活性剤を含み、
前記顔料インク全体に対する前記浸透剤および前記界面活性剤の配合割合が、下記条件1または下記条件2を満たし、
前記顔料インク全体に対する前記ラクタム構造を有するポリマーの配合割合が、1.0重量%以下であるインクジェット記録用インクセットが提供される。

(条件1)
前記浸透剤の配合割合が、5重量%〜15重量%であり、前記界面活性剤の配合割合が、0.1重量%〜1重量%である。
(条件2)
前記浸透剤の配合割合が、1重量%〜5重量%であり、前記界面活性剤の配合割合が、0.4重量%〜2重量%である。
前述のように、顔料インク中の顔料の分散安定性を改善する目的で顔料インクにポリマーを添加することは知られているが、本発明では、インクジェット記録用インクセットの染料インクにラクタム構造を有するポリマーが配合されている。このようにラクタム構造を有するポリマーを染料インクに含ませること以下のようなメリットがある。i)顔料インクと前記染料インクがインクジェットヘッドのノズル周辺で接触しても、染料インクに含まれるラクタム構造を有するポリマーが顔料インクの顔料に作用して、インクの固化を防止し、それにより、ノズルの目詰まりによる不吐出を生じることが防止される。この結果、顔料の分散安定性を高めるためのポリマーを顔料インクに加える必要性は薄れる。ii)顔料インクにポリマーを加ないか加えても少量で足りるので、顔料インクの光学濃度を高く保つことができる。特に、後述する実施例のように、本発明のインクセットにおいて、前記ラクタム構造を有するポリマーを、前記染料インクのみに配合することで、顔料インクの光学濃度をより高くすることができる。iii)上記i)の作用により顔料インクに界面活性能を有する物質を比較的多量に加えても従来技術の問題点であった染料インクと顔料インクの接触による固化の問題は生じないので、顔料インクに加える界面活性能を有する物質の量の制限を取り除くことができる。このため、本発明のインクセットでは、前記顔料インクに、前記線幅の条件を満たすのに充分な量の界面活性能を有する物質を配合でき、前記顔料インクの浸透性を高めることができる。また、本発明のインクセットでは、自己分散型顔料の凝集を抑制するためのポリマーとして、特に、ラクタム構造を有するポリマーを選択し、配合することで、前記顔料インクと前記染料インクがインクジェットヘッドのノズル周辺で接触しても前記ノズルの目詰まりによる不吐出を生じることがない。この作用について以下に、図2を参照しながら説明する。
例えば、γ-ラクタム構造を有するポリマーは、図2に示すようにラクタム中の窒素とそれに結合するカルボニル基との間で電子が移動する共鳴構造式で表わすことができる。このようなγ−ラクタム構造を有するポリマーを自己分散顔料を含む顔料インクに加えると、ラクタム中の正電荷(+)を有する窒素が自己分散顔料の表面に存在するカルボキシル基またはスルホン基中の負電荷(−)を有する酸素に引き付けられ、γ−ラクタム構造を有するポリマーが顔料粒子の周囲を覆いつくす。ここで、自己分散顔料はカウンターイオンとしてナトリウムイオンなどのカチオンを有するが、そのようなカチオンよりもラクタムの窒素のほうがイオン化傾向が低いために、それらのカチオンよりもラクタムの窒素が自己分散顔料の表面に存在するカルボキシル基またはスルホン基の酸素と結合し易くなると考えられる。これにより、顔料粒子が凝集することが防止されると考えられる。なお、ポリマーの分子量が大きくなると、一つのポリマーが数個の顔料粒子を取り囲むことになるので、凝集が起こり易くなると考えられる。それゆえ、本発明ではラクタム構造を有するポリマーの分子の分子量は小さい方が望ましい。
本発明者は上記効果に加えて、インクジェット記録用染料インクに、ラクタム構造を有するポリマーが配合されていることで、染料インクのマイグレーションを抑制することができることを発見した。この理由は、図2に示したラクタム構造を有するポリマーの構造式に基づいて次のように説明することができる。トリカラーブラック印字部の周縁に前記染料インクの一部が滲み出すマイグレーションは、印字後に、染料が例えば光沢紙の受容層を移動することが原因で生じると考えられる。本発明の染料インクでは、染料のカルボキシル基などの基の中の負電荷(−)を有する酸素が、正電荷(+)を有するラクタム中の窒素に電気的に引き付けられ、染料の周りをポリマーが覆い、見かけ上、染料が巨大化(分子量が増大)する。この結果、そのような巨大化した染料は光沢紙の受容層内で移動することが抑制されると考えられる。この場合も、ラクタムの窒素が染料のカウンターイオンであるカチオンよりもイオン化傾向が低いために、ラクタムの窒素が染料の表面に存在するカルボキシル基またはスルホン基の酸素に優先的に結合し易くなると考えられる。
従って、本発明のインクセットは、染料インクにラクタム構造を有するポリマー配合することで、i)染料インクと顔料インクの接触によるインクの固化を抑制してノズルの目詰まりを防止すること、ii)顔料インクの光学濃度を高めること、iii)顔料インクの浸透性の向上、vi)染料インクのマイグレーションの抑制という4つの効果を同時に生じさせるシナジーを有する。
図1は、本発明のインクジェット記録装置の構成の一例を示す概略斜視図である。 図2は、ラクタム構造を有するポリマーの顔料に対する作用を説明する図である。
本発明において、「普通紙」とは、例えば、ノートやレポート用紙などに用いられている上質紙や、コーティングがなされていないコピー用紙など、表面に特殊な加工や塗布処理がなされていない紙のことをいう。前記普通紙としては、例えば、Hammermill社製のLaser Print、M−real社製のDATE COPY紙、XEROX社製のXerox4200、ブラザー工業(株)製の専用紙 上質普通紙BP60PA、富士ゼロックスオフィスサプライ(株)製の4200DP PAPER 20LBなどがあげられる。本発明においては、顔料インクの浸透性の評価のために普通紙を用いているに過ぎず、被記録媒体を普通紙に限定するものではない。
本発明のインクジェット記録用インクセットの染料インクに、前述のような作用により前記ラクタム構造を有するポリマーが含まれる。前記ラクタム構造としては、例えば、α−ラクタム構造、β−ラクタム構造、γ−ラクタム構造、δ−ラクタム構造、ε−ラクタム構造などがあげられるが、上記本発明の効果を十分に発現するにはγ−ラクタム構造であることが好ましい。
本発明のインクジェット記録用インクセットにおいて、前記γ−ラクタム構造を有するポリマーの重量平均分子量が、25000未満であることが好ましい。前記重量平均分子量を25000未満とすることで、顔料インクの蒸発特性により優れたインクセットを得ることとできる。前記重量平均分子量の下限値は、特に制限されないが、例えば、5000であり、好ましくは、9000である。
本発明のインクジェット記録用インクセットにおいて、前記γ−ラクタム構造を有するポリマーは、特に制限されず、例えば、ポリビニルピロリドンが好ましい。前記γ−ラクタム構造を有するポリマーは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
本発明のインクジェット記録用インクセットにおいて、前記界面活性能を有する物質、浸透剤および界面活性剤を含む。前記浸透剤、主鎖の炭素原子数が5〜10であるグリコールエーテル系化合物であり、前記界面活性剤、アセチレンジオール系化合物であることが好ましい。
本発明のインクジェット記録用インクセットにおいて、前記ラクタム構造を有するポリマーは、前記染料インクのみに含まれていることが好ましい。これにより、顔料インクの光学濃度がより高いインクセットを得ることができる。
本発明のインクジェット記録用インクセットにおいて、前記自己分散型顔料が、自己分散型ブラック顔料であり、前記染料インクが、イエロー水溶性染料、マゼンタ水溶性染料およびシアン水溶性染料からなる群から選択される少なくとも一つの水溶性染料を含むことが好ましい。
本発明のインクジェット記録装置は、インク収容部およびインク吐出手段を備え、前記インク収容部に収容されたインクを前記インク吐出手段によって吐出するインクジェット記録装置であって、前記インク収容部に、本発明の前記インクジェット記録用インクセットを構成するインクが収容されていることを特徴とする。
本発明のインクジェット記録方法は、インクを吐出して被記録媒体表面に記録するインクジェット記録方法であって、前記インクとして、本発明の前記インクジェット記録用インクセットを構成するインクを用いることを特徴とする。
つぎに、本発明のインクジェット記録用インクセットについて詳細に説明する。本発明のインクジェット記録用インクセットは、水溶性染料および水を含む染料インクと、自己分散型顔料および水を含む顔料インクとを含む。
まず、前記染料インクについて説明する。前記染料インクの水溶性染料は、基の中に負電荷(−)を有する官能基を持つ水溶性染料でありさえすれば特に限定されず、例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料などがあげられる。前記染料インクは、イエロー水溶性染料、マゼンタ水溶性染料およびシアン水溶性染料からなる群から選択される少なくとも一つの水溶性染料を含むことが好ましい。
前記イエロー水溶性染料としては、例えば、C.I.ダイレクトイエロー、C.I.ダイレクトオレンジ、C.I.アシッドイエローおよびC.I.アシッドオレンジなどがあげられる。前記C.I.ダイレクトイエローとしては、例えば、C.I.ダイレクトイエロー12、24、26、86、98、132および142などがあげられる。前記C.I.ダイレクトオレンジとしては、例えば、C.I.ダイレクトオレンジ34、39、44、46および60などがあげられる。前記C.I.アシッドイエローとしては、例えば、C.I.アシッドイエロー11、17、23、25、29、42、61および71などがあげられる。前記C.I.アシッドオレンジとしては、例えば、C.I.アシッドオレンジ7および19などがあげられる。
前記マゼンタ水溶性染料としては、例えば、C.I.ダイレクトレッド、C.I.ダイレクトバイオレット、C.I.アシッドレッド、C.I.アシッドバイオレット、C.I.ベーシックレッドおよびC.I.ベーシックバイオレットなどがあげられる。前記C.I.ダイレクトレッドとしては、例えば、C.I.ダイレクトレッド1、4、17、28、83および227などがあげられる。前記C.I.ダイレクトバイオレットとしては、例えば、C.Iダイレクトバイオレット47および48などがあげられる。前記C.I.アシッドレッドとしては、例えば、C.I.アシッドレッド1、6、32、37、51、52、80、85、87、92、94、115、180、256、289、315および317などがあげられる。前記C.I.アシッドバイオレットとしては、例えば、C.I.アシッドバイオレット49などがあげられる。前記C.I.ベーシックレッドとしては、例えば、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14および37などがあげられる。前記C.I.ベーシックバイオレットとしては、例えば、C.I.ベーシックバイオレット7、14および27などがあげられる。
前記シアン水溶性染料としては、例えば、C.I.ダイレクトブルー、C.I.ダイレクトグリーン、C.I.アシッドブルーおよびC.I.ベーシックブルーなどがあげられる。前記C.I.ダイレクトブルーとしては、例えば、C.I.ダイレクトブルー6、22、25、71、86、90、106および199などがあげられる。前記C.I.ダイレクトグリーンとしては、例えば、C.I.ダイレクトグリーン59などがあげられる。前記C.I.アシッドブルーとしては、例えば、C.I.アシッドブルー9、22、40、59、93、102、104、117、120、167、229および234などがあげられる。前記C.I.ベーシックブルーとしては、例えば、C.I.ベーシックブルー1、3、5、7、9、24、25、26、28および29などがあげられる。
前記イエロー水溶性染料、前記マゼンタ水溶性染料および前記シアン水溶性染料以外の水溶性染料としては、例えば、C.I.ダイレクトブラック、C.I.ダイレクトブラウン、C.I.アシッドブラック、C.I.ベーシックブラックおよびC.I.フードブラックなどがあげられる。前記C.I.ダイレクトブラックとしては、例えば、C.I.ダイレクトブラック17、19、32、51、71、108、146、154および168などがあげられる。前記C.I.ダイレクトブラウンとしては、例えば、C.I.ダイレクトブラウン109などがあげられる。前記C.I.アシッドブラックとしては、例えば、C.I.アシッドブラック2、7、24、26、31、52、63、112および118などがあげられる。前記C.I.ベーシックブラックとしては、例えば、C.I.ベーシックブラック2などがあげられる。前記C.I.フードブラックとしては、例えば、C.I.フードブラック1および2などがあげられる。
前記例示の水溶性染料は、例えば、鮮明性および安定性などの特性に優れる。前記水溶性染料は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記染料インク全体に対する前記水溶性染料の配合割合(染料割合)は、特に制限されないが、例えば、0.1重量%〜10重量%であり、好ましくは、0.5重量%〜8重量%であり、より好ましくは、0.5重量%〜5重量%である。
前記水は、イオン交換水または純水であることが好ましい。前記インク全体に対する前記水の配合割合(水割合)は、所望のインク特性などに応じて適宜決定される。前記水割合は、例えば、他の成分の残部としてもよい。
前記染料インクは、さらに、ラクタム構造を有するポリマーを含む。前記ラクタム構造を有するポリマーは、前述のとおりである。前記染料インクに対する前記ラクタム構造を有するポリマーの配合割合(ポリマー割合)は、前記ポリマーの重量平均分子量などに応じて適宜決定される。前記ポリマー割合は、例えば、0.01重量%〜5重量%であり、好ましくは、0.05重量%〜4重量%である。特に、前述の本発明の効果を十分に発現させるには、染料インク中、1.0〜3.0重量%含ませることが好ましい。
前述のとおり、前記染料インクは、前記ラクタム構造を有するポリマーを含むため、マイグレーションが良好である。
前述のとおり、本発明のインクセットにおいて、前記ラクタム構造を有するポリマーは、前記染料インクのみに含まれていることが好ましい。これにより、顔料インクの光学濃度がより高いインクセットを得ることができる。しかしながら、顔料インクの光学濃度の望ましい値を維持する1.0重量%以下の範囲で、前記ラクタム構造を有するポリマーを顔料インクが含んでいてもよい。顔料インク中、前記ラクタム構造を有するポリマーを、特には0.5重量%以下で含んでいてもよい。
前記染料インクは、さらに、水溶性有機溶剤を含むことが好ましい。前記水溶性有機溶剤は、例えば、インクジェットヘッドの先端部におけるインクの乾燥を防止する湿潤剤および記録紙面上での乾燥速度を調整する浸透剤に分類される。
前記湿潤剤は、限定されず、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどの低級アルコール;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド;アセトンなどのケトン;ジアセトンアルコールなどのケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;ポリアルキレングリコールなどのポリエーテル;アルキレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール;2−ピロリドン;N−メチル−2−ピロリドン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどがあげられる。前記ポリアルキレングリコールは、限定されず、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどがあげられる。前記アルキレングリコールは、限定されず、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコールなどがあげられる。これらの中でも、アルキレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールが好適である。これらの湿潤剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
前記染料インク全体に対する前記湿潤剤の配合割合(湿潤剤割合)は、特に制限されず、例えば、0重量%〜95重量%であり、好ましくは、5重量%〜80重量%であり、より好ましくは、5重量%〜50重量%である。
前記浸透剤は、限定されず、例えば、グリコールエーテル系化合物があげられる。前記グリコールエーテル系化合物は、限定されず、例えば、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールプロピルエーテル、トリエチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコールプロピルエーテルおよびトリプロピレングリコールブチルエーテルなどがあげられる。前記浸透剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
前記染料インク全体に対する前記浸透剤の配合割合(浸透剤割合)は、特に制限されず、例えば、0重量%〜20重量である。前記浸透剤割合を前記範囲とすることで、前記染料インクの紙への浸透性を、より好適なものとできる。前記浸透剤割合は、好ましくは、0.1重量%〜15重量%であり、より好ましくは、0.5重量%〜10重量%である。
前記染料インクは、必要に応じて、さらに、従来公知の添加剤を含んでもよい。前記添加剤としては、例えば、界面活性剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、防黴剤などがあげられる。
前記染料インクは、例えば、水溶性染料、水およびラクタム構造を有するポリマーと、必要に応じて他の添加成分とを、従来公知の方法で均一に混合し、フィルタなどで不溶解物を除去することにより調製できる。
前記染料インクは、イエローインク、マゼンタインクおよびシアンインクの3色のインク全てを含むことが特に好ましい。前記3色のインク全てを含むことで、フルカラー記録に対応可能である。前記染料インクは、前記3色のインクのみで構成されていてもよいし、さらに他の色のインクを含んでもよい。前記他の色のインクとしては、例えば、ブラックインク、レッドインク、グリーンインク、ブルーインク、染料濃度が低いライトインク(ライトイエローインク、ライトマゼンタインク、ライトシアンインク、ライトブラックインク、ライトレッドインク、ライトグリーンインク、ライトブルーインクなど)があげられる。
つぎに、前記顔料インクについて説明する。前述のとおり、前記顔料インクは、自己分散型顔料および水を含む。前記顔料インクの自己分散型顔料は、例えば、顔料粒子の表面にカルボキシル基、カルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン基などの親水性官能基およびそれらの塩の少なくとも一種が、直接または多価の基を介して化学結合により導入されていることによって、分散剤なしでも水に分散可能なものである。
前記自己分散型顔料は、限定されず、例えば、特開平8−3498号公報、特表2000−513396号公報等に記載の方法によって表面処理された自己分散型顔料を用いることができる。前記自己分散型顔料は、例えば、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ社製の「CAB−O−JET(登録商標)200、250、260、300および700」、オリエント化学工業(株)製の「BONJET(登録商標)BLACK CW−1、CW−2およびCW−3」、東洋インキ製造(株)製の「LIOJET(登録商標)WD BLACK 002C」などがあげられる。前記自己分散型顔料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
前記自己分散型顔料の原料として用いることができる顔料は、限定されず、無機顔料および有機顔料のいずれも使用することができる。また、前記表面処理を行うのに適した顔料としては、例えば、三菱化学(株)製の「MA8および100」、デグサ社製の「カラーブラックFW200」などのカーボンブラックがあげられる。
前記インク全体に対する前記自己分散型顔料の固形分配合割合(顔料割合)は、特に制限されず、例えば、1重量%〜10重量%であり、好ましくは、2重量%〜9重量%であり、より好ましくは、3重量%〜8重量%である。
前記水および前記水の配合割合は、前記染料インクと同様である。
前記顔料インクは、さらに、界面活性能を有する物質を含む。前述のとおり、前記界面活性能を有する物質は、浸透剤および界面活性剤を含む
前記浸透剤は、前記染料インクと同様である。前記浸透剤は、主鎖の炭素原子数が5〜10のグリコールエーテル系化合物であることが好ましい。前記主鎖の炭素原子数が5〜10のグリコールエーテル系化合物は、限定されず、例えば、エチレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールプロピルエーテル、トリエチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテルなどがあげられる。前記浸透剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
前記界面活性剤は、アセチレンジオール系化合物であることが好ましい。前記アセチレンジオール系化合物は、限定されないが、一般式(1)で表されるアセチレンジオール系化合物であることが好ましい。
Figure 0005704379
前記一般式(1)において、mおよびnは、m+n=0〜50を満たす数であり、mおよびnは同一でも異なっていてもよく、R、R、RおよびRは、それぞれ、炭素原子数1〜5の直鎖状または分岐鎖状アルキル基であり、R、R、RおよびRは同一でも異なっていてもよい。
前記一般式(1)において、前記mおよびnは、より好ましくは、m+n=1〜30を満たす数であり、さらに好ましくは、m+n=1〜10を満たす数であり、前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などがあげられる。
前記アセチレンジオール系化合物は、例えば、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、日信化学工業(株)製の「オルフィン(登録商標)E1010」、「オルフィン(登録商標)E1004」、「サーフィノール(登録商標)440」および「サーフィノール(登録商標)465」;川研ファインケミカル(株)製の「アセチレノール(登録商標)E40」および「アセチレノール(登録商標)E100」などがあげられる。
前記アセチレンジオール系化合物以外の界面活性剤としては、例えば、花王(株)製のアニオン界面活性剤「EMAL(登録商標)」シリーズ、「LATEMUL(登録商標)」シリーズ、「VENOL(登録商標)」シリーズ、「NEOPELEX(登録商標)」シリーズ、NS SOAP、KS SOAP、OS SOAP、「PELEX(登録商標)」シリーズなど;ライオン(株)製のアニオン界面活性剤「LIPOLAN(登録商標)」シリーズ、「LIPON(登録商標)」シリーズ、「SUNNOL(登録商標)」シリーズ、「LIPOTAC(登録商標)、「ENAGICOL(登録商標)」シリーズ、「LIPAL(登録商標)」シリーズ、「LOTAT(登録商標)」シリーズなど;花王(株)製のノニオン界面活性剤「EMULGEN(登録商標)」シリーズ、「RHEODOL(登録商標)」シリーズ、「EMASOL(登録商標)」シリーズ、「EXCEL(登録商標)」シリーズ、「EMANON(登録商標)」シリーズ、「AMIET(登録商標)」シリーズ、「AMINON(登録商標)」シリーズなど、ライオン(株)製のノニオン界面活性剤「DOBANOX(登録商標)」シリーズ、「LEOCOL(登録商標)」シリーズ、「LEOX(登録商標)」シリーズ、「LAOL(登録商標)」シリーズ、「LEOCON(登録商標)」シリーズ、「LIONOL(登録商標)」シリーズ、「CADENAX(登録商標)」シリーズ、「LIONON(登録商標)」シリーズ、「LEOFAT(登録商標)」シリーズなどがあげられる。
前記界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
述のとおり、前記界面活性能を有する物質の配合量は、吐出される前記顔料インクの一液滴量を22pL〜28pLの範囲に設定し、普通紙に1ドット線を印字した場合、前記1ドット線の線幅が115μm以上となる条件を満たす割合に設定されている。これにより、前記顔料インクの浸透性に優れたインクセットを得ることができる。前記線幅の上限値は、特に制限されないが、例えば、150μmであり、好ましくは、130μmである。
前記顔料インク全体に対する前記界面活性能を有する物質の配合割合(界面活性物質割合)は、好ましくは、1重量%〜20重量%であり、より好ましくは、2重量%〜15重量%であり、さらに好ましくは、3重量%〜13重量%である。前記界面活性能を有する物質として、前記浸透剤を比較的多く配合する場合には、前記浸透剤の配合割合(浸透剤割合)が5重量%〜15重量%、前記界面活性剤の配合割合(界面活性剤割合)が0.1重量%〜1重量%であり、好ましくは、前記浸透剤割合が5重量%〜12重量%、前記界面活性剤割合が0.2重量%〜0.8重量%であり、前記界面活性剤を比較的多く配合する場合には、前記浸透剤割合が1重量%〜5重量%、前記界面活性剤割合が0.4重量%〜2重量%であり、好ましくは、前記浸透剤割合が2重量%〜4重量%、前記界面活性剤割合が0.5重量%〜1.5重量%である。
前記顔料インクは、さらに、湿潤剤を含んでもよい。前記湿潤剤および前記湿潤剤の配合割合は、前記染料インクと同様である。
前記顔料インクは、必要に応じて、さらに、従来公知の添加剤を含んでもよい。前記添加剤としては、例えば、粘度調整剤、表面張力調整剤、防黴剤などがあげられる。
前記顔料インクは、例えば、自己分散型顔料、水および界面活性能を有する物質と、必要に応じて他の添加成分とを、従来公知の方法で均一に混合し、フィルタなどで不溶解物を除去することにより調製できる。
つぎに、本発明のインクジェット記録装置について説明する。前述のとおり、本発明のインクジェット記録装置は、インク収容部およびインク吐出手段を備え、前記インク収容部に収容されたインクを前記インク吐出手段により吐出するインクジェット記録装置であって、前記インク収容部に、本発明の前記インクジェット記録用インクセットを構成するインクが収容されていることを特徴とする。これらを除き、本発明のインクジェット記録装置の構成は、例えば、従来公知のインクジェット記録装置と同様であってもよい。
前記インク収容部としては、例えば、インクカートリッジなどがあげられる。前記インクカートリッジの本体としては、例えば、従来公知のものを使用できる。
図1に、本発明のインクジェット記録装置の一例の構成を示す。図示のとおり、このインクジェット記録装置1は、4つのインクカートリッジ2と、インクジェットヘッド3と、ヘッドユニット4と、キャリッジ5と、駆動ユニット6と、プラテンローラ7と、パージ装置8とを主要な構成部材として含む。
前記4つのインクカートリッジ2は、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの4色のインクを、それぞれ1色ずつ含む。例えば、前記ブラックインクが、本発明の前記インクセットにおける顔料インクであり、前記イエローインク、マゼンタインクおよびシアンインクが、本発明の前記インクセットにおける染料インクである。前記インクジェットヘッド3は、印刷用紙などの被記録媒体Pに印字を行う。前記ヘッドユニット4は、前記インクジェットヘッド3を備えている。前記キャリッジ5には、前記4つのインクカートリッジ2および前記ヘッドユニット4が搭載される。前記駆動ユニット6は、前記キャリッジ5を直線方向に往復移動させる。前記プラテンローラ7は、前記キャリッジ5の往復方向に延び、前記インクジェットヘッド3と対向して配置されている。
前記駆動ユニット6は、キャリッジ軸9と、ガイド板10と、2つのプーリ11および12と、エンドレスベルト13とを含む。前記キャリッジ軸9は、前記キャリッジ5の下端部に配置され、前記プラテンローラ7と平行に延びている。前記ガイド板10は、前記キャリッジ部5の上端部に配置され、前記キャリッジ軸9と平行に延びている。前記2つのプーリ11および12は、前記キャリッジ軸9と前記ガイド板10との間であって、前記キャリッジ軸9の両端部に配置されている。前記エンドレスベルト13は、前記2つのプーリ11および12の間に掛け渡されている。
このインクジェット記録装置1において、前記プーリ11がキャリッジモータ101の駆動により正逆回転されると、前記プーリ11の正逆回転に伴って、前記エンドレスベルト13に接合されている前記キャリッジ5が、前記キャリッジ軸9および前記ガイド板10に沿って、直線方向に往復移動する。
前記被記録媒体Pは、このインクジェット記録装置1の側方または下方に設けられた給紙カセット(図示せず)から給紙される。前記被記録媒体Pは、前記インクジェットヘッド3と、前記プラテンローラ7との間に導入される。すると、前記被記録媒体Pに、前記インクジェットヘッド3から吐出されるインクにより所定の印字がなされる。前記被記録媒体Pは、その後、前記インクジェット記録装置1から排紙される。図1においては、前記被記録媒体Pの給紙機構および排紙機構の図示を省略している。
前記パージ装置8は、前記プラテンローラ7の側方に設けられ、前記ヘッドユニット4がリセット位置(この例においては、前記パージ装置8の上部)にある時に、前記インクジェットヘッド3と対向するように配置されている。前記パージ装置8は、パージキャップ14と、ポンプ15およびカム16と、インク貯留部17とを含む。前記パージキャップ14は、前記ヘッドユニット4が前記リセット位置にある時に、前記インクジェットヘッド3の複数のノズル(図示せず)を覆う。前記ポンプ15は、前記カム16の駆動により前記インクジェットヘッド3の内部に溜まる気泡などを含んだ不良インクを吸引する。これにより、前記インクジェットヘッドの回復が図られる。前記吸引された不良インクは、前記インク貯留部17に貯められる。
前記パージ装置8の前記プラテンローラ7側の位置には、前記パージ装置8に隣接してワイパ部材20が配設されている。前記ワイパ部材20は、へら状に形成されており、前記キャリッジ5の移動に伴って、前記インクジェットヘッド3のノズル形成面を拭うものである。ワイパ部材20がノズル形成面を拭うときに、ワイパ部材20に顔料インク(ブラックインク)と、染料インク(イエローインク、マゼンタインクおよびシアンインク)接触して、ワイパ部材20およびノズル形成面でそれらのインクが混合することが起こる。しかし、本発明のインクセットでは、前述のように、染料インクにラクタム構造を有するポリマー含まれているために、顔料インクと染料インクが接触したときにも顔料の凝集に基づくインクの固化が抑制され、それゆえ、ノズルの目詰まりも防止される。図1において、キャップ18は、インクの乾燥を防止するため、印字が終了するとリセット位置に戻される前記インクジェットヘッド3の複数のノズルを覆うものである。
この例のインクジェット記録装置1においては、前記4つのインクカートリッジ2は、1個のキャリッジ5に搭載されている。ただし、本発明は、これに限定されない。本発明のインクジェット記録装置において、前記4つのインクカートリッジは、複数のキャリッジに搭載されていてもよい。また、前記インクカートリッジは、前記キャリッジには搭載されず、インクジェット記録装置内に配置、固定されていてもよい。この態様においては、例えば、前記インクカートリッジと、前記キャリッジに搭載された前記ヘッドユニットとが、チューブなどにより連結され、前記インクカートリッジから前記ヘッドユニットに前記インクが供給される。
つぎに、本発明のインクジェット記録方法について説明する。前述のとおり、本発明のインクジェット記録方法は、インクを吐出して被記録媒体表面に記録するインクジェット記録方法であって、前記インクとして、本発明の前記インクジェット記録用インクセットを構成するインクを用いることを特徴とする。本発明のインクジェット記録方法は、例えば、本発明の前記インクジェット記録装置を用いて実施可能である。本発明のインクジェット記録方法のその他の条件は、本発明の前記インクセットと同様である。
つぎに、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は、下記の実施例および比較例によってなんら限定ないし制限されない。
(1)染料インクの調製
インク組成成分(表1)を、均一に混合した。その後、得られた混合物を、東洋濾紙(株)製の親水性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)タイプメンブレンフィルタ(孔径0.20μm)でろ過することで、染料インクM−1〜M−10を得た。なお、表1において、マゼンタ水溶性染料(1)〜(3)は、それぞれ、化学式(2−1)〜(2−3)で表される化合物である。また、表1において、ポリビニルピロリドンのK値は、重量平均分子量と相関する粘性特性値である。前記K値と重量平均分子量との関係は、下記のとおりである。
K値 重量平均分子量
12 2000〜3000
17 7000〜11,000
25 28,000〜34,000
30 44,000〜54,000
Figure 0005704379









Figure 0005704379












Figure 0005704379

Figure 0005704379
(2)顔料インクの調製
インク組成成分(表2)のうち、CAB−O−JET(登録商標)300を除く成分を、均一に混合しインク溶媒を得た。つぎに、CAB−O−JET(登録商標)300に前記インク溶媒を徐々に加え、均一に混合した。その後、得られた混合物を東洋濾紙(株)製のセルロースアセテートタイプメンブレンフィルタ(孔径3.00μm)でろ過することで、顔料インクB−1〜B−9を得た。顔料インクB−5〜B−9はいずれもポリビニルピロリドン(K値=12)を含んでいた。
Figure 0005704379
[実施例1]
前記染料インクM−1〜M−8および前記顔料インクB−1〜B−3をそれぞれ組み合わせることで、24通りのインクジェット記録用インクセットを得た。
[実施例2]
前記染料インクM−1〜M−8および前記顔料インクB−7〜B−8(ポリビニルピロリドンを含む)をそれぞれ組み合わせることで、16通りのインクジェット記録用インクセットを得た。
[実施例3]
前記染料インクM−1〜M−8および前記顔料インクB−5(ポリビニルピロリドンを含む)をそれぞれ組み合わせることで、8通りのインクジェット記録用インクセットを得た。
[比較例1]
前記染料インクM−9および前記顔料インクB−1〜B−3をそれぞれ組み合わせることで、3通りのインクジェット記録用インクセットを得た。
[比較例2]
前記染料インクM−1〜M−8および前記顔料インクB−4をそれぞれ組み合わせることで、8通りのインクジェット記録用インクセットを得た。
[比較例3]
前記染料インクM−10および前記顔料インクB−4を組み合わせることで、インクジェット記録用インクセットを得た。
[比較例4]
前記染料インクM−9および前記顔料インクB−4を組み合わせることで、インクジェット記録用インクセットを得た。
[比較例5]
前記染料インクM−1〜M−8および前記顔料インクB−6をそれぞれ組み合わせることで、8通りのインクジェット記録用インクセットを得た。
[比較例6]
前記染料インクM−10および前記顔料インクB−6を組み合わせることで、インクジェット記録用インクセットを得た。
[比較例7]
前記染料インクM−9および前記顔料インクB−5を組み合わせることで、インクジェット記録用インクセットを得た。
[比較例8]
前記染料インクM−9および前記顔料インクB−6を組み合わせることで、インクジェット記録用インクセットを得た。
[比較例9]
前記染料インクM−1〜M−8および前記顔料インクB−9を組み合わせることで、8通りのインクジェット記録用インクセットを得た。
[比較例10]
前記染料インクM−9および前記顔料インクB−9を組み合わせることで、インクジェット記録用インクセットを得た。
[比較例11]
前記染料インクM−10および前記顔料インクB−9を組み合わせることで、インクジェット記録用インクセットを得た。
各実施例および各比較例のインクセットの各種特性および物性を、下記の方法により評価または測定した。
(a)顔料インクの浸透性(線幅)
ブラザー工業(株)製のインクジェットプリンタ搭載デジタル複合機DCP−330Cを使用して、一液滴量を22pL〜28pLの範囲に設定し、各実施例および各比較例のインクセットを構成する顔料インクを用いて普通紙(Hammermill社製のLaser Print)上に、解像度600dpi×300dpiで1ドット線を印字した。前記1ドット線の線幅を、QEA社製のパーソナルIASにより測定し、下記の評価基準に従って評価した。
顔料インクの浸透性(線幅) 評価基準
G :前記線幅が、115μm以上
NG:前記線幅が、115μm未満
(b)顔料インクと染料インクの混合蒸発試験
各実施例および各比較例のインクセットを構成する顔料インク2.5gと染料インク2.5gとを混合し、開放瓶(口径:20.2mm)に注入した。その開放瓶を、温度60℃、相対湿度40%の恒温槽中に5日間保存した。前記保存後、前記開放瓶内のインクの状態を目視で観察し、下記の評価基準に従って評価した。
顔料インクと染料インクの混合蒸発試験 評価基準
G :流動性あり(開放瓶を傾けたときにインクに動きがあった)
NG:流動性なし(開放瓶を傾けても、インクに動きがなかった)
(c)染料インクのマイグレーション
ブラザー工業(株)製のインクジェットプリンタ搭載デジタル複合機DCP−330Cを使用して、各実施例および各比較例の染料インク(マゼンタインク)、並びにイエローインクおよびシアンインクの2色の染料インクを用いて光沢紙(セイコーエプソン(株)製の「写真用紙クリスピア<高光沢>」)上にトリカラーブラックをベタ(解像度1200dpi×2400dpiにおいて、または100%duty)で印字後、温度30℃、相対湿度80%の恒温槽中に3日間保存した。前記保存後、目視で観察し、下記の評価基準に従って評価した。前記イエローインクには、ブラザー工業(株)製のインクカートリッジLC10Yに充填されたイエローインク(染料インク)を、前記シアンインクには、ブラザー工業(株)製のインクカートリッジLC10Cに充填されたシアンインク(染料インク)を用いた。また、前記100%dutyの「duty」とは、式(I)で算出される値であり、「100%duty」とは、画素に対する単色の最大インク重量を意味する。
duty(%)={実印字ドット数/(縦解像度×横解像度)}×100 (I)
実印字ドット数:単位面積当たりの実印字ドット数
縦解像度:単位面積当たりの縦解像度
横解像度:単位面積当たりの横解像度
染料インクのマイグレーション 評価基準
G :前記トリカラーブラック印字部の周縁にマゼンタインクの滲み出しがなかった。
NG:前記トリカラーブラック印字部の周縁にマゼンタインクの滲み出しがあった。
(d)顔料インクの光学濃度(OD)値
ブラザー工業(株)製のインクジェットプリンタ搭載デジタル複合機DCP−330Cを使用して、各実施例および各比較例のインクセットを構成する顔料インクを用いて普通紙(Hammermill社製のLaser Print)上に解像度600dpi×600dpi(一液滴量:22pL〜28pL)で印字を行い評価サンプルを作製した。前記評価サンプルの光学濃度(OD)値を、Gretag Macbeth社製の分光測色計Spectrolino(光源:D50、視野:2°、ANSI T)により測定し、下記の評価基準に従って評価した。
顔料インクの光学濃度(OD)値 評価基準
A:OD値が、1.3以上
B:OD値が、1.2以上1.3未満
C:OD値が、1.2未満
(e)総合評価
各実施例および各比較例のインクセットについて、下記の評価基準に従って総合評価を行った。
総合評価 評価基準
VG(Very Good) :顔料インクの浸透性(線幅)、顔料インクと染料インクの混合蒸発試験および染料インクのマイグレーションのすべての評価結果がGであり、且つ顔料インクの光学濃度がAであった。
G(Good) : 顔料インクの浸透性(線幅)、顔料インクと染料インクの混合蒸発試験および染料インクのマイグレーションのすべての評価結果がGであり、顔料インクの光学濃度がBであった。
NG:顔料インクの浸透性(線幅)、顔料インクと染料インクの混合蒸発試験および染料インクのマイグレーションの評価結果に、1つ以上NGがあるか、顔料インクの光学濃度Cであった。
各実施例および各比較例のインクセットの評価結果を、表3に示す。
Figure 0005704379
表3に示すとおり、染料インクに前記ラクタム構造を有するポリマーが配合され、且つ、顔料インクに充分な量の界面活性能を有する物質が配合された実施例1の24通り全てのインクセット、実施例2の16通り全てのインクセットおよび実施例3の8通り全てのインクセットでは、顔料インクの浸透性(線幅)、顔料インク/染料インク混合蒸発試験および染料インクのマイグレーションのすべての評価結果が、良好であった。
また、前記ラクタム構造を有するポリマーが、前記染料インクのみに含まれている実施例1の24通り全てのインクセットでは、顔料インクの光学濃度(OD)値の評価結果も、良好であった。実施例2のインクセットはポリビニルピロリドンを含む顔料インクB−7、B−8を用いているが、ポリビニルピロリドンが0.5重量%以下と少量であったために顔料インクの光学濃度(OD)値の評価結果も、良好であった。実施例3のインクセットはポリビニルピロリドンを1.0重量%と比較的多く含む顔料インクB−5を用いているために、顔料インクの光学濃度(OD)値が実施例1および2のインクセットに比べて低下したと考えられる。このことは、ポリビニルピロリドンを含む顔料インクB−6を用いた比較例5、6および8とポリビニルピロリドンを含む顔料インクB−9を用いた比較例9〜11の結果からも分かる。特に、比較例9〜11では、ポリビニルピロリドンを2.0重量%顔料インク中に含むために、光学濃度(OD)値は最低レベルであった。これらの評価結果より、顔料インクに含まれるポリビニルピロリドン1.0重量%以下であり、さらには0.5重量%以下で含むことが好ましい。
一方、染料インクが前記ラクタム構造を有するポリマーを含まない比較例1、4、7、8および10では以下のような結果であった。顔料インクにおける前記界面活性能を有する物質の配合割合が高く、染料インクが前記ラクタム構造を有するポリマーを含まない比較例1の3通り全てのインクセットでは、顔料インク/染料インク混合蒸発試験および染料インクのマイグレーションの評価結果が劣っていた。顔料インクにおける前記界面活性能を有する物質の配合割合が低く、染料インクが前記ラクタム構造を有するポリマーを含まない比較例4のインクセットでは、顔料インクの浸透性(線幅)および染料インクのマイグレーションの評価結果が劣っていた。顔料インクにおける前記界面活性能を有する物質の配合割合が高く、顔料インクが前記ラクタム構造を有するポリマーを含み、染料インクが前記ラクタム構造を有するポリマーを含まない比較例7のインクセットでは、染料インクのマイグレーションの評価結果が劣っていた。さらに、顔料インクにおける前記界面活性能を有する物質の配合割合が低く、顔料インクが前記ラクタム構造を有するポリマーを含み、染料インクが前記ラクタム構造を有するポリマーを含まない比較例8のインクセットでは、顔料インクの浸透性(線幅)および染料インクのマイグレーションの評価結果が劣っていた。なお、比較例10では、染料インクが前記ラクタム構造を有するポリマーを含まないが、顔料インクに多量の前記ラクタム構造を有するポリマーを含むために、顔料インク/染料インク混合蒸発試験の結果は良好であった。
染料インクが前記ラクタム構造を有するポリマーを含む場合であっても、比較例2、3、5および6から分かるように、実施例に比べて顔料インクの浸透性(線幅)および/または顔料インク/染料インク混合蒸発試験の評価結果が劣っていた。顔料インクにおける前記界面活性能を有する物質の配合割合が低い比較例2の8通り全てのインクセットでは、顔料インクの浸透性(線幅)の評価結果が劣っていた。そして、顔料インクにおける前記界面活性能を有する物質の配合割合が低く、染料インクに配合された前記ラクタム構造を有するポリマーの重量平均分子量が25,000以上である比較例3のインクセットでは、顔料インクの浸透性(線幅)および顔料インク/染料インク混合蒸発試験の評価結果が劣っていた。顔料インクにおける前記界面活性能を有する物質の配合割合が低く、顔料インクが前記ラクタム構造を有するポリマーを含む比較例5の8通り全てのインクセットでは、顔料インクの浸透性(線幅)の評価結果が劣っていた。さらに、顔料インクにおける前記界面活性能を有する物質の配合割合が低く、顔料インクが前記ラクタム構造を有するポリマーを含み、染料インクに配合された前記ラクタム構造を有するポリマーの重量平均分子量が25,000以上である比較例6のインクセットでは、顔料インクの浸透性(線幅)および顔料インク/染料インク混合蒸発試験の評価結果が劣っていた。上記結果より、染料インクに前記ラクタム構造を有するポリマーを含めることにより染料インクと顔料インクが接触したときのインク固化予防に概ね有効であるが、前記ラクタム構造を有するポリマーを染料インクに含めても、特に、界面活性剤の量が顔料インクの浸透性、すなわち線幅に影響を与える。それゆえ、顔料インクは、吐出される前記顔料インクの一液滴量を22pL〜28pLの範囲に設定し、普通紙に1ドット線を印字した場合、前記1ドット線の線幅が115μm以上となる条件を満たす割合で、前記界面活性能を有する物質を配合する。
全ての実施例および比較例を通じて、ラクタム構造を有するポリマーを含まない染料インク(M−9)に比べて、ラクタム構造を有するポリマーを含む染料インクは、マイグレーションの抑制に優れていることが分かる。従って、顔料インクと組み合わせてインクセットを構成する染料インクのみならず染料インク単体においても、ラクタム構造を有するポリマーを含む染料インクがマイグレーション抑制の点で有用である。
以上のように、本発明のインクジェット記録用インクセットは、顔料インクの浸透性および光学濃度が高く、且つ、顔料インクと染料インクがインクジェットヘッドのノズル周辺で接触しても前記ノズルの目詰まりによる不吐出を生じることがない。さらに、本発明の染料インクはマイグレーションが良好である。本発明のインクジェット記録用インクセットの用途は、限定されず、各種のインクジェット記録に広く適用可能である。
1 インクジェット記録装置
2 インクカートリッジ
3 インクジェットヘッド
4 ヘッドユニット
5 キャリッジ
6 駆動ユニット
7 プラテンローラ
8 パージ装置
9 キャリッジ軸
10 ガイド板

Claims (8)

  1. 水溶性染料および水を含む染料インクと、自己分散型顔料および水を含む顔料インクとを含むインクジェット記録用インクセットであって、
    前記染料インクが、さらに、ラクタム構造を有するポリマーを含み、
    前記水溶性染料が、基の中に負電荷(−)を有する官能基を持つ水溶性染料であり、
    前記顔料インクが、さらに、界面活性能を有する物質を含み、且つ、吐出される前記顔料インクの一液滴量を22pL〜28pLの範囲に設定し、普通紙に1ドット線を印字した場合、前記1ドット線の線幅が115μm以上となる条件を満たす割合で、前記界面活性能を有する物質の配合量が設定されており、
    前記界面活性能を有する物質が、浸透剤および界面活性剤を含み、
    前記浸透剤が、主鎖の炭素原子数が5〜10であるグリコールエーテル系化合物であり、前記界面活性剤が、アセチレンジオール系化合物を含み、
    前記顔料インク全体に対する前記浸透剤および前記アセチレンジオール系界面活性剤の配合割合が、下記条件1または下記条件2を満たし、
    前記顔料インク全体に対する前記ラクタム構造を有するポリマーの配合割合が、1.0重量%以下であることを特徴とするインクジェット記録用インクセット。

    (条件1)
    前記浸透剤の配合割合が、5重量%〜15重量%であり、前記アセチレンジオール系界面活性剤の配合割合が、0.1重量%〜1重量%である。
    (条件2)
    前記浸透剤の配合割合が、1重量%〜5重量%であり、前記アセチレンジオール系界面活性剤の配合割合が、0.4重量%〜2重量%である。
  2. 前記ラクタム構造が、γ−ラクタム構造である請求項1記載のインクジェット記録用インクセット。
  3. 前記γ−ラクタム構造を有するポリマーの重量平均分子量が、25000未満である請求項2記載のインクジェット記録用インクセット。
  4. 前記γ−ラクタム構造を有するポリマーが、ポリビニルピロリドンである請求項2または3記載のインクジェット記録用インクセット。
  5. 前記ラクタム構造を有するポリマーが、前記染料インクのみに含まれている請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェット記録用インクセット。
  6. 前記自己分散型顔料が、自己分散型ブラック顔料であり、前記染料インクが、イエロー水溶性染料、マゼンタ水溶性染料およびシアン水溶性染料からなる群から選択される少なくとも一つの水溶性染料を含む請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクジェット記録用インクセット。
  7. インク収容部およびインク吐出手段を備え、前記インク収容部に収容されたインクを前記インク吐出手段によって吐出するインクジェット記録装置であって、
    前記インク収容部に、請求項1〜6のいずれか一項に記載のインクジェット記録用インクセットを構成するインクが収容されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
  8. インクを吐出して被記録媒体表面に記録するインクジェット記録方法であって、
    前記インクとして、請求項1〜6のいずれか一項に記載のインクジェット記録用インクセットを構成するインクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
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