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JP5700898B2 - ロングラン性に優れたエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる樹脂組成物およびそれを用いた多層構造体 - Google Patents

ロングラン性に優れたエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる樹脂組成物およびそれを用いた多層構造体 Download PDF

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Description

本発明は、溶融成形時のロングラン性に特に優れ、かつゲル・ブツの発生が少なく外観性に優れ、回収性が良好で回収時の着色が少なく、積層体としたときの層間接着性に優れたエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる樹脂組成物およびそれを用いた積層体に関するものである。
エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略すことがある)は酸素遮蔽性、耐油性、非帯電性、機械強度等に優れた有用な高分子材料であり、フィルム、シート、容器など各種包装材料として広く用いられている。このような包装材料は通常溶融成形によって製造されており、溶融成形時のロングラン性(長時間の成形においてもフィッシュアイやスジのない成形物が得られる)、成形物の外観性(着色が少なく、フィッシュアイの発生が見られない成形物)が要求される。また、近年においてはリサイクル性も重要な課題となっており、EVOH成形物を回収して再び溶融成形を行い熱履歴を重ねる場合にも、回収性(回収したEVOHの成形性)が良好であり、かつ回収時の着色の少ないEVOHが求められている。
EVOHは通常溶融成形によって成形される。生産性の向上のためには、成形機を長期間、連続で運転を行うことが好ましいが、成形機内の形状によっては樹脂流路内でEVOHの一部が長時間滞留することがあり、滞留部分のEVOHが長時間の加熱によりゲル化した場合に、成形機ダイへの熱劣化した樹脂の付着、製品中にゲル・ブツ状物の混入の発生、あるいは厚みムラ、スジ等の発現による外観不良を生じることがある。また、滞留部分のEVOHが長時間の加熱により激しく分解した場合には、着色や発泡などを生じ、やはり成形品の外観が悪化する。また、EVOHからなる成形物を回収した場合も、同様に熱履歴を重ねるために、EVOHのゲル化あるいは分解が発生し、成形物の外観等に問題を生じていた。このため、長時間の加熱時においても、ゲル化あるいは分解の発生が少ないEVOHが望まれていた。
さらには、一般的には機械的強度、耐湿性、ヒートシール性等を付与するためにポリオレフィン系樹脂等の基材と接着剤層を介して共押出されて積層体とされており、該積層体の層間接着性も重要である。すなわち、成形物の外観性、溶融成形時のロングラン性、回収性、さらには積層体の層間接着性を十分満足する必要がある。
そこで従来、かかる対策として、種々の酸や金属塩でエチレン−ビニルアルコール共重合体を処理して良好な成形品を製造しようとする以下のような提案がなされている。
例えば、(1)上記のロングラン性、ゲル・ブツに代表される外観を改善するために、周期律表第II属の金属塩を0.0005〜0.05重量%(金属換算)、pKa3.5以上で沸点が180℃以上の酸を0.002〜0.2重量%およびpKa3.5以上で沸点が120℃以下の酸を0.01〜0.2重量%含有させ、かつ特定の流動特性を示すEVOH組成物が開示されている(特開昭64−66262号公報)。(2)外観、ロングラン性、延伸ムラ、層間接着性を改善するために、ホウ素化合物を0.001〜1重量%(ホウ素換算)、酢酸を0.05重量%以下、酢酸塩を0.001〜0.05重量%(金属換算)および/またはリン酸塩を0.0005〜0.05重量%(リン酸根換算)含有するEVOH組成物が開示されている(WO99/05213)。(3)外観、ロングラン性、層間接着性を改善するために、ホウ素化合物を0〜1重量%(ホウ素換算)、酢酸を0〜0.05重量%、酢酸ナトリウムを0〜0.1重量%(金属換算)、酢酸マグネシウムおよび/または酢酸カルシウムを0.001〜0.02重量%(金属換算)含有するEVOH組成物が開示されている(EP−906924)。(4)溶融成形時のロングラン性、成形物のフィッシュアイ、透明性、スジ等の物性を改善するために、ホウ素化合物を0.05〜0.3重量%(ホウ素換算)、酢酸ナトリウムを0.001〜0.02重量%(金属換算)、酢酸マグネシウムを0.001〜0.02重量%(金属換算)含有するEVOH組成物が開示されている(特開平11−60874号公報)。(5)着色、外観、層間接着性を改善するために、ヒドロキシカルボン酸および/またはその塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、リン酸塩、ホウ素化合物を含有するEVOH組成物が開示されている(特開平10−67898号公報)。さらに該公報には比較例7として、EVOH100重量部に対して、酢酸1230ppm(酢酸根として)、酢酸ナトリウム350ppm(金属換算)、酢酸マグネシウム50ppm(金属換算)、リン酸二水素カリウム30ppm(リン換算)、ホウ酸40ppm(ホウ素換算)を含有してなる樹脂組成物が開示されているが、かかる組成物を成形してなるフィルムは層間接着性には優れるものの、着色やブツ等のフィルム外観に問題がある旨が記載されている。
発明が解決しようとする課題
しかしながら、上記(1)〜(5)の先行技術においては、溶融成形時のロングラン性、成形物の外観性、回収性、回収時の耐着色性および積層体としたときの層間接着性の総てを同時に満足するものは見出されておらず、高度の機能、品質を有する成形物が要求されている現在にあっては、満足しえるレベルには到達していないのが現状である。
課題を解決するための手段
上記に示した課題は、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる樹脂組成物であって、前記樹脂組成物が窒素雰囲気下で220℃で加熱された際に、樹脂組成物のMFR(230℃、10.9kg荷重)が加熱開始から10時間以内に極小値を示し、極小値を示してから100時間以内に極大値(MFRmax)を示すことを特徴とし、分子量75未満のカルボン酸(A)を50〜500ppm、アルカリ金属塩(B)を金属元素換算で50〜500ppm、アルカリ土類金属塩(C)を金属元素換算で10〜120ppm、リン酸化合物(D)をリン酸根換算で10〜200ppm、ホウ素化合物(E)をホウ素元素換算で50〜2000ppm含み、かつ下記式(1)を満足することを特徴とする樹脂組成物によって解決される。
0.5≦MFRmax/MFR0≦45 (1)
ただし、
MFRmax:樹脂組成物が窒素雰囲気下で220℃で加熱された際の、樹脂組成物のMFR(230℃、10.9kg荷重)の極大値
MFR0:加熱処理を施されていない樹脂組成物のMFR(230℃、10.9kg荷重)
すなわち、本発明はエチレン含有量20〜65モル%、ケン化度95%以上のエチレン
−ビニルアルコール共重合体からなる樹脂組成物であって、前記樹脂組成物が窒素雰囲気
下で220℃で加熱された際に、樹脂組成物のMFR(230℃、10.9kg荷重)が
加熱開始から10時間以内に極小値を示し、極小値を示してから100時間以内に極大値
(MFRmax)を示すことを特徴とし、分子量75未満のカルボン酸(A)を50〜5
00ppm、アルカリ金属塩(B)を金属元素換算で50〜500ppm、アルカリ土類
金属塩(C)を金属元素換算で10〜120ppm、リン酸化合物(D)をリン酸根換算
で10〜200ppm、ホウ素化合物(E)をホウ素元素換算で50〜2000ppm含
み、エチレン−ビニルアルコール共重合体100重量部に対して滑剤を0.005〜1重
量部含有し、上記分子量75未満のカルボン酸(A)が酢酸であり、かつ下記式(1)を
満足することを特徴とする樹脂組成物に関する。
0.5≦MFRmax/MFR0≦45 (1)
ただし、
MFRmax:樹脂組成物が窒素雰囲気下で220℃で加熱された際の、樹脂組成物のM
FR(230℃、10.9kg荷重)の極大値
MFR0:加熱処理を施されていない樹脂組成物のMFR(230℃、10.9kg荷重
好適な実施態様では、分子量75未満のカルボン酸(A)が酢酸である。
好ましい実施様態では、本発明の樹脂組成物はアルカリ土類金属塩(C)がマグネシウム塩および/またはカルシウム塩であって、金属換算で10〜60ppmのマグネシウム塩および/または金属換算で20〜120ppmのカルシウム塩を含有してなる。
また、好ましい実施様態では、本発明の樹脂組成物は下記式(2)を満足する。
〔B(μmol/g)+C(μmol/g)〕/〔A(μmol/g)+D(μmol/g)〕=1〜15 (2)
ただし、A:樹脂組成物の単位重量当たりの分子量75未満のカルボン酸(A)の含有量(μmol/g)
B:樹脂組成物の単位重量当たりのアルカリ金属塩(B)の含有量(μmol/g)
C:樹脂組成物の単位重量当たりのアルカリ土類金属塩(C)の含有量(μmol/g)
D:樹脂組成物の単位重量当たりのリン酸化合物(C)の含有量(μmol/g)
好適な実施態様では、本発明の樹脂組成物からなるペレットは、樹脂組成物100重量部に対して滑剤を0.005〜0.5重量部、ペレットの外表面に付着してなる。
また、本発明は、上記樹脂組成物からなる層の少なくとも片面に熱可塑性樹脂を積層してなる多層構造体に関する。
本発明に用いられるEVOHとしては、エチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化して得られるものが好ましく、その中でも、エチレン含有量は好適には3〜70モル%である。ガスバリア性と溶融成形性に優れた成形物を得るという観点からは、エチレン含有量は好適には10〜65モル%、さらに好適には20〜65モル%、最適には25〜60モル%であるものが好ましい。さらに、ビニルエステル成分のケン化度は好ましくは80%以上であり、ガスバリア性に優れた成形物を得るという観点からは、より好ましくは95%以上、更に好ましくは99%以上である。エチレン含有量が70モル%を超える場合は、バリア性や印刷適性等が不足する虞がある。また、ケン化度が80%未満では、バリア性、熱安定性、耐湿性が悪くなる虞がある。
一方、エチレン含有量が3〜20モル%のEVOHは、水溶性を付与させたEVOHとして好適に用いられ、かかるEVOH水溶液はバリア性、塗膜安定性に優れ、優れたコート材料として用いられる。
また、エチレンと酢酸ビニルを共重合する際に、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も併用することもできる。また、EVOHは共重合成分としてビニルシラン化合物0.0002〜0.2モル%を含有することができる。ここで、ビニルシラン系化合物としては、たとえば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルメトキシシランが挙げられる。なかでも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好適に用いられる。
以下にEVOHの製造方法を具体的に説明する。エチレンと酢酸ビニルの重合は溶液重合に限るものではなく、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、バルク重合のいずれであっても良く、また連続式、回分式のいずれであってもよいが、例えば、回分式の溶液重合の場合の重合条件は次の通りである。
溶媒;アルコール類が好ましいが、その他エチレン、酢酸ビニルおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体を溶解し得る有機溶剤(ジメチルスルホキシドなど)を用いることができる。アルコール類としてはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等を用いることができ、特にメチルアルコールが好ましい。
触媒;2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス−(4−メチル−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス−(2−シクロプロピルプロピオニトリル)等のアゾニトリル系開始剤およびイソブチリルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエイト、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物系開始剤等を用いることができる。
温度;20〜90℃、好ましくは40℃〜70℃。
時間;2〜15時間、好ましくは3〜11時間。
重合率;仕込みビニルエステルに対して10〜90%、好ましくは30〜80%。
重合後の溶液中の樹脂分;5〜85%、好ましくは20〜70%。
共重合体中のエチレン含有率;好ましくは3〜70モル%、より好ましくは25〜60モル%。
なお、エチレンと酢酸ビニル以外にこれらと共重合し得る単量体、例えば、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン等のα−オレフィン;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸またはその無水物、塩、あるいはモノまたはジアルキルエステル等;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸またはその塩;アルキルビニルエーテル類、ビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等を少量共存させることも可能である。
所定時間の重合後、所定の重合率に達した後、必要に応じて重合禁止剤を添加し、未反応のエチレンガスを蒸発除去した後、未反応酢酸ビニルを追い出す。エチレンを蒸発除去したエチレン−酢酸ビニル共重合体から未反応の酢酸ビニルを追い出す方法としては、例えば、ラシヒリングを充填した塔の上部から該共重合体溶液を一定速度で連続的に供給し、塔下部よりメタノール等の有機溶剤蒸気を吹き込み塔頂部よりメタノール等の有機溶剤と未反応酢酸ビニルの混合蒸気を留出させ、塔底部より未反応酢酸ビニルを除去した該共重合体溶液を取り出す方法などが採用される。
未反応酢酸ビニルを除去した該共重合体溶液にアルカリ触媒を添加し、該共重合体中の酢酸ビニル成分をケン化する。ケン化方法は連続式、回分式いずれも可能である。アルカリ触媒としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属アルコラートなどが用いられる。例えば、回分式の場合のケン化条件は次の通りである。
該共重合体溶液濃度;10〜50%。
反応温度;30〜60℃。
触媒使用量;0.02〜0.6当量(酢酸ビニル成分当り)。
時間;1〜6時間。
ケン化反応後のケン化度は目的により異なるが好ましくは酢酸ビニル成分の80%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは99%以上である。ケン化度は条件によって任意に調整できる。
反応後のエチレン−ビニルアルコール共重合体はアルカリ触媒、副生塩類、その他不純物等を含有するため、これらを必要に応じて中和、洗浄することにより除去することが好ましい。
本発明のEVOHからなる樹脂組成物は、窒素雰囲気下で220℃で加熱された際に、樹脂組成物のMFR(230℃、10.9kg荷重)が加熱開始から10時間以内に極小値を示し、極小値を示してから100時間以内に極大値(MFRmax)を示すことを特徴とし、かつ下記式(1)を満たすことが極めて重要である。
0.5≦MFRmax/MFR0≦45 (1)
ただし、
MFRmax:樹脂組成物が窒素雰囲気下で220℃で加熱された際の、樹脂組成物のMFR(230℃、10.9kg荷重)の極大値
MFR0:加熱処理を施されていない樹脂組成物のMFR(230℃、10.9kg荷重)
かかる溶融挙動を示す本発明のEVOHからなる樹脂組成物は、溶融成形時の樹脂のダイ付着量が少ない。また、極めて長時間の溶融成形時においても、成形物(フィルムなど)のゲル・ブツの抑制可能である。すなわち、本発明のEVOHからなる樹脂組成物は、極めてロングラン性に優れる。
一方、EVOHからなる樹脂組成物が、上記の構成を有さない場合は(比較例3:図1参照)ではダイ付着量の低減効果が得られないだけでなく、長期間の連続運転を行った場合に、ゲル・ブツの発生個数が増加していくことが明らかである。
また、本発明者らの詳細な検討の結果、上記の構成を有しないEVOHからなる樹脂組成物は、長期運転時にゲル・ブツの発生頻度が急激に増加することがあることが明らかになった。このゲル・ブツの発生頻度の急増は永続的なものではなく、通常はゲル・ブツの発生頻度が急増してから、数分〜数十分程度経過した後、再び通常レベルのゲル・ブツの発生頻度に戻るのであるが、ゲル・ブツの発生頻度が急増した時の成形品は外観が不良であり、通常、実用に耐えるものは得られない。
ところが、本発明者らが開発した、本発明の樹脂組成物を用いることにより、長時間の溶融成形時においてもゲル・ブツの発生頻度の急増を効果的に抑制することが可能となった。このように、本発明の樹脂組成物を用いることにより、フィルムなどのように、極めて高い外観を要求される用途においても、長時間の成形が問題なく行え、生産性を向上させることができる。かかる観点からも、本発明の意義は大きい。
上記の通り、本発明のEVOHからなる樹脂組成物は、下記式(1)を満足する。
0.5≦MFRmax/MFR0≦45 (1)
ただし、
MFRmax:樹脂組成物が窒素雰囲気下で220℃で加熱された際の、樹脂組成物のMFR(230℃、10.9kg荷重)の極大値
MFR0:加熱処理を施されていない樹脂組成物のMFR(230℃、10.9kg荷重)
MFRmax/MFR0の下限はより好ましくは0.7であり、さらに好ましくは1である。また、MFRmax/MFR0の上限はより好ましくは35であり、より好ましくは25であり、さらに好ましくは20であり、最適には10である。MFRmax/MFR0の値がかかる範囲にあることで、樹脂組成物の溶融成形時における熱劣化した樹脂の成形機ダイへの付着量および成形物のゲル・ブツの発生が少なく、ゲル・ブツの発生頻度の変動が抑制された、耐着色性に優れたEVOHからなる樹脂組成物を得ることができる。
MFRmax/MFR0の値が0.5未満の場合には、成形機ダイへの樹脂付着量が多くなりロングラン性が悪化するほか、ゲル・ブツの発生頻度の変動の抑制効果が不充分なものとなる。また、MFRmax/MFR0の値が45を超える場合には、EVOHの分解による着色が著しくなり外観が不良となることが比較例4より明らかである。
本発明に用いられる分子量75未満のカルボン酸(A)の25℃におけるpKaは3.5以上であることが好ましい。25℃におけるpKaが3.5に満たない場合、EVOHからなる樹脂組成物のpHの制御が困難となる虞があり、耐着色性や層間接着性が不満足なものとなる虞がある。分子量75未満のカルボン酸(A)としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などが挙げられるが、コスト的なメリットの他、酸性度が適当であり、樹脂組成物のpHがコントロールしやすい観点から、特に酢酸が好適である。
また、本発明の樹脂組成物中の分子量75未満のカルボン酸(A)の含有量は、50〜500ppmである。分子量75未満のカルボン酸(A)の含有量の下限はより好ましくは75ppm以上であり、さらに好ましくは100ppm以上である。また、分子量75未満のカルボン酸(A)の含有量の上限は好ましくは400ppm以下であり、より好ましくは300ppm以下である。分子量75未満のカルボン酸(A)の含有量が50ppm未満の場合には、溶融時の着色が著しい。500ppmを超える場合には層間接着性が悪化する。
本発明の樹脂組成物中のアルカリ金属塩(B)の含有量は、金属換算で50〜500ppmであり、好ましくは100〜300ppmである。50ppm未満の場合には他樹脂との接着性に劣り、特に共押出成形の際の層間接着性に問題を有する。また、500ppmを超える場合には溶融時の着色が著しい。アルカリ金属塩(B)は特に限定されるものではないが、ナトリウム塩、カリウム塩など挙げられる。アルカリ金属塩のアニオン種も特に限定されるものではないが、酢酸アニオンやリン酸アニオンが好適である。
本発明の樹脂組成物中のアルカリ土類金属塩(C)の含有量は、金属換算で10〜120ppmであり、好ましくは20〜100ppmである。アルカリ土類金属塩(C)の含有量がかかる範囲にあることが、エチレン−ビニルアルコール共重合体組成物の経時的なMFRの変動を制御する上で極めて重要である。10ppm未満の場合にはロングラン性に劣り、120ppmを超えると溶融時の着色が著しい。
アルカリ土類金属塩(C)は特に限定されるものではないが、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、ベリリウム塩等が挙げられ、特にマグネシウム塩とカルシウム塩が好適である。アルカリ土類金属塩のアニオン種も特に限定されるものではないが、酢酸アニオンやリン酸アニオンが好適である。本発明の樹脂組成物中のアルカリ土類金属塩(C)がマグネシウム塩の場合、その好適な含有量は金属換算で10〜60ppmであり、より好ましくは20〜50ppmである。また、樹脂組成物中のアルカリ土類金属塩(C)がカルシウム塩の場合の好適な含有量は、金属換算で20〜120ppmであり、より好ましくは40〜100ppmである。
本発明の樹脂組成物中のリン酸化合物(D)の含有量は、リン酸根換算で10〜500ppmである。リン酸化合物(D)の含有量の下限は、好適には20ppm以上であり、より好適には30ppm以上であり、最適には50ppm以上である。また、リン酸化合物(D)の含有量の上限は、好適には250ppm以下であり、より好適には150ppm以下である。かかる範囲のリン酸化合物を含有することで、より着色が少なく、ロングラン性に優れた、良好な成形品外観を与える樹脂組成物を得ることができる。リン酸化合物(D)の含有量が10ppm未満の場合は、溶融成形時の着色が著しく外観性が低下する。特に熱履歴を重ねるときにその傾向が顕著であるために、樹脂組成物は回収性に乏しいものとなる。500ppmを超えると成形物のゲル・ブツの発生が顕著になり、外観性が低下する。リン酸化合物(D)としては、リン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩等が例示されるが、これらに限定されない。リン酸塩としては第1リン酸塩、第2リン酸塩、第3リン酸塩のいずれの形で含まれていても良く、そのカチオン種も特に限定されるものではないが、上述のようなアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩であることが好ましい。中でもリン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウムの形でリン酸化合物(D)を添加することが好ましい。
本発明に用いられるホウ素化合物(E)としては、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類等が挙げられるが、これらに限定されない。具体的には、ホウ酸類としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸などが挙げられ、ホウ酸エステルとしてはホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチルなどが挙げられ、ホウ酸塩としては上記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂などが挙げられる。これらの化合物の中でもオルトホウ酸(以下、単にホウ酸と表示する場合がある)が好ましい。EVOHからなる樹脂組成物にホウ素化合物を添加した場合、低重合度のEVOHを用いた場合でも、溶融粘度を高めることが可能であり、かかる低重合度のEVOHを用いることによって、通常のEVOHよりもゲル・ブツの発生を抑制し、ロングラン性を向上させることが可能である。
本発明の樹脂組成物中のホウ素化合物(E)の含有量はホウ素換算で50〜2000ppmである。ホウ素化合物(E)の含有量の下限はより好ましくは100ppm以上であり、さらに好ましくは150ppm以上である。また、ホウ素化合物(E)の含有量の上限はホウ素換算で1500ppm以下であることが好ましく、より好ましくは1000ppm以下である。50ppm未満ではホウ素化合物(E)を添加することによるロングラン性の改善効果が得られず、2000ppmを超えるとゲル化しやすく成形性不良となり、成形品外観が悪化する。
本発明のEVOHからなる樹脂組成物は、分子量75未満のカルボン酸(A)、アルカリ金属塩(B)、アルカリ土類金属塩(C)、リン酸化合物(D)およびホウ素化合物(E)の総てが必須成分であり、かつそれらを上記に示した特定量含有することにより、初めて本発明の効果を得ることができる。後述する本願明細書の実施例および比較例を見れば明らかなように、本発明の第2の樹脂組成物においては、上記の成分(A)、(B)、(C)、(D)および(E)のいずれか一つが欠けただけでも、充分な性能が得られなくなる。
また、本発明においては、下記式(2)を満足するとき、本発明の作用効果をさらに顕著に得ることが可能となり好ましい。
〔B(μmol/g)+C(μmol/g)〕/〔A(μmol/g)+D(μmol/g)〕=1〜15 (2)
ただし、A:樹脂組成物の単位重量当たりの分子量75未満のカルボン酸(A)の含有量(μmol/g)
B:樹脂組成物の単位重量当たりのアルカリ金属塩(B)の含有量(μmol/g)
C:樹脂組成物の単位重量当たりのアルカリ土類金属塩(C)の含有量(μmol/g)
D:樹脂組成物の単位重量当たりのリン酸化合物(C)の含有量(μmol/g)
EVOHからなる樹脂組成物中のアルカリ金属塩(B)およびアルカリ土類金属(C)の含有量を増加させることにより、樹脂組成物の接着性およびダイ付着量の低減効果が向上し、MFRmax/MFR0は一般的に増大する。しかしながら、過剰量のアルカリ金属塩(B)およびアルカリ土類金属塩(C)の添加は、耐着色性を悪化させる他、樹脂組成物の分解により低臭性に悪影響を及ぼす。
一方、EVOHからなる樹脂組成物中の分子量75未満のカルボン酸(A)の含有量およびリン酸化合物(D)の含有量を増加させることにより成形物の耐着色性を改善可能であり、MFRmax/MFR0は一般的に低下する。また、分子量75未満のカルボン酸(A)およびリン酸化合物(D)の適量の添加によりロングラン性を向上させることも可能である。しかしながら、過剰量の分子量75未満のカルボン酸(A)およびリン酸化合物(D)の添加は却ってゲル・ブツの増加を招き、さらに樹脂組成物の接着性を低下させる。このように、分子量75未満のカルボン酸(A)、アルカリ金属塩(B)、アルカリ土類金属塩(C)およびリン酸化合物(D)が樹脂組成物の性質に与える影響は、それぞれ相互に関係があり、これらをバランス良く配合することにより、溶融成形時のロングラン性、外観性、回収性、耐着色性および層間接着性の総ての観点において高度な性能を発揮するEVOHからなる樹脂組成物を得ることが可能である。
ここで、本発明の樹脂組成物が、上記の(2)式を満足することにより、特に層間接着強度と成形品外観において高度にバランスのとれた樹脂組成物を得ることが可能となる。〔B(μmol/g)+C(μmol/g)〕/〔A(μmol/g)+D(μmol/g)〕が1未満の時には層間接着強度が低下する虞があり、15を超える場合には着色が著しくなり成形品外観が悪化する虞がある。〔B(μmol/g)+C(μmol/g)〕/〔A(μmol/g)+D(μmol/g)〕の、上限はより好適には10であり、さらに好ましくは7であり、最適には5である。
また、本発明のEVOH樹脂組成物には、EVOH100重量部に対して滑剤を0.005〜1重量部添加することも好適である。滑剤を添加することにより、ダイ付着量を低減させるのみならず、回収時に着色しにくく、ロングラン性の良好なEVOHからなる樹脂組成物を得ることができる。本発明の樹脂組成物はホウ素化合物(E)を含有しているため、極めて長時間の溶融成形を連続で行う際に、ゲル・ブツの発生頻度の変動の抑制効果が若干低下することがある。しかしながら、本発明者らが詳細な検討を行った結果、驚くべきことに、かかるEVOHからなる樹脂組成物の、EVOH100重量部に対して滑剤を0.005〜1重量部含有させることにより、ゲル・ブツの発生頻度の変動の抑制効果を極めて長期間に渡って維持可能であることが見出された。
好適な滑剤の含有量は、EVOH100重量部に対して滑剤が0.005〜1重量部である。滑剤含有量がEVOH100重量部に対して0.005重量部未満の場合は上記に示すような滑剤の添加効果が不充分となる虞があり、1重量部を超える場合はサージングが起こり易く押出安定性が悪化する虞がある。滑剤の含有量の下限はより好適にはEVOH100重量部に対して0.01重量部以上である。また、滑剤の含有量の上限はより好適にはEVOH100重量部に対して0.8重量部以下であり、さらに好適には0.7重量部以下であり、最適には0.5重量部以下である。
本発明で使用できる滑剤は特に限定されるものではなく、例えば高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸カルシウムなど)、低分子量ポリオレフィン(例えば分子量500〜10000程度の低分子量ポリエチレン、または低分子量ポリプロピレンなど)などが挙げられるが、これに限定されない。中でも、高級脂肪酸アミドを用いることが好適であり、具体的には高級飽和脂肪酸アミド(例えばステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリン酸アミドなど)、高級不飽和脂肪酸アミド(例えばオレイン酸アミド、エルカ酸アミドなど)、高級ビス脂肪酸アミド(例えばエチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミドなど)などが例示される。なお、ここで高級脂肪酸とは、炭素数6以上の脂肪酸のことを意味するが、炭素数が10以上であることがより好ましい。
滑剤の形態は粉末状、溶液状、分散液状などいずれであっても良く、特に限定されない。また、滑剤の含有形態も特に限定されず、樹脂組成物と滑剤を溶融混合する方法、滑剤の添加されたケン化反応後の溶液を凝固液中にストランド状に押し出す方法、これらを複合した方法等がある。
また、本発明の樹脂組成物からなるペレットの外表面に、樹脂組成物100重量部に対して滑剤が0.005〜0.5重量部付着してなる樹脂組成物ペレットも本発明の実施態様として好適である。滑剤のペレットへの付着量の下限はより好適にはEVOH100重量部に対して0.01重量部以上である。また、滑剤のペレットへの付着量の上限はより好適にはEVOH100重量部に対して0.3重量部以下であり、さらに好適には0.2重量部以下であり、最適には0.1重量部以下である。樹脂組成物からなるペレットの外表面に付着する滑剤の量が、樹脂組成物100重量部に対して0.5重量部を超える場合は、押出機へのペレットのフィードが安定しにくくなる虞がある。かかる樹脂組成物ペレットの製法は特に限定されないが、EVOH樹脂組成物ペレットと滑剤をドライブレンドする方法が好適なものとして例示される。
本発明で得られたEVOHからなる樹脂組成物の好適なメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下で測定;ただし、融点が190℃付近あるいは190℃を越えるものは2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、メルトフローレートを縦軸(対数)としてプロットし、190℃に外挿した値)は好適には0.1〜200g/10min.である。MFRの下限はより好適には0.2g/10min.以上であり、さらに好適には0.5g/10min.以上であり、最適には1g/10min.以上である。また、MFRの上限はより好適に50g/10min.以下であり、さらに好適には10g/10min.以下であり、最適には7g/10min.以下である。該メルトフローレートが該範囲よりも小さい場合には、成形時に押出機内が高トルク状態となって押出加工が困難となり、また該範囲よりも大きい場合には成形物の機械強度が不足して好ましくない。
また、本発明の樹脂組成物に本発明の目的を阻害しない範囲で、重合度、エチレン含有率およびケン化度の異なるエチレン−ビニルアルコール共重合体をブレンドし溶融成形することも可能である。また、本発明の目的を阻害しない範囲で、該樹脂組成物に他の各種可塑剤、安定剤、界面活性剤、色剤、紫外線吸収剤、スリップ剤、帯電防止剤、乾燥剤、架橋剤、金属塩、充填剤、各種繊維等の補強剤等を適量添加することも可能である。
また、本発明の目的を阻害しない範囲で該樹脂組成物以外の熱可塑性樹脂を適量配合することも可能である。熱可塑性樹脂としては各種ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合体、ポリオレフィンと無水マレイン酸との共重合体、エチレン−ビニルエステル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、またはこれらを不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性した変性ポリオレフィンなど)、各種ナイロン(ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6/6,6共重合体など)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリアセタールおよび変性ポリビニルアルコール樹脂などが用いられる。
エチレン−ビニルアルコール共重合体に分子量75未満のカルボン酸(A)、アルカリ金属塩(B)、アルカリ土類金属塩(C)、リン酸化合物(D)およびホウ素化合物(E)を含有させる方法は特に限定されない。例えば、上記化合物が溶解している溶液に該EVOHを浸漬する方法、該EVOHを溶融して上記化合物を混合する方法、該EVOHを適当な溶媒に溶解して上記化合物を混合する方法等がある。
なかでも、本発明の効果をより顕著に発揮させるためには、EVOHを上記化合物の溶液に浸漬させる方法が望ましい。この処理は、バッチ方式、連続方式のいずれによる操作でも実施可能である。また、その際該EVOHの形状は、粉末、粒状、球状、円柱形ペレット状等の任意の形状であってよい。
EVOHを分子量75未満のカルボン酸(A)、アルカリ金属塩(B)、アルカリ土類金属塩(C)、リン酸化合物(D)およびホウ素化合物(E)を含む溶液に浸漬する場合、上記溶液中の分子量75未満のカルボン酸(A)、アルカリ金属塩(B)、アルカリ土類金属塩(C)、リン酸化合物(D)およびホウ素化合物(E)のそれぞれの濃度は、特に限定されるものではない。また溶液の溶媒は特に限定されないが、取扱い上の理由等から水溶液であることが好ましい。浸漬時間はEVOHの形態によってその好適範囲は異なるが、1〜10mm程度のペレットの場合には1時間以上、好ましくは2時間以上が望ましい。
上記各種化合物の溶液への浸漬処理は、複数の溶液に分けて浸漬してもよく、一度に処理しても構わない。なかでも、分子量75未満のカルボン酸(A)、アルカリ金属塩(B)、アルカリ土類金属塩(C)、リン酸化合物(D)およびホウ素化合物(E)の総てを含む溶液で処理することが、工程の簡素化の点から好ましい。上記のように溶液に浸漬して処理した場合、最後に乾燥を行い、目的とするEVOH組成物が得られる。
得られた本発明の樹脂組成物は溶融成形によりフィルム、シート、容器、パイプ、繊維等、各種の成形体に成形される。これらの成形物は再使用の目的で粉砕し再度成形することも可能である。また、フィルム、シート、繊維等を一軸または二軸延伸することも可能である。溶融成形法としては押出成形、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、射出成形等が可能である。溶融温度は該共重合体の融点等により異なるが150〜270℃程度が好ましい。
本発明の樹脂組成物は、上述した如く該樹脂組成物のみを単層とする樹脂成形物の製造以外に、本発明の組成物フィルム、シート等の成形物を少なくとも1層とする多層構造体として実用に供せられることが多い。該多層構造体の層構成としては、本発明の樹脂組成物をE、接着性樹脂をAd、熱可塑性樹脂をTで表わすと、E/Ad/T、T/Ad/E/Ad/T等が挙げられるが、これに限定されない。それぞれの層は単層であってもよいし、場合によっては多層であってもよい。
上記に示す多層構造体を製造する方法は特に限定されない。例えば、本発明の樹脂組成物からなる成形物(フィルム、シート等)に熱可塑性樹脂を溶融押出する方法、本発明の樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂とを共押出する方法、熱可塑性樹脂とEVOHからなる樹脂組成物を共射出する方法、更には本発明のEVOHからなる樹脂組成物より得られた成形物と他の基材のフイルム、シートとを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物等の公知の接着剤を用いてラミネートする方法等が挙げられ、中でも他の熱可塑性樹脂とを共押出する方法が好ましく用いられる。
用いられる熱可塑性樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体(炭素数4〜20のα−オレフィン)、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独またはその共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエステルエラストマー、ナイロン−6、ナイロン−6,6等のポリアミド樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリカーボネート、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどが挙げられる。上記の中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエステルが好ましく用いられる。
本発明の樹脂組成物と熱可塑性樹脂とを積層するに際し、接着性樹脂を使用する場合があり、この場合の接着性樹脂としてはカルボン酸変性ポリオレフィンからなる接着性樹脂が好ましい。ここでカルボン酸変性ポリオレフィンとは、オレフィン系重合体にエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物を化学的(たとえば付加反応、グラフト反応により)結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体のことをいう。また、ここでオレフィン系重合体とはポリエチレン(低圧、中圧、高圧)、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ボリブテンなどのポリオレフィン、オレフィンと該オレフィンとを共重合し得るコモノマー(ビニルエステル、不飽和カルボン酸エステルなど)との共重合体、たとえばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチルエステル共重合体などを意味する。このうち直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニルの含有量5〜55重量%)、エチレン−アクリル酸エチルエステル共重合体(アクリル酸エチルエステルの含有量8〜35重量%)が好適であり、直鎖状低密度ポリエチレン及びエチレン−酢酸ビニル共重合体が特に好適である。エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物とはエチレン性不飽和モノカルボン酸、そのエステル、エチレン性不飽和ジカルボン酸、そのモノまたはジエステル、その無水物があげられ、このうちエチレン性不飽和ジカルボン酸無水物が好適である。具体的にはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステルなどが挙げられ、なかんずく、無水マレイン酸が好適である。
エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物のオレフィン系重合体への付加量またはグラフト量(変性度)はオレフィン系重合体に対し0.0001〜15重量%、好ましくは0.001〜10重量%である。エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物のオレフィン系重合体への付加反応、グラフト反応は、たとえば溶媒(キシレンなど)、触媒(過酸化物など)の存在下でラジカル重合法などにより得られる。このようにして得られたカルボン酸変性ポリオレフィンの190℃で測定したメルトフローレート(MFR)は0.2〜30g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10g/10分である。これらの接着性樹脂は単独で用いてもよいし、また二層以上を混合して用いることもできる。
本発明の樹脂組成物と熱可塑性樹脂との共押出の方法は特に限定されず、マルチマニホールド合流方式Tダイ法、フィードプロック合流方式Tダイ法、インフレーション法のいずれでもよい。
このようにして得られた共押出多層構造体を二次加工することにより、各種成形品(フィルム、シート、チューブ、ボトルなど)を得ることができ、たとえば以下のようなものが挙げられる。
(1)多層構造体(シート又はフィルムなど)を一軸または二軸方向に延伸、又は二軸方向に延伸、熱処理することによる多層共延伸シート又はフィルム
(2)多層構造体(シート又はフィルムなど)を圧延することによる多層圧延シート又はツィルム
(3)多層構造体(シート又はフィルムなど)真空成形、圧空成形、真空圧空成形、等熱成形加工することによる多層トレーカップ状容器
(4)多層構造体(パイプなど)からのストレッチブロー成形等によるボトル、カップ状容器
このような二次加工法には特に制限はなく、上記以外の公知の二次加工法(ブロー成形など)も採用できる。
このようにして得られた多層構造体は低臭性に優れ、フィッシュアイが少なく、透明で、スジが少ないので、食品容器の材料、たとえば深絞り容器、カップ状容器、ボトル等の材料として好適に用いられる。
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。以下「%」、「部」とあるのは特に断わりのない限り重量基準である。尚、水はすべてイオン交換水を使用した。
ここで、実施例6は滑剤を含有していない樹脂組成物に関するものであり、参考のために記載するものである。本願の実施例は実施例1〜5だけである。
(1)分子量75未満のカルボン酸(A)の定量
試料とする乾燥ペレット20gをイオン交換水100mlに投入し、95℃で6時間加熱抽出した。抽出液をフェノールフタレインを指示薬として、1/50規定のNaOHで中和滴定し、分子量75未満のカルボン酸(A)の含有量を定量した。
(2)アルカリ金属塩(B)およびアルカリ土類金属塩(C)の定量(Naイオン、Kイオン、Mgイオン、およびCaイオンの定量)
試料とする乾燥ペレット10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液をイオンクロマトグラフィーを用いて定量分析し、Naイオン、Kイオン、MgイオンおよびCaイオンの量を定量した。カラムは、(株)横河電機製のICS−C25を使用し、溶離液は5.0mMの酒石酸と1.0mMの2,6−ピリジンジカルボン酸を含む水溶液とした。なお、定量に際してはそれぞれ塩化ナトリウム水溶液、塩化カリウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液および塩化カルシウム水溶液で作成した検量線を用いた。こうして得られたNaイオン、Kイオン、Mgイオン、およびCaイオンの量から、乾燥ペレット中のアルカリ金属塩(B)およびアルカリ土類金属塩(C)の量を金属元素換算の量で得た。
(3)リン酸化合物(D)の定量(リン酸イオンの定量)
試料とする乾燥ペレット10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液をイオンクロマトグラフィーを用いて定量分析し、リン酸イオンの量を定量した。カラムは、(株)横河電機製のICS−A23を使用し、溶離液は2.5mMの炭酸ナトリウムと1.0mMの炭酸水素ナトリウムを含む水溶液とした。なお、定量に際してはリン酸二水素ナトリウム水溶液で作成した検量線を用いた。こうして得られたリン酸イオンの量から、リン酸化合物(D)の含有量をリン酸根換算で得た。
(4)ホウ素化合物(E)の含有量の定量
試料とする乾燥ペレット100gを磁性ルツボに入れ、電気炉内で灰化させた。得られた灰分を0.01規定の硝酸水溶液200mLに溶解し、原子吸光分析によって定量し、ホウ素換算の量でホウ素化合物(E)の含有量を得た。
(5)加熱時間とMFRの関係
試料とする乾燥ペレット3〜4gを窒素雰囲気下でステンレス製パイプ(内径2.2cm、長さ12.5cm、内容積50cm3)の中に入れ、ステンレスパイプ内を窒素ガスにて十分に置換を行った後、220℃にて加熱処理を実施した。加熱処理後樹脂のMFRを、メルトインデクサー{宝工業株式会社型 メルトインデクサーL203(試料を入れるシリンダーの孔径 φ9.48mm、ピストン径 φ9.48mm、ダイ径 φ2.09mm、ダイ長さ 8.01mm)}中で、樹脂を230℃で6分間加熱した後、10.9kgで荷重を行い測定した。
(6)加熱溶融着色試験
試料とする乾燥ペレット8gを230℃に加熱した熱板(シンドー式卓上テストプレスYS−5)の間にはさみ、熱板間の間隙を5mmに保って10分間加熱し、着色度を肉眼で判定し以下のように判定した。
A;着色なし B;やや黄変 C;黄変 D;激しい着色
(7)単層製膜試験
以下の方法で単層フィルムを作製し、成形品の外観、ダイ付着量、ロングラン性を評価した。
形式 単軸押出機(ノンベントタイプ)
L/D 20
口径 20mmφ
スクリュー 一条フルフライトタイプ、表面窒化鋼
スクリュー回転数 40rpm
ダイス 300mm幅コートハンガーダイ
リップ間隙 0.3mm
シリンダー、ダイ温度設定
C1/C2/C3/ダイ=195/230/230/220(℃)
(7−a)ゲル状ブツの発生個数およびゲル状ブツの発生頻度の変動
上記の製膜を8日間連続に行い、1時間毎にフィルムをサンプリングしてゲル状ブツ(肉眼で確認できる約150μm以上のもの)を数えて1.0m2あたりに換算し、得られたデータからゲル状ブツ数の1日あたりの平均値を求めた。また、製膜試験の間、スジ、ゲル状ブツの状況を連続して目視観察し、スジ、ゲル状ブツが一時的に急激に増える(100個/m2以上)一日あたりの回数を測定した。
(7−b)ダイ付着量
試料樹脂組成物を用いてEVOHの単層製膜を8時間実施後、MFR=1のLDPE(低密度ポリエチレン)で押出機内のEVOH樹脂を1時間かけて置換した後、ダイ内部に付着したEVOH熱劣化樹脂の重量を測定した。その重量により以下の様に判定した。
A;1.5g未満 B;1.5〜5g C;5〜10g D;10g以上
(8)層間接着力
以下の共押出成形によって得られた3種5層フィルムの製膜直後のエチレン−ビニルアルコール共重合体/接着性樹脂間のT型剥離強度を20℃−65%RH条件下、オートグラフ(引張速度250mm/min)を用いて測定した。剥離強度の値によって以下のように判定した。
A;500g/15mm以上 B;300〜500g/15mm未満 C;300g/15mm未満
(共押成形条件)
層構成:LLDPE/接着性樹脂/EVOH樹脂組成物/接着性樹脂/LLDPE(厚み50/10/10/10/50:単位はμm)
LLDPE:三井化学製ウルトゼックス3523L
接着性樹脂:住友化学工業製 ボンダイン TX8030
各樹脂の押出温度:C1/C2/C3/ダイ=170/170/220/220℃
各樹脂の押出機、Tダイ仕様:
LLDPE;32φ押出機 GT−32−A型(プラスチック工学研究所製)
接着性樹脂;25φ押出機 P25−18AC(大阪精機製)
EVOH ;20φ押出機 ラボ機ME型CO−EXT(東洋精機製)
Tダイ ;300mm幅3種5層用 (プラスチック工学研究所製)
冷却ロールの温度:50℃
引き取り速度 :4m/分
(9)回収性
製膜したEVOH単層フィルム(製膜開始後2時間までの製膜品)を粉砕し、溶融して再びペレット化を行い(ペレット化温度は220℃)、該ペレットを用いて再度、単層製膜を実施した。
(9−a)耐着色性
フィルムを細管に巻き取り、フィルム端面の着色度を肉眼で判定し以下のように判定した。
A;着色なし B;やや黄変 C;黄変 D:激しい着色
(9−b)ブツ発生
単層製膜を実施し1時間後のフィルムのゲル状ブツ(肉眼で確認できる約150μm以上のもの)を数え、1.0m2あたりに換算した。ブツの個数によって以下のように判定した。
A;20個未満 B;20〜40個 C;40〜60個 D;60個以上
(10)固有粘度
EVOHからなる樹脂組成物の試料ペレット0.20gを精秤し、これを含水フェノール(水/フェノール=15/85wt%)40mlに60℃にて3〜4時間加熱溶解させ、温度30℃にて、オストワルド型粘度計にて測定し(t0=90秒)、下式により固有(極限)粘度[η]を求めた。
[η]=(2×(ηsp− 1 nηrel))1/2/C (l/g)
ηsp= t/ t0−1 (specific viscosity)
ηrel= t/ t0 (relative viscosity)
C ;EVOH濃度(g/l)
・t0:ブランク(含水フェノール)が粘度計を通過する時間
・t:サンプルを溶解させた含水フェノール溶液が粘度計を通過する時間
実施例1
エチレン含有量38モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体の45%メタノール溶液をケン化反応器に仕込み、苛性ソーダ/メタノール溶液(80g/L)を共重合体中の酢酸ビニル成分に対し、0.4当量となるように添加し、メタノールを添加して共重合体濃度が20%になるように調整した。60℃に昇温し反応器内に窒素ガスを吹き込みながら約4時間反応させた。4時間後、酢酸で中和し反応を停止させ、円形の開口部を有する金板から水中に押し出して析出させ、切断することで直径約3mm、長さ約5mmのペレットを得た。得られたペレットは遠心分離機で脱液しさらに大量の水を加え脱液する操作を繰り返した。
こうして得られたエチレン−ビニルアルコール共重合体の含水ペレット(エチレン含有量38モル%、ケン化度99.4%、含水率55重量%)100重量部を、ホウ酸0.32g/L、酢酸ナトリウム0.4g/L、酢酸マグネシウム0.24g/L、リン酸二水素カリウム0.17g/L、酢酸0.5g/Lを含有する水溶液370重量部に25℃で6時間浸漬した。浸漬後脱液し、80℃で3時間、引き続いて107℃で24時間熱風乾燥機を用いて乾燥を行い、乾燥ペレットを得た。この乾燥ペレット100重量部に滑剤アルフローH−50T(日本油脂製;エチレンビスステアリン酸アミド)0.02重量部をドライブレンドし、充分に混合してEVOH樹脂組成物ペレットを得た。
得られた乾燥ペレット中の分子量75未満のカルボン酸(A)の含有量は250ppm、アルカリ金属塩(B)の含有量は金属換算で220ppm、アルカリ土類金属塩(C)の含有量は金属換算で35ppm、リン酸化合物(D)の含有量はリン酸根換算で100ppm、ホウ素化合物(E)の含有量はホウ素換算で240ppmであった。また、得られたEVOH樹脂組成ペレットのMFR(190℃、2160g荷重下で測定)は2.0g/10minであった。
得られたEVOH樹脂組成物ペレットを用い、上記の方法に従って加熱時間とMFRの関係を調べ(図1参照)、加熱溶融着色試験を行った。MFRmax/MFR0は1.6であり、加熱溶融着色試験の結果はA判定であった。また、上記の樹脂組成物はMFRが加熱開始から10時間以内に極小値を示し、かつ極小値を示した後100時間以内に極大値(MFRmax)を示した。
得られたEVOH樹脂組成物ペレットを用いて上記の方法に従って単層製膜試験を行い、ゲル状ブツの発生個数、ゲル状ブツの発生頻度の変動およびダイ付着量について調べた。ゲル状ブツの発生は8日間の平均で4〜5個/m2と少なく、スジやゲル状ブツの一時的な急激な増加も認められず、良好な外観の成形品が得られ、良好なロングラン性を示した。また、ダイ付着量の試験結果もA判定であった。
得られたEVOH樹脂組成物ペレットを用い、上記に示した方法で層間接着力を測定した。製膜直後のEVOHからなる樹脂組成物/接着性樹脂間のT型剥離強度はA判定であった。
単層製膜試験で得られたフィルム(製膜開始後2時間までの製膜品)を用いて、上記の方法で回収性((a)耐着色性および(b)ブツ発生)の試験を行った。試験結果は、 (a)耐着色性および(b)ブツ発生のいずれの評価項目においても、回収性はA判定だった。
実施例2〜6、比較例1〜8
表2に記載の固有粘度を有するEVOHを用い、ケン化、洗浄、脱液後のエチレン含有量38モル%、ケン化度99.4%のEVOHを浸漬する液の組成を表1にまとめて示すように変更すること、および滑剤添加の有無を除いて実施例1と同様にして乾燥ペレットを作製し、フィルムを作製した。それぞれの実施例および比較例で用いられたペレットの組成を表2に、各種試験の評価結果を表3にまとめて示す。
実施例2〜6、比較例1〜2、および比較例4〜8の樹脂組成物はMFRが加熱開始から10時間以内に極小値を示し、かつ極小値を示した後100時間以内に極大値(MFRmax)を示した。しかし比較例4の樹脂組成物では、MFRは極小値も極大値も示さなかった。
Figure 0005700898
Figure 0005700898
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本発明の構成を有する実施例1〜6のEVOHからなる樹脂組成物は、いずれにおいても着色、フィッシュアイ(ゲル・ブツ)、スジ等が少なく外観性に優れ、溶融成形時のロングラン性に優れ、回収時の着色が少なく、かつ積層体としたときに層間接着性に優れていた。滑剤を含有していない実施例6では、実施例1と比較した場合に耐着色性の改善効果およびダイ付着量の低減効果が若干低下し、ゲル・ブツの抑制効果、およびゲル状ブツの発生個数の急激な増加頻度を抑制する効果が幾らか低減していたが、実用に供しうるものだった。
ところが、ホウ素化合物(E)を含有しない比較例1ではゲル・ブツの発生の抑制効果が不充分であり、リン酸化合物(D)を含有しない比較例2ではフィルム回収時の耐着色性が不満足なものであった。
また、樹脂組成物の窒素雰囲気下220℃での加熱時間とMFR(230℃、10.9kg荷重)の関係において、MFRが加熱開始から10時間以内に極小値を示し、かつ極小値を示した後100時間以内に極大値(MFRmax)を示すという本発明の構成を有さない比較例3では、ダイ付着量の低減効果が得られず、かつ一日に複数回、ゲル・ブツの発生頻度が急増し、生産性に劣った。
MFRmax/MFR0が45を超える比較例4および分子量75未満のカルボン酸(A)の含有量が50ppmに満たない比較例5では充分な耐着色性が得られなかった。また、アルカリ金属塩(B)が50ppmに満たない比較例6では充分な接着性が得られなかった。
また、前述の特開平10−67898号公報の比較例7と同様の構成を有する本願比較例7では、MFRmax/MFR0が45を超えるため耐着色性に乏しく、かつホウ素化合物(E)の含有量が50ppmに満たないため、長時間運転を行うに従い、ゲル・ブツの発生が増加した。また、分子量75未満のカルボン酸(A)の含有量が500ppmを超える比較例8では、接着性に乏しく、かつゲル・ブツの発生の抑制効果も不満足なものだった。
発明の効果
着色、フィッシュアイ(ゲル・ブツ)、スジ等が少なく外観性に優れ、溶融成形時のロングラン性に優れ、回収時の着色が少なく、かつ積層体としたときに層間接着性に優れたエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる樹脂組成物およびそれを用いた多層構造体を提供することができる。
EVOHからなる樹脂組成物の窒素雰囲気下220℃での加熱時間とMFR(230℃、10.9kg荷重)の関係を示す図である。

Claims (1)

  1. エチレン含有量20〜65モル%、ケン化度95%以上のエチレン−ビニルアルコール
    共重合体からなる樹脂組成物であって、
    前記樹脂組成物が窒素雰囲気下で220℃で加熱された際に、樹脂組成物のMFR(2
    30℃、10.9kg荷重)が加熱開始から10時間以内に極小値を示し、極小値を示し
    てから100時間以内に極大値(MFRmax)を示すことを特徴とし、
    分子量75未満のカルボン酸(A)を50〜500ppm、アルカリ金属塩(B)を金
    属元素換算で50〜500ppm、アルカリ土類金属塩(C)、リン酸化合物(D)をリ
    ン酸根換算で10〜200ppm、ホウ素化合物(E)をホウ素元素換算で50〜200
    0ppm含み、上記アルカリ土類金属塩(C)がマグネシウム塩およびカルシウム塩のい
    ずれか一方のみであり、マグネシウム塩の場合の含有量が金属換算で20〜50ppm、
    カルシウム塩の場合の含有量が金属換算で20〜120ppmであり、エチレン−ビニル
    アルコール共重合体100重量部に対して滑剤を0.005〜1重量部含有し、上記分子
    量75未満のカルボン酸(A)が酢酸であり、かつ下記式(1)を満足する樹脂組成物
    らなる層の少なくとも片面に熱可塑性樹脂を積層してなることを特徴とする多層構造体。
    0.5≦MFRmax/MFR0≦45 (1)
    ただし、
    MFRmax:樹脂組成物が窒素雰囲気下で220℃で加熱された際の、樹脂組成物のM
    FR(230℃、10.9kg荷重)の極大値
    MFR0:加熱処理を施されていない樹脂組成物のMFR(230℃、10.9kg荷重
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