JP5778460B2 - 圧延銅箔及びその製造方法、並びに銅張積層板 - Google Patents
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Description
ところが、これらの銅箔を用いてFPCを製造する際、カバーレイとの密着性を向上させるために表面(圧延面)をエッチングすると、表面(圧延面)に直径20μm程度のくぼみが発生することがある。これは、再結晶焼鈍後に立方体組織が発達するように結晶方位が制御されているため、均一な組織のなかに単独で性質の異なる結晶粒が存在することに起因するとされている。そして、エッチングされる結晶面によって金属のエッチング速度は異なるため、上記結晶粒が周囲よりも深くエッチングされ、大きなくぼみとなる。このくぼみは、回路のエッチング性を低下させたり、外観検査で不良と判定され歩留を低下させたりする原因となる。
ここでI(200)/I0(200)とは、X線回折法による2θ/θ測定における試料の(200)面回折ピークの積分強度I(200)を、X線回折法による2θ/θ測定における銅粉末の(200)面回折ピークの積分強度I0(200)で除した値であり、立方体方位への集合度の指標として用いる値である。つまり上記のI(200)/I0(200)が50以上という規定は立方体方位が一定以上発達していることを示している。
銅箔の成分組成としては、JISに規格するタフピッチ銅(TPC)又は無酸素銅(OFC)を好適に用いることができる。又、添加元素としてSnを100〜500質量ppm含有し、及び/又はAgを100〜200質量ppm含有し、残部をタフピッチ銅又は無酸素銅としてもよい。
又、添加元素としてSn、Ag、In、Ti、Zn、Zr、Fe、P、Ni、Si、Ag、Te、Cr、Nb、Vからなる元素の一種以上を合計で20〜500質量ppm含有し、残部をタフピッチ銅又は無酸素銅としてもよい。
なお、FPCに用いられる圧延銅箔は屈曲性を要求されるとともに、表面がエッチングされることから、圧延銅箔の厚みは20μm以下が好ましい。又、無酸素銅はJIS-H3100(C1020)に規格され、タフピッチ銅はJIS-H3100(C1100)に規格されている。
本発明の圧延銅箔は、200℃で0.5時間焼鈍後にI(200)/I0(200)が50以上である必要がある。圧延銅箔に200℃で0.5時間の焼鈍を行うと再結晶組織が生じるが、I(200)/I0(200)=50は、再結晶焼鈍後に立方体集合組織(200)が発達して圧延銅箔の屈曲性を向上させる指標となる。従って、200℃で0.5時間焼鈍後にI(200)/I0(200)が50未満である圧延銅箔は、そもそも高屈曲性の材料として適さない。
200℃で0.5時間焼鈍後にI(200)/I0(200)を50以上とする方法としては、上記特許文献1に記載されている方法を採用することができる。例えば、最終冷間圧延の直前の焼鈍を、この焼鈍で得られる再結晶粒の平均粒径が5〜20μmになる条件下で行い、最終冷間圧延での圧延加工度を90%以上とすることができる、焼鈍条件は、焼鈍を連続焼鈍炉で行う場合、500〜800℃の温度で、当該温度に依存して5〜600秒加熱することにより実施され、焼鈍をバッチで行う場合は、130〜500℃の温度で1〜24時間加熱することにより実施される。
本発明の圧延銅箔は、後述するように仕上げ冷間圧延の加工度を低くすることで製造することができ、これにより圧延銅箔の最表層に圧延集合組織とは異なる加工組織が形成される。そして、この加工組織が再結晶することで、銅箔表面(圧延面)に不均一な結晶粒を群発しやすくなり、直径20μm程度のくぼみの発生が抑制される。
本発明の圧延銅箔においては、このようにくぼみの発生が抑制された表面(圧延面)の形状を以下のように規定している。
(RsmTD/RsmRD)が2.0未満の場合、低加工度でのスキンパスを行わなかったか、又はスキンパスが不十分であり、圧延銅箔の最表層に圧延集合組織と異なる加工組織を十分に形成することが困難である。(RsmTD/RsmRD)の上限は特に規定されないが、通常3.5程度である。
そして、圧延銅箔の最表層の加工組織と、圧延銅箔内部の圧延集合組織との相違を、圧延銅箔の表面(圧延面)及び内部における長径20μm以下の結晶粒の面積率で規定する。
つまり、図1に示すように、200℃で0.5時間焼鈍後に、圧延銅箔表面(圧延面)Dの0.5mm四方内の領域Sにおいて、長径20μm以下の結晶粒が占める面積率を20%以上とし、さらに、圧延平行断面Cにおいて圧延方向長さ0.5mm(図1の符号ML)をSEM観察した場合に、銅箔厚み中心Oを跨ぎかつ長径が20μm以下である結晶粒が占める面積率を観察視野の20%以下とする。このように、圧延銅箔表面(圧延面)の結晶粒を圧延銅箔内部の結晶粒に比べて微細とする(長径20μmを超える粗大粒を少なくする)ことで、圧延銅箔をエッチングする際に多数の微細な結晶がランダムに溶解するので、粗大粒が選択的に溶解して直径20μm程度のくぼみが発生することが抑制される。
長径が20μm以下の結晶粒が占める面積率は、以下のようにして求める。まず、観察視野Vにおいて、銅箔厚み中心Oを跨ぐ結晶粒を抽出すると、図1に示すように結晶粒g1〜g4の4個が抽出される。これら結晶粒g1〜g4のうち、長径が20μm以下の結晶粒は、g1、g2、g4である。従って、{(結晶粒g1、g2、g4の合計面積)/(観察視野Vの面積)}×100により、上記面積率が求められる。なお、観察視野Vの面積は、t×MLで表される。
なお、上記した圧延銅箔のI(200)/I0(200)、表面(圧延面)及び内部における長径20μm以下の結晶粒の面積率は、圧延銅箔を200℃で0.5時間焼鈍した後の値である。そして、この焼鈍は、圧延銅箔と樹脂層とを積層して銅張積層板(CCL)を製造する工程において、積層時の熱処理を想定(シミュレート)したものであり、圧延銅箔はCCLの積層時の熱処理で再結晶し、I(200)/I0(200)、表面(圧延面)及び内部における長径20μm以下の結晶粒の面積率が上記範囲となる。
最終冷間圧延の最終パスにおいて、1パス加工度を2%以上10%未満の低加工度とすることで、圧延銅箔表面(圧延面)の結晶粒を圧延銅箔内部の結晶粒に比べて微細とする(長径20μmを超える粗大粒を少なくする)ことができ、上記したように直径20μm程度のくぼみが発生することが抑制される。一方、最終冷間圧延の最終パスにおいて、1パス加工度が10%以上であると強加工になり過ぎ、圧延銅箔表面(圧延面)の結晶粒が圧延銅箔内部の結晶粒に比べて十分に微細とならず、圧延銅箔をエッチングする際、表面(圧延面)の粗大粒が選択的に溶解して直径20μm程度のくぼみが発生する。又、最終冷間圧延の最終パスにおいて、1パス加工度が2%未満であると、加工が不十分となり、圧延銅箔表面(圧延面)の結晶粒が圧延銅箔内部の結晶粒に比べて十分に微細とならない。
なお、最終冷間圧延の加工度rは、r=(t0−t)/t0(t:圧延後の厚み,t0:圧延前の厚み)で定義される。
得られた銅箔の表面(圧延面)を触針式表面粗さ計(小阪研究所製サーフコーダSE-3400)で測定し、JIS-B0601に規定する輪郭曲線要素の平均長さRsmを測定した。Rsmは、圧延方向(RsmRD)と、圧延直角方向(RsmTD)に沿ってそれぞれ測定し、それらの比(RsmTD/RsmRD)を算出した。
得られた銅箔表面(圧延面)の3箇所につき、0.5mm四方の光学顕微鏡像を撮影し、撮影視野内に長径20μm以下の結晶粒が占める面積率を画像解析によって測定し、3箇所の平均値を算出した。なお、結晶粒の長径とは、結晶粒を取り囲む最小円(結晶粒の最小外接円)の直径を意味する。
同様に、圧延平行断面において圧延方向長さ0.5mmの領域(観察視野V)の3箇所につき、SEM(走査型電子顕微鏡)像を撮影し、銅箔厚み中心を跨ぎ長径が20μm以下である結晶粒を抽出した。そして、この結晶粒が観察視野に占める面積率を画像解析によって測定し、3箇所の平均値を算出した。結晶粒の長径は上記と同様に定義される。
得られた銅箔を200℃で0.5時間焼鈍後、圧延面のX線回折で求めた(200)面強度の積分値(I)を求めた。この値をあらかじめ測定しておいた微粉末銅(325mesh,水素気流中で300℃で1時間加熱してから使用)の(200)面強度の積分値(I0 )で割り、I(200)/I0(200)の値を計算した。なお、I(200)/I0(200)が50以上であれば、配向度の評価を良い(○)とし、50未満を×とした。I(200)/I0(200)が50以上であれば、立方晶が成長し、屈曲性が向上することが知られている。
得られた銅箔を200℃で0.5時間焼鈍後、液温30℃のエッチング液(ADEKA社製テックCL-8の20質量%溶液)に攪拌しながら2分間浸漬してエッチングし、洗浄後の表面(圧延面)を光学顕微鏡で観察した。0.5mm四方の観察面を7視野観察し、長径が20μmを超える窪み(凹部)が見られた場合を評価×とし、長径が20μmを超える凹部が見られなかった場合を評価○とした。なお、凹部の長径は、窪みの輪郭を取り囲む最小円(窪みの輪郭の最小外接円)の直径を意味する。
ここで、0.5mm四方の7視野につき、長径が20μmを超える凹部が1個見られた場合、この凹部は表面(圧延面)に0.57個/mm2存在すると計算される(=1/(0.5×0.5×7))。従って、上記評価が○の場合(つまり、長径が20μmを超える窪みが0個の場合)、長径が20μmを超える凹部が表面(圧延面)に0.5個/mm2以下(具体的には0個/mm2)となる。
一方、上記評価が×の場合、上述の計算により、凹部は表面(圧延面)に0.57個/mm2以上存在することになる。
最終冷間圧延の加工度を97%未満とした比較例2の場合、200℃で0.5時間焼鈍後、I(200)/I0(200)が50未満となり、配向度が劣った。
なお、図2は、比較例1の試料の表面(圧延面)の窪みの光学顕微鏡像を示す。直径20μmを超える窪みが表面に発生したことがわかる。
Claims (4)
- (A)JIS-H3100(C1100)に規格するタフピッチ銅、(B)JIS-H3100(C1020)に規格する無酸素銅、(C)添加元素としてSnを100〜500質量ppm含有し、及び/又はAgを100〜200質量ppm含有し、残部を前記タフピッチ銅又は前記無酸素銅、又は、(D)添加元素としてSn、Ag、In、Ti、Zn、Zr、Fe、P、Ni、Si、Ag、Te、Cr、Nb、Vからなる元素の一種以上を合計で20〜500質量ppm含有し、残部を前記タフピッチ銅又は前記無酸素銅とする組成からなり、
200℃で0.5時間焼鈍後にI(200)/I0(200)が50以上であり、かつ触針式表面粗さ計で測定したJIS-B0601に規定する輪郭曲線要素の平均長さをRsmとしたとき、圧延平行方向に測定した値RsmRDと、圧延直角方向に測定した値RsmTDとの比(RsmTD/RsmRD)が2.0以上であり、
200℃で0.5時間焼鈍後に、表面(圧延面)の0.5mm四方内に長径20μm以下の結晶粒が占める面積率が20%以上であり、かつ圧延平行断面において圧延方向長さ0.5mmをSEM観察した場合に、銅箔厚み中心を跨ぎかつ長径が20μm以下である結晶粒が占める面積率が観察視野の20%以下である圧延銅箔。 - 銅箔厚みの2〜5%をエッチングにより除去した後の銅箔の一方の表面(圧延面)において、表面(圧延面)の0.5mm四方を7視野観察したとき、長径が20μmを超える凹部が0.5個/mm2以下である請求項1記載の圧延銅箔。
- 請求項1又は2記載の圧延銅箔の製造方法であって、銅箔素材を最終冷間圧延加工度97%以上で冷間圧延し、かつ最終冷間圧延の最終パスにおいて1パス加工度2%以上10%未満の冷間圧延を施す圧延銅箔の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の圧延銅箔と樹脂層とを積層してなる銅張積層板。
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