JP5761680B2 - 印刷用塗工紙の製造方法 - Google Patents
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昨今、低コスト化の動きが顕著になっており、用紙の低坪量化や、上質紙から中質紙や下級紙へ、あるいは、塗工紙から非塗工紙へ用紙をグレードダウンする動きがある。チラシ用途に使用される微塗工印刷用紙においても、低坪量化が進んでいる。
このうち、微塗工印刷用紙の製造では、ブレードコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーターなどが用いられるのが普通である。ブレードコーターは、サイズプレスコーターやゲートロールコーターなどのロール転写方式とは異なり、ブレードを用いて原紙から塗料を直接掻き落とすので、原紙の坪量が低くなると、強度が低くなり、ブレードタッチ圧の影響でコーターでの断紙の危険性が高まって生産性の悪化に繋がる。
塗工紙の坪量が決まっている場合は、このようなコーターでの断紙を防ぐには、塗工量をなるべく少なくして、その分原紙の坪量を高くして、紙の強度を高くするという方法がある。しかし、このようにすると、塗工量が少ないほど塗料による原紙の被覆が不十分となるため、印刷適性にかかわる白紙光沢度などの品質が損なわれてしまう。
顔料粒子の粒径分布が体積基準で0.4〜4.2μmの範囲に65%以上含まれる、坪量50g/m2以下、引張こわさがLorentzen製引張試験機を用いて200kN/m以上400kN/m以下である印刷用塗工紙。実用的な不透明度、相対的に良好なインク着肉性および印刷光沢度が高く、特にオフセット輪転印刷時の断紙が発生しない。(特許文献1)
坪量35〜50g/m2、平均繊維長1.0〜1.5mmに分級選別されたパルプを用い、離解パルプのろ水度が250〜500mlである。塗工紙でありながら、非塗工紙のように手肉感や印刷作業性に優れる。(特許文献2)
平均粒子径0.9〜3.0μmのカオリンを顔料中50〜100質量%含有。スムースター平滑度が6.0kPa以下、光沢度が45%以上。白紙光沢、印刷光沢に優れ、高温ソフトカレンダー処理時に微小な光沢ムラが少ない。(特許文献3)
接着剤を工夫したものとして、接着剤を顔料100重量部に対して30重量部以上60重量部以下の澱粉を有する塗工層をブレードコーターで設ける。低坪量においても、印刷・製本作業適性を得ることができ、実用に適した剛度、インキ着肉性が得られ、裏抜けの問題が無い。(特許文献4)
しかし、これらの技術によってもいまだ満足な微塗工印刷用紙が得られていない。特に低坪量の塗工紙は、原紙の強度を高くすることに加え、少ない塗工量で印刷適性を確保する必要がある。
原紙に顔料および接着剤を主成分とする塗料を塗工してなる微塗工印刷用紙において、全パルプ中、針葉樹クラフトパルプを20〜50質量%含有する原紙に、ブレードコーターによって塗料を片面5〜8g/m2塗工されており、引張り強さ(縦)2.2kN/m以上、伸び(縦)1.5%以上とされた、白色度75%以上、不透明度80%以上、白紙光沢度25〜35%であることを特徴とする坪量40〜50g/m2の微塗工印刷用紙。
である。
原紙に顔料および接着剤を主成分とする塗料を塗工してなる微塗工印刷用紙の製造方法において、全パルプ中、針葉樹クラフトパルプを20〜50質量%含有し、カチオン化澱粉が0.2〜1.0質量%内添された原紙に、ブレードコーターによって、塗工液の濃度61〜64%、塗工液の粘度1000〜2000cps、ブレード角30〜45度にて、塗料を片面5〜8g/m2塗工し、引張り強さ(縦)2.2kN/m以上、伸び(縦)1.5%以上、白色度75%以上、不透明度80%以上、白紙光沢度25〜35%に調整することを特徴とする坪量40〜50g/m2の微塗工印刷用紙の製造方法。
である。
本発明の微塗工印刷用紙の製造には、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート、リールパートの各工程からなる抄紙機を用いる。抄紙機の型式は特に限定はなく、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等を適宜使用できるが、オントップ型やギャップフォーマ型のツインワイヤー抄紙機が望ましく、特に両面から脱水するギャップフォーマー型抄紙機が望ましい。
このようにすることで、低坪量でも原紙に強度を持たせることができるので、コーターでの断紙や印刷機での断紙の可能性を低減することができる。50質量%を超えると、地合いムラおよび塗工ムラができやすく、白紙光沢度が不足したり、光沢ムラが発生する。
NBKPの含有率は、JISP8120:1998 紙、板紙及びパルプ繊維組成試験方法により、紙を離解して求めることができる。
配合するNBKPのカナダ標準ろ水度(CSF)は400〜600mlに調整されていることが好ましい。ろ水度が400mlより低いと、引裂き強さの不足によりコーターでの断紙が起こりやすく、600mlより高いと、地合いムラによる塗工ムラができやすく、白紙光沢度が不足して印刷適性が悪くなる。
本発明の微塗工印刷用紙は、資源の有効利用のため古紙パルプを使用するのが望ましく、その配合率は高いほうが良いが、古紙パルプは、晒クラフトパルプより白色度や強度が低いので、10〜50質量%とするのが望ましい。
紙力増強剤としては、カチオン化澱粉、ポリアクリルアミド系樹脂等が使用できるが、本発明の微塗工印刷用紙は、引張り強さ(縦)2.2kN/m以上、伸び(縦)1.5%以上とされている。引張り強さ(縦)が2.2kN/mに満たないと印刷時に断紙しやすく、伸び(縦)が1.5%に満たなくても印刷時に断紙しやすい。
カチオン化澱粉を添加することにより、引張り強さ、伸びが向上し、コーターでの断紙や印刷機での断紙を防止することができる。カチオン化澱粉の添加量が0.2%より少ないと添加の効果が低く、1.0%より多いと効果が頭打ちとなるほか、地合いが悪くなったり、抄紙機のフェルト汚れによる搾水不良のトラブルを起こすことがある。
使用するカチオン化澱粉の置換度は、0.02〜0.05であることが紙力向上に有利であり、好ましい。置換度は澱粉分子のグルコース単位の数に対してエーテル結合によって置換されたヒドロキシル基の数の割合によって定義される。
使用するカチオン化澱粉は、アミロース含有量が20%以下の澱粉から製造されたカチオン化澱粉であることが耐老化性に優れるので好ましい。
その他、必要に応じ、湿潤紙力増強剤、スライムコントロール剤、ピッチコントロール剤、消泡剤、染料等の添加剤も使用することができる。
使用する接着剤は、塗工紙用に従来から用いられている、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体およびポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白の蛋白質類、酸化澱粉、陽性澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などのエーテル化澱粉、デキストリンなどの澱粉類、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体などの通常の塗工紙用接着剤1種類以上を適宜選択して使用することができる。
しかし、現状設備としてオンマシンのブレードコーターを設置している抄紙機では、新たにロールコーターなどを設置するのは、スペースや費用の問題で難しい。本発明はブレードコーターを用いて塗料を塗工する微塗工印刷用紙に関するものである。
塗料の塗工量が片面あたり5g/m2より少ないと、塗料による原紙の被覆が不十分となるため、白紙光沢度の不足や光沢ムラにより印刷適性が悪くなる。塗工の際の塗料の濃度は61〜64%、塗料の粘度(B型粘度計、35℃、60rpm)は1000〜2000cpsが好ましい。この範囲の塗料をブレードコーターで塗工すれば、コーターでの塗工安定性が良く、塗料を均一に原紙へ塗工することができる。
前記塗料を塗工する際のブレード角(ブレード先端面と紙面の角度)は30度〜45度が望ましく、35〜45度がさらに望ましい。ブレード角が小さ過ぎると、塗工量を少なくするのが難しく、ブレード角が大き過ぎると、異物がブレードに引掛かりやすく、ストリークや断紙の原因となる。
コーターで塗料を塗工する際の原紙の水分は、4〜7%が望ましい。4%より低いとコーターで紙が裂けやすくなり、7%より高いと塗工後に水分ムラが生じやすく、しわ入りや印刷時のばたつきの原因となる。
以上のようにして、本発明の微塗工印刷用紙が得られる。
NBKP35質量部(510mlCSF)、LBKP20質量部(220mlCSF)、サーモメカニカルパルプ15質量部(65mlCSF)、上質古紙脱墨パルプ30質量部(160mlCSF)からなるパルプ分散液に、硫酸バンド1.6%(有姿)、カチオン化澱粉(ジー・エス・エル・ジャパン株式会社製 商品名:ジェルトロン24、置換度0.029〜0.033、アミロース含有量17%)0.4%を添加して抄紙した。
次に、ショートドゥエルタイプのブレードコーターを用いて、顔料と接着剤を含む塗料を下記のように原紙の両面に塗工した。
重質炭酸カルシウム(製品名 ハイドロカーブ90HS備北粉化工業株式会社製)50質量部、2級カオリン(製品名 KCS、株式会社イメリスミネラルズ・ジャパン製)15質量部、微粒カオリン(製品名 カオファイン 白石カルシウム株式会社製)35質量部
SBRラテックス(製品名 スマーテックスPA8008 日本エイアンドエル株式会社製)7質量部
尿素燐酸エステル化澱粉(製品名 スターコート16 日本食品化工株式会社製)4.5質量部
分散剤(製品名 アロンT50 東亞合成株式会社製)15質量部(対カオリン)
蛍光染料(製品名 カヤホールSTCL 日本化薬株式会社製)0.4質量部
塗料濃度62%、塗料粘度1250cps、塗工量 片面当たり7.5g/m2、ブレード角度35度
塗工後に乾燥し、ソフトカレンダー3ニップ処理(線圧160kN/m 温度160℃、線圧170kN/m 温度180℃、線圧170kN/m 温度195℃)を行い、坪量49.0g/m2、水分5.5%の微塗工印刷用紙を得た。
得られた微塗工印刷用紙の評価結果を表1、表2に示す。
NBKPの配合率を20質量部、LBKPの配合率を35質量部としたことと、カチオン化澱粉の添加量を1.0%としたこと以外は実施例1と同様に微塗工印刷用紙を得た。
(実施例3)
NBKPの配合率を50質量部、LBKPの配合率を5質量部としたことと、カチオン化澱粉の添加量を0.2%としたことと、塗料の塗工量を8.0g/m2としたこと以外は実施例1と同様に微塗工印刷用紙を得た。
(実施例4)
塗料の塗工量を5.2g/m2としたことと、ブレード角度を40度としたこと以外は実施例1と同様に微塗工印刷用紙を得た。
(実施例5)
塗料の塗工量を6.0g/m2とし、坪量を46.0g/m2としたこと以外は実施例4と同様に微塗工印刷用紙を得た。
(実施例6)
NBKPの配合率を45質量部、LBKPの配合率を10質量部としたことと、塗料の塗工量を5.0g/m2とし坪量を43.0g/m2としたこと以外は実施例4と同様に微塗工印刷用紙を得た。
カチオン化澱粉を添加しなかったこと以外は実施例1と同様に微塗工印刷用紙を得た。
(比較例2)
NBKPの配合率を10質量部、LBKPの配合率を45質量部としたことと、カチオン化澱粉の添加量を0.1%としたこと以外は実施例1と同様に微塗工印刷用紙を得た。
(比較例3)
NBKPの配合率を55質量部、LBKPの配合率を0質量部としたことと、カチオン化澱粉を添加しなかったこと以外は実施例1と同様に微塗工印刷用紙を得た。
(比較例4)
カチオン化澱粉の添加量を1.2%としたこと以外は実施例2と同様に微塗工印刷用紙を得た。
(比較例5)
塗料の塗工量を4.6g/m2としたことと、ブレード角度を45度としたこと以外は比較例1と同様に微塗工印刷用紙を得た。
(比較例6)
塗料の塗工量を9.0g/m2としたこと以外は比較例1と同様に微塗工印刷用紙を得た。
(比較例7)
NBKPの配合率を45質量部、LBKPの配合率を10質量部、塗料の塗工量を6.0g/m2とし、坪量を43.0g/m2としたこと以外は実施例4と同様に微塗工印刷用紙を得た。
(比較例8)
塗料濃度を60%とした以外は比較例2と同様に微塗工印刷用紙を得た。
(比較例9)
塗料濃度を65%とした以外は比較例2と同様に微塗工印刷用紙を得た。
(比較例10)
塗料の塗工量を8.5g/m2としたことと、ブレード角度を30度としたこと以外は比較例2と同様に微塗工印刷用紙を得た。
(比較例11)
塗料の塗工量を6.5g/m2としたことと、ブレード角度を45度としたこと以外は比較例2と同様に微塗工印刷用紙を得た。
(比較例12)
塗料に含まれる尿素燐酸エステル化澱粉を6.0質量部としたこと以外は比較例9と同様に微塗工印刷用紙を得た。
実施例と比較例で得た微塗工印刷用紙の評価結果を表1、表2に示す。
(坪量)JISP8124:1998紙及び板紙−坪量測定方法
(塗工液粘度)B型粘度計(35℃、60rpm)による測定値
(白色度)JISP8148:2001紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法
(不透明度)JISP8149:2000紙及び板紙−不透明度試験方法(紙の裏当て)−拡散照射法
(白紙光沢度)JISP8142:2005紙及び板紙−75度鏡面光沢度の測定方法
(引張り強さ、引張破断伸び)JISP8113:2006紙及び板紙−引張特性の試験方法
(コーター操業性評価)ブレードコーターでの連続操業性を次のとおり評価した。
◎:断紙の発生はなかった。×:断紙が発生した。
(印刷評価)オフセット輪転印刷機を用い、印刷速度700rpm、紙面温度120℃で4色印刷(オフ輪用プロセスインキ 墨・紅・藍・黄)を行い、各試料の印面と印刷作業性を
次の基準で相対評価した。
(印面評価)◎:優れる、○:良い、×:印面にムラがみられた。
(印刷作業性評価)◎:問題なく印刷できた。×:断紙が発生した。
比較例1は、カチオン化澱粉の添加がなく、引張り強さ縦が2.18kN/mと低く、伸びが1.3%と低いので、印刷作業性評価が悪くなっている。
比較例2は、NBKP配合率が10質量%と少ないことに加え、カチオン化澱粉の添加量が0.1質量%と少ないため、引張り強さ縦が2.19kN/mと低く、伸びが1.4%と低いので、印刷作業性評価が悪くなっている。
比較例3は、NBKP配合率が55質量%と多いので、地合いムラによる塗工ムラができ、印面評価が悪くなっている。
比較例4は、カチオン化澱粉の添加量が1.2質量%と多いため、印刷作業性評価は良いが、地合いが悪いため塗工ムラができて印面評価が悪くなっている。
比較例5は、塗工量が4.6g/m2と少ないので、原紙の坪量が高くなり、引張り強さ縦が2.53kN/m、伸びが1.5%と高いため、印刷作業性評価は良いが、印面評価が悪くなっている。
比較例6は、塗工量が9.0g/m2と多いので、原紙の坪量が低くなり、引張り強さ縦が2.06kN/mと低く、伸びが1.3%と低いので、印刷作業性評価が悪くなっている。
比較例7は、原紙の坪量が低く、引張り強さ縦が2.12kN/mと低く、伸びが1.3%と低いので、印刷作業性評価が悪くなっている。
比較例8は、引張り強さ縦が低く、印刷作業性評価が悪いことに加え、塗料濃度が60%と低く、塗料粘度が700cpsと低いので印面評価が悪くなっている。
比較例9は、引張り強さ縦が低く、印刷作業性評価が悪いことに加え、塗料濃度が65%と高いので、コーター作業性と印面評価が悪くなっている。
比較例10は、NBKP配合率が10質量%と少ないこととカチオン化澱粉の添加量が0.1質量%と少ないことに加え、ブレード角が30度と小さいので塗工量が8.5g/m2と多いため、引張り強さ縦が1.92kN/mと低く、伸びも1.3%と低いので、コーター操業性評価と印刷作業性評価が悪くなっている。
比較例11は、ブレード角が45度と高いので、コーターでストリークと断紙が発生しコーター操業性評価が悪くなっている。
比較例12は、塗料粘度が65%と高く、塗料粘度が2100cpsと高いので、コーターで断紙が多発し、印面評価と印刷作業性評価はできなかった。。
Claims (1)
- 原紙に顔料および接着剤を主成分とする塗料を塗工してなる微塗工印刷用紙の製造方法において、全パルプ中、針葉樹クラフトパルプを20〜50質量%含有し、カチオン化澱粉が0.2〜1.0質量%内添された原紙に、ブレードコーターによって、塗工液の濃度61〜64%、塗工液の粘度(B型粘度計、35℃、60rpm)1000〜2000cps、ブレード角30〜45度にて、塗料を片面5〜8g/m2塗工し、引張り強さ(縦)2.2kN/m以上、伸び(縦)1.5%以上、白色度75%以上、不透明度80%以上、白紙光沢度25〜35%に調整することを特徴とする坪量40〜50g/m2の微塗工印刷用紙の製造方法。
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