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JP5761122B2 - 付加硬化型自己接着性液状シリコーンゴム組成物 - Google Patents

付加硬化型自己接着性液状シリコーンゴム組成物 Download PDF

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JP5761122B2 JP2012115698A JP2012115698A JP5761122B2 JP 5761122 B2 JP5761122 B2 JP 5761122B2 JP 2012115698 A JP2012115698 A JP 2012115698A JP 2012115698 A JP2012115698 A JP 2012115698A JP 5761122 B2 JP5761122 B2 JP 5761122B2
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Description

本発明は、自己接着性を有する付加硬化型液状シリコーンゴム組成物、詳しくは、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)などの有機樹脂、鉄、メッキされた金属などに接着性を示す付加硬化型自己接着性液状シリコーンゴム組成物に関する。
シリコーンゴムは、耐熱性、耐寒性、安全性、電気絶縁性、耐候性などの良さから、コネクターシールやスパークプラグブーツなどの自動車部品、複写機用のロールや電子レンジのパッキンなどの電気・電子用部品、シーラントなどの建築用部品、その他哺乳瓶用乳首やダイビング用品などあらゆる分野に広く使用されている。これら各種の用途の中には、金属や有機樹脂などと組み合わせた部品として使用される事例も少なくない。従来、付加硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物と金属や有機樹脂とが一体化した成型物を得る方法は数多く提案されている。成型樹脂表面にプライマーを塗布し、その上から未硬化のシリコーンゴム組成物を塗布・硬化させて接着させる方法、接着剤を界面に塗布して一体化させる方法、2色成形で両者の嵌合等により一体化させる方法、自己接着性シリコーンゴム材料を成形樹脂の上から硬化させる方法などが代表的である。しかしながら、接着剤やプライマーを使用する方法は、工程が増えてしまうだけでなく、塗布方法によっては非接着面を汚してしまうなどの問題点もあった。また、2色成形による方法では、一体化品の形状が制約されたり、界面の密着性は不十分などの問題があった。そこで、シリコーンゴム組成物に接着剤を添加した自己接着性シリコーンゴム組成物を用いることが、前記塗布工程が不要となるため作業時間の短縮ができ、コスト削減ができるし、作業性も向上するため、樹脂との一体成型体を製造する上で有効な手段となっている。
付加型の加熱硬化型シリコーンゴム組成物のプライマーレス成型において、有機樹脂と接着させる方法は数多く報告されている。樹脂上に自己接着性シリコーンゴム組成物を硬化させる方法があり、この自己接着性シリコーンゴム組成物については、接着成分を特定した技術が多く提案されている。例えば、有機樹脂に珪素原子に直結した水素原子を30モル%以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを添加し、付加反応硬化型のシリコーンゴム組成物と接着させる方法(特許文献1:特公平2−34311号公報)、有機樹脂へのシリコーンゴムの物理的な嵌合方法により一体化させる方法(特許文献2:特公昭63−45292号公報)、脂肪族不飽和基と珪素原子結合加水分解性基を有する化合物をグラフトしたオレフィン樹脂にシリコーンゴムを接着一体化させる方法(特許文献3:特開昭63−183843号公報)、脂肪族不飽和基及び珪素原子に直結した水素原子を含有する化合物を添加した熱可塑性樹脂とシリコーンゴムとを接着一体化させる方法(特許文献4:特開平9−165516号公報)、熱可塑性樹脂に脂肪族不飽和基を含有してなる熱可塑性オリゴマーを配合した樹脂とオイルブリード性シリコーンゴムとの一体成型体(特許文献5:特開平9−165517号公報)、シリコーンゴムの改質について、特定の接着助剤を添加する方法(特許文献6:特開平8−53661号公報)や、エポキシ基を有する加水分解性有機珪素化合物を添加する方法(特許文献7:特開2001−200162号公報)等が提案されている。
しかしながら、上述した付加型の加熱硬化型シリコーンゴム組成物の場合、汎用の熱可塑性樹脂、例えば、ABS,PPO,PPS,PC,PBT,PET,アクリル,ウレタン等、鉄、メッキされた金属等への各基材に対して短時間の成型で十分な接着性を得ることができず、十分な接着能を有するためには上記提案のように樹脂の改質が必要であった。樹脂を改質した場合、余分な工程がかかり、コストが高くなるし、改質により樹脂の特性に変化を生じ易くしてしまう場合があった。
特公平2−34311号公報 特公昭63−45292号公報 特開昭63−183843号公報 特開平9−165516号公報 特開平9−165517号公報 特開平8−53661号公報 特開2001−200162号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、自動車部品や通信機器、その他各種の電気・電子製品に使用されるシリコーンゴム組成物と金属や熱可塑性樹脂との一体成型体を得る場合において、幅広い金属や樹脂との接着が可能で、かつ短時間で成型が可能な付加硬化型自己接着性液状シリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、付加硬化型シリコーンゴム組成物に、特定の接着助剤を使用し、なおかつ、組成物の流動性(チキソ性)をコントロールすることにより、鉄、メッキされた金属、ポリカーボネート、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、ポリイミド、ポリウレタンなど、多種多様な樹脂及び金属との接着が可能である液状シリコーンゴム組成物が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
従って、本発明は、下記の付加硬化型自己接着性液状シリコーンゴム組成物を提供する。
(A)一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)一分子中に珪素原子と結合する水素原子(SiH基)を2個以上含有し、かつ分子内にフェニレン骨格を有さないオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1〜20質量部、
(C)補強性シリカ微粉末:0.1〜100質量部、
(D)一分子中に少なくとも1個のSiH基を有し、かつフェニレン骨格を少なくとも1個有する有機珪素化合物:0.1〜30質量部、
(E)付加反応触媒:触媒量
を含有し、23℃において、せん断速度10s-1での粘度に対するせん断速度0.9s-1での粘度の比(0.9s-1での粘度/10s-1での粘度)が3.0〜5.0である流動性を有することを特徴とする付加硬化型自己接着性液状シリコーンゴム組成物。
本発明の付加硬化型自己接着性液状シリコーンゴム組成物は、自動車部品や通信機器、その他各種の電気・電子製品に使用されるシリコーンゴム組成物と金属や熱可塑性樹脂との一体成型体を得る場合において、幅広い金属や樹脂との接着が可能で、かつ短時間で成型が可能である。
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
まず、(A)成分の一分子中に少なくとも平均2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとしては、下記平均組成式(I)で示されるものを用いることができる。
1 aSiO(4-a)/2 ・・・(I)
(式中、R1は互いに同一又は異種の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換一価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.02の範囲の正数である。)
ここで、上記R1で示される珪素原子に結合した非置換又は置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられるが、全R1の90モル%以上、特には、アルケニル基を除く全てのR1がメチル基であることが好ましい。
また、R1のうち少なくとも2個、好ましくは2〜50個、より好ましくは2〜20個はアルケニル基(炭素数2〜8のものが好ましく、更に好ましくは2〜6であり、特に好ましくはビニル基である。)であることが必要であり、好ましくは、前記R1の0.01〜5モル%、より好ましくは0.05〜2モル%程度がアルケニル基であることが望ましい。
このオルガノポリシロキサンの分子構造は、基本的には分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基(R1 3SiO1/2)で封鎖され、主鎖がジオルガノシロキサン単位(R1 2SiO2/2)(R1は上記と同じ)の繰り返しからなる直鎖状構造を有するが、部分的には分岐状の構造、環状構造、三次元網状構造などであってもよい。
分子量(又は重合度)については、平均重合度(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ分析(GPC)におけるポリスチレン換算の重量平均重合度、以下同様)が1,500以下、通常100〜1,500、特に150〜1,000であることが好ましい。100未満では十分なゴム感が得られない場合があり、1,500より高いと粘度が高くなり、成形が困難になってしまう場合がある。
また、(A)成分の粘度は、0.25〜100Pa・s、特に1〜100Pa・sであることが好ましい。粘度が低すぎるとゴム強度のバランスが悪く実用上問題となる場合があり、高すぎるとシリコーンゴム組成物の粘度が高くなり、成形加工が困難となる場合がある。なお、本発明において、粘度は、通常、室温(25℃)において回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型等)などにより測定することができる。
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1種単独でも分子構造や重合度の異なる2種以上を併用してもよい。
次に、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中に珪素原子と結合する水素原子(SiH基)を2個以上有し、分子中のSiH基が前記(A)成分中の珪素原子に結合したアルケニル基とヒドロシリル付加反応により架橋し、組成物を硬化させるための硬化剤として作用するものであって、分子中にアルケニル基を含有しないものであることが好ましく、更に分子内にフェニレン骨格を有さないものである点において、後述する(D)成分とは本質的に相違するものである。
この(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記平均組成式(II)
2 bcSiO(4-b-c)/2 ・・・(II)
(式中、R2は炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基である。また、bは0.7〜2.1、cは0.001〜1.0で、かつb+cは0.8〜3.0を満足する正数である。)
で示され、一分子中に2個以上(通常、2〜300個)、好ましくは3〜200個、より好ましくは4〜100個の珪素原子結合水素原子(SiH基)を有するものが好適に用いられる。
ここで、R2の一価炭化水素基は、脂肪族不飽和結合を含まないものであることが好ましい。このようなR2としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。R2として、好ましくはメチル基、フェニル基、トリフロロプロピル基である。
また、bは好ましくは0.8〜2.0、cは好ましくは0.01〜1.0、b+cは好ましくは1.0〜2.5である。
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの珪素原子結合水素原子(SiH基)含有量としては、0.002〜0.017モル/gであることが好ましく、より好ましくは0.003〜0.017モル/gである。0.002モル/gより少ないと硬化性及び接着性が低下する場合があり、0.017モル/gより多いとオルガノハイドロジェンポリシロキサンが不安定となり、製造自体が困難となる場合がある。
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網目状のいずれの構造であってもよい。この場合、一分子中の珪素原子の数(又は重合度)は2〜300個、好ましくは4〜200個、より好ましくは10〜100個で、室温(25℃)で液状のものが好適に用いられる。なお、珪素原子に結合する水素原子は分子鎖末端、分子鎖の途中(分子鎖非末端又は側鎖)のいずれに位置していてもよく、両方に位置するものであってもよい。
上記(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシクロシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH33SiO1/2単位と(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(CH3)SiO3/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(CH32SiO2/2単位とからなる共重合体や、上記各例示化合物において、メチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基等の他のアルキル基で置換されたものなどが挙げられる。
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種単独でも2種以上を併用してもよい。
このオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜20質量部であり、好ましくは0.2〜20質量部であり、より好ましくは0.5〜10質量部であり、更に好ましくは1〜10質量部である。(B)成分が0.1質量部未満では、ゴムの架橋が不十分であり、20質量部より多いと、ゴム物性が低下してしまい、かつ不経済である。
また、本発明においては、(A)成分中の珪素原子結合アルケニル基に対する、(B)成分と(D)成分中に含まれるSiH基の合計のモル比(SiH基/アルケニル基)が1.0〜5.0、特には1.2〜3.5程度となるように、(B)成分、(D)成分を配合することが好ましい。上記モル比が小さすぎるとゴムの架橋が不十分であり、ゴム硬化物の表面にタックが発生する場合があり、大きすぎると脱水素反応により、ゴム硬化物が発泡する場合がある。
次に、(C)成分の補強性シリカ微粉末は、シリカの種類に特に限定はなく、通常ゴムの補強材として使用されるものであればよい。その補強性シリカ微粉末としては、従来のシリコーンゴム組成物に使用されているものを使用できるが、特にはBET法による比表面積が50m2/g以上である補強性シリカ微粉末を用いる。特に50〜400m2/gの沈澱シリカ(湿式シリカ)、ヒュームドシリカ(乾式シリカ)、焼成シリカなどが好適に使用される。ゴム強度を向上するにはヒュームドシリカが好適である。
また、上記補強性シリカ微粉末は、表面処理されたシリカ微粉末であってもよい。その場合、これらのシリカ微粉末は、予め粉体の状態で直接処理されたものでもよい。通常の処理法として一般的周知の技術により処理でき、例えば、常圧で密閉された機械混練装置又は流動層に上記未処理のシリカ微粉末と処理剤を入れ、必要に応じて不活性ガス存在下において室温或いは熱処理にて混合処理する。場合により触媒を使用して処理を促進してもよい。混練後、乾燥することにより処理シリカ微粉末を製造し得る。処理剤の配合量は、その処理剤の被覆面積から計算される量以上であればよい。また、このシリカ微粉末の表面処理は、前記(A)成分の一部又は全部とシリカ微粉末とを、他の成分と混合する前に、予め、表面処理剤(及び場合により触媒)の存在下で、加熱、混合することによって行うようにしてもよい。
処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン等のシラザン類、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン及びクロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、ポリメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン等の有機珪素化合物が挙げられ、これらで表面処理し、疎水性シリカ微粉末として用いる。処理剤としては、特にシラン系カップリング剤又はシラザン類が好ましい。
(C)成分の補強性シリカ微粉末は、1種単独でも2種以上を併用してもよい。
(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜100質量部であり、好ましくは5〜80質量部であり、より好ましくは10〜50質量部である。(C)成分が少なすぎると、硬化ゴムの機械的強度が弱くなり脱型など成形に問題が生じ、多すぎると、充填が困難となり、作業性、加工性が悪くなる。
(D)成分は、一分子中に少なくとも1個のSiH基(即ち、珪素原子に結合した水素原子)を有し、かつフェニレン骨格を少なくとも1個(通常、1〜22個)、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜4個程度有する、好ましくは珪素原子数1〜100、より好ましくは珪素原子数2〜30の有機珪素化合物であり、接着性付与成分として作用するものである。なお、本発明において「フェニレン骨格」とは、2〜6価、特には2〜4価の、フェニレン構造、ナフタレン構造、アントラセン構造を包含する、2価以上の芳香族環骨格を意味するものである。
上記化合物としては、一分子中に少なくとも1個、通常1〜20個、特には2〜10個程度のSiH基(即ち、珪素原子に結合した水素原子)を有し、少なくとも1個、通常1〜4個のフェニレン骨格を有し、更にグリシドキシ基等のエポキシ基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基などのアルコキシシリル基、エステル基、アクリル基、メタクリル基、無水カルボキシ基、イソシアネート基、アミノ基、アミド基などの官能基を1種又は2種以上含んでもよい有機珪素化合物、特には、珪素原子数1〜30、好ましくは2〜20、特には4〜10程度の直鎖状又は環状のオルガノシロキサンオリゴマーやオルガノアルコキシシランなどの有機珪素化合物を好適に使用することができる。
このような化合物として、具体的には、下記に示す有機珪素化合物を例示することができる。
Figure 0005761122
(nは1〜4である。)
Figure 0005761122
から選ばれる基であり、Rw,Rxは非置換又は置換の一価炭化水素基である。nは1〜4であり、q=1〜50、h=0〜100、好ましくはq=1〜20、h=1〜50である。)
で示される基、R”は
Figure 0005761122
(Rw,Rxは上記と同様であり、y=0〜100である。)
から選ばれる基であり、Y’は
Figure 0005761122
(Rw,Rx,n,q,hは上記と同様である。)
である。z=1〜10である。〕
更に、上記化合物に、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基などのアルコキシシリル基、アクリル基、メタクリル基、エステル基、無水カルボキシ基、イソシアネート基、アミノ基、アミド基等の官能性基を更に導入した有機珪素化合物も使用することができる。
なお、上記Rw,Rxの非置換又は置換の一価炭化水素基としては、炭素数1〜12、特に1〜8のものが好ましく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基等、R1で例示したものと同様のものが挙げられるほか、置換一価炭化水素基として、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基、アクリル基、メタクリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基、N,N’−ジメチルアミノ基、N,N’−ジエチルアミノ基等の炭素数1〜4のアルキルアミノ基等で置換したものが挙げられる。
(D)成分の接着性付与成分は、1種単独でも2種以上を併用してもよい。
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜30質量部であり、好ましくは0.2〜20質量部であり、より好ましくは0.3〜15質量部である。配合量が0.1質量部未満では十分な接着性が得られず、30質量部を超えると物性低下を引き起こしてしまう。
なお、上述したように、(B)、(D)各成分に含有する珪素原子結合水素原子(SiH基)の合計量は、(A)成分のアルケニル基総量に対し、SiH基/アルケニル基=1.0〜5.0(モル/モル)の範囲であることが好ましく、より好ましくは1.2〜3.5(モル/モル)の範囲である。
(E)成分の付加反応触媒としては、白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられる。この付加反応触媒の添加量は触媒量であり、通常(A)成分に対して白金、パラジウム又はロジウム金属質量として0.1〜1,000ppm、特に1〜200ppmであることが好ましい。
なお、硬化時間を調整するために、(E)成分の付加反応触媒に加えて、アセチレン化合物、リン化合物、窒素含有化合物、ニトリル化合物、カルボキシレートなどの従来公知の付加反応制御剤、特に好ましくは、三重結合を有する炭素上に水酸基を有するアセチレン化合物(アセチレンアルコール)を併用して配合することが好ましい。付加反応制御剤の配合量は、(E)成分との配合量比で適宜選択し得る。
また、本発明の自己接着性液状シリコーンゴム組成物には、組成物のチキソ性を制御するために、例えば、25℃での粘度が50mPa・s以下(通常、0.1〜50mPa・s)、特には0.5〜40mPa・s程度の低粘度(低重合度)のα,ω−ジヒドロキシジメチルポリシロキサン等のヒドロキシル基含有のシロキサンオリゴマーなどのチキソ性付与剤の1種又は2種以上を添加することができる。チキソ性付与剤を添加する場合の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜2.4質量部、特に0.2〜1.5質量部、とりわけ0.3〜1.0質量部が好ましい。配合量が多すぎるとゴム強度が低下する場合がある。
本発明の自己接着性液状シリコーンゴム組成物には、上記した成分以外に、目的に応じて各種の添加剤、例えば、酸化チタン、酸化鉄、酸化セリウム、酸化バナジウム、酸化コバルト、酸化クロム、酸化マンガン等の金属酸化物及びその複合物、石英粉末、珪藻土、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、カーボン、中空ガラス、中空樹脂、金、銀、銅などの導電性を有する無機粉末、メッキ粉末等の無機充填剤を添加することができ、また目的とする特性を損なわない限り、顔料、耐熱剤、難燃剤、可塑剤等を添加してもよい。なお、これら任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
本発明の自己接着性液状シリコーンゴム組成物は、上記した(A)〜(E)成分、及び必要により上述した任意成分を常温で均一に混合するだけでも得ることが可能であるが、(C)成分を予め(A)成分の全量又はその一部とプラネタリーミキサーやニーダー等で100〜200℃の範囲で1〜4時間熱処理し、室温に冷却後、その他の成分を添加、混合することが好ましい。
本発明の自己接着性液状シリコーンゴム組成物は、23℃において、せん断速度10s-1での粘度とせん断速度0.9s-1での粘度比(即ち、せん断速度10s-1での粘度に対するせん断速度0.9s-1での粘度の比)が5.0以下であることが必要であり、好ましくは1.5〜5.0、より好ましくは2.5〜5.0、更に好ましくは3.0〜4.9、最も好ましくは3.4〜4.9である。この粘度の比が5.0を超える場合には、金属への接着性(凝集破壊率)が著しく低下し、接着不良となる。これらの特定のせん断速度における粘度比の測定は、例えば、精密回転式粘度計HAAKEレオストレス6000(Thermo scientific社製)や精密回転式粘度計ロトビスコRV1型(HAAKE社製)等の、精密回転式粘度計のいずれか1つを用いて行えばよい。
なお、調製後の組成物に関して、上記の特定のせん断速度における粘度比は、通常の液状シリコーンゴム組成物の流動性を制御するために、従来から一般的に行われている手段を適宜採用すればよく、例えば、(A)成分の分子構造(アルケニル基含有量、分子内でのアルケニル基の位置、アルケニル基以外の置換基の種類等)や重合度、(B)成分の分子構造(SiH基含有量、分子内でのSiH基の位置、SiH基以外の置換基の種類等)、重合度や(A)成分に対する配合比率、(C)成分の種類(平均粒子径、表面状態)や配合量、(D)成分の種類や配合量、任意成分としてのチキソ性付与剤の種類や配合量などの条件を、適宜、選択することによって制御することができることは当業者には自明である。
本発明の自己接着性液状シリコーンゴム組成物は、携帯電話、モバイル通信機器、モバイルコンピューター部品、ゲーム機、時計、画像受信機、DVD機器、MD機器、CD機器などの精密電子機器、電子レンジ、冷蔵庫、電気炊飯器、ブラウン管テレビ、液晶テレビやプラズマテレビなどの薄型ディスプレー各種家電製品、複写機、プリンター、ファクシミリなどのOA機器、コネクターシール、点火プラグキャップ、各種センサー部品などの自動車部品など、金属や有機樹脂とシリコーンゴムが一体化した部品として使用されるあらゆる分野において使用が可能である。
本発明において、被着体として使用される金属としては、鉄、クロムメッキした金属、ニッケルメッキした金属、ステンレススチール、真鍮など種々あり、また有機樹脂としては、通常の熱可塑性樹脂が挙げられ、具体的にはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ウレタン(PU)樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、液晶樹脂等が挙げられる。
本発明の自己接着性液状シリコーンゴム組成物の成形方法は、混合物の粘度により自由に選択することができ、注入成形、圧縮成形、ディスペンサー成形、射出成形、押出成形、トランスファー成形等いずれの方法を採用してもよい。また、その硬化条件は、通常60〜220℃で5秒〜30分間の範囲内で加熱することができる。
特に本組成物の接着性を有効に生かすためには、予め被着体を金型内にセットし、これに未硬化の材料(即ち、本組成物)を接触硬化させた両者が一体化した成形物を得る方法(インサート成形)や、溶融或いは未硬化の有機樹脂と本組成物を交互に金型に射出することにより一体化物を得る2色成形などが好ましい。
なお、本発明にかかる自己接着性液状シリコーンゴム組成物の硬化条件は、金属や熱可塑性樹脂との強固な接着性を発現させるために、60〜220℃で5秒〜30分間加熱することが好ましいが、有機樹脂を用いる場合、有機樹脂が変形、溶融、変質しない温度、硬化時間で行うことが必要である。この場合、有機樹脂の種類にもよるが、60〜220℃で5秒〜30分程度、特に100〜200℃で10秒〜10分程度の硬化条件で一体成型体を得ることが可能である。
以下、実施例と比較例の各配合を表1に示すが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、組成物を調製する際に使用した各成分について、重合度は、トルエンを展開溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ分析によるポリスチレン換算の重量平均重合度であり、粘度は、室温(25℃)において回転粘度計により測定したものである。また、調製したシリコーンゴム組成物の23℃、せん断速度0.9s-1と10s-1における粘度は精密回転式粘度計ロトビスコRV1型(HAAKE社製)を用いて測定したものである。
[実施例1]
分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された25℃の粘度が10Pa・s(平均重合度:約500(GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量から求めた値、以下同じ。))であるジメチルポリシロキサン60質量部、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された25℃の粘度が100Pa・s(平均重合度:約1,000)であるジメチルポリシロキサン30質量部、BET比表面積が300m2/gであるヒュームドシリカ(日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジル300)40質量部、ヘキサメチルジシラザン8質量部、及び水2質量部を室温(25℃)で30分混合した後、150℃に昇温し、3時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却し、シリコーンゴムベースを得た。
このシリコーンゴムベース130質量部に、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された25℃の粘度が100Pa・s(平均重合度:約1,000)であるジメチルポリシロキサン30質量部を入れ、30分撹拌を続けた後、架橋剤として分子鎖両末端及び側鎖にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン[25℃の粘度:0.011Pa・s、重合度:20、SiH基量:0.0050mol/g]1.9質量部、下記式(1)で示されるフェニレン骨格を有する接着助剤(SiH基量:0.0066mol/g)1.0質量部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.10質量部、及び白金触媒(Pt濃度:1質量%)0.20質量部を約30分均一に混合し、液状シリコーンゴム組成物を得た。ここで、この液状シリコーンゴム組成物中の全アルケニル基に対する全SiH官能基のモル比(SiH基/アルケニル基)は3.1である。
Figure 0005761122
この液状シリコーンゴム組成物の23℃、せん断速度0.9s-1と10s-1における粘度を測定し、せん断速度10s-1での粘度に対するせん断速度0.9s-1での粘度の比(0.9s-1/10s-1)を表1に示した。
寸法が幅25mm、長さ100mm、厚み2mmの平板2枚を、長さ方向に10mm重なるようにし、この間に接着面積が25mm×10mm、厚みが2mmになるように、上記液状シリコーンゴム組成物を充填し、せん断接着試験片を作製した。平板の材質はポリカーボネート樹脂(PC樹脂)又はポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)を使用した。せん断接着試験片の加熱硬化条件は120℃の恒温槽で30分加熱した。
また、寸法が幅25mm、長さ100mm、厚み1mmの平板(材質は鉄(Fe)又はニッケルメッキした金属(Cr))2枚を使用した以外は上記と同様にして、120℃の恒温槽で30分加熱し、せん断接着試験片を作製した。
得られたせん断接着試験片を用いて、せん断接着強度とゴム凝集破壊率(CF)を評価した。即ち、引張り試験機に上記せん断接着試験片をセットし、引張り速度50mm/minで試験片の接着面に対して平行な方向に引張り、引張りせん断接着強度を測定した。また、その際に、試験片の接着面積全体に対して凝集破壊(界面剥離せずにシリコーンゴム自体が破断)した部分の面積の比率(百分率)を測定し、ゴム凝集破壊率(CF)とした。結果を表1に示した。
[実施例2]
実施例1の液状シリコーンゴム組成物に、25℃の粘度が0.03Pa・sであるα,ω−ジヒドロキシジメチルポリシロキサンを0.5質量部添加した以外は同様にして、液状シリコーンゴム組成物を調製し、実施例1と同様にして粘度及び粘度比を測定し、またせん断接着試験片を作製してせん断接着強度とゴム凝集破壊率(CF)を測定し、結果を表1に示した。
[実施例3]
実施例1の液状シリコーンゴム組成物に、25℃の粘度が0.03Pa・sであるα,ω−ジヒドロキシジメチルポリシロキサンを1.0質量部添加した以外は同様にして、液状シリコーンゴム組成物を調製し、実施例1と同様にして粘度及び粘度比を測定し、またせん断接着試験片を作製してせん断接着強度とゴム凝集破壊率(CF)を測定し、結果を表1に示した。
[比較例1]
実施例1の液状シリコーンゴム組成物に、25℃の粘度が0.03Pa・sであるα,ω−ジヒドロキシジメチルポリシロキサンを3.0質量部添加した以外は同様にして、液状シリコーンゴム組成物を調製し、実施例1と同様にして粘度及び粘度比を測定し、またせん断接着試験片を作製してせん断接着強度とゴム凝集破壊率(CF)を測定し、結果を表1に示した。
[比較例2]
実施例1の液状シリコーンゴム組成物に、25℃の粘度が0.03Pa・sであるα,ω−ジヒドロキシジメチルポリシロキサンを5.0質量部添加した以外は同様にして、液状シリコーンゴム組成物を調製し、実施例1と同様にして粘度及び粘度比を測定し、またせん断接着試験片を作製してせん断接着強度とゴム凝集破壊率(CF)を測定し、結果を表1に示した。
Figure 0005761122

Claims (2)

  1. (A)一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
    (B)一分子中に珪素原子と結合する水素原子(SiH基)を2個以上含有し、かつ分子内にフェニレン骨格を有さないオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1〜20質量部、
    (C)補強性シリカ微粉末:0.1〜100質量部、
    (D)一分子中に少なくとも1個のSiH基を有し、かつフェニレン骨格を少なくとも1個有する有機珪素化合物:0.1〜30質量部、
    (E)付加反応触媒:触媒量
    を含有し、23℃において、せん断速度10s-1での粘度に対するせん断速度0.9s-1での粘度の比(0.9s-1での粘度/10s-1での粘度)が3.0〜5.0である流動性を有することを特徴とする付加硬化型自己接着性液状シリコーンゴム組成物。
  2. (D)成分が下記式で示される有機珪素化合物から選ばれるものである請求項1記載のシリコーンゴム組成物。
    Figure 0005761122
    (nは1〜4である。)
    Figure 0005761122
    から選ばれる基であり、R w ,R x は非置換又は置換の一価炭化水素基である。nは1〜4であり、q=1〜50、h=0〜100である。)
    で示される基、R”は
    Figure 0005761122
    (R w ,R x は上記と同様であり、y=0〜100である。)
    から選ばれる基であり、Y’は
    Figure 0005761122
    (R w ,R x ,n,q,hは上記と同様である。)
    である。z=1〜10である。〕
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